当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針
① 会社の経営の基本方針
当社グループは創業以来、高品質の小型コネクタをエレクトロニクス市場に提供することを基本として運営してまいりました。
コネクタの専門メーカーとして、常に最先端の接続技術(コネクション・テクノロジー)を追い求め、益々、高密度、高速化する産業用機器に対応し、市場ニーズを先取りした製品を開発し、市場に供給し続けることを最優先課題として取り組んでいく所存であります。
・経営基本方針
1.オープンで、フェアな企業活動を基本として、信頼される企業を目指す。
2.最先端技術の研究と開発に努め、お客様のご要望にお応えする魅力ある商品を提供する。
3.個人の創造力とチームワークの強みを最大限に高める企業風土をつくる。
4.効率的な経営を通じて、長期安定的な成長と、共存共栄を実現する。
② 経営戦略
当社グループは、海外売上拡大に向けグローバルで体制(開発力/供給力/販売力)を強化し、新製品開発、注力市場開拓を強化して事業を拡大することを基本方針とし、第64期は「コネクタ事業の底上げ、ハーネス事業の事業改革推進、機器事業の付加価値ビジネスへの転換を行い、収益力を強化し各事業を拡大する。」「フローティング/高速伝送/ハイパワー/防水を強化する。」「工業/車載/画像/医療/通信を注力市場とする。」「設計から出荷までのトータル品質管理体制を強化する(社外不具合撲滅)。」を重点戦略とし、アジア/欧州/北米のビジネス強化拡大に加え、インド/東南アジアの新たな販路を構築し、中国自社工場を立ち上げ、生産拠点の最適化、戦略的運用を進め、コストダウン、納期対応力および供給力の強化をし、技術提携、業務提携を積極的に行い、事業領域を拡大してまいります。
(2) 経営環境及び対処すべき課題等
当社グループが属するエレクトロニクス業界は、生成AIやDXの進展、自動車の電動化に関連した設備投資の回復を背景に、生産設備や電子部品の需要は堅調に推移しました。
当社グループは、地政学リスクの長期化や米国の関税政策による貿易摩擦の激化、急激な為替変動等により先行きが不透明な状態が続くことも想定されます。引き続き国内外市場の変化やサプライチェーンの影響を慎重に見極め対応してまいります。
当社グループは経営基本方針に基づき、市場の動向を見極め、お客様との対話を重ねることによって、幅広いニーズに対しオリジナリティあふれる最適な製品を市場に供給しております。積極的な技術提案に基づき、お客様の期待に応える品質・サービスの提供に努めることにより、企業価値の向上を図ってまいります。
「コネクタメーカーとして、世界に貢献できる企業になる。」を経営ビジョンに掲げ、中期計画の基本方針「魅力ある新製品開発を促進し、商品群を増強する。」「事業、市場、地域、利益を含めたビジネス全体を拡大する。」「5G、新エネルギー市場等の新市場を開拓する。」に基づき、経営資源(人材・設備・資金)の効率を高め、販売/生産管理システムのスマート化を推進し、製造コスト、販売管理費の低減を実施し、収益性の改善を図ってまいります。また、成長を実現できる組織体制を構築し、社員がより能力を発揮できるよう、働き方の見直しや制度の改善を進め、次世代に向けた人材の育成・獲得に努めてまいります。
当社グループは、「社員の物心両面の幸せを追求するとともに、企業活動を通じて社会の発展に貢献する」ことを経営理念として掲げております。この理念のもと、すべてのステークホルダーの満足を志向し、魅力ある製品の開発・提供を通じて、持続的な企業価値の創出を目指しております。
また、サステナブル経営の一環として、「コネクタ技術で豊かなサステナブル社会を実現します」をビジョンに掲げ、ESG(環境・社会・ガバナンス)の視点から特定した4つのマテリアリティに基づき、7つの課題への取り組みを推進しております。これらの活動は、長期的な経営課題への対応とともに、社会的責任の遂行および企業価値の継続的な向上に貢献する取り組みと位置付けております。
今後も社会環境や市場ニーズの変化に柔軟に対応しながら、中長期的な成長と経営基盤の強化を図り、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。
当社グループが特定したマテリアリティにつきましては、以下のとおりです。
(1)ガバナンス
当社グループは経営基本方針である、「オープンで、フェアな企業活動を基本として、信頼される企業を目指す。」「最先端技術の研究と開発に努め、お客様のご要望にお応えする魅力ある商品を提供する。」「個人の創造力とチームワークの強みを最大限に高める企業風土をつくる。」「効率的な経営を通じて、長期安定的な成長と、共存共栄を実現する。」に基づき、経営の公正性・透明性・迅速性を確保し、株主、顧客、取引先、従業員との適切な協働はもちろんのこと、地域社会や自然環境との調和によるサステナブル経営を推進してまいります。
当社グループは、取締役会、必要に応じて開催される臨時取締役会、経営会議に加え、取締役およびリスクマネジメント推進責任者で構成される「リスクマネジメント委員会」を設置し、定期的に委員会を開催しております。
リスクマネジメント委員会では、事業を取り巻く様々なリスクに対して的確な管理と実践が可能となることを目的に、全社的なリスクに関する課題や、ESGやSDGsといったサステナビリティ課題への対応策、リスクマネジメント推進に関する重要事項などを審議・決定しております。
なお、当社におけるリスクマネジメント委員会の体制は、下記の「リスクマネジメント委員会体制図」に示しております。
■リスクマネジメント委員会体制図
(2)戦略
当社グループは、第5次中期経営計画(2023年3月期~2025年3月期)において、事業戦略とサステナビリティに関する重要課題をいずれも経営の中核に位置付け、企業価値の向上に取り組んでまいりました。非財務の観点では、サステナビリティ目標を中期経営計画に組み込み、「組織力強化」を基本戦略の一つとして、「次世代人材の育成強化」および「長期的な企業価値の向上」を推進してまいりました。最終年度となる2025年3月期には、ESGの各領域において具体的な取り組みを進め、環境面では2022年度を基準とした温室効果ガス排出量の46%削減(2030年度目標)を設定するなど、脱炭素社会への貢献に向けた目標の明確化と取り組みの強化を図りました。
また、人的資本の分野においては、持続可能な成長を支える基盤として、多様な人材がウェルビーイングを実感しながら活躍できる組織づくりを重視し、ダイバーシティ推進、働き方の柔軟性向上、健康経営の強化など、働く一人ひとりの可能性を最大限に引き出す環境整備を推進しております。これらの施策を通じて、特定したマテリアリティに基づくリスクと機会の分析、中長期目標の策定および実行を進め、サステナブル経営の基盤構築を図っております。
① 気候変動に関する取組
当社グループは、すべての事業活動において地球環境の保全を重要な経営課題と位置づけ、「環境方針」に基づき、環境マネジメントシステムを構築・運用しております。グループ全体としてISO14001の要求事項に準拠した体制を整備し、各拠点・事業ごとのマネジメントサイクルと連携させることで、全従業員が参画する環境活動を推進しております。
近年の気候変動リスクの顕在化や国際的な要請の高まりなど、取り巻く環境の変化を踏まえ、地球温暖化を重要課題と捉え、「気候変動対策」をマテリアリティの一つに特定いたしました。温室効果ガス排出量の削減に取り組む中で、国際的な環境情報開示であるCDPにおいて、2024年度は「気候変動スコア」および「水セキュリティスコア」でいずれも「C」の評価を受けました。今後も、情報開示の充実と環境パフォーマンスの向上に努めてまいります。
また、年1回のマネジメントレビューを通じて環境活動の進捗と成果を経営層に報告し、経営トップの関与のもとで継続的な改善を図る体制を構築しております。こうした仕組みにより、責任ある環境経営を実践し、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。
② 人的資本に関する取組
当社グループは、「コネクタメーカーとして、世界に貢献できる企業になる。」を経営ビジョンに掲げ、市場の動向を見極め、お客様との対話を重ねることによって、幅広いニーズに対しオリジナリティあふれる最適な製品を市場に供給しております。当社グループの成長は、有能な技術者をはじめとする人材の確保と育成に左右されるため、成長を実感できる教育制度の充実を図り、経営基盤のさらなる強化と人的資本価値の最大化を目指しております。
また、当社はマテリアリティの一つに「多様な人材が活躍できる組織づくり」を掲げており、多様な人材が能力を発揮できる職場環境の整備に取り組んでおります。人材育成では、階層別研修やコンプライアンス研修、評価者研修、キャリア研修を実施し、組織基盤の強化に努めております。さらに、職場環境の改善、健康管理の徹底を通じた健康経営の推進に取り組み、従業員が心身ともに安心して働ける環境づくりを進めております。
今後は、次世代の経営を担う人材を計画的に育成するため、「次世代人材育成プログラム」の導入を予定しております。ダイバーシティ推進とともに、組織力強化および従業員エンゲージメントの向上を両輪として、持続可能な成長と企業価値の向上を目指してまいります。
(3)リスク管理
当社グループは、「リスクマネジメント基本規程」に基づき、定例および臨時の経営会議ならびにリスクマネジメント委員会において、事業を取り巻くさまざまなリスクについて継続的に検討を行っております。とりわけ、サステナビリティに関連するリスクにつきましては、事業の継続性および中長期的な成長性に重大な影響を及ぼし得るものとして、リスク管理体制の中核的な要素と位置付けております。
主なリスクとしては、人的資本に関するリスク(人材の確保・育成、働き方の多様化への対応遅れ等)、脱炭素社会への移行に伴うリスク(政策・規制対応、事業構造の転換の遅れ等)、気候変動に起因する物理的リスク(自然災害の激甚化による事業継続への影響等)を認識しております。
当社は、これらのリスクを全社的に検証し、対応方針の策定・見直しを行うとともに、リスクマネジメント委員会においてESGやSDGsに関連する外部環境の変化も踏まえたリスクと機会の評価を実施しております。こうしたプロセスを通じて、経営における意思決定に反映させる体制を整備しております。
また、当社はISO14001の認証を取得しており、環境マネジメントシステムを活用して、気候変動リスクを含む環境リスクの把握および法令遵守状況のモニタリングを継続的に実施しております。
(4)指標及び目標
① 気候変動に関する取組
気候変動対策の強化を目的として、昨年度より「温室効果ガス算定・可視化クラウドサービス」を導入し、国内全拠点において自社の直接排出(Scope1)(注1) および間接排出(Scope2)(注2)を対象に、温室効果ガス排出量の算定と管理を開始いたしました。これにより排出実態の可視化と分析が可能となり、2022年度の排出量を基準年として、2030年度までにScope1・2(国内拠点)で46%削減することを目標に設定いたしました。
当期は、省エネルギー施策の一環として、国内拠点における照明機器のLED化および本社の空調機器の更新を実施し、エネルギー使用の効率化と温室効果ガス排出量の削減に取り組みました。これらの施策は年度後半にかけて導入されたものであり、現時点ではその効果は限定的であるものの、今後の削減効果が期待されます。
また、省エネ活動の継続的な実施や、外観AI検査機の導入等による効率的な生産活動に取り組むとともに、グリーン電力の導入についても今後の課題として検討してまいります。
さらに、当期よりサプライチェーン全体における温室効果ガス排出量(Scope3)(注3)の算定にも着手いたしました。当社はScope3の排出量を気候変動対策における重要な要素と認識しており、精度の高い情報開示を目指して、算定範囲の整備およびデータ収集体制の強化に取り組んでおります。現時点では、開示に必要な検証・精度が確保されていないため、数値の開示は控えておりますが、今後は段階的に対応を進めてまいります。
■温室効果ガス排出量の推移(注4)
|
|
基準年 |
実績 |
実績 |
|
2022年度 |
2023年度 |
2024年度 |
|
|
温室効果ガス排出量 (tCO2) (Scope1、Scope2) |
|
|
|
|
削減量 (tCO2) (2022年度比) |
- |
△251 |
△263 |
|
削減率 (%) |
- |
△11.7 |
△12.2 |
(注1)Scope1:事業者自らによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス)
(注2)Scope2:他社から供給された電気、熱、蒸気の使用に伴う間接排出
(注3)Scope3:Scope1、Scope2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出)
(注4)各数値は、当社国内全拠点における算定結果となり海外子会社は除外しております。
② 人的資本に関する取組
当社グループは、サステナブル戦略の実現に向けて、有能な技術者をはじめとする人材の確保と育成を重要課題と位置づけております。多様な人材が活躍できる組織づくりを目的として、ダイバーシティ推進に取り組んでおります。その一環として、新規採用者に占める女性の割合を40%以上とする目標を掲げ、人材の確保に努めてまいりました。当期は26.7%の実績にとどまりましたが、引き続き目標達成に向けて取り組みを継続してまいります。人材育成においては、階層別研修やコンプライアンス研修に加え、女性活躍推進を目的としたキャリア研修を実施し、次世代人材の育成に取り組みました。
また、評価者研修を通じて、マネジメント力の強化と公平な人事評価の実現を図っております。さらに、働きやすい職場環境の整備にも注力しており、有給休暇の取得促進を目的とした「有休一斉取得日」の設定や、健康経営の一環として従業員の健康管理の徹底を図るなど、心身ともに安心して働ける環境づくりに取り組んでおります。
■人的資本に関する取組の実績
|
マテリアリティ |
具体的な取り組み・指標 |
実績 |
|
多様な人材が |
新規採用者数に占める女性の割合40%以上 |
26.7% |
|
管理職に占める女性従業員の割合 |
5.8% |
|
|
有給休暇取得推進 取得率 |
69.7% |
|
|
育児休業 取得率 |
100% (うち男性従業員の割合75%) |
|
|
キャリアアップのための研修 |
107名 |
|
|
コンプライアンス研修(全従業員対象) 3回 受講率 |
100% |
|
|
健康経営の推進(従業員の健康管理、職場環境の整備)健康優良企業(銀の認定)取得予定 |
健康づくりプロジェクトを |
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には以下のようなものがあります。
なお、以下の事項のうち、将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営戦略実行上のリスク
①新製品開発力
当社グループは電子応用機器の小型、軽量、高機能ニーズに対応する新製品を市場に供給し続けることにより、企業価値の向上を図っており、最近3年間以内に開発された新製品にて、受注の概ね20%程度の獲得を目指しております。今後もこの傾向を維持・発展させていくことは可能であると考えておりますが、エレクトロニクス業界、特に電子機器業界の進歩は目覚ましく、市場のニーズを的確に予測できるとは限らず、ニーズに対応した製品開発ができなかった場合には、将来の成長と収益を低下させ、業績に影響を及ぼす可能性があります。
②技術者等の人材の確保育成
当社グループの将来の成長は、有能な技術者をはじめとする人材の確保と育成に左右されます。当該リスクについては、当社グループでは、「将来を担う人材の確保」「グローバル化に合わせた人事制度の見直し」「従業員教育」を目標に年間を通じた採用活動、高い技術力を持った人材の確保に対応した人事制度の整備及び各種教育・研修の実施等を通じた人材の育成に取り組んでおり、良い人材は、上述①の新製品開発力のリスクを低減する対応策となります。
③海外事業に伴うリスク
当社グループは、海外事業の強化、拡大を基本方針として掲げております。海外拠点を置いている国・地域において、貿易摩擦等の経済リスク、文化・慣習の違いを起因とする労務問題、テロや伝染病等の社会的混乱等が発生した場合、当社グループの事業に悪影響を及ぼす可能性があります。当該リスクについては、現地法律事務所、会計事務所等と連携し、また、社員の安全等については現地行政情報等を収集・分析し、対応いたします。
(2) 製品供給に関するリスク
①外注先の確保
当社グループが製造する製品の部品の多くは、外部の協力会社へ加工委託しております。また、ハーネス製品やラック製品の組立についても、外部の協力会社へ委託しております。これらの部品加工及び組立の協力会社が不足する場合や協力会社の経営に不安が生じた場合には生産活動が十分に行えず、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。当該リスクについては、情報収集に努め、既存協力会社との意思疎通を密にすること等で対応いたします。
②品質問題の発生
当社グループは品質マネジメントシステムに基づき製品品質の向上に努めております。予期しない製品不具合が発生し、品質に係る重大な問題が発生した場合には、解決に多くの時間と労力を要し、製品供給に悪影響を及ぼす可能性があります。また、損害賠償金や顧客からの信頼を失うことによる売上減少等が発生する場合があります。当該リスクについては、品質マネジメントシステムの最適な運用を目指すとともに、生産技術の改善等による不具合発生率の低減を図ること等により対応いたします。
③原材料の調達
当社グループが製造する製品の原材料は、原油や非鉄金属であります。これら原材料について、急激な需要増加等により、調達不足や調達遅延が発生した場合には、生産活動が十分に行えず、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、これら原材料の価格が上昇し、製品価格に転嫁できない場合には、売上原価を押し上げ、利益減少につながる可能性があります。当該リスクについては、適正な調達計画の作成や調達先の多様化等により対応いたします。
④大規模災害
当社グループの国内生産拠点は山梨県に2拠点、長野県に1拠点、海外生産拠点は中国・珠海市に1拠点であり、また、外部委託による生産拠点は国内外へと展開しております。当該地域に大規模災害が発生し、停電その他インフラへの甚大な被害があった場合には、生産活動に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクについては、生産拠点の分散とBCP(事業継続計画)に基づく被害からの速やかな復旧等により対応いたします。
(3) 外部環境によるリスク
①市況、社会経済環境の変化
当社グループの属するエレクトロニクス業界は、市況の影響を受けやすい業界と言われております。かつての半導体不況、IT不況のような事態が再来した場合には、受注が減少し、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、新型コロナウイルスの世界的な拡散のような経済活動に大きな打撃を与える事象が発生した場合においても同様に悪影響が発生する可能性があります。当該リスクに関しては、発生した場合に影響が少なくなるようコスト構造の改善等に取り組んでいきます。
②為替相場の変動
当社グループは米ドルやユーロ、中国人民元建ての製品輸出を行っており、為替相場の変動は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。想定以上の円高は、製品の競争力を弱め、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。当該リスクについては、外貨建て仕入や為替予約によるリスクヘッジ等により対応いたします。
③米国の関税政策
当社グループは米国市場向けに製品を供給しており、米国政府が導入した相互関税政策により当社製品に対して高率の関税が課される可能性はありますが、現状、当社の米国向け直接出荷比率は低く、直接的な影響は限定的です。間接的には、顧客の生産拠点変更により、当社製品の納入先も変更となる可能性等はありますが、現状では設備投資計画や事業決定を延期する必要が生じるほどの影響は確認されておりません。ただし、先行きは依然として不透明であるため、動向を注視し、状況に応じて迅速に検討・対応いたします。
(4) その他
①内部統制上のリスク
当社グループは当社及び海外子会社3社で連結決算を行っており、子会社取引等を中心に海外取引があります。これら海外取引が増加し、国内と同様の内部管理体制が取れない場合には、決算の正確性に問題が発生する可能性があります。また、経営者による内部統制の無効化等が発生した場合にも同様の問題が発生する可能性があります。当該リスクについては、グループのガバナンスを強化し、重要な取引について、厳密な検証作業を行うこと等で対応いたします。
②重要な訴訟等のリスク
当社グループは、現在、業績に影響する訴訟等に関与していませんが、知的財産や製造物責任など、当社グループの事業活動が、今後、重要な訴訟等の対象となり、その結果によっては当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。当該リスクについては、外部専門家の活用とともに、社内における意識の向上を図ること等で対応いたします。
③コンプライアンス違反
当社グループの事業活動を行う中で、コンプライアンス違反(ハラスメント、雇用関連、人権等)が発生した場合、社会的信頼を失墜し、事業に悪影響を及ぼすリスクがあります。当該リスクについては、役員・社員一人ひとりが、社会的責任を果たすために、国内外における関連法令、国際ルールを理解し遵守しつつ高い倫理観をもって行動するという観点から「企業行動基準」を定め周知徹底を図っております。
法規制の制定や改訂に関しては、速やかに対応し、社内規程の改定や社内ルールの新設、見直し、及び社員教育の実施を行う事で未然防止に努めると共に、発生時の対応体制の整備、ルール化を行う等で対応いたします。
④情報システム上のリスク
当社グループは、事業活動を通して、取引先の個人情報及び機密情報を多数保有しております。このため、サイバー攻撃、不正アクセス、コンピューターウイルス侵入等により、万一これらの情報が流出した場合や重要データの破壊、改ざん、システム障害、システムダウン等が生じた場合には、当社グループの信用低下や業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、当該リスクについて、「情報セキュリティ管理規程」「情報システム運用規程」を制定し、機密情報管理体制の確立・徹底に努めております。また、定期的に役員及び従業員への情報セキュリティ教育を目的にeラーニング等の教育を行っております。
(1) 経営成績等の状況
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、インフレの高止まりや世界的な金融引き締め政策の継続、ウクライナ情勢および中東における地政学的リスクの高まり等により、先行き不透明な状況が続きました。また、米国の政権交代に伴う相互関税政策によって、世界経済への影響が懸念されました。一方、わが国においては、エネルギー価格や原材料価格の高止まりが続く中でも、個人消費の持ち直しや設備投資の底堅さを背景に、緩やかな回復基調が見られました。
当社グループが属するエレクトロニクス業界は、生成AIやDXの進展、自動車の電動化に関連した設備投資の
回復を背景に、生産設備や電子部品の需要は堅調に推移しました。一方で、産業機器向け製品においては、在庫調整の影響により需要の減少が引き続き見られました。
このような環境の中、今年度は、基本方針を「1.特長ある新製品開発を促進し、商品群を増強する。2.事
業、市場、地域、利益を含めたビジネス全体を拡大する。3.5G、新エネルギー市場等の新市場を開拓する。」とし、運営方針である「1.コネクタ事業の底上げ、ハーネス事業の強化・拡大へ向けた事業改革を推進、機器事業の付加価値ビジネスへの転換。2.フローティング/高速伝送/ハイパワー/防水を強化する。3.欧州、中国、北米の販売体制を強化する。4.工業/車載/画像/医療/通信・5G市場を注力市場とする。5.製品供給力を強化する(海外生産拠点の新設検討、社外不具合撲滅)。」を推進し、付加価値ビジネスを強化し、海外事業の拡大を進め、コストマネジメントの強化による収益性の向上に努めてまいりました。また、5G/IoT周辺機器市場向け高速伝送コネクタの開発やフローティングコネクタ・防水コネクタの拡充など、市場・顧客のニーズに応える製品を開発・提供してまいりました。
以上の結果、当連結会計年度の売上高は118億71百万円(前連結会計年度比2.9%減少)となりました。利益面につきましては、為替の影響や原材料価格・人件費の上昇に加え、将来の事業拡大および競争力強化を見据えた新製品・新技術開発への研究開発投資、ならびにグローバル市場への事業展開に向けた投資を行ったこと等により、営業利益5億96百万円(同45.5%減少)、経常利益5億85百万円(同53.8%減少)、親会社株主に帰属する当期純利益4億1百万円(同52.9%減少)となりました。
品目別の業績を示すと、次のとおりであります。なお、当社グループは、単一セグメントに属するコネクタ、ラック、ソケット等の製造・販売を行っているため、品目別の業績を示しております。
イ.コネクタ
コネクタの売上高は、車載機器向けフローティングコネクタ、医療機器向けハーフピッチコネクタ、極細同軸ケーブル用コネクタの受注は好調に推移したものの、監視カメラ・業務用カメラ等の画像機器向け、遊技機器向けの受注が減少したことにより101億71百万円(前連結会計年度比5.0%減少)となりました。
ロ.ラック
ラックの売上高は、医療機器向け、電力及び車両関連(鉄道)向けの特注ラックの受注が堅調に推移したことに加え、生産体制の改善も寄与し15億31百万円(同31.4%増加)となりました。
ハ.ソケット
ソケットの売上高は、遊技機器向けの受注が減少したことにより1億10百万円(同63.6%減少)となりました。
ニ.その他
その他の売上高は、58百万円(同1.1%増加)となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ4億45百万円減少(前連結会計年度は2億13百万円の増加)し、50億70百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動の結果得られた資金は、11億56百万円(前連結会計年度は23億19百万円の獲得)となりました。これは、法人税等の支払額2億7百万円があったものの、売上債権の増加による支出70百万円、税金等調整前当期純利益5億83百万円の計上、減価償却費9億54百万円の計上があったこと等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動の結果使用した資金は、10億74百万円(前連結会計年度は14億75百万円の使用)となりました。これは、有形固定資産の取得による支出9億21百万円があったこと等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動の結果使用した資金は、6億41百万円(前連結会計年度は7億40百万円の使用)となりました。これは、配当金の支払額6億38百万円があったこと等によるものであります。
③ 生産、受注及び販売の実績
当社グループは、単一セグメントに属するコネクタ、ラック、ソケット等の製造・販売を行っているため、生産、受注及び販売の状況については、品目別に記載しております。
イ.生産実績
当連結会計年度における生産実績を品目別に示すと、次のとおりであります。
|
品目別 |
生産高(千円) |
前期比(%) |
|
コネクタ |
10,043,559 |
△ 1.5 |
|
ラック |
1,574,728 |
35.5 |
|
ソケット |
94,280 |
△ 70.3 |
|
その他 |
36,068 |
△ 48.7 |
|
合計 |
11,748,636 |
0.0 |
(注) 金額は販売価格によっております。
ロ.受注実績
当連結会計年度における受注状況を品目別に示すと、次のとおりであります。
|
品目別 |
受注高(千円) |
前期比(%) |
受注残高(千円) |
前期比(%) |
|
コネクタ |
9,964,671 |
1.7 |
1,636,945 |
△ 11.2 |
|
ラック |
1,281,670 |
△ 7.1 |
577,823 |
△ 30.2 |
|
ソケット |
110,063 |
△ 55.6 |
34,287 |
△ 1.9 |
|
その他 |
54,081 |
27.7 |
18,194 |
△ 17.8 |
|
合計 |
11,410,486 |
△ 0.5 |
2,267,249 |
△ 16.9 |
ハ.販売実績
当連結会計年度における販売実績を品目別に示すと、次のとおりであります。
|
品目別 |
販売高(千円) |
前期比(%) |
|
コネクタ |
10,171,773 |
△ 5.0 |
|
ラック |
1,531,239 |
31.4 |
|
ソケット |
110,734 |
△ 63.6 |
|
その他 |
58,025 |
1.1 |
|
合計 |
11,871,771 |
△ 2.9 |
(注) 最近2連結会計年度における主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、以下のとおりであります。
|
相手先 |
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
||
|
販売高(千円) |
割合(%) |
販売高(千円) |
割合(%) |
|
|
サンワテクノス㈱ |
1,805,474 |
14.8 |
1,428,906 |
12.0 |
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
・財政状態の状況の分析
当連結会計年度末の財政状態は以下のとおりであります。
|
区分 |
金額(千円) |
前期比(%) |
|
資産の部 |
18,605,346 |
△1.7 |
|
負債の部 |
3,380,814 |
△4.3 |
|
純資産の部 |
15,224,531 |
△1.1 |
イ.資産
前連結会計年度末に比べ3億18百万円減少し、186億5百万円となりました。これは、商品及び製品の増加額1億32百万円があったものの、現金及び預金の減少額4億63百万円があったこと等によるものであります。
ロ.負債
前連結会計年度末に比べ1億52百万円減少し、33億80百万円となりました。これは、支払手形及び買掛金の増加額1億42百万円があったものの、電子記録債務の減少額3億74百万円があったこと等によるものであります。
ハ.純資産
前連結会計年度末に比べ1億66百万円減少し、152億24百万円となりました。これは、利益剰余金の減少額2億35百万円があったこと等によるものであります。
・経営成績の状況の分析
当連結会計年度の経営成績は以下のとおりであります。
|
区分 |
金額(千円) |
前期比(%) |
|
売上高 |
11,871,771 |
△2.9 |
|
営業利益 |
596,527 |
△45.5 |
|
経常利益 |
585,576 |
△53.8 |
|
親会社株主に帰属する当期純利益 |
401,552 |
△52.9 |
イ.売上高
売上高は車載機器市場の受注は好調に推移したものの、工業機器市場、画像機器市場の受注が減少したことにより、前連結会計年度に比べ3億59百万円減少し、118億71百万円となりました。
ロ.売上総利益及び営業利益
売上総利益は売上の減少に伴い、前連結会計年度に比べ3億41百万円減少し、29億36百万円となりました。営業利益は4億98百万円減少し、5億96百万円となりました。
ハ.営業外損益及び経常利益
営業外損益は、前連結会計年度に比べ純額で1億84百万円の減少となり、営業利益の減少に伴い、経常利益は前連結会計年度に比べ6億83百万円減少し、5億85百万円となりました。
ニ.特別損益
特別損益は固定資産除却損の増加があり、前連結会計年度に比べ純額で0百万円減少となりました。
ホ.親会社株主に帰属する当期純利益
親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に比べ4億50百万円減少し、4億1百万円となりました。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローは、4億45百万円減少し、現金及び現金同等物の期末残高は、50億70百万円となっております。当該残高は、売上高の5.1か月相当であり、事業を運営するにあたり十分な残高を有しております。また、キャッシュ・フロー対有利子負債比率(有利子負債÷営業キャッシュ・フロー×100)は40.3%であり、財政状況も良好であります。
・資本の財源及び資金の流動性
イ.資本の財源
当社グループの属するエレクトロニクス業界、特に電子機器業界の進歩は目覚ましく、小型化・高性能化製品が求められる状況にあります。そのような市場ニーズに対応するため、当社グループは、最近3年間以内に開発された新製品の売上割合を30%とする目標を定め、研究開発・設備投資(金型及び機械装置等)を行っております。これらの資金需要は、利益等を源泉とした内部資金・金融機関からの借入等で対応しております。
また、事業活動の拡大に伴う売掛債権及び棚卸資産等への資金需要につきましても、内部資金・金融機関からの借入等で対応しております。
ロ.資金の流動性
当社グループの当連結会計年度末の流動比率(流動資産÷流動負債×100)は、401%であり、また、現金預金比率(現金及び預金÷流動負債×100)につきましても170%となっており、安定した資金運営を行っております。なお、各子会社の資金状況は当社で把握・管理しており、当社がグループ資金を一元管理しております。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。
また、連結財務諸表の作成にあたっては、第5〔経理の状況〕1〔連結財務諸表等〕(1)〔連結財務諸表〕 注記事項連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項に基づき作成しておりますが、採用する会計基準には、当社の判断及び見積りを伴うものが含まれております。
④経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、経営効率を判断する指標として、「株主資本利益率(ROE)」を重要と考えており、その向上を目指しております。当連結会計年度の「株主資本利益率(ROE)」は2.6%となり、前連結会計年度に比3.0ポイント減少いたしました。
該当事項はありません。
当社グループの属するエレクトロニクス業界は、小型・高機能・高付加価値化が求められております。
当社グループといたしましては、市場ニーズに対応するため、次のような研究開発を行ってまいりました。
当連結会計年度における研究開発費用は、
高機能・高付加価値に関する研究開発
・耐振動140℃耐熱フローティングコネクタを開発いたしました。フローティング量XY各方向±1.0mmを確保した耐振動、140℃高耐熱の0.5mmピッチフローティングコネクタで耐振動はISO16750-3、GB/Tの耐振動性試験項目に基づくランダム振動対応となっております。
また、コンタクトは2点接点構造となっており高い接触信頼性を確保しております。極数は10~80極、スタック高さは15~20mmを予定しております。主に車載機器市場、FA関連市場、通信機器市場など、幅広いアプリケーションへの展開を見込んでおります。
・0.4mmピッチ極細同軸ケーブル用コネクタ「ASLSシリーズ」のフルシールドタイプ、「ASLS EMシリーズ」を開発いたしました。嵌合部分から実装部分までの端子をシールドで覆うことで、電磁妨害波に対するイミュニティ性能を向上させており、高速信号路の信号品質向上に寄与いたします。
極数は30極、接続形態はスタック接続、コンタクトは接触信頼性のある2点接点構造を採用しており、画像機器市場、医療機器市場、車載機器市場など幅広いアプリケーションへの展開を見込んでおります。
・分岐中継圧着ケーブル用コネクタ「FKシリーズ」の販売を開始いたしました。マニピュレーターをはじめ、ロボット、マウンター等のアプリケーションに最適な2.1mmピッチ分岐中継圧着ケーブル用コネクタで極数は5極、7極を準備、適合ケーブルはAWG#22~28、使用温度は-55℃から+105℃に対応しております。
電流分岐が可能な構造になっており、省配線化によりコストダウン・装置小型化に寄与いたします。主に工業機器市場(マニピュレーター、ロボット、マウンター、サーボモーター使用各種製造装置等)、医療機器市場(医療用ロボット等)への展開を見込んでおります。