第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1) 会社の経営の基本方針

当社グループは、「ベンチャースピリット溢れる企業集団を目指す。」を企業理念に掲げ、自らの行動を変革し、新しい事業創出に挑戦することで、「安全・安心」また「快適」で「高効率」な社会を作り出すことを目指しております。これらを通じて持続可能な社会の創出に寄与するとともに、社員一人一人の自己実現の場として、人と企業がともに成長していくことが当社グループの基本方針です。

 

(2) 目標とする経営指標

当社グループが目標とする経営指標は、「ROE10%以上」の収益水準で、「連結売上高10%伸長」で持続的に成長することを目標としております。このために各事業会社が推進する基幹事業の更なる成長と、全体最適視点で経営資源の有効活用を図りつつ、新規事業の育成や事業領域の拡大を図ってまいります。絶えず創意工夫を重ねながら収益の拡大に挑戦し続けるとともに、間接業務の効率化を行い、生産性の向上を意識して営業利益率の向上を図ることで経営指標の継続的な実現を目指しております。

 

※財務指標は提出日現在の経営目標であり、その実現を保証あるいは約束するものではありません。

 

(3) 経営環境及び中長期的な会社の経営戦略

当社グループを取り巻く環境におきましては、原材料・資源価格の高騰、世界的なインフレの継続、中国経済の低迷等、依然として不透明な状況にあります。一方、持続可能な社会の実現に向けて世界の流れが加速し、社会・環境問題をはじめとするサステナビリティへの取り組みが一層注目されており、様々な社会・産業分野での省エネ、自動化、省人化に貢献できる当社グループの製品や技術への需要は高まっております。

このような中、当社グループでは、得意とするセンシング、光学技術などを駆使して、「安全・安心・快適」な社会や産業に貢献していくことを目標に事業を展開し、世の中に存在する様々な不安や不快、不便から「不」を取り除く仕事と位置付けた「ふとるビジネス」の拡大を推し進めてまいりました。さらに、これまでのハードウェアとしての「モノ売り」から、お客様にトータルなソリューション(課題解決策)をご提供する「ソリューション提案事業」への移行を効果的に進め、様々な社会課題の解決と企業価値の最大化を中長期の経営戦略としております。

 

(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

持株会社であるグループ本社の機能を充実させることで、各事業会社との相互連携をさらに強化し、収益性の向上と持続的成長に取り組んでまいります。

各事業会社において、既存事業の拡大による収益の増大に取り組むとともに、モノ売り視点の従来型のビジネスから、顧客の真の要望に焦点を当てるソリューション提案型のビジネスを加速させることで、グループ全体で付加価値の強化を図り収益の向上を目指してまいります。

また、グループ内各社とのシナジーを追求するとともに、事業領域の拡大及び新規事業への取り組みを強化してまいります。さらに、資本業務提携やM&Aを通じて成長分野への投資を集中しつつ、財務内容の健全化を図ることで株主価値の持続的な増大に取り組んでまいります。

一人当たり生産性の向上に注力し、結果として従業員の報酬水準や満足度の向上を図ることで、人と企業がともに成長していくことを実現いたします。

環境問題への取り組みについては、代表取締役社長を委員長とする「グループコンプライアンス推進委員会」の下部組織である「グループ気候変動対応分科会」において、温室効果ガスの測定や再生可能エネルギーの活用などによる温室効果ガス削減策を検討、実施するとともに、サステナビリティ推進部門との連携によりモニタリング機能を強化し、グループ全体で2030年までにCO₂排出量を30%(2019年比 Scope1,2)削減という目標達成に向けてグループ内各社と連携し実効性を高めてまいります。さらに、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言を踏まえた気候変動に関するリスクと機会の分析及び情報開示を行うことで、社会的責任を果たしてまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

当社グループは、創業時より得意のセンシング技術を駆使して「安全・安心・快適」な社会や産業に貢献していくことを目標に事業を展開してまいりました。世の中に存在するさまざまな不安や不快、不便から「不」を取り除く仕事(=ふとるビジネス)を拡大させることで、「グローバルニッチNo.1」のセンサーメーカーを目指してまいりました。

今後もこの「ふとるビジネス」を推進することにより、環境問題や社会問題の解決に貢献すると同時に、各事業の拡大、企業価値の向上に繋げていくことができるものと確信しております。

その上で、当社グループでは以下のサステナビリティ基本方針を策定し、この方針に基づく活動を推進することで、社会の持続的な発展への貢献と企業価値の向上を目指してまいります。

(サステナビリティ基本方針)

・あらゆるステークホルダーとの関係を強化し、社会の持続可能な成長に貢献します。

・環境に配慮した製品の供給を通じて、循環型事業経営を実現することを目指します。

・社員のエンゲージメント向上を通して、グループ各社の持続的な成長と発展を目指します。

 

(1)ガバナンス

当社グループでは、持続可能性の観点から企業価値を向上させるため、サステナビリティを推進する体制を強化しており、代表取締役社長がサステナビリティ課題に関する経営判断の最終責任を有しております。

代表取締役社長を委員長とする「グループコンプライアンス推進委員会」を取締役会の直轄組織として設置し、サステナビリティに関する重要課題を審議するとともに、取り組み内容を取締役会に報告しております。同委員会は主要グループ各社の代表メンバーで構成されており、国内外のグループ会社と連携しながらサステナビリティに関する課題と改善案の議論を通じてグループ全体の理解の深化を図っております。

また、2024年1月からはサステナビリティ推進部門を設置し、各部門及びグループ会社の状況を把握しグループ全体でサステナビリティ活動を推進する体制を構築しております。

なお、気候変動については、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言に沿った情報開示を進めるためにグループコンプライアンス推進委員会の下部組織として「グループ気候変動対応分科会」を設置し、重要な気候関連リスク・機会の特定、これらの対応に係る方針策定と展開、進捗管理等を行っております。

サステナビリティに関する取り組み内容については、当社ウェブサイトを参照ください。

https://www.optexgroup.co.jp/esg/

 

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(2)戦略

(気候変動)

当社グループは気候変動への対応を重要課題と捉え、2023年1月にTCFD提言への賛同を表明しました。あらゆるステークホルダーとの関係を強化し、社会の持続可能な成長に貢献するべくTCFDのフレームワークに基づき情報開示に取り組んでおります。

当社グループが認識している気候変動に関するリスク(移行リスク及び物理的リスク)と機会は以下のとおりです。

移行リスクとしては、炭素税導入による部品及び原材料のコスト増加、環境取り組みと訴求の不足によるステークホルダーからの不支持が想定されます。物理リスクとしては、異常気象等による自社工場の稼働停止、従業員のアクセスの寸断等が想定されます。

一方、機会としては、低炭素排出量製品の需要拡大や省エネ製品の要求加速、防災関連製品の需要拡大による事業機会の増大が期待できると認識しております。また、環境配慮型製品の開発、生産性向上に繋がる高性能製品の拡販、冠水モニタリングシステム、災害予知保全システムなどの開発が期待できると認識しており、この機会を最大化するための取り組みを進めております。

今後も様々な世界観を想定したリスク・機会の分析を定期的に実施し、重要度の見直しと開示内容の充実化に尽力してまいります。

リスクと機会及び当社グループとしての対応策の詳細は、当社ウェブサイトに開示しております。

https://www.optexgroup.co.jp/pdf/risk-opportunity-list.pdf

 

(人的資本)

当社グループは、「ベンチャースピリット溢れる企業集団を目指す」という企業理念を掲げ、人と組織の能力・活力・効率を高めグループ全体の企業価値を最大化することを目指しております。人材に関する考え方として、グループ全社員が安心して快適に働ける職場環境の整備はもとより、多様な人材がそれぞれの能力を高めあい活躍できるように、ダイバーシティ推進にも力を入れております。また、ワーク・ライフバランスと生産性向上の両立を目指した働き方改革にも取り組んでおります。

また、当社グループでは人材育成に力を入れており、新入社員研修やトレーニー制度、階層別研修、語学研修などを実施しております。また、育児休業後の復職者数や育児時短勤務者数、有給休暇取得率など、社員のワーク・ライフバランスの改善にも取り組んでおります。さらに、定年後再雇用者数や従業員持株会制度など、ベテラン層の活用や個人資産形成の支援にも力を入れております。

以上のように、当社グループは、人材育成方針や社内環境整備方針に関して、多角的な取り組みを行っております。

人材育成の取り組みの詳細は、当社ウェブサイトに開示しております。

https://www.optexgroup.co.jp/esg/human-resources.html

 

(3)リスク管理

当社グループは、取締役会の管理・監督の下、グループの横断的なリスク管理体制として「グループコンプライアンス推進委員会」を設置し、同委員会において気候変動関連を含めたリスクマネジメントを推進及び統括しております。「グループコンプライアンス推進委員会」は、年2回以上リスクの特定と評価を実施した上で必要に応じてリスクマネジメントの包括的な見直しを行っております。また、特定したリスクと評価の結果は「リスクマップ」に明記し、対応方針と合わせて取締役会に諮った上で全グループに展開しております。また、安全保障輸出管理、ITセキュリティ関連については専門の委員会を設置し、リスクの洗い出し、対策の点検や評価を実施、活動進捗については定期的に取締役会に報告、協議することで実効性を確保しております。

 

(4)指標及び目標

(気候変動)

当社グループは環境に配慮した製品の供給を通じて、循環型事業経営を実現することを目指しております。当社グループの製品は単体の電力消費は非常に少なく、様々な企業活動の中に組み込むことで、企業活動全体での温室効果ガス削減に大きく貢献することができると考えております。

また、地球環境の保護を企業の社会的責任の一つと認識し、全従業員に「オプテックスグループ行動規範」の周知を図り、環境関連の各種法令や規格などを遵守し、環境に配慮した事業運営を行っています。

気候変動対応として「2030年までに2019年度比CO2排出量(スコープ1、2)を30%以上削減する」という中長期目標を設定し、今後の経営計画に反映しております。

確実な推進を図るため、代表取締役社長の直轄で全グループを対象にしたプロジェクト発足を含め、低炭素で持続可能な未来に必要な行動と投資を活発化させております。

なお、当社グループの2019年度から2023年度のスコープ1、2の温室効果ガス排出量の詳細、当社ウェブサイトに開示しております。

https://www.optexgroup.co.jp/esg/environment-impact.html

 

(人的資本)

当社グループでは、社員のエンゲージメント向上を通して、グループ各社の持続的な成長と発展を目指しております。

人的資本への投資及び人材の多様性の確保については、当社グループの事業環境及び各人材の就労状況を踏まえ、その時点で最適な方法を選択する方針であるため、特段の指標及び目標は設定しておりません。しかしながら、管理職については能力、将来性などを総合的に判断し男女の隔てなく登用しております。また、当社グループの製品開発及び拡販において、必要とされる技術職や営業職についても、性別・国籍を問わない採用を強化しております。

詳細は当社ウェブサイトに開示しております。

https://www.optexgroup.co.jp/esg/human-resources.html

 

 

3【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経済状況について

当社グループは世界各地で事業を展開しております。このため製品を販売している国または地域の経済状況によって経営成績及び財務状況に悪影響を受ける可能性があります。

これに対して海外主要地域には自社の拠点を設置するなど、現地の状況を常に把握するとともに、マクロとミクロの視点で経済情勢及び市場の変化を掌握し、主要事業会社の責任者が毎月集まって、情報交換のうえで戦略の変更や状況に応じた対応が迅速に取れるように対策を行っています。

 

(2) 為替変動によるリスクについて

当社グループは積極的に海外市場に進出しており、連結売上高の約6割は海外での売上となっております。米ドル、ユーロ、英ポンド、人民元などの主要通貨に加え、新興国を含む各国通貨の急激な円に対する為替レートの変動が長期に及んだ場合、当社グループの経営成績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは為替変動による損益への影響を限定する目的で、外貨建資産・負債額の一定比率に対して為替ヘッジ策を講じるとともに、海外生産を一定比率保って海外調達比率を向上する等、外貨建支出の維持による収支上の為替バランスを改善することで、為替変動に強い収益構造作りに取り組んでおります。

 

(3) 海外活動にかかるリスク、法的規制の変更・強化について

当社グループは、日本及び諸外国・地域の法規制に従って事業を行っております。当社グループが事業進出している国または地域において、法令または規制の重要な変更、税制または税率の大幅な変更、為替政策の変化、輸出または輸入に関する法規制、その他経済的、社会的及び政治的変動などがあった場合、経営成績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは「(2) 経済状況について」において説明のとおり、グローバルでの状況の変化を注意深く見守り、事業会社間で情報を共有しつつ、状況に応じた迅速な対応が取れるよう対策を行っております。

また、コンプライアンス違反や昨今の労働環境規制の強化等、企業の法令違反に係るリスクが多様化する中、役職員の教育と法令順守意識の徹底を図っております。

 

(4) M&Aについて

当社グループでは中長期的な事業ポートフォリオ戦略を踏まえ、既存事業に関連した新しい分野への進出も視野に入れたM&Aをグローバルに検討し、積極的に実行することで、企業価値の向上を目指しております。M&Aにあたっては、買収前に十分な調査を行い、価値評価を慎重に検討したうえで実施しておりますが、買収後における想定外の事態の発生や、市場動向の大きな変動等が原因で、買収事業が所期の目標通りに推移せず、場合によってはのれん等無形固定資産の減損処理等による財務状況への悪影響が生じる可能性があります。

 

(5) 生産用部材等の調達について

当社グループが生産する製品の部材等は、グローバルなサプライチェーンを通じて、国内外の仕入先から調達しております。経済状況の変動や、国際状況の変化あるいはサプライチェーンのトラブル等により、これら部材等の入手が困難な状況が発生したり、購入価格が高騰した場合、当社グループの経営成績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

直近では、世界的に半導体を中心とした電子部品の需給が逼迫している状況となっており、これら電子部品の需給逼迫の長期化につきましては、当社グループの業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。また、紛争鉱物への対応や、環境への配慮など、ESG観点からもより高度な対応が求められております。部材等の仕入先に対応不備があれば、部材等の調達や製品の販売に影響を与えるだけでなく、当社グループの社会的評価が悪影響を受ける可能性もあります。

当社グループでは、グローバルな経済情勢を注視し、調達環境の変化を把握するよう努めております。また代替部材の検討や、仕入先の複数化を進め、安定的な調達を図っております。さらには仕入先とのコミュニケーションを充実させ、仕入先の経営状況把握を行いつつ、管理体制の強化に協力することで顧客や社会の要求に対応しております。

(6) 資金調達について

当社グループは、M&A等の大きな資金需要が生じた場合には、金融情勢、マクロ環境、当社の状況などを総合的に勘案し、必要な資金を調達することといたしております。このため、金融市場の不安定化が生じた場合などには、資金調達コストが増加することにより、当社グループの経営成績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7) 気候変動について

当社グループは気候変動などの環境問題への対応を重要な課題の一つと捉え、気候変動に対する政策及び法規制、市場の要求を踏まえ、環境配慮型製品の開発に取り組んでおりますが、これらの規制が予測を超えて厳しくなった場合、コストの増加や販売機会損失等により、当社グループの経営成績及び財政状況に影響を及ぼす可能性があります。

また、気候変動による物理的変化のリスクとして、近年増加傾向にある台風・豪雨等の異常気象、地震などの大規模自然災害等が発生した場合、当社グループの事業活動が制限され、経営成績及び財政状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8) 感染症拡大に伴うリスク

当社グループは、新型コロナウイルスや新型インフルエンザ等の感染症の流行等大規模な感染拡大が発生した場合には、市況の悪化及び営業活動の停滞に伴い経営成績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。感染症が流行した場合に備え、当社グループは地域のお客様や役職員の安全を第一に考え、政府の方針等を踏まえて在宅勤務や時差出勤体制の整備に取り組むとともに、ITを活用した非接触型の営業活動の確立に取り組んでおります。また、感染症拡大予防策の浸透などにより事業を伸ばしている業界もあるため、伸びている業界に注力するよう機動的に対応しております。

 

(9) その他

上記に掲げたリスク要因は、当社グループの事業展開その他に関するリスクのすべてを網羅しているものではありません。その他、知的財産権に係る法的リスク、情報漏洩に係る情報セキュリティリスク、顧客の信用リスク、人材育成・確保に係るリスクなども発生する恐れがあり、当社グループの事業、経営成績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは「オプテックスグループ行動規範」(2003年1月初版制定、以後随時改定)を、日本語・英語にて作成し、当社グループ全世界の役職員に配布することで、各国法令・社内規則はもとより、社会規範・倫理規範に則った職務の遂行を促し、企業風土の醸成と役職員の教育・啓発に努めております。また、様々な観点でリスクを認識し、対応策を講じるため、代表取締役社長を委員長とする「グループコンプライアンス推進委員会」においてリスクマネジメントを推進及び統括し、定期的な見直しと検討を進めております。

 

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

a.経営成績の状況

当連結会計年度(2024年1月~2024年12月)における世界経済は、原材料・資源価格の高騰、欧米での高金利政策の継続、中国経済の低迷など、不透明な状況が続きました。

このような状況の中、当社グループは、「ベンチャースピリット溢れる企業集団を目指す。」を企業理念とし、グループ本社の機能を充実することで、各事業会社の相互連携を強化し、グループ全体での間接コストを抑制して、利益成長を加速させることを経営方針に掲げてまいりました。

本年度の重点施策として、「ソリューション提案事業」への移行を効果的に進め、各事業の成長と収益性向上を目指してまいりました。また、当社グループの「サステナビリティ基本方針」に基づき、事業を通じて様々な社会・環境課題を解決することで、社会の持続的な発展への貢献と企業価値の最大化に向け邁進してまいりました。

当連結会計年度の経営成績は、SS事業及びIA事業のMECT関連が順調に推移したことや、為替の影響等により、売上高は632億69百万円と前年度に比べ12.2%の増収となりました。利益面につきましては、売上構成比の変化等により原価率が上昇したことに加え、為替の影響や人件費の増加等はあったものの、売上総利益の増加がこれらを吸収した結果、営業利益は71億21百万円(前年度比20.7%増)、経常利益は77億49百万円(前年度比23.8%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は56億89百万円(前年度比23.5%増)となりました。

 

セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。

なお、当連結会計年度より、報告セグメント内の収益の分解情報のうち「SS事業」において、従来「防犯関連」及び「その他」に含めていた「社会及び環境関連事業」の量的な重要性が増したため、「社会・環境関連」として記載する等、区分方法を変更しております。以下の前年度比較については、変更後の区分に組み替えた数値で比較しております。

 

(SS事業)

SS事業は、売上高279億5百万円(前年度比10.7%増)、営業利益は高収益製品の販売増による原価率の低減等により38億87百万円(前年度比22.0%増)となりました。

防犯関連は、売上高182億27百万円(前年度比10.8%増)となりました。国内では大型重要施設向けソリューション販売が堅調に推移したものの、警備会社向けの販売は伸び悩みました。一方、海外ではインフレなどの影響を受けたものの、欧米で屋外用センサー及びデータセンター等の大型重要施設向けソリューション販売が順調に推移した結果、前年度実績を上回りました。

自動ドア関連は、売上高69億64百万円(前年度比5.9%増)となりました。国内では自動ドアセンサー及び客数情報カウントシステムの販売が堅調に推移しました。また、海外での自動ドアセンサーの販売は前年度並みで推移したものの、為替影響により前年度実績を上回りました。

社会・環境関連は、国内及び米国での車両検知センサーの販売が好調に推移した結果、売上高27億13百万円(前年度比25.3%増)となりました。

 

(IA事業)

IA事業は、売上高337億48百万円(前年度比13.5%増)、営業利益は37億64百万円(前年度比22.8%増)となりました。

FA関連は、国内では半導体関連向けの販売が堅調に推移しましたが、海外ではヨーロッパにおける顧客の在庫調整及び中国における設備投資需要の低迷の影響を受け、販売が低調に推移した結果、売上高は83億49百万円(前年度比12.2%減)となりました。

MVL関連は、国内では半導体、電気・電子部品向けの販売が伸び悩みましたが、海外では米国及びアジア向けの販売が順調に推移した結果、売上高は142億66百万円(前年度比4.2%増)となりました。

IPC関連は、半導体製造装置向けを中心とした製品の販売が順調に推移したことにより、売上高は49億26百万円(前年度比11.9%増)となりました。

 

 

MECT関連は、二次電池製造装置の納入が順調に進んだことから、売上高は62億6百万円(前年度比190.2%増)となりました。

 

(EMS事業)

EMS事業における外部顧客への売上高は、生産受託案件が順調に推移したことにより10億42百万円(前年度比23.1%増)となりました。営業損益はグループ内製品の製造量が減少した結果、1億20百万円の営業損失(前年度は1億14百万円の利益)となりました。

 

b.財政状態の状況

(資産)

当連結会計年度末における資産合計は728億50百万円となり、前連結会計年度末に比べ57億23百万円増加しました。

流動資産は580億25百万円となり、53億89百万円増加しました。これは主に、有価証券が5億5百万円減少したものの、現金及び預金が39億45百万円、売上高の増加により受取手形及び売掛金が17億72百万円それぞれ増加したことによるものであります。

固定資産は148億25百万円となり、3億34百万円増加しました。これは主に、償却等により顧客関連資産等の無形固定資産が4億86百万円減少したものの、建物及び構築物等の有形固定資産が7億85百万円増加したことによるものであります。

(負債)

当連結会計年度末における負債合計は227億66百万円となり、前連結会計年度末に比べ88百万円減少しました。これは主に、前受金等のその他流動負債並びに支払手形及び買掛金等の流動負債が18億33百万円増加したものの、長期借入金等の固定負債が19億21百万円減少したことによるものであります。

(純資産)

当連結会計年度末における純資産合計は500億84百万円となり、前連結会計年度末に比べ58億12百万円増加しました。これは主に、利益剰余金が42億64百万円、為替換算調整勘定等のその他の包括利益累計額が14億73百万円それぞれ増加したことによるものであります。

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度末と比較して39億45百万円増加し、210億65百万円となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況と主な要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果獲得した資金は76億96百万円(前年同期は21億13百万円の獲得)となりました。これは主に売上債権の増加(13億61百万円)、法人税等の支払(19億97百万円)により資金が減少したものの、税金等調整前当期純利益の確保(75億88百万円)により資金が増加したものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果使用した資金は8億67百万円(前年同期は7億82百万円の使用)となりました。これは主に有価証券並びに投資有価証券の売却及び償還による収入(9億13百万円)があったものの、有形固定資産の取得による支出(16億6百万円)、無形固定資産の取得による支出(1億75百万円)により資金が減少したものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果使用した資金は38億27百万円(前年同期は22億59百万円の使用)となりました。これは主に配当金の支払(14億27百万円)、長期借入金の返済による支出(18億31百万円)により資金が減少したものであります。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年1月1日

至 2024年12月31日)

対前年度比増減率(%)

SS事業(百万円)

25,105

10.7

IA事業(百万円)

30,659

8.6

EMS事業(百万円)

680

26.7

その他(百万円)

合計(百万円)

56,445

9.7

 

b.商品仕入実績

当連結会計年度の商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年1月1日

至 2024年12月31日)

対前年度比増減率(%)

SS事業(百万円)

885

6.7

IA事業(百万円)

2,283

1.2

EMS事業(百万円)

その他(百万円)

1

△46.2

合計(百万円)

3,169

2.7

 

c.受注実績

当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年1月1日

至 2024年12月31日)

対前年度比増減率(%)

SS事業(百万円)

211

△8.3

IA事業(百万円)

25,734

2.7

EMS事業(百万円)

871

36.1

その他(百万円)

91

△2.5

合計(百万円)

26,909

3.4

(注)当社グループ(当社及び連結子会社)の一部の事業では、見込み生産を行っております

 

d.販売実績

当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年1月1日

至 2024年12月31日)

対前年度比増減率(%)

SS事業(百万円)

27,905

10.7

IA事業(百万円)

33,748

13.5

EMS事業(百万円)

1,042

23.1

その他(百万円)

572

△2.4

合計(百万円)

63,269

12.2

(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。

2.最近2連結会計年度における主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は、当該割合が100分の10未満のため記載を省略しております。

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。連結財務諸表の作成にあたっては、連結会計年度末における資産・負債の報告数値及び偶発債務の開示並びに報告期間における収益・費用の報告数値に影響を与える見積りや仮定を使用する必要があるため、過去の実績や法制度の変更など様々な要因に基づき、見積り及び判断を行っております。

連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.当連結会計年度の経営成績等

売上高は632億69百万円となり、前連結会計年度に比べ68億96百万円増加しました。これは主に、産業用各種センサーがヨーロッパ顧客の在庫調整などにより低調であったものの、二次電池製造装置の納入や、ヨーロッパの大型重要施設向け警備ソリューション販売が伸長したことによるものです。

営業利益は71億21百万円となり、前連結会計年度に比べ12億22百万円増加しました。これは主に、販売費および一般管理費の売上高比率が1.5ポイント減少したことによるものであります。

親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に比べ10億81百万円増加し、56億89百万円となりました。

b.経営成績に重要な影響を与える要因について

経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3事業等のリスク」に記載のとおりです。

c.キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

イ.キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「第2 事業の状況 4経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。

ロ.資本の財源及び資金の流動性の分析

当社グループの運転資金需要のうち主なものは、原材料、製商品の仕入れのほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、事業拡大のための生産設備増強などの設備投資、新製品開発、製造のための金型投資、グループ基盤強化のためのM&A投資等であります。

当社グループは、事業運営上必要な資金の流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、大型の投資案件や長期運転資金につきましては、自己資金及び金融機関からの長期借入を基本に、調達規模や市場環境に応じて柔軟に調達手段を選択していく方針です。

なお、当連結会計年度末における借入金残高は88億94百万円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は210億65百万円となっております。

d.経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループは、連結売上高10%伸長、ROE10%以上を経営指標としております。当連結会計年度は、売上高12.2%増、ROE12.2%となり、経営指標を上回る業績結果となりました。

世界的な原材料や資源価格の高騰、欧米での高金利政策の継続など厳しい経営環境が継続しているものの、今後も「ソリューション提案事業」への移行を効果的に進め、各事業の成長と収益性向上に積極果敢に挑戦することにより、経営指標の達成に取り組んでまいります。

 

5【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

当社グループは、「見えないものを、見るしごと。」の実現を果たすために、世の中の様々な課題やニーズに対してその解決方法を提案し、顧客満足度の向上を目指して研究開発を進めております。

センシング技術に加え、照明技術やさまざまな要素技術を取り入れ、変化や状態を「見る」、見えないものを「視る」、観察し判断する「観る」を包含した「見る」技術を進化させ、多様化するお客様に価値ある提案を行い、新たなソリューションを創造してまいります。

当連結会計年度の研究開発費の総額は3,697百万円であり、対売上高比率は5.8%となっております。

 

<SS事業>

(1) 防犯関連

近年、世界的な地政学的リスクの高まりや、経済の不透明感が続く中、社会の安全・安心に対するニーズが引き続き高まっております。特に、サイバー攻撃やテロリズムの脅威の増加により、重要インフラ施設の防犯対策が一層強化される傾向にあります。また、都市部を中心とした犯罪の巧妙化や、個人情報の流出リスクの増大に伴い、一般住宅や商業施設においても高度な防犯対策が求められるようになっております。

このような状況のもと、各国ではデータセンター、発電所、政府機関などの重要施設のみならず、オフィスビル、商業施設、一般住宅においても、防犯カメラシステム、侵入警戒システム、遠隔監視システムなどの導入が進んでおります。当社は、こうした社会のニーズに対応し、より高度なセキュリティソリューションを提供するため、防犯カメラシステムとの親和性が高く、高信頼性・高精度の侵入検知技術を核とした製品やシステムを開発し、社会の安全・安心の確保に貢献してまいります。

当連結会計年度の主な成果は、次のとおりです。

 

① 屋外防犯センサー付きカメラ

一般住宅、工事現場、資材置き場、店舗・事業所などの屋外警戒を目的とした、センサーとカメラを融合した防犯カメラシステムを開発いたしました。屋外専用の高信頼性センサーにより、誤報を抑えながら侵入者を検知し、その決定的瞬間の画像を遠隔監視システムや警備会社に送信することで、不審者の動向を即時に把握し、迅速かつ適切な対応をサポートいたします。さらに、電池駆動と業界トップクラスの電波到達距離・安定性を実現しており、敷地の広い現場や障害物の多い環境でも安定した運用が可能です。ワイヤレス化により配線工事を大幅に簡略化したことで、施工時間とコストを削減するとともに、メンテナンス性の向上を実現いたしました。また、屋外環境に耐え得る堅牢設計を施しているため、雨天や粉塵などの影響を最小限に抑え、長期間にわたる安定稼働が可能となりました。

本製品は多様化するセキュリティニーズに対応し、敷地全体の防犯性を高める有効なソリューションとして期待されております。

 

② 防犯用センサーライト「LA-11PRO」シリーズ

当社は1987年に日本で初めてセンサーと照明を一体化した製品を開発し、警備会社や防犯・電気工事店向けのプロ仕様の製品として長く販売してまいりました。防犯意識の高まりにより、一般住宅にも防犯用センサーライトが広く普及しておりますが、より広範囲を照らす照明のニーズを受け、「LA-11PRO」を開発いたしました。本製品は侵入者を検知すると同時に高輝度LEDライトを点灯し、威嚇と視認性を両立させるセンサーライト一体型の防犯システムです。

当モデルは、従来モデルの設置しやすいサイズはそのままに、1.7倍の光量を実現いたしました。また、新たにシルバー色のモデルを追加したほか、人気の高い昼白色LEDを採用したことで、様々な建築物に調和するデザインとなっております。そして、省エネルギー性を重視し消費電力を抑えながらも、十分な照度を確保しております。既存の照明設備との置き換えも容易で、工事現場や資材置き場、店舗・事業所など様々な屋外環境に導入できる設計となっております。ネットワークカメラや各種警報装置との連動にも対応しており、侵入リスクの早期発見と抑止効果を同時に高めることができます。

屋外セキュリティの重要性が増す中、当社は今後も「LA-11PRO」シリーズを通じ、多様化する防犯ニーズに応えてまいります。

 

(2) 自動ドア関連

自動ドア関連におきましては、公共施設、オフィス、店舗や工場施設などで人々が安全・安心・快適に通行できる自動開閉扉用センサーを開発、販売しております。創業以来培ってきた独自のセンシング技術で業界最高水準の安全性と、あらゆる設置環境下でも安定したパフォーマンスを発揮すべく研究開発を行っております。

現在、国内におきましては、自動ドアセンサー分野は約5割、工場や倉庫の高速シャッターセンサー分野は約7割と、当社は高い市場シェアを保持し、海外におきましては、開口部周辺の安全要求が各地域の法令として定義されるなか、各地域特性に応じた製品を開発し、北米、欧州、アジア地域での市場シェアも順調に伸長しております。

また、自動ドア関連事業において進めている「モノ売り」から「コト売り」への事業拡大に関しても、システム開発やアプリ開発を積極的に進め、2025年には不動産ディベロッパー各社とスマートエントランスサービスの立ち上げを予定しております。

さらに、当社が得意とする光技術に加え、二酸化炭素排出量削減や新しい付加価値創造を実現するための技術開発を積極的に進め、より快適な社会環境実現に貢献してまいります。

当連結会計年度の主な成果は、次のとおりです。

 

① 日本市場向け自動ドア用非接触スイッチ 「Clean Wave™」OMH-100D

食品工場や冷蔵冷凍倉庫、クリーンルームなどの自動ドア向けの非接触スイッチ「Clean Wave™」OMH-100Dを2024年2月に発売し、同年10月にはグッドデザイン賞を受賞いたしました。本受賞を機に大手自動ドアメーカー・ディーラーやパネルメーカーでの採用が加速し、2025年は大幅な採用台数増加が期待できます。

同製品は0℃以下の厳しい温度環境下でも使用可能な耐環境性能及び薄型のデザインを特徴とし、これまでセンサーの設置が避けられてきた冷蔵冷凍倉庫などにおける自動ドアへの普及を目指してまいります。また今後は、自動ドア以外の用途の普及に加え、北米市場への拡販も目指してまいります。

 

② OMNICITY新サービス 「スマートエントランス」

2020年より、日本市場において自動ドアセンサーを活用した情報シェアリングサービス「OMNICITY(オムニシティ)※」を開始し、Bluetooth機能を搭載した自動ドアメディアセンサー「OAB-215シリーズ(以下、OAB-215)」を市場投入して順調にビジネスを拡大しております。また、OMNICITYの新しいサービスとして、マンション共用部におけるドア開閉のアクセスコントロールを自動ドアセンサーOAB-215とスマートフォンアプリで実現するシステム「スマートエントランス」を開発いたしました。

従来必要であったアクセスコントロール用の制御器や無線タグなどを使用せず、既存の自動ドアセンサーを、Bluetooth機能を搭載した自動ドアセンサーOAB-215に交換し、専用のスマートフォンアプリをダウンロードするだけでハンズフリー通行や宅配業者の置き配連携が可能になります。これにより、これまでにない低コストでスマートなマンションエントランスを簡単に実現できるシステム・サービスとなります。2025年からは国内大手ディベロッパーと連携して順次サービスを開始し、また北米、欧州、アジア市場においてもサービスを立ち上げる予定です。

※OMNICITY:出入り口に設置された自動ドアセンサーにBluetooth機能を搭載することで、通行者に商品情報やクーポンの配信、病院やホテルなどで自動チェックイン・アウトが可能となるプラットフォーム

 

③ 客数情報カウントシステム

客数情報カウントシステムの分野では、クラウドサービスのプラットフォーム「パッサークラウド(PASSER-Cloud)」におけるデータベース拡張、他システムとのデータ連携、AI解析、セキュリティ対策など基盤整備を進めてまいりました。その結果、店舗マネジメントでの集客トレンド把握・分析などの客数指標(客数・属性・滞在時間・購買データなど)を、より便利に安全に利用できるサービスとして高評価を受け、契約数が増加いたしました。

また、ビーコンを内蔵し、無線通信で位置を特定する人数カウントセンサー「パッサービーコン」は、店舗来店時のクーポン自動発行などの販促や、顧客の回遊性を高めるデジタルマーケティングに採用されております。店舗内のみならず、店舗周辺の人流分析も含めた広域のマーケティング支援サービスとして、継続的にコンテンツ開発を進めております。

今後はAI技術の開発・活用を進めることで、センシングの検知性能を向上させ、様々な施設・場所における人流計測の精度改善に取り組んでまいります。さらに、付加価値の高い情報提供を実現するため、計測データの集計解析にクラウドを活用し、「店舗DXニーズ」に対応したソリューションの提供を拡充してまいります。

 

(3) 社会・環境関連

社会・環境関連におきましては、駐車場などで車を検知する車両検知用センサーと、液体の色や濁りを素早く正確に測定する水質計測用センサーの開発を行っております。

車両検知用センサーの分野では、「人」を無視(キャンセル)し、車のみを確実に検出できるセンシング技術が求められております。この分野では長年、特殊な電線を地中に埋設する「ループコイルセンサー」が世界に普及し、駐車場業界における標準となっており、施工時の作業コストや環境への負荷が大きい点が指摘されております。その課題を解決すべく、当社は業界でいち早く、マイクロウェーブを活用した高精度かつ地上設置が可能なエリアセンサーを開発し、全世界へ訴求・提案を進めてまいりました。その結果、世界的にループコイルセンサーからエリアセンサーへの転換が加速しつつあります。

水質計測用センサーの分野では、安全・品質・衛生管理の特殊な計測ニーズに対応した製品の開発を行っており、DXを活用した計測ニーズに対応し、顧客の意思決定の根拠となる高精度なデータを提供できる様々なセンサー製品の開発に取り組んでまいります。

当連結会計年度の主な成果は、次のとおりです。

 

① 車両検知用センサー「OVS-02GTシリーズ」

2017年に発売したOVS-01シリーズの高付加価値モデルを開発いたしました。市場要求が高かった「人キャンセル」性能の大幅向上、検知エリアの拡大、スマートフォンアプリによるきめ細かな機器設定や施工性の向上など様々な顧客要望を取り入れた結果、海外ではオフィスや集合住宅向けセキュリティゲートの開閉用途、国内ではコインパーキング用途向けで好評いただき、事業を拡大しております。

 

② 水質モニタリングサービス 「WATER it」

計測データを含むソリューションを提供する簡易水質測定システム「WATER it」の展開に引き続き注力しております。本サービスは、「水の未来をつくる」をコンセプトに、いつでも、どこでも水環境を把握できる水質管理のDXとして現場の負担を大幅に削減できるソリューションです。2022年のリリース以降、順調にご利用件数が増加しております。

また、昨今の社会を取り巻く様々な環境の変化や気候変動などにより、自然災害のリスクが高まっております。このような中、当連結会計年度には、遠隔モニタリングサービスのひとつとして、当社の環境防災機器も「WATER it」に接続することが可能となりました。これにより、冠水状況や設備の異常監視のモニタリングも水質測定と同じシステムで利用できるワンストップ化を実現いたしました。

 

<IA事業>

(1) FA関連

FA関連におきましては、さまざまな製造業の工場における製造ラインの自動化・省力化に不可欠なFA用センサー(産業用センサー)の製品開発、研究に取り組んでおり、可視光や赤外光を用いた光電センサーのみならず、距離を計測する変位センサー、カメラを用いた画像センサー、LED照明機器、非接触温度計などのセンサー及び産業IoT(IIoT)※、環境の構築に貢献するIO-Link※製品など、幅広く開発しております。

当連結会計年度の主な成果は、次のとおりです。

※産業IoT(IIoT):Industrial Internet of Thingsの略で、産業用機械や装置・設備・システムなどをネットワークで相互接続し、現場作業の効率化や見える化などを実現するもの

※IO-Link:センサーと制御システムの間で各種データ交換を行う通信技術のこと。設備の予知保全などに役立つ

 

① 高輝度センシングバー照明 「OPB-X 幅15mmサイズ」

従来からの独自技術であるセンシング照明を進化させた、新技術「FALUX sensing +」を搭載したセンシングLED照明シリーズのOPB-Xにおいて、従来の幅30mmに加え、幅15mmサイズを発売いたしました。多機能LED照明コントローラーOPPXシリーズと接続することでモニタリング・フィードバック制御に加え、照明個体の識別が可能で、個体ごとに異なる累積点灯時間などのデータを参照でき、予知保全に利用できます。

さらに、通常は照明延長ケーブルを使用すると、ケーブルによる電圧降下の影響で照明の明るさが低下しますが、FALUX sensing +に対応したOPB-Xシリーズは、上記OPPXシリーズに接続することで、この課題を解決する新しい調光方式L-INT※モードで点灯させることができます。

※L-INT:FALUX sensing +対応照明の内部で明るさを変更する、当社独自の調光方式です。

 

② IO-Link対応非接触温度計「TI-Sシリーズ」

業界初の同軸リングレーザーポインタを内蔵し、測定ポイントが一目瞭然となる非接触温度計を販売いたしました。これにより、暗く狭い場所でも、ポインタを確認しながら簡単に位置調整を行うことが可能となりました。

また、非接触温度計としては業界最高レベルの高精度測定(±1℃)を実現しており、シビアな測定要求にも対応可能です。さらに、応答時間50ms以下の高速応答にも対応し、ライン上で移動するワーク(測定対象となる物体)の温度測定などにも有効となっております。

 

③ レーザー変位センサー 「CD2Hシリーズ」RS485シリアル通信インターフェースモデル追加

操作性に優れた高精度小型レーザー変位センサーCD2Hシリーズに、産業分野で標準的なRS485シリアル通信インターフェースモデルを追加いたしました。既存モデルと同じくイメージセンサー「ATMOS」を搭載し、樹脂筐体ながらクラス最高レベルの測定精度と高速化を実現しております。業界で一般的なRS485通信に対応することで、現場の設備を大きく変更することなく高精度な変位センサーを導入することが可能となりました。

 

④ IO-Link対応高機能デジタルファイバーセンサー「D4RFシリーズ」赤外光源タイプ追加

超高速応答(16μs)、高機能デジタルファイバーセンサーD4RFシリーズに新たな機種を追加いたしました。

水分やフィルムに吸収されやすい性質を持つ1450nmの赤外光源を活用しているため、一般的な赤色光源や1,000nm以下の赤外光では検出が難しい透明体内での液体有無検知やフィルムなどの重なり検知に対応しております。同シリーズの高速応答やOLEDディスプレイ※による可読性、操作性も引き継いでおります。

※OLEDディスプレイ:Organic Electro light Luminescence Diode (有機ELダイオード)ディスプレイ

 

(2) MVL関連

MVL関連におきましては、お客様の困り事を解決するために光を軸としたソリューション提案を磨くことで、お客様の検査品質向上に努めてまいりました。さらに、昨今の人手不足改善へのご要望にお応えするため、カメラ、レンズ、画像処理ソフト、装置、産業ロボットなどを活用した検査・計測のトータルソリューションへ活動の幅を広げております。

そして、高度化・多様化しているお客様の課題を解決すべく、従来からの照明や関連機器の高性能化・高機能化だけではなく、生成AIなどの先進技術の積極的な利用や、光学・制御に関する研究開発、当社グループ企業間の技術連携によるシナジー効果の発現にも力を入れております。

当連結会計年度の主な成果は、次のとおりです。

 

① レーザーダイオードを活用した超高出力光源製品のさらなる強化

半導体、電子部品などの製造工程で行う画像処理検査では、一部の製造ラインにて強い明るさを出力するキセノンフラッシュ光源が使用されております。しかしこのキセノンフラッシュ光源には、ランプ寿命によるランプ交換の手間や、発光抜け(信号入力時に発光しなくなる現象)が起こりやすいこと、ジッター(発光のふらつき)が発生するなどの課題があり、これらを改善した製品開発へのニーズは強く、多くのご要望をいただいておりました。

当社はこれらのご要望に対応すべく、キセノンフラッシュ光源に代わりレーザーダイオードを活用した光源の開発に取り組んでまいりました。2018年に「PFBR-600SW シリーズ」を、2022年に後継機を開発・発売し、小型電子部品などの高速かつ高精細画像が必要とされる製造ラインで多数採用されております。

当連結会計年度には、さらなる明るさを実現した超高出力光源製品「PFBR-2400SW-LL-XF」を開発・発売いたしました。「PFBR-2400SW-LL-XF」は4灯のレーザーダイオード光源を同時に発光させ、光出力を一つに集約することで明るさ1億5千万ルクス※を実現いたしました。さらに、繰り返し発光周期を最短250kHzまで高速化することが可能となり、取得画像のぶれの低減を実現いたしました。

当社はレーザーダイオードを活用した高出力技術を成長させることで、半導体、電子部品などの検査用光源としてシェア拡大を目指してまいります。

※調光最大、出射側の結束系φ10、全長1,000㎜のストレートガイド装着時

 

② 3次元計測技術「位相シフト法」の画像検査ソリューションへの展開

3次元計測の技術として用いられてきた位相シフト法を外観検査に用いる技術開発を行い、プロトタイプ「二軸位相シフト照明」を発表いたしました。

凹凸などの高さ方向に高い感度を持っているため、浅い打痕やヒケ(成形過程の収縮で発生する表面のくぼみ)の観察に有効であり、自動車のボディやパーツ、鋼材などの大型なワークを外観検査する手法として期待を寄せております。さらに、一般的な位相シフト照明と異なり、縦縞、横縞の二軸方向で点灯させることができるため、ワークの傷に方向性がある場合も検査の精度損失を軽減することができます。

お客様の幅広い検査ニーズに対応できるよう、発光面サイズや形状、縞パターンの幅などをカスタマイズでき、エリアカメラとラインカメラ双方に対応が可能となっております。

 

(3) IPC関連

IPC関連におきましては、様々な産業分野向けとして、高い品質と長期供給性を追求した組み込みボード製品の製造や、生産ライン、社会インフラ向けのシステムを構築し、CPUボード、I/Oボード、コントローラー装置など組み込み用コンピュータ構築に必要なプラットフォーム提供からアプリケーション・システムの構築、さらには最新のセンシングや制御装置の提供など、幅広くお客様のニーズに対応しております。

 

① 無線環境モニタリングシステムの研究

2023年11月より、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)の高度通信・放送研究開発委託研究の公募で採択された「無線環境モニタリングシステムの研究開発」を行っております。製造現場や医療現場では、無線機器の活用が進む一方で、無線通信トラブル発生時に原因特定に時間がかかり、復旧が遅れる事例が多く見られることが分かってまいりました。

本研究では、現場で利用されている無線通信の潜在的な課題を見える化し、ユーザーの無線通信に関するスキルや理解度に合わせた行動示唆を行い、無線通信トラブルを未然に回避するシステムの研究を行っております。

当連結会計年度では、実際の製造現場で無線通信トラブルが発生した際の状況を把握するため、状況分析に必要なデータの種類及びデータ収集の間隔を調査・研究しました。今年度は、より適切な無線通信環境の実現を目指し、無線センサーの設置台数・設置場所の評価検証を行います。

また、ネットワーク監視の専門家に利用されるツールではなく、作業者への自動的かつリアルタイムな行動示唆ができるツールの研究開発を進めてまいります。

 

② 監視カメラの業界規格に対応した追尾装置の研究開発

監視カメラの業界規格(ONVIFなど)に対応した次世代追尾装置の研究開発を進めております。本装置の開発に最新のAI技術と映像解析技術を活用したことにより、監視カメラが捉えた物体の自動追跡が可能となりました。また、既存の監視ソフトウェア(例:VMS)をはじめとした様々な監視カメラ製品との高い互換性を実現したため、今後、幅広い用途での活用が期待されております。

 

(4) MECT関連

MECT関連におきましては、電動自動車用などの二次電池製造装置や、電気・電子・医薬品などの多様な産業分野向け自動化装置及び画像処理検査装置・非接触3次元形状測定機などを開発・製造・販売しております。高度なメカトロ技術※や画像処理技術により、ものづくりの現場の生産性向上と品質向上に貢献しております。

当連結会計年度の主な成果は、次のとおりです。

※メカトロ技術:メカトロニクス技術の略称で、機械工学(メカニクス)と電子工学(エレクトロニクス)を融合させた技術分野のこと

 

① 5軸構造ダブルレーザー3次元形状測定機「DMS-800」

従来の、接触針がワークに直接触れることで測定を行う「接触式3次元測定機」とは異なり、レーザー光をワークに照射し、その反射光を観察することで、ワークに接触することなく形状を高速かつ高精度で測定できる装置を開発いたしました。

近年、自動車関連部品や様々な精密機器などに使用される鋳造品、加工品、成型品などで、接触針が入らない複雑な形状のワークが増加しており、正確な測定が困難になる課題が生じております。こうした課題に対し、当社グループで培ってきたレーザー光を用いた光測定方式を採用し、高精度かつ高速に形状測定を行う装置を開発いたしました。また当社のもう一つの強みであるメカトロ技術を活かし、機械加工装置と同じ5軸構造を実現することで、複雑な形状のワークに対しても正確な測定を可能にしました。さらに光測定方式の弱点でもある影(死角)ができる点に対して「ダブルレーザー」を搭載することで解決を図っております。

 

② 卓上型3次元形状測定機「新 3D-Eyeスキャナー」

試験開発や製造現場における様々な形状測定のニーズに対し、光測定方式を用いて顧客が抱える課題を解決する、卓上型非接触3次元形状測定機を開発いたしました。持ち運びが可能な卓上型でありながら、XYZ軸の調整が可能なステージを標準装備しており、高さ・面積・体積の測定を高精度に行うことができます。また、スキャンしたデータに含まれるノイズ成分を最小限に抑え、より精度の高い計測結果を導き出すことができる「サブラインスキャンテクノロジー(特許出願中)」を搭載するなど、当社グループが過去に発売した従来品から大きく進化しております。

今後は、金属加工部品、鋳造部品、樹脂成型部品製造など様々な分野に、これまで進めてきた外観検査ソリューション事業と合わせ、非接触3次元形状測定機事業を拡大展開してまいります。