第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社企業グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社企業グループが判断したものであります。

 

(1) 経営方針

 当社企業グループは、独自のエレクトロニクス技術とシステム技術により、お客様のために新しい価値を創造し、安全で豊かな社会(人と地球にやさしい情報社会)の実現に貢献することを経営の基本理念としております。

 この理念を実現するため、顧客価値経営を推進し、継続して営業利益の額を増加させる筋肉質な会社となることを方針としております。また、成長戦略に向けた投資で会社を成長させ利益を最大化し、中長期的な企業価値向上に努め、顧客・株主・従業員・社会などステークホルダーへの還元をはかってまいります。

 

(2) 経営戦略、経営環境及び優先的に対処すべき課題

 当社企業グループは、経営環境の変化に迅速に対応しながら、経営基盤の強化及び成長戦略を推進するとともに、更なる成長を目指して事業計画を着実に遂行してまいります。

 

情報システム(防衛用システム製品、宇宙用電子部品、産業用電子機器)

 受注残高の売上計画を着実に遂行するとともに、ものづくり力を強化して競争力を高め、積極的な提案活動を推進して、既存領域の拡大や新規領域の獲得をはかり、受注・売上を拡大してまいります。

 

電子機器(接合機器)

 設備需要の持ち直しを背景に、水晶デバイス封止装置の拡販及び接合4工法(抵抗溶接、パルスヒート、超音波、レーザ)を軸に顧客価値の高い新製品を積極的に市場投入するとともに、海外展開を強化して、受注・売上を拡大してまいります。

 

電子機器(センシングソリューション)

 産業保安市場において、CBM(Condition Based Maintenance:状態基準保全)のニーズが高まっていることを背景に、赤外線技術を核とする当社の特徴のある技術(熱の可視化や画像処理、波長制御等)を活かし、保守点検の効率化や事故の未然防止など顧客価値の高いソリューションを提供するとともに、電子デバイスや半導体市場における微小領域の熱解析用超高性能サーモグラフィや医用サーモグラフィなど、当社独自の市場優位性の高い新製品の拡販に注力し、受注・売上を拡大してまいります。

 

 当社企業グループは、今後も持続的な成長をはかるべく、人財育成・組織活性化・DXによる人的資本経営推進、企画力・ものづくり力・技術力の3つの力の融合による顧客価値向上、品質管理/コンプライアンス強化・ガバナンス体制整備・成長に向けた施策遂行による競争力強化を行うことで、アウトプットを最大化し、企業価値を向上させてまいります。

 

(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

2026年3月期 業績予想

売上高 225億円、営業利益 32億円を見込んでおります。

2027年3月期 中期経営計画

売上高 300億円、営業利益 40億円、ROE10%以上を目標としております。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社企業グループが判断したものであります。

 

(1) サステナビリティに関する考え方

 当社企業グループは「私たちの強みを磨き、さらに高めて、お客様のために新しい価値を創造し、安全・安心で

豊かな社会を実現する」ことを目標としており、また、グループ企業行動憲章で環境への配慮、社会との調和、人権の尊重などを規定し、行動規範・行動指針に落とし込んだ上で事業活動を行っております。

 2021年12月にはサステナビリティ方針(注)を定め、サステナビリティ(SDGs)に関連する課題について、事業活動の持続的発展と中長期的な企業価値向上のため、重要な取り組みと認識し、課題の解決に向け、積極的に取り組んでおります。

 

 (注)サステナビリティ方針

『日本アビオニクスはサステナビリティを経営の最重要課題のひとつとして認識し、企業活動の全域で一人ひとりがサステナビリティに配慮して行動し、豊かで持続可能な社会の実現に貢献すると共に、全てのステークホルダーに誇れて愛される企業となることを目指します』

 

 気候変動の社会の潮流は、部品や材質の変化をもたらし、当社企業グループのソリューションを生かす機会が増えていると認識しております。特に接合機器事業においては、社会の環境負荷低減を目指した、お客様の製品づくりに価値を提供するため、省電力接合方法の提案や、電動車市場の成長に向けた軽量化素材の接合、異種材接合など、様々な社会課題解決のためのソリューションを提供しております。

 また、センシングソリューション事業においては、設備の異常発熱や温度上昇の予兆を検知し、お客様の工場、倉庫などの重大事故を未然に防ぐソリューションの提供や、インフラ設備や構造物を継続使用するためのメンテナンスに役立つソリューションを提供し、安全・安心で持続可能な社会に貢献しております。さらに、ヘルスケア事業にも取り組み、健康で安心な社会の実現にも貢献してまいります。

 サステナビリティレポート2024 URL:https://www.avio.co.jp/company/environment/pdf/kankyo2024.pdf

 

①ガバナンス

 当社企業グループは、執行役員を推進責任者としたサステナビリティ委員会を設置し、サステナビリティ経営(マテリアリティ)に関する実行計画の策定と、各部門が実施するための支援や推進を行っております。また、サステナビリティ委員会を会社組織体制に組込み、サステナビリティ・ガバナンスを強化して取り組んでまいります。サステナビリティ推進の方向性については取締役会において、経営理念に沿った経営方針に合致しているビジネスであるか、社会課題の解決に寄与する事業を推進しているか等、継続して議論しており、社外取締役との議論、監査等委員との意見交換を反映した計画になっております。なお、リスク管理については、リスク・コンプライアンス委員会とも適宜連携して取り組みを進めております。引き続き、サステナビリティ委員会の活動を促進し、取締役会での議論を深めてまいります。

 

サステナビリティ・ガバナンス体制図

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②戦略

 短期・中長期の気候関連の潮流についてのリスクと機会に関しては、当社のビジネス戦略上の重要な要素の一つと認識し、5つのマテリアリティ(最重要課題2項目、重要課題3項目)を選定しております。2つの最重要課題につきましては、主な取り組みと指標・目標を定め、中期経営計画(2024年度~2026年度)のアクションプランに落とし込んでおり、継続的にPDCAサイクルを回し対応してまいります。重要課題につきましては、主な取り組みを定め活動推進してまいります。5つのマテリアリティを実現することで、気候変動に伴うリスクと機会への対応を強化し、持続的社会づくりに貢献するとともに企業価値を向上させてまいります。

 

マテリアリティ特定プロセス

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最重要課題の主な取り組みと指標・目標

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算出根拠 ※1.該当製品1台当たりの顧客使用時のCO2排出削減量×3年間累計販売台数

     ※2. (該当製品を製造する際のCO2排出削減量+顧客使用時のCO2排出削減量)×3年間累計販売台数

 

重要課題の主な取り組み

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③リスク管理

 当社企業グループは、リスク管理の統轄機関として「リスク・コンプライアンス委員会」を設置し、環境配慮、社会との調和を定めた企業行動憲章に基づきリスクの対応方針を定め、課題に取り組んでおります。サステナビリティ委員会や環境管理部門で報告された重要なリスクは、リスク・コンプライアンス委員会で取りまとめ、取締役会で議論されております。

 当社企業グループの具体的なリスクについては、「第2 事業の状況、3 事業等のリスク」をご覧ください。

 

④指標及び目標

 最重要課題の主な取り組みと指標・目標、及び重要課題の主な取り組みは、(1)②項に記載しております。

 

(2) 人的資本に関する戦略並びに指標及び目標

①人材育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針、戦略

 人的資本につきましては、最重要課題と認識し、選定したマテリアリティに含んでおります。

当社企業グループは、グループ企業行動憲章において、「従業員一人ひとりの個性を尊重するとともに、能力を十分に発揮し、情熱をもって働ける環境を整備する」ことを掲げており、経営戦略に合致した人財の採用や育成、適材適所での活用を強化し、「主体的かつ自律的」で多様性のある人財を形成してまいります。さらに、健康経営や働き方改革等のウェルビーイングの推進や、DXを推進することで、組織を活性化し、社員のパフォーマンスを最大化してまいります。

 また当社は、女性の活躍に向けて、女性リーダーの育成や女性の新卒採用を促進する施策に取り組み、従業員の多様性確保に努めてまいります。

 

②指標及び目標

 人的資本に関する指標及び目標は、(1)②項に記載しております。

 

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の概況、経理の状況等に関する事項のうち、当社企業グループの事業その他に関するリスクについて、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性があり、顕在化の可能性が一定程度あると考えられる主な事項を記載しております。

 なお、文中においては、将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は有価証券報告書提出日(2025年6月23日)現在において判断したものであります。また、以下の記載事項は、当社企業グループの事業等に関するリスクすべてを網羅するものではないことをご留意ください。

 また、当社企業グループのリスク管理体制については、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要 ④リスク管理体制の整備の状況」に記載しております。

 

<市場・事業運営に関するリスク>

(1)顧客の需要動向等による影響について

 当社企業グループの情報システムについては、宇宙・防衛等の官公庁向けであるため、官公庁の需要動向及び直接契約をしている大手防衛メーカーの事業展開の方針に影響されます。特に防衛予算の規模及び内容は、当社の防衛関連製品に中期的に影響を及ぼす可能性があります。また、電子機器については、国内外の一般企業向けであるため、顧客の設備投資の需要動向に影響されます。特に海外市場の動向等に想定を超える変化が生じた場合、当社企業グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。そのため、顧客の需要動向を注視し、予算に織り込むなどの対応を行っていますが、こうした顧客の需要動向等に想定を超える変化が生じた場合、当社企業グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 (2)価格競争について

 当社企業グループが事業を展開するエレクトロニクス業界において競争が激化しており、特に電子機器製品は激しい価格競争にさらされております。当社企業グループではコストダウンを進めるとともに、高付加価値製品の投入により市場競争力の維持・向上に努めておりますが、価格競争の更なる激化や長期化が生じた場合、当社企業グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 (3)棚卸資産等の処分について

 当社企業グループは、設計、資材調達から生産・出荷までのプロセス改善活動によりリードタイムの短縮等に努めております。しかしながら、情報システム製品については長期にわたる製品ライフサイクルに対応するための保守部品等の在庫、電子機器製品については需要動向の急激な変化等による在庫が発生することが想定されます。これらの在庫が陳腐化した場合には、棚卸資産等の評価損や処分により当社企業グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 (4)技術革新への対応について

 エレクトロニクス業界は、技術の急速な進歩とそれに伴いユーザーのニーズやウォンツも急速に変化しております。当社企業グループではユーザーのニーズやウォンツに対応し、競争力を維持・向上して事業を成長していくために意欲的な新製品開発を継続して実施しております。しかしながら、当社企業グループの努力を上回る速度での技術革新、ユーザーのニーズやウォンツの変化が生じた場合、当社企業グループの業績等に影響が及ぶ可能性があります。

 (5)品質管理等について

 当社企業グループは、厳格な品質管理の下に製品を製造しておりますが、製品に欠陥が生じないという保証は無く、欠陥の発生によりリコールの対象となる可能性や製造物責任を負う可能性は否定できません。対策として執行役員社長直下の組織として生産設計推進部門及び品質推進部門を設置し、執行役員社長に直接報告されるレポートラインを確保しております。生産設計推進部門では、設計からのQCD(品質・コスト・納期)の強化と継続的改善に向けたプロセス構築を実施し、品質推進部門では三現(現地、現物、現実)主義監査による品質不適切行為及び重要品質問題の発生防止に努めております。製造物責任についてはPL保険に加入しているものの、状況によっては当社企業グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。
 

 (6)人財の確保・育成

 当社企業グループでは、競争力ある製品を開発、製造及び販売するため、優秀な人財を確保・育成し続ける必要があり、このため積極的な採用・人財育成に努めています。しかしながら、必要な人財を確保・育成できない場合、当社企業グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 (7)環境問題について

 当社企業グループの事業は、有害物質の使用及び取り扱い、廃棄物処理、製品含有化学物質、土壌・地下水汚染の規制等を目的とした様々な環境法令の適用を受けており、環境方針に従って日常的な点検等を実施するなど、法令及び政府当局の指針の遵守に努めております。しかしながら、将来、より厳格化する環境規制への対応等により、当社企業グループの業績等及び社会的評価に影響を及ぼす可能性があります。

 (8)災害・感染症等の影響について

 当社企業グループでは、大規模地震等の自然災害等に備え事業継続計画(BCP)を策定し、安全確保・安否確認、事業の早期復旧、経営データのバックアップ等の対策を進めております。また、感染症対策として、感染時の対応フローを整備し、感染拡大防止に努めております。しかしながら自然災害等による生産拠点の直接被害の他、原材料購入先・外注先の被害や流通網・供給網の混乱による操業の中断、生産・出荷の遅延等が発生する可能性があります。更に復旧対応のための費用支出等により、当社企業グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 (9)サプライチェーンの影響について

 当社企業グループでは、当社企業グループ製品の部品、原材料等について安定的な調達及び品質の確保のため、必要な在庫量の確保、複数社からの調達、調達先との密な情報共有に努めるとともに、部品、原材料の品質管理に取り組んでおります。しかしながら、想定を上回る部品、原材料等の価格の高騰、自然災害や国際情勢の悪化等による調達可能性の変動、品質不良、物流の混乱、インフラの制限等の結果、納入・納期の遅延、機会損失、売上原価の上昇等により、当社企業グループの業績等及び社会的評価に影響を及ぼす可能性があります。


<コンプライアンス等に関するリスク>

 (1)従業員等による不正行為等について

 当社企業グループは、企業倫理の確立並びに法令、定款及び社内規程の遵守の確保を目的として制定した「Avioグループ企業行動憲章」及び「Avioグループ行動規範」の徹底、コンプライアンスホットラインの周知徹底、教育等により従業員等のコンプライアンス意識向上をはかっており、リスク・コンプライアンス委員会においてコンプライアンス体制の遵守状況の確認を行っております。しかしながら、これらにより従業員等による業務上の不正行為等の発生の可能性がなくなるものではありません。従業員等による不正行為等が発生し、第三者に対する損害賠償請求、営業停止・取引停止処分等を受けた場合、当社企業グループの業績等及び社会的評価に影響を及ぼす可能性があります。

 (2)知的財産権について

 当社企業グループは、他社と差別化できる技術とノウハウの蓄積に努めており、自社が保有する技術等については特許権等の取得による保護をはかるほか、他社の知的財産権に対する侵害がないようリスク管理に取り組んでおります。しかしながら、当社企業グループの知的財産権を無視した類似製品の出現、当社企業グループの認識していない知的財産権の存在又は成立によって当該第三者より損害賠償等の訴訟を起こされる可能性もあります。これらの結果、当社企業グループの業績等及び社会的評価に影響を及ぼす可能性があります。

 (3)情報セキュリティ・サイバーセキュリティについて

 当社企業グループは、「Avio情報セキュリティ基本方針」に基づき、全従業員向けの情報セキュリティ教育の定期的な実施の他、標的型攻撃メール訓練、外部機関によるネットワークの脆弱性診断、防衛事業向けのセキュリティ施策など、各種セキュリティ対策を実施することで、情報セキュリティ及びサイバーセキュリティの強化に努めるとともに、事業遂行の過程で入手する多数の個人情報や機密情報の流出防止には細心の注意を払って管理しております。また、近年はサイバー攻撃の増加が想定され、防衛関係企業への不正アクセスが公表されるなど、セキュリティのリスクが高まっております。そのため、予想を超えるサイバー攻撃などの予期せぬ事態により情報の流出・漏洩が発生した場合には、社会的信用の低下や、その対応に要する多額の費用負担が、当社企業グループの業績等及び社会的評価に影響を及ぼす可能性があります。

 

<財務・会計に関するリスク>

 (1)資金の調達について

 当社企業グループは、当社企業グループの財務状況を定期的に管理し、健全な財務状況の維持に努めております。しかしながら、金融市場の不安定化、事業環境の悪化による信用力の低下等に伴い、資金調達に関するリスクが増加した場合には、当社企業グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 (2)繰延税金資産について

 当社企業グループが現在計上している繰延税金資産は、将来減算一時差異に関するもので、すべて将来の課税所得を減額する効果を持つものです。市況の後退や経営成績の悪化などの事象により、当社企業グループが現在計上している繰延税金資産の全額又は一部について回収可能性がないと判断した場合、繰延税金資産の取崩しにより、当社企業グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 (3)退職給付債務について

 当社企業グループは、確定給付企業年金に関するガイドラインを定め、財務に関する専門知識を有する人財を年金資産の運用責任者として選任しております。運用方針については、年金事務局会議等での議論を経て、決定しております。実際の運用については、運用方針に基づいて信託銀行等に委託しております。しかしながら、当社企業グループの年金資産の市場価値や運用利回りの変動、将来の予想退職給付債務の計算の根拠となる数理計算上の前提の変更、また将来の年金制度や会計基準の変更があった場合、当社企業グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 (4)為替相場の変動について

 当社企業グループでは、外貨建ての案件を一部取り扱っており、為替相場の変動リスクを低減するために円建てによる取引を交渉するなどの対応を行っております。しかしながら、急激な為替相場の変動により、当社企業グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 各部門、執行役員が出席するリスク・コンプライアンス委員会、取締役会の3段階によるリスクの認識合わせを行った結果、2025年度は「成長に向けた」リスクを重視し、「人財の確保・育成」のリスクを当社企業グループの特に重要なリスクとして対策に取り組んでまいります。

 なお、米国政府による関税措置に伴う直接的な影響は、現時点では限定的であると考えているものの、各国の通商政策から派生するサプライチェーン、各国の金融市場や設備投資需要等への影響については、引き続き注視し、適宜対応してまいります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社企業グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

 当連結会計年度におけるわが国経済は、製造業における生産や設備投資に緩やかな回復の動きが見られました。一方、世界経済は、長期化しているウクライナ問題や中東情勢の緊迫化など世界情勢不安、中国経済の先行き懸念、アメリカの通商政策により、景気の下振れリスクが高まる状況となりました。

 このような状況の中で当社企業グループは、新たな製品やソリューションを生み出す研究開発力、QCDの向上を図るものづくり力、新規顧客獲得のためのマーケティング力の強化により、競争力の向上及び受注・売上の拡大に努めてまいりました。研究開発においては、パワー半導体モジュールの熱マネジメント課題を解決する「ボイド低減超音波リフロー技術」を開発し、現在、製品化を推進しております。また、電子デバイスや半導体市場における微小領域の熱解析のニーズに応え、微細な変化を捉える「超高性能サーモグラフィH9300」、及び医療現場の効率化と患者負担を軽減する「ポータブル型医用サーモグラフィF50ME」を発売いたしました。品質管理面においては、三現(現地、現物、現実)主義監査による品質管理強化の推進を継続いたしました。

 その結果、当連結会計年度における当社企業グループの連結業績は、受注高は274億38百万円(前年同期比25.3%増)、売上高は201億22百万円(前年同期比11.4%増)、営業利益は27億96百万円(前年同期比6億17百万円増)、経常利益は27億11百万円(前年同期比5億58百万円増)、親会社株主に帰属する当期純利益は税務上の繰越欠損金の回収に伴う税金費用の増加により19億64百万円(前年同期比1億85百万円減)となりました。

 

 セグメントの状況は、次のとおりであります。

情報システム(防衛用システム製品、宇宙用電子部品、産業用電子機器)

 情報システムは、防衛予算増額が追い風となり、堅調に推移いたしました。受注高は230億33百万円(前年同期比26.7%増)、売上高は160億31百万円(前年同期比9.3%増)、セグメント利益は売上高の増加及び継続した収益性向上に努めた結果、30億46百万円(前年同期比4億6百万円増)となりました。なお、期末受注残高は、202億40百万円(前年同期比52.9%増)となり、顧客からの受注時期前倒し、まとめ発注により大幅増加となりました。

電子機器(接合機器、センシングソリューション)

 接合機器及びセンシングソリューションは、設備需要の持ち直しの動きが見られるも、回復度合いは緩やかな状況となりました。ターゲット市場への拡販活動の結果、受注高は44億5百万円(前年同期比18.6%増)、売上高は40億91百万円(前年同期比20.7%増)、セグメント損益は2億50百万円の損失(前年同期比2億11百万円改善)となりました。なお、期末受注残高は15億12百万円(前年同期比26.2%増)となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は前連結会計年度末に比べ4億7百万円減少し、19億34百万円となりました。

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況及びそれらの要因は次のとおりであります。

 「営業活動によるキャッシュ・フロー」

 営業活動の結果獲得した資金は、21億50百万円となりました。これは主に税金等調整前当期純利益の増加による資金の増加によるものであります。

 前年同期比では、売上債権の減少等により23億56百万円資金が増加しております。

 「投資活動によるキャッシュ・フロー」

 投資活動の結果使用した資金は、4億71百万円となりました。これは主に有形固定資産取得による支出によるものであります。

 前年同期比では、有形固定資産取得による支出が減少したこと等により46百万円使用が減少しております。

 「財務活動によるキャッシュ・フロー」

 財務活動の結果使用した資金は、20億85百万円となりました。これは主に自己株式の取得による支出によるものであります。

 前年同期比では、自己株式の取得による支出が増加したこと等により30億42百万円収入が減少しております。

 なお、当連結会計年度末における借入金残高は、47億90百万円となりました。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

 セグメントごとの「生産、受注及び販売の実績」を示すと次のとおりであります。

(a)生産実績

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

(百万円)

前年同期比(%)

情報システム

16,031

109.6

電子機器

3,903

117.8

19,935

111.1

 

(b)受注実績

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

受注高(百万円)

前年同期比(%)

受注残高

(百万円)

前年同期比(%)

情報システム

23,033

126.7

20,240

152.9

電子機器

4,405

118.6

1,512

126.2

27,438

125.3

21,752

150.7

 

(c)販売実績

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

(百万円)

前年同期比(%)

情報システム

16,031

109.3

電子機器

4,091

120.7

20,122

111.4

 (注)主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

日本電気㈱

5,221

28.9

6,687

33.2

富士通㈱

4,248

23.5

3,455

17.2

住商エアロシステム㈱

2,629

14.6

3,382

16.8

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社企業グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社企業グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たって採用している重要な会計方針は、第5「経理の状況」1.「連結財務諸表等」(1)連結財務諸表 注記事項 の(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)に記載のとおりであります。

 この連結財務諸表の作成にあたっては、当連結会計年度における経営成績等の状況に影響を与えるような見積り、予測を必要としております。当社企業グループは、過去の実績値や状況を踏まえ合理的と判断される前提に基づき、継続的に見積り、予測を行っております。そのため実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

 連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積りのうち、重要なものは以下のとおりです。

(一定の期間にわたり履行義務を充足する契約における収益認識)

 一定の期間にわたり履行義務が充足されると判断した契約については、履行義務の充足に係る進捗度に基づき収益を認識しております。履行義務の充足に係る進捗度については、総原価見積額に対する発生原価の割合(インプット法)で算出しております。総原価見積額は、契約ごとの連結会計年度末における見積値を使用しておりますが、見積値算定にあたっては、作業内容及び工数の見積りに不確実性を伴うため、当社企業グループの業績を変動させる可能性があります。

 

② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 (a)概要

 当連結会計年度におけるわが国経済は、製造業における生産や設備投資に緩やかな回復の動きが見られました。一方、世界経済は、長期化しているウクライナ問題や中東情勢の緊迫化など世界情勢不安、中国経済の先行き懸念、アメリカの通商政策により、景気の下振れリスクが高まる状況となりました。

 このような状況の中で当社企業グループは、新たな製品やソリューションを生み出す研究開発力、QCDの向上を図るものづくり力、新規顧客獲得のためのマーケティング力の強化により、競争力の向上及び受注・売上の拡大に努めてまいりました。研究開発においては、パワー半導体モジュールの熱マネジメント課題を解決する「ボイド低減超音波リフロー技術」を開発し、現在、製品化を推進しております。また、電子デバイスや半導体市場における微小領域の熱解析のニーズに応え、微細な変化を捉える「超高性能サーモグラフィH9300」、及び医療現場の効率化と患者負担を軽減する「ポータブル型医用サーモグラフィF50ME」を発売いたしました。品質管理面においては、三現(現地、現物、現実)主義監査による品質管理強化の推進を継続いたしました。

 

 (b)売上高

 売上高は、201億22百万円(前年同期比11.4%増)となりました。

 情報システムの売上高は、防衛予算増額が追い風となり、堅調に推移したことから、160億31百万円(前年同期比9.3%増)となりました。

 電子機器の売上高は、設備需要の持ち直しの動きが見られるも、回復度合いは緩やかな状況となり、40億91百万円(前年同期比20.7%増)となりました。

 

 (c)売上総利益

 売上総利益は、原価率が改善したことにより66億37百万円(前年同期比15.9%増)となり、売上総利益率は33.0%となりました。

 

 (d)販売費及び一般管理費、営業利益

 販売費及び一般管理費は、前年同期比2億94百万円増加の38億41百万円となりました。

 この結果、営業利益は27億96百万円となりました。これは、売上高の増加及び原価率の改善によるものです。

 

 (e)営業外損益、経常利益

 営業外損益は、前年同期比59百万円悪化の84百万円の損失となりました。

 この結果、経常利益は27億11百万円となりました。

 

 (f)親会社株主に帰属する当期純利益

 親会社株主に帰属する当期純利益は、税務上の繰越欠損金の回収に伴う税金費用の増加により前年同期比1億85百万円減少の19億64百万円の利益となりました。

 

③ 資本の財源及び資金の流動性

 (契約債務)

  2025年3月31日現在の契約債務の概要は次のとおりであります。

 

年度別要支払額(百万円)

契約債務

合計

1年以内

1年超3年以内

3年超5年以内

5年超

短期借入金

2,770

2,770

長期借入金

2,020

60

1,960

 上記において、連結貸借対照表の短期借入金に含まれている1年内返済予定の長期借入金は、長期借入金に含めております。

 

 (財政政策)

 当社企業グループにおける主な資金需要は、情報システム、電子機器の製造・販売を行うために必要な運転資金、販売費、研究開発活動などがあります。必要な資金は主に営業活動によるキャッシュ・フローで得られる資金を充当し、必要に応じて金融機関からの借入金による調達を実施しております。

 

 (a)資産

 当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ6億14百万円減少の269億13百万円となりました。

 流動資産は前連結会計年度末に比べ6億39百万円減少し、193億40百万円となりました。これは主に受取手形、売掛金及び契約資産が減少したことによるものであります。

 固定資産は前連結会計年度末に比べ25百万円増加し、75億73百万円となりました。これは主に退職給付に係る資産が減少したものの、繰延税金資産が増加したことによるものであります。

 

 (b)負債

 当連結会計年度末の負債は、前連結会計年度末に比べ2億67百万円減少の129億54百万円となりました。

 流動負債は前連結会計年度末に比べ67百万円減少し、87億24百万円となりました。これは主に未払法人税等が増加したものの、電子記録債務、支払手形及び買掛金及び未払金が減少したことによるものであります。

 固定負債は前連結会計年度末に比べ2億円減少し、42億30百万円となりました。これは主に退職給付に係る負債が減少したことによるものであります。

 なお、当連結会計年度末における借入金残高は47億90百万円となりました。

 

 (c)純資産

 当連結会計年度末の純資産は、前連結会計年度末に比べ3億46百万円減少し、139億58百万円となりました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益を計上したことにより利益剰余金が増加したものの、自己株式の取得により減少したためであります。

 

 (d)キャッシュ・フローの分析

 当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。

5【重要な契約等】

 当社は、2024年5月10日開催の取締役会において、会社法第165条第3項の規定により読み替えて適用される同法第156条第1項及び当社定款の規定に基づき、自己株式の取得を行うこと及びその具体的な取得方法として自己株式の公開買付けを行うことを決議し、同日付で、当社の親会社であるNAJホールディングス株式会社との間で、所有する当社普通株式(1,938,062株(所有割合:58.05%))の一部である応募意向株式(261,400株(所有割合:7.83%))を本公開買付けに応募する旨の応募契約を締結しております。

 なお、本公開買付けは2024年6月10日に買付け期間が終了しております。

 

(注)「所有割合」とは、2024年3月31日現在の当社の発行済株式総数(3,352,962株)から、同日現在の当社が所有する自己株式数(14,094株)を控除した株式数(3,338,868株)に対する割合(小数点以下第三位を四捨五入)をいいます。

 

6【研究開発活動】

 当社企業グループは、独自のエレクトロニクス技術とシステム技術をもとに、新しい価値を創造することを目指し、先端技術分野での基礎研究、応用研究や、事業運営に直結した新技術、新製品の開発を行っております。

 現在の研究開発活動は主に情報システムの技術部門、電子機器の技術部門及びR&D推進部により進めております。

 なお、当連結会計年度における研究開発費の総額は、562百万円であり、主な研究内容は以下のとおりであります。

 

(1)艦船搭載用コンソール向けユーザー・インターフェースの技術の習得

 当社の情報システム事業における主力製品である艦船搭載用コンソールでは、艦船における耐環境性能の向上、情報処理能力の向上と共に、「省人化」がエンドユーザーにおける重要課題の1つとなっております。一方で、扱われる情報量が増加しており、オペレーター一人あたりの業務負荷が増加する傾向にあります。

 この課題解決策を目的に、オペレーターに「より直感的な操作」をしてもらい、業務負荷の軽減に役立つ機能を研究することといたしました。

 2024年度の活動では、AIエンジンを導入し、オペレーターが発する声を操作命令に変換する「音声操作」機能の実用化を検討すべく試作品を製造し、反応時間や確実性などについて、従来の「手入力操作」との比較評価を行いました。

 現時点では、反応時間と確実性が、従来の「手操作」と同等のレベルに達していない状況ですが、今後、AIエンジンのチューニング等の研究を進めていくことで、性能向上を目指し、顧客価値の向上を目指してまいります。

 

(2)全自動真空シーム封止装置 「NAW-8000」の開発

 モノとモノを通信でつなぐ際に使用される水晶デバイス部品はスマートフォン、パソコン、ウエアラブル機器や多くのIoT製品に搭載されていることから全世界でその使用数は年々増えています。当社ではこの水晶デバイスの生産に必要となる全自動のシーム封止装置を30年以上にわたり顧客の要求に応え開発してまいりました。

 この度「脱炭素社会の実現」に向けて全世界で推進されている二酸化炭素(CO2)削減の取り組みに対応するため、お客様が水晶デバイスを製造する際に発生するCO2排出量を従来よりも低減できる新たな全自動真空シーム封止装置を開発いたしました。

 本製品はCO2排出量を従来よりも低減できるとともに以下の特徴を有しております。

1)水晶デバイスの封止時に必要な窒素使用量を大幅に抑制

2)装置占有面積を従来装置比で2/3に抑えることで顧客の工場占有エリア削減

3)ネットワーク、センシング技術の活用

①故障予知機能による計画的な装置メンテナンス

②品質を担保する生産時のトレーサビリティ強化

 今後とも、顧客ニーズに対応し、顧客価値を高めた製品を市場に投入することで、社会課題の解決に貢献してまいります。

※比較はいずれも当社比

 

(3)医用サーモグラフィ「F50ME」の開発

 医療のデジタル化による医療従事者の負荷軽減、医用サーモグラフィを求める社会的期待に応えるべく、製品を企画・開発し、厚生労働省の製品承認を取得した「医用サーモグラフィF50ME」の販売を開始しました。

 本製品は、非接触かつ非侵襲で患者の体表温度分布を把握できるため、安全性が高く、効率的に検査することができ、炎症や血行障害の範囲の確認や治療前後の違いの確認などに活用できる製品となっております。

 製品コンセプトとして、タブレットと小型カメラの構成により、ポータブル性に優れ、病院内で診察室や病室などへ持ち運びができるとともに、フリーアングル測定により、病室の寝たきりの患者を動かさずに検査が可能な形状を採用しました。

 また、医療現場において安全で安心して使用できるよう、安全性や電磁両立性を確保する設計を行い、利便性向上のための、画面レイアウト、操作アイコン、熱画像表示に配慮した設計も行いました。

 本製品の特徴を活かし、診療場所を選ばず、様々な医療現場だけでなく、看護現場など、より幅広い分野で活用いただくことも想定しており、今後とも医用サーモグラフィの普及による臨床領域での熱画像検査の更なる進化や新しい発想での医学的応用の発展・拡大に、貢献していきたいと考えております。