当中間連結会計期間において、新たな事業等のリスクの発生、または、前事業年度の有価証券報告書に記載した事業等のリスクについての重要な変更はありません。
文中に関する事項は、当中間連結会計期間の末日現在において判断したものです。
(1)財政状態及び経営成績の状況
①経営成績の概要
当中間連結会計期間においては、ロシアとウクライナとの間での停戦交渉及びイスラエルとイランとの間での武力衝突といった地政学上の不安定要因に加え、米政権による関税政策を巡る情勢等により、事業環境は引き続き不確実性の高い状態にあったと考えています。米国においては、関税によるコストプッシュ型インフレへの警戒感から消費者心理が悪化しつつあり、また企業の慎重姿勢が強まる中、今年7月に大型減税法案が成立しました。欧州においては、エネルギー価格の下落等によりインフレが落ち着いてきている一方で、対米関税交渉の成り行き次第では製造業の低迷が長引く懸念があります。中国においては、耐久消費財の買い替え支援補助金等により内需の回復が図られる一方で、輸出先をASEAN諸国向けに多角化する等の動きが見られます。金融政策では、米国FRBが経済見通しの不確実性が高まったと指摘し金利を据え置いた一方で、欧州ECBは今年に入り6月までに計4回の利下げを実施しました。他方で、日銀は昨年7月に引き続き、今年1月に利上げを実施しました。
当社グループの製品の用途として車載関連の構成比率が約6割を占めます。世界の自動車販売は、中国が成長を牽引しています。中国ではxEVを中心にメーカー各社による熾烈な価格競争により市場が拡大してきましたが、政府により過度な価格競争の抑制及び支払条件の適正化が図られようとしています。また、中国においては新車販売に占める新エネルギー車の割合が約7割に達する中、過剰生産能力の問題が指摘されています。米国においても自動車販売は堅調な一方で、欧州においては消費者心理の低迷により落ち込んでいます。
前連結会計年度における当社グループの売上全体に占める米国の割合は約2割です。米政権による関税政策を巡り、各国による対米二国間交渉が徐々に進展しています。当社グループは、関税による追加コストを最終的に負担することになる主体を注視しています。当社グループにおいては、納品にあたり当社グループが関税を直接負担する取引は僅かです。したがって、関税による当社グループへの直接影響は軽微と考えています。他方で、間接影響として、関税による追加コストを消費者が負担することになれば最終需要が低下する可能性があり、企業が負担することになればサプライ・チェーン各段階での値下げ圧力となる可能性があると見ています。これらに加えて、為替の変動も注視しています。
当社グループは、以前より米中貿易摩擦等の地政学リスクを事業等のリスクと認識し、各国の関税の引上げや安全保障貿易管理に基づく輸出規制、新興技術等に対する取引制限等の政策に対して分析を行い、必要に応じて取引形態やサプライ・チェーンの見直し等も行うことにより、事業への影響の低減を図っています。また、複数の生産拠点で製品を生産することでリスクの分散を図っています。こうした取り組みの一環として、アジア・欧州・北米の各域内で設計・製造・販売を完結できる地産地消体制を整えています。状況が時々刻々と変化する中で、この地産地消体制を活かしながら顧客の要望に柔軟に対応していく方針です。
当中間連結会計期間においては、欧州における事業構造改革が計画どおり完了しました。また、中国における製造間接費の適正化も計画どおり進捗しています。足元では、事業環境の不確実性の高まりを受けて、より一層の経費節減を通じ損益分岐点の更なる改善に努めています。
当中間連結会計期間における当社グループの業績は以下のとおりです。売上収益は前中間連結会計期間比2.6%減の71,170百万円、営業利益は前中間連結会計期間比44.2%増の3,364百万円でした。当中間連結会計期間において、一部の顧客との間で受注数量減少に対し当社グループが補償を受けることに合意したことで、一過性要因として572百万円の増益となりました。加えて、営業利益の増減要因は、前中間連結会計期間との比較において、減収による影響(1,014百万円の減益)、製造間接費の減少(570百万円の増益)、賃金の影響(440百万円の増益)等です。欧州における事業構造改革によるコスト削減は、主に賃金の影響に含まれています。また、当中間連結会計期間は支払金利等の影響で金融収益/金融費用が1,190百万円のマイナスであったこと等から、税引前中間利益は同196.6%増の2,174百万円、親会社の所有者に帰属する中間利益は同243.0%増の1,667百万円でした。
対前年 利益増減(単位:百万円)
◎参考:期中平均為替レート
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2024年 中間連結会計期間 |
2025年 中間連結会計期間 |
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米ドル/円 |
150.75 |
149.94 |
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ユーロ/円 |
163.47 |
161.80 |
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人民元/円 |
20.88 |
20.64 |
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香港ドル/円 |
19.28 |
19.26 |
(市場別の概況)
当中間連結会計期間における市場別の概況は次のとおりです。
1) 車載関連
中国における現地メーカーの著しい伸長及び欧州系メーカーの停滞等を背景として、当社グループにおいては欧州系メーカー向け製品の需要が低迷しました。車載関連の売上収益は前中間連結会計期間比5.4%減の42,982百万円でした。
2) インダストリー関連
米欧のEVシフトにブレーキがかかる中で、当社グループにおいては欧州におけるxEV向け急速充電インフラ関連等の需要が減少しました。また、長引く高金利等の影響を受けて太陽光発電関連の投資を手控える動きが顕著になりました。インダストリー関連の売上収益は前中間連結会計期間比0.8%減の18,076百万円でした。
3) 家電関連
一部の顧客との間で受注数量減少に対し当社グループが補償を受けることに合意したことによる一過性要因としての増収が寄与しました。生成AI搭載モデルの販売開始等もあり、期初にはノートパソコン、タブレット端末、スマートフォン関連の需要が回復しましたが、当中間連結会計期間全体では停滞感が出てきました。家電関連の売上収益は前中間連結会計期間比7.3%増の10,112百万円でした。
(単位:百万円)
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2024年 中間連結会計期間 |
2025年 中間連結会計期間 |
増減率(%) |
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車載関連 |
45,426 |
42,982 |
△5.4 |
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インダストリー関連 |
18,217 |
18,076 |
△0.8 |
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家電関連 |
9,421 |
10,112 |
7.3 |
(報告セグメントの状況)
当中間連結会計期間における報告セグメントの状況は次のとおりです。
1) アジア・パシフィック事業
アジア・パシフィック事業では、中国における車載関連の需要が低迷した一方で、その他アジア及び北米におけるインダストリー関連の需要が伸長しました。売上収益は前中間連結会計期間比1.2%増の47,424百万円でした。中国における製造間接費の適正化も計画どおり進捗しています。これらに加え、一部の顧客との間で受注数量減少に対し当社グループが補償を受けることに合意したことによる一過性要因の増収も寄与しました。セグメント利益は同60.2%増の2,289百万円でした。
2) EU事業
EU事業では、xEV向け急速充電インフラ関連等の需要が大きく減少した結果、売上収益は前中間連結会計期間比7.3%減の27,509百万円でした。前連結会計年度に決断した事業構造改革が、計画どおり完了しました。セグメント利益は同29.7%増の1,248百万円でした。
②財政状態に関する説明
(資産)
当中間連結会計期間末における資産合計は142,062百万円となり、前連結会計年度末比5,704百万円減少しました。当社グループの保有資産の9割超は外貨建てですが、当中間連結会計期間に進行した円高の影響で、外貨建て資産の評価額が小さくなったことから全体に資産残高が減少しました。
当中間連結会計期間末の現金及び現金同等物は5,429百万円で、前連結会計年度末から1,143百万円増加しました。手元資金については、国内外連結子会社各社に資金が滞留することにより資金効率が低下するリスクに鑑み、主要子会社の最低手持資金額を設定し毎月その設定額と実際手持資金とを比較することで、グループ全体での余剰資金を削減し借入金の圧縮に努めています。また、3か月先までのローリング・フォーキャストを毎月実施することで資金管理を行っています。
(負債)
当中間連結会計期間末における負債合計は、引当金の目的使用による減少、有利子負債の借入及び返済による残高の変動等により83,102百万円となり、前連結会計年度末比3,748百万円減少しました。
当中間連結会計期間末におけるネット有利子負債残高は、前連結会計年度末から1,450百万円減少し、46,691百万円となりました。当中間連結会計期間末のネットDEレシオは0.82倍で、前連結会計年度末と同水準でした。当中間連結会計期間末現在、短期有利子負債(1年内返済予定又は償還予定の長期有利子負債を含む)の残高は36,945百万円で、長期有利子負債の残高は15,175百万円です。当社グループの借入金のうち約80%が変動金利、約20%が固定金利によるものです。
当社グループの保有する資産のうち大部分が外貨建てであることに対応し、為替の影響を少なくするため、現地通貨建てでの調達を原則としつつ、金利コストも考慮した最適な資金調達を行っています。外貨建て借入金の割合が借入金全体の約80%を占めており、借入金の平均金利は3.6%です。
当社グループでは、主要な銀行と定期的にミーティングを行い、良好な関係を築いています。銀行団のオープン・コミットメントラインは110億円を維持しており、これら全てが未使用です。なお、中期的には収益性の向上と財務体質の強化に取り組み、信用格付けを取得し、資金調達の方法についての選択肢を増やす目標を持っています。
(資本)
当中間連結会計期間末の資本合計は、前連結会計年度末比1,955百万円減少し、58,960百万円となりました。中間利益の計上、配当金の支払、また在外営業活動体の換算差額の変動を主要因としたその他の包括利益の計上等により、親会社の所有者に帰属する持分合計は56,801百万円となり、親会社所有者帰属持分比率は前連結会計年度末の39.7%から当中間連結会計期間末は40.0%となりました。また、1株当たり親会社所有者帰属持分は前連結会計年度末の1,774.64円から、当中間連結会計期間末は1,718.09円となりました。
◎参考:期末為替レート
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2024年12月期末 |
2025年中間連結会計期間末 |
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米ドル/円 |
156.15 |
144.12 |
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ユーロ/円 |
162.70 |
168.98 |
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人民元/円 |
21.34 |
20.11 |
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香港ドル/円 |
20.11 |
18.36 |
③キャッシュ・フローの状況
当中間連結会計期間末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は前連結会計年度末比1,143百万円増加し、5,429百万円でした。
当中間連結会計期間における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は5,950百万円(前中間連結会計期間は5,324百万円の収入)でした。税引前中間利益2,174百万円、減価償却費及び償却費5,998百万円の計上等があったことによります。
当社グループでは運転資本をモニターするKPIとしてCash Conversion Cycle(CCC)を採用しています。当中間連結会計期間末のCCCは96日で、前連結会計年度末から1日長くなりました。
当社グループはB-to-Bビジネスを営んでいるため、DSO(売上債権回転日数)の短縮、つまり営業債権の回収期日の短縮は顧客からの値下げ圧力になりかねません。同様に、DPO(仕入債務回転日数)についての取り組みも仕入先からの値上げ圧力になりかねません。したがって、DIO(在庫回転日数)の管理が現実的な取り組みとなっています。地域別、会社別に毎月モニタリングを実施し棚卸資産を減らす取り組みを行っています。当中間連結会計期間末のDIOは79日、DSOは76日、DPOは59日でした。
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実績 |
増減 (日) |
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2024年12月期 (日) |
2025年中間期 (日) |
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DSO(売上債権回転日数) |
73 |
76 |
3 |
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DIO(在庫回転日数) |
85 |
79 |
△6 |
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DPO(仕入債務回転日数) |
63 |
59 |
△4 |
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Cash Conversion Cycle |
95 |
96 |
1 |
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果支出した資金は3,731百万円(前中間連結会計期間は4,981百万円の支出)でした。
当社グループでは、顧客からの受注に基づき設備投資をしています。設備投資については、新製品、増産、生産効率改善、更新と目的別に計画を立て、規模の大きい設備投資については、NPV分析、モンテカルロシミュレーション等の手法を採用し、その採算性について検討後、設備投資を決定しています。当中間連結会計期間は、車載関連及びインダストリー関連の受注済み案件に係る設備等に投資を行いました。これら有形固定資産の取得による支出は3,296百万円でした。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果支出した資金は692百万円(前中間連結会計期間は1,222百万円の収入)でした。有利子負債が906百万円純増したことによる収入があったものの、配当金の支払額891百万円、リース負債の返済による支出708百万円等の支出があったことによるものです。
(単位:百万円)
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2024年 中間連結会計期間 |
2025年 中間連結会計期間 |
増減 |
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営業活動によるキャッシュ・フロー |
5,324 |
5,950 |
625 |
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投資活動によるキャッシュ・フロー |
△4,981 |
△3,731 |
1,250 |
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財務活動によるキャッシュ・フロー |
1,222 |
△692 |
△1,915 |
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現金及び現金同等物に係る換算差額 |
482 |
△382 |
△865 |
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現金及び現金同等物の増減額 |
2,048 |
1,143 |
△905 |
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現金及び現金同等物の期首残高 |
3,107 |
4,286 |
1,178 |
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現金及び現金同等物の中間期末残高 |
5,156 |
5,429 |
273 |
(2)経営方針・経営戦略等
当中間連結会計期間において、当社グループが定めている経営方針・経営戦略等については、有価証券報告書(2025年3月19日提出)の記載から重要な変更はありません。
(3)事業上及び財務上の対処すべき課題
当中間連結会計期間において、当社グループが対処すべき課題については、有価証券報告書(2025年3月19日提出)の記載から重要な変更又は新たな発生はありません。
(4)研究開発活動
当中間連結会計期間におけるグループ全体の研究開発費の総額は2,899百万円です。なお、当中間連結会計期間において、当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。
当中間連結会計期間において、経営上の重要な契約等の決定または締結等はありません。