第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

(1)会社の経営の基本方針

 当社グループは、社是『発展と永続』のもと、2020年より基本理念及び経営方針を制定しております。また、『新たな社会・価値観に適応した「世界最高レベルの安全安心なプリント配線板」を供給し続けることにより、安全で快適な社会を実現する』ことを中長期ビジョンに掲げ、社会への貢献、幸福の追求、安全安心な製品の供給をすることで、ステークホルダーからの期待に応えるとともに、社員の幸せ・成長を実現することを目指しています。

<基本理念>

 私たちCMKグループは、社員の精神的・物質的幸福を追求すると共に、

 自覚と責任をもって安全安心な製品を製造販売し、

 存在価値を高め、社会の発展に貢献します

<経営方針>

 1.公明正大なものづくりを実践する

 2.環境の変化を先取りし、柔軟に対応できる活力のある職場をつくる

 3.拠点、部門、立場、国籍などの個人の属性にとらわれず、お互いを尊重し、

   よく考え、よく話し、理解を深め一致協力して利益をつくる

 4.品質向上を日課として歩留まり改善と品質保証体制の強化に努める

 5.生産工場の稼働率を高める

 6.資源を効率的に使うと共に、環境保全を推進する

 7.将来にわたりプリント配線板の開発製造販売を継続し、お客様と社会の役に立つ

 

(2)中長期的な会社の経営戦略と対処すべき課題

 今後の世界経済は、主要国の政策変更に伴う各国経済の減速懸念や、不安定な為替等、依然として先行き不透明な状況が続くものと予想されます。

 また自動車業界においても同様にその影響を受け、不透明な状況が続くと予想されますが、中長期的にはADAS(Advanced Driver-Assistance Systems(先進運転支援システム))、自動運転進化による制御複雑化に伴いECU(Electronic Control Unit(電子制御ユニット))の数も増加及び複雑化し、当社グループ主力の車載プリント配線板の需要は拡大するものと見込まれます。

 当社グループは2023年11月に中期経営計画を見直しました。主要顧客の中長期需要が強いことや、地政学リスク回避の流れを背景とした当社タイ工場に対するニーズの高まりを受けて、成長加速を実現する為にタイに新工場を建設し、2024年8月より信頼性評価の生産を開始、顧客承認活動を行って参りましたが、自動車の全体需要停滞に伴い、量産稼働につきましては、2025年10月から開始といたしました。

 足元厳しい事業環境は続いているものの、競争優位性のある車載製品への注力強化、車載製品ポートフォリオの更なる高付加価値シフト等の車載成長戦略は順調に推移しております。

 また、車載以外の新事業領域をもう一つの柱とすべく、技術力の強化を図っております。その中で、当社は2025年4月25日付けにて株式会社ダイワ工業が保有する「DPGA基板(Daiwa Process Global Advance(高放熱基板)」の特許に関する通常実施権許諾契約を締結いたしました。DPGA基板は放熱性、接続信頼性、軽量化が特徴の基板であり、本技術によって、今後のプリント配線板に求められる放熱ニーズに対応し、新事業領域における設計、企画提案の幅を広げ更なる拡販を推進し、中期経営計画の達成を目指して参ります。

 また、2050年のカーボンニュートラルへの対応として、「環境方針」をもとに、「中長期環境行動計画」を策定し、環境保全活動を推進する中で、各工場で設備更新などの電力削減、太陽光発電による再生可能エネルギー使用などの対応によるCO2排出量の削減を進めております。当社の中国工場においては、グリーン電力を導入しており、2026年度には全てグリーン電力化出来る見込みとなっております。

 さらに、気候変動緩和に向けた取り組みについては、CDPの「気候変動レポート2024」で2023年度に引き続きBスコアを取得しており、今後とも持続可能な社会の実現に向けた取り組みを積極的に推進して参ります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2025年6月25日)現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1) サステナビリティに関する取組

 当社グループは「新たな社会・価値観に適応した『世界最高レベルの安全安心なプリント配線板』を供給し続けることにより、安全で快適な社会を実現する」ことを中期経営計画の中長期ビジョンとして掲げております。また、2020年より、社員の精神的・物質的幸福を追求する取組を推進することを基本理念に明記する一方で、持続的な社会を実現するために「サステナビリティ基本方針」を制定しております。当社グループの社是である『発展と永続』の理念のもと、事業を通じて社会課題と真摯に向き合い、ESG(環境・社会・ガバナンス)経営に取り組んでおります。

 

① サステナビリティに関するガバナンス

 当社グループでは、代表取締役社長を委員長とするサステナビリティ推進委員会を設置し、気候変動及び環境問題等への対応をテーマとした環境課題分科会と人権デューデリジェンス、人的資本、CSR推進活動等への対応をテーマとした社会課題分科会により活動を推進しております。また、企業を取り巻く多様かつ複雑なリスクへの対応を強化するため、当社グループ全体での全社横断的なリスク管理体制を確立し、その網羅性、機動性、実効性を高めるため、2025年6月25日より、従前の内部統制委員会をリスクマネジメント委員会に改編・発展させることとしました。当該リスクマネジメント委員会は、社内取締役で構成され、コーポレート担当役員を責任者としております。

 なお、サステナビリティ推進委員会における議論の内容と結果、並びにグループ各社のサステナビリティに関する活動については、その重要性に鑑み、取締役会に対しても報告を行います。また、リスクマネジメント委員会における機会を含めた各種リスク管理に対する議論の内容と結果については、その重要性に鑑み、取締役会に対しても報告を行う他、当社の監査役又は監査役会に対しても報告を行い、連携を図ることとしております。

(スキルマトリクス)

 取締役に期待する役割・専門性・バックグラウンドについて、詳細は、「第4 コーポレートガバナンスの状況等 (2) 役員の状況」をご参照ください。

(サステナビリティ関連の組織体の開催回数及び議題)

組織体

開催回数(2024年度)

議題

取締役会

17回

安全衛生管理体制について

安全衛生推進活動について

内部統制体制の見直しについて

サステナビリティ推進委員会

1回

人権デューデリジェンスの促進計画について

人的資本の促進計画について

TCFD、CDPの対応について

リスクマネジメント委員会

(旧 内部統制委員会)

2回

コンプライアンスアンケートの結果について

安全衛生の対策について

ストレスチェック後の対応について

内部統制体制の見直しについて

社会課題分科会

4回

(スモールミーティング含む)

CSRアンケート結果について

サステナビリティ取り組み活動について

ホットラインの補強について

環境課題分科会

4回

エネルギー使用量及びCO2排出量について

カーボンニュートラルについて

省エネ・省資源促進計画について

廃棄物削減目標について

GHGスコープについて

全社環境活動について

 

 

② サステナビリティに関する戦略

 当社グループでは、社是『発展と永続』の精神をもとに、持続可能な社会の構築への貢献及び企業価値向上を図るため、「気候変動」「社会」「経営基盤」の3つの重点項目から、2021年12月にサステナビリティ基本方針を制定いたしました。

 

 サステナビリティ基本方針の内容は次のとおりです。

 <サステナビリティ基本方針>

CMKグループは創業以来、『発展と永続』を社是として掲げてきました。わたしたちは、新たな社会・価値観に適応した「世界最高レベルの安全安心なプリント配線板」の供給を通じて、社会やステークホルダーの皆様の期待にお応えすることにより、持続可能な社会の実現と、企業価値の向上に努めます。

 

1. 脱炭素の達成に向けて、事業活動における環境負荷軽減に努めます。(気候変動)

2. 安全安心な製品の提供により、世の中に価値を提供し、持続可能な社会の実現に貢献します。(社会)

3. コンプライアンスを重視し、経営の健全性と透明性を高めます。(経営基盤)

 

重点項目

具体的内容

気候変動

■環境負荷物質削減

■資源有効活用

■脱炭素社会の実現を目指したエネルギー問題への対応

社会

■事業を通じた安全への貢献

■安心安全な製品の提供(お客様への価値提供)

■人権の尊重

■従業員の健康と安全の確保

■人財活躍推進(多様性推進)

経営基盤

■コンプライアンス

■内部統制、リスクマネジメント強化

■サプライチェーンマネジメント

■人材育成

 

③ サステナビリティに関するリスク管理

 当社グループでは、コーポレート担当役員を責任者とする内部統制委員会を設置し、「気候変動」「社会」の項目についてはサステナビリティ推進委員会が、「経営基盤」の項目については内部統制委員会が全社一元的なリスク管理を行っておりましたが、2025年6月25日より、内部統制委員会をリスクマネジメント委員会に改編・発展させ、「経営基盤」において全社一元的なリスク管理とすることとしております。なお、当社グループのリスクの対応方針や課題について、優先度を選別・評価し、意思決定を図っております。

 

④ サステナビリティに関する指標及び目標

 当社グループは、「気候変動」「社会」において取り組むべき具体的な指標を設定しております。具体的な指標は、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (3) TCFD提言に基づく情報開示 ④指標及び目標」及び「第2事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2) 人的資本、多様性に関する開示 ④ 指標及び目標」をご参照ください。

 

(2) 人的資本、多様性に関する開示

① ガバナンス

 人的資本・多様性に関するガバナンスは、サステナビリティ全般に含めて管理しております。詳細は、「第2

事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (1) サステナビリティに関する取組 ① サステナビリティに関するガバナンス」をご参照ください。

 

② 戦略

 当社グループでは、社是『発展と永続』を成し遂げるため、2002年に「CMKグループ行動宣言」を制定し、2022年に改定いたしました。その中で、人材育成は、人材育成方針に沿った取組を進めるとともに、社員の採用活動や人事考課、管理職への登用において人材の多様性を尊重し、公平公正な制度の運営に努めております。

 また、社員の安全と健康の確保は、個人のワークライフバランスが一層充実し、全社員が長期にわたって意欲的に働くことができるよう安全衛生方針に基づいた社内環境の整備を進めております。

 CMKグループ行動宣言、人材育成方針及び安全衛生方針の内容は次のとおりです。

<CMKグループ行動宣言(要旨抜粋)>

お客様とともに    CMKグループは、安心安全な製品・サービスの提供を通じてお客様から選ばれ続ける

           よう努めます。

株主・投資家とともに CMKグループは、適切で積極的なコミュニケーションを通じて株主・投資家のご理解

           を得られるよう努めます。

取引先とともに    CMKグループは、公平・公正な取引を通じて取引先と良きパートナーシップを構築で

           きるよう努めます。

従業員とともに    CMKグループは、一人ひとりが自分らしくいきいきと働くことのできる環境づくりに

           努めます。

社会とともに     CMKグループは、企業活動を通じて持続可能な社会の実現に貢献します。

 

<人材育成方針>

1. 多様性や人権を尊重し、従業員一人ひとりが働きがいを感じられる職場環境を整備します。

2.従業員一人ひとりの可能性を最大限に引き出すため、能力開発及びキャリアアップの機会を公平に提供

   します。

3.環境等の変化に応じた適材適所の人材配置・異動を通じ、多様な従業員の活躍を推進します。

4.公正な人事評価を実現し、フィードバックを通じて従業員の育成につなげます。

5.従業員が自主的にキャリアを築きながら、持続的に成長できる人事制度を整備します。

 

<安全衛生方針>

1. 安全を何よりも優先し、企業活動のすべてのプロセスにおいて安全衛生活動を進めます。

2.安全衛生関係法令を遵守します。

3.従業員とのコミュニケーションを図り、職場における安全衛生の継続的な改善に努めます。

4.安全衛生教育を充実させ、安全安心に働くための意識向上を図ります。

5.従業員の労働災害防止及び疾病の予防、心身の健康増進に取り組みます。

6.地域社会や取引先と連携した安全衛生活動を進め、信頼関係を構築します。

 

 当社グループでは、サステナビリティ基本方針、CMKグループ行動宣言及び上記方針を軸に、中長期ビジョン「[働きやすさ]+[働きがい]会社と社員がともに成長する企業に向けて」を2025年度より策定し、その方向性に沿って5つの観点から各種人事施策を展開して参ります。

 

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③ リスク管理

 人的資本・多様性に関するリスク管理は、サステナビリティ全般に含めて管理しております。詳細は、「第2

事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (1) サステナビリティに関する取組 ③ サステナビリティに関するリスク管理」をご参照ください。

 

④ 指標及び目標

 当社では、上記戦略に掲げた方針について、以下の指標を用いております。当該指標に対する目標及び実績は、次のとおりであります。

 なお、2025年度以降は中長期ビジョン「[働きやすさ]+[働きがい]会社と社員がともに成長する企業に向けて」に基づき、施策を展開して参ります。当該ビジョンは、現在の取組との方向性を継承しつつ、より一層の組織成長と社員の働きがいの実現を目指すものです。

 

区分

項目(注)1

2024年度実績

2028年度目標

人材育成

通信教育受講率

22.75(延べ290名)

23.00

人材育成

要員管理

多能工人材の育成

(累計)

(注)2

多能工育成:122

多能工育成:282

人材育成

公的資格者取得人数

40

43

要員管理

女性管理職者比率

4.59

5.00

(注)3

要員管理

障がい者の雇用率

3.36

3.00%以上を維持

要員管理

技能実習生の

採用人数

10

10

福利厚生

有給休暇平均

取得日数

12.0

14.0

福利厚生

要員管理

男性労働者の

育児休業取得率

(注)4

75.0

100.0

職場環境

ストレスチェックの

受検率

98.3

98.0

職場環境

労働災害件数

(重大労働災害)

(注)5

1

0

適正処遇

成果や評価に対する納得感

(注)6

58.0

70.0

(注)1.当社においては関連する指標のデータ管理及び具体的な取り組みが行われているものの、現時点で当社グループに属するすべての会社が上記取り組み、また、データ管理を実施しているものではないため、当社グループにおける記載が困難であることから、指標に関する目標及び実績は、当社のものを記載しております。

2.当社では、従業員一人ひとりの可能性を最大限に引き出すため、製造部門に従事する社員が複数の製造工程・技能を習得するための教育・実習カリキュラムを実施しております。多能工化を推進することで、技能向上による人材の底上げと組織力の強化を図って参ります。

3.一般事業主行動計画では、電子部品等産業の平均以上の水準を目標としており、2024年度における電子部品等産業の平均は3.6%となっております。

4.「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の6第1号における育児休業等の取得割合を算出したものであります。

5.本指標については、当社単体に加え、当社グループの海外拠点従業員に関するデータも含まれております。なお、海外拠点を含めたデータを用いているのは本指標のみであり、他指標については、当社単体の実績を記載しております。

6.当社では、従業員からの忌憚のない回答を得られるよう匿名によるアンケートを年1回継続して実施しております。2024年度はエンゲージメントについて計19項目を設定し、成果や評価に対する納得感に関する項目を抽出しております。

 

(3) TCFD提言に基づく情報開示

① ガバナンス

 取締役会による監視体制

 取締役会は、気候変動を含むリスク・機会や対応策について、定期的にサステナビリティ推進委員会からこれらに関する報告を受け、重要方針について審議・決定するなどの監督責任があります。また年度計画、予算の審議及び決定時にはこれらのリスク・機会を考慮します。取締役会は気候関連の指標と目標の進捗を監督し、必要な場合は対策を審議・決定します。

 気候関連のリスクと機会を評価・管理するうえでの経営の役割

 ESGに関わるリスク・機会については気候変動も含め、評価・管理する組織として代表取締役社長を委員長、コーポレート担当役員(旧CSR担当役員)を副委員長、その他社内取締役で構成するサステナビリティ推進委員会を設置しています。サステナビリティ推進委員会は、気候変動のリスク・機会や指標と目標に対しての進捗について確認し、重要課題を特定し対応策を取締役会に報告します。

 

② 戦略

 当社グループは、気候関連のリスク及び機会を踏まえた戦略策定と組織のレジリエンス向上のため、IEA(国際エネルギー機関)やIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の気候変動シナリオを参照し、2050年までの長期的影響について定性的・定量的なシナリオ分析を実施しました。

 中長期的には、内燃機関自動車の生産が減少し、EVやFCVへの移行が一層進むことが予想されます。これらの需要動向に応じた製品仕様の変化を的確に把握し、製品開発を推進して参ります。

 財務面では、温暖化対策税(炭素税)が石油・ガス等の購入価格に上乗せされる形で既に影響を及ぼしています。今後もエネルギーコストの上昇が見込まれることから、エネルギー消費量の可視化を進めるとともに、省エネ設備の導入や高効率な設備への更新、省エネを考慮した生産設備の増床を推進して参ります。

 さらに、計画的に再生可能エネルギーを導入し、脱炭素化及び財務的影響の緩和に取り組んで参ります。CO₂削減にあたっては、自社のみならずサプライチェーン全体での排出量の把握・削減が重要との認識のもと、Scope1・2・3のデータ取得を継続的に進めています。

 また、物理的リスクへの対応としては、サプライチェーンにおける調達先のBCP(事業継続計画)を策定済みです。自社工場に関する物理的リスクは現時点で大きな影響は想定しておりませんが、今後も継続的な分析を行う予定です。

 

③ リスク管理

 リスク管理体制

 当社は、サステナビリティ推進委員会の下部組織として、環境推進部長を分科会長、各拠点の責任者を委員とする「環境課題分科会」を設置し、気候変動に関する検討を行っています。

 リスク識別・評価のプロセス

 環境課題分科会は、関係部門と連携し、気候変動に関するリスク及び機会の識別・評価を実施しています。

リスク管理のプロセス

 環境課題分科会では、気候関連リスクの管理プロセスとして、リスクの分析、対策の立案・推進、進捗管理を継続的に実施しています。また、リスク・機会の発生可能性と影響度を評価し、課題の優先順位付けを行っています。特に重要なリスクやその対応策については、上位組織であるサステナビリティ推進委員会に報告・共有され、同委員会において評価の妥当性を確認した上で、取締役会へ定期的に報告しています。

 組織全体のリスク管理への統合状況

 当社は、経営方針及びサステナビリティ基本方針に基づき、横断的なリスク管理体制を整備し、全社的なリスクマネジメントの強化に取り組んでいます。

 

リスク評価

<気候変動に関する主なリスクと機会及び対応(車載用製品事業を中心に評価)>

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④ 指標及び目標

 当社グループは、2022年に中長期環境行動計画として「Smart e-changes 30 plus」を策定し、環境への取り組みを推進して参りました。さらに、カーボンニュートラルの実現をより強力に推進するため、2023年からは新たに「Smart e-changes NetZero」へと方針を改定し、活動を展開しています。

 CO₂排出量を2030年度までに2013年度比46%削減、及び2050年までにカーボンニュートラル、当社グループでのエネルギー使用量を前年と比較して原単位で1.5%の削減を目標に掲げております。

 

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(「Smart e-changes 30 plus」の概要)

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3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況に関する事項のうち、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性のあるリスクには以下のようなものがあり、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項と考えております。

 なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2025年6月25日)現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経済環境に関するリスク

① 為替相場の変動に関するリスク

<発生可能性:高、発生可能性のある時期:1年以内、影響度:大>

 当社グループは日本・中国・東南アジア・欧米に事業展開しており、円・米ドル・ユーロ・人民元・タイバーツ等の為替相場の変動は当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 このような為替変動リスクに対応するため、当社グループでは必要に応じた為替予約の活用や外貨建て金銭債権・債務の通貨バランス調整を実施しております。

 具体的には、回収したドル建て等外貨建て債権を円に換算せずにそのままドル建て等外貨建て債務の支払いに充当することで、円転による換算差損益発生の機会を回避致します。また、計画的な外貨建てによる貸付及び借入のバランス調整や海外子会社とのクロスボーダープーリング体制の構築等を通じて、為替リスクの低減に努めております。

② 金利の上昇に関するリスク

<発生可能性:高、発生可能性のある時期:1年以内、影響度:中>

 当社グループは生産能力増強、生産効率化及び品質向上等を目的とした設備投資等のための資金調達について、借入金等の有利子負債を調達手段の一つとしております。金利の上昇は資金調達コストの上昇につながり、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは金融情勢の変化に機動的に対応しつつ、調達手段の多様化等を図ることで資金コストの低減及び調達の安定性を高めております。また金利変動リスクを回避することを目的として金利スワップ取引を実施しております。

 

(2) 事業環境に関するリスク

① 車載市場に関するリスク

<発生可能性:中、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大>

 当社グループは車載市場を主力としており、その業績は自動車業界の動向の影響を受けます。各国の通商政策動向による自動車販売の低迷及び世界的な景気の後退や自動車生産に必要な素材、半導体等の各種部品の供給不足による生産台数の減少等が発生した場合は、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。FA・産機、通信・基地局、半導体製造・検査機器、防衛・航空宇宙、鉄道、医療などの新事業領域の更なる拡販を推進し、収益基盤の強化を図って参ります。

② 原材料等の調達に関するリスク

<発生可能性:中、発生可能性のある時期:1年以内、影響度:中>

 世界的な原油価格や素材価格の変動は、当社グループが供給を受ける材料価格に影響を与える可能性があります。また、材料供給元のサプライヤーにおいて生産不足、もしくは不慮の事故等により材料供給の不足が発生した場合には、当社グループの生産遅延・生産停止を招き、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 原材料価格の上昇については販売先への交渉により適正に販売価格へ転嫁するよう努めております。また材料供給元のサプライヤーとは基本取引契約を締結して安定的な取引を行うとともに、複数の供給先から調達することで材料供給の安定化を図っております。

③ 海外事業展開に関するリスク

<発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大>

 当社グループは国内外に事業展開しておりますが、海外市場への事業展開については、以下に挙げるようなリスクが内在しております。

a 政治、経済の混乱及び紛争

b 電力停止などの社会インフラの機能不全

c 予期しない法令又は規制の変更

 これらのリスクが顕在化した場合には、安定的な製品供給ができなくなるなど、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 事業展開先に係る政治・経済や社会情勢、法律や規制の動向について、海外子会社と連携し、情報収集に努めており、状況に応じた対応を行って参ります。

④ 製品の陳腐化に関するリスク

<発生可能性:中、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中>

 当社グループの属するプリント配線板業界は、非常に厳しい競争環境下にあるため、市場や顧客ニーズの変化を捉えられない場合には、競争力が低下し、シェアを失うこととなり、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは市場競争力の維持、強化を図るために、継続的な研究開発活動による新製品・新技術の開発を行っております。当社グループの研究開発活動については、将来の市場、製品及び技術動向の予測に基づいてテーマ選定を行い、取り組んでおります。

⑤ 知的財産権に関するリスク

<発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中>

 当社グループにとって知的財産は重要な経営資源の一つであると認識しております。しかし、当社グループの知的財産権が第三者により無効とされること、特定地域での十分な保護が得られないことや知的財産権の対象が模倣されることによって、本来得るべき利益を失う可能性があります。また、一方で当社グループが第三者の知的財産権を侵害しているとされ、それにより訴訟を提起された場合には、訴訟に関する費用や損害賠償が発生し、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは知的財産の管理に関し、特許等管理規程を設け、専門部署により適切な管理を行い、知的財産の保全に努めております。

⑥ 人材確保に関するリスク

<発生可能性:中、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大>

 当社グループの継続的な成長には優秀な人材を確保し、育成することが重要であると認識しております。しかしながら、人材採用環境の著しい悪化や人材流出が増加した場合は、人材確保が予定通りに進まず、当社グループの将来の成長に影響を及ぼす可能性があります。

 人材の流出を防ぐため、当社グループは公正な評価、成果に応じた給与体系を維持し、やりがいのある人事制度を導入しております。また、福利厚生、介護・育児のための時短、フレックスタイム制、在宅勤務など、働きやすい環境も整備しております。

 人材育成については、役職階層別・部門別教育のほか、コンプライアンスやハラスメント教育、国際化教育、自己啓発支援等、体系的に実施しております。また、多能工人材の育成として、製造部門に従事する従業員が複数の製造工程・技能を習得するための教育・実習カリキュラムを実施しております。多能工化を推進することで、技能向上による人材の底上げと組織力の強化を図って参ります。

 

(3) その他のリスク

① 情報セキュリティに関するリスク

<発生可能性:高、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大>

 当社グループは事業活動において入手した、個人情報、営業情報、技術情報等の機密情報を保有しております。IT機器紛失やサイバー攻撃等による不正アクセスやデータの改ざん、破壊、漏洩等があった場合には、重要な業務の停止、当社グループの社会的信用の低下や損害賠償責任の発生により、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 情報資産の強固な保護と適切な共有・活用のため、「情報セキュリティ方針」「情報セキュリティ管理規程」を制定し、個人情報については「個人情報保護方針」「個人情報保護管理規程」「特定個人情報取扱規程」を制定し、これら方針・規程類を遵守しております。

 万が一のIT機器紛失やサイバー攻撃による情報漏洩に備え、端末へのウイルス対策ソフト導入やパソコンのハードディスク暗号化、USBメモリなど外部記憶装置の原則禁止など、システム的な対策を講じております。

 また、従業員に対し、サイバー攻撃の手口や不審メールの見分け方、感染が疑われる場合の対応を定期的に発信し、セキュリティ意識向上を図っております。

② 地震等自然災害・大規模な感染症拡大に関するリスク

<発生可能性:中、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大>

 地震等の自然災害の発生により、当社グループの事業拠点が損害を受ける可能性があります。当社グループは日本、中国及びタイに生産工場を有しており、大規模な地震等の自然災害が発生した場合、工場施設の損害、操業の停止、復旧費用などにより、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 当社内に担当組織である安全衛生推進課を設け、地震事象、火災事象、サイバー攻撃、サプライチェーンの停止等に対する各種BCP(事業継続計画)を策定しております。また、各拠点によるBCP演習を定期的に実施継続しております。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

a.財政状態

 流動資産は、当連結会計年度末で623億82百万円(対前年同期比4.3%減少)となりました。これは、主にタイ新工場の設備投資により現金及び預金が31億42百万円減少したことによるものであります。

 固定資産は、当連結会計年度末で861億31百万円(対前年同期比29.8%増加)となりました。これは、タイ新工場と中国の工場への設備投資により有形固定資産が182億18百万円増加したことによるものであります。

 この結果、総資産は、前連結会計年度末に比べて12.9%増加し、1,485億40百万円となりました。

 負債合計は、当連結会計年度末で671億12百万円(対前年同期比14.3%増加)となりました。これは、主に工場設備投資の資金調達として短期借入金が60億円及び長期借入金が32億50百万円それぞれ増加し、1年内償還予定の社債が17億19百万円減少したことによるものであります。

 純資産合計は、当連結会計年度末で814億28百万円(対前年同期比11.7%増加)となりました。これは、主に親会社株主に帰属する当期純利益の計上により利益剰余金が24億36百万円増加、また、為替換算調整勘定が58億27百万円増加したことなどによるものであります。

 

b.経営成績

 当連結会計年度における我が国経済は、景気は緩やかな回復基調で推移しましたが、海外の景気後退懸念、継続的な物価上昇や為替変動などを注視する必要があり、先行き不透明な状況が続いております。世界経済においても、地政学リスクに加えて、中国及び欧州経済の停滞、各国の通商政策動向による世界経済の悪化懸念など、依然として先行き不透明な状況が続いております。

 このような環境のもと、当社グループ主力の車載分野においては、各国の自動車需要回復が鈍いことなどにより、受注は未だ低調に推移しております。

 当社グループは、注力分野の走行安全系向けの販売が順調に推移したことや為替影響などにより、連結売上高は954億86百万円(前年同期比5.4%の増収)となりました。

 利益面につきましては、売上高増加の影響に加え、生産工場の稼働率は低調に推移しているものの、生産性向上や為替影響などにより、営業利益は38億7百万円(前年同期比7.9%の増益)となりました。

 経常利益は、営業利益の増加や円が対米ドル及びタイバーツで通貨安に推移したことなどによる為替差益19億57百万円を計上したため、55億33百万円(前年同期比15.4%の増益)、親会社株主に帰属する当期純利益は、37億89百万円(前年同期比1.7%の減益)となりました。

 

 

 セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。

 (日本)

 国内の自動車販売台数は減少し、台数ベースでは低調に推移したものの国内販売に含まれる外貨建売上による為替影響などにより、売上高は568億21百万円(前年同期比2.5%の増収)となりました。

 利益面では、売上高の増加に加え生産においてビルドアップ基板(高付加価値基板)の増加や生産性向上などにより、セグメント利益は22億11百万円(前年同期比38.6%の増益)となりました。

 (中国)

 日系自動車メーカーの中国における販売不振があったものの、その他自動車メーカーへの販売が増加したことや、為替影響などにより、売上高は187億86百万円(前年同期比1.4%の増収)となりました。

 利益面では、下期に生産設備の合理化を目的とした設備投資を行った影響により、セグメント利益は15億74百万円(前年同期比15.8%の減益)となりました。

 (東南アジア)

 外資向け基板の販売増加やビルドアップ基板(高付加価値基板)の構成比の上昇及び為替影響などにより、売上高は155億87百万円(前年同期比28.2%の増収)となりました。

 利益面では、売上高の増加の影響に加え、タイバーツが対米ドルで通貨安に推移したことやビルドアップ基板(高付加価値基板)の生産増加により、セグメント利益は8億67百万円(前年同期比12.9%の増益)となりました。

 タイ新工場(「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(1)経営成績等の状況の概要 a.財政状態」で記載)は稼働開始が2026年3月期になる為、当期の損益貢献はありません。(現在は建設仮勘定に計上)

 (欧米)

 欧州の自動車販売台数が減少した影響及びエアコン需要の一巡による受注減により、売上高は42億90百万円(前年同期比3.9%の減収)となりました。セグメント利益は2億37百万円(前年同期比26.7%の減益)となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度末に比べて31億42百万円減少し、221億93百万円となりました。

 当社はCASE需要の高まりや、地政学リスクを背景としたサプライチェーン再構築などを追い風に、中長期需要が旺盛なことを受け、タイ新工場の建設を進めております。需要を取り込みによる売上成長を図り、企業価値の向上に努めております。

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 (営業活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度における営業活動による資金の増加は、90億58百万円(前連結会計年度は94億40百万円の増加)となりました。これは、主に税金等調整前当期純利益53億47百万円、減価償却費59億18百万円などによる資金の増加によるものであります。

 (投資活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度における投資活動による資金の減少は、187億50百万円(前連結会計年度は142億10百万円の減少)となりました。これは、タイ新工場と中国の工場の設備投資による有形固定資産の取得による支出182億66百万円によるものであります。

 (財務活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度における財務活動による資金の増加は、47億4百万円(前連結会計年度は53億79百万円の増加)となりました。これは、主に工場設備投資資金としての長期借入れによる収入86億40百万円による資金の増加によるものであり、社債の償還による支出24億92百万円と配当金の支払いによる支出13億50百万円による資金の減少によるものであります。

 

 

③ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

生産高(百万円)

前年同期比(%)

日本

31,100

3.8

中国

26,430

△15.6

東南アジア

37,752

29.3

欧米

-

-

合計

95,283

5.3

(注)1.金額は、販売価格によっております。

2.セグメント間取引については、相殺消去しております。

 

b.受注実績

 当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前年同期比(%)

受注残高(百万円)

前年同期比(%)

日本

57,207

3.6

11,062

3.6

中国

18,708

△2.2

3,863

△2.0

東南アジア

15,970

29.4

2,914

15.1

欧米

4,159

△7.3

1,644

△7.4

合計

96,045

5.3

19,484

3.0

(注)セグメント間取引については、相殺消去しております。

 

c.販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

販売高(百万円)

前年同期比(%)

日本

56,821

2.5

中国

18,786

1.4

東南アジア

15,587

28.2

欧米

4,290

△3.9

合計

95,486

5.4

 (注)1.セグメント間取引については、相殺消去しております。

2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

販売高(百万円)

割合(%)

販売高(百万円)

割合(%)

株式会社デンソー

30,072

33.2

31,185

32.7

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.財政状態

 (資産の部)

 当連結会計年度末における総資産は1,485億40百万円(前年同期比12.9%の増加)となりました。流動資産は623億82百万円(前年同期比4.3%の減少)、固定資産は861億31百万円(前年同期比29.8%の増加)、繰延資産は27百万円(前年同期比30.3%の減少)となりました。

 流動資産の減少の主な要因は、これは、主にタイ新工場の設備投資により現金及び預金が31億42百万円減少したことによるものであります。

 固定資産の増加の主な要因は、タイ新工場と中国の工場への設備投資により有形固定資産が182億18百万円増加したことによるものであります。

 (負債の部)

 当連結会計年度末の負債合計は671億12百万円(前年同期比14.3%の増加)となりました。流動負債は336億86百万円(前年同期比18.2%の増加)、固定負債は334億25百万円(前年同期比10.7%の増加)となりました。

 これは、主に工場設備投資の資金調達として短期借入金が60億円及び長期借入金が32億50万円それぞれ増加し、1年内償還予定の社債が17億19百万円減少したことによるものであります。

 (純資産の部)

 当連結会計年度末の純資産合計は814億28百万円(前年同期比11.7%の増加)となりました。

 純資産合計の増加の主な要因は、これは、主に親会社株主に帰属する当期純利益の計上により利益剰余金が24億36百万円増加、また、為替換算調整勘定が58億27百万円増加したことなどによるものであります。

 この結果、1株当たりの純資産額は1,110円31銭(前年同期は994円17銭)となりました。また、自己資本比率は前連結会計年度末に比べて0.55ポイント下がり、53.26%となりました。

 

b.経営成績

 (売上高)

 当連結会計年度の売上高は、954億86百万円(前年同期5.4%比の増収)となりました。半導体不足やサプライチェーンの混乱による影響は緩和し、受注は緩やかに回復し、注力分野のパワートレイン・走行安全系向けの販売が増加し、車載向け売上高が増収となりました。

 (売上原価、販売費及び一般管理費、営業利益)

 売上原価は799億18百万円(前年同期比4.9%の増加)となりました。

 売上総利益は、155億68百万円(前年同期比8.4%の増加)となり、売上総利益率は16.3%となりました。販売費及び一般管理費は、システム更新などの効率化施策を実施したことなどにより117億60百万円(前年同期比8.6%の増加)となりました。

 当社国内工場においては、労働力人口の減少や急激な市場変動といった経営環境の変化に対応するため、生産現場における多能工化の推進を図っております。

 この取り組みにより、人的資源の更なる活用、工程間の稼働バランスの最適化、生産品の整流化、ならびに設備稼働率の向上が実現しており、全社的な生産性の向上に寄与しております。

 また、多能工教育を通じて現場従業員の工程全体に対する理解が深まり、品質意識の醸成及び不良率の低減にもつながっております。

 当社海外工場においては、中国地区でのローカルマネジメントの推進による合理化促進及び不良率削減、製品サイズの大判化による生産性向上、東南アジア地区での新工場稼働準備費用の抑制を図ってまいりました。

 これらの結果、各工場の稼働率は低調に推移したものの、営業利益は38億7百万円(前年同期比7.9%の増益)となり、営業利益率は4.0%となりました。

 営業利益の増減要因につきましては、売上高の増加により10億90百万円、歩留り改善・生産性向上により2億円、為替変動については、主に米ドルに対するバーツ・人民元安の影響により2億70百万円のプラスとなりました。また、売価、材料価格、その他の項目による影響で12億80百万円のマイナスとなりました。

 

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 (経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益)

 経常利益は、55億33百万円(前年同期比15.4%の増益)となり、経常利益率は5.8%となりました。

 親会社株主に帰属する当期純利益は、37億89百万円(前年同期比1.7%の減益)となりました。

 1株当たりの当期純利益は53円19銭となりました。

 

 セグメントごとの経営成績等の詳細は「(1) 経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりです。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 当社グループは、CASE需要の高まりや、地政学リスクを背景としたサプライチェーン再構築などを追い風に、中長期需要が旺盛なことを受け、タイの新工場建設を進めております。これに伴い、当連結会計年度においては、新工場建設における設備投資、公募増資や借入金による資金調達を実施したことがキャッシュ・フローの主な増減要因となっております。

 各キャッシュ・フローの状況の詳細につきましては、各キャッシュ・フローの状況の詳細につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。

 

 (資本の財源及び資金の流動性について)

a.資金調達の基本方針

 当社グループは、金融情勢の変化に機動的に対応しつつ、調達手段の多様化等を図ることで、資金コストの低減及び調達の安定性を高めることにより、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。

 

b.資金調達

 当社グループの資金調達は、短期運転資金については、営業活動により得られたキャッシュ・フロー及び金融機関からの短期借入を基本としております。長期的な資金については、設備投資計画や既存借入金の償還時期等を総合的に勘案し、金融機関からの長期借入及び社債によって流動性を維持しております。また、設備投資の一部はリース取引によっております。

 なお、当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は前期末比68億29百万円減少し、442億35百万円となりました。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は前期末比31億42百万円減少し、221億93百万円となりました。

 

c.流動性の確保

 当社グループは、流動性を確保するために取引金融機関5行と総額237億円の当座貸越契約及びコミットメントライン契約を締結しております。

 なお、当連結会計年度末の借入未実行残高は177億円となっており、資金の流動性は十分に確保されております。

 

 

 当連結会計年度末の有利子負債の内訳は次のとおりであります。

(単位:百万円)

 

合計

返済・償還

1年以内

返済・償還

1年超

短期借入金

6,000

6,000

長期借入金

34,344

6,049

28,295

社債

3,773

773

3,000

リース債務

118

59

58

その他有利子負債

合計

44,235

12,882

31,353

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表はわが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成しております。その作成には経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

 連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

④ 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の達成・進捗状況

 当連結会計年度においては、売上954億円、営業利益38億円、営業利益率4.0%となりました。

 期初の計画に対しては、売上高につきましては、当社グループ主力の車載市場において、日本の車両認証問題等を背景とした自動車生産台数の伸び悩みや、中国経済の減速などの景気停滞によるアジアや欧州における自動車需要回復が鈍いことなどにより、受注は低調に推移したものの、注力分野の走行安全系向けの販売が増加し、売上高は計画を達成いたしました。

 営業利益につきましては、受注減少に伴い、生産工場の稼働が低調に推移したことなどにより、計画値を下回りました。

 当社グループ主力の車載市場においては、米国の関税政策の影響による景気後退及び自動車需要の低下懸念など、先行き不透明な状況であります。

 このような事業環境に対応するため、販売面におきましては、車載向け高付加価値品の更なる受注加速や新規顧客の獲得、車載以外の新事業領域の拡販推進、利益面におきましては、タイ新工場の量産稼働による利益創出、また生産工場の自動化、大判化生産による収益性向上を図って参ります。

 翌連結会計年度の連結業績につきましては、売上高960億円、営業利益40億円、経常利益34億円、親会社株主に帰属する当期純利益20億円を予想しております。

 

 

2025年3月期

2026年3月期

計画

実績

計画比

計画

売上高(億円)

940

954

14

960

営業利益(億円)

50

38

△12

40

営業利益率(%)

5.3

4.0

△1.3

4.2

 

5【重要な契約等】

(合弁事業契約)

契約会社名

相手方の名称

国名

契約品目

契約締結日

契約の内容

契約期間

提出会社

パナソニックデバイスマテリアル蘇州有限公司

中国

プリント配線板

2021年

5月14日

2社による希門凱電子(無錫)有限公司の合弁事業契約

2021年

5月15日から

30年間

 

(財務上の特約が付された金銭消費貸借契約)

 当社は、財務制限条項付きの金銭消費貸借契約を締結し借入を実行しており、また、当社の連結子会社であるCMK CORPORATION(THAILAND)CO.,LTD.及び当社は、それぞれ借入人及び保証人として、保証人に対する財務制限条項付きの金銭消費貸借契約を締結し、借入を実行しておりますが、「企業内容等の開示に関する内閣府令及び特定有価証券の内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」(令和5年12月22日内閣府令第81号)附則第3条第4項の規定により、記載を省略しております。

 

6【研究開発活動】

 当連結会計年度における当社グループが支出した研究開発費の総額は554百万円であり、セグメントごとの研究開発活動を示すと次のとおりであります。

 

(1) 日本

 当連結会計年度の研究開発活動は、次世代モビリティ社会の進展とカーボンニュートラル社会の実現に向けた技術革新を主軸とし、環境性能と信頼性を両立したプリント配線板の開発に取り組んでおります。グローバル市場での競争力強化を目指し、世界標準に準拠した開発体制の構築に加え、顧客ニーズを的確に捉えた高付加価値製品の創出、脱炭素社会を見据えた環境対応技術の開発を推進しております。

 当社グループの主力市場である自動車分野では、EV化と自動運転技術の高度化に対応する製品開発を強化しており、ミリ波レーダー、ADAS用センサ、車載高速通信機器、パワーエレクトロニクス用制御モジュールなどに用いられる基板技術の高度化を図っております。特に、ミリ波モジュール用基板においては、高周波特性と寸法安定性を両立した新材料・新構造の開発を進め、量産技術として確立を図っております。さらに、大電流回路に対応する厚銅配線や高放熱材料の適用、高密度配線の両立といった複合技術の開発により、EVの高出力化と制御回路の高機能化に貢献する製品提案を強化しております。

 加えて、海外自動車メーカーとの取引拡大を見据え、設計・製造・品質保証の各プロセスにおいて国際規格への完全準拠を図るとともに、製品開発初期段階からのグローバル共同開発体制を構築し、技術競争力のさらなる強化を進めております。

 また、次世代モビリティとして注目される空飛ぶクルマや低軌道衛星など、新たな成長分野である航空宇宙関連市場への展開を加速させるべく、宇宙航空研究開発機構(JAXA)認定のもと、高信頼・高耐環境基板の開発と供給体制の構築を推進しております。とりわけ、ニュースペース関連のスタートアップ企業との連携を深めることで、急拡大する宇宙ビジネス市場に対して独自技術を活かした製品開発を展開しております。

 当期のマーケティング活動では、国内3つの展示会と海外2つの展示会に出展し、車載・医療・通信・航空宇宙など多様な分野における顧客との技術対話を通じて、市場ニーズの深掘りと新規開発テーマの創出につなげております。特に、海外展示会においては欧米大手Tier-1メーカーや医療機器・宇宙関連企業からの引き合いが増加し、グローバルでの新規案件獲得や共同開発の機会が広がっております。

 

第65期の新技術発表及び展示会出展の実績は以下の通りです。

①2024年6月 COMNEXT2024 第2回[次世代]通信技術&ソリューション展 於東京

②2024年7月 TECHNO-FRONTIER 2024 <電源システム展> 於東京

③2024年11月 Electronica2024 <World’s leading trade fair and conference for electronics> 於ドイツ・ミュンヘン

④2025年1月 第39回 ネプコン ジャパン2025 エレクトロニクス製造・実装展 於東京

⑤2025年3月 IPC APEX EXPO 2025 於アメリカ・アナハイム

 

なお、当連結会計年度中に支出した研究開発費の金額は554百万円であります。

 

(2) 中国、東南アジア、欧米

 当社グループは研究開発部門を日本に集約しているため、該当事項はありません。