当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは、「ベンチャースピリット溢れる企業集団を目指す。」を企業理念に掲げ、自らの行動を変革し、新しい事業創出に挑戦することで、「安全・安心」また「快適」で「高効率」な社会を作り出すことを目指しております。これらを通じて持続可能な社会の創出に寄与するとともに、社員一人一人の自己実現の場として、人と企業がともに成長していくことが当社グループの基本方針です。
(2) 目標とする経営指標
当社グループが目標とする経営指標は、「ROE10%以上」の収益水準で、「連結売上高10%伸長」で持続的に成長することとしております。またこのために「連結営業利益率15%以上」の生産性を確保することを目標としております。各事業会社が推進する基幹事業の更なる成長と、全体最適視点で経営資源の有効活用を図りつつ、新規事業の育成や事業領域の拡大を図ってまいります。絶えず創意工夫を重ねながら間接業務の効率化を行い、生産性の向上を意識し、収益の拡大に挑戦し続けることで、経営指標の継続的な実現を目指しております。
※財務指標は提出日現在の経営目標であり、その実現を保証あるいは約束するものではありません。
(3) 経営環境及び中長期的な会社の経営戦略
当社グループを取り巻く環境は、原材料・資源価格の高騰、世界的なインフレの継続、中国経済の先行き懸念等、依然として不透明な状況にあります。一方、持続可能な社会の実現に向けて世界の流れが加速し、社会・環境問題をはじめとするサステナビリティへの取り組みが一層注目されており、様々な社会・産業分野での省エネ、自動化、省人化に貢献できる当社グループの製品や技術への需要は高まっております。
このような中、当社グループでは、得意とするセンシング、光学技術などを駆使して、「安全・安心・快適」な社会や産業に貢献していくことを目標に事業を展開し、世の中に存在する様々な不安や不快、不便から「不」を取り除く仕事と位置付けた「ふとるビジネス」の拡大を推し進めてまいりました。さらに、これまでのハードウェアとしての「モノ売り」から、お客様にトータルなソリューション(課題解決策)をご提供する「ソリューション提案事業」への移行を効果的に進め、様々な社会課題の解決と企業価値の最大化を中長期の経営戦略としております。
(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
持株会社であるグループ本社の機能を充実させることで、各事業会社との相互連携を強化し、グループ全体での間接コストを抑制し、収益性の向上と持続的成長に取り組んでまいります。
各事業会社において、既存事業の拡大による収益の増大に取り組むとともに、グループ内各社とのシナジーを追求して、新規事業への取り組みを強化してまいります。成長できる分野への投資を集中しつつ、財務内容の健全化を図ることで、株主価値の持続的な増大に取り組んでまいります。
また、一人当たり生産性の向上に注力し、結果として従業員の報酬水準や満足度の向上を図ることで、人と企業がともに成長していくことを実現いたします。
環境問題への取り組みについては、2023年に設置した代表取締役社長直轄の「グループ気候変動対応分科会」において、温室効果ガスの測定や再生可能エネルギーの活用などによる温室効果ガス削減策を検討、実施するとともに、2024年1月に新設したサステナビリティ推進部門との連携によりモニタリング機能を強化し、グループ全体で2030年までにCO2排出量を30%(2019年比 Scope1,2)削減という目標達成に向けて実効性を高めてまいります。さらに、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言を踏まえた気候変動に関するリスクと機会の分析及び情報開示を行うことで、社会的責任を果たしてまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、創業時より得意のセンシング技術を駆使して「安全・安心・快適」な社会や産業に貢献していくことを目標に事業を展開してまいりました。世の中に存在するさまざまな不安や不快、不便から「不」を取り除く仕事(=ふとるビジネス)を拡大させることで、「グローバルニッチNo.1」のセンサーメーカーを目指してまいりました。
今後もこの「ふとるビジネス」を推進することにより、環境問題や社会問題の解決に貢献すると同時に、各事業の拡大、企業価値の向上に繋げていくことができるものと確信しております。
その上で、当社グループでは以下のサステナビリティ基本方針を策定し、この方針に基づく活動を推進することで、社会の持続的な発展への貢献と企業価値の向上を目指してまいります。
(サステナビリティ基本方針)
・あらゆるステークホルダーとの関係を強化し、社会の持続可能な成長に貢献します。
・環境に配慮した製品の供給を通じて、循環型事業経営を実現することを目指します。
・従業員のエンゲージメント向上を通して、グループ各社の持続的な成長と発展を目指します。
(1)ガバナンス
当社グループでは、持続可能性の観点から企業価値を向上させるため、サステナビリティを推進する体制を強化しており、代表取締役社長がサステナビリティ課題に関する経営判断の最終責任を有しております。
代表取締役社長を委員長とする「グループコンプライアンス推進委員会」を取締役会の直轄組織として設置し、サステナビリティに関する重要課題を審議するとともに、取り組み内容を取締役会に報告しております。同委員会は主要グループ各社の代表メンバーで構成されており、国内外のグループ会社と連携しながらサステナビリティに関する課題と改善案の議論を通じてグループ全体の理解の深化を図っております。
また、2024年1月にサステナビリティ推進部門を新設し、各部門及びグループ会社の状況を把握しグループ全体でサステナビリティ活動を推進する体制を構築しております。
なお、気候変動については、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言に沿った情報開示を進めるためにグループコンプライアンス推進委員会の下部組織として「グループ気候変動対応分科会」を設置し、重要な気候関連リスク・機会の特定、これらの対応に係る方針策定と展開、進捗管理等を行っております。
サステナビリティに関する取り組み内容については、当社ウェブサイトを参照ください。
(2)戦略
(気候変動)
当社グループは気候変動への対応を重要課題と捉え、2023年1月にTCFD提言への賛同を表明しました。あらゆるステークホルダーとの関係を強化し、社会の持続可能な成長に貢献するべくTCFDのフレームワークに基づき情報開示に取り組んでおります。
当社グループが認識している気候変動に関するリスク(移行リスク及び物理的リスク)と機会は以下のとおりです。
移行リスクとしては、炭素税導入による部品及び原材料のコスト増加、環境取り組みと訴求の不足によるステークホルダーからの不支持が想定されます。物理リスクとしては、異常気象等による自社工場の稼働停止、従業員のアクセスの寸断等が想定されます。
一方、機会としては、低炭素排出量製品の需要拡大や省エネ製品の要求加速、防災関連製品の需要拡大による事業機会の増大が期待できると認識しております。また、消費電力削減製品の開発、生産性向上に繋がる高性能製品の拡販、冠水モニタリングシステム、災害予知保全システムなどの開発が期待できると認識しており、この機会を最大化するための取組みを進めております。
今後も様々な世界観を想定したリスク・機会の分析を定期的に実施し、重要度の見直しと開示内容の充実化に尽力してまいります。
リスクと機会及び当社グループとしての対応策の詳細は、当社ウェブサイトに開示しております。
(人的資本)
当社グループは、「ベンチャースピリット溢れる企業集団を目指す」という企業理念を掲げ、人と組織の能力・活力・効率を高めグループ全体の企業価値を最大化することを目指しています。人材に関する考え方として、グループ全社員が安心して快適に働ける職場環境の整備はもとより、多様な人材がそれぞれの能力を高めあい活躍できるように、ダイバーシティ推進にも力を入れています。また、ワーク・ライフバランスと生産性向上の両立を目指した働き方改革にも取り組んでおります。
また、当社グループでは人材育成に力を入れており、新入社員研修やトレーニー制度、階層別研修、語学研修などを実施しています。また、育児休業後の復職者数や育児時短勤務者数、有給休暇取得率など、社員のワーク・ライフバランスの改善にも取り組んでいます。さらに、定年後再雇用者数や従業員持株会制度など、ベテラン層の活用や個人資産形成の支援にも力を入れております。
以上のように、当社グループは、人材育成方針や社内環境整備方針に関して、多角的な取り組みを行っています。
人材育成の取り組みの詳細は、当社ウェブサイトに開示しております。
(3)リスク管理
当社グループは、取締役会の管理・監督の下、グループの横断的なリスク管理体制として「グループコンプライアンス推進委員会」を設置し、同委員会において気候変動関連を含めたリスクマネジメントを推進及び統括しております。「グループコンプライアンス推進委員会」は、年2回以上リスクの特定と評価を実施した上で必要に応じてリスクマネジメントの包括的な見直しを行っております。また、特定したリスクと評価の結果は「リスクマップ」に明記し、対応方針と合わせて取締役会に諮った上で全グループに展開しております。また、安全保障輸出管理、ITセキュリティ関連については専門の委員会を設置し、リスクの洗い出し、対策の点検や評価を実施、活動進捗については定期的に取締役会に報告、協議することで実効性を確保しております。
(4)指標及び目標
(気候変動)
当社グループは環境に配慮した製品の供給を通じて、循環型事業経営を実現することを目指しております。当社グループはの製品は単体の電力消費は非常に少なく、様々な企業活動の中に組み込むことで、企業活動全体での温室効果ガス削減に大きく貢献することができると考えております。
また、地球環境の保護を企業の社会的責任の一つと認識し、全従業員に「オプテックスグループ行動規範」の周知を図り、環境関連の各種法令や規格などを遵守し、環境に配慮した事業運営を行っています。
気候変動対応として「2030年までに2019年度比CO2排出量30%以上削減する」という中長期目標を設定し、今後の経営計画に反映しております。
確実な推進を図るため、代表取締役社長の直轄で全グループを対象にしたプロジェクト発足を含め、低炭素で持続可能な未来に必要な行動と投資を活発化させております。
なお、当社グループの2019年度から2022年度のスコープ1、2の温室効果ガス排出量の詳細、当社ウェブサイトに開示しております。
(人的資本)
当社グループでは、社員のエンゲージメント向上を通して、グループ各社の持続的な成長と発展を目指しております。
人的資本への投資及び人材の多様性の確保については、当社グループの事業環境及び各人材の就労状況を踏まえ、その時点で最適な方法を選択する方針であるため、特段の指標及び目標は設定しておりません。しかしながら、管理職については能力、将来性などを総合的に判断し男女の隔てなく登用しております。また、当社グループの製品開発及び拡販において、必要とされる技術職や営業職についても、性別・国籍を問わない採用を強化しております。
詳細は当社ウェブサイトに開示しております。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財務状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 新型コロナウィルス感染症
新型コロナウィルス感染症は収束に向かい社会生活に与える影響も少なくなってきており、今後の影響度合いも少ないものと予測しております。しかしながら、変異株発生などによる流行再燃のリスクは残っており、大規模な感染拡大が発生した場合は、当社グループの事業活動に多くの影響を与える可能性があります。
① 顧客の業績変動によるリスク
当社グループの顧客が新型コロナウィルス感染症拡大により業績に影響を受けた場合、設備投資を先送りする等の対策が行われることで、当社グループの製品売上が影響を受けることが考えられます。一方で、感染症拡大予防策の浸透などにより事業を伸ばしている業界もあるため、伸びている業界に注力するよう機動的に対応しております。
② 営業活動等の制限リスク
感染予防のため人と人との接触を制限することが再度発生すると、対面での営業活動が制限され、受注活動に影響が出ることが考えられます。ビデオ会議やWEBセミナーなどの営業手法を利用し、顧客とのコミュニケーションを強化する対策を講じております。
③ 従業員罹患等による事業活動停滞リスク
事業所内でクラスターが発生した場合、事業所の一時的な閉鎖など事業活動に支障が生じる可能性があります。社員が安心して業務に就くことができるよう、在宅勤務、時差出勤を推進し、会議はビデオ等によるリモート会議を積極的に行うなど、物理的な接触機会を極力減らしつつ、コミュニケーションの充実を図っております。また今後も主要拠点に集中することを防ぐためサテライトオフィス等の小規模拠点を顧客に近いところに設置する等、「ウィズ・コロナ」時代に合わせた体制の構築を図っております。
(2) 経済状況について
当社グループは世界各地で事業を展開しております。このため製品を販売している国または地域の経済状況によって経営成績及び財務状況に悪影響を受ける可能性があります。
これに対して海外主要地域には自社の拠点を設置するなど、現地の状況を常に把握するとともに、マクロとミクロの視点で経済情勢及び市場の変化を掌握し、主要事業会社の責任者が毎月集まって、情報交換のうえで戦略の変更や状況に応じた対応が迅速に取れるように対策を行っています。
(3) 為替変動によるリスクについて
当社グループは積極的に海外市場に進出しており、連結売上高の約6割は海外での売上となっております。米ドル、ユーロ、英ポンド、人民元などの主要通貨に加え、新興国を含む各国通貨の急激な円に対する為替レートの変動が長期に及んだ場合、当社グループの経営成績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは為替変動による損益への影響を限定する目的で、外貨建資産・負債額の一定比率に対して為替ヘッジ策を講じるとともに、海外生産を一定比率保って海外調達比率を向上する等、外貨建支出の維持による収支上の為替バランスを改善することで、為替変動に強い収益構造作りに取り組んでおります。
(4) 海外活動にかかるリスク、法的規制の変更・強化について
当社グループは、日本及び諸外国・地域の法規制に従って事業を行っております。当社グループが事業進出している国または地域において、法令または規制の重要な変更、税制または税率の大幅な変更、為替政策の変化、輸出または輸入に関する法規制、その他経済的、社会的及び政治的変動などがあった場合、経営成績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは「(2) 経済状況について」において説明のとおり、グローバルでの状況の変化を注意深く見守り、事業会社間で情報を共有しつつ、状況に応じた迅速な対応が取れるよう対策を行っております。
また、コンプライアンス違反や昨今の労働環境規制の強化等、企業の法令違反に係るリスクが多様化する中、役職員の教育と法令順守意識の徹底を図っております。
(5) M&Aについて
当社グループでは中長期的な事業ポートフォリオ戦略を踏まえ、既存事業に関連した新しい分野への進出も視野に入れたM&Aをグローバルに検討し、積極的に実行することで、企業価値の向上を目指しております。M&Aにあたっては、買収前に十分な調査を行い、価値評価を慎重に検討したうえで実施しておりますが、買収後における想定外の事態の発生や、市場動向の大きな変動等が原因で、買収事業が所期の目標通りに推移せず、場合によってはのれん等無形固定資産の減損処理等による財務状況への悪影響が生じる可能性があります。
(6) 資金調達について
当社グループは、M&A等の大きな資金需要が生じた場合には、金融情勢、マクロ環境、当社の状況などを総合的に勘案し、必要な資金を調達することといたしております。このため、金融市場の不安定化が生じた場合などには、資金調達コストが増加することにより、当社グループの経営成績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(7) 生産用部材等の調達について
当社グループが生産する製品の部材等は、グローバルなサプライチェーンを通じて、国内外の仕入先から調達しております。経済状況の変動や、国際状況の変化あるいはサプライチェーンのトラブル等により、これら部材等の入手が困難な状況が発生したり、購入価格が高騰した場合、当社グループの経営成績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
直近では、世界的に半導体を中心とした電子部品の需給が逼迫している状況となっており、これら電子部品の需給逼迫の長期化につきましては、当社グループの業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。また、紛争鉱物への対応や、環境への配慮など、ESG観点からもより高度な対応が求められております。部材等の仕入先に対応不備があれば、部材等の調達や製品の販売に影響を与えるだけでなく、当社グループの社会的評価が悪影響を受ける可能性もあります。
当社グループでは、グローバルな経済情勢を注視し、調達環境の変化を把握するよう努めております。また代替部材の検討や、仕入先の複数化を進め、安定的な調達を図っております。さらには仕入先とのコミュニケーションを充実させ、仕入先の経営状況把握を行いつつ、管理体制の強化に協力することで顧客や社会の要求に対応しております。
(8) 気候変動について
当社グループは気候変動などの環境問題への対応を重要な課題の一つと捉え、気候変動に対する政策及び法規制、市場の要求を踏まえ、環境配慮型製品の開発に取り組んでおりますが、これらの規制が予測を超えて厳しくなった場合、コストの増加や販売機会損失等により、当社グループの経営成績及び財政状況に影響を及ぼす可能性があります。
また、気候変動による物理的変化のリスクとして、近年増加傾向にある台風・豪雨等の異常気象、地震などの大規模自然災害等が発生した場合、当社グループの事業活動が制限され、経営成績及び財政状況に影響を及ぼす可能性があります。
(9) その他
上記に掲げたリスク要因は、当社グループの事業展開その他に関するリスクのすべてを網羅しているものではありません。その他、知的財産権に係る法的リスク、情報漏洩に係る情報セキュリティリスク、顧客の信用リスク、人材育成・確保に係るリスクなども発生する恐れがあり、当社グループの事業、経営成績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは「オプテックスグループ行動規範」(2003年1月初版制定、以後随時改定)を、日本語・英語にて作成し、当社グループ全世界の役職員に配布することで、各国法令・社内規則はもとより、社会規範・倫理規範に則った職務の遂行を促し、企業風土の醸成と役職員の教育・啓発に努めております。また、様々な観点でリスクを認識し、対応策を講じるため、代表取締役社長を委員長とする「グループコンプライアンス推進委員会」においてリスクマネジメントを推進及び統括し、定期的な見直しと検討を進めております。
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
a.経営成績の状況
当連結会計年度における世界経済は、原材料・資源価格の高騰、世界的なインフレ進行、中国経済の先行き懸念など厳しい状況が継続いたしました。
このような状況の中、当社グループは、「ベンチャースピリット溢れる企業集団を目指す。」を企業理念とし、グループ本社の機能を充実することで、各事業会社の相互連携を強化し、グループ全体での間接コストを抑制して、利益成長を加速させることを経営方針に掲げてまいりました。
本年度の重点施策として、成長分野への投資を集中させることによりグループ各社の事業展開スピードを加速させるとともに、調達・製造・製品企画など様々な領域で、グループ各社の事業連携の強化を目指してまいりました。
当連結会計年度の経営成績は、欧米におけるインフレ継続や中国経済の減速など、景気先行きの不透明感から国内外の顧客で投資を控える動きがありましたが、為替の円安効果により、売上高は563億72百万円と前年度に比べ2.8%の増収となりました。利益面につきましては、コロナ禍の行動制限の緩和による営業・販売促進活動の強化及び為替の影響並びに国内外の物価上昇等により、販売費及び一般管理費が増加したため、営業利益は58億99百万円(前年度比6.4%減)、経常利益は62億58百万円(前年度比11.1%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は46億8百万円(前年度比3.0%減)となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
(SS事業)
SS事業は、売上高251億97百万円(前年度比7.4%増)、営業利益は31億86百万円(前年度比11.1%増)となりました。
防犯関連は、売上高は176億24百万円(前年度比9.7%増)となりました。海外ではインフレなどの影響を受けたものの、屋外用センサーの販売が堅調に推移しました。また、国内では警備会社及び大型重要施設向けの販売が順調に推移した結果、前年度実績を大幅に上回りました。
自動ドア関連は、景況悪化でヨーロッパの販売が伸び悩みましたが、国内及び米国向けの販売が堅調に推移した結果、売上高は55億36百万円(前年度比4.3%増)となりました。
(IA事業)
IA事業は、売上高297億41百万円(前年度比0.0%増)、営業利益は販売費及び一般管理費の増加により30億64百万円(前年度比14.5%減)となりました。
FA関連は、海外では中国における二次電池向けの設備投資抑制等の影響を受け、販売が低調に推移しました。また、国内でも半導体関連向けの販売が伸び悩んだ結果、売上高は95億8百万円(前年度比13.5%減)となりました。
MVL関連は、海外では中国を中心としたアジア向けの販売が伸び悩みました。一方、国内では半導体、電気・電子部品向けの販売が堅調に推移した結果、売上高は136億93百万円(前年度比2.9%増)となりました。
IPC関連は、半導体製造装置向けの販売が堅調に推移したことにより、売上高は44億1百万円(前年度比6.8%増)となりました。
MECT関連は、二次電池製造装置の納入が順調に進んだことから、売上高は21億38百万円(前年度比63.1%増)となりました。
(EMS事業)
EMS事業における外部顧客への売上高は、生産受託案件が伸び悩んだことにより8億46百万円(前年度比15.9%減)となりました。営業利益は1億14百万円(前年度比71.3%減)となりました。
b.財政状態の状況
(資産)
当連結会計年度末における資産合計は671億27百万円となり、前連結会計年度末に比べ38億24百万円増加しました。
流動資産は526億35百万円となり、47億2百万円増加しました。これは主に、現金及び預金が1億67百万円、受取手形及び売掛金が1億9百万円それぞれ減少したものの、原材料及び貯蔵品等の棚卸資産が46億7百万円増加したことによるものであります。
固定資産は144億91百万円となり、8億78百万円減少しました。これは主に、工具、器具及び備品等の有形固定資産が1億86百万円増加したものの、投資有価証券等の投資その他の資産が6億26百万円、償却等により顧客関係資産等の無形固定資産が4億38百万円それぞれ減少したことによるものであります。
(負債)
当連結会計年度末における負債合計は228億55百万円となり、前連結会計年度末に比べ7億11百万円減少しました。これは主に、長期借入金等の固定負債が23億31百万円増加したものの、短期借入金並びに支払手形及び買掛金等の流動負債が30億42百万円減少したことによるものであります。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産合計は442億71百万円となり、前連結会計年度末に比べ45億35百万円増加しました。これは主に、利益剰余金が32億58百万円、為替換算調整勘定等のその他の包括利益累計額が12億4百万円それぞれ増加したことによるものであります。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度末と比較して1億67百万円減少し、171億19百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況と主な要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果獲得した資金は21億13百万円(前年同期は16億69百万円の獲得)となりました。これは主に棚卸資産の増加(42億89百万円)、法人税等の支払(23億14百万円)により資金が減少したものの、税金等調整前当期純利益の確保(65億96百万円)により資金が増加したものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は7億82百万円(前年同期は3億10百万円の使用)となりました。これは主に有価証券並びに投資有価証券の売却及び償還による収入(6億86百万円)があったものの、有形固定資産の取得による支出(11億55百万円)、無形固定資産の取得による支出(1億81百万円)により資金が減少したものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は22億59百万円(前年同期は16億27百万円の使用)となりました。これは主に長期借入れによる収入(48億円)があったものの、短期借入金の減少(40億5百万円)、配当金の支払(13億46百万円)、長期借入金の返済による支出(11億45百万円)により資金が減少したものであります。
③ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年1月1日 至 2023年12月31日) |
対前年度比増減率(%) |
|
SS事業(百万円) |
22,674 |
7.0 |
|
IA事業(百万円) |
28,229 |
△2.6 |
|
EMS事業(百万円) |
536 |
△14.6 |
|
その他(百万円) |
- |
- |
|
合計(百万円) |
51,440 |
1.3 |
b.商品仕入実績
当連結会計年度の商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年1月1日 至 2023年12月31日) |
対前年度比増減率(%) |
|
SS事業(百万円) |
829 |
10.8 |
|
IA事業(百万円) |
2,255 |
53.8 |
|
EMS事業(百万円) |
- |
- |
|
その他(百万円) |
2 |
1,869.3 |
|
合計(百万円) |
3,087 |
39.3 |
c.受注実績
当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年1月1日 至 2023年12月31日) |
対前年度比増減率(%) |
|
SS事業(百万円) |
230 |
△24.5 |
|
IA事業(百万円) |
25,055 |
24.3 |
|
EMS事業(百万円) |
640 |
28.1 |
|
その他(百万円) |
93 |
△28.3 |
|
合計(百万円) |
26,020 |
23.4 |
(注)当社グループ(当社及び連結子会社)の一部の事業では、見込み生産を行っております。
d.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年1月1日 至 2023年12月31日) |
対前年度比増減率(%) |
|
SS事業(百万円) |
25,197 |
7.4 |
|
IA事業(百万円) |
29,741 |
0.0 |
|
EMS事業(百万円) |
846 |
△15.9 |
|
その他(百万円) |
586 |
△2.2 |
|
合計(百万円) |
56,372 |
2.8 |
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.最近2連結会計年度における主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は、当該割合が100分の10未満のため記載を省略しております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。連結財務諸表の作成にあたっては、連結会計年度末における資産・負債の報告数値及び偶発債務の開示並びに報告期間における収益・費用の報告数値に影響を与える見積りや仮定を使用する必要があるため、過去の実績や法制度の変更など様々な要因に基づき、見積り及び判断を行っております。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.当連結会計年度の経営成績等
売上高は563億72百万円となり、前連結会計年度に比べ15億61百万円増加しました。これは主に、産業用各種製品がアジアの設備投資抑制の影響により伸び悩んだものの、大型重要施設向け屋外用防犯センサーの販売が為替影響も加わり国内外で伸長したことによるものです。
営業利益は58億99百万円となり、前連結会計年度に比べ4億4百万円減少しました。これは主にコロナ禍の行動制限の緩和による営業・販売促進活動の強化などにより、販売費及び一般管理費の売上高比率が1.0ポイント増加したことによるものであります。
親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に比べ1億44百万円減少し、46億8百万円となりました。
b.経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3事業等のリスク」に記載のとおりです。
c.キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
イ.キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「第2 事業の状況 4経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
ロ.資本の財源及び資金の流動性の分析
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、原材料、製商品の仕入れのほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、事業拡大のための生産設備増強などの設備投資、新製品開発、製造のための金型投資、グループ基盤強化のためのM&A投資等であります。
当社グループは、事業運営上必要な資金の流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、大型の投資案件や長期運転資金につきましては、自己資金及び金融機関からの長期借入を基本に、調達規模や市場環境に応じて柔軟に調達手段を選択していく方針です。
なお、当連結会計年度末における借入金残高は106億45百万円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は171億19百万円となっております。
d.経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、連結売上高10%伸長、連結営業利益率15%以上、ROE10%以上を経営指標としております。当連結会計年度は、売上高2.8%増、営業利益率10.5%、ROE11.1%となり、ROEを除き目標とする経営指標を下回る業績結果となりました。
世界的なインフレ継続や中国経済の減速など厳しい経営環境が継続しているものの、今後とも更なる成長に向けて、グループシナジーの拡大や全体最適視点による経営資源の有効活用に努め、「ソリューション提案事業」の推進などに積極果敢に挑戦することにより、経営指標の達成に取り組んでまいります。
該当事項はありません。
当社グループは、「見えないものを、見るしごと。」の実現を果たすために、世の中の様々な課題やニーズに対してその解決方法を提案し、顧客満足度の向上を目指して研究開発を進めております。
センシング技術に加え、照明技術やさまざまな要素技術を取り入れ、変化や状態を「見る」、見えないものを「視る」、観察し判断する「観る」を包含した「見る」技術を進化させ、多様化するお客様に価値ある提案を行い、新たなソリューションを創造してまいります。
当連結会計年度の研究開発費の総額は
<SS事業>
(1) 防犯関連
防犯関連におきましては、ウクライナ情勢の長期化や物価高騰に伴う社会不安の増大、さらには、近年の自然災害の頻発などにより、社会の安全・安心に対するニーズがますます高まっております。このような背景のもと、各国ではデータセンター・発電所などの重要施設のみならず、事業所・商業施設などの民間施設及び一般住宅でも、防犯カメラシステム、侵入警戒システム、遠隔監視システムなどの需要が高まっております。当社はこのような社会インフラと住環境の安全・安心への要求に対し、より信頼性が高く、防犯カメラシステムとの親和性も高いセキュリティシステムの研究、開発をベースとしたソリューションを提供しております。
当連結会計年度の主な成果は、次のとおりです。
① レーザースキャンセンサー 「REDSCAN mini Proシリーズ」
データセンター及び発電所などの重要インフラ施設でのスポットエリア警戒を目的とした「REDSCAN mini Proシリーズ」を開発いたしました。このセンサーはレーザー光を照射し、対象物の「大きさ」「速度」「センサーからの距離」を識別できる高機能レーザースキャンセンサーです。2021年に発売いたしました「REDSCAN Proシリーズ」に続き、さらなる進化を遂げラインアップを強化いたしました。警戒エリアは20m/90°のスポットエリア警戒用とし、防犯カメラシステムとの統合への要求に応え、新たに開発した赤外線LED照明照射技術とフルHDカメラを組合せることで、より映像確認がしやすくなり、様々な警戒環境での利用を実現いたしました。夜間や暗所での映像撮影においても、赤外線LED照明が侵入者の位置に応じて自動調整し、鮮明な映像を提供いたします。また、様々な警戒用途、顧客ニーズに対応するため、柔軟な警戒エリア設定や方向判別機能、検知時の映像記録など、高度な機能を搭載いたしました。これにより、屋外問わず通用口や窓以外もくまなく警戒でき、セキュリティ性の向上が期待できます。
② 屋内防犯センサー
一般家庭、小規模店舗などにて電池駆動ワイヤレス型センサーの需要が高まる中、2022年に発売した「FlipXシリーズ」をベースにワイヤレスRF信号送受信機能を搭載した電池駆動モデルを開発いたしました。低消費電流を保ちつつ業界最長クラスの電波到達飛距離を実現いたしました。
また、オフィス、工場などにてシリアルバス通信型センサーの需要も高まっており、同「FlipXシリーズ」をベースにバス通信機能を搭載したモデルを開発いたしました。バス通信にて双方向通信を実現し、アラームコントロールパネルより遠隔でセンサー感度などを調整できる機能も備えております。これらのシリーズラインアップ拡充により、より幅広い顧客ニーズに応え様々な用途に対応することが期待できます。
(2) 自動ドア関連
自動ドア関連におきましては、公共施設、オフィス、店舗や工場施設などで人々が安全・安心・快適に通行できる自動開閉扉用センサーを開発、販売しております。創業以来培ってきた独自のセンシング技術で業界最高水準の安全性と、あらゆる設置環境下でも安定したパフォーマンスを発揮すべく研究開発を行っております。
現在、国内におきましては、自動ドアセンサー分野は約6割、工場や倉庫の高速シャッターセンサー分野は約7割と、当社は高い市場シェアを保持し、海外におきましては、開口部周辺の安全要求が各地域の法令として定義されるなか、各地域特性に応じた製品を開発し、北米、欧州、アジア地域での市場シェアも順調に伸長しております。
また、自動ドア関連事業において進めている「モノ売り」から「コト売り」への事業拡大に関しても、システム開発やアプリ開発を積極的に進め、2024年には新たなサービスの立上げを予定しております。
さらに、当社が得意とする光技術に加えて、二酸化炭素排出量削減に寄与できる新しい技術開発を積極的に進め、より快適な社会環境実現に貢献してまいります。
当連結会計年度の主な成果は、次のとおりです。
① 日本市場向けスライドドア戸袋用センサー「プロセーフFシリーズ」 OA-220CAN(FL)/(FR)
日本市場において2017年3月に自動ドア全般にわたる安全規格「JIS A 4722 歩行者用自動ドアセット-安全性」が制定されました。同規格制定を機にスライドドアの戸袋側安全を実現する手段として防護柵などに加え、センサーによる対策としてご利用頂ける新機種「プロセーフFシリーズ」を開発いたしました。このセンサーは従来機種では設定できなかった戸袋に対応したエリア調整機能を搭載し、様々な設置環境に応じてご利用頂けるセンサーとなっております。
現在、戸袋側の安全対策としては、防護柵の設置が主流となっておりますが、センサーによる戸袋側の安全対策を実現することで、エントランスの美観性や施工性の向上に貢献することが可能となります。
また、センサーによる戸袋側の安全対策は日本における新たなセンサー市場拡大の契機と捉え、さらなる普及を目指してまいります。
② 日本市場向け自動ドア用非接触スイッチ 「Clean Wave™」OMH-100D
食品工場や冷蔵冷凍倉庫、クリーンルームなどの自動ドア向けの非接触スイッチ「Clean Wave™」OMH-100D」を2024年2月より販売開始いたしました。0℃以下の厳しい温度環境下でも使用可能な耐環境性能及び薄型のデザインを特徴とし、これまでセンサーの設置が避けられてきた冷蔵冷凍倉庫などの自動ドアへの普及を目指してまいります。また今後は、自動ドア以外の用途への普及に加え、北米市場への拡販も目指してまいります。
③ OMNICITY新サービス 「スマートエントランス」
2020年より、日本市場において自動ドアセンサーを活用した情報シェアリングサービス「OMNICITY(オムニシティ)※」を開始いたしました。その後、Bluetooth機能を搭載した自動ドアメディアセンサー「OAB-215シリーズ(以下、OAB-215)」を市場投入し、順調にビジネスを拡大しております。また、「OMNICITY」の新しいサービスとして、マンション共用部における入退室を自動ドアセンサーOAB-215とスマートフォンアプリで実現するシステム「スマートエントランス」を開発いたしました。
従来必要であったアクセスコントロール用の制御器、無線タグなどを使用せず、既存の自動ドアセンサーからBluetooth機能を搭載した自動ドアセンサーOAB-215に交換し、専用のスマートフォンアプリをダウンロードするだけでハンズフリーでの入室や宅配業者の置き配連携が可能になるなど、これまでにない低コストでスマートなマンションエントランスを簡単に実現できるシステム・サービスになります。2024年にはマンションディベロッパー様と連携し、順次サービスを開始する予定です。
※OMNICITY:出入り口に設置された自動ドアセンサーにBluetooth機能を搭載することで、通行者に商品情報やクーポンの配信、病院やホテルなどで自動チェックイン・アウトが可能となるプラットフォーム
(3) その他
その他のSS事業におきましては、液体の色や濁りを素早く正確に測定する水質計測用センサーなど、安全・品質・衛生管理の特殊な計測ニーズに対応した製品の開発を行っております。
また、独自の画像センシング技術による人検知・人数計測など客数情報システムの開発・販売も手掛けております。これまでの客数データによる集客・購買のマーケティング分析での活用に加え、施設利用者の快適性・利便性の向上を目的に、フロアやゾーンの滞在人数・滞在時間といったリアルタイムデータを用いた空調制御・混雑案内などにセンサーを利用する事例が増えております。この様にDX(デジタルトランスフォーメーション)を活用した計測ニーズに対応し、顧客の意思決定の根拠となる高精度なデータを提供するために、様々なセンサー製品の開発に取り組んでまいります。
当連結会計年度の主な成果は、次のとおりです。
① 水質モニタリングサービス 「WATER it」
水質計測分野におきましては、計測データを含むソリューションを提供する簡易水質測定システム「WATER it」の展開に引き続き注力しております。本サービスは、「水の未来をつくる」をコンセプトに、いつでも、どこでも水環境を把握できる水質管理のDXとして現場の負担を大幅に削減できるソリューションです。
2023年には1台の変換器でより多くの計測器を使用したいというご意見にお応えして、ユニバーサル変換器(SC-U1)に接続できるアナログ拡張ボード(SC-U-EB2)を開発いたしました。これによりアナログ式の計測器も接続が可能となり現場対応力が増しご利用いただきやすくなりました。本サービス「WATER it」において、お客様のご意見、ご要望に寄り添った対応を進め、ご利用満足度の向上を図っております。
② 客数情報カウントシステム
客数情報カウントシステムにおきましては、店舗に来店される客数・属性・購買・混雑など、運営におけるマーケティングデータの取得・活用の課題に対し、センサー及びクラウドサービスにて商品展開を進めております。
新製品として「客数+男女年齢」計測センサー「AIO-FX1」を開発し、売場内の購買行動計測センサー「AIO-CX1」とのラインアップを揃え、クラウドサービスプラットフォームの「パッサークラウド(PASSER-Cloud)」にて、データ集計・分析・遠隔保守などをサブスクリプションにて提供し、小売業界の店舗マネージメントを支援します。
今後は、さらなる客数データの活用を可能とするコンテンツとして、予測分析ツール、リアルタイム混雑案内、センサービーコンによる販促支援など「店舗DXニーズ」に対応したソリューションの提供を拡充してまいります。
<IA事業>
(1) FA関連
FA関連におきましては、さまざまな製造業の工場における製造ラインの自動化・省力化に不可欠なFA用センサー(産業用センサー)の製品開発、研究に取り組んでおり、可視光や赤外光を用いた光電センサーのみならず、距離を計測する変位センサー、カメラを用いた画像センサー、LED照明機器、非接触温度計などのセンサー及び産業IoT(IIoT)※、環境の構築に貢献するIO-Link※製品など、幅広く開発しております。
当連結会計年度の主な成果は、次のとおりです。
※産業IoT(IIoT):Industrial Internet of Thingsの略で、産業用機械や装置・設備・システムなどをネットワークで相互接続し、現場作業の効率化や見える化などを実現するもの
※IO-Link:センサーと制御システムの間で各種データ交換を行う通信技術のこと。設備の予知保全などに役立つ
① 高輝度センシングバー照明 「OPB-Xシリーズ」
従来からの独自技術であるセンシング照明を進化させた、新技術「FALUX sensing +」を搭載したセンシングLED照明第一弾を発売いたしました。多機能LED照明コントローラーOPPXシリーズと接続することでモニタリング・フィードバック制御に加え、照明個体の識別が可能で、個体ごとに異なる累積点灯時間などのデータを参照でき、予知保全に利用できます。
さらに、従来のコントローラー、照明では同じ調光値(明るさ)設定でも、ケーブル長が異なることで照明の明るさに違いが発生しておりました。このような課題に対応すべく、新しい調光方式L-INT(照明内調光)を内蔵し、延長ケーブルによる電圧降下に伴う光量低下が発生せず、安定した明るさが得られるようになりました。
② IO-Link拡張ユニット(アナログI/O)「UR-DS4AD/DA」
IO-Linkポート1CHを4CHのアナログI/Oに変換するIO-Link拡張ユニットを新たに機種追加いたしました。
IO-Link拡張ユニットの上位はIO-LinkマスタURシリーズで、IO-Link通信にて1:1で接続いたします。本製品により、IO-Linkポート1CHをアナログ・デジタルI/Oに変換し拡張できるようになり、現場のI/O機器をまとめ、省配線・大幅なコストダウンを実現いたします。
③ マルチプロトコル対応IO-Linkマスタ 「URシリーズ」 e-CON接続対応機種追加
コンパクトなIO-Linkマスタの利便性をさらに向上させるべく、業界で広く普及しているe-CONコネクタ接続が可能な機種を追加いたしました。16チャネルのセンサー接続部分をe-CON化することにより現場での配線工数、メンテナンス工数の削減に貢献いたします。本製品により、IoTやIndustry4.0※への対応をより加速させることができると考えております。
※Industry4.0:ドイツ政府が推進する製造業の高度化を目指す国家プロジェクトのこと。工場内のあらゆる機器類をインターネット経由で一括管理することにより、生産性と収益性の向上に役立つ
④ IO-Link対応高機能デジタルファイバーセンサー「D4RFシリーズ」高精度タイプ・アナログ出力タイプ追加
超高速応答(16μs)、高機能デジタルファイバーセンサーD4RFシリーズに新たに機種を追加いたしました。
高精度タイプは、受光量飽和の影響を低減し、近距離での微小物体検出、あるいは僅かな受光量の変化を捉える微分検知の検出能力を向上させました。アナログ出力タイプは、OLEDディスプレイ※による操作性・視認性の良さはそのままに、受光量に応じたアナログ電圧あるいは電流値が出力可能になりました。検出物の状態変化のモニターにアナログ入力機器などの従来資産をご活用いただけます。設備導入コストを抑えながら製造品質の監視、簡易フィードバック制御が可能となります。
※OLEDディスプレイ:Organic Electro light Luminescence Diode (有機ELダイオード)ディスプレイ
(2) MVL関連
MVL関連におきましては、お客様の困り事を解決するために光を軸としたソリューション提案を磨くことで、お客様の検査品質向上に努めてまいりました。さらに、昨今の人手不足改善へのご要望にお答えするため、カメラ、レンズ、画像処理ソフト、装置、産業ロボットなどを活用した検査・計測のトータルソリューションへ活動の幅を広げております。
そして、高度化・多様化しているお客様の課題を解決すべく、従来からの照明や関連機器の高性能化・高機能化だけではなく、生成AIなどの先進技術の積極的な利用や、光学・制御に関する研究開発、オプテックスグループ企業間の技術連携によるシナジー効果にも力を入れております。
当連結会計年度の主な成果は、次のとおりです。
① 検査照明の新規アプリケーションへの挑戦
スマートフォン用や車載用のデジタルカメラモジュールの生産工程に用いられ、明るさや色を調整する際に基準となる光源として基準光源「LDF-RLSシリーズ」を開発いたしました。4種類の色温度切替を可能にした「4色温度切替タイプ」と2800K~7600Kの間で任意に色温度を調整可能な「2色混合調色タイプ」の2タイプをラインアップし、複数の色温度が必要となる検査用途に対して1台の基準光源で対応を可能といたしました。これによって課題とされていた光源の変更作業が不要となり、お客様の生産効率向上に大きく貢献しております。
フィルム・半導体・ガラスなどの製造で行われるコーティング工程にて塗装のムラや有無を検出するために、三波長蛍光灯やナトリウムランプなどの代替光源としてレーザー光検査用照明「LDF-NBシリーズ」を開発いたしました。ムラの検出に有効とされる干渉縞を発生させるのに適しているレーザー光を利用すると同時に、レーザー光固有の問題とされるスペックルノイズに対して独自の光学設計によってノイズを低減させ、発光面の均一度も高めております。このように、市場ニーズを敏感に捉え、照明開発によって新規アプリケーションへの挑戦を続けております。
② LED照明用多機能デジタル電源 「CDーVAシリーズ」/PCI Expressボード型照明コントローラー「CXシリーズ」
シーシーエス株式会社及びオプテックス・エフエー株式会社にて、両社の技術を集約しマシンビジョンに不可欠な機能を搭載した照明コントローラーを共同開発いたしました。調光制御は、定番のPWM及び電圧可変のほか、高速生産ラインで必要とされるオーバドライブが可能です。点灯制御のためのシーケンスやレシピ設定機能は、分割発光のパターン制御に適しており、フォトメトリックステレオ法での撮像に便利な機能です。外部制御通信方式は、イーサネット、パラレル通信、USB通信のほかRS-232Cをサポートします。
また、シーシーエス株式会社及びサンリツオートメイション株式会社にてパソコンのマザーボード規格であるPCI Expressに対応する照明コントローラーを共同開発いたしました。照明コントローラーをパソコン内部に組み込めるため、電源を設置するスペースやパソコンとの配線が不要となり、画像処理検査システムの省スペース化、省配線化に貢献します。最大4チャネルの照明を接続でき、出力60W/120Wの2タイプがあるためシーシーエス株式会社の照明の大部分に対応しています。フォトメトリックステレオ法での撮像に便利なシーケンス制御機能も備えています。また、トリガー出力が可能なため、カメラとの同期や次の発光を設定するためのシステム構築工数を削減できます。今後もこのようにグループの総合力を活用し、お客さまに求められる新しい価値を提供できる製品を開発してまいります。
③ AIによる外観検査の取り組み
外観検査にAIを活用するためには、学習用データを作成・検証しAIモデルを作成する「学習」と、AIモデルに検査画像を入力して「推論」を行うプロセスが必要です。2022年には、直感的な操作でAI推論用アプリケーションを構築できる「ソリューション愛(AI)」(ソリューションアイ)の提供を開始いたしました。
AIの活用をさらに加速すべく、2023年は、生成AI技術をコアにした株式会社データグリッドとの業務提携契約を結びました。データグリッド社が保有する生成AI技術は、少量の不良品画像から高品質で多種多様な不良品画像を大量に生成できるため、外観検査システムのAI導入課題とされている学習用データの作成が可能となります。
シーシーエス株式会社では、2018年にAIラボを開設して以降、複数のAIベンダーとパートナーシップを構築し、お客様に最適なAIソフトウェアの提案をするなど、外観検査の「見える」を実現するためのソリューションをグローバルに展開しております。生成AI技術の特徴を組み合わせることで、製造現場へのAI外観検査導入を強力にサポートしてまいります。
(3) IPC関連
IPC関連におきましては、様々な産業分野向けとして、高い品質と長期供給性を追求した組み込みボード製品の製造や、生産ライン、社会インフラ向けのシステムを構築し、CPUボード、I/Oボード、コントローラー装置など組み込み用コンピュータ構築に必要なプラットフォーム提供からアプリケーション・システムの構築、さらには最新のセンシングや制御装置の提供など、広くお客様のニーズに対応しております。
当連結会計年度では、国立の研究機関・大学と共同で、次の新しい取り組みを始めました。
① 磁歪発電IoT端末の研究
2023年8月に、東北特殊鋼株式会社及び国立大学法人東北大学と共同で磁歪発電IoT端末の研究開発を「宮城県新規参入・新産業創出等支援事業費補助金(グループ開発型)」に応募し、採択されました。
各種データ収集に、IoT端末が利用されますが、往々にして電源確保が課題となります。電池で賄う場合も、意図しない電池劣化で情報収集が出来なくなる、また定期的な電池交換も必要になり、メンテナンスも課題です。
当社では、各課題を解決するメンテナンスフリーの自己発電型IoT端末の研究開発に取り組んでおります。振動で発電する磁歪発電と小電力で稼働するIoT端末で、今まで運用が困難だった場所でのデータ収集に貢献したいと考えております。
② 無線環境モニタリングシステムの研究
2023年11月に、無線環境モニタリングシステムの研究開発が国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)の高度通信・放送研究開発委託研究の公募で採択されました。
製造現場では、トータルの導入コスト低減や、作業者の生産性向上を目的に無線機器の活用が増えております。また、医療現場でも、機器の移動に便利な無線機器の活用が増えております。一方、無線通信トラブル発生時、原因が分からず復旧までに時間がかかる事例も多く発生していることが分かって来ました。
本研究で、無線通信トラブルの復旧に向けた具体的な行動示唆を行い、トラブル発生から復旧までの時間を従来の1/2以下にすることを目指した、無線環境モニタリングシステムの研究を行っております。
(4) MECT関連
MECT関連におきましては、電動自動車用などの二次電池製造装置や、電気・電子・医薬品などの多様な産業分野向け自動化装置及び画像処理検査装置を開発・製造・販売しております。高度なメカトロ技術※や画像処理技術により、ものづくりの現場の生産性向上と品質向上に貢献しております。
当連結会計年度の主な成果は、次のとおりです。
※メカトロ技術:メカトロニクス技術の略称で、機械工学(メカニクス)と電子工学(エレクトロニクス)を融合させた技術分野のこと
① 立体物(鋳造品・成型品)高速外観検査プラットフォーム
複雑な形状をしたワーク(製品)でも、超高速の駆動機構を用いて様々な撮像方向から自由自在に外観検査をすることができます。また、凹凸に強い独自の照明技術を用いて検出能力を向上させており、良品を不良品と判定してしまう過検出の低減を実現できます。
また多関節ロボットなどを用いて外観検査を自動化する場合、検査所用時間の点で量産品全数検査などに利用できないことがありますが、当社の高速外観検査装置は、スムーズかつ高速に動き、検査の時間を短縮することに成功いたしました。
② 簡単・直感的に設定できる「ラクラクティーチング」アルゴリズム
画像検査装置やロボットの利用経験がない担当者でも、3Dモデルのデータ上から検査したい個所を直感的な操作で指定するだけで、装置が最適な動作をするように自動生成するプログラムを、外観検査装置の全ラインアップに搭載可能といたしました。
今後は、鋳造部品、樹脂成型部品製造や、電子機器組立など、様々な分野の幅広い企業規模の皆様に外観検査ソリューション事業を展開してまいります。