当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループは、「人の尊重」、「企業価値の最大化」、「企業品質の向上」、「技術立社への挑戦」及び「社会的役割の達成」という経営理念のもと、人・企業・社会・地球とのより良い結びつきを柔軟な技術力と発想力をもって意欲的に創造する「もっとしなやかにBetter Connection」をコーポレートスローガンに、お客様への価値創出に貢献し、持続的な企業価値の向上に努めてまいります。
(2)経営環境及び対処すべき課題
2025年度の見通しにつきましては、世界経済は引き続き緩やかな成長を見込むものの、長期化しているウクライナ情勢や、中東情勢の緊迫化による地政学的リスクに、米国関税政策による新たなリスクが加わり、景気の先行きにより不透明さが増しております。
当社グループを取り巻く市場環境につきましては、主力の半導体市場では品種によって回復度合いに差はあるものの、市場全体では中長期的に市場拡大が進むと見込んでおります。
このような状況の下、2023年度を初年度とする第四次山一電機グループ中期経営計画(2024年3月期~2026年3月期)は、「お客様が満足いただける製品・サービスを提供できる会社」に成長することを引き続き目指すこととし、この経営目標の達成にあたり「お客様と共にグローバルに連携し、未来につながる製品の創造」という観点から取り組んでおります。
(3)経営戦略
当社グループは、「第四次山一電機グループ中期経営計画」の基本戦略である「成長戦略」と「構造改革」を引き続き深耕し、投資計画及び株主還元等についても引き続き目標値の達成に向けて取り組み、経営目標として「未来に向けて夢のある会社になる」ことを目指してまいります。
次期中期経営計画を見据え更なる成長のための施策として、「成長戦略」では「事業強化」を、「構造改革」では「機能強化」を更に進めてまいります。
① 事業強化
[テストソリューション事業]
「成長エンジンとして更に強い事業へ深化」を目標とし、達成のために以下の施策を進めてまいります。
・成長・拡大へのマイルストーンを作成して強力に推し進める
・必要な要素技術を予想して事前に社内に取り込む
・高品質とタイムリーな供給を実現して顧客から揺るぎない信頼を獲得する
[コネクタソリューション事業]
「強みを活かして第2の柱となるべく進化」を目標とし、達成のために以下の施策を進めてまいります。
・通信市場向けコネクタの製品開発力の強化
・製品の競争力を強化
・顧客との更なる関係強化
② 機能強化
a.「社内(組織力・実行力)の強化と外部の活用」については、以下の施策を進めてまいります。
・それぞれの部門や分野に精通する、また提案力を上げる
・不足しているものは、社内に取り込むか、また外部を活用する
b.「資本政策、キャッシュアロケーションの強化」については、以下の施策を進めてまいります。
・投資目的の達成と好循環のために、設備投資、戦略投資、人的資本への投資を行う
・資本コストを上回るROICの達成
c.「未来への投資」については、以下の施策を進めてまいります。
・新しい技術や将来発展しそうな分野への先行投資
・イノベーションへの足掛かり
(4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループの経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標は、売上高、営業利益、投資費用、ROE(自己資本当期純利益率)、配当性向及び総還元性向であります。
第四次中期経営計画では、2026年3月期に売上高500億円、営業利益100億円を超えることを目指すとともに、事業の競争力強化と持続的な成長の実現、生産性向上と安定的な供給体制の構築、人と組織と社会の調和に取り組んでまいります。
中期経営計画(2023年4月~2026年3月)及び、その2年目である2025年3月期の達成・進捗状況は以下のとおりであります。
① 業績目標
3ヵ年累計の連結売上高を1,390億円以上、連結営業利益を250億円以上とする目標を設定し、持続的成長とより一層の収益力の向上に取り組んでまいります。
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(単位:億円) |
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項目 |
2024年3月期(実績) |
2025年3月期(実績) |
2026年3月期(見込) |
累計 |
達成率 (見込)(%) |
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連結売上高 |
364 |
452 |
474 |
1,291 |
92.9 |
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連結営業利益 |
29 |
82 |
85 |
196 |
78.6 |
② 投資計画
投資計画の3ヵ年累計額は140億円とし、新中期経営計画の目標達成のため資金を投下いたします。
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(単位:億円) |
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項目 |
2024年3月期(実績) |
2025年3月期 (実績) |
2026年3月期 (見込) |
累計 |
達成率 (見込)(%) |
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有形固定資産及び無形固定資産増加額 |
55 |
37 |
37 |
129 |
92.7 |
③ その他
・ROEにつきましては、10%以上を目指してまいります。
・配当につきましては、連結配当性向30%を引き続き目指してまいります。
・自己株式取得を機動的に実施し、総還元性向40%以上を目指してまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)サステナビリティに関する考え方
当社グループは、創業以来培ってきた柔軟な技術力と発想力を活かし、常にその時代のお客様のニーズに応えてまいりました。今後はさらにサステナビリティの追求の枠を広げ、ステークホルダーの皆様と共に、持続可能な社会を作り上げるために未来を共創していくことを目指します。
その達成のため、経営理念である「人の尊重」、「企業価値の最大化」、「企業品質の向上」、「技術立社への挑戦」及び「社会的役割の達成」に基づき、社会の課題を解決する技術を提供することで経済価値を高め、社会価値を創出する好循環を実現してまいります。
今後も当社グループは、人・企業・社会・地球とのより良い結びつきを意欲的に創造し、持続可能な未来に貢献いたします。
(2)具体的な取組
当社グループは、2023年度にTCFD提言への賛同を表明しており、2024年度はその枠組みに基づく情報開示及び体制強化を引き続き推進しております。その具体的な取り組みとして、「ガバナンス」、「戦略」、「リスク管理」及び「指標及び目標」の各項目に関する情報の整備・開示を進めております。
また、気候関連情報の透明性と信頼性の確保を図る観点から、CDPへの回答を通じた外部評価への対応も推進しております。
当社グループのサステナビリティに対する取り組み、目標、実績値などを幅広いステークホルダーの皆様へ報告するため、2024年度の活動内容をまとめた「サステナビリティレポート2024」を公開しました。詳細は、当社コーポレートサイトをご覧ください。
https://www.yamaichi.co.jp/ir/library/sustainability_report/
(3)ガバナンス
当社グループは、経営管理部サステナビリティ推進課よりサステナビリティ委員会へ審議内容を提案し、サステナビリティ委員会で決議されたものは取締役会へ報告する体制を構築しております。また、目標に対して着実な履行ができているのかを管理するため、目標と実績値が乖離する場合または改善の余地がある場合には、サステナビリティ委員会を中心に、目標の達成に向けて適切なPDCAサイクルを回します。
(4)戦略
当社グループは、テストソリューション事業、コネクタソリューション事業及び光関連事業を通じ、社会課題解決への貢献とESGを軸とした企業活動を実施することで財務戦略と非財務戦略の統合経営を目指します。
それに係るマテリアリティ(重点課題)について、サステナビリティ委員会を中心に目標と指標を定め取り組んでまいります。
当社グループにおけるマテリアリティは以下のとおりであります。
・事業を通じた社会課題解決への貢献
・環境負荷低減に向けた取り組み
・人財マネジメント
・ガバナンスの強化
事業を通じた社会問題解決への主な取組内容は以下のとおりであります。
・通信関連
デジタル化の進展によるネットワークの高速化・大容量化・省電力化、そして社会インフラの構築への貢献
・自動車関連
安全でクリーンな自動車社会の実現と新しいモビリティ都市開発への貢献
・産業機器関連
労働人口動態にも対応する自動化技術や制御システム、またIoTの進展への貢献
① 気候変動
当社グループは、気候変動がもたらす長期の「リスク」と「機会」を明確にすべく、シナリオ分析を行っております。1.5℃シナリオの分析においては、各国・各地域で脱炭素政策が強化され、当社グループが関わる産業への影響を想定いたしました。また、4℃シナリオの分析においては、気候変動に対して各国・各地域で脱炭素政策が強化されず、平均気温が上昇を続け、自然災害が激甚化する中で、物理面でのリスクが高まることが想定されます。
イ.1.5℃シナリオ
カーボンニュートラルに対する各種規制が強化され、持続可能な社会に向けて企業や自治体が再生可能エネルギーや省エネルギーへの対応を積極的に行っている状態
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機会とリスク |
分類 |
事業インパクト |
影響 |
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機会 |
次世代自動車の普及 |
EVなど次世代モビリティ需要が高まることによるコネクタ、半導体市場の拡大 |
大 |
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通信インフラの省電力化 |
省電力の電子機器を使用したサーバー構築によるコネクタ需要の増加 |
大 |
|
|
省エネ機器への置換え |
省電力による電力制御、コントロール制御による半導体需要の増加 |
大 |
|
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GXへの変革 |
企業や自治体のGX対応による半導体需要の増加 |
中 |
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機会とリスク |
分類 |
事業インパクト |
影響 |
|
移行リスク |
各国の政策 |
電力制御による工場の稼働停止 |
大 |
|
脱炭素税導入による負担コストの増加 |
大 |
||
|
排出枠購入によるコストの増加 |
中 |
||
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再生可能エネルギー設備への切り替えコストが発生するリスク |
中 |
||
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産業廃棄物処理コストの増加 |
小 |
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顧客要求 |
脱炭素化に対するニーズへの対応遅れによる機会損失 |
中 |
ロ.4℃シナリオ
現状のまま温度上昇に対して対策が講じられず、自然災害リスクが高まる状態
|
リスク |
分類 |
事業インパクト |
影響 |
|
物理リスク |
異常気象の発生増加 |
サプライチェーン分断による原材料の入手難が招くコストアップ |
大 |
|
工場被害による稼働停止 |
大 |
||
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平均気温の上昇 |
光熱費の上昇 |
中 |
|
|
工場の稼働抑制 |
中 |
② 人的資本
人財戦略の基本方針
当社グループでは経営理念として、人を育て、人を活かし、会社の発展と個人の幸せの共有を目指す「人の尊重」を第一に掲げております。また、同じく経営理念である「企業価値の最大化」、「企業品質の向上」、「技術立社への挑戦」、及び「社会的役割の達成」の実現に向けて、役員及び社員の能力向上と人財育成は極めて重要な投資と考えております。
そのため、各人財育成施策は技術の進化や関係法令の改正など、外部環境の変化に素早く対応し、社内の人事管理諸制度とも有機的な関連をもって継続的・計画的に推進してまいります。
また、企業の発展・存続には人財の多様性の確保が不可欠と考え、高いスキル・異なる経験・視点をもつ外部人財の採用も積極的に進めてまいります。
人財の多様性の戦略及び育成
[人財育成方針]
当社では、グローバルなフィールドで「お客様に満足いただける商品・サービスを提供できる人財」を育成すべく、各種研修を実施しております。全ての階層・職種に共通で提供するIT・セキュリティ等に関する教育プログラムのほか、新入社員や管理職向けの研修、また職種別の専門教育など、それぞれの世代・役職・役割に合わせた様々な研修コンテンツを提供し、全ての役員・社員の継続的な能力向上・人財育成を図っております。
具体的には、将来の管理職候補者のスキルと知識を強化し、リーダーシップ能力を高めるための8か月間のプレマネジメント研修、新入社員の定着と早期戦力化を目指した配属部門と教育管理部門の協働によるOJTと定期面談、これらを効率的に運用するための研修管理システムの導入などを行っております。
[社内環境整備方針]
当社では、「人の尊重」の経営理念に基づき、育児や介護などのライフイベントに対応した柔軟な働き方を整えております。社員一人ひとりが成長の機会を逃すことなく、多様な働き方を活かして組織に貢献できるよう支援しております。
具体的な取り組みとして、フレックスタイム制度や在宅勤務制度、育児休業・短時間勤務制度、私傷病や介護などで利用できる積立特別休暇制度、育児休業期間中の付加支援金による経済的補助などを設けております。
[中途採用の活躍]
当社では、変化の激しい企業環境において持続的な成長を目指すため、人財の多様性を重視し、中途採用を積極的に推進しております。今後も、専門的なスキル、異なる経験・視点をもつ外部人財の採用を積極的に進めてまいります。
[女性活躍推進]
当社では、「人の尊重」・「社会的役割の達成」のための手段の一つとして、また事業環境の変化に迅速に対応できる組織となるため、女性社員の採用や管理職への登用を積極的に行っております。
また、登用した女性社員が当社にて能力発揮・キャリア形成ができ、長く勤められる環境を整えることを目標に、各種人事施策を実施しております。
(5)リスク管理
当社グループは、環境推進委員会を中心に環境リスクを特定し、各部署が目標に沿った取り組みを進めるために、ISO 14001に基づく環境管理体制を編成しております。
また、進捗管理は社内指標を可視化し、環境への取り組みを推進するとともに管理体制を強化しております。
(6)指標及び目標
① 気候変動
当社グループは、2030年にCO2排出量を2021年度の原単位基準で40%削減することを目指しており、2050年のカーボンニュートラル実現に向けて取り組んでまいります。CO2排出量原単位は、連結売上高当たりのCO2排出量を指し、基準となる2021年度は0.36トン/百万円、2024年度は0.32トン/百万円となっております。
当社グループは、サステナビリティの重要課題として環境負荷の低減を掲げ、再生可能エネルギーの活用及び温室効果ガス排出の抑制を目的とした生産体制及び職場環境の整備に取り組んでおります。
2024年5月には佐倉事業所第2棟に太陽光発電パネルを新設し、NAS蓄電池(※)との連携による電力運用体制を構築することで、佐倉事業所全体の使用電力の約25%を太陽光発電により賄う体制を整備しております。
また、ドイツの生産拠点(ヤマイチエレクトロニクスドイッチェランドマニュファクチャリングGmbH)においても太陽光発電設備を設置し、稼働開始を予定しております。
※ 電力需要が高い時間帯に蓄えた電力を放出することにより、電気料金の節約や安定した電力供給が可能なシステムであります。
また、温室効果ガス排出量の管理においては、Scope1及びScope2に加え、2024年度よりScope3排出量の算出に着手し、サプライチェーン全体におけるGHG排出実態の可視化に取り組んでおります。これらの取り組みを通じて、2050年のカーボンニュートラル実現を視野に入れた削減戦略を構築しており、中長期的には2025年度中のSBTiへのコミットメントを予定しております。
② 女性活躍推進
当社グループでは、女性の採用及び管理職への登用を積極的に推進しており、女性社員比率は43.7%、女性管理職比率は15.8%であります。グループ全体では一定の水準にありますが、地域別の傾向に基づけば、日本における女性管理職比率は依然として低く、十分な水準には達していないと認識しております。
今後は、グローバルでの取り組みを継続するとともに、日本国内において女性活躍の更なる推進と管理職への積極的な登用を進めてまいります。
なお、当社における女性活躍推進に関する指標及び目標と当事業年度末時点での実績は以下のとおりであります。
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指標 |
目標 |
実績 |
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(注)1.事業年度末における従業員数(臨時雇用者数を除く)に占める割合であります。
2.事業年度末における管理職に占める割合であります。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
1.為替レートの変動に関わるリスク
当社グループの事業は、グローバルな製品の生産と販売を含んでおります。日本以外の生産拠点はフィリピン、韓国及びドイツであり、これら地域の通貨価値の上昇は、製造と調達コストを押し上げることになります。コストの増加は当社グループの価格競争力を低下させることになり、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。販売に関わる通貨は、日本円の他、米ドル、ユーロ、シンガポールドル等があり、これら通貨の価値の下落は当社グループの収入減となって業績に悪影響を及ぼします。短期的な為替変動リスクに対しては、為替リスクヘッジ取引により、悪影響の排除に努めておりますが、中長期的な為替変動には対応できなくなる場合もあり、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
2.事業環境の変動に関わるリスク
当社グループの業績は、営業収入のうち重要な部分を占めるテストソリューション事業製品の需要が過去において世界の半導体需給に大きく影響を受けたように、当社グループのコントロールが及ばない要因の影響を受けます。その要因とは、グローバルな経済環境全般の変化(今般では米中間の貿易摩擦がコネクタソリューション事業に与える影響)、地政学的リスクの増大、大規模な感染症の流行などを契機とした企業のビジネス環境や個人のライフスタイルの変化、新製品の市場投入の成否、大口顧客による製品戦略等の変更、大口注文の解約、大口顧客の倒産、大口顧客のM&Aによる消滅などに伴う大きな変化ですが、これらに好ましくない変化が生じた場合は、当社グループの業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
3.気候変動に関わるリスク
当社グループは、気候変動に関わる課題を当社グループの経営に重要な影響を与える主要なリスクのひとつとして認識しております。気候変動による影響は一部顕在化しており、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。リスクが当社の経営に与える影響については、前記「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (4)戦略」をご参照ください。
4.価格競争に関わるリスク
当社グループが属しているエレクトロニクス業界は、スマートフォンや車載用電子機器等の製品や部材などの技術革新の進展が加速化し、新製品への切り替えが早まることにより、市場での在庫調整への動きや競合他社との価格競争も激化する環境下にあります。当社グループは、継続的な開発投資により独自技術の蓄積と新製品・新技術の開発に積極的に取り組んでおりますが、国内外を問わず業界における価格競争は激化しており、顧客からのコストダウン要求や競合他社の参入攻勢などのため、今後一層の価格下落が予想されます。当社グループは、グローバルな視点での収益及びコストの構造改革を推進してまいりますが、予想を超えた価格競争や販売価格の下落及び在庫調整が発生した場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
5.製品の品質、欠陥に関わるリスク
当社グループは、各製造拠点で世界的に認められている品質管理基準に従って各種の製品を製造しております。しかしながら、製品の微細化、高品位化がますます要求されていることからも、品質問題、リコールが発生しない保証はありません。特に、コネクタについては、最終製品がマスプロダクトであるスマートフォンや車載用電子機器等であることから対象製品が量的に多くなりやすく、製造物賠償責任保険などによるリスクヘッジに努めておりますが、賠償額の大きさによっては当社グループの業績と財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
6.知的財産権に関わるリスク
当社グループは技術開発型企業として競合他社に対して差別化できる技術を蓄積してまいりましたが、急速な生産工場のグローバル化の結果、一部地域では当社グループの知的財産権が完全な保護を受けることが出来なくなる可能性があります。また、競合間での技術の急速な開発競争の結果、当社グループの技術が意図せずに他社の知的財産権を侵害してしまう可能性もあります。
7.訴訟に関わるリスク
当社グループが広範な事業活動を展開する中で、知的財産権、製造物責任、環境、労務等の様々な訴訟の対象となるリスクがあります。重大な訴訟が提起された場合、業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
8.海外での事業展開に関わるリスク
当社グループの生産、販売活動の大きな部分が、東南アジア、中国、米国、ヨーロッパ等の日本以外の国で行われております。これら海外事業展開でのリスクとして、①予測できない税制、法律の改定 ②最低賃金改定による想定以上の賃上げや労働争議による賃上げ ③伝染病(特に感染規模が大きく、収束までに長期間を要するもの)、戦争、テロ、自然災害による事業継続の困難さ ④インフラの不確実性―エネルギー、ロジスティックス等 ⑤優秀な人財確保の困難さ等があり、当社グループの業績、財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
9.外注部品供給元への依存に関わるリスク
当社グループ製品は、多くの原材料、部品、治具の供給を外注業者に依存しております。それら外注業者とは安定供給を狙いとした協力関係を築いておりますが、時に原材料、部品の不足や、治具の供給遅延が起こらないという保証はありません。原材料、部品、治具の供給状況の悪化は当社グループのコスト上昇に繋がり競争力を失うことから業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
10.原材料価格の変動に関わるリスク
当社グループが使用する金や銅などの金属材料や石油化学原料は、価格が大きく変動することがあり、これら原材料の価格上昇分を製品価格に十分に転嫁できない場合、あるいは品種転換により製品原価を抑えることができない場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
11.技術トレンドの予測に関わるリスク
当社グループは、革新的な技術と資源を投入する新製品の開発により、業績を確保しておりますが、新技術のトレンド、マーケットでのニーズの予測を間違えると投下資源の回収が出来なくなることから業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
12.量産拠点の集中に関わるリスク
当社グループの生産拠点は、テストソリューション事業及びコネクタソリューション事業の製品は一部製品を除きフィリピン、光関連事業の製品は神奈川県秦野市にて生産しており、各生産拠点が一極集中しております。何らかの原因でそれら生産拠点での操業が制限を受けたり不可能になるなど不測の事態が生じた場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、中長期的に国内での生産を拡大することにより、リスク低減に努めてまいります。
13.減損損失に関わるリスク
当社グループが保有する土地および設備等の資産について、取得時に想定した収益が見込めなくなった場合には、「固定資産の減損に係る会計基準」の適用により減損損失が計上され、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
14.資金調達に関わるリスク
当社グループが事業を展開するために必要な資金の調達について、金利の上昇や当社グループの信用力の低下などにより調達コストが増加した場合、収益性が悪化する可能性があり、また有利子負債の一括返済を求められた場合、財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
15.情報セキュリティに関わるリスク
当社グループは情報セキュリティポリシーを定め、関連する規程を整備し、管理体制を構築し、定期的に役員及び従業員に情報セキュリティに関する教育を実施することで、情報システムへの脅威から個人情報や機密情報を守るよう努めております。しかしながら、サイバー攻撃が複雑化・多様化する中で、不正アクセスやコンピュータウイルス感染により、当社グループのシステムの破壊及び保有する個人情報や機密情報の窃取・漏洩・改ざんを引き起こす可能性があり、このような事象が発生した場合、事業活動や業績及び財務状態に悪影響を及ぼし経営に大きな打撃を与える可能性があります。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1)経営成績の状況
当連結会計年度における世界経済は、米国では金融引き締めの継続によりインフレ率が減速し、個人消費を中心に景気は底堅く推移しましたが、中国では輸出は堅調に推移したものの、内需の低迷により景気停滞が継続しました。また、欧州では個人消費の回復が進んだものの製造業の低迷が継続しており、これに加えて長期化するウクライナ情勢や、中東情勢の緊迫化による地政学的リスクの高まり等により、先行きの見通しは不透明な状況が続いております。
当社グループが関連する電子部品市場においては、テストソリューション事業では、半導体市場の大幅な回復に伴いバーンインソケット、テストソケット共に需要が回復しました。コネクタソリューション事業では、データセンター投資の拡大により通信機器向け製品は順調な推移をしましたが、車載機器向け及び産業機器向け製品は需要が戻らない状況が続きました。
このような状況の下、当社グループは世界的な半導体需要の増加を見据え、半導体ソケットの安定した供給体制の強化及び、通信機器・車載機器・産業機器向けコネクタなど多様化する顧客ニーズに迅速かつ効率的に対応するため立上げた佐倉事業所第2棟及びフィリピン第3工場は順調に稼働しており、更なる生産性改善並びに品質改善の取り組みを継続しております。
その結果、当連結会計年度の経営成績は、売上高45,298百万円(前年同期比24.4%増)、営業利益8,225百万円(前年同期比180.4%増)、経常利益7,689百万円(前年同期比163.8%増)、親会社株主に帰属する当期純利益5,240百万円(前年同期比154.4%増)となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
[テストソリューション事業]
テストソリューション事業は、下期に入り半導体各社の需給調整がありましたが上期の好調な状況を受けて当連結会計年度では好調に推移しました。
テスト用ソケット分野では、スマートフォン及びPC向け製品の販売が好調に推移しました。また、バーンインソケット分野でもロジック半導体向け製品は、MCU向け製品が市場の在庫調整等の影響を受けたものの、自動車用ADAS向けが好調に推移したことにより、過去最高の売上となりました。メモリー半導体向け製品もAIを含むデータセンターをターゲットとしたDRAMの投資再開により前年度比にて大幅に伸長しました。
その結果、売上高25,114百万円(前年同期比58.5%増)、営業利益7,112百万円(前年同期比285.5%増)となりました。
[コネクタソリューション事業]
通信機器向け製品は米中経済摩擦の影響が続いている中で、主要顧客での在庫調整が一巡したことに加え、AIを含むデータセンター向け新製品の販売増もあり利益面に貢献しました。車載機器向け製品は新製品投入の効果から堅調に推移しましたが、世界的な需要低迷やEV車の減速などの影響を受けました。産業機器向け製品は市場での在庫調整が長引いており、特に主要市場である欧州顧客での落ち込みが大きく売上・利益に影響が出ました。
その結果、売上高18,948百万円(前年同期比1.5%減)、営業利益1,213百万円(前年同期比30.5%増)となりました。
[光関連事業]
民生機器向け及び付加価値の高い医療機器向けフィルタ製品等の一部顧客での在庫調整及び生産調整の影響を受けました。
その結果、売上高1,236百万円(前年同期比8.7%減)、営業損失25百万円(前年同期は営業損失21百万円)となりました。
(2)財政状態の状況
① 資産
当連結会計年度末における流動資産は32,112百万円となり、前連結会計年度末に比べ2,396百万円増加いたしました。これは主に、自己株式の取得及び剰余金の配当があったものの売上高が増加したことにより、現金及び預金が増加したことによるものであります。なお、自己株式取得のための預け金の預入れにより現金及び預金は1,940百万円減少し、その他流動資産が同額増加しております。固定資産は21,277百万円となり、前連結会計年度末に比べ69百万円減少いたしました。なお、当社連結子会社光伸光学工業株式会社は、機械装置及び運搬具、及び工具、器具及び備品について減損損失292百万円を計上しております。また、ソフトウエア仮勘定620百万円は当社の次期基幹システムの構築費用であります。
この結果、総資産は53,389百万円となり、前連結会計年度末に比べ2,327百万円増加いたしました。
② 負債
当連結会計年度末における流動負債は10,443百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,211百万円増加いたしました。これは主に、未払法人税等が998百万円増加したことによるものであります。固定負債は3,270百万円となり、前連結会計年度末に比べ296百万円減少いたしました。
この結果、負債合計は13,713百万円となり、前連結会計年度末に比べ915百万円増加いたしました。
③ 純資産
当連結会計年度末における純資産合計は39,676百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,412百万円増加いたしました。これは主に、剰余金の配当972百万円及び自己株式の取得2,523百万円があったものの、親会社株主に帰属する当期純利益が5,240百万円となったことによるものであります。
この結果、自己資本比率は74.0%(前連結会計年度末は74.6%)となりました。
(3)キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ277百万円減少し、当連結会計年度末の資金は12,794百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は9,005百万円(前年同期比178.7%増)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益7,350百万円によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は3,657百万円(前年同期比13.4%減)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出2,848百万円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は5,493百万円(前年同期比60.0%増)となりました。これは主に、配当金の支払額973百万円、自己株式の取得による支出2,523百万円及び自己株式取得のための預け金の預入による支出1,940百万円によるものであります。
(4)生産、受注及び販売の実績
① 生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
前年同期比(%) |
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テストソリューション事業(千円) |
26,146,548 |
169.4 |
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コネクタソリューション事業(千円) |
19,428,901 |
104.2 |
|
光関連事業(千円) |
1,268,619 |
101.2 |
|
合計 |
46,844,069 |
132.6 |
(注) 金額は販売価格によっており、セグメント間の内部振替後の数値によっております。
② 受注実績
当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
当連結会計年度(自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
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|
受注高(千円) |
前年同期比(%) |
受注残高(千円) |
前年同期比(%) |
|
|
テストソリューション事業 |
22,169,421 |
89.7 |
7,789,030 |
72.6 |
|
コネクタソリューション事業 |
18,453,781 |
91.3 |
4,979,411 |
91.0 |
|
光関連事業 |
1,316,941 |
104.0 |
220,281 |
158.0 |
|
合計 |
41,940,144 |
90.8 |
12,988,723 |
79.5 |
(注) セグメント間の取引については相殺消去しております。
③ 販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
前年同期比(%) |
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テストソリューション事業(千円) |
25,114,629 |
158.5 |
|
コネクタソリューション事業(千円) |
18,948,143 |
98.5 |
|
光関連事業(千円) |
1,236,040 |
91.3 |
|
合計 |
45,298,813 |
124.4 |
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.当連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
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相手先 |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
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金額(千円) |
割合(%) |
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Qualcomm Technologies Inc. |
10,962,300 |
24.2 |
(5)経営成績の分析
① 売上高及び営業利益
売上高は、前連結会計年度に比べ8,874百万円増加し、45,298百万円となりました。売上高の詳細については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績の状況」の中のセグメントごとの経営成績に記載のとおりであります。
売上原価は、前連結会計年度に比べ2,479百万円増加し、27,798百万円となりました。これは主に、売上高が増加したことによるものであります。
販売費及び一般管理費は、前連結会計年度に比べ1,103百万円増加し、9,275百万円となりました。
この結果、営業利益は、前連結会計年度に比べ5,291百万円増加し、8,225百万円となりました。
② 営業外損益及び経常利益
営業外損益は、前連結会計年度に比べ516百万円損失が増加し、535百万円の損失(純額)となりました。これは主に、為替差益が399百万円減少したこと及び過年度付加価値税等71百万円を計上したことによるものであります。
この結果、経常利益は、前連結会計年度に比べ4,774百万円増加し、7,689百万円となりました。
③ 特別損益及び税金等調整前当期純利益
特別損益は、前連結会計年度に比べ508百万円利益が減少し、338百万円の損失(純額)となりました。これは主に、前連結会計年度において新株予約権戻入益162百万円の計上があったこと及び当連結会計年度において減損損失292百万円を計上したことによるものであります。
この結果、税金等調整前当期純利益は、前連結会計年度に比べ4,266百万円増加し、7,350百万円となりました。
④ 法人税等
法人税等は、前連結会計年度に比べ1,166百万円増加し、2,138百万円となりました。
⑤ 親会社株主に帰属する当期純利益
親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に比べ3,180百万円増加し、5,240百万円となりました。1株当たり当期純利益は159円04銭増加し、259円47銭となりました。
(6)キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローは、「(3)キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性につきましては、当社グループの運転資金需要のうち主なものは、部品・材料の購入費用のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、設備投資等によるものであります。
当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。
短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資等につきましては、自己資金及び金融機関からの長期借入を基本としております。
なお、当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は6,302百万円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は12,794百万円となっております。
(7)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
該当事項はありません。
当連結会計年度における各セグメント別の研究開発活動内容、開発成果は次のとおりであります。
なお、当連結会計年度の研究開発費の総額は
[テストソリューション事業]
半導体の試験分野のうち、バーンインソケット市場においては、メモリ用として狭ピッチに対応したICソケットを開発いたしました。また、車載用先端半導体や次世代パワー半導体に対応したICソケットを開発いたしました。
テストソケット市場においては、スマートフォンや情報ネットワーク系機器などに着目し、高密度実装及び高速伝送に対応したソケットの開発を進めております。プローブについては狭ピッチから高周波タイプまで、高周波タイプから低コストのプレスタイプまで、ユーザー要求に対応した様々な形態の仕様を開発し提供しております。
なお、テストソリューション事業の研究開発費は
[コネクタソリューション事業]
当社グループが得意とする高精度メカニカル技術、高信頼接触技術、高速伝送技術、フレキシブル基板技術を核に、当事業が注力する通信市場、車載市場及び産業機器市場、さらには医療市場の差異化製品の開発を進めております。
上記の得意技術をもとに顧客ニーズである「高速伝送」に対しては、通信基幹系光伝送機器用コネクタ、データセンター機器用コネクタ、基板対基板用コネクタ、YFLEXとの組み合わせで実現したFPC用コネクタを開発いたしました。また、「小型・省スペース化」に対しては、自動運転用機器に用いられるカメラモジュールコネクタ及びインターフェースコネクタを開発いたしました。
なお、コネクタソリューション事業の研究開発費は
[光関連事業]
薄膜製品では、新しい生産方法を用い、リニアバリアブルフィルタの開発が完了いたしました。この光学フィルタは、基板の位置によってリニアに光学性能を変化させるフィルタであり、1枚のフィルタで多様な波長域の光学特性を提供することが可能となっております。多機能分光分析分野への応用が期待されている製品であります。
光学モジュール・光デバイス関連製品では、デバイス開発技術をもとにUVテープに対応したUV-LED照射装置を開発いたしました。デバイスの主力製品である波長可変レーザにおいては、定評がある光学特性を維持しながらユーザーが要求する性能に向上させる開発を進めております。また、リニアバリアブルフィルタを活用したモジュール製品の開発を進めております。
なお、光関連事業の研究開発費は