第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

(1)会社の経営の基本方針

 当社グループは、社是『発展と永続』のもと、『新たな社会・価値観に適応した「世界最高レベルの安全安心なプリント配線板」を供給し続けることにより、安全で快適な社会を実現する』ことを中長期ビジョンに掲げ、社会への貢献、幸福の追求、安全安心な製品の供給をすることで、ステークホルダーからの期待に応えるとともに、社員の幸せ・成長を実現することを目指しています。

 

(2)中長期的な会社の経営戦略と対処すべき課題

 今後の世界経済は、中国経済の減速、地政学リスクの高まりや世界的な金融引き締めの継続等により、依然として先行き不透明な状況が続くものと予想されます。

 当社グループ主力の車載市場においては、未だ不透明感が残るものの、自動車生産台数は緩やかに回復するとともに、中長期的には「CASE」の構造的な変化を背景とした電装化の進展により、需要は拡大すると見込まれます。

 このような状況のなか、当社グループは2021年11月に『持続的な成長に向けて、安定的な収益構造の構築と成長サイクルの確立』を目指す姿として中期経営計画を策定いたしました。計画策定後、積極的な受注活動を継続するなかで、電動化の進展や自動運転向けのアイテムが具体的に立ち上がるなど、主要顧客向けの中長期需要が強いことが確認されました。また、サプライチェーンの地政学リスク回避の流れもあり、タイ工場に対する顧客のニーズが一段と高まっています。これらの変化に対応し、さらなる需要の取込みによる成長加速を実現するため、タイに新工場を建設中であり、その完成後の姿を見据え、2023年11月に中期経営計画を見直しました。

 その結果、2027年3月期の最終年度の数値目標は、前回中期計画の売上高1,000億円、営業利益80億円を1年前倒しで実現し、売上高1,100億円、営業利益95億円、営業利益率8.6%へそれぞれ上方修正いたしました。

 これらの目標達成に向けて、生産効率化のための国内生産拠点の再編による構造改革を実施し、安定的な収益構造の構築を進めるとともに、競争優位性のある車載製品への注力を強化し、車載製品ポートフォリオの高付加価値シフト等の車載成長戦略を実現し、中期経営計画の達成を目指してまいります。

 また、全てのステークホルダーのみなさまから信頼される企業として、サステナビリティ基本方針に基づき、持続可能な社会に向けた取り組みの一環として、『Smart e-changes NetZero』を掲げ、2050年のカーボンニュートラルを目指します。

 さらに、気候変動緩和に向けた取り組みについては、CDPの『気候変動レポート2023』でBスコアを取得しており、今後も積極的に推進してまいります。

 当社グループといたしましては、これらの重点取り組み事項を着実に実践し、更なる企業価値向上に向けて全力で取り組んでまいりますので、株主のみなさまにおかれましては、何卒、ご理解とより一層のご支援を賜りますようお願い申し上げます。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2024年6月28日)現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1) サステナビリティに関する取組

 当社グループは「新たな社会・価値観に適応した『世界最高レベルの安全安心なプリント配線板』を供給し続けることにより、安全で快適な社会を実現する」ことを中期経営計画の中長期ビジョンとして掲げております。また、2020年より、社員の精神的・物質的幸福を追求する取組を推進することを基本理念に明記する一方で、持続的な社会を実現するために「サステナビリティ基本方針」を制定しております。当社グループの社是である「発展と永続」の理念のもと、事業を通じて社会課題と真摯に向き合い、ESG(環境・社会・ガバナンス)経営に取り組んでおります。

 

① サステナビリティに関するガバナンス

 当社グループでは、代表取締役社長を委員長とするサステナビリティ推進委員会を設置し、気候変動及び環境問題等への対応をテーマとした環境課題分科会と人権デューデリジェンス、人的資本、CSR推進活動等への対応をテーマとした社会課題分科会により活動を推進しております。

 なお、サステナビリティ推進委員会における議論の内容と結果、並びにグループ各社のサステナビリティに関する活動については、その重要性に鑑み、定期的に当社代表取締役社長に対しての報告を行っております。また、取締役会に対しても直接報告を行う他、当社の監査役または監査役会に対しても報告を行い、連携を図っております。

 

② サステナビリティに関する戦略

 当社グループでは、社是「発展と永続」の精神をもとに、持続可能な社会の構築への貢献及び企業価値向上を図るため、「気候変動」「社会」「経営基盤」の3つの重点項目から、2021年12月にサステナビリティ基本方針を制定いたしました。

 サステナビリティ基本方針の内容は次のとおりです。

 

 <サステナビリティ基本方針>

CMKグループは創業以来、『発展と永続』を社是として掲げてきました。わたしたちは、新たな社会・価値観に適応した「世界最高レベルの安全安心なプリント配線板」の供給を通じて、社会やステークホルダーの皆様の期待にお応えすることにより、持続可能な社会の実現と、企業価値の向上に努めます。

 

1. 脱炭素の達成に向けて、事業活動における環境負荷軽減に努めます。(気候変動)

2. 安全安心な製品の提供により、世の中に価値を提供し、持続可能な社会の実現に貢献します。(社会)

3. コンプライアンスを重視し、経営の健全性と透明性を高めます。(経営基盤)

 

重点項目

具体的内容

気候変動

■環境負荷物質削減

■資源有効活用

■脱炭素社会の実現を目指したエネルギー問題への対応

社会

■事業を通じた安全への貢献

■安心安全な製品の提供(お客様への価値提供)

■人権の尊重

■従業員の健康と安全の確保

■人財活躍推進(多様性推進)

経営基盤

■コンプライアンス

■内部統制、リスクマネジメント強化

■サプライチェーンマネジメント

■人材育成

 

 

③ サステナビリティに関するリスク管理

 当社グループでは、代表取締役社長を責任者とするサステナビリティ推進委員会及び内部統制委員会を設置し、「気候変動」「社会」の項目についてはサステナビリティ推進委員会が、「経営基盤」の項目については内部統制委員会が全社一元的なリスク管理を行っております。当社グループのリスクの対応方針や課題について、優先度を選別・評価し、意思決定を図っております。

 

④ サステナビリティに関する指標及び目標

 当社グループは、「気候変動」「社会」において取り組むべき具体的な指標を設定しております。具体的な指標は、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (3) TCFD提言に基づく情報開示 ④指標及び目標」及び「第2事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2) 人的資本、多様性に関する開示 ④ 指標及び目標」をご参照ください。

 

(2) 人的資本、多様性に関する開示

① ガバナンス

 人的資本・多様性に関するガバナンスは、サステナビリティ全般に含めて管理しております。詳細は、「第2

事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (1) サステナビリティに関する取組 ① サステナビリティに関するガバナンス」をご参照ください。

 

② 戦略

 当社グループでは、社是「発展と永続」を成し遂げるため、2002年に「CMKグループ行動宣言」を制定し、2022年に改定いたしました。その中で、人材育成は、人材育成方針に沿った取組を進めるとともに、社員の採用活動や人事考課、管理職への登用において人材の多様性を尊重し、公平公正な制度の運営に努めております。

 また、社員の安全と健康の確保は、個人のワークライフバランスが一層充実し、全社員が長期にわたって意欲的に働くことができるよう安全衛生方針に基づいた社内環境の整備を進めております。

 CMKグループ行動宣言、人材育成方針及び安全衛生方針の内容は次のとおりです。

<CMKグループ行動宣言(要旨抜粋)>

お客様とともに    CMKグループは、安心安全な製品・サービスの提供を通じてお客様から選ばれ続ける

           よう努めます。

株主・投資家とともに CMKグループは、適切で積極的なコミュニケーションを通じて株主・投資家のご理解

           を得られるよう努めます。

取引先とともに    CMKグループは、公平・公正な取引を通じて取引先と良きパートナーシップを構築で

           きるよう努めます。

従業員とともに    CMKグループは、一人ひとりが自分らしくいきいきと働くことのできる環境づくりに

           努めます。

社会とともに     CMKグループは、企業活動を通じて持続可能な社会の実現に貢献します。

 

<人材育成方針>

1. 多様性や人権を尊重し、従業員一人ひとりが働きがいを感じられる職場環境を整備します。

2.従業員一人ひとりの可能性を最大限に引き出すため、能力開発及びキャリアアップの機会を公平に提供

   します。

3.環境等の変化に応じた適材適所の人材配置・異動を通じ、多様な従業員の活躍を推進します。

4.公正な人事評価を実現し、フィードバックを通じて従業員の育成につなげます。

5.従業員が自主的にキャリアを築きながら、持続的に成長できる人事制度を整備します。

 

<安全衛生方針>

1. 安全を何よりも優先し、企業活動のすべてのプロセスにおいて安全衛生活動を進めます。

2.安全衛生関係法令を遵守します。

3.従業員とのコミュニケーションを図り、職場における安全衛生の継続的な改善に努めます。

4.安全衛生教育を充実させ、安全安心に働くための意識向上を図ります。

5.従業員の労働災害防止及び疾病の予防、心身の健康増進に取り組みます。

6.地域社会や取引先と連携した安全衛生活動を進め、信頼関係を構築します。

 

③ リスク管理

 人的資本・多様性に関するリスク管理は、サステナビリティ全般に含めて管理しております。詳細は、「第2

事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (1) サステナビリティに関する取組 ③ サステナビリティに関するリスク管理」をご参照ください。

 

④ 指標及び目標

 当社では、上記戦略について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は、次のとおりであります。

区分

項目(注)1

2023年度実績

2023年度目標

人材育成

通信教育受講率

23.9(延べ314名)

50.0%

多能工人材の育成

(注)2

多能工育成:87

多能工育成:60

多様性

女性管理職者比率

4.81

3.20

障がい者の雇用率

3.17

2.30

意欲的に働くための

職場環境の整備

有給休暇平均取得日数

11.9

10

男性労働者の

育児休業取得率

(注)3

100.0

100.0

ストレスチェックの

受検率

97.8

95.0

労働災害件数

(重大労働災害)

0

0

(注)1.当社においては関連する指標のデータ管理及び具体的な取り組みが行われているものの、現時点で当社グループに属するすべての会社が上記取り組み、また、データ管理を実施しているものではないため、当社グループにおける記載が困難であることから、指標に関する目標及び実績は、当社のものを記載しております。

2.当社では、従業員一人ひとりの可能性を最大限に引き出すため、製造部門に従事する社員が複数の製造工程・技能を習得するための教育・実習カリキュラムを実施しております。多能工化を推進することで、技能向上による人材の底上げと組織力の強化を図ってまいります。

3.「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の4第1号における育児休業等の取得割合を算出したものであります。

 

(3) TCFD提言に基づく情報開示

① ガバナンス

 取締役会による監視体制

 取締役会は、気候変動を含むリスク・機会や対応策について、定期的にサステナビリティ推進委員会からこれらに関する報告を受け、重要方針について審議・決定するなどの監督責任があります。また年度計画、予算の審議及び決定時にはこれらのリスク・機会を考慮します。取締役会は気候関連の指標と目標の進捗を監督し、必要な場合は対策を審議・決定します。

 気候関連のリスクと機会を評価・管理するうえでの経営の役割

 ESGに関わるリスク・機会については気候変動も含め、評価・管理する組織として代表取締役社長を委員長、CSR担当役員を副委員長、その他社内取締役で構成するサステナビリティ推進委員会を設置しています。サステナビリティ推進委員会は、気候変動のリスク・機会や指標と目標に対しての進捗について確認し、重要課題を特定し対応策を取締役会に報告します。

 

② 戦略

 当社グループは、気候関連のリスク及び機会を踏まえた戦略と組織のレジリエンスについて検討するため、IEA(国際エネルギー機関)やIPCC(気候変動に関する政府間パネル)による気候変動シナリオを参照し、2050年までの長期的影響を考察し、定性的・定量的シナリオ分析を実施いたしました。

 中長期的には内燃機関の自動車の生産が減少し、EVやFCVへの移行が一層増加することが考えられ、それらの需要動向に応じた製品仕様の変化を把握し、製品開発を進めてまいります。

 財務面では、温暖化対策法に係る税金が炭素税として、すでに石油・ガス等の購入価格に上乗せされる形で影響を与えております。今後もエネルギーの購入価格が上昇することが考えられ、この影響を軽減するために、エネルギー消費量の見える化を推進しつつ、工場への省エネ設備の導入や高効率な設備への更新、省エネを考慮した増床を進めてまいります。

 更に、再エネの利用等を幅広く検討し、脱炭素化及び財務的影響の軽減に努めてまいります。また、CO2削減には当社のみならずサプライチェーン全体での排出量の把握・削減が重要課題との認識のもと、SCOPE1・2・3のデータ取得を継続的に進めております。

 物理的リスクへの対処としてサプライチェーン戦略では、調達先のBCPを策定しております。当社の工場の物理的リスクは想定されておりませんが、今後も継続的に分析していく予定であります。

 

③ リスク管理

 リスク管理体制

 サステナビリティ推進委員会の傘下に、環境推進部長を分科会長とし各拠点の責任者を委員とする環境課題分科会を設置し、気候変動に関する検討を行います。

 リスク識別・評価のプロセス

 環境課題分科会は、関係部門と連携し気候変動リスク・機会の識別・評価を実施しています。

 リスク管理のプロセス

 気候変動リスクの管理プロセスとして環境課題分科会は、気候関連リスクに関する分析、対策の立案と推進、進捗管理などを継続的に実施しています。リスク・機会の発生可能性と影響度から、気候関連課題の優先順位付けを行っています。重大なリスクや対応策は、上位組織のサステナビリティ推進委員会に報告・共有し、同委員会で評価の妥当性を検証し、定期的に取締役会に報告されています。

 組織全体のリスク管理への統合状況

 経営方針及びサステナビリティ基本方針に基づいた、横断的なリスク管理体制を整備し、リスクマネジメントの強化をはかっています。

 

リスク評価

<気候変動に関する主なリスクと機会及び対応(車載用製品事業を中心に評価)>

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④ 指標及び目標

 当社グループは、2022年に“Smart e-changes30 plus”を中長期環境行動計画として掲げ、環境取組を推進しておりましたが、カーボンニュートラルをより強力に推し進めるために、2023年から“Smart e-changes NetZero”として取り組んでいます。

 CO2排出量を2030年度までに2013年度比46%削減、及び2050年までにカーボンニュートラル、当社グループでのエネルギー使用量を前年と比較して原単位で1.5%の削減を目標に掲げております。

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3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況に関する事項のうち、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性のあるリスクには以下のようなものがあり、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項と考えております。

 なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2024年6月28日)現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経済環境に関するリスク

① 為替相場の変動に関するリスク

<発生可能性:高、発生可能性のある時期:1年以内、影響度:中>

 当社グループは日本・中国・東南アジア・欧米に事業展開しており、円・米ドル・ユーロ・人民元・タイバーツ等の為替相場の変動は当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 為替変動リスクについては、当該リスクを軽減するため、必要に応じ、為替予約や外貨建金銭債権債務のバランス調整を実行する体制をとっております。

② 金利の上昇に関するリスク

<発生可能性:高、発生可能性のある時期:1年以内、影響度:中>

 当社グループは生産能力増強、生産効率化及び品質向上等を目的とした設備投資等のための資金調達について、借入金等の有利子負債を調達手段の一つとしております。金利の上昇は資金調達コストの上昇につながり、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは金融情勢の変化に機動的に対応しつつ、調達手段の多様化等を図ることで資金コストの低減及び調達の安定性を高めております。また金利変動リスクを回避することを目的として金利スワップを実施しております。

 

(2) 事業環境に関するリスク

① 車載市場に関するリスク

<発生可能性:中、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大>

 当社グループは車載市場を主力としており、その業績は自動車業界の動向の影響を受けます。世界的な景気後退による自動車需要の縮小や自動車生産に必要な素材、半導体等の各種部品の供給不足による生産台数の減少等が発生した場合は、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 次世代空モビリティ、航空・宇宙、半導体関連、産業機器・ロボティックス、通信、医療、電力・インフラといった新事業領域の確立により、収益基盤の強化を図ってまいります。

② 原材料等の調達に関するリスク

<発生可能性:中、発生可能性のある時期:1年以内、影響度:中>

 世界的な原油価格や素材価格の変動は、当社グループが供給を受ける材料価格に影響を与える可能性があります。また、材料供給元のサプライヤーにおいて生産不足、もしくは不慮の事故等により材料供給の不足が発生した場合には、当社グループの生産遅延・生産停止を招き、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 原材料価格の上昇については販売先への交渉により適正に販売価格へ転嫁するよう努めております。また材料供給元のサプライヤーとは基本取引契約を締結して安定的な取引を行うとともに、複数の供給先から調達することで材料供給の安定化を図っております。

③ 海外事業展開に関するリスク

<発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大>

 当社グループは国内外に事業展開しておりますが、海外市場への事業展開については、以下に挙げるようなリスクが内在しております。

a 政治、経済の混乱及び紛争

b 電力停止などの社会インフラの機能不全

c 予期しない法令又は規制の変更

 これらのリスクが顕在化した場合には、安定的な製品供給ができなくなるなど、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 事業展開先に係る政治・経済や社会情勢、法律や規制の動向について、海外子会社と連携し、情報収集に努めており、状況に応じた対応を行ってまいります。

④ 製品の陳腐化に関するリスク

<発生可能性:中、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中>

 当社グループの属するプリント配線板業界は、非常に厳しい競争環境下にあるため、市場や顧客ニーズの変化を捉えられない場合には、競争力が低下し、シェアを失うこととなり、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは市場競争力の維持、強化を図るために、継続的な研究開発活動による新製品・新技術の開発を行っております。当社グループの研究開発活動については、将来の市場、製品及び技術動向の予測に基づいてテーマ選定を行い、取り組んでおります。

⑤ 知的財産権に関するリスク

<発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中>

 当社グループにとって知的財産は重要な経営資源の一つであると認識しております。しかし、当社グループの知的財産権が第三者により無効とされること、特定地域での十分な保護が得られないことや知的財産権の対象が模倣されることによって、本来得るべき利益を失う可能性があります。また、一方で当社グループが第三者の知的財産権を侵害しているとされ、それにより訴訟を提起された場合には、訴訟に関する費用や損害賠償が発生し、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは知的財産の管理に関し、特許等管理規程を設け、専門部署により適切な管理を行い、知的財産の保全に努めております。

⑥ 人材確保に関するリスク

<発生可能性:中、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大>

 当社グループの継続的な成長には優秀な人材を確保し、育成することが重要であると認識しております。しかしながら、人材採用環境の著しい悪化や人材流出が増加した場合は、人材確保が予定通りに進まず、当社グループの将来の成長に影響を及ぼす可能性があります。

 人材の流出を防ぐため、当社グループは公正な評価、成果に応じた給与体系を維持し、やりがいのある人事制度を導入しております。また、福利厚生、介護・育児のための時短、フレックスタイム制、在宅勤務など、働きやすい環境も整備しております。

 人材育成については、役職階層別・部門別教育のほか、コンプライアンスやハラスメント教育、国際化教育、自己啓発支援等、体系的に実施しております。また、多能工人材の育成として、製造部門に従事する従業員が複数の製造工程・技能を習得するための教育・実習カリキュラムを実施しております。多能工化を推進することで、技能向上による人材の底上げと組織力の強化を図ってまいります。

 

(3) その他のリスク

① 情報セキュリティに関するリスク

<発生可能性:高、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大>

 当社グループは事業活動において入手した、個人情報、営業情報、技術情報等の機密情報を保有しております。IT機器紛失やサイバー攻撃等による不正アクセスやデータの改ざん、破壊、漏洩等があった場合には、重要な業務の停止、当社グループの社会的信用の低下や損害賠償責任の発生により、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 情報資産の強固な保護と適切な共有・活用のため、「情報セキュリティ方針」「情報セキュリティ管理規程」を制定し、個人情報については「個人情報保護方針」「個人情報保護管理規程」「特定個人情報取扱規程」を制定し、これら方針・規程類を遵守しております。

 万が一のIT機器紛失やサイバー攻撃による情報漏洩に備え、端末へのウイルス対策ソフト導入やパソコンのハードディスク暗号化、USBメモリなど外部記憶装置の原則禁止など、システム的な対策を講じております。

 

 また、従業員に対し、サイバー攻撃の手口や不審メールの見分け方、感染が疑われる場合の対応を定期的に発信し、セキュリティ意識向上を図っております。

② 地震等自然災害・大規模な感染症拡大に関するリスク

<発生可能性:中、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大>

 地震等の自然災害の発生により、当社グループの事業拠点が損害を受ける可能性があります。当社グループは日本、中国及びタイに生産工場を有しており、大規模な地震等の自然災害が発生した場合、工場施設の損害、操業の停止、復旧費用などにより、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 また世界的な感染症の拡大による各国の経済活動が制限されることなどにより、当社グループの事業活動の停止、世界規模のサプライチェーン停滞などが、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 当社内に専任組織であるBCP危機管理室を設け、地震事象、火災事象、サイバー攻撃、サプライチェーンの停止等に対する各種BCP(事業継続計画)を策定しております。また、各拠点によるBCP演習を定期的に実施継続しております。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

a.財政状態

 流動資産は、前連結会計年度末に比べて5.8%増加し、651億95百万円となりました。これは、主に販売の増加により受取手形及び売掛金が8億76百万円、また、保険積立金の解約による収入や資金調達などにより現金及び預金が17億40百万円それぞれ増加したことなどによるものであります。

 固定資産は、前連結会計年度末に比べて25.6%増加し、663億71百万円となりました。これは、主にタイの生産工場への設備投資により有形固定資産が124億33百万円増加したことなどによるものであります。

 この結果、総資産は、前連結会計年度末に比べて14.9%増加し、1,316億6百万円となりました。

 流動負債は、前連結会計年度末に比べて5.8%増加し、285億1百万円となりました。これは、主に運転資金及び設備投資資金としての1年内返済予定の長期借入金の返済などにより39億円減少し、社債からの振替などにより1年内償還予定の社債が21億5百万円、生産高の増加により支払手形及び買掛金が13億2百万円、タイの生産工場への設備投資などに伴い未払金が12億3百万円それぞれ増加したことなどによるものであります。

 固定負債は、前連結会計年度末に比べて4.6%増加し、301億90百万円となりました。これは、主にタイの生産工場への設備投資のための借入により長期借入金が35億72百万円増加し、1年内償還予定の社債への振替により社債が24億92百万円減少したことなどによるものであります。

 この結果、負債合計は、前連結会計年度末に比べて5.2%増加し、586億92百万円となりました。

 純資産合計は、前連結会計年度末に比べて24.1%増加し、729億13百万円となりました。これは、主に新株式発行及び自己株式の処分並びに株式売出しによる増資などにより自己株式が31億33百万円の減少、資本金が17億86百万円、資本剰余金が17億86百万円それぞれ増加、親会社株主に帰属する当期純利益の計上により利益剰余金が33億52百万円増加、また、為替換算調整勘定が24億92百万円増加したことなどによるものであります。

 

b.経営成績

 当連結会計年度における我が国経済は、景気は緩やかな回復の動きが見られましたが、継続的な物価上昇や世界的な金融引き締めに伴う影響など、先行き不透明な状況が続いております。世界経済においても、ウクライナや中東情勢などにおける地政学リスクや中国経済の減速など、依然として先行き不透明な状況が続いております。

 このような環境のもと、当社グループ主力の車載分野においては、半導体不足やサプライチェーンの混乱による影響は緩和し、受注は緩やかに回復しました。

 当社グループは、注力分野のパワートレイン・走行安全系向けの販売が牽引し、連結売上高は905億68百万円(前年同期比8.0%の増収)となりました。

 

 利益面につきましては、主に生産工場の稼働率が向上し、営業利益は35億29百万円(前年同期比35.5%の増益)となりました。経常利益は、営業利益の増加や円が対米ドル及びタイバーツで通貨安に推移したことなどによる為替差益10億40百万円を計上したため、47億95百万円(前年同期比82.8%の増益)、親会社株主に帰属する当期純利益は、法人税等調整額△6億49百万円を計上し、38億55百万円(前年同期比142.7%の増益)となりました。

 

 セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。

 (日本)

 国内の自動車販売台数が増加した影響などにより、車載向けの販売が増加し、売上高は554億21百万円(前年同期比16.1%の増収)となりました。

 利益面では、売上高の増加に加え、生産工場の稼働率向上の影響などにより、セグメント利益は15億96百万円(前年同期比218.7%の増益)となりました。

 (中国)

 中国における日系自動車メーカーの需要低迷の影響を受けたことなどにより、車載向けの販売が伸び悩み、売上高は185億20百万円(前年同期比1.0%の減収)となりました。

 利益面では、人民元が対米ドルで通貨安に推移したことに加え、生産効率の改善などの影響により、セグメント利益は18億70百万円(前年同期比12.0%の増益)となりました。

 

 (東南アジア)

 タイの自動車販売台数が減少した影響を受けて、車載向けの販売が減少したことにより、売上高は121億60百万円(前年同期比8.7%の減収)となりました。

 利益面では、生産工場の稼働は回復したものの、第2四半期連結累計期間までの稼働率が低調に推移したことなどの影響により、セグメント利益は7億68百万円(前年同期比40.2%の減益)となりました。

 (欧米)

 欧州、米国共に、自動車販売台数が増加した影響を受けて、車載向けの販売が増加し、売上高は44億66百万円(前年同期比9.4%の増収)となり、セグメント利益は3億24百万円(前年同期比70.6%の増益)となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度末に比べて17億40百万円増加し、253億36百万円となりました。

 当社はCASE需要の高まりや、地政学リスクを背景としたサプライチェーン再構築などを追い風に、中長期需要が旺盛なことを受け、タイ新工場の建設を進めております。需要を取り込みによる売上成長を図り、企業価値の向上に努めております。

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 (営業活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度末における営業活動による資金の増加は、94億40百万円(前連結会計年度は62億45百万円の増加)となりました。これは、主に税金等調整前当期純利益41億67百万円、減価償却費52億65百万円などによる資金の増加によるものであります。

 (投資活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度末における投資活動による資金の減少は、142億10百万円(前連結会計年度は65億98百万円の減少)となりました。これは、主にタイの生産工場への設備投資による有形固定資産の取得による支出158億24百万円によるものであります。

 (財務活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度末における財務活動による資金の増加は、53億79百万円(前連結会計年度は69億6百万円の増加)となりました。これは、主にタイの生産工場への設備投資のための長期借入れによる収入100億円による資金の増加、また、株式の発行による収入45億40百万円、自己株式の処分による収入21億55百万円によりそれぞれ資金が増加したこと、運転資金及び設備投資資金としての長期借入金の返済による支出103億27百万円による資金の減少によるものであります。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

生産高(百万円)

前年同期比(%)

日本

29,957

15.9

中国

31,327

5.1

東南アジア

29,187

2.3

欧米

合計

90,473

7.4

(注)1.金額は、販売価格によっております。

2.セグメント間取引については、相殺消去しております。

 

b.受注実績

 当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前年同期比(%)

受注残高(百万円)

前年同期比(%)

日本

55,236

21.2

10,676

△1.7

中国

19,120

3.4

3,942

18.0

東南アジア

12,345

0.9

2,530

7.9

欧米

4,489

16.9

1,776

1.3

合計

91,192

13.8

18,925

3.4

(注)セグメント間取引については、相殺消去しております。

 

c.販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

販売高(百万円)

前年同期比(%)

日本

55,421

16.1

中国

18,520

△1.0

東南アジア

12,160

△8.7

欧米

4,466

9.4

合計

90,568

8.0

 (注)1.セグメント間取引については、相殺消去しております。

2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

販売高(百万円)

割合(%)

販売高(百万円)

割合(%)

株式会社デンソー

23,118

27.6

30,072

33.2

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.財政状態

 (資産の部)

 当連結会計年度末における総資産は1,316億6百万円(前年同期比14.9%の増加)となりました。流動資産は651億95百万円(前年同期比5.7%の増加)、固定資産は663億71百万円(前年同期比25.6%の増加)、繰延資産は38百万円(前年同期比31.0%の減少)となりました。

 流動資産の増加の主な要因は、販売の増加により受取手形及び売掛金が8億76百万円、また、保険積立金の解約による収入や資金調達などにより現金及び預金が17億40百万円それぞれ増加したことなどによるものであります。

 固定資産の増加の主な要因は、タイの生産工場への設備投資により有形固定資産が124億33百万円増加したことなどによるものであります。

 (負債の部)

 当連結会計年度末の負債合計は586億92百万円(前年同期比5.2%の増加)となりました。流動負債は285億1百万円(前年同期比5.8%の増加)、固定負債は301億90百万円(前年同期比4.6%の増加)となりました。

 流動負債の減少の主な要因は、運転資金及び設備投資資金としての1年内返済予定の長期借入金の返済などにより39億円減少し、社債からの振替などにより1年内償還予定の社債が21億5百万円、生産高の増加により支払手形及び買掛金が13億2百万円、タイの生産工場への設備投資などに伴い未払金が12億3百万円それぞれ増加したことなどによるものであります。

 固定負債の増加の主な要因は、タイの生産工場への設備投資のための借入により長期借入金が35億72百万円増加し、1年内償還予定の社債への振替により社債が24億92百万円減少したことなどによるものであります。

 (純資産の部)

 当連結会計年度末の純資産合計は729億13百万円(前年同期比24.0%の増加)となりました。

 純資産合計の増加の主な要因は、新株式発行及び自己株式の処分並びに株式売出しによる増資などにより自己株式が31億33百万円の減少、資本金が17億86百万円、資本剰余金が17億86百万円それぞれ増加、親会社株主に帰属する当期純利益の計上により利益剰余金が33億52百万円増加、また、為替換算調整勘定が24億92百万円増加したことなどによるものであります。

 この結果、1株当たりの純資産額は994円17銭(前年同期は960円6銭)となりました。また、自己資本比率は前連結会計年度末に比べて4.19ポイント上がり、53.81%となりました。

 

b.経営成績

 (売上高)

 当連結会計年度の売上高は、905億68百万円(前年同期8.0%比の増収)となりました。半導体不足やサプライチェーンの混乱による影響は緩和し、受注は緩やかに回復し、注力分野のパワートレイン・走行安全系向けの販売が増加し、車載向け売上高が増収となりました。

 (売上原価、販売費及び一般管理費、営業利益)

 売上原価は、762億9百万円(前年同期比7.0%の増加)となりました。

 売上総利益は、143億59百万円(前年同期比13.7%の増加)となり、売上総利益率は15.8%となりました。

 販売費及び一般管理費は、108億30百万円(前年同期比8.0%の増加)となりました。

 この結果、営業利益は35億29百万円(前年同期比35.5%の増益)となり、営業利益率は3.9%となりました。

 営業利益の増減要因につきましては、売上高の増加により7.6億円、歩留まり改善・生産性向上により1.5億円、為替変動については、主に米ドルに対するバーツ・人民元安の影響により5.3億円のプラスとなりました。また、売価、材料価格、その他の項目による影響で5.2億円のマイナスとなりました。

 

0102010_003.png

 

 四半期毎の売上高及び営業利益並びに営業利益率につきましては、前連結会計年度は、半導体等、部品不足の影響を受け、受注と生産が減少し、総じて利益が低調に推移いたしました。当連結会計年度においては、部品不足の影響は緩和し、受注は緩やかに回復したことで、第2四半期以降、国内外ともに生産工場の稼働率が向上いたしました。また、構造改革による生産効率化も寄与し、第3、第4四半期の営業利益率は6%を超えました。

0102010_004.png

 

 (経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益)

 経常利益は、47億95百万円(前年同期比82.8%の増益)となり、経常利益率は5.3%となりました。

 親会社株主に帰属する当期純利益は、38億55百万円(前年同期比142.7%の増益)となりました。

 1株当たりの当期純利益は64円21銭となりました。

 

 セグメントごとの経営成績等の詳細は「(1) 経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりです。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 当社グループは、CASE需要の高まりや、地政学リスクを背景としたサプライチェーン再構築などを追い風に、中長期需要が旺盛なことを受け、タイの新工場建設を進めております。これに伴い、当連結会計年度においては、新工場建設における設備投資、公募増資や借入金による資金調達を実施したことがキャッシュ・フローの主な増減要因となっております。

各キャッシュ・フローの状況の詳細につきましては、各キャッシュ・フローの状況の詳細につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。

 

 (資本の財源及び資金の流動性について)

a.資金調達の基本方針

 当社グループは、金融情勢の変化に機動的に対応しつつ、調達手段の多様化等を図ることで、資金コストの低減及び調達の安定性を高めることにより、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。

b.資金調達

 当社グループの資金調達は、短期運転資金については、営業活動により得られたキャッシュ・フロー及び金融機関からの短期借入を基本としております。長期的な資金については、設備投資計画や既存借入金の償還時期等を総合的に勘案し、金融機関からの長期借入及び社債によって流動性を維持しております。また、設備投資の一部はリース取引によっております。

 なお、当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は前期末比6億45百万円減少し、374億6百万円となりました。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は前期末比17億40百万円増加し、253億36百万円となりました。

 

c.流動性の確保

 当社グループは、流動性を確保するために取引金融機関5行と総額185億円の当座貸越契約及びコミットメントライン契約を締結しております。

 なお、当連結会計年度末の借入未実行残高は185億円となっており、資金の流動性は十分に確保されております。

 

当連結会計年度末の有利子負債の内訳は次のとおりであります。

(単位:百万円)

 

合計

返済・償還

1年以内

返済・償還

1年超

短期借入金

長期借入金

31,472

6,427

25,044

社債

5,765

2,492

3,273

リース債務

168

66

102

その他有利子負債

合計

37,406

8,986

28,420

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表はわが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成しております。その作成には経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

 連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

 

④ 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の達成・進捗状況

 当連結会計年度においては、売上高905億円、営業利益35億円、営業利益率3.9%、ROE6.0%となりました。期初の計画に対しては、注力分野のパワートレイン・走行安全系向けの販売が増加し、売上高が計画を達成すると共に、主に生産工場の稼働率が向上したことなどにより、営業利益及び営業利益率、ROEについても計画値を上回りました。

 当社グループ主力の車載市場においては、未だ不透明感は残るものの、自動車生産台数は緩やかに回復するものと見込んでおります。

 このような状況の中、当社グループは2023年11月開示の中期経営計画にて掲げた、車載成長戦略におけるCASE需要取り込みによる売上成長を実現すると共に、収益基盤及び経営基盤強化を図って参ります。

 次期の連結業績につきましては、売上高940億円、営業利益50億円、経常利益42億円、親会社株主に帰属する当期純利益35億円を予想しております。

 また、2026年3月期及び2027年3月期の中期経営計画における目標数値については、その実現に向けた活動を通じて、更なる企業価値向上に努めて参ります。なお、中期経営計画に関しては「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(2)中長期的な会社の経営戦略と対処すべき課題」にも記載してあります。

 

2024年3月期

2025年3月期

計画

実績

計画比

計画

売上高(億円)

850

905

55

940

営業利益(億円)

27

35

8

50

営業利益率(%)

3.2

3.9

0.7

5.3

ROE(%)

3.3

6.0

2.7

 

 

2026年3月期

2027年3月期

目標

目標

売上高(億円)

1,050

1,100

営業利益(億円)

80

95

営業利益率(%)

7.6

8.6

ROE(%)

9%超

 

5【経営上の重要な契約等】

(合弁事業契約)

契約会社名

相手方の名称

国名

契約品目

契約締結日

契約の内容

契約期間

提出会社

パナソニックデバイスマテリアル蘇州有限公司

中国

プリント配線板

2021年

5月14日

2社による希門凱電子(無錫)有限公司の合弁事業契約

2021年

5月15日から

30年間

 

6【研究開発活動】

 当連結会計年度における当社グループが支出した研究開発費の総額は691百万円であり、セグメントごとの研究開発活動を示すと次のとおりであります。

 

(1) 日本

 当連結会計年度の研究開発活動は、次世代モビリティ社会の実現とサスティナブルなものづくりを見据えた新技術開発に向けて幅広く取り組んでおります。グローバル市場での製品開発力を強化するべくマーケティング活動の推進と世界標準での製品開発手法の確立、顧客ニーズを捉えた高付加価値かつ高信頼性、そして脱炭素社会に向けた環境配慮技術、各種プリント配線板に関する研究開発を推進しております。

 当社グループの主力製品である車載市場では、自動運転を可能とするミリ波レーダーやADASカメラ、車載高速通信機器、統合型電子制御ECU、高出力デバイスモジュールなど、付加価値の高い製品を開発しており、ミリ波モジュール用基板では、高周波特性を向上させるための新素材・新規構造の量産を推し進めております。電動化に対しては、高発熱部品搭載による大電流化に対応する高放熱技術として導体厚膜化や高熱伝導樹脂材料の適用、一方で高度な自動運転制御を可能とするための高密度電子回路の両立が求められ、大電流回路と高密度配線を融合させる新技術を提案するなど本格化する電気自動車の市場ニーズを追求し、顧客志向型の幅広い研究開発を進めております。

 また、急速に進む業界市場のグローバル化において、外資系車載メーカーとの取引拡大に伴う製品規格のグローバルスタンダード化は必要不可欠であり、設計から製造、製品の品質保証に至るまで、世界標準規格への適合化を完遂しています。これらは深化するグローバリゼーションと激化する技術競争における足元を固めた基盤技術であります。

 さらには、次世代モビリティと目される空間移動への追従、新たな成長分野である航空宇宙関連の事業拡大のため、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の認定を取得しました。JAXAから認められた「当社製品の信頼性」と「ものづくり」をベースに、ニュースペースのスタートアップ企業など幅広く新製品を提案し、事業拡大を推進してまいります。

 当連結会計年度のマーケティング活動においては、国内4つの展示会と海外2つの展示会に出展し、市場ニーズを積極的に収集すると同時に、当社の最新技術を知っていただくためのプロモーション活動を展開しました。特に、海外出展では、欧米のメガTier-1メーカーやOEMメーカー、医療機器メーカーからの問い合わせを多く頂き、新たなビジネス機会が生まれると同時に、市場ニーズを収集し新たな開発テーマを創出することができました。

 

 第64期の新技術発表及び展示会出展の実績は以下の通りであります。

①2023年6月 COMNEXT2023<次世代通信技術&ソリューション展> 於東京

②2023年7月 TECHNO-FRONTIER 2023<電源システム展>

③2023年10月 第6回名古屋ネプコンジャパン<エレクトロニクス開発・実装展> 於名古屋

④2023年10月 Electronica South China 於中国・深圳

⑤2023年11月 Productronica<Trade Fair for Electronics Development and Production> 於ドイツ・ミュンヘン

⑥2024年1月 第39回ネプコンジャパン<エレクトロニクス開発・実装展> 於東京

 

 なお、当連結会計年度中に支出した研究開発費の金額は691百万円であります。

 

(2) 中国、東南アジア、欧米

 当社グループは研究開発部門を日本に集約しているため、該当事項はありません。