文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、その達成を保証するものではありません。
当社は2027年度をターゲットとする新中期経営計画(Conversion2027)を策定しました。2025年度より事業再編・拠点統廃合・人員削減等収益構造の抜本的転換を図り利益率の改善を実現するため、3つの観点で強力に「転換」を実行していきます。
①高収益構造へ「転換」
変動費については、不採算・ノンコア事業の見直しにより収益性の高い事業ポートフォリオへの転換に加え、技術力により材料費の更なる削減や品質の作り込みを加速します。固定費については、拠点統廃合やプロセス抜本変革(PSI/MRP等)により製造間接中心に人員削減を断行します。一方で、システム・DX投資、先行開発投資、自動化投資には売上高の1%を目途に戦略投資枠を確保し、高収益構造を確立します。
②成長を支える「事業5本柱」へ「転換」
市場動向を踏まえた5つの注力事業領域を「事業5本柱」として明示し、①AI社会を支える、②サステナブル・インフラとエネルギーの追求、③産業の生産効率化、④より良い生活の追求(Better Life)、⑤モビリティイノベーションの各領域で、既存事業の枠を超えてシナジーを追求します。各地域の需要に応じて地産地消をベースにビジネスを展開し、顧客目線の”One Nidec”活動へリソースを結集します。
③真のグローバル体制へ「転換」
チーフオフィサー制(CxO)の強化と執行役員のスリム化を図り、よりスピーディーな経営体制を実現します。高度な技術・技能・知識を有する「フェロー」と次世代の役員候補者である「理事」を新設し、グローバルでリーンな体制を構築します。
新中期経営計画(Conversion2027)の業績目標は次のとおりです。
2027年度
①連結売上高 2.9兆円
②営業利益 3,500億円(営業利益率 12%)
③ROIC(投下資本利益率) 12%
(2)経営環境及び中長期的な会社の経営戦略
経営の基本方針を踏まえた経営環境及び経営戦略については次のとおりです。
①精密小型モータ
精密小型モータ事業にはHDD用モータ事業とその他小型モータ事業があります。HDDは主にPCやサーバをはじめとした多くの情報機器に用いられていますが、その心臓部を担うのがHDD用モータです。タブレットやスマートフォン等の新しいIT端末の普及によりPC用途のHDDは今後大きな市場拡大を望めませんが、一方で5G通信の拡がりにより画像や動画等の高画質・高容量化、ソーシャルメディアやゲームの普及といったビッグデータ化は益々加速すると考えられます。それに伴うストレージ需要の拡大により、今後もサーバ用途等ではHDD用モータ需要は安定して継続すると見込まれます。2024年度ではデータセンター向けのニアラインHDDの需要が増加したことで売上高が増加しました。
その他小型モータに関しては当社が手掛けてきた光ディスク用やOA機器用モータは中長期トレンドとして需要が減少しています。そこで成長事業として新しく取り組んでいるのがAIサーバ向け水冷モジュールです。今後拡大が見込まれるAIは膨大なデータを基に学習処理を行うため、AI向け半導体演算装置(CPU/GPU)が高い熱を発します。AIの発展に伴い、空冷式に対して格段に高い冷却能力を持つ水冷モジュールの需要が高まっており当社では生産キャパシティの拡大、パーツの内製化、次世代製品の開発等に取り組んでいます。また、電動二輪車向けモータの開発にも取り組んでいます。四輪車同様、二輪車でも電動化の波が押し寄せており、駆動ユニット向けモータ需要の大幅拡大が今後期待できる市場と認識しています。最大の市場であるインドにて、インドの二輪車メーカー向けの営業活動に注力し、既に複数のトップメーカーへ製品を供給しています。その他のAV・IT・OA・通信機器や家電・産業機器等多岐にわたる分野においても新たな活用の場を開拓し、持続的な成長につなげていきます。
②車載
車載オーガニック(既存事業)においては、「CASE革命」に伴う自動車部品の電動化といった市場の変化の追い風を捉え、世界No.1シェアを誇る電動パワステ用モータやブレーキ用モータをはじめとした車載用モータに加え、電動オイルポンプや電動ウォーターポンプ等の車載製品を提供し、更なる市場シェアの獲得と、売上・利益の成長を強力に推進していきます。また、欧米オペレーションに強みを持つ家電産業事業本部(ACIM)と統合することで地域毎の強力な横串機能によりオペレーション(調達、生産、物流)を統合し競争力強化を図っています。更に、拡大する電子・電源制御領域において、ニデックモビリティとニデックエレシスを統合することで協業・知見集約を図り、更なる競争力の強化を進めます。
EVトラクションモータ事業においては、激しい価格競争の進展によって健全な競争環境が失われつつある中国EV市場において、開発や部品調達の更なる現地化による徹底したコスト削減、次世代のE-Axle開発等、中国EV市場の競争に対応するための施策を実行しています。一方、欧州ではStellantisグループとの合弁会社であるニデックPSAイーモーターズが2024年度にE-Axleの本格的な量産を開始し、連結業績への算入も始まっており、材料費・外注費の改善や品質の向上を通して収益性の向上を図っています。また、車載事業全般においては組織の枠を超えた一体化の取り組みを継続しており、一貫した戦略を基にしたシナジーにより市場に更なる価値を提供してまいります。
③家電・商業・産業用
現在、世界の電力使用量の約半分をモータが占めていると言われており、特に産業用モータによる消費量が大きいことから、より高効率なモータへの置き換えが急務となっています。当社は、家電関連では、洗濯機、乾燥機、食洗機用モータや冷蔵庫用のコンプレッサー及びコンプレッサー用のモータ等を手掛けており、効率に優れるブラシレスDCモータへの置き換え需要の更なる高まりに応えていきます。また、家電需要の新興国への拡大も中期的に期待されます。商業部門ではエアコン向けモータやECの配送センターで使用されるロボット向けのモジュール等を提供し、産業部門では農業、ガス、鉱業、上下水道、海洋といったマーケットを中心に事業を展開しています。特に、データセンターに必要不可欠な非常用電源向けの発電機、社会インフラ更新に伴う大型モータの需要が増大しており、これらの事業においては付加価値の高いメンテナンス事業にも注力しています。また各国の発電・送電事業者に向けたバッテリーエネルギー貯蔵システム(BESS)の需要も高まっています。再生可能エネルギーの増加と共に、当社BESS関連ビジネスは今後も大きな成長が期待されます。ブラジルの航空機メーカーEMBRAER社との合弁会社を設立したeVTOL(電動垂直離着陸機)向けモータも移動インフラの変化と共に今後の成長が期待される分野です。
④機器装置
機械事業本部は、主に減速機事業・プレス事業・工作機械事業に分かれます。減速機事業については、先進国を中心に広がる少子高齢化による労働力不足が今後の需要を拡大させると考えられ、中でも成長が期待される協働ロボット用減速機の開発・生産に注力していきます。プレス機事業については、プレス機、送り装置等の周辺機器を揃え、日本・アメリカ・スペイン他に生産拠点を持ち、グローバルで幅広い製品をワンストップで供給できる体制を整えています。工作機械事業については、現在の製品ポートフォリオとして、マシニングセンタ・旋盤・歯車機械・大型汎用工作機械が揃い、多くのお客様にワンストップで製品・サービスを提供できる体制が整っています。当社は新製品・新技術の開発を通じて新市場を開拓し、2030年度までにグローバルNo.1の総合工作機械メーカーとなることを目指しています。
⑤M&A
上記の目標を達成するために、当社では被買収企業と既存の技術を掛け合わせることで企業価値を最大化し、更なる成長を図っています。特に機械事業本部では、グローバルNo.1の総合工作機械メーカーを目指すためM&Aを積極的に行っています。2021年8月に高精度・高効率の歯車加工技術を持つ三菱重工工作機械株式会社(現 ニデックマシンツール)を買収し工作機械事業に参入して以降、2022年2月にマシニングセンタの老舗であるOKK株式会社(現 ニデックオーケーケー)、2023年2月に横中ぐり盤の世界トップメーカーであるPAMA社、2023年12月に旋盤の専門メーカーである株式会社TAKISAWAを買収しました。これら一連の買収により製品ラインアップの拡充と海外市場におけるシェア強化を図っています。また、2024年10月にプレス周辺機器製造、販売等を事業内容とするLinear Transfer Automation Inc.及び同関連会社を買収したことで、プレス機本体と前後工程の周辺ライン一式というトータルシステムのソリューション提供が可能になり売上拡大が期待できます。
⑥ESG
当社事業の持続性を担保する取り組みとして「脱炭素社会の実現」「人権の尊重・適正な労働慣行の浸透」「国際競争力が高い人材の確保・育成」を含む5つの重要分野(マテリアリティ)において改善活動を進めており、それらの成果は役員報酬に反映されます。「脱炭素社会の実現」を例に挙げると、2040年度までにスコープ1・2のCO2排出量を、2050年度にはサプライチェーンのCO2排出量(Scope3)をネットゼロ状態にする長期目標を設定しており、そこへ至る道程には、2030年度までにスコープ1・2排出量を42%削減(2022年度比)し、スコープ3排出量を25%削減(2022年度比)する中間目標を据えています。この中間目標は国際的気候変動イニシアティブであるSBTi (Science-based Target initiative)の検証を経ており、当社は再生可能エネルギーの導入や省エネ活動、ならびに軽薄短小技術を活かした省資源・省エネルギー製品の開発を目標到達の主軸としています。
今後、当社は「中長期の方向性」を明確化するため、市場動向を踏まえた5つの注力事業領域を「事業5本柱」として位置付け、①AI社会を支える、②サステナブル・インフラとエネルギーの追求、③産業の生産効率化、④より良い生活の追求(Better Life)、⑤モビリティイノベーションの各領域でニデック各社の強みを活かし、協業とシナジーの発揮によりビジネス機会を獲得し事業拡大を目指すとともに、顧客目線・要望を意識し、既存事業の枠を超えてグループ内の強み・価値を提供していきます。
1.第三者委員会の設置及びその他の社内調査等の趣旨及び経緯
当社は、当社の連結子会社で、家電・車載事業統括本部 家電産業事業本部配下の NIDEC FIR INTERNATIONAL S.R.L.(以下、「FIR社」)に関する貿易取引上の問題を認識し、国際貿易法及び関税法の経験を有する第三者の専門家に調査を依頼しました。当社は、FIR社製造のモータについて、原産国申告に誤りがあり、未払関税の発生につながった可能性を認識しました。受領した調査の状況報告に基づき、当社は第三者の専門家とともに、社内の更なる調査・検討を行いこの問題への対処を進めていました。また、FIR社に関する貿易取引上の問題及び関税問題に関し調査を進めていた際に、2025年7月22日に、当社の子会社であるニデックテクノモータ株式会社(以下、「テクノ」)から当社の監査等委員会に対し、その中国子会社であるニデックテクノモータ(浙江)有限公司において、2024年9月下旬にサプライヤーからの値引きに相当する購買一時金(金額1,000万元、約2億円)に関して不適切な会計処理が行われた疑いがある(以下、「テクノ事案」)との報告がありました。これを受け、当社は、当社の監査等委員会の監督の下、テクノ事案を解明するため、社外の弁護士、公認会計士その他の外部専門家を起用してデジタルフォレンジック手続を含む社内調査を行っていました。その調査の過程で、テクノ以外の当社及びそのグループ会社においても、当社及びグループ会社の経営陣の関与又は認識の下で、資産性にリスクのある資産に関して評価減の時期を恣意的に検討しているとも解釈しうるなど、不適切な会計処理が行われていたことを疑わせる資料が複数発見されました。上記に鑑み、これまでの外部専門家を起用した当社の監査等委員主導の調査体制には限界があり、会社から独立した第三者委員会による客観性のある調査を行う必要があると判断し、2025年9月3日に日本弁護士連合会の定める「企業不祥事における第三者委員会ガイドライン」に準拠した第三者委員会を設置することを決定しました。
また、上述のデジタルフォレンジック手続を含む貿易取引上の問題及び関税問題に関する調査の過程において、ニデックエレシス株式会社(現ニデック株式会社車載事業本部インバータ事業部)において、過年度の中国への輸出取引に際して、中古品の無償取引における申告価格を正当な理由なく適正金額より低く関税申告していたことが疑われる事案が発見されました。本件については、社内調査の一環として外部専門家による追加調査を依頼しています。
さらに、当社のスイス連結子会社が必要な登録をせずに輸出取引を行っていた事案について適切な対応がなされていなかった疑いがFIRの貿易取引上の問題及び関税問題に関する調査の過程において発見され、また、内部通報において当社の中国連結子会社が過年度を含む連結会計年度に源泉所得税を意図的に過少申告していたことが疑われる事案を認識したため、事実確認を含めて必要な対応を進めています。
(注)FIR社に関する貿易取引上の問題の詳細につきましては、インターネット上の当社ウェブサイトに掲載されている2025年6月26日付プレスリリースをご参照ください。(https://www.nidec.com/jp/corporate/news/2025/news0626-01/)
2.今後の対応及び会計処理の方針
当社は、第三者委員会による調査及びその他の社内調査等の一環としての外部専門家による調査に対し、全面的に協力していきます。現時点において、第三者委員会による調査及びその他の社内調査等は継続中です。調査の結果、不適切な事象が判明し次第、原因の究明と分析、再発防止策の策定及び実施を迅速に行います。また、過年度及び当年度の財務諸表に訂正すべき重要な虚偽表示が識別された場合には、過年度及び当年度の有価証券報告書の訂正等を含め、適切な対応を行う方針です。その際には、訂正の内容、影響額等を速やかに開示します。
2【サステナビリティに関する考え方及び取組】
NIDECが考える持続可能な経営の在り方とは、「会社が追求する事業戦略の方向性と世界が求める社会的課題解決への道筋を一致させ力強く芯のある成長を続けること」です。
気候危機、地政学的緊張等に代表される今日のグローバルリスクは、世界経済の基本構造に根本的な変化をもたらし、それに応じてビジネスにおけるヒト、モノ、カネ、情報も従来とは異なる指向性を示し始めています。社会が企業に求める役割が新たな転換点を迎えた今日、NIDECはこうした構造変化への適応力を高めながら経営資源を効果的に活用していく上で必須と判断する持続的経営の要素(“マテリアリティ”と呼称)を5分野・15項目に分類し、リスクの低減と機会の発見・拡大に努めています。
マテリアリティを含む持続的経営に関わる諸課題に取り組む上で必要なガバナンス組織として、NIDECは執行機関であるサステナビリティ推進会議、並びにその監督機関であるサステナビリティ委員会を設置しています。サステナビリティ推進会議は原則として2か月ごとに開催され、社長以下執行役員が実施計画の進捗状況と課題を協議すると共に新たな社会的要請に関する情報を共有します。同会議の内容は社外取締役が過半数を占めるサステナビリティ委員会に報告され、四半期ごとの審議対象になります。また、当社取締役及び執行役員等を対象とする業績連動型株式報酬制度における目標達成度指標として、従来の財務目標に加えESG評価機関(MSCI、FTSE、CDP)による当社レーティングを2024年度より採用しています。

(マテリアリティの詳細については
をご参照ください。)
2024年度サステナビリティ委員会の開催履歴
(1)TCFDガイドラインに基づく気候変動対策
気候変動はNIDECの財務状況に正負両面の影響を及ぼし得る事象であり、新たな技術・製品需要の創出機会を提供する一方、以下リスクへの対策が不十分な場合は事業活動に重大な悪影響を与える可能性があります。
「移行リスク」(気候変動に関わる政策及び規制、技術開発、市場動向、市場評価等の変化に起因する間接的損失リスク)」
・炭素税その他脱炭素社会実現へ向けた各国のエネルギー転換施策への対応が遅れることによる税負担の上昇
・既存製品・サービスに適用される規制の厳格化や新基準への不適合に伴う市場機会の損失及びコンプライアンスコストの増加
・世界的「電化」傾向に起因する電子部品原材料(希少鉱物、鋼材、その他ハイエンドアルミや銅等の非鉄金属)の入手困難あるいは調達コストの上昇
・新たな低炭素製品が要求する代替原材料の研究・開発の遅れ及び付帯コストの増加
・非効果的な気候変動対策に起因する企業価値の低下とそれに伴う投資誘引力の減退及び信用格付けの低下
「物理的リスク(気候変動がもたらす災害等による直接的損失リスク)」
・台風・多雨等がもたらす広域水害の頻発による事業活動の停止
・渇水による事業活動への制約
・気温上昇による健康被害
・上記事由によるサプライチェーンの混乱
当社は、これら諸リスクが事業へ与え得る影響を把握し対策を策定するためのプロセスとしてTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)ガイダンスに沿った機会・リスクシナリオ分析を実施しています。
①ガバナンス
NIDECは2022年4月にTCFD提言への賛同を表明して以来、同イニシアティブに沿って気候関連リスク・機会の分析並びに財務インパクトの把握に努めています。それら取り組みを通じて得られた結果は、サステナビリティ推進会議及びサステナビリティ委員会における議論を経て経営戦略に反映されます。
②戦略
NIDEC連結売上高の95%以上を占める事業領域から選抜した経営幹部並びに実務担当者が多様な視点から気候変動インパクトを議論し、以下、手順に沿ってシナリオ分析を実施しました。
シナリオ分析ステップ
ステップ1 シナリオ分析の前提条件の決定
シナリオ分析を進めるに当たり次のような前提条件を決定
シナリオ
・移行リスクシナリオ(2℃/1.5℃シナリオ)
・物理的リスクシナリオ(4℃シナリオ)
時間軸
短期:2025年 中期:2030年 長期:2050年
対象範囲
NIDEC連結売上高の95%以上を占める事業領域
ステップ2 気候変動リスク・機会の把握
TCFD提言を参考に、事業への潜在的気候変動リスク・機会を列挙
ステップ3 事業インパクト評価
事業への影響度、リスク・機会が顕在化する時期、早期対応の必要性の観点から事業インパクト評価を実施し、主要な気候変動リスク(炭素税の導入、洪水被害)については定量評価を実施
ステップ4 対応策の検討
事業インパクトが大きいと判断した気候変動・リスク・機会について対応策を検討
(参考)事業インパクトの大きい気候変動リスク・機会及び対応策
(参考)事業インパクトの定量評価
③リスク管理
NIDECは連結グループ全体を俯瞰するグローバルリスク管理体制の枠組みに気候変動リスクを織り込み、その特定・評価から改善活動に至るプロセスを管理しています。リスク管理体制の詳細については「第2 事業の状況 3事業等のリスク」をご参照ください。
④指標と目標
NIDECは気候変動対策に関する指標・目標をマテリアリティ項目「脱炭素社会の実現」「水リスクへの対応」の枠組みにおいて次のように設定・管理しています。
脱炭素社会の実現
1)事業活動で排出するGHGsの削減
・2025年度総連結の再エネ導入比率を40%にする。
・TCFD提言に沿った気候変動シナリオの年次開示を行う。
2)製品を通じた脱炭素化への貢献
以下、製品の提供を通じて自動車/バイクが走行中に排出するCO2を削減する
・電気自動車用駆動モータシステム(E-Axle/BSG)
KPI:2020年度~2025年度までの削減量累計11,700千t-CO₂
・電動パワーステアリング用モータ(EPS-PP/EPS)
KPI:2020年度~2025年度までの削減量累計26,261千t-CO₂
・電動ブレーキ用モータ(EBB)
KPI:2024年度~2025年度までの削減量累計10,029千t-CO₂
・小型EV用モータ
KPI:年間削減量35千t
・電動バイク用モータ
KPI:年間削減量32千t
水リスクへの対応
1)全生産拠点における水リスク・アセスメントを実施する
KPI:100%実施
各取り組み結果その他詳細については当社ウェブサイトの「環境保全活動第七次中期計画及びマテリアリティの取り組み進捗」をご参照ください(現時点では2023年度の実績を掲載しています。2024年度の実績は2025年12月末に同ホームページにて開示いたします。)
その他、気候変動対策に関する主な実績は次のとおりです。
・2030年CO2排出量削減目標に関するSBTi(Science Based Targets Initiative)認証を取得し、環境保全活動第七次中期計画へ反映
・CDP2024気候変動調査において最高評価の「Aリスト」に選定
・COP29バーチャル・ジャパン・パビリオンに出展
・インターナルカーボンプライシング制度の導入
(2)人的資本拡充に向けた取り組み
①当社における人的資本経営
当社は、1973年の創業から約50年間、創業者の永守重信の強いリーダーシップの下、自律成長とM&A戦略の両輪でグローバルに事業展開・成長を果たし、2022年度以降の売上高において、2兆円超を達成しています。
企業理念・目指す姿(「100年を超えて成長し続けるグローバル企業」「人類が抱える多くの課題を解決する世界No.1のソリューション企業集団」)を実現すべく、将来の事業ポートフォリオを見据えながら、第2創業期として次の50年に向けて新たなステージに入る当社では、グローバルに更なる飛躍を達成するために、旧来の連邦経営(個々の会社の自主性を重んじ、グループ内といえども競い合いながら成長を促す経営)からグループ一体化経営(One Nidec:全体最適にてグループシナジーを創出しながら成長する経営)によるグループシナジー創出のための人事施策・基盤整備を進めています。
具体的には、社長の岸田光哉の下、2024年度に3つのコミッティを立ち上げ、技術力の集結、グローバルな適所適材の実現、“永守イズム”、“Nidec Way(全社員の行動指針・規範)”の次世代への継承に注力しています。それぞれのコミッティの概要は次のとおりです。
3つのコミッティ
「技術戦略コミッティ」
当社の技術力を余すところなく集結し、蓄積された広範なノウハウを事業や地域の垣根を越えて共有することで、グループシナジーの発揮を目指しています。また、コアコンピタンスの発掘を見据え、技術領域ごとに活動、連携して新たなビジネスの創出を模索しています。
「グローバル人事戦略コミッティ」
約40か国、10万人を超える社員を抱える当社において、社員一人ひとりが個性を最大限発揮し、多様性を経営の視点に取り込むことが飛躍的成長につながります。事業や地域の垣根を越え、人事責任者が集結し、連携することで、当社の多様な人材の発掘、交流、活躍を促進していきます。
「All for dreamsコミッティ」
第2創業期を迎え、技術力の集結、グローバル化等の変革を進める一方で、当社がこれまでに培ってきた“永守イズム”、“Nidec Way(全社員の行動指針・規範)”を同時に受け継いでいくためには、社員がNIDECグループで働くことの意義(パーパス)を追求することが重要です。社員全員が参画し、パーパスを策定することで、グローバルな一流企業としての土台を確固たるものにします。
これらのコミッティの活動も含め、ニデックの企業集団づくりは、多様性の中にもしっかりとした軸をもち「One Nidec」として、同じひとつの夢に挑戦していくために人的資本の観点(人事上のソフト面・ハード面における多面的な観点)に着目しつつ、ニデックグループの強みの根幹である企業理念やコーポレート・スローガン、“Nidec Way”等をベースに会社組織及び人材に係る基本的な考え方を「NIDECグローバル人事ポリシー」としてまとめ、人事戦略・施策として具体的な活動へと落し込みを行っています。
「NIDECグローバル人事ポリシー」
“For Our Future, For Our Dream” ― 世界の人々の明日と私たちの夢のために“挑戦する”組織・人材であり続けます。
・組織・人材開発ポリシー“Encourage Uniqueness, Respect Team Spirit”
自らの存在価値をプロアクティブに発揮する個人を尊重します。多様な意見を受容し、本音のコミュニケーションを通じて新たな価値を創出します。
組織・人材開発(ソフト領域)についてのポリシーです。このポリシーに基づき、ビジョンを共有しながらも、本音で対話をしながら多様な視点を取り入れることができる風土の醸成を図ります。また、個性を磨き、その発揮を促す組織開発・人材開発施策を進めています。
・人事制度ポリシー“Reward Based on Contributions without Bias”
シンプルな基準で常に公正・公明・公平に正しく評価され、適切なキャリア機会が提供されます。
人事制度(ハード領域)におけるポリシーです。このポリシーに基づき、会社における人事基盤として必要な基幹制度(等級・報酬・評価)、これらに付随する組織管理・異動ルール・福利厚生等の制度・仕組みを公正・公明・公平な観点から整備します。実力に応じた多様なキャリア機会を提供、実績・成果に正しく応えることを通じて組織・人材の挑戦を支援します。
※人的資本に関する以下の指標については、特に記載がない限りニデック(株)の数値(2025年3月末時点)を掲載しています。また、掲載数値は小数点第2位を四捨五入しています。
②人事領域ごとの戦略
<人材開発における戦略>
「NIDECグローバル人事ポリシー」を下に人材開発の領域では、多様な個性を尊重し、発揮を促しながら、実力・実績に応じたキャリア機会の提供を通じて、「経営層及び重要ポスト後継者候補の開発」「次世代リーダー(管理職層・担当者層)の開発」、これを根本から支える「理念の浸透」からリーダーシップパイプラインを構築すると共に、「多様性の中での組織活性化」を図ることで、グローバル規模での人材の早期可視化・開発・強化を推進しています。
1)「経営層及び重要ポスト後継者候補の開発」
ニデックグループが着実な成長を遂げる上で、グループの重要ポストについてはニデック特有の経営手法を理解し、確固たる実績を持ち合わせている人材を登用することを重視しています。そのため、グループ全体の重要ポストを可視化し、経営幹部がサクセッションプラン(後継者計画)の妥当性を議論すると共に、次世代の経営人材候補となりうる人材を発掘し、戦略的な早期開発の取り組みを推進しています。
また、経営人材候補については、企業再建や抜擢登用等のタフアサインメントに加え、当社理念や経営マインドの浸透を目的とした創業者による育成塾や、グローバル企業のトップとして高いレベルの経営知識習得のための「グローバル経営大学校」「次世代グローバル経営大学校」を通じて、知識習得と実践の場を組み合わせながら開発強化を図っています。両経営大学校には、これまで世界14カ国(日本、米国、カナダ、メキシコ、中国、タイ、フィリピン、シンガポール、インド、イタリア、ドイツ、フランス、イギリス、ポーランド)の国々から受講者を選抜し、受講後は各地でグローバルリーダーとして活躍しています。
2024年度以降は「グローバル人事戦略コミッティ」を立ち上げ、幹部開発の軸足を日本地域からグローバルに発展させ、国籍や活躍する地域を問わず、更なる人材の発掘に努めています。また、2025年4月1日付でチーフオフィサー制の強化及び「フェロー」・「理事」の新設を実施しました。チーフオフィサー制の強化については、CxOを中心に新たにグローバル本社体制を構築し、地域や事業の枠を超えた連携を促進しています。「フェロー」については、高度な技術・技能・知識を有し、明確な使命を持って事業及び改革を推進し、組織に貢献する者を登用する制度としています。ニデックグループにとって重要な技術・技能・知識を有する専門人材にとって、将来の姿として目標となる位置づけとなり、持続的な成長を支える強固な基盤を構築するものです。「理事」については、将来の経営人材候補となりえる人材を明確化し、より幅広い視点で会社運営に携わることで、次世代の役員をグローバルに選出、開発します。
上記のとおり、多くの重要ポジションにおいては内部の後継者候補の計画的な開発・登用を基本とし、内部人材によるサクセッションプランの充足を目指しており、取り組みの結果として内部継承率が上昇しています。一方で、事業の拡大や変革に応じて、その時々に必要なスキル・経験を持った即戦力人材の採用・幹部登用も必要となります。即戦力人材がその実力を十分に発揮し、ニデックグループで成果を創出するために、上記創業者による育成塾等を通じて当社の経営手法や理念の浸透を図り、多様な視点を持った経営体制の構築に努めています。
なお、2020年度より「人材開発委員会」を設置し、ニデックグループの重要ポストのサクセッションプラン(後継者計画)等について経営幹部が半期ごとに議論を行ってきましたが、より適時適切な議論・意思決定を目指して2024年度以降は、旧来の「人材開発委員会」での内容を経営の会議体の中に組み込むこととし、日々の事業環境の変化を踏まえながら戦略的な人材開発・人材配置を経営幹部間で議論するものとしています。
更に、ニデック(株)の社長ポストをはじめとした特に重要な一部のポストについては、2022年11月に上位委員会として「指名委員会」を設置し、経営層(取締役・執行役員)の選任に繋がる仕組みを構築しています。
※経営層及び重要ポスト後継者候補の開発に関する指標の対象範囲はニデックグループ全体となります。
※内部継承率:重要ポスト数に対する、重要ポストに占める内部登用者数
内部継承率については2024年度時点で2025年度目標85%を達成しています。
※後継者の継承準備度(即時継承可能)・幹部候補の準備度:重要ポスト数に対する、即時継承可能な後継候補数の割合
※後継者の継承準備度(1~2年後に継承可能)・後継者候補準備率:重要ポスト数に対する、1~2年後に継承可能な後継者候補数の割合
※後継者の継承準備度(3~5年後に継承可能):重要ポスト数に対する、3~5年後に継承可能な後継者候補数の割合
2022年度、2023年度に引き続き、2024年度についてもよりグローバルに重要ポストの見直しを行い、新たな重要ポストにおけるサクセッションプラン策定の取り組みの定着を図っています。そのため、後継者の継承準備度(即時継承可能)については実績値が低下しています。
2)「次世代リーダー(管理職層・担当者層)の開発」
ニデックグループでは、個々の社員の特性を理解し、尊重することで、社員各々の専門性が発揮され、グループ全体の業績向上及び将来のリーダーを担う人材の候補者開発に繋がると考えています。そのため、様々な人材開発施策を通じて、社員が自律的に成長するために学習意欲を高めることや、個々人のニーズに合うよう幅広く学習機会を提供することを目指しています。今後も、キャリアの状態に応じた次の役割別の研修機会、及び個別の学習ニーズに合わせた開発施策・機会の提供に注力します。
(ⅰ)管理職層に対しては、自己のリーダーとしての強み、弱みを洗い出すための研修を実施しています。研修の結果として作成される個人別のフィードバックレポートを本人及び上司にも共有し、OJTに活用できるようにしています。
(ⅱ)担当者層においては、新卒入社者に対して約2年間の若手育成プログラムを実施し、実務遂行力やビジネスパーソンとしての基礎的な力を養成するための各種研修を実施しています。このプログラム期間は、研修だけでなく、職場にて具体的な開発計画を立て、OJTにより現場での経験を通じた人材開発にも取り組んでいます。
(ⅲ)階層別に各種研修の機会を提供するほか、キャリア開発支援(上司・若手向けキャリア研修やキャリアプランシート、定期的な1on1ミーティング等)を通じて、各個人が学習意欲を高めるための内省を促進する機会を設けています。
(ⅳ)社員全般に対しては、社員個人が自らの学習ニーズに沿った通信教育(修了者への補助あり)等を受講できるスキルアップ支援プログラムを用意しており、個々人の能力向上、リスキリングの促進にも取り組んでいます。
(ⅴ)プロフェッショナル人材の育成・強化を行うために、会社機能別での切り口から多様な経験を支援する「機能軸人材マネジメント制度」の導入を管理部門からスタートさせており、プロ人材となる過程において経験すべき職場・業務を通じた開発を加速させています。創業以来大切にしてきたニデックの三大精神(「情熱・熱意・執念」「知的ハードワーキング」「すぐやる・必ずやる・できるまでやる」)をはじめとした、“ニデックらしさ(理念)”を時代に合わせて磨き上げ、全社員に浸透させながら、多様性の中にも組織として目指すべきもの、その中での社員の一体感(ベクトルの一致)を醸成する取り組みを進めています。
※日本地域における一人当たりの研修時間、一人当たりの研修費用については2024年度から集計を開始しています。
※キャリア意識:毎年実施している従業員意識調査「組織パフォーマンスサーベイ」の「あなたは、キャリアの方向性を描いていますか?」の設問に対し、5段階評価のうち「そう思う」、「ややそう思う」と回答した社員の割合
2024年度の主な研修の事例
※新入社員研修:学生から社会人への切り替えと、社会人に必要な知識・スキルを学びながら、マインドセットを行う。
※若手育成プログラム:新卒入社後の2年間で、計5回の研修とeラーニングを通して当社の行動指針・規範であるNidec Way及び社会人基礎力の理解を深め、職場での課題解決を通してこれらの定着を図る。
※要素別技術スキル教育:業務に直接必要なモータに関する要素別(メカ、磁気、電気・電子、制御等)技術を学ぶ。
※技術者レベルアップ教育:モータに関わらず、品質向上、原価低減、短納期開発による利益貢献につながる幅広い知識の習得を図る。
※MOT研修:技術に基づいた新規ビジネスを立ち上げるために必要な考え方やマーケティング・戦略立案の方法を学ぶ。
3)「理念の浸透」
社員の特性を尊重することとグループ全体の業績向上を両立する上で、社員各々がニデックグループの理念や経営方針に共鳴することが必要不可欠です。ニデックグループの着実な成長に向け、社員のベクトルを合わせ、社員各々が最大限活躍できる組織を作るため、次の取り組みを実施しています。
(ⅰ)理念浸透では、創業者の想い(ニデックの理念や考え方等)をまとめた「挑戦への道」を社員に配布し、ニデック内で共有すべき理念として日々浸透させ、また理念研修で定期的にこれらの理解度や実践度を振り返る機会を設けることで、企業風土・組織文化の醸成からベクトルの合った組織づくりを行っています。
(ⅱ)One Nidecとして社員の力が最大限に発揮されるように、社員間の関係性を活性化させ、各職場から組織全体へと繋がるパフォーマンスの向上を目指し、「組織パフォーマンスサーベイ」を実施しています。
(ⅲ)「組織パフォーマンスサーベイ」の結果を活用した組織開発の取り組みとして、各職場にて本音で話し合う「職場ワークショップ」を導入し、多様な意見を尊重しながらビジョンに基づく意思決定を進めることができる組織風土の醸成・組織の構築を進めています。
これらの取り組みにより、ニデックグループを支える「組織」「ヒト」を中心とした持続的な企業成長を目指していきます。
※ビジョンの浸透度:毎年実施している従業員意識調査「組織パフォーマンスサーベイ」の「あなたの職場では、会社の経営理念やビジョンが共感されていますか?」の設問に対し、5段階評価のうち「そう思う」、「ややそう思う」と回答した社員の割合
女性のビジョンの浸透度については、2024年度時点で目標85.0%を達成しています。
※連携・コミュニケーション:「組織パフォーマンスサーベイ」における、連携やコミュニケーションに関する合計30設問の5段階評価の平均点
※エンゲージメント:「組織パフォーマンスサーベイ」における、エンゲージメントに関する合計19設問の5段階評価の平均点
2025年度目標の達成に向けては、「理念浸透」、「組織パフォーマンスサーベイ」、「職場ワークショップ」の取り組みに加え、2024年度より社内で「All for dreamsコミッティ」を立ち上げ、全社員が参加するアンケート等の取り組みを通じてパーパスの策定を進めています。パーパス策定活動においては改めて社員一人ひとりがNIDECで働く意味や理由を見つめなおすと共に、パーパス策定後には企業活動とパーパスを結び付けながら社員とのコミュニケーションに努めることでビジョンの浸透促進を図ります。
<人事基盤整備における戦略>
第2創業期としてグローバルに更なる飛躍を達成するためには、国際競争力の強化や働き方改革の推進による生産性向上、実力・実績主義の徹底を通じた競争力の強化が必要不可欠であると考えています。世界情勢・社会動向・諸外国との関係においても、特に生産性向上の強化が望まれる日本国内において、当社では人事制度改革に着手し、One Nidecでの強固な基盤(組織・人材)づくりを目指しています。なお、基盤整備においては、属性に関わらず誰もが実力を発揮できるよう、多様性のある組織(職場)風土や労働環境づくりにも注力し、日頃の円滑な企業活動の土台を築き上げながら進めることとしています。
2019年より人事制度改革に向けた検討を開始のうえ、その後の各種人事施策の展開等により経営層から一般社員までの体系的な組織・仕組みを構築することで、人材の流動化・ガバナンス強化を促進し、「組織」「ヒト」の活性化を実現することを目指しています。
1)「人事基盤整備_制度」
(ⅰ)当社では、取締役会の諮問機関として「報酬委員会(2021年2月~)」「指名委員会(2022年11月~)」を設置(委員の過半数を独立社外取締役にて構成)しています。取締役及び執行役員等の選任方針・選任基準・候補者案の決定等や役員報酬に関して、独立社外取締役の適切な関与・助言を得ることで、公正性・透明性・客観性を担保し、当社のコーポレート・ガバナンス体制のより一層の充実を図ることを目指しています。
(a)「指名委員会」では、取締役及び執行役員等の選任方針・選任基準や継承プラン及びサクセッションプランの考え方を踏まえ、社長の候補者案等を審議しています。2023年度については、特に社長選任に向け議論を重ね、2024年2月の指名委員会にて審議し、現在の代表取締役社長執行役員である岸田光哉を選任しました。
(b)「報酬委員会」では、役員の報酬に係る報酬決定方針の策定、報酬制度の設計(業績目標の設定、業績連動報酬の合理性、報酬構成の妥当性、報酬制度に基づく個別報酬額)等を審議しています。2024年6月には役員報酬を当社のESGパフォーマンスと連動させるため、業績連動型株式報酬へESG目標を反映することを決定しました。当社グループのグローバルでの競争力強化と事業の持続的な成長・発展につなげるべく、グループ経営・グループガバナンスをより一層強化し、安定した経営継承を行うべく進めていきます。
(ⅱ)グループ一体化経営を進める上で、等級・報酬・評価の人事基幹制度については、国内主要グループ会社を含めた約1万人を対象に制度の統一化を図っており、2020年度にはグループ統一での評価制度を先行して導入しました。更に、2021年~2022年度にかけて段階的に等級・報酬制度を導入しています。
(a)評価制度は、実力・実績主義を徹底するため、組織への貢献(該当業務(職務)に対してのパフォーマンス(行動・アウトプット・成果))を総合評価し、その評価結果を月例給・賞与へ反映しています。
(b)等級・報酬制度は、管理職・非管理職のリーダークラス以上に、ジョブ型人事制度(職務等級制度)を導入のうえ、職責・職務を明確化し、ポジションベースでの適所適材の人材配置を実現できるようにしています。報酬(賃金)は、月例給を職務給に一本化し、外部機関の報酬調査・ベンチマーク(75%ile・50%ile・25%ile)を参考に市場水準に基づいた金額を設定のうえ、職務等級制度により明確化した「職責・職務の大きさ」と「成果(評価結果)」に応じて月例給を決定しています。非管理職の担当者クラスは、日本のジョブ型市場の動向(市場としては未成熟)を踏まえ、担当としての職務(役割)段階の違いを定義づけすることに留め、ある程度の職能要素を残した形で、過去の評価の積み上げから昇降給や昇格候補者としての推薦、昇格を行う仕組みとすることで、着実な人材開発・強化を進めるものとしています。月例給だけでなく、会社・個人業績の結果等による賞与も含め、メリハリのある処遇を実現させるに当たっては、年齢、学歴、社歴、性別、国籍等は関係なく、常に公正・公明・公平に正しく評価することを目指しています。
(ⅲ)退職金制度においても実力・実績主義を徹底し、貢献度の高い社員により報いるべく、次の3点をコンセプトとしています。
(a)総報酬の一部として毎年の貢献をその年の対価として報いること(=報酬感)
(b)優秀な人材の採用・定着、パフォーマンスの向上に資する制度とすること(=リテンション)
(c)ニデックグループのガバナンスを確保し、円滑な異動を担保する仕組みとすること(=グループ内の流動性確保)
これらのコンセプトの下、具体的には、勤続年数による退職金の逓増を廃止し、役割や責任の大きさによって決定する基本給に応じて、退職掛金が変動・決定する仕組みとしています。また、グループ各社においても、様々な退職金制度の仕組みがありましたが、確定給付企業年金(以下、「DB」)及び確定拠出企業年金(以下、「DC」)の2本立ての退職金制度から、DCのみの退職金制度へ変更しています。退職金制度をDCに一本化したことで、DCのポータビリティ制を活かし、ニデックグループ内の人材の流動化が円滑に進むことにもつながっています。その他にも、DBの凍結及び終身部分の確定年金化等も行い、将来的な債務上昇のリスクを回避しています。
(ⅳ)ポジションベースの人事制度をより機能させる(社内での人材の流動化を促進する)ために、「社内公募制度」を年2回・定期的に実施することとしています。旧来から実施してきた会社主導の人事異動だけでなく、4月と10月の異動時期に合わせて部門単位でポジションの求人を公開し、その求人に社員から応募があった場合は各部門で選考し、社員と部門のマッチングが成立すれば、配属としています。社員の自発的な行動を促し、積極的にチャレンジしてもらうことでキャリア形成を支援すると共に、組織としての活性化を期待しています。なお、「社内公募制度」は、人事制度の導入と共にニデック(株)からスタートし、順次、グループ会社にも展開・運用を広げる予定です。
(ⅴ)環境の変化、グローバルビジネスの拡大・深化に伴い、会社が必要とする人材の質は多様になっています。その状況下において、地球規模における「適所適材」(組織能力獲得・人材確保/活用)を実現するために、グローバルモビリティポリシーの策定をはじめとする制度・仕組みの整備に着手しています。国内だけでなく、グローバルに活躍する人材がより多く生まれる環境を整えることによりOne Nidecを更に推進します。
2)「人事基盤整備_採用」
当社は絶えず成長を希求し、「世界No.1の総合モータメーカー」として、世の中になくてはならないソリューションを提供してきました。今後も、時代の変化や社会のニーズに即応できる企業であるために、“永守イズム”“Nidec Way”に共感し、高い目標に向かって絶えず挑戦し続ける3つのP(Proactive, Productive, Professional)を持つ人材の獲得・定着を進めていきます。ニデックグループの成長に伴い、新たな社員が着々と参画すべく、キャリア採用は通年採用としています。新卒採用においても27年度入社から通年採用として進めていくべく仕組みを整備しており、留学生等国籍関係なくニデックにマッチする素質のある人材をグローバルに採用していきます。更に、ベクトルのあった少数精鋭の社員集団であり続けるため、次の取り組みを実施しています。
(ⅰ)2024年度は、当社を含む国内グループ会社において158名のキャリア採用をしました。厳しい競争を勝ち抜くために、生え抜き社員だけでなく様々なバックグラウンドを持った社員が協働することで、社員の多様性を重視しながら、常に進化し続ける組織として人材の硬直化を防止すると共に、事業の拡大に応じて、その時々に必要なスキル・経験を持った即戦力人材の採用を行っています。入社後には理念浸透プログラムや入社後面談、月次アンケート等の定着施策を実施し、ニデックグループで早期活躍するためのオンボーディング施策を積極的に展開しています。
(ⅱ)2025年入社として、当社を含む国内グループ会社では192名の新卒採用をしました。若手のうちから裁量を持って積極的に仕事に取組み、様々な教育や業務経験を通して将来のニデックグループの経営幹部候補へと成長するよう開発しています。キャリア採用社員同様に新卒採用社員においても、ニデックへの定着を図り、活躍を促進することが重要だと認識しており、理念浸透活動を通じた経営理念・方針への理解促進や、月次アンケートによる状況把握と個別面談実施、初任給・担当者層の給与水準の向上等を通じて定着率の向上を図っています。
(ⅲ)日本国内は、特に先端技術開発等を担うプロフェッショナル集団として、正規雇用が大半を占めています。非正規社員で要件を満たした社員は、積極的に正社員として登用します。当社の「仕事に年齢は関係ない」というポリシーに基づき、役職定年という考え方はなく、ポジションや役割によって、社員一人ひとりが活躍できる会社・組織を目指しています。

※採用に関する指標のうち、採用数(新卒採用)、採用数(キャリア採用)の対象範囲は当社及び国内グループ会社、その他の指標は当社のみとなります。
※一人当たり採用コスト:採用に係る外部に支払う費用÷採用数
新卒採用における一人当たり採用コストについては、2024年度、新卒採用市場の競争率が高まっていることや、当社内においても更なるグローバル化の推進等を背景に新卒採用社員に求められる役割が拡大していることを背景に、母集団形成の強化を図った結果、増加しています。具体的には、求職者の認知拡大及び当社への理解深耕を目的に、採用コンテンツの拡充や求職者との接触機会の増加を図りました。
※採用に係る平均日数:応募から内定までのリードタイム
※離職率:当該年度の離職者数÷当該年度の平均従業員数
性別ごとの離職率は2024年度から集計を開始しています。
3)「人事基盤整備_D&I」
ニデックグループは、世界40か国以上に拠点を持つグローバル企業として成長をし続けています。国を跨いだ社員の往来、交流を行っていますが、多様性のあることが当たり前な組織(職場)・労働環境の整備を進めることで、世界情勢・市場の変化に対しても迅速に対応できる組織・人材となることを目指しています。
(ⅰ)多様な社員の活躍を促進し、組織全体で新たな価値を創造していく上で、属性を問わず実績を評価する組織風土をはじめ、柔軟な働き方や多様性を受け入れる組織整備を進めています。
(a)2005年頃からダイバーシティ推進に取り組み、その後、仕事とプライベートの両立支援から活躍支援へと段階的にフェーズを移しつつ、男女問わない働き方として、時差勤務制度や在宅勤務制度、時間単位年次有給休暇制度を設けると共に、時短勤務等各種制度拡充やキャリア支援等を行っています。その結果、育児休暇からの復帰率向上や女性の管理職、管理職候補層の増加、男性の育児参画度の向上等が成果として出ています。また、女性社員を中心に、働き方やキャリア等をテーマにしたワークショップを実施しており、仕事に対するモチベーション向上に努めています。特に京都本社では、社外取締役と連携し、ダイバーシティについて社員の理解を深めるワークショップや、海外事業所の女性幹部の来日に合わせて、合同でワークショップを開催し、グローバル化とジェンダーの両面からの啓発を実施しています。加えて、海外事業所の幹部社員によるメンタリングを実施しており、集中的にキャリア開発支援、動機付けを行っています。ニデックでは今後も女性活躍推進を重要課題と位置づけ、女性管理職比率について、当社では2024年度で8.5%(女性従業員比率21.7%)となっており、2025年度には9%を目指しています。
(b)LGBTQ社員に対する取り組みとして、当社の就業規則では、性差・性的指向・性自認等に関係なく人格を尊重し、互いに一致協力することを明文化しており、その一環として配偶者に適用される人事規程を同性パートナーにも適用しています。
(c)外国籍役員2名を登用しており、採用においては国籍関係なく採用を推進し、留学生の採用数は年々増加傾向となっています。性別だけでなく、国籍をはじめとした個人の属性や価値観にかかわらず人材が活躍できる会社を目指して働き方の柔軟性の確保に努めています。また、技術戦略コミッティやグローバル人事戦略コミッティの取り組みを通じて、各機能においてグローバルな事業横断的な人材交流にも注力しています。特に、グローバル人事戦略コミッティにおいては、幹部候補人材のグローバルな発掘・開発につながる取り組みや、グローバル幹部報酬の仕組みやグローバルモビリティポリシーの整備等、人事機能内にとどまらない人材交流につながる議論を進めています。



※2025年度目標については、2022年4月以降を対象にするマテリアリティPhase3にて策定しています。
※女性役員比率については、2024年度より外国籍役員も含めて算出しています。
※女性管理職候補比率については2023年度時点で目標15.0%を達成しています。
※日本地域における階層別女性比率については2024年度から集計を開始しています。
※日本地域の育児休業に関する指標は2024年度から集計を開始しています。
※当社における女性の育児休業取得者数/率について、雇用形態別の集計は2023年度から開始しています。
※テレワーク適用率及び時差勤務制度適用率・実施率の集計範囲は国内で勤務する社員に限っています。
海外赴任者は赴任先の現地法人の就業規則に準拠しています。
※テレワーク実施率について、コロナ禍においてはテレワークを積極的に実施していましたが、現在は対面でのコミュニケーション・業務運営を原則とし、円滑な業務遂行や意思決定のスピード向上に努めています。
※性別ごとの年次有給休暇の取得状況は2024年度から集計を開始しています。
(ⅱ)会社と社員の様々な対話の場から、適切な共有・建設的な議論を意識しつつ、コミュニケーションの活性化にも取り組んでいます。
(a)当社の社員代表組織である親睦会との間では、月に1回、双方向での情報共有・意見交換の場を設けており、社員が働き甲斐のある職場環境をつくるため、親睦会から集約した社員の声等も踏まえながら、年に2回社員満足度向上委員会を開催し、親睦会と会社が議論を交わしています。
(b)2021年度からは、人事部門の社員が各事業所を訪問し、社員との質疑応答等を通じて現場での課題認識に努めながら、人事施策や取り組みについての周知徹底・理解浸透を図るようにしています。
(c)2024年度には社長の岸田が経営課題の検討や各職場の状況の理解を深めるべく、社員との交流会を実施しました。本交流会は京都本社において25回にわたり開催され、291名が参加しました。今後も引き続き経営陣と社員のコミュニケーション活性化に努めていきます。
(ⅲ)当社の社員のモチベーション向上や事業や地域をまたいだネットワーキングの取り組みの一環として、グローバル表彰制度「One NIDEC利益貢献大賞」を運用しています。2024年度には27件、延べ202名の社員を表彰しました。なお、本表彰制度では取り組みの結果創出された利益をベースに組織への貢献度を評価しており、人事制度と合わせて実力・実績主義や理念の浸透の観点でも効果的に活用しています。
(ⅳ)当社の持続的な成長を実現するに当たり、社員の健康と働き甲斐を重要な源泉と位置づけ、多様な人材が活躍できる職場づくりと、社員が長く活躍できる持続可能な働き方が不可欠であるという考え方に基づき、健康経営に取り組んでいます。また、健康経営においては、「生産性」と「エンゲージメント」の向上を戦略の柱として掲げています。
(a)生産性向上の観点では、心身の健康を維持・増進することで、欠勤や休職等による損失の最小化や健康問題によるパフォーマンス低下の防止を図っています。健康上の高リスク者への対策として、健康診断結果に応じた個別保健指導の実施や精密検査受診勧奨等を効果的に実施するほか、傷病の発生予防として、当社産業医・保健師によるオンラインセミナーの実施により社員の健康リテラシーを高めると共に、敷地内完全禁煙の実施や運動習慣の推奨を通じて社員の行動変容を図っています。メンタルヘルス対策として、ストレスチェック実施後集団分析等、フォロー強化を進めています。加えて、労働安全の観点から、管理職を含む従業員の労働時間を管理し、長時間労働に伴う健康障害発生リスクの抑制に努めています。
(b)エンゲージメント向上の観点では、当社内の健康意識調査である「NIDECヘルスサーベイ」の分析結果から、「エンゲージメント」と「働きやすさ」のスコアの相関関係に着目し、特に「働きやすさ」スコアの改善につながる施策を推進していきます。「働きやすさ」スコアの改善には、1on1ミーティングやキャリア面談の導入による上司・部下間のコミュニケーションの活性化や、職場課題の解決について話し合うワークショップ導入による組織活性化を図っています。また、時差勤務制度や在宅勤務制度の拡充等、制度面での環境整備にも取り組んでいます。
※欠勤率、性別ごとの月平均残業時間については2024年度から集計を開始しています。
※2024年度は健康増進プログラムの内容及び集計方法を変更したことに起因して実績値が低下しています。
(ⅴ)当社は、グローバルな事業環境における人権への配慮の重要性を認識しており、「国連ビジネスと人権に関する指導原則」「国連グローバル・コンパクト」「国連世界人権宣言」「労働における基本的原則及び権利に関するILO宣言」をはじめとする国際的ガイドラインを支持し、人権を取り巻く課題の多様化に対応しています。
(a)ニデックグループCSR憲章では「人権の尊重」を掲げ、またCSR憲章を補完する「NIDECグループCSR行動宣言」では、強制労働の禁止、児童労働の禁止、差別と非人道的な扱いの禁止、適切な賃金の保証、労働時間と休日・休暇の保証、結社の自由と団体交渉権の保証を規定しています。現在、当社グループはグローバルに300を超える事業所を有し、その何倍もの取引先が各国・地域で当社の事業活動を支えていますが、労働者の保護等に関する法整備が不十分と言われる国々でも操業をしています。
(b)こうした環境下において、当社グループに留まらずサプライチェーンで発生する労働・倫理問題に関しても自社の責任と認識し、当社の人権尊重に関する姿勢と取り組みを整理し、「NIDECグループ人権基本方針」を2021年11月に策定、2024年11月に改定しています。人権に関する基本的な考え方を明示するほか、「強制労働の禁止」「児童労働の禁止」「ハラスメントの禁止」「職場の安全・衛生の確保」等13の遵守すべき行動指針を制定しています。本方針は当社グループ及びサプライヤーを含め、当社グループのビジネスパートナー全体をスコープに展開しており、人権侵害のリスク特定と改善に継続的に取り組むと共に、本方針に関する全社eラーニング等の啓発活動を行っています。
(c)人権リスク・アセスメントについては、当社従業員の70%以上が集中するアジア地域を最重視し、重点的に取り組んでいます。アジアの主要な生産工場を対象にRBA(※)行動規範を参照した自社基準に基づく監査を定期的に実施しており、従業員の人権に関しては「雇用の自由選択」「若年労働」「労働時間」等7側面に設けられた監査項目を厳しくチェックしています。本方針を元に人権を尊重する責任を果たし、多様な人材が活躍することができる安全・安心な職場づくりを進めていきます。
(※)RBA(責任ある企業同盟)行動規範:電子業界が定めたサプライチェーン全体の事業活動に対する行動規範
(ⅵ)多様な人材が活躍する上で、安全・安心な職場づくりが必要不可欠と考え、労働災害の防止の取り組みやコンプライアンス体制の整備にも努めています。
(a)ニデックグループ全拠点において社員の安全確保を最優先の課題と位置づけ、国内事業所では安全確保に向けた施策を審議する安全衛生委員会を組織しています。
(b)諸法令・規則、社内規則・基準、社会倫理規範等の遵守やそのための従業員教育を徹底することにより、役員及び従業員の倫理意識を高め、安全で良好な職場環境づくりを進めるべく、役員・社員を対象とした研修等をはじめとしたコンプライアンス活動を継続的に実施しています。また、ニデックグループ全ての取締役・役員・従業員が利用できる内部通報窓口及び外部に第三者窓口を設置し、誰もが安心できる職場環境づくりに努めています。
※解雇には諭旨解雇を含んでいます。
(1)リスク管理体制と運用状況
NIDECグループでは、グローバルな事業展開における多様なリスクに対し、中長期的な視点と日常的な視点の両方から、事業継続の確保を図っています。そのために、以下に示すとおり、リスク事象の調査・評価、現状対策の実効性確認、改善策の実施といった一連の仕組みを整備しています。
図1 全社リスク管理体制図

上記管理体制図に掲載された組織等の役割は、以下のとおりです。
・取締役会
事業年度の冒頭にリスク管理委員会からリスク管理についての基本方針の報告を受け、適正なリスク管理活動を指導・助言します。また、リスク管理に関する責任体制を定めた「リスク管理規程」の改廃に係る承認を行い、リスクガバナンス体制の実効性確保を図ります。
・リスク管理委員会
リスク管理担当役員を委員長とし、業務執行上の意思決定機関である経営会議のメンバーで構成され、リスク管理方針・施策の決定、取締役会への報告・建議を行います。
・リスク管理担当役員
全社的なリスク管理を統括し、リスク管理委員会の運営、リスク管理状況の監視、必要な資源配分の検討を行います。
・リスク管理室
リスク管理委員会の常設事務局として、リスク管理に関する企画立案、各リスク管理者、リスク統括責任部署との間における連絡調整等を担当します。
・リスク管理者
事業所長、部門長及びリスク管理委員会が別途定める者を担当業務領域についてのリスク管理者とし、その担当業務領域におけるリスク管理の責任を負います。
・リスク管理統括部署
後述するリスク評価活動の結果を踏まえて決定されたリスク管理領域の本社主管部署をリスク管理統括部署とし、その担当役員をリスク統括責任者とします。リスク管理統括部署は、それぞれの担当領域に係るリスクについてリスク管理者から報告を受け、その対応を支援し、モニタリングします。
(2)リスク調査・評価活動
リスク管理室より依頼を受けた本社・グループ会社・事業本部のリスク管理者は、全社リスク管理フロー図(図2)、リスク調査・評価活動階層(図3)に基づき、定期的に事業に影響を及ぼすリスク事象の調査・評価を行います。対象とするリスク事象は、経営戦略リスク、事業運営リスク、ガバナンスリスク、偶発的リスクの4つに分類されます。
図2 全社リスク管理フロー図

上記フロー図内の主なアクションの概要は、以下のとおりです。
・リスク特定
リスク管理室により任命されたリスク管理者が、毎年度、事業に影響を及ぼす可能性のあるリスク事象を洗い出します。
・リスク評価
当該リスク管理者は、洗い出されたリスク事象について、全社共通の指標に則り発生可能性と影響度を評価の上、リスクレベルを特定します(図4参照)。リスク評価に当たっては、事象毎にリスクシナリオを検討し、潜在リスクの把握に努めます。
・追加リスク低減措置
特にリスクレベルが「重大」「高」の場合、現行のリスク管理活動に追加するリスク低減策を立案、実施します。
・モニタリング
リスク管理委員会で決定したNIDECの経営成績、株価、財政状態等に影響を及ぼす可能性のあるリスク(後述 項番(3)参照)については、KRI (Key Risk Indicator)を定め、モニタリングします。
・改善
リスク低減策の実施状況を確認の上、必要に応じて改善策を講じます。リスク管理活動の結果を分析し、リスク管理体制や運用状況の継続的な改善を図ります。
図3 リスク調査・評価活動階層

リスク調査・評価に当たっては、現状のリスク管理活動とリスク低減対策の実施状況を確認のうえ、残存リスクのモニタリングを行い、結果をほかの階層の施策に相互利用しています。例えば、L2で特定されたリスクについてはL3でも内容を確認し、その中にL3主導で改善しなければならない全グループ共通の課題を発見した場合は適宜L3のリスク管理活動に反映する等、階層別リスク管理活動を相互に関連づける動きを進めています(図3参照)。
図4 リスクレベル特定マトリックス

リスクレベルはリスク対策実施後の残存リスクに対して、発生の可能性と結果の重大性を5段階に分類した上で図4のマトリックスにあてはめ、重大・高・中・低の4段階で評価します。「重大」、「高」に特定されたリスク事象は、追加のリスク低減措置の検討が必須となっており、年度末に低減措置の実施状況をリスク管理室が確認し、課題があればリスク管理委員会に報告されます。
(3)事業等のリスク
前掲のリスク評価活動の結果を踏まえて特定された、NIDECの経営成績、株価、財政状態等に影響を及ぼす可能性のあるリスクには、次のようなものがあります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在においてNIDECが判断したものです。
上記の各リスク内容、主要な対応策については、次ページ以降をご参照ください。
3)ガバナンスリスク
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
当連結会計年度において、企業結合に係る暫定的な会計処理の確定を行っており、前連結会計年度の連結財務諸表については、暫定的な会計処理の確定による取得原価の当初配分額の見直しが反映された後の金額によっています。
当社の連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」第312条の規定により、IFRS会計基準に準拠して作成しています。
この連結財務諸表の作成において、連結決算日における資産・負債の金額と連結会計年度の収益・費用に影響を及ぼす見積り・判断・仮定が必要となります。これらの実際の結果は見積り・判断・仮定と異なる場合があります。
もし会計上の見積りが行われる時点で高い不確実性に対する見積りを作成しなければならない場合、その会計上の見積りは、直近の会計期間にて合理的に見積った見積りや、該当する発生期間において合理的に見積ることができる場合とは異なり、財政状態やその変化、経営成績に重要な影響を与えると予想されます。
重要性のある会計方針及び重要な見積りの詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要性のある会計方針 4.重要な会計上の見積り、判断及び仮定」に記載しています。
岸田光哉が社長に就任し、新経営体制がスタートして1年が経過しました。One Nidecをキーワードにグループ間で横串を通してシナジーを創出しながら成長していく全体最適の経営、すなわちグループ一体化経営の実現を目指して、技術・製品・人材のグローバルベースでの融合をはじめ各種の施策を強力に推進する体制を整えてきました。
製品グループ別については、まず精密小型モータはニアライン用途を中心にHDD用モータの需要が回復し、収益を押し上げました。また、新分野となるAIデータセンター向け水冷モジュールは来る次世代GPU仕様サーバ向けを含め、精密モータの開発・生産で培った精密加工技術とコスト競争力を活かし、部品供給も含め付加価値の高い戦略商材の生産体制を整備し、顧客ニーズを満たす収益性の高い事業ポートフォリオへの転換を加速しています。車載はEVトラクションモータ関連事業においてBEV市場の拡大鈍化と価格競争の激化をいち早く察知し昨年度に他社に先駆けて収益性最優先へ戦略転換を行い、不採算機種の受注制限の徹底と部品単体ビジネスへの転換を推進しています。また、車載オーガニック(既存事業)は欧州市場の冷え込み等の影響を受けながらも高度な電動化の波が強くなる中、モータ及び周辺部品の需要を着実に取り込み拡販活動を展開しています。なお、2025年1月1日より欧米のマネジメント・オペレーションと生産・購買・人事等の横串機能が充実している家電産業事業本部(ACIM)に車載オーガニック(既存事業)の統合を進め、車載オーガニック事業運営の最適化を進めています。更に2025年4月1日付でニデックモビリティとニデックエレシスを経営統合しました。両社のリソース一体化を図り、強力なソリューションを提供できる体制作りを加速していきます。家電・商業・産業用は、データセンターの非常用電源向けの発電機やグリーンイノベーションの進展に伴うバッテリーエネルギー貯蔵システム(BESS)、社会インフラ更新に伴う大型モータの需要が拡大しています。これらの旺盛な需要に応えるためにインド・フランス・北中米にて生産能力の増強投資を鋭意進めると共に、バリューチェーンの下流領域の保守・点検等のリカーリングビジネスも強化しています。機器装置ではグループ全体の上流での品質の作り込みに直結する工作機械を強化しています。生産体制の集約や営業・サービスの一体運営によるシナジー効果が結実しつつある中、市場も景気変動サイクルにおける低迷期を経て上昇トレンドへの兆しが出始めています。このように新経営体制の下、グループ一丸となってスリー新(新市場、新製品、新顧客)活動を強化した結果、当連結会計年度の売上高、営業利益、税引前当期利益、当期利益のいずれにおいても過去最高を更新しました。
更に、当社は2027年度をターゲットとする新中期経営計画(Conversion2027)を策定しました。2025年度より3つの「転換(Conversion)」として、①高収益構造へ「転換」・②成長を支える「事業5本柱」へ「転換」・③真のグローバル体制へ「転換」を設定し、事業ポートフォリオの見直し、拠点統廃合、製造間接中心に人員削減、戦略投資の推進等により収益構造の抜本的転換を図り利益率の改善を目指します。
当連結会計年度における主な経営成績は次のとおりです。
当期の継続事業からの連結売上高は、前期比11.1%増収の2兆6,078億13百万円となり、過去最高を更新しました。各事業分野・市場において順調に推移し、精密小型モータではニアライン用途を中心にHDD用モータが回復したことやAIデータセンター向け水冷モジュールをはじめとする新分野での売上高が増加しました。また、家電・商業・産業用では発電機やバッテリーエネルギー貯蔵システム(BESS)等のエネルギー分野を中心に売上高が増加したほか、車載及び機器装置における新規連結の影響も含め、売上高が拡大しました。
営業利益は、精密小型モータにおけるHDD用モータの回復、新分野となる水冷モジュールの売上拡大、家電・商業・産業用におけるエネルギー分野を中心とした需要拡大が収益改善を牽引しました。一方、家電・商業・産業用及び機器装置において、分散拠点の合理化や生産体制の集約等を推進したことに伴うコスト負担もありましたが、ニデックPSAイーモーターズの連結子会社化に伴う段階取得に係る差益を計上したこと、また前期においてEVトラクションモータ関連事業にて構造改革を計上した影響も含め、前期比47.1%増益の2,381億16百万円となり、過去最高を更新しました。
税引前当期利益は、為替差損約141億円を計上した影響も含め、前期比15.7%増益の2,333億9百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益は前期比32.1%増益の1,643億65百万円となり、いずれも過去最高を更新しました。
当期の対米ドル平均為替レート(1ドル当たり152.58円)は前期比約6%の円安、対ユーロ平均為替レート(1ユーロ当たり163.75円)は前期比約4%の円安となりました。
なお、当期の売上高、営業利益への為替影響は下記のとおりです。
- 売上高:前期比約1,007億円の増収
- 営業利益:前期比約67億円の増益
セグメント別の経営成績は次のとおりです。
(単位:百万円)
(注)1.総売上高は外部顧客に対する売上高とセグメント間の売上高の合計です。
2.第2四半期連結会計期間より報告セグメントの区分を変更しています。詳細は「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 5.セグメント情報」に記載のとおりです。
「SPMS」の総売上高は3,955億88百万円(前年度比622億60百万円増)となりました。これは、HDD用モータ及びAIサーバ向け水冷システムをはじめとする新分野の売上高の増加によるものです。営業利益は411億30百万円(前年度比151億72百万円増)となりました。これは増収の影響に加えて、ニアライン向けHDDモータやAIデータセンター向け水冷モジュールをはじめとする製品構成良化の影響によるものです。
「AMEC」の総売上高は3,508億54百万円(前年度比111億6百万円増)となりました。これは、世界各国の先進安全装置や自動運転に向けた高度な電動化の波が強くなる中、電動パワーステアリング用モータや電動ブレーキブースター用モータ等の需要を取り込んだことによる車載オーガニック(既存事業)売上高の増加及び為替影響による増収です。営業損益は当期に構造改革費用を計上した結果、30億4百万円の営業損失となりました。
「MOEN」の総売上高は5,779億7百万円(前年度比1,143億98百万円増)となりました。これは、発電機等及びグリーンイノベーション関連需要の増加及び為替影響、並びにニデックPSAイーモーターズ連結子会社化の影響によるものです。営業利益は703億19百万円(前年度比90億34百万円増)となりました。これは、増収による影響、固定費の大幅低減、原価改善による増益及びニデックPSAイーモーターズ連結子会社化による段階取得に係る差益の計上等の影響によるものです。
「ACIM」の総売上高は4,677億76百万円(前年度比297億86百万円増)となりました。これは、商業・産業用モータ等の売上増加及び為替影響による増収です。また、営業利益は406億47百万円(前年度比19億99百万円減)となりました。これは、欧州を中心とする分散拠点の合理化等を推進したことに伴う一時的なコスト負担の増加によるものです。
「機械事業」の総売上高は2,209億24百万円(前年度比138億40百万円増)となりました。これは、新規連結の影響による増収です。営業利益は178億28百万円(前年度比105億25百万円減)となりました。これは、前年同期に不動産売却益等の一過性収益があったことに加え、工作機械関連各社の生産体制集約等に伴う一時的な費用発生や生産能力低下によるものです。
「グループ会社事業」の総売上高は6,650億57百万円(前年度比304億21百万円増)となりました。これは、ニデックインスツルメンツやニデックプレシジョンの売上増加によるものです。営業利益は875億89百万円(前年度比120億7百万円増)となりました。これは、売上の増加によるものです。
製品グループ別の経営成績は次のとおりです。
(単位:百万円)
「精密小型モータ」製品グループの売上高は、前期比17.4%増収の4,878億89百万円となりました。HDD用モータの売上高は、ニアライン用途を中心とした高付加価値ゾーンでの増加を主因に、前期比41.9%増収の1,002億19百万円となりました。その他小型モータの売上高は、AIデータセンター向け水冷モジュールをはじめとする新分野での売上高が増加した結果、前期比12.3%増収の3,876億70百万円となりました。営業利益は、増収の影響に加えて、ニアライン向けHDDモータやAIデータセンター向け水冷モジュールをはじめとする製品構成良化の影響も含め、前期比55.8%増益の583億70百万円となりました。
なお、当期の売上高、営業利益への為替影響は下記のとおりです。
- 売上高:前期比約173億円の増収
- 営業利益:前期比約12億円の増益
「車載」製品グループの売上高は、車載オーガニック(既存事業)において、世界各国の先進安全装置や自動運転に向けた高度な電動化の波が強くなる中、電動パワーステアリング用モータや電動ブレーキブースター用モータ等の需要を取り込み、前期比14.4%増収の6,646億23百万円となりました。営業利益は、車載オーガニック(既存事業)において、欧州市場の冷え込みに加え、家電産業事業本部(ACIM)の下で抜本的な改善対策に着手したこと、EVトラクションモータ関連事業においては、量産化途上にあるニデックPSAイーモーターズを新規連結化した影響、中国市場での収益性最優先への戦略転換に伴う構造改革の効果に加え、継続的に原価低減や固定費の削減を粘り強く実施した結果、前期比569億72百万増益の257億80百万円となりました。
なお、当期の売上高、営業利益への為替影響は下記のとおりです。
- 売上高:前期比約232億円の増収
- 営業利益:前期比約19億円の減益
「家電・商業・産業用」製品グループの売上高は、データセンターの非常用電源向け発電機やグリーンイノベーションの進展に伴うバッテリーエネルギー貯蔵システム(BESS)や社会インフラ更新に伴う大型モータの需要が拡大しており、前期比9.0%増収の1兆526億55百万円となりました。営業利益は、収益性の改善を目指して欧州を中心とする分散拠点の合理化や生産体制の集約等を進めた結果、先行して一時的なコスト負担が発生したものの、発電機やバッテリーエネルギー貯蔵システム(BESS)をはじめエネルギー分野の拡大に伴う製品構成の良化や為替の影響も含め前期比3.0%増益の1,183億5百万円となりました。
なお、当期の売上高、営業利益への為替影響は下記のとおりです。
- 売上高:前期比約521億円の増収
- 営業利益:前期比約68億円の増益
「機器装置」製品グループの売上高は、新規連結による影響や液晶ガラス基板搬送用ロボットの増収を主因に、前期比5.4%増収の3,145億91百万円となりました。営業利益は、前年同期に不動産売却益等の一過性収益があったことに加え、景気変動サイクルに伴う高収益の半導体検査装置の売上減少や、工作機械関連各社の生産体制集約等に伴う一時的な費用発生や生産能力低下により、前期比12.2%減益の379億14百万円となりました。
なお、当期の売上高、営業利益への為替影響は下記のとおりです。
- 売上高:前期比約63億円の増収
- 営業利益:前期比約5億円の増益
「電子・光学部品」製品グループの売上高は、前期比3.1%増収の844億4百万円、営業利益は前期比6.2%増益の140億39百万円となりました。
なお、当期の売上高、営業利益への為替影響は下記のとおりです。
- 売上高:前期比約19億円の増収
- 営業利益:前期比約1億円の増益
「その他」製品グループの売上高は、前期比14.0%減収の36億51百万円、営業利益は、前期比40.7%減益の2億7百万円となりました。
NIDECの現金及び現金同等物は、当連結会計年度末は2,462億39百万円であり、前連結会計年度末は2,170億5百万円で292億34百万円増加いたしました。この主な要因は、営業キャッシュ・フローが2,844億28百万円の収入となった一方で、有形固定資産の取得等による投資キャッシュ・フローが1,472億55百万円の支出と、財務キャッシュ・フローが801億93百万円の支出となったことによります。また、手元現金の有効活用のため、日本、中国及び米国等各地域内においてキャッシュマネジメントシステム(CMS)を活用したグループ間での余剰資金活用を継続しており、更に各国を結ぶCMSを既に導入し、全世界ベースでCMS網を拡大させています。なお、当連結会計年度末時点において、現金及び現金同等物の約65%を日本以外の子会社で保有しています。
NIDECの資金の効率化を高めるため、海外子会社を含めたグループ間のノーショナルプーリングシステムを特定の金融機関と構築しており、特定の金融機関に対する預入総額を上限に参加会社は借入を行っています。そのため、現金及び現金同等物に含まれる銀行預金には、単一の会計単位として認識したノーショナルプーリングシステムにおける預入金及び借入金の純額が含まれています。
グループ会社間での送金には、一部の特定された状況下において制限事項があります。特定地域における送金制限は、資金の効率的なグループ内移動、特に海外子会社から当社への送金を妨害する場合がありますが、後述の継続的なキャッシュ・フロー、外部借入を通じて流動性の需要を満たすように努めています。なお、この制限によるNIDECの流動性や財政状態、経営成績への重大な影響はございません。
短期借入金は前年度比507億56百万円増加の937億10百万円となりました。当連結会計年度末時点での短期借入金は主に銀行からの円建の借入で構成されています。当連結会計年度末時点ではコマーシャル・ペーパーの残高はありません。
1年以内返済予定長期債務は前年度比207億21百万円増加の1,638億49百万円となりました。これは主に1年内予定長期借入金への振り替えにより214億80百万円増加、1年内返済予定社債への振り替えにより1,314億95百万円の増加、1年内返済予定社債の償還により1,300億円減少したことによります。当連結会計年度末時点での1年以内返済予定長期債務は主に、無担保社債で構成されています。
長期債務は前年度比363億30百万円減少の3,784億87百万円となりました。これは主に1年以内返済予定長期社債への振り替えにより1,314億95百万円の減少、借入により717億87百万円の増加、新規連結により465億42百万円増加したことによります。当連結会計年度末時点での長期債務は主に、銀行からの円建の借入及び無担保社債で構成されています。
社債について、期末時点で連結財政状態計算書に含まれる額面総額は次のとおりです。
なお、ユーロ建無担保普通社債を除く上記社債は2019年3月に関東財務局長へ提出した2019年4月5日から2020年4月4日の期間に有効となる3,000億円の社債発行登録書及び2020年4月に関東財務局長へ提出した2020年4月9日から2021年4月8日期間に有効となる3,000億円の社債発行登録書及び2022年4月に関東財務局長へ提出した2022年4月9日から2024年4月8日の期間に有効となる6,000億円の社債発行登録書を基に発行しています。本発行登録は、資金調達手段の多様化による財務安定性の向上を企図し、金融機関からの間接金融による資金調達等と合わせて、NIDECの必要資金を機動的に調達できる体制を構築することを目的としています。NIDECの無担保資金調達の大部分は、当社が調達した後、それぞれのグループ会社の資本要件を満たすために貸与しています。NIDECは、資金調達コストの低減及び十分な信用枠を維持し、グループ会社全体の機動的な資金を確保いたします。
NIDECは、将来のM&A、研究開発活動、設備投資のために追加融資を検討しています。また、今後もM&A、研究開発活動、及び設備投資を機動的に行う基盤構築のため、追加的な資金を得ることを検討しています。
有価証券報告書の提出日現在において、2025年5月28日から2026年5月27日の期間に13百万株及び350億円を上限とする自己株式取得が決議されています。なお、2024年5月27日から2025年5月26日の期間に10百万株及び350億円を上限とする自己株式取得が決議されています。当プログラムにおいて2024年5月27日から2025年3月31日の期間に約78億円で2,920,300株を取得しています。なお、2024年1月25日から2024年5月24日の期間に4百万株及び110億円を上限とする自己株式取得が決議されています。当プログラムにおいて2024年1月25日から2025年3月31日の期間には自己株式の取得はありませんでした。
NIDECは、これらの資金源と営業活動から得るキャッシュ・フロー及び未実行の与信枠は、将来の資金需要に十分対応するものであると考えています。
NIDECの資産合計残高は、前期末(2024年3月末)比1,555億84百万円増加の3兆3,152億93百万円となりました。これは主にニデックPSAイーモーターズの支配権を獲得したことにより、有形固定資産が545億74百万円増加、営業債権及びその他の債権が293億32百万円増加、無形資産が299億21百万円増加したことによります。
負債合計残高は、前期末比700億12百万円増加の1兆5,715億円となりました。これは主に売上高の増加に伴い営業債務及びその他の債務が486億41百万円増加し、ニデックPSAイーモーターズの支配権を獲得したことにより有利子負債が351億47百万円増加したことによります。
ワーキングキャピタル(流動資産-流動負債)は5,617億87百万円で前年度比202億76百万円の減少となりました。また、売上債権(営業債権及びその他の債権)回転率(売上高÷売上債権)は3.7で、前年度比0.2ポイントの増加となりました。棚卸資産回転率(売上原価÷棚卸資産)は3.7で、前年度比0.4ポイントの増加となりました。
親会社の所有者に帰属する持分は、856億68百万円増加の1兆7,171億49百万円となりました。これは主に利益剰余金が1,186億1百万円増加し、在外営業活動体の換算差額を主因にその他の資本の構成要素が246億20百万円減少したことによります。親会社所有者帰属持分比率は51.8%(前期末51.6%)となりました。
①資金需要の状況
NIDECの資金需要は、主に設備投資・研究開発費・材料購入のための支払・従業員への給料、賃金やその他人件費の支払・M&A・関係会社に対する投資・長期及び短期債務の返済・自己株式の取得があります。当連結会計年度末時点において、NIDECは営業債務及びその他の債務を5,765億93百万円、短期借入金を937億10百万円、1年以内返済予定長期債務を含む長期債務を5,423億36百万円保有しています。
当連結会計年度の設備投資による支払は1,207億11百万円であり、翌連結会計年度は1,400億円を計画しています。また、当連結会計年度末の固定資産購入契約残高は153億51百万円です。
当連結会計年度の研究開発活動に係る支出額(無形資産に計上された開発費の支出額を含む)は1,024億85百万円であり、翌連結会計年度も同水準の金額発生を計画しています。
当連結会計年度に、NIDECは下記の会社を買収完了しています
NIDECは今後も子会社への追加投資と新たな買収の機会を模索し続けます。
②資金調達の状況
NIDECの必要資金については、営業活動によるキャッシュ・フローに加えて、良好な取引関係にある複数の金融機関からの借入や、6,000億円の国内社債発行登録枠及び1,000億円のコマーシャル・ペーパー発行枠に基づく社債の発行等により調達を行っており、資金調達手段の多様化を図っています。なお、グループ会社については原則として金融機関からの資金調達を行わず、統括会社のキャッシュマネジメントシステム等を利用したグループ内ファイナンスにより、資金調達の一元化と資金効率化を継続して推進しています。
①生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注)1.金額は販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっています。
2.第2四半期連結会計期間より報告セグメントの区分を変更しています。詳細は「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 5.セグメント情報」に記載のとおりです。
②受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しています。
2.第2四半期連結会計期間より報告セグメントの区分を変更しています。詳細は「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 5.セグメント情報」に記載のとおりです。
③販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しています。
2.第2四半期連結会計期間より報告セグメントの区分を変更しています。詳細は「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 5.セグメント情報」に記載のとおりです。
(1)相互技術供与契約
(注)※1.当社が対価を年2回、継続して支払う契約です。
※2.当社が対価を一括して支払う契約です。
(2)株式譲渡契約
(Linear Transfer Automation Inc.、Linear Automation USA Inc.、Presstrader Limited)
当社は2024年9月27日(日本時間)開催の取締役会において、カナダのプレス機周辺装置メーカーであるLinear Transfer Automation Inc.並びにその関連会社のLinear Automation USA Inc.及びPresstrader Limited(総称して以下、「Linear」)の株式取得を決議し、2024年9月30日付(カナダ時間)で本株式取得等に係る譲渡契約を締結しました。
1.目的
Linearは、板金プレス工程において、プレス部品のトランスファー装置、及び後工程の生産自動化装置の開発・製造・サービス等、トータルソリューションを提供する企業です。当社グループは、プレス機の製造・販売・サービス事業をグローバルに展開しており、これまでもM&Aの実行によりプレス機及び周辺機器製品を拡充してまいりました。本件取引により、製品・販売・技術・管理面においてシナジーを追求することができると考えています。
2.Linear Transfer Automation Inc.、Linear Automation USA Inc.、Presstrader Limitedの概要
(注)2024年10月1日付で、Presstrader Limitedを消滅会社、Linear Transfer Automation Inc.を存続会社とする吸収合併を完了しました。
(Changzhou Xecom Energy Technologies Co., Ltd.)
当社の中国子会社であるNidec Appliance Controls (Qingdao) Co., Ltdは2025年7月8日付で中国のスクロールコンプレッサーの設計・製造を行うChangzhou Xecom Energy Technologies Co., Ltd.の持分100%取得を完了致しました。
なお、同日付で商号をNidec Scroll Technology (Changzhou) Co., Ltd.に変更しています。
1.目的
当社は家電・商業・産業用モータ事業を戦略的に重要な事業のひとつとして位置づけ、成長、強化に努めてまいりました。かかる戦略的方針の下、家電用モータ事業に関しては、2010年1月に買収したSole Motorsの事業、2019年7月に買収したエンブラコ事業により当社の冷蔵庫用コンプレッサ事業の更なる拡大を目指して進めていました。この度、スクロールコンプレッサー技術取得に伴い、冷凍庫分野での存在感を拡大・強化し、さらには空調及びヒートポンプ市場の新規分野への参入が可能となりますので、当該市場への事業拡大と成長に努め、ニデックグループ全体の売上・利益貢献に努めてまいります。
2.Changzhou Xecom Energy Technologies Co., Ltd.の概要
ニデックグループは、研究開発活動における長期的な視点として、「社会の脱炭素化に貢献するモータの高効率化」と「省資源を促進するモータの小型・軽量化」を追求しています。同時に、基幹部品間の最適な組み合わせによるモジュール単位での付加価値創出にも注力しています。急速に変化する社会のニーズとニデックグループの持続的な成長を確実につなぐ研究開発体制の構築は、喫緊の課題です。
このような認識の下、ニデックグループは持続的成長に向けて注力すべき5つの重点分野を定めました。
① AI社会を支える(熱マネジメント/冷却の電力削減)
: データセンター、半導体検査装置/ウエハ搬送装置
② サステナブル・インフラとエネルギーの追求(再エネ化を促進)
: スマートグリッド、発電機、エネルギー貯蔵システム(BESS)
③ 産業の生産効率化(オペレーション効率の向上)
: 工作機械・プレス機、精密減速機、物流(ドローン)
④ よりよい生活の追求(空調の電化/効率向上)
: 商業施設(空調/エレベータ)、ヒートポンプ、生活家電
⑤ モビリティイノベーション(電動化/ハイブリッド化)
: 車載部品、電動バイク、空飛ぶ車(eVTOL)、ハイブリッド化(鉄道/船舶)
これらの分野は、CO2排出量削減、データ量の増大、高齢化と労働力不足といった世界共通の社会課題を背景に生まれた新たなニーズであり、ニデックグループが培ってきた技術力を活かせる有望な市場です。経営資源を集中的に投下しこれらの重点分野に関連する製品開発を推進します。
当連結会計年度におけるニデックグループ全体の研究開発活動に係る支出額(無形資産に計上された開発費の支出額を含む)は、1,024億85百万円です。
なお、各事業本部内に設置している開発部門のほか、各セグメントに帰属しない「全社(共通)」として研究開発部門があります。ニデック新川崎テクノロジーセンター及びニデック製品技術研究所台湾センターでは、将来の事業に不可欠なモータ全般の要素技術研究を担い、電子回路、熱、騒音・振動、制御といった要素技術の一層の高度化を進めています。また、ニデックけいはんなテクノロジーセンターでは、ロボットやIoTを活用したスマートファクトリーの実現、新素材・新システムの開発、検査技術革新、データ解析、シミュレーション等、既存の製造方法の枠にとらわれない生産技術の進化を主軸とした研究開発を行っています。これらの研究拠点は、各開発部門や多様化する国内外グループ会社間の技術シナジーを創出し、成長を加速させる役割を担います。
更に、これらの製品開発及び技術開発を一層加速させるための戦略的な取り組みとして、「グローバル技術戦略コミッティ」を立ち上げました。ニデックグループには、創業以来50年以上にわたり培ってきたモータ技術のみならず、要素技術、加工技術、ソフトウエア技術等、広範なノウハウが蓄積されています。しかし、これらの貴重な技術資産が事業部の垣根を越えて十分に共有・活用されているとは言えない状況でした。この課題を克服し、グループ全体の技術力を結集して新たなビジネスを創出する強固なコアコンピタンスを確立すること、それがグローバル技術戦略コミッティの狙いです。本コミッティを通じて、グループ横断的な知見の共有と連携を深め、イノベーションを加速させていきます。
当連結会計年度における研究開発活動に係る支出額は、51億47百万円です。
セグメント別の研究開発活動の状況及び研究開発費の金額は次のとおりです。
当セグメントにおいては、精密小型DCモータ及びファンモータ等、精密小型モータ全般にわたる基礎及び応用研究、水冷モジュール等サーマルソリューションの提案、新製品の研究開発及び各拠点の技術的支援研究を行っています。
AIサーバを中心とした高性能演算サーバに搭載されるプロセッサーの最適な冷却ソリューションとして、CDU(Coolant Distribution Unit)・QC(Quick Coupling)・LCM(Liquid Cooling Module)・LCM(Liquid Cooling Module)の開発を行っています。また、通信・IT用ファンモータの開発にも注力しています。
当連結会計年度における研究開発活動に係る支出額は、267億79百万円です。
当セグメントにおいては、脱炭素社会の実現に貢献する電気自動車(EV)向けの駆動用をはじめとする車載モータやシステム、アクチュエータの新製品開発や量産化、品質向上に取り組んでいます。
小型・高性能を特徴としたパワーステアリング用モータやブレーキ用モータを主力製品とし、車両に搭載される各種アクチュエータ用モータ(クラッチ、シート、サンルーフ等)及び付随する電子制御ユニットの開発を進めています。また、車両熱マネージメントに使用されるポンプアクチュエータや、マイルドハイブリッド車向けジェネレータ用モータの開発にも注力しています。更に、シャシー領域における次世代トレンドであるSteer By Wire用モータの先行開発を活発化させる等、将来の新システムに向けたアクチュエータ全般の開発を手掛けています。
電気自動車(EV)向け駆動用システム(E-Axle)及び部品の開発を強化しています。これまでの3in1システム(インバータ、ギア、モータ)に電源系機能を統合し、7in1システムへと発展させました。車両レベルで複数の機能を統合することで、スペースや原材料の使用量を大幅に削減すると共に、徹底した現地調達化を図り、小型化・軽量化・低コスト化した第3世代EV向けE-Axleの量産を開始しました。更に、高回転化・新冷却構造・新制御技術を軸に、システム効率を一層向上させた次世代7in1E-Axleの開発に取り組むと共に、ステータやロータといった部品開発に注力しています。また、将来を見据えた取り組みとして、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)が脱炭素社会の実現を目指して設立したグリーンイノベーション基金事業の一環として、磁石フリーの次世代E-Axleの開発も進めています。加えて、E-Axleや車載用モータにセンサや制御装置を組み合わせた統合型システムの開発も行っています。
当連結会計年度における研究開発活動に係る支出額(無形資産に計上された開発費の支出額を含む)は、142億83百万円です。
当セグメントにおいては、脱炭素化社会、AI、省人化・省エネ化の波を背景に、再生可能エネルギー普及を支えるバッテリーエネルギー貯蔵システムや、現在急増しているデータセンターに欠かせないバックアップ電源用発電機、省人化に直接寄与する自動搬送ロボット等、現在の市場・社会的ニーズとリンクした研究開発活動を行っています。また、更なる社会の発展を見据えて、次世代の移動手段の可能性を拡大する電動垂直離着陸型航空機(eVTOL)用のモータ・制御器の研究開発にも力を入れています。
主な研究開発対象は次のとおりです。
・電力変換ソリューション
-バッテリーエネルギー貯蔵システム(BESS)
-電気自動車充電スタンド
-電力品質安定化システム
・産業用・データセンター用発電機
-産業/商業/住宅/建設用発電機
-通信基地局用発電機
・産業用オートメーション
-自動搬送ロボット駆動機構モジュール
-ロボットアーム向け関節モジュール
・建機・商用車電動化装置
-多目的車両(Utility Task Vehicle)、ゴルフカート用モータ・ギア・制御装置
-大型トラクションモータ
-マテリアルハンドリング、高所作業車用モータ・ギア・制御装置
・駆動装置
-小型汎用ドライブ
-ポンプ用及び空調等各種産業向けドライブ
-インフラ用高出力ドライブ
・エレベータ
-MRL(マシンルームレス・エレベータ)用スリム巻上機、貨物エレベータ用ギアレス巻上機
-制御機器及び周辺機器
-巻上機及び制御機器のパッケージソリューション
・電気自動車関連部品
-EVトラクションモータ
・その他、新市場向け開発製品
-電動垂直離陸・着陸機体用モータ・制御装置
-高高度(亜成層圏)対応機体プラットフォーム用モータ・制御装置
当連結会計年度における研究開発活動に係る支出額(無形資産に計上された開発費の支出額を含む)は、171億20百万円です。
当セグメントにおいては、主に家電・住宅・商業・産業用のモータやポンプ、コンプレッサー、コンデンシングユニット、及び関連する電子制御装置の研究開発を行っています。特に産業用では、より高効率なモータ(IE4、IE5)や大型高効率インバータに注力しており、モータ全体の消費電力を削減することで、産業施設の省エネに貢献しています。
主な研究開発対象は次のとおりです。
・家電用:洗濯機、乾燥機、食洗機、コンプレッサーに使用されるモータ、及び冷蔵庫コンプレッサー
・住宅/商業用:空調設備や商業冷蔵機器に使用されるモータ等
・産業用:IE3・IE4・IE5対応モータ(各種上下水道ポンプ、灌漑システム用ポンプ、エアコンプレッサー、
石油・ガス・精製産業用ポンプ等)、大型インバータ(最大3MW)
・中型旅客機用の電気推進装置に向けた新規研究開発
当連結会計年度における研究開発活動に係る支出額(無形資産に計上された開発費の支出額を含む)は、118億46百万円です。
当セグメントにおいては、人手不足解消に必要不可欠なロボットや自動化設備のキーコンポーネントである減速機関連製品の開発を日本、中国及びドイツで行っており、プレス機関連製品については、小型高速精密プレス機から超大型サーボプレス機、更には周辺機器である高速送り装置まで幅広い製品ラインナップの開発を日本、米国、スペイン及びドイツにて行っています。工作機械関連製品については、自動車・自動車部品、金型、建設機械、電気・精密機械向けの工作機械の開発を日本で行っています。
減速機関連製品としては、精密制御用減速機であるFLEXWAVE(特に協働ロボット関節駆動用マルチセンサ内蔵の「Smart FLEXWAVE」)、同 大型減速機KINEXシリーズ及び高効率で機種バリエーションが豊富な高精度遊星減速機VRシリーズを中心に研究開発活動を行っており、日本のみならずアジア・欧米の市場をターゲットとして、産業用ロボット・工作機械、自動化設備への搭載を目的とした製品開発に注力しています。
プレス機関連の研究開発としては、プレスラインの効率的な運用やメンテナンスコストの削減を目指した、予防・予兆保全システムの研究等を行っています。
工作機械事業については、今後も成長が見込まれる中国、インドを中心に海外市場をターゲットとして自動化、高精度化、複合化、大型化/微細化等、キー技術を各製品に展開して開発を推進しています。
歯車機械では、EV化に伴う歯車精度の高精度化・高能率化ニーズに応えるために本体、加工、ソフトウエアに搬送、計測等の周辺アプリケーションを含めた自動化、統合化を進めています。また、ホブと面取り工程を一体化した複合機として4月に中国で開催されたCIMT(中国国際工作機械展覧会)に出展しました。
大型機は、EVやエネルギー市場で伸長するワークの大型化、高精度化に取り組んでいる門形5面加工機では、世界的に需要が急増中のデータセンター用発電機の大型エンジンを効率的に加工できるアタッチメント類の開発や自動車向け金型の生産性向上のためデジタルツイン技術や制御ソフトの研究開発に注力しています。
レーザ加工機は、微細穴の更なる高精度化、高速化に加え、複雑で微細形状への対応、金属3Dプリンタは国内でも使用事例が出はじめている自動車や航空機分野でのニーズに対応する研究開発を行っています。
マシニングセンタは、付加価値の高い5軸加工機、複合加工機の本体開発と共に自動化、省人化に注力しています。2024年にJIMTOF(日本国際工作機械見本市)に出展した立形5軸マシニングセンタVB-X650に付属した立体パレットシステムの機種展開を行っています。2025年9月にドイツで開催されるEMOショー(欧州国際工作機械見本市)にも出展する予定です。
旋盤では、多品種少量生産や工程集約のニーズに対応し、「コンパクト複合旋盤TCYシリーズ」と、工作機械グループのシナジー効果を生かし、汎用機でのギヤ加工ニーズに対応した「ギヤ加工アプリケーション搭載の複合加工機TMX-4000Ⅱ、TS-4000YS」を上市しました。又、スイス式自動旋盤を展示会に出展し、小型旋盤市場への参入を表明しました。
当連結会計年度における研究開発活動に係る支出額(無形資産に計上された開発費の支出額を含む)は、23億68百万円です。
当セグメントでは、多様な分野で製品を開発しています。
モータ技術やサーボ技術を融合させた「カラクリ・トロニクス」製品として、ステッピングモータ、スマートフォン・ゲーム関連製品、モータ駆動ユニット製品群、システム機器関連の開発を行っています。
車載分野では、電動化・電装化の進展と同時に車両価格に見合った機能のニーズが高まっており、インターネット接続可能な車両ではサイバーセキュリティ機能の搭載ニーズがあります。高性能化と低コスト化のため一定の機能を統合したゾーンECUやアクチュエータ用ECU、HV用DCDCコンバータの開発に注力しています。更に、世界初のバイク用電動クラッチECUをリリースし、利便性向上と運転負担軽減を実現しました。海外開発体制の整備や要求管理ツールの導入を通じ、自動車メーカーのニーズにも柔軟に対応しています。
電子機器関連市場では、AIサーバ向け製品分野の設備投資が回復傾向であり、新型検査装置の開発を行っています。
空調・家電用モータでは、省エネ・省材料とモータ性能向上のため、磁気回路・制御回路の改良や巻線材料を銅からアルミへ置き換える取り組みを行っています。新興国へのエアコン普及に伴い、使用環境の多様化に合わせたモータ構造や保護回路の見直しにより堅牢性を高めた製品の開発を行っています。
産業用モータでは、効率性とカスタマイズ性を両立させた製品開発を進めており、自動化や再生可能エネルギー導入に伴う需要増に応え、市場拡大を加速しています。
主な研究開発対象は次のとおりです。
・自動車のボディ制御
-ボディコントロールモジュール
-パワーウィンドウスイッチを含むドア周辺制御ユニット
-二輪車用スマートエントリーシステム
・パワーエレクトロニクス事業
-電動パワーステアリングECU
-電動車向けDC/DCコンバータ
-車載充電器
・スマートフォン・ゲーム
-スマートフォン用光学手ブレ補正
-触覚デバイス
・モータ駆動ユニット
-車載サーマルマネージメント
-小型モータ、センサ、制御ソフト等を統合した製品群
・システム機器
-各種カードメディアに対する周辺機器のセキュリティ強化機器
-液晶・有機ELディスプレイ関連機器
-半導体ロボット関連機器
-真空装置内搬送機器
・検査装置
-半導体ウエハ用光学式自動検査装置
-半導体パッケージ用自動検査装置
-プリント基板、タッチパネル、FPC用検査装置
・空調・家電用モータ
-家庭用・業務用ファンモータ
・産業用モータ
-ポンプ(汎用ポンプ、油圧ポンプ、等)
-ファン・ブロワ(送風機、シロッコファン、冷却塔、等)
-荷役搬送機器(クレーン、ホイスト、巻上げ機、等)
-防爆環境機器(粉砕機、撹拌機、計量器、等)
当連結会計年度における研究開発活動に係る支出額(無形資産に計上された開発費の支出額を含む)は、249億42百万円です。