第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2025年3月19日)現在において当社グループが判断したものです。

(1) 会社の経営の基本方針 

技術と人の架け橋

 当社グループのビジョンは、時代を超越した企業として、我々の想像力に富んだアイディアを実現し、世の中にパワーと勇気を与えるためのソリューションを提供する業界のリーダーとなることです。当社グループの使命は、お客様に、人々の生活の質を向上する、すなわち生活をより楽に、安全に、健康に、楽しくそして環境にやさしくするための製品や技術の開発を可能とするソリューションを提供することです。そして、私たちは、グローバル、スピード、フォーカスを経営における重要な価値観として定義しています。私たちは世界中の市場に対応し、迅速な意思決定と実行力をもってビジネスを展開しています。

 

事業における競争優位性と当社の強み

 当社グループが手掛けるコイルは電子部品の中でも最も基本的な役割を果たすため、電子機器になくてはならない存在です。コイルがなければ世の中の電子機器は動作しません。だからこそ、当社グループの製品はありとあらゆる用途で使われています。

 一般にコイルは受動部品と呼ばれ、電子回路設計の一番最後に仕様が決まります。毎回求められるサイズとはたらきが異なりますので、毎回カスタム製品となります。これらのカスタム製品をお客様の要求する品質、納期、コストで実現するためには、技術やノウハウの引き出しの多さがものを言います。当社グループでは、中核となるコイルの「巻線技術」、端子の処理などの「表面処理技術」、ケースに入れて密閉する「成型技術」、ケースそのものを作る金型を作る「精密加工技術」、芯材そのものを作る「素材・材料技術」、シミュレーションを駆使して行う電子回路の「設計技術」、要求された仕様を満足していることを確認する「評価技術」、量産する「生産技術」を有しています。これら8つの要素技術を総称した「集合技術」を磨き込むことで、お客様のあらゆるご要望にワンストップでお応えする体制を整えています。

 また、あらゆる電子機器を支える裏方として、製品の用途開発力も当社の強みです。当社グループは、創業期にラジオ部品を手掛け、テレビやカセットテープレコーダー、PC等へと製品用途を開発してきました。今では、車載関連でアンテナ、ABS、ヘッドランプ等に、またインダストリー関連で太陽光・風力発電システムや産業ロボット等に当社製品が使われています。

 さらに、当社グループは、1970年代に台湾・香港に進出して以来、グローバルに拠点を展開してきました。コイル製造は労働集約的な側面があるため、当初はコスト競争力の高い地域に生産拠点を開設してきました。やがてこれらの地域においても経済が成長し、今では市場としての重要性が高まっています。当社グループは、アジア・欧州・北米に各域内で設計・製造・販売を完結できる地産地消体制を整えています。

 当社グループは、これら技術力、用途開発力、グローバル展開力を高め、目の前のお客様のご要望に一つ一つお応えしてきました。そうして取引実績が積み上がるうちに、有難いことにお客様から次の案件の引き合いをいただくようになってきています。当社グループは各地域・市場において主導的な地位にあるお客様との取引実績を有しています。

(2) 経営環境及び対処すべき課題等 

① 中期経営計画の推進 

 当社グループは、計画期間を3年間とする中期経営計画を策定しています。事業環境に応じて市場別基本方針及び重点課題を見定め、数値目標の達成に向けて事業活動に取り組んでいます。

 

中期経営計画(2024-2026年度(2024年2月8日発表))

■重点課題

《「脱炭素関連」市場での成長》

・前中期経営計画(2021-2023年度)で掲げたxEV関連からスコープを広げ、充電インフラ、太陽光発電、蓄電池等を含む用途群を「グリーンエネルギー関連」と定義し、年率22%の成長を目指します。そして、2026年度に当社グループ売上高全体の35%以上を「グリーンエネルギー関連」で占めることを目指します。

 

■市場別基本方針

・車載市場:

EV・ハイブリッド・FCV関連等、動力源を問わずビジネス機会を捉え、成長を目指します。

・インダストリー市場:

グリーンエネルギー、ファクトリーオートメーション・ロボット、医療機器、宇宙開発関連に注力し、成長を目指します。

・家電市場:

AI普及を機に積極的にビジネスを獲得し、現在の規模を確保しつつ収益率の向上を目指します。

■地域、製造戦略

・地産地消の体制づくりをさらに強化します。営業、開発、製造の3体制を各地域で完結することを通じて、お客様のニーズにより柔軟かつ迅速に対応します。このために、中国における生産能力の最適化、北米における研究開発能力の更なる増強、インドにおける新規案件の獲得及びベトナムでの生産能力の拡大を進めます。加えて、複数拠点での生産体制を確立し、地政学リスクに対応します。

・営業キャッシュ・フローの範囲内で前中期経営計画と同規模の設備投資を継続します。

・中国一辺倒のリスク回避とコスト削減を目指し、ASEAN地域でのサプライヤーを増やします。加えて、温室効果ガス削減を達成するため、最適なサプライヤーを選定します。

・生産ラインの自動化を継続して行うことで、賃金上昇を上回る生産性向上を実現します。

・DXを活用し、事業規模が大きくなっていく中でも人員増を抑制しつつ業務を遂行します。

■数値目標

・2026年度の売上収益1,900億円、営業利益135億円、1株当たり当期利益(EPS) 272円を目指します。

・投下資本利益率(ROIC) 9.31%、親会社所有者帰属持分当期利益率(ROE) 13.18%を目指します。

・3年間累計でフリー・キャッシュ・フロー140億円の創出を目指します。

 

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② ESGへの貢献

当社グループは、より良い社会の形成と企業の持続可能な発展のため、社会からのESG(環境(Environment)、社会(Society)、ガバナンス(Governance))に対する期待や要請に対し、「誠実」、「規律」、「常識」に基づいて事業を遂行し、社会的責任を果たしていきます。環境問題に対して、前項「① 中期経営計画の推進」にて記載した取り組みを行っています。また、社会問題に対して、法務・コンプライアンス機能の強化等様々な取り組みを積極的に行っていきます。コーポレート・ガバナンスの強化に向けては、2003年に経営と監督の分離を明確にするために日本の上場企業として第1号で委員会等設置会社に移行しました。当社の取締役は、7名のうち5名が多様な専門知識をもつ社外取締役で、1名が女性、2名が欧州や中国といったビジネスの比重が高いエリアからの外国人となっています。

 

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2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループの2024年12月期から2026年12月期までの3か年を対象とする中期経営計画では、ESGを最重要な取り組み課題の1つとして掲げています。当社グループの使命は、人々の生活の質を向上し、環境に優しい製品や技術の開発を可能とするソリューションを提供し続けることです。この使命を果たし、当社グループの製品が省電力、脱炭素化に大きく貢献し続けることが重要課題と認識しています。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1) 気候変動

①ガバナンス

 当社グループでは年1回以上、気候変動を含む環境関連の進捗状況、計画及びリスクについて、代表執行役CEOがCSR委員会等の活動結果を取締役会に報告し、取締役会において取締役が報告内容を踏まえて協議をしています。

②リスク管理

 当社では、スミダグループが、日本国内外における法令を始め、企業倫理、社内規程を遵守してスミダグループの経営・業務を遂行し、また健全なリスクテイクの妥当性の検証又はリスクの極小化等、スミダグループ運営上のリスク管理を徹底し、効率的かつ有効な経営を実現することを目的とする「コンプライアンス及びリスクマネジメント規程」を定めています。

 当社では、代表執行役CEOがその任にあたるリスクマネジメント最高責任者により、リスクマネジメント委員会を組織しています。リスクマネジメント委員会は、リスクを「企業にとってマイナスの影響をもたらす事象、換言すれば企業に予想外の損失がもたらされる不確実性」と定義したうえで、スミダグループのリスクを効果的かつ効率的に洗い出し、そのリスクを最大限に抑制ないし回避することを目的としています。

 同委員会での議論をより効果的なものとするために、3年に1度、リスクサーベイを実施し、その結果を基に損害規模と発生頻度を基準にしたリスクマップを作成し、事業の推進及び経営の意思決定に役立てるよう努めています。2025年度にリスクサーベイを実施し、リスクマップを更新する予定です。

 また、CSR委員会において気候変動を含む環境関連のリスクや機会を識別し、その進捗状況について年1回以上の頻度で継続的に協議を行っています。

③戦略

 当社グループでは、TCFD提言に沿った開示を進めています。当社グループのCSR委員会において認識している気候変動に関するリスク及び機会は以下のとおりです。

リスク

・より頻繁に発生する異常気象の影響により、操業が中断される可能性がある。

・当社グループの顧客及びそのサプライ・チェーンは、異常気象の影響をより頻繁に受ける可能性があり、その結果、当社の製品に対する需要が相当期間延期されたり、大幅に減少したりする可能性がある。

・特定の市場におけるカーボンプライシング規制により、エネルギーコストや一部の原材料価格が上昇する可能性がある。

機会

・当社グループは、エネルギー効率の高いアプリケーション(電源、エネルギー効率の高い照明、電気駆動装置、再生可能エネルギーアプリケーション)向けの製品を設計、製造している。

・低炭素排出アプリケーションのための革新的なソリューションの提供や、様々なGHG排出削減イニシアチブを支えるサプライ・チェーンにおける良好な協力関係により、新規顧客及び既存顧客との新規プロジェクトを獲得し、ビジネスを拡大する。

・サプライヤーや顧客と協力して革新的な製品設計を行い、製品におけるリサイクル素材の使用を増やすとともに、顧客の最終製品におけるリサイクル可能性を向上させる。

④指標及び目標

 当社グループでは、ESGに関連する最重要取り組み課題として以下の3点を掲げています。

1. 当社グループの技術開発と製品を通して二酸化炭素削減に貢献する。

2. 資源の有効活用、廃棄物の削減、代替エネルギーの活用を推進して業務を遂行する。

3. 当社グループのあらゆるステークホルダーとともに国連開発計画が策定した17の持続可能な開発目標を達成する努力をし続ける。

 

 これらの課題への取り組みを通じて、当社グループは2030年度の温室効果ガス(Scope 1&2)を2022年度比で42%削減することを目指しています。当社グループのサステナビリティに関する事項の詳細は、当社グループのウェブサイト(https://www.sumida.com/csr/)に掲載しています。なお、当該ウェブサイトの更新予定日は未定ですが、内容に更新があれば遅滞なく更新します。

 

(2) 人的資本

①戦略

 当社グループでは『スミダの経営に関する諸原則』の中の「社員に対するコミットメント」として、以下の7項目を指針としています。

・スミダは、人こそが会社の最も重要な経営資源であると考え、社員一人一人を大切にする企業を目指します。

・国境を超えた、真にトランスナショナルな企業を志向し、働く場所の如何を問わず公正な処遇を保証し、また社員同士のチームワークを奨励します。

・国籍・人種・性別・信条・身体的特徴等による差別の禁止を徹底します。

・本人の能力や志望に応じて適正かつチャレンジングな職務を提供し、本人の実績を正しく評価し、処遇します。

・社員がその能力を最大限発揮できるような、安全で快適かつ生産的な職場環境を整えます。

・人材の継続的な育成に力を注ぎ、社員がその能力をフルに発揮することで会社の業績を伸ばし、「会社と社員が共に成長する関係」をつくります。

・社員がそれぞれ市民としての社会的責任を果たせるよう配慮します。

 

また、スミダ・バリューとして、以下の6つの価値をグローバル全社員の共通の理念としています。

 

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 特に、実力主義の考え方「グローバル企業として一貫して、ダイバーシティに富んだスミダの社員ひとりひとりの多様性を尊重し、お互いへの尊敬、個人の成長を奨励し、積極的にサポートする。それにより、社員の高いエンゲージメントを促進する。」は多様な人材の活躍を推進する価値観として重視しています。

 

②指標及び目標

「①戦略」に記載している考え方及び方針に基づく活動の結果、当連結会計年度末現在、グローバル全社のマネジメント職に占める女性の比率は22%となっています。また、グローバル全体の上位マネジメント職に占める中途入社者(過去のM&Aを通じた当社グループへの参画者を含む)は8割強、外国人比率は5割強であり、当社グループビジネスのグローバル展開を反映した構成となっています。今後も、現状の維持向上を目指してまいります。

 

3【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2025年3月19日)現在において当社グループが判断したものです。

当社グループでは、リスクマネジメント委員会を設置し、リスクの把握・対策の実施・被害の最小化に向けた取り組みを継続的に行っています。具体的には、個々のリスク要因につき、発生の可能性、損害の大きさ、事業の継続性等の観点から分析評価し、その対応としてリスクの軽減、移転後の残余リスクを把握しています。ここでは、当社グループが上述した要素を考慮した上で、比較的大きいと考えるリスクを記載します。

 

(1)車載事業、大口顧客への高依存度

当社グループの売上収益のうち、車載関連の顧客への依存度が高く(売上収益の約6割)、当該顧客の動向により売上収益が大きく変動する可能性があります。

中長期的には、欧米や中国をはじめ世界中が地球環境保全、省エネ化の動きを強め、ガソリン車からxEVへとシフトする機運の中、車載関連の売上収益比率が高いことは当社グループの強みでもあります。しかし、新車販売台数の低迷並びにEV販売台数の低迷等、車載関連の事業環境の変化等によって当社グループの業績に大きな影響を与える可能性があります。

当社グループは、大口顧客グループと長期にわたる緊密な取引関係を通じ、生産及び販売の見通し、事業戦略に関する方向性を共有することで、当社グループの投資・事業戦略の判断に活用し、業績向上に取り組んでいます。

 

(2)技術革新と価格競争、競合環境の変化

当社グループの製品は、コイルとその応用部品です。現在までのところ車載関連市場、インダストリー関連市場、及び家電関連市場における各種機器の電源周りに多く使用されています。特に車載関連市場は、使用されるコイルの数が著しく多くなることが予想され、今後拡大していくxEVにおいても数多く使用されます。その結果、当社グループの製品に求められる技術要素は、今まで以上に高い耐電圧の要求を満たし、小型化を実現し、高い品質基準を確保することが求められています。当社グループとしては、今まで培った要素技術をさらに強化し、顧客に当社グループの製品を選んで頂けるように対応しています。

xEV化の市場が拡大していることから競合他社も多く参入してきており、価格面でも競争環境が厳しくなってきています。当社グループとしては、製品品質の向上とグローバル体制の強化を図り競合他社との差別化を図っています。また、顧客の初期開発段階から当社グループが参画し、顧客とともに製品開発を行っていくというビジネスモデルの構築も進めています。家電製品市場では、顧客の製品採用基準が、製品品質よりは価格重視へ変容してきていることから、最適価格での提供を目指し、製品設計は当社グループで担当し、製造委託先の活用も行い、厳しい価格競争においても最適な販売価格で対応できる体制の構築も行っています。

 

(3)地政学上のリスク(米中経済摩擦等)

当社グループは、中国、その他アジア、欧州、北米に多くの生産拠点を持ち、海外営業拠点を通じて製品をグローバルの顧客に供給しています。そうした中、米中貿易摩擦、欧州における政権交代、中東における紛争等の動向により生産、物流、営業活動が制限を受け、顧客への製品供給に支障をきたす場合、当社グループの財政状態及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、各国の関税の引上げや安全保障貿易管理に基づく輸出規制、新興技術等に対する取引制限等の政策に対して分析を行い、必要に応じて取引形態やサプライ・チェーンの見直し等も行うことにより、事業への影響の低減を図っています。また、複数の生産拠点で製品を生産することでリスクの分散を図っています。

中長期的には、開発・製造・販売を同一地域にて対応できるよう地産地消の方針で製造拠点を見直していきます。上記のようなリスクを回避できるよう、日本・タイ・ベトナムにおいて製造能力を増強しています。

 

(4)品質管理

当社グループは、常に製品の品質向上に尽力し、製品の品質確保に万全を期していますが、当社グループ製品の要求仕様への不一致や欠陥により供給先である顧客の製造ラインが停止する事態や、欠陥を含んだ当社グループの製品を利用した電子機器に不具合が生じる事態も考えられます。欠陥又はその他の問題が発生した場合は、当社グループの売上収益の減少、市場シェアの低下、当社グループブランドに対する信頼又は評価の低下、市場認知度、開発などへの重大な影響が生じる可能性があり、また顧客からは市場回収処理を行うこと等に伴う賠償請求の可能性もあり、当社グループの財政状態及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(5)製造拠点の賃金上昇

当社グループは、中国、その他アジア、欧州、北米に生産拠点を有し、グローバルに事業展開しています。

当社グループの生産において、人件費、社会保険料の上昇並びに制度変更等による生産コストアップが当社グループの事業展開、財政状態及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。そのため、生産においては自動化を進めることで労働生産性の向上に継続的に取り組んでいます。

 

(6)銅価格、原材料価格等の変動、インフレ等による物流費、エネルギー価格の高騰

当社グループは、多くの原材料を外部調達しており、主要な原材料である銅、鉄、原油等の価格は国際市況に連動しています。その購入価格を決定する際の取引価格は、国際的な需給だけでなく投機的取引の影響も受けながら常に変動していて、市況の変動に伴い業績に影響を与える可能性があります。

また、経済状況により、物流コンテナ不足や世界の港湾における流通の混乱からの物流費高騰や、急激なインフレによる原油・電力等のエネルギー価格の高騰は当社グループの業績に影響をもたらす場合があります。

当社グループは、価格変動の激しい銅価格の変動によるリスクを最小限に抑えるため、顧客との契約に銅価格連動の仕組みを織り込むこと等に努めていますが、製品価格への転嫁が困難な場合や相場が乱高下する局面では損失が発生し、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。また、地産地消を進め、物流費を抑制するとともに、再生可能エネルギー等の活用で急激なインフレによるエネルギー価格高騰の影響を最小限に留めるための取り組みを進めています。

 

(7)公的規制とコンプライアンス

当社グループは、国内及び諸外国・地域において、法規制や政府の許認可等、様々な公的規制の適用を受けています。こうした公的規制に違反した場合、監督官庁による処分、訴訟の提起、さらには事業活動の停止に至るリスクや企業ブランド価値の毀損、社会的信用の失墜等のリスクがあります。

当社グループは、公的規制の対象領域ごとに主管する部門を決めて対応しています。また、公的規制に対応した社内ルールを定め、未然に違反を防止するための対応をとっています。これらの取り組みに加え、法令遵守のみならず、役員及び従業員が共有すべき倫理観、遵守すべき倫理規範等を「スミダの経営に関する諸原則・行動規範」として制定し、当社及び関係会社における行動指針の遵守並びに法令違反等の問題発生を全社的に予防するとともに、コンプライアンス上の問題を報告する内部通報制度を設けています。また、法令遵守の周知徹底の機会を設けるとともに、カルテル等の反競争的行為や贈賄をはじめ、企業倫理・コンプライアンスに関して、役員及び従業員への定期的な研修等を行っています。しかし、グローバルに事業を展開する中で、国や地域において、公的規則の新設・強化及び当社グループが想定しない形でこれらが適用されること等により、当社グループが公的規制に抵触することになった場合には、事業活動が制限され、公的規制の遵守に係る費用が増加する等、当社グループの財政状態及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(8)サイバーセキュリティ

コンピューターウイルスの高度化や巧妙化が進み、ますます脅威が高まっているサイバー攻撃等により、当社グループの技術上、営業上等の秘密情報が流出や改ざん、生産設備等が被害を受け生産に影響が生じる等のリスクがあります。また、盗難・紛失などを通じて第三者が不正流用する可能性もあります。

当社グループは、Information Security Officeを組織し、セキュリティ方針や計画を策定しています。定期的なデータバックアップ、ウイルス対策ソフトの利用、強固なパスワードの利用、送信ドメイン認証の活用、多要素認証の導入、各システムへのアクセス権限管理に加え、フィッシング対策などの啓発を目的とした継続的なe-ラーニング、入社時研修やBCP対策を行っており、近年増加しているランサムウェアに対しても有効な対策を講じています。

 

(9)大規模災害

当社グループは、中国、その他アジア、欧州、北米に多くの生産拠点を持ち、海外営業拠点を通じて製品をグローバルの顧客に供給しています。大地震、洪水、津波、竜巻などの自然災害、感染症などの疾病の流行、戦争及びテロ、内乱、現地従業員のストライキ等の労働問題、電力やエネルギーの使用制限に加え、近年の気候変動に伴う災害の激甚化や、これまでに類を見ない、対応策に決め手のない感染症の発生などによる広い範囲での社会機能の停止などの発生も考えられます。これらが発生した場合には、原材料や部品の調達、生産、販売に遅延や停止を生じる可能性があり、そうした混乱などが当社グループの財政状態及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(10)M&Aにより認識したのれんの減損リスク

当社グループは、技術力の強化や販売網の拡充を目的に、当社グループ以外の会社との事業提携、合併及び買収(以下M&A等)を行うことがあります。M&A等の対象となる会社の選定と検討は積極的に継続し、良い候補先が見つかった場合は、実行していきます。

M&A等の実施にあたっては事前に相乗効果の有無を見極めてから実施を決定し、完了後は相乗効果を最大にするように経営努力をしています。しかしM&A等の完了後に、対象会社との経営方針のすりあわせや業務部門における各種システム及び制度の統合等に当初想定以上の負担がかかることにより、予想されたとおり相乗効果が得られない可能性があります。また、M&A等に係る費用等が、一時的に当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性もあります。

当社グループは、M&A等に伴うのれん及びその他の無形資産等の資産を有しています。のれん及びその他の無形資産については、少なくとも年に一度、あるいは減損の兆候が認められる場合はその都度減損テストを行っています。M&A等により発生したのれんと無形資産は年次で減損テストを実施していますが、拡販施策に伴う将来収益拡大の計画及びEU事業セグメントにおける事業構造改革によるコスト削減効果には不確実性を伴い、予想した相乗効果が得られない場合、減損損失の発生により財政状態及び業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2025年3月19日)現在において当社グループが判断したものです。

 

(1)経営成績

①経営成績の概要

当連結会計年度において、世界ではロシアによるウクライナ侵攻の長期化やイスラエル及び周辺国における武力衝突による緊張が高まる中、米国が中国製EV等への追加関税を発動する等、地政学上の不安定さが高まりました。米国においては、インフレが減速に向かう中、底堅い賃金上昇により消費が好調です。欧州においては、自動車を中心に域外への輸出が伸び悩んでおり、とりわけ中核国ドイツの製造業景況感が悪化しています。中国においては、不動産不況が長引いており、住宅ローン金利の引き下げ等の政策の効果も限定的で依然として内需は停滞しています。金融政策においては、米国FRBがインフレ圧力の緩和を受けて計1.0%の利下げを実施し、また欧州ECBもそれを上回る利下げを実施しました。一方で、日銀は3月にゼロ金利を解除した後、7月にも利上げを実施しました。これらを受けて、年初からの円安基調は反転し、第3四半期連結会計期間においては円高が進行しました。その後、11月の米国大統領選挙の結果を受けて、米国における長期金利の上昇等により、年末にかけて再び円安が進行しました。

電子部品業界は、コロナ後の需要増加と供給不安が重なり在庫が膨らんでいましたが、ようやくこれらの在庫が解消に向かい出荷が増加傾向にあると見ています。世界の自動車販売は、供給制約によるペントアップ需要の消化が進む中、自動車ローン金利の高止まり等を受けて車両価格が上昇していることから、消費者が自動車を買いづらい状況が継続しています。EVについては、米国において補助金支給要件が厳格化され、またドイツにおいて補助金が打ち切られる等の環境下で、これら地域における需要が低迷しました。米欧の自動車メーカー各社がEVへの投資時期を遅らせること等を発表したことに呼応する形で、EVの普及を後押しする急速充電ネットワークの構築においても投資を手控える動きが見られました。一方で、xEVの最大市場である中国においては、メーカー各社が値引きを強化したことや政府による買い替え促進政策等を受けて、販売台数は引き続き堅調でした。2025年に入り米国においてEV促進策が撤回された影響も注視しています。

当社グループでは、計画期間を2024年から2026年までの3か年とする中期経営計画を2024年2月に発表しました。本中期経営計画においては、脱炭素化の流れを事業機会と捉え、xEV関連、充電インフラ、太陽光発電、蓄電池等を含む用途群を「グリーンエネルギー関連」と定義し、重点分野と位置づけて更なる成長を目指すことを掲げています。また、地政学リスクの高まりに対処するため、営業、開発、製造の3体制を各地域で完結し、お客様のニーズにより柔軟かつ迅速に対応できる地産地消の体制づくりを進めています。具体的には、中国における生産能力の最適化、北米における研究開発能力の更なる増強、インドにおける新規案件の獲得及びベトナムでの生産能力の拡大等を進めています。

当連結会計年度においては、獲得済み案件を積み上げて作成した増収計画に基づき、3期連続となる最高益更新を掲げました。しかしながら、EVに対する様子見姿勢及び高金利を受けた投資の手控え等の影響を受け、期初に想定していた売上収益拡大が遅れました。最大限の費用抑制努力を継続しているものの、減収による影響を完全に吸収することは難しいと判断したため、7月31日にやむなく業績予想を下方修正しました。しかしながらその後も、特に欧州における車載関連市場・インダストリー関連市場の回復に想定以上の時間を要したため、大胆な構造改革を速やかに実施する必要があると判断しました。構造改革の内容は欧州拠点における人員削減による合理化です。本合理化により、当連結会計年度に退職一時金等に係る事業構造改革費用1,086百万円をその他の営業費用として計上しましたが、2025年12月期に約1,600百万円、2026年12月期以降に1年あたり約1,800百万円の費用削減効果を見込んでいます。

当社グループはカスタム製品の受注生産ビジネスを営んでいるため、獲得した案件には供給責任が発生します。当連結会計年度においては、過年度に引き続き増収を見越して設備及び人員を配置していたものの、売上が実現せず結果として固定費負担が増えて収益性を低下させてしまいました。当社グループでは現在、全社を挙げて損益分岐点の引き下げを進めています。前述した外部環境の変化を受けて、売上の成長は鈍化が懸念されます。このため、足元の逆風下で現実的に見込まれる売上の中で、目標とする利益を出せる体制に変えていく方向に、戦い方を変える判断をしました。欧州での構造改革はこの一環です。加えて、主要な製造拠点である中国においても退職者の補充を行わない形で間接人員の適正化を進めています。また、業務効率化のため営業や生産技術の組織体制を変更しました。

当連結会計年度における当社グループの業績は以下のとおりです。

売上収益は、車載関連で様々な用途の製品需要が堅調に推移した一方で、インダストリー関連で太陽光発電関連及び産業機器向けの需要が低下したこと、家電関連でノートパソコン、タブレット端末、スマートフォン関連の需要が低下しました。グリーン関連売上は大幅な成長を見込んでいましたが、xEV関連需要の失速を受け微増にとどまりました。当連結会計年度の売上収益は前連結会計年度比2.5%減の143,978百万円でした。

営業利益は、前連結会計年度との比較において、減収による影響(3,465百万円の減益)、生産数量の減少に伴う固定費負担増加による影響(1,178百万円の減益)、並びに欧州における事業構造改革費用1,086百万円等の影響を受けて、同47.3%減の4,513百万円でした。また、税引前当期利益は同77.9%減の1,295百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益は同88.3%減の590百万円でした。

 

 

対前年 利益増減(単位:百万円)

 

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◎参考:期中平均為替レート

 

2023年度

2024年度

米ドル/円

140.21

150.95

ユーロ/円

151.37

163.78

人民元/円

19.78

20.97

 

◎参考:グリーンエネルギー関連売上

 

 

 

 

(単位:百万円)

 

連結会計期間

第1四半期

第2四半期

第3四半期

第4四半期

通期

2023年

8,123

9,304

9,572

9,788

36,790

2024年

9,507

9,365

9,784

10,293

38,951

 

当社グループは、ROIC(投下資本利益率)及びROE(株主資本コスト)を中期経営計画上のモニタリング指標としています。当連結会計年度においては営業利益が減少した影響でROICは3.4%に低下し、WACCを下回ってしまいました。なお、ROIC及びWACCの算定にあたっては、当社における平時の実効税率21.0%を用いています。

 

▶ROIC(投下資本利益率)

2023年度実績

2024年度実績

6.7%

3.4%

 

▶WACC(加重平均資本コスト)

2023年度実績

2024年度実績

5.7%

5.5%

 

 

■PBRの向上に向けた取組み

当連結会計年度末における当社グループのPBRは約0.5倍であり、ROEが1.0%であることから、PERは約50倍と算定されます。前連結会計年度末においてはこれらROE及びPERについて東証全上場企業の平均値との比較を通じて、特にPERに課題があると分析していましたが、財務レバレッジによる寄与が大きく、実際に当連結会計年度においては収益拡大が遅れる中で大幅に減益となってしまいました。こうした中、ROEの持続的な向上を目指す必要があると再認識し、足元では、当連結会計年度に公表した欧州における構造改革に加えて、中国における間接人員の適正化や経費抑制等による損益分岐点の引き下げを進めています。同時に、製品用途の多様化や顧客の分散等による収益源の多様化も推進しており、稼ぐ力の強化及び業績の安定化の両面に取り組んでいます。なお、PERの逆数は資本コストから期待成長率を差し引いた値と一致することから、当連結会計年度における当社グループの株主資本コストが9.3%であるとき、期待成長率は7.3%となります。当連結会計年度においてROEが大幅に低下した側面はあるものの、期待成長率は前連結会計年度末にマイナスだったところから、当連結会計年度末には改善しています。稼ぐ力の強化及び業績の安定化に取り組むとともに、引き続きIR活動等を通じて当社の取り組み及び成長性に対する理解促進を図っていきます。

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▶ROE

2023年度実績

2024年度実績

9.9%

1.0%

 

▶株主資本コスト

2023年度実績

2024年度実績

8.9%

9.3%

 

▶期待成長率

2023年度実績

2024年度実績

▲5.3%

7.3%

 

 

②報告セグメントの概況

当連結会計年度における報告セグメントの概況は次のとおりです。

1)アジア・パシフィック事業

アジア・パシフィック事業では、車載関連が堅調に推移した一方で、中国の景況感の悪化を受けてインダストリー関連の需要が減退したことも影響し、売上収益は前連結会計年度比1.1%減の94,679百万円でした。不断の生産効率改善並びに経費節減に取り組んでいるものの、工場の操業度低下が利益の圧迫要因となり、セグメント利益は同42.0%減の3,146百万円でした。

2)EU事業

EU事業では、前連結会計年度に比べ円安/ユーロ高で推移したものの、家電関連及びインダストリー関連での減収影響により、売上収益は前連結会計年度比7.9%減の56,240百万円でした。時短勤務をはじめとする経費節減に努めたものの、現下の厳しい市場環境は当面続くとの判断から人員削減による合理化が必要と判断し、構造改革に係る一時金を計上しました。セグメント利益は同33.5%減の2,679百万円でした。

 

③市場別の概況

当連結会計年度における市場別の概況は次のとおりです。

1)車載関連

世界的な新車生産台数の伸びを背景に、当社グループにおいてはxEV関連及びその他用途群の売上が好調に推移しました。しかしながら、欧州におけるEVへの補助金打ち切りの影響や、米国における政策の行方を注視しています。車載関連の売上収益は前連結会計年度比1.2%増の87,893百万円でした。

2)インダストリー関連

米欧のEVシフトにややブレーキがかかる動きもある中で、当社グループにおいてはxEV向け急速充電インフラ関連等が成長しました。他方で、長引く高金利等の影響を受けて太陽光発電関連の投資を手控える動きが顕著になったこと、並びに中国の景況感が停滞したこと等により当社グループの製品需要が減退しました。インダストリー関連の売上収益は前連結会計年度比9.5%減の36,314百万円でした。

 

3)家電関連

ノートパソコン、タブレット端末、スマートフォン関連の需要が引き続き弱含みで推移したものの、足元では生成AI搭載モデルの販売開始等もあり、需要回復の兆しが見えてきています。家電関連の売上収益は前連結会計年度比4.4%減の19,770百万円でした。

 

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④販売地域別の概況

当連結会計年度における販売地域別の概況は次のとおりです。なお、経営管理においては、各営業所の活動に実質的な責任を有する販売地域別に売上を再集計しています。このため、本項に記載する販売地域別の売上と、「第5 経理の状況」の連結財務諸表注記に記載する数値との間には不一致が生じます。

1)アジア(中国/台湾除く)

車載関連が全般的に好調な一方で、スマートフォン関連・PC等の家電製品関連向け需要が大きく落ち込みました。また、中国の景気回復に時間を要している影響で、インダストリー関連需要が低迷しました。アジア(中国/台湾除く)の売上収益は前連結会計年度比10.1%減の22,685百万円でした。

2)中国/台湾

スマートフォン関連・PC等の家電製品関連向け需要が伸びた一方で、太陽光発電設備向けの需要が落ち込みました。中国/台湾の売上収益は前連結会計年度比5.9%増の36,744百万円でした。

3)欧州

EVへの補助金打ち切りの影響により車載関連需要が伸び悩む中、前連結会計年度において特に好調だった太陽光発電設備関連の需要が低迷しました。欧州の売上収益は前連結会計年度比8.2%減の57,944百万円でした。

4)北米/その他

当連結会計年度の後半に政策金利が徐々に引き下げられる中、太陽光発電並びに蓄電池関連の需要が成長を牽引しました。北米/その他の売上収益は前連結会計年度比8.2%増の26,603百万円でした。

 

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 なお、当社グループは、需要の動向や顧客の要求、市場の変化等に柔軟に対応して生産活動を行っており、生産実績及び受注実績は販売実績に類似しています。このため、生産実績は以下「⑤生産地域別の概況」として記載し、受注実績は記載を省略しています。

 

⑤生産地域別の概況

当連結会計年度における生産地域別の概況は次のとおりです。

1)アジア(中国除く)

医療器関連の新製品導入に伴い、タイに新工場を開設し稼働開始しました。ベトナム・クアンガイ工場においては、次世代自動車用部品の需要増と、新エネルギー産業向けビジネスの拡大が見込まれます。また、欧米市場への輸出拠点としてニーズが増えていることから、ベトナム・ハイズオン省に新工場を建設中で、製品に使用する加工部品等を現地で内製する計画です。日本国内においては、2024年に増床した青森工場でインダストリー関連の新規案件の生産を開始しています。アジア(中国除く)で生産した製品による売上収益は、前連結会計年度比14.5%増の11,070百万円でした。

 

2)中国

世界経済が低迷する中、グループの主力生産拠点の中国では、経費削減や生産効率改善に向けた活動を展開しました。設備の内製化や材料調達の最適化、サプライ・チェーンの中間経費削減、重複する仕事の集約等を行い、間接経費の削減に取り組みました。また、筋肉質な体制作りとしてITインフラ投資を行い、省人化を推進しています。足元では、政府の刺激策に因る内需の回復を取り込むため、xEVや産業インフラ関連ビジネスの主要顧客への販売を強化しています。中国で生産した製品による売上収益は、前連結会計年度比4.1%減の75,648百万円でした。

 

3)欧州

当社グループでは、欧州域内の需要に対して、ルーマニアやスロベニアを中心に生産を行い、また中国はじめアジアにおける生産を増やしています。エネルギー価格等の高騰が続く欧州では、特にドイツにおいて自動車関連産業を中心に景況感が悪化しています。こうした中、当社グループでは車載関連市場・インダストリー関連市場の回復に想定以上の時間を要したため、大胆な構造改革を速やかに実施する必要があると判断し、生産拠点における人員削減による合理化を行いました。欧州で生産した製品による売上収益は、前連結会計年度比4.5%減の44,785百万円でした。

 

4)北米/その他

当社グループでは、北米の需要に対して米国内に2工場とメキシコ工場にて生産しています。今後、アジアや欧州域内の需要に対しても、本地域での生産要求が予測されるため、レイアウトの変更等により生産能力を拡充しています。北米以外で設計・開発する案件の生産が増えてきている中、遠隔からのコミュニケーションを効率的に行う目的で3D・スマートグラス等を活用しています。省人化とともにミスの低減を行い、プロセスの標準化を更に推進していきます。北米/その他で生産した製品による売上収益は、前連結会計年度比2.1%増の12,473百万円でした。

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(2)財政状態

(資産)

当連結会計年度末における資産合計は147,766百万円で、前連結会計年度末比で4,980百万円増加しました。当社の保有資産の9割超は外貨建てですが、当期に進行した円安の影響で、外貨建て資産の評価額が大きくなったことから全体的に資産残高が増加しました。

当連結会計年度末の現金及び現金同等物は4,286百万円でした。手元資金については、国内外連結子会社各社に資金が滞留することにより資金効率が低下するリスクに鑑み、主要子会社の最低手持資金額を設定し毎月その設定額と実際手持資金とを比較することで、グループ全体での余剰資金を削減し借入金の圧縮に努めています。また、3か月先までのローリング・フォーキャストを毎月実施することで資金管理を行っています。

(負債)

当連結会計年度末における負債合計は、有利子負債の借入及び返済による残高の変動等により、前連結会計年度末比1,377百万円増加し、86,851百万円でした。

当連結会計年度末におけるネット有利子負債残高は、前連結会計年度末から127百万円減少し、48,142百万円となりました。当連結会計年度末のネットDEレシオは0.82倍で、前連結会計年度末から0.06ポイント低下しました。当連結会計年度末現在、短期有利子負債(1年内返済予定又は償還予定の長期有利子負債を含む)の残高は36,424百万円で、長期有利子負債の残高は16,004百万円です。なお、当社グループの借入金のうち約70%が変動金利、約30%が固定金利によるものです。

当社グループの保有する資産のうち大部分が外貨建てであることに対応し、為替の影響を少なくするため、現地通貨建てでの調達を原則としつつ、金利コストも考慮した最適な資金調達を行っています。外貨建て借入金の割合が借入金全体の約82%を占めており、借入金の平均金利は4.3%です。

当社グループでは、主要な銀行と定期的にミーティングを行い、良好な関係を築いています。銀行団のオープン・コミットメントラインは110億円を維持しており、これら全てが未使用です。なお、中期的には収益性の向上と財務体質の強化に取り組み、信用格付けを取得し、資金調達の方法についての選択肢を増やす目標を持っています。

(資本)

当連結会計年度末の資本合計は、前連結会計年度末比3,603百万円増加し、60,915百万円でした。当期利益の計上、配当金の支払、また在外営業活動体の換算差額の変動を主要因としたその他の包括利益の計上等により、当連結会計年度末の親会社の所有者に帰属する持分合計は58,648百万円となり、親会社所有者帰属持分比率は前連結会計年度末の38.6%から、当連結会計年度末に39.7%となりました。また、1株当たり親会社所有者帰属持分は前連結会計年度末の1,687.39円から、当連結会計年度末は1,774.64円となりました。

 

◎参考:期末為替レート

 

2023年12月期

2024年12月期

米ドル/円

141.51

156.15

ユーロ/円

156.54

162.70

人民元/円

19.90

21.34

 

 

(3)キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は前連結会計年度末比1,178百万円増加し、4,286百万円でした。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの増減要因は次のとおりです。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果得られた資金は14,928百万円(前連結会計年度は18,343百万円の収入)でした。運転資本の増加を抑制できたことが営業キャッシュ・フローの改善に寄与しました。

 当社グループでは運転資本をモニターするKPIとしてCash Conversion Cycle(CCC)を採用しています。当連結会計年度末のCCCは95日で、前連結会計年度末から4日長くなりました。

 当社グループはB-to-Bビジネスを営んでいるため、DSO(売上債権回転日数)の短縮、つまり営業債権の回収期日の短縮は顧客からの値下げ圧力になりかねません。同様に、DPO(仕入債務回転日数)についての取り組みも仕入先からの値上げ圧力になりかねません。したがって、DIO(在庫回転日数)の管理が現実的な取り組みとなっています。DIOはサプライチェーンの混乱等のため顧客から納品の先延ばし要請を受けた影響で、2022年6月末時点で116日まで伸びました。その後、地域別、会社別に毎月モニタリングを実施し棚卸資産を減らす取り組みを行い、当連結会計年度末のDIOは85日でした。

 当連結会計年度末のDSOは73日、DPOは63日でした。

◎参考:Cash Conversion Cycle

 

実績

増減

2023年度

2024年度

DSO(売上債権回転日数)

68

73

5

DIO(在庫回転日数)

84

85

1

DPO(仕入債務回転日数)

61

63

2

Cash Conversion Cycle

91

95

4

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果支出した資金は8,834百万円(前連結会計年度は10,702百万円の支出)でした。当連結会計年度においては、期初に見込んだ売上収益の拡大が遅れていたことから、供給責任を伴う新製品及び増産投資を優先し、生産効率改善等を目的とする投資については抑制しました。有形固定資産の取得による支出は7,860百万円でした。

 当社グループは、顧客からの受注に基づき設備投資をしています。設備投資については、新製品、増産、生産効率改善、更新と目的別に計画を立て、規模の大きい設備投資については、NPV分析、モンテカルロシミュレーション等の手法を採用し、その採算性について検討後、実施を決定しています。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果支出した資金は5,268百万円(前連結会計年度は7,782百万円の支出)でした。借入残高が2,214百万円純減したことによる支出、配当金の支払額1,771百万円、リース負債の返済による支出1,283百万円等がありました。

 当社グループは、事業活動のための適切な資金確保、流動性の維持及び健全な財政状態を常にめざし、安定的な営業キャッシュ・フローの創出、幅広い資金調達手段の確保を進めています。成長を維持するために将来必要な運転資金及び設備投資資金は、主に手元の現金と営業活動からのキャッシュ・フローに加え、借入等により調達しています。

(単位:百万円)

 

2023年12月期

2024年12月期

増減

営業活動によるキャッシュ・フロー

18,343

14,928

△3,415

投資活動によるキャッシュ・フロー

△10,702

△8,834

1,868

財務活動によるキャッシュ・フロー

△7,782

△5,268

2,513

現金及び現金同等物に係る換算差額

304

352

47

現金及び現金同等物の増減額

163

1,178

1,014

現金及び現金同等物の期首残高

2,944

3,107

163

現金及び現金同等物の期末残高

3,107

4,286

1,178

 

(4)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」第312条の規定によりIFRS会計基準に準拠して作成しています。この連結財務諸表を作成するに当たって、必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しています。

 なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要性がある会計方針、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 2.重要性がある会計方針 3.重要な会計上の見積り及び判断」に記載しています。

 

 

5【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

 当連結会計年度の研究開発活動は、アジア・パシフィック事業及びEU事業ともに車載関連では、ハイブリッド・電気自動車向けモーター、オルタネータの制御回路、ECU制御用途向けに、高対恒性のインダクタ、トランスの製品・ユニット開発を進めました。インダストリー分野ではxEV向け各種トランス及び大電流コイル、産業機器、通信機器向け一次電源用トランス及びコイル、家電・産業機器・医療機器向けの高周波トランス及びリアクトル等を中心とした製品の開発を進めました。家電製品関連分野では、機器開発におけるアナログ回路設計と電源設計の技術及びその関連分野の開発を進めました。さらに製品の開発に必要不可欠な素材の研究も重要と考えています。

 当連結会計年度における当社グループの研究開発費の金額はアジア・パシフィック事業3,941百万円、EU事業1,364百万円で、合わせて5,306百万円でした。