当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは、創業以来「世の中にないものをつくり、世の中のためになるものをつくる」を経営理念として、半導体・EUVをはじめとする先端分野の市場向けに、光応用技術を用いた各種検査・計測システムを提供してまいりました。今後もこの経営理念を堅持して、中期ビジョンとする「世界中のお客さまから真っ先に声をかけて頂ける」会社を目指します。また、当社グループの強みである光技術に磨きをかけ、精密機構・エレクトロニクス・ソフトウエアの先進技術を複合させたソリューションを素早く顧客に提供することで、最終製品となる身近な電子機器を通じて世界中の人々の豊かな暮らしづくりに貢献していくことを社会的使命(ミッション)としています。
(2)中長期的な会社の経営戦略、目標とする経営指標
当社グループは、様々なステークホルダー(利害関係者)のご期待に応え、株主価値、顧客価値、社会価値、従業員価値を総合的に高めることが、継続的な企業価値の向上に必須であるととらえています。
事業においてはマーケットを世界に求め、特に大手企業が参入しにくいサイズのマーケットで、かつ中小企業にはノウハウや技術の点で参入が困難なニッチマーケットに注力しています。エマージングマーケット、またはセグメンテーションが可能な既存マーケットにおいて収益機会が見込まれる新たなアプリケーションを見出し、ニーズに最適な製品を投入することで高いシェアと収益性を獲得することを基本的な事業戦略としています。ニッチトップのポジションを獲得した後には、継続的な最先端技術の投入と新たな付加価値の提供によって収益性の維持と向上に努めております。また、より研究開発に特化した組織体制とするためにファブライト戦略を採り、製品製造の多くを協力会社に委託しています。一方、事業環境の変化などで当社の強みが発揮できない、または採算性の維持・回復が困難と判断した製品につきましては、撤退・売却も視野に速やかにテコ入れを実施し、製品ポートフォリオが健全な状態を保つように努めております。最終的には数多くの付加価値の高いオンリーワン製品/ソリューションを提供する「マルチニッチトップ」企業を目指してまいります。
当社グループの主たる事業領域である半導体業界は、技術革新のスピードが速く、最先端に向けた研究開発投資を継続的に行う必要があります。一方で業界特有の景気変動の波があり、短期的には顧客企業の投資動向、ひいては当社グループ業績が大きく悪化する恐れがあります。このような市場縮小に見舞われた状況下でも営業利益率20%以上を堅持し、成長投資の継続が可能となる強固な財務並びに事業基盤の構築を目標としております。
(3)事業環境及び対処すべき課題
当社グループは、2025年6月期から2030年6月期の6カ年を対象とする中期経営計画を策定いたしました。前中期経営計画「フェーズ3+」では、「経営基盤の強化」と「成長機会の追求」に取り組んでまいりました。今回の中期経営計画では、「圧倒的な開発スピード、高い技術力、顧客との強固な信頼関係の構築により売上最大化とさらなる成長を目指す」を方針に掲げ、中長期の成長機会を捉えるべく以下の取り組みを推進してまいります。
① 売上最大化へ向けたブラッシュアップ
・リードタイムの短縮
・サービスビジネスの拡大
② さらなる成長へ向けた研究開発の推進と体制づくり
・人材採用の強化と職場環境の整備
・新たなソリューションによる事業領域の拡大
・事業規模拡大を支える体制の強化
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは次のとおりです。
なお、文中における将来に関する事項は当連結会計年度末現在において当社が判断したものです。
当社グループは、創業以来の経営理念「世の中にないものをつくり、世の中のためになるものをつくる」の具現化を追求し、サプライヤーの皆さま並びにお客さまと協働しながら、事業活動を通じて社会課題の解決に貢献することで、中長期的な企業価値向上を実現し、サステナブルな社会の実現に寄与するよう努めてまいります。
(1)ガバナンス
当社グループはサステナビリティに関する重要事項について、取締役会が報告を受け、監督を行っています。活動方針の策定、取組みの検討・進捗管理等については、当社の企画部門が事務局として取りまとめを実施しています。
(2)戦略
事業を通じて社会課題を解決するという視点から、「経済・社会価値を生み出す製品開発力」「顧客ニーズを迅速に実現する対応力」「持続可能なサプライチェーン」「人材を活かす組織体制・風土」「持続可能性に配慮したガバナンス体制」をマテリアリティ(重要課題)として特定し、その実現に向けた活動を推進しています。
① 環境
環境については、以下の中長期ビジョンの実現を目指し、さまざまな環境保全活動を推進しています。
・ 半導体、FPD等の性能向上と低消費電力化、歩留り改善に役立つ革新的な検査・計測装置の開発を行い、世界中で使用されている電子機器や産業機器の省エネルギー化に貢献する
・ SiCやGaNを使った次世代パワー半導体の実用化及び電気自動車に不可欠なリチウムイオン電池などの二次電池の性能と安全性の向上に貢献する
・ 生成AI、IoT、5G/6G、データセンターなど半導体の用途が広がり、当社製品の市場は中長期的に大きく成長することが期待されるが、これに比例して当社の生産・営業活動による温室効果ガス排出量が増加しないよう、排出量を売上原単位で管理して低減させる
・ 製造を委託している協力会社さま及びサプライヤーさまとのパートナーシップにより、サプライチェーンを通して持続可能な社会づくりに貢献する
中長期ビジョンの実現に向けた取組みの一つとして、当社では以下の環境配慮型製品の開発方針のもと製品開発を推進しています。
・ 半導体の微細化と製造工程での歩留り向上に貢献する最先端の検査・計測装置を開発し続けることにより、消費電力の削減並びに環境負荷の低減に貢献することを基本方針とします
・ 製品の開発、設計、製造、販売にあたっては、省エネルギー化、省資源化に配慮し、廃棄物削減とリサイクルを推進します
また、気候変動が及ぼすリスクと機会について、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の提言に基づく検討を行い、さまざまな対応策を講じるとともに継続的な情報開示に努めてまいります
環境に関する取組みの詳細については、当社ウェブサイトをご参照ください。
② 人的資本
当社グループは、多様な人材の育成及び社内環境整備に関する方針を掲げています。
(多様な働き方・多様な人材の活躍の支援に関する基本的な考え方)
グローバルに事業を展開する当社グループでは、様々な国や地域で多様な人材が活躍しています。「人材」が企業における最大の経営資源、成長の源泉であるという考えのもと、多様な人材が働きがいと働きやすさを両立し、それぞれの能力と専門性を最大限に発揮できる環境づくりに努めています。
また、当社グループでは、持続的な成長を実現するために、求める人材像を以下のとおり定義しています。
・ 世界初に挑戦する気がいのある人
・ 目的の達成に向けて、主体的に行動できる人
・ 多様な価値観を認め、他者と協働できる人
2025年6月期から2030年6月期の6ヵ年を対象として策定した、中期経営計画においても「さらなる成長へ向けた研究開発の推進と体制づくり」の施策の一つとして「人材採用の強化と職場環境の整備」に取組みます。
a. 人材育成
当社の製品開発力の維持・向上には、研究開発に携わる人材の確保と育成が極めて重要です。
当社は、「スピード開発」を促進する複数の技術領域に精通した人材を確保・育成するため、以下の取組みを通じてさまざまな実践的な教育の場を提供しています。
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取組例 |
概要 |
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開発会議 |
開発案件の経過や結果、新しい技術情報、その他技術本部内で共有すべき事項について発表する場 |
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Design Review |
新機能や新技術の開発検討の際に、様々な部署のエンジニアが議論に参加してアイデアを交換することで、多角的な視点を有する人材を育成し、製品開発力を高める場 |
b. 多様性の確保
当社グループはグローバルにオペレーションを展開し、それぞれの地域のビジネスに精通したローカル人材を登用しています。
また、社内に異なる経験・技能を有する人材が存在することが、多様な課題や社会変化に柔軟に対応するために必須であると認識しており、当社では下記のように多様な人材の採用・活用を積極的に推進しています。
・ 女性社員の採用・登用
・ グローバル人材の採用・登用
・ シニア人材の積極活用
・ 新規採用における新卒・中途のバランス
また、それぞれの専門性を活かせるキャリアパスを用意し、多様な人材が活躍できる場を提供しています。
以下は人材確保のための当社の取組例です。
・ 「学術機関の機械・電気系の学生サークルへの継続的な支援」「展示会へのブース出展」「学生・新社会人向けイベントへの協力」「業界団体や学会への協賛」を行い、有望な人材と積極的に接触し、人材パイプライン構築に努めています
・ 人材が能力を発揮し、仕事にやりがいを感じるには適切なワークライフバランスが不可欠です。具体的には、フレックスタイム制度、在宅勤務制度を導入するとともに、有給休暇取得率の向上、残業時間の抑制に努めています。また、出産・育児・介護休職後の職場復帰がしやすいよう配慮しています
・ 従業員満足度の現状把握と課題抽出、及び満足度向上に向けた施策検討のため、2015年より全社員を対象に定期的に満足度調査を実施しております。本調査では、「経営」「人事制度」「労働環境」などの8つのテーマで調査を行い、優先的に解決すべき課題を特定しています
人的資本に関する取組みの詳細については、当社ウェブサイトをご参照ください。
(3)リスク管理
当社グループでは、事業活動継続に関わる様々なリスクを分類し、それぞれのリスクについて起こりうる事象と対応策を特定しています。また、各リスク項目に関して、責任者を任命して適切な対応に当たるとともに、事業継続計画(BCP)の定期的な見直しを実施しています。リスクが顕在化した際にも業務への影響を抑え、お客さまへの供給責任を果たすよう努めています。
2024年7月には、グループリスクマネジメント及びコンプライアンス管理の計画的かつ組織的な実施及び監督を目的として、リスク・コンプライアンス委員会を設置しました。リスクマネジメント統括部門は総務部門が担当し、各部門が所管するサステナビリティ関連を含むリスクについて、以下のような一連のリスクマネジメントプロセスを年1回の頻度で実施します。
・ リスクの識別
・ リスクの評価
・ リスクへの対応策、軽減策及び代替策の策定と実施
・ モニタリング
また、当社では気候変動の影響について、TCFDのフレームワークに則り、脱炭素社会の実現を目指す1.5℃シナリオと気候変動対策がされず物理的リスクが顕在化する4℃シナリオを想定し、気候変動関連のリスク及び機会の検討・分析を行っております。
(4)指標及び目標
① 環境
当社では、温室効果ガス排出量Scope 1、2、3を算定、開示しています。2024年6月期には、温室効果ガス排出量の削減目標を設定しました。併せて、特に半導体デバイスの消費電力削減とリチウムイオン電池の開発への貢献度が高い製品群(EUVマスク関連装置 / パワー半導体関連装置 / リチウムイオン電池関連装置)を「グリーン製品(Green products)」と位置付け、当該分野の持続的な成長を見込み、中期的な研究開発投資の目標値の設定を行いました。
・環境に関する主な指標
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テーマ |
指標 |
目標 |
|
中期環境目標 |
温室効果ガス排出量 |
2030年までに当社単体のScope 1+2の温室効果ガス排出量を42%削減(2023年比) |
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長期環境目標 |
温室効果ガス排出量 |
2050年までにScope 1+2ネットゼロの達成 |
|
グリーン製品への投資 |
グリーン製品への研究開発投資額 |
グリーン製品に関わる分野で、2024年6月期から2028年6月期の5年間で合計500億円以上の投資 |
② 人的資本
・人的資本に関する主な指標
提出会社
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テーマ |
指標 |
2024年6月期 実績 |
2027年6月期 目標 |
|
|
人材育成 |
開発会議 |
提案件数(件) |
10 |
25 |
|
Design Review |
実施回数(回) |
597 |
500 |
|
|
多様性の確保 |
新規採用者に占める女性の割合(%) |
17.2 |
20.0 |
|
|
管理職に占める女性社員の割合(%) |
3.2 |
5.0 |
||
(注)当社の「女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画」における計画期間(2022年4月1日~2027年3月31日)にあわせて目標年度を設定しています。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1)半導体市場変動による影響
当社グループの主要販売先は半導体関連企業であるため、半導体市場の影響を大きく受けます。当該市場は中長期的には技術革新が進むことで持続的な成長が期待できる反面、短期的には需給バランスの崩れなどで市場規模が大きく変動することもあります。このような予期せぬ急激な需要縮小により、顧客が設備投資の凍結や先送りなどを行った場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。一方で、想定外の急激な需要増加に見舞われて設備投資を加速した場合は、製品供給がタイムリーに行えずに機会損失が生じる可能性もあります。
当社グループはこのような市場変動に対応するため、顧客の投資動向や受注状況を定期的に把握・検証するとともに、ファブライト戦略で柔軟な生産体制を構築し、急激な需要変動にも対応できる体制づくりを行っております。
(2)研究開発による影響
当社グループは、光、精密機構、エレクトロニクスを中心とした最先端技術の研究開発活動を継続的かつ積極的に実施し、これらの技術を搭載した新製品を早期に市場投入することによって、参入する各製品分野において上位の市場シェアと高い利益率の獲得に努めております。市場及び顧客動向等には十分留意しておりますが、顧客の要求する技術水準及び開発スケジュールに応えられない場合、または競合他社が競合優位性のある新製品で先行した場合には、当社製品が競争力を失い、収益性の維持が困難になるなど当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、最先端の顧客と技術ロードマップを共有いただくことに加え、営業だけでなく社内エンジニアが主体となって顧客との強固な信頼関係を構築し、既存または将来の具体的なニーズをいち早くとらえるよう努めています。また、先端開発室を設置し、技術開発部門を部門横断的にサポートし、タイムリーな新製品の投入を支える体制を整えております。
(3)重要な人材の確保に関する影響
当社グループは研究開発型企業であり、技術開発部門の有能な人材の確保と育成が当社の成長に欠かせないものと考えております。しかしながら、必要な人材の継続的な採用・育成ができない場合や重要な人材が喪失された場合には、製品開発力またはサポートの質が低下し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、業績連動で競争力のある給与体系と貢献度を反映した評価制度を整備するとともに、企業文化と親和性のある優れた人材の積極的な採用と育成を心がけております。
(4)品質に関する影響
当社グループの製品は、光応用技術・精密機構・エレクトロニクス・ソフトウエアの先進複合技術を用いたソリューションです。顧客の課題解決のために最先端技術を開発し、未だ市場に浸透していない新技術も積極的に新製品に導入するよう努めております。しかしながら、新技術に付随する予期せぬ品質問題が生じた場合には、売上減少、信頼の棄損などで当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、ISO9001の認証取得を含む品質保証体制を確立し、協力会社並びにサプライヤーと協働して製品品質に万全の注意を払うとともに、高いレベルのサービス体制の確立に取り組んでおります。また、不具合が発生した場合には迅速に対応して再発防止策を徹底し、継続的に製品の品質向上に努めています。
(5)知的財産権に関する影響
当社グループの製品は多くの最先端技術を製品に用いるために、意図せず第三者の技術や知的財産権を侵害してしまうリスクがあり、対応を誤ると製品の販売停止や損害賠償の発生などが当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また先端技術分野における知的財産の権利関係はますます複雑化しており、知的財産権に係る紛争に巻き込まれた場合にも、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、研究開発の初期段階から知的財産戦略を推進し、第三者の知的財産を侵害しないように努めています。同時に製品の差別化及び競争力強化のために独自技術の保護にも注力し、各製品分野における高い市場シェアと利益率の確保に努めております。
(6)検収売上時期の変動に関する影響
当社グループの主力事業である半導体関連製品の中には、装置1台あたりの販売価格が非常に高額となるものがあります。顧客の都合によって納入や検収の時期が変動した場合、少数の変動でも単年度の当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは計画通りに売上を計上するよう努めておりますが、業績予想に重大な差異が見込まれる場合は適切に開示してまいります。
(7) 特殊な部品/材料仕入に関する影響
当社グループの製品には多くの特殊な部材/材料が用いられており、特に光源や光学部品の一部に簡単には代替のきかないものがあります。仕入先からこれらの部材の供給が滞った場合には、当社グループの研究開発や生産に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、日ごろから仕入先との関係強化に努めるとともに、調達リスクを常時モニタリングして適正な在庫の確保に努めています。また、リスクヘッジのために代替品やセカンドソースの可能性についての情報収集を行っています。
(8)海外事業活動による影響
当社グループは事業の積極的な海外展開により、海外への売上高比率が高くなっております。海外への販売には、通常予期しない法令や規制の変更、経済的に不利な要因の存在または発生、政治的、社会的または経済的混乱等のリスクが存在します。こうしたリスクが顕在化することによって、当社グループの海外への販売に支障が生じ、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは主要な販売国に現地拠点を設け、現地での情報収集に努めるとともに顧客への製品供給に影響するリスク要因の発生を注視しています。また、リスクが顕在化した際は直ちに代表取締役及び取締役会に報告され、迅速に対策を実施する体制としております。
(9) 為替変動による影響
当社グループは日本国内で製品を開発・製造し、世界各国の顧客に向けて輸出しております。外貨建取引も多く存在しているため、急激な為替変動が生じた場合に、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、為替リスクを回避するために取引を円建てにて行うことを原則としております。顧客の求めで行う米ドル等の外貨建て決済取引に関しましては、為替感応度と業績に及ぶ影響をモニターし、リスクが顕在する兆候をとらえた際には迅速に対処しております。
(10)災害等の発生による影響
当社グループは、神奈川県横浜市港北区に本社及び研究開発拠点を有しており、この地区及び周辺地域に大規模な災害や感染症の流行などが発生した場合、本社機能や製品生産に影響を与える可能性があります。直接的な被害が無くとも、取引先への影響やヒトやモノの移動制限により、当社グループの生産・販売活動が停滞する可能性があります。
当社グループは、災害発生時においても早期復旧ができるよう、BCP(事業継続計画)において「社員の安全」と「顧客への供給責任」を主眼とした緊急対応と事業継続に向けた取組みを策定して備えております。
(11)情報セキュリティに関する影響
当社グループは、事業遂行に当たり多くの技術情報や顧客情報を有しております。予期せぬ事態によりこれらの情報が流出した場合や、サイバー攻撃などによりデータに障害が生じた場合には、当社グループの信用及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、情報セキュリティ委員会を設け、当社情報セキュリティポリシーに則って社内情報システムのセキュリティ強化に随時取り組んでおります。
(12)その他
上記で言及したリスクに加え、当社グループの事業遂行にあたっては、世界及び各地域における経済環境、戦争、テロ、金融・株式市場、開発競争・標準規格化競争の激化等の影響を受けた場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
a.財政状態
当連結会計年度末における総資産は2,712億88百万円となり、前連結会計年度末に比べ2億86百万円減少いたしました。これは主に、原材料及び貯蔵品が152億96百万円、現金及び預金が83億78百万円増加したものの、未収入金が193億91百万円、仕掛品が49億69百万円減少したことによるものであります。
負債につきましては、当連結会計年度末残高は1,199億72百万円となり、前連結会計年度末に比べ424億59百万円減少いたしました。これは主に、繰延収益が28億42百万円増加したものの、前受金が207億29百万円、有償支給取引に係る負債が154億57百万円、買掛金が55億20百万円、短期借入金が50億円減少したことによるものであります。
株主資本につきましては、当連結会計年度末残高は1,477億44百万円となり、前連結会計年度末に比べ410億32百万円増加いたしました。これは主に、剰余金の配当により181億27百万円減少したものの、親会社株主に帰属する当期純利益を590億76百万円計上したことによるものであります。
株主資本にその他の包括利益累計額及び新株予約権を加えた純資産合計は1,513億15百万円となり、また自己資本比率は55.8%となりました。
b.経営成績
当連結会計年度における世界経済は、地政学リスクの高まりや欧米諸国を中心としたインフレの高止まりと金融引き締めの影響による景気減速が懸念されるなど、先行き不透明な状況が続きました。
当社グループの主要販売先である半導体業界では、生成AI向けHBM(広帯域メモリ)関連、世界的なEV(電気自動車)シフトなど脱炭素化の進展を背景としたパワー半導体関連には堅調な投資が継続されました。最先端のEUV(極端紫外線)リソグラフィを用いた半導体製造能力の増強に関わる投資も下半期より回復の兆しが見られました。
このような状況下、当社グループの連結売上高は2,135億6百万円(前連結会計年度比39.7%増加)となりました。
品目別に見ますと、半導体関連装置が1,817億52百万円(前連結会計年度比39.0%増加)、その他が27億83百万円(前連結会計年度比12.5%減少)、サービスが289億70百万円(前連結会計年度比53.1%増加)となりました。
売上総利益率につきましては、原価率の悪化により、50.3%(前連結会計年度比4.6ポイント減少)となりました。
販売費及び一般管理費は、261億3百万円(前連結会計年度比20.1%増加)、売上高に対する比率は12.2%(前連結会計年度比2.0ポイント減少)となりました。販売費及び一般管理費の主な増加要因は、研究開発費の増加によるものです。研究開発費につきましては、EUVマスク欠陥検査装置等の開発及び性能向上等に使用したことにより、121億65百万円(前連結会計年度比10.8%増加)となりました。
これらの結果、営業利益が813億75百万円(前連結会計年度比30.6%増加)、経常利益が820億21百万円(前連結会計年度比28.8%増加)、親会社株主に帰属する当期純利益が590億76百万円(前連結会計年度比28.0%増加)となりました。また、1株当たり当期純利益は655円5銭となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ83億78百万円増加し、381億52百万円となりました。当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
営業活動によるキャッシュ・フローにつきましては、333億17百万円の収入(前連結会計年度比17.8%減少)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益820億21百万円などの収入要因が、法人税等の支払額242億57百万円、前受金の減少額232億52百万円などの支出要因を上回ったことによるものであります。
投資活動によるキャッシュ・フローにつきましては、35億71百万円の支出(前連結会計年度比82.6%減少)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出29億70百万円、無形固定資産の取得による支出5億62百万円などによるものであります。
財務活動によるキャッシュ・フローにつきましては、231億45百万円の支出(前連結会計年度比48.8%増加)となりました。これは主に、配当金の支払額181億27百万円、短期借入金の減少額50億円などによるものであります。
③ 生産、受注及び販売の実績
当社グループの事業は、検査・測定機器の設計、製造、販売を行う単一のセグメントであるため、セグメント情報は記載を省略しております。
これに代わる品目別の生産実績、受注高及び受注残高並びに販売実績は次のとおりであります。
a.品目別生産実績
当連結会計年度における生産実績を品目ごとに示すと、次のとおりであります。
|
品目 |
生産高(百万円) |
対前期増減率(%) |
|
製品 |
|
|
|
半導体関連装置 |
218,706 |
6.0 |
|
その他 |
4,178 |
19.8 |
|
小計 |
222,885 |
6.3 |
|
サービス |
28,970 |
53.1 |
|
合計 |
251,855 |
10.1 |
(注)金額は販売価格で表示しております。
b.品目別受注高及び受注残高
当連結会計年度における受注状況を品目ごとに示すと、次のとおりであります。
|
品目 |
受注高 |
受注残高 |
||
|
金額(百万円) |
対前期増減率(%) |
金額(百万円) |
対前期増減率(%) |
|
|
製品 |
|
|
|
|
|
半導体関連装置 |
235,617 |
50.0 |
444,329 |
13.8 |
|
その他 |
2,401 |
△66.8 |
6,192 |
△5.8 |
|
小計 |
238,019 |
44.9 |
450,521 |
13.5 |
|
サービス |
34,749 |
56.1 |
11,674 |
98.0 |
|
合計 |
272,768 |
46.2 |
462,195 |
14.7 |
(注)1.金額は販売価格で表示しております。
2.受注高には受注取消・変更等による調整額が含まれております。
c.品目別販売実績
当連結会計年度における販売実績を品目ごとに示すと、次のとおりであります。
|
品目 |
販売高(百万円) |
対前期増減率(%) |
|
製品 |
|
|
|
半導体関連装置 |
181,752 |
39.0 |
|
その他 |
2,783 |
△12.5 |
|
小計 |
184,535 |
37.8 |
|
サービス |
28,970 |
53.1 |
|
合計 |
213,506 |
39.7 |
(注)当連結会計年度及び前連結会計年度における主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
|
相手先 |
前連結会計年度 (自 2022年7月1日 至 2023年6月30日) |
当連結会計年度 (自 2023年7月1日 至 2024年6月30日) |
||
|
金額(百万円) |
割合(%) |
金額(百万円) |
割合(%) |
|
|
Taiwan Semiconductor Manufacturing Company Limited |
51,782 |
33.9 |
68,045 |
31.9 |
|
Intel Corporation |
48,003 |
31.4 |
59,210 |
27.7 |
|
Samsung Electronics Co., Ltd. |
17,871 |
11.7 |
49,083 |
23.0 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計方針並びに重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり、採用している重要な会計基準は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおりであります。
なお、連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.経営成績等
1)財政状態
当該事項につきましては、本報告書の「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況 a.財政状態」に記載のとおりであります。
2)経営成績
当該事項につきましては、本報告書の「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況 b.経営成績」に記載のとおりであります。
3)キャッシュ・フロー
当該事項につきましては、本報告書の「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシ
ュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
b.資本の財源及び資金の流動性
当社グループにおける主な資金需要は、製品製造のための材料費、外注費及び労務費、並びに他社と差別化するための研究開発投資に必要な材料費及び労務費です。直近においては、EUV関連製品などに対する研究開発投資と、好調な受注を背景とした仕掛品への支出を積極的に行っており、その資金需要が大きくなっております。
これらの資金需要に対する資金調達については、原則として、中長期的な事業戦略と当社グループの事業領域及び事業規模による事業リスクに対応した資本構成を検討し、決定しております。現時点においては、資本効率の向上を図りつつ、必要な時に効率的な運転資金の調達を行うため、取引銀行2行と貸出コミットメント契約を締結しております。
c.経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、営業利益率20%以上を維持しつつ、積極的な研究開発で成長機会を追求することを基本方針にしています。当社グループの主要販売先である半導体業界は、技術革新のスピードが速いことが特徴です。お客さまのご期待に応えて当社事業を成長させるためには、積極的な研究開発を継続し、迅速に付加価値の高いソリューションを提供し続けることが必須であると考えております。
また当社グループは、数値目標などは開示しておりませんが、外部環境の変化に迅速に対応するために中期経営計画の見直しを毎年行っており、この計画の中で挙げている課題を達成していくことが、経営上の目標の達成状況を判断するための指標と考えております。なお、中期経営計画に関しては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。
該当事項はありません。
当社グループの技術は、光応用技術をコアに、エレクトロニクス、精密機構、及び画像処理などの周辺技術を融合させたオプトメカトロニクスと呼ばれる複合技術で、代表的な製品である半導体マスク欠陥検査装置やマスクブランクス欠陥検査/レビュー装置、レーザー顕微鏡、及びEUVマスク欠陥検査装置ほか、すべての製品開発に活用されています。
新しい製品の開発にあたっては、既に製品を納入している多くのお客さまや各種研究開発機関へのサービス・サポートを通じて、お客さまの顕在化した要望のみならず、潜在的なニーズも的確につかみ、独創的な視点と技術で素早くソリューションをご提供するように努めております。また、顕微鏡の営業活動などを通じて幅広い業界、市場を調査し、新しいマーケットやアプリケーションを探し出し、それぞれ固有のニーズに合致した新製品を生み出すことも同時に心がけております。
当社グループは、光学技術を追求する過程で、独自のコア技術を確立してまいりました。共焦点光学系、DUV(Deep Ultraviolet、遠紫外線)光学系、EUV(Extreme Ultraviolet、極端紫外線)光学系、及び光干渉計技術などの光学技術を進化させ、高度な周辺技術との融合によって特徴ある製品を生み出しています。また、高精度高速ステージ開発のための精密機構技術、あるいは欠陥検出の画像処理技術などを継続的に深化させ、近年ではAI技術を応用した自動欠陥分類の開発を進めるなど、お客さまのニーズに対してタイムリーにソリューションを提供できる研究・製品開発を進めています。
当連結会計年度における研究開発の成果として発売された新製品は次のとおりです。
「高輝度EUVプラズマ光源 URASHIMA」
「URASHIMA」は、ACTISの光学系に最適化した設計によってペリクルへの入熱を最小限に抑えることで、ペリクルの劣化を防止しながらペリクル付きマスクの高輝度照明による高感度検査を可能にした製品です。高速回転する液体状のSnにレーザーを照射してEUV光を発生させるLPP(Laser Produced Plasma)方式を採用しています。Snを使ったEUV光源では、デブリの抑制が重要な課題のひとつです。本製品は、当社が独自に開発したデブリミチゲーションシステムを用いることで、マスクがデブリで汚染されることのないデブリフリーのEUV光源であることに加えて、照明光学系のコンタミネーションも抑制し、従来を上回る生産性を実現しました。
「アクティニックEUVパターンマスク欠陥検査装置 ACTIS A300シリーズ」
「A300」は、新たに設計された光学系や高輝度光源「URASHIMA」を採用し、従来のA150シリーズと比較して非常に高い欠陥検出性能を実現しました。High-NAリソグラフィではXY方向の投影倍率が異なるアナモルフィック光学系が採用され、それぞれの方向で異なる解像度が求められます。A300シリーズは現行のNAリソグラフィ向けとHigh-NAリソグラフィ向け、両方のEUVマスク検査に対応しています。
「ビア深さ測定装置 VIANCAシリーズ」
「VIANCA」は、次世代プロセスで必要とされる高アスペクトレシオ小径ビアのエッチング深さの高精度な測定を可能にした装置です。AI技術の発展に伴いより高性能なGPUが必要とされる中、GPUに搭載されるHBM(広帯域メモリ)にも高性能化と小型化が求められており、HBM製造時に用いられるTSV(シリコン貫通電極)技術のさらなる小径化と高アスペクト化が大きな課題となっています。本製品は、独自の光学系により、従来の光学系では測定不可能であった高アスペクトレシオ小径ビアの深さ測定を実現し、Cu配線後のCu高さ測定等、HBM製造工程における重要な品質管理項目を高精度に測定することを可能にしました。
当連結会計年度の研究開発費の総額は、
なお、当社グループの事業は、検査・測定機器の設計、製造、販売を行う単一のセグメントであるため、セグメントごとの記載は省略しております。