第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1) 会社の経営の基本方針

当社グループは、お客様に喜ばれる商品の提供を通じて社会の発展に貢献するため、技術開発力、マーケティング力の向上に努め、社会環境の変化に対応できる体制を構築し、安定した永続的な発展を目指しております。

 

(2) 目標とする経営指標

当社グループは、厳しい経済情勢が続く中、グローバルビジネス及びソリューションビジネスの拡大と経費節減に取り組んでおります。具体的には、国際競争力のある製品開発及びお客様の課題解決に役立つ製品開発を進め、売上高の拡大と経営効率の向上に努めてまいります。このような中で、当社グループは、「連結売上高」「連結営業利益」を重要な経営指標と考えております。

 

(3) 経営環境、中長期的な会社の経営戦略並びに優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

当社グループは、電気計測器等の製造、販売を行っているものであり、セグメントは単一であります。したがいまして、セグメントごとに経営環境、中長期的な会社の経営戦略並びに優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題の内容は開示しておりません。

当社グループの営業収入における重要な部分を占める電気計測器等の需要は、当社グループが製品を販売している国または地域経済の変化による顧客の設備投資動向や購買政策の影響を受ける場合があります。また、最終顧客の設備投資計画により第4四半期の売上高が他の四半期より大きくなる傾向があります。したがいまして、当社グループが製品を販売している主要市場における景気後退及びそれに伴う需要の縮小は、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

当連結会計年度の経営環境につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」に記載のとおりであります。

今後の見通しにつきましては、物価上昇、中国経済の減速、ウクライナや中東地域をめぐる情勢及び世界的な金融引き締めに伴う影響などにより、当社グループを取り巻く経営環境は依然として不確実性の高い状況が続くものと推測しております。

一方で、日本を含む主要国が脱炭素社会の実現を目指す中、自動車のEV関連投資やグリーン化政策などのSDGs関連市場では積極的な投資も期待されます。 

このような状況の下、当社グループが継続的に発展していくために、「私たち菊水は自由で豊かな発想と行動力で“創発”し社会と共に進化します」という経営ビジョンを掲げ、「グローバルの進化」「ソリューションの深化」「事業ドメインの新化」「経営基盤の強化」の実践を盛り込んだ経営計画に沿って、以下の施策を実施してまいります。

  ①  技術革新に伴う製品ライフサイクルの短縮化が一段と加速される市場環境の中で多様化するお客様のニーズや課題に対応すべく、提案型営業体制の構築を進めると共に、多彩な応用展開が可能な新製品開発と原価低減に引き続き努めてまいります。

  ②  汎用電源・安全関連試験機器市場では、市場の成熟化に加え、新興国企業の台頭等による価格競争が激化しつつある中、製品の差別化やグローバルな視点から生産拠点及び開発設計拠点の最適化を図ることにより、製品競争力の強化に努めてまいります。

 

  ③  営業活動では、航空宇宙、電池、自動車のCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)関連、サーバー・ICT(情報通信技術)の4つの市場を重点市場として、国内外の顧客ニーズに合わせたソリューションビジネスの積極的展開、Webマーケティングの活用によるブランドプレゼンス向上を進めてまいります。また、営業DXを推進しマーケティングの強化及びユーザーリレーションの強化を図ってまいります。

  ④  複雑化する経営環境の中で、戦略的かつ積極的に経営資源を投入し、効率的で健全な企業経営を目指すことに努めております。さらに、IR活動の推進に努めて、当社グループの企業価値向上に取り組むと共に、積極的な情報開示で透明性の高い経営にも注力してまいります。

  ⑤  お客様満足に向けた品質の確保はもとより、「環境指向による企業価値の向上」を堅持し、設計から部品調達、製造、販売、サービス、廃棄までの全てのステージで環境影響を考慮した事業活動を展開し、全てのステークホルダーの皆様に安心・安全を提供いたします。

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) ガバナンス

当社では、グループ全体の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上の観点からサステナビリティを巡る取り組みについての基本的な方針を取締役会にて定め、またその運用は取締役会が主導しております。

当社グループの気候変動などの地球環境問題への取り組みといたしましては、事業活動全域でのCO2の排出量削減、廃棄物の削減とリサイクル化の推進、及び環境に配慮した部品調達と製品の供給を通じて、環境負荷の低減に努めております。具体的には廃棄物の削減に関しましては、事業の規模・景気等に左右される傾向にあるため、廃棄物の削減を睨みながら、リサイクル可能な品目を選定し、リサイクル率の向上に取り組んでおります。部品調達と製品の供給に関しましては、各種の環境規制に対応し、お客様に安全な製品をご提供するため、グリーン調達基準を定め、供給者に環境の取り組みの協力を要請すると共に、当社製品に含有する有害物質排除に取り組んでおります。また、製品開発においても、デザインレビュー時に環境アセスメントを実施し、製品の環境負荷低減に取り組んでおります。

以上の様に、ステークホルダーとの友好関係を保ちつつ持続可能な社会の実現に向けた活動を推進する体制を構築しております。

 

(2) リスク管理

事業におけるリスクと機会は、マネジメントシステム(品質:QMS、環境:EMS)にて課題やステークホルダーからのニーズ、事業における環境側面の影響評価などを総合して管理し、グループ全体で取組んでおります。

また、グループ全体のリスク管理の基本方針及び管理体制を「リスクマネジメント基本規程」において定め、その基本方針及び管理体制に基づき、代表取締役社長を委員長とするリスクマネジメント委員会を原則として年4回及び臨時に開催しており、事業を取り巻く様々なリスクに対して適切な管理を行い、リスクの未然防止を図っております。

 

(3) 人的資本に関する戦略と指標及び目標

   戦略

当社では、グループ全体の経営力強化と持続的な成長を確保するために、多様な視点や考え方を取り入れることを重視し、性別・国籍・中途採用者を問わず多様な人材の活用を推進しております。

人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針につきましては、社会的に弱い立場にある人を含む全てのステークホルダーの人権を尊重すると共に、多様な人材を活かし、その能力が最大限発揮できる機会を提供しております。また、社内環境整備に関する方針につきましては、全ての従業員の健康と安全に配慮し、適切な労働環境を提供すると共に、従業員の個性を尊重した、公平で適切な雇用環境を維持しております。

 

 

   指標及び目標

採用や入社後の育成に男女差を設けておりませんが、当社が属する電気計測器業界の特性上、開発・設計スキルを求める傾向が強く、結果的に男性の雇用が多くなっております。今後につきましては女性の雇用に一層力を入れてまいります。なお、業務上必要とされる語学に通じている人材については、国籍を問わず採用し、今後もこの施策を継続いたします。

中途採用者の管理職への登用につきましては、既に中途採用者が管理職の中で相当程度の割合を占めており、今後もこの施策を継続いたします。

女性・中途採用者につきましては、ニーズに沿った採用を行っているため、数値目標を設定しておりませんが、現在の水準を維持し向上に努めます。

なお、当社及び主要な連結子会社(菊水電子工業株式会社、菊水エムズ株式会社)の実績は以下のとおりであります。以下の(%)は従業員総数に対する割合であります。

 2024年3月期

  従業員総数 283名

女性    48名 (17.0%)

管理職   62名 (21.9%)(うち中途採用者 33名)

また、育児、介護等の環境変化における働き方を模索し、継続的な雇用を実現する環境整備に努めており、今後もこの施策を継続いたします。

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の翌期以降の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があるリスクのうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼすと考えられる主要なリスクは、以下のとおりであります。当社は、グループ全体のリスク管理の基本方針及び管理体制を「リスクマネジメント基本規程」において定め、その基本方針及び管理体制に基づき、代表取締役社長を委員長とするリスクマネジメント委員会を原則として年4回及び臨時に開催しており、事業を取り巻く様々なリスクに対して適切な管理を行い、リスクの未然防止を図っております。

また、主要なリスクとその対応策については、経営方針・経営戦略との関連性も考慮して記述しております。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 特定の市場に依存しているリスク

・リスクが顕在化した場合に経営成績等に与える影響の内容、当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期

当社グループは、電気計測器等の製造、販売を行っており、主として電気、電子機器・装置の研究開発や生産活動に関わる様々な機器、装置の評価・試験・製造設備等として使用されるものであります。これら製品の販売の多くは、販売代理店を経由して行われております。

当社グループの営業収入における重要な部分を占める電気計測器等の需要は、当社グループが製品を販売している国または地域経済の変化による顧客の設備投資動向や購買政策の影響を受ける場合があります。また、最終顧客の設備投資計画により第4四半期の売上高が他の四半期より大きくなる傾向があります。当連結会計年度の売上高のうち、当第4四半期連結会計期間の売上高は38億4千2百万円(30.8%)であり、その大半を菊水電子工業株式会社が占めております。したがいまして、当社グループが製品を販売している主要市場における景気後退及びそれに伴う需要の縮小は、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期については、経済状況や主要市場における需要の変化により常に起こりうるものとして認識しております。

・リスクへの対応策

当社グループでは、グローバルビジネス及びソリューションビジネスの拡大に取り組んでおり、航空宇宙、電池、自動車のCASE関連、サーバー・ICTの4つの市場を重点市場として、国内外の顧客ニーズに合わせたソリューションビジネスの積極的展開、Webマーケティングの活用によるブランドプレゼンス向上を進めてまいります。また、営業DXを推進しマーケティングの強化及びユーザーリレーションの強化を図ってまいります。

 

 

(2) 技術力の保持

・リスクが顕在化した場合に経営成績等に与える影響の内容、当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期

当社グループは、市場ニーズに的確に対応した魅力ある新製品を開発し続けるよう日々努力しておりますが、当社グループの属する電気計測器業界は、顧客ニーズの多様化や急速な変化への対応から、新製品の開発と販売プロセスは、複雑かつ不確実なものとなっており、当社グループが魅力ある新製品を提供するための技術力を持続的に維持することができない場合には、業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期については、競合他社を含めた電気計測器業界の急速な技術の進歩により常に起こりうるものと認識しております。

・リスクへの対応策

当社グループでは、製品開発ロードマップに従い、新製品開発に必要な先行技術開発に重点を置いた活動を推進し、 顧客ニーズや市場変化等を分析したうえで、製品化を行っております。また技術開発力向上のため産学共同開発や他社との共同開発にも取り組んでおります。

 

(3) 為替レートの変動

・リスクが顕在化した場合に経営成績等に与える影響の内容、当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期

当社グループは、「グローバルの進化」の方針の下、海外売上高の拡大や海外生産委託の拡充に注力してまいりましたので、為替が大幅に変動した場合には、当社グループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

当該リスクが顕在化する時期と程度については、米中の貿易摩擦やロシアのウクライナ侵攻、台湾海峡危機等世界情勢の変化や地政学的リスク等により常に起こりうるものと認識しております。

・リスクへの対応策

当社グループでは、外貨建てでの海外売上と米国・中国・台湾等海外からの製商品や部品を外貨建てにて仕入れております。これら外貨建てでの売上、仕入双方を行うことにより為替の変動を軽減しております。

 

(4) 優秀人材の確保及び人材育成

・リスクが顕在化した場合に経営成績等に与える影響の内容、当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期

当社グループの将来の成長と成功は、有能なエンジニアやキーマンへ依存する部分が大きく、高い技術力を持ったエンジニアの確保やキーマンの新たな育成が重要であり、その確保・育成ができなかった場合、当社グループの業績と財務状況及び将来の成長に影響が及ぶ可能性があります。

当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期については、少子高齢化の進行と労働人口の減少等により、企業の人材不足感は高水準となっており、常に起こりうるものと認識しております。

・リスクへの対応策

当社グループでは、「将来を担う人材の確保」「グローバル化に合わせた人事制度の見直し」「従業員教育」の 3つの目標を掲げ、年間を通じた採用活動、外国人雇用や高い技術力を持った人材の確保に対応した人事制度の整備及び各種教育・研修の実施等を通じた人材の育成に取り組んでおります。

 

(5) 海外での事業展開

・リスクが顕在化した場合に経営成績等に与える影響の内容、当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期

当社グループは、中国上海市、米国カリフォルニア州及びドイツデュッセルドルフ市において現地法人を設立し、事業を展開しておりますが、現地の法的規制、慣習、国際情勢の変化等に起因する事態が発生したような場合、当社グループの業績と財務状況に影響が及ぶ可能性があります。

当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期については、各国の法改正、国際情勢の変化等により、常に起こりうるものと認識しております。

・リスクへの対応策

当社グループでは、海外子会社に対して、当社の取締役が役員を兼務し、また適切な人材を出向させるとともに、定期的及び必要に応じてWeb会議を開催し、各国のリスク情報を共有することによって、その対策を協議し、当該対策を実施しております。

 

 

(6) 知的財産権に関する訴訟リスク

・リスクが顕在化した場合に経営成績等に与える影響の内容、当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期

現時点において当社グループは、第三者の知的財産権の侵害は存在していないと認識しておりますが、今後も知的財産権の侵害を理由とする訴訟やクレームが提起されないという保証はなく、そのような事態が発生した場合には、当社グループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

当該リスクが顕在化する可能性は低いものの、万一、多額の損害賠償を請求されるような訴訟を起こされた場合には、大きな問題に発展する可能性のあるものと認識しております。

・リスクへの対応策

当社グループでは、第三者の知的財産権侵害の訴訟を未然に防止するため、設計・試作等開発プロセスの中で、特許の有無について検討し、先行技術や特許抵触の調査を行っております。また、実際の特許等出願時には特許事務所を通じた特許調査を行っております。

 

(7) 製品の欠陥

・リスクが顕在化した場合に経営成績等に与える影響の内容、当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期

当社グループは、品質保証の国際規格に基づき製品を製造しておりますが、万一製品の欠陥が発生した場合には、多額の対応コストを要し、それと共に当社グループに対する信頼を失墜させることから、当社グループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、製品の品質管理体制には万全を期しており、当該リスクが顕在化する可能性は低いものの、万一、重大な製品の欠陥が発生した場合には、大きな問題に発展する可能性のあるものと認識しております

・リスクへの対応策 

当社グループでは、品質保証の国際管理基準に従い「品質マニュアル」を制定し、当社グループが供給する製品及びサービスに係る品質マネジメントシステムについて規定しており、製品の企画・開発から部品調達、製造、販売、サービスまでの全ステージで製品の欠陥を防止するための取り組みを継続して実施するとともに、定期的な内部監査と逐次品質保証検査を実施しております。

また、品質に関する不具合が発生した場合においては、「不具合処理規定」に基づき、重要度、影響度及び緊急性を判断し、さらに品質本部担当取締役がPL法に関連すると思われる市場不具合の情報を受けた場合には、PL対策委員会を設置してその事故の円滑な処理に当たることとしております。

 

(8) 自然災害、感染症蔓延による影響

・リスクが顕在化した場合に経営成績等に与える影響の内容、当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期

大規模な災害や感染症の蔓延が発生した場合には、当社グループでは適切な対応に努めますが、事業活動の制限や生産性の低下、また部品供給の停滞による生産活動の遅延や販売機会損失等が発生し、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、大規模な災害や感染症蔓延は、予期せず起こりうるものであり、万一、発生した場合には、大きな問題となる可能性のあるものと認識しております。

・リスクへの対応策

当社グループでは、「危機管理基本規程」に基づき、自社の社会的な存在意義に鑑み、「人の身体生命の安全確保を最優先」と位置付け、危機に対処し、危機の収束に向けて全役職員が一丸となって損失の最小化、損害の復旧、再発防止に取り組んでおります。また、全役職員には、危機を「起こりうるもの」と考え、「常に危機に対して備える姿勢を保つ」ことを意識させております。当該リスクが顕在化した緊急事態の際には、代表取締役社長を最高責任者とする「緊急時対策本部」を設置し、発生原因、緊急措置、被害、経過等の状況を可能な限り迅速かつ詳細に把握したうえで、対応方針を協議し決定するなど、大規模災害や感染症蔓延への対応を図ることとしております。

 

(9) 情報セキュリティ上のリスク

・リスクが顕在化した場合に経営成績等に与える影響の内容、当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期

当社グループは、クラウドに代表されるITの発展に伴い積極的にIT化を推進しており、情報の重要性が増大しております。しかしその一方で、情報流出やコンピュータウイルス感染等の情報に関する障害が生じた際の影響も大きくなりつつあり、状況によっては当社グループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、情報セキュリティには万全を期しており、当該リスクが顕在化する可能性は低いものの、万一、情報流出やコンピュータウイルス感染等情報に関するリスクが顕在化した場合には、当社グループの信用が失墜し、大きな問題に発展する可能性のあるものと認識しております。

・リスクへの対応策

当社グループでは、「情報管理規定」に基づき、ファイヤーウォール等適切な機材の設置や社内規程の整備、またIT教育等の対策を講じております。

 

(10)環境に関するリスク

・リスクが顕在化した場合に経営成績等に与える影響の内容、当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期

温室効果ガス排出量の削減、再生可能エネルギーへの転換などの気候変動への対応が遅れた場合や、廃棄物排 出量の削減、資源循環の取り組み、化学物質の管理などが適切に行われなかった場合、当社グループに対する社会的な信用低下を招く可能性があります。

・リスクへの対応策

当社グループは、「サステナビリティ方針」の下、「気候変動などの地球環境問題への配慮」の重点領域において、事業活動全域でのCO2の排出量削減、廃棄物の削減とリサイクル化の推進、及び環境に配慮した調達と製品の供給を通じて、環境負荷の低減に取り組んでおります。

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

①  財政状態及び経営成績の状況

a 経営成績

当連結会計年度における我が国経済は、新型コロナウイルス感染症の5類感染症への移行に伴い、経済活動の正常化が進み、景気は一部に足踏みが見られるものの緩やかな回復基調が続いております。しかしながら、ウクライナや中東地域を巡る情勢不安、エネルギー価格や原材料価格の高騰、更に円安による物価上昇に加え、中国経済の減速及び世界的な金融引き締めの影響などによる海外景気の下振れリスク等の要因により、依然として先行き不透明な状況が続いております。

一方、当社グループが属する電気計測器業界においては、中国の市況低迷による設備投資抑制の動きや半導体関連市場における在庫調整の影響がありましたが、世界各国でのカーボンニュートラル、SDGs達成に向けた取り組み等により、自動車関連市場、電池関連市場など、グローバルで需要の回復が進んでおります。

このような状況の中、当社グループは、グローバル需要を捉えるべく、重点市場である航空宇宙、電池、自動車のCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)、サーバー・ICT(情報通信技術)関連市場、その中でも特にカーボンニュートラルや電動化を進めている分野に注力し、顧客ニーズに合わせたソリューション提案営業を積極的に展開し、新製品である双方向大容量直流電源PXBシリーズを中心に展示会への出展やWebを活用した販売促進活動等を進めるなど売上拡大に努めるとともに、棚卸資産の圧縮や原価低減にも努力を重ねてまいりました。

この結果、当連結会計年度の売上高は、124億8千8百万円(前年同期比3.5%増)となり、2期連続で過去最高を更新いたしました。

損益面におきましては、売上高が増加したこと、並びに依然として原材料の長納期化や円安の影響はあるものの、納期対応のための部品調達コストや設備投資需要の変動に伴う海外製品の仕入が減少したこと、売上増加に伴い人件費等固定費の回収が進んだことなどにより、営業利益18億5千3百万円(前年同期比21.0%増)、経常利益19億1千9百万円(前年同期比25.6%増)、親会社株主に帰属する当期純利益13億円(前年同期比21.3%増)となり、各段階利益とも連結会計年度における過去最高を更新いたしました。

 

当社グループは、電気計測器等の製造、販売を行っているものであり、セグメントは単一であります。したがいまして、セグメントごとに経営成績の状況は開示しておりません。

 

なお、当社グループにおける営業品目の製品群別売上の概況は、次のとおりであります。

 

《電子計測器群》

電子計測器群では、航空機器用電子機器の測定器は、動きが見られ、好調に推移いたしました。安全関連試験機器は、EV(電気自動車)用バッテリの耐電圧・絶縁抵抗試験器として電池関連市場及びパワー半導体関連市場向けに動きが見られましたが、中国における電池関連市場の設備投資が抑制されたことにより、低調に推移いたしました。

以上の結果、売上高は25億4千7百万円(前年同期比21.1%減)となりました。

 

《電源機器群》

電源機器群では、直流電源は、宇宙産業市場や車載関連市場及びエネルギー関連市場への評価試験や製造設備用として、新製品の拡販効果等もあり、好調に推移いたしました。交流電源は、車載関連市場及びエネルギー関連市場への評価試験や製造設備用として好調に推移いたしました。電子負荷装置は、電子部品関連市場、EV関連市場及びエネルギー関連市場への評価試験用として動きが見られました。

以上の結果、売上高は94億6千4百万円(前年同期比13.0%増)となりました。

 

修理・校正サービス等

修理・校正サービス等につきましては、特記すべき事項はありません。

当該修理・校正サービス等の売上高は、4億7千6百万円(前年同期比3.8%増)となりました。

 

上記に含まれる海外市場の売上の概況は以下のとおりであります。

 

《海外市場》

米国では、IT(情報技術)関連市場及び半導体関連市場において設備投資抑制の動きが見られるものの、宇宙産業市場及び車載関連市場への直流電源並びにグリーンエネルギー政策により需要が拡大しているエネルギー関連市場への交流電源や電子負荷装置がそれぞれ好調に推移いたしました。

欧州では、空調機器関連市場への交流電源に動きがあったものの、全体的には低調に推移いたしました。

アジアにおいては、中国では、電池関連市場や車載関連市場の設備投資抑制により低調に推移いたしました。一方、韓国では、車載関連市場への直流電源や電子負荷装置が好調に推移し、東南アジアでは、車載関連市場などの設備投資抑制の動きが見られ、低調に推移いたしました。

以上の結果、海外売上高は51億4千9百万円(前年同期比11.6%減)となりました。

 

b 財政状態

当連結会計年度末における総資産は、売上高の増加及び棚卸資産の圧縮に努めたことによる棚卸資産の減少並びに未収還付法人税等が減少したものの、現金及び預金、売掛金及び電子記録債権の増加並びに投資有価証券の期末時価の上昇による増加等により前連結会計年度末に比べ6億2千4百万円増加し、161億8百万円となりました。

負債は、投資有価証券の期末時価の上昇により繰延税金負債が増加したものの、支払手形及び買掛金の減少等により、前連結会計年度末に比べ5億8千9百万円減少し、28億2千3百万円となりました。

純資産は、配当の実施により剰余金が減少したものの、親会社株主に帰属する当期純利益の計上及び投資有価証券の期末時価の上昇によるその他有価証券評価差額金の増加等により、前連結会計年度末に比べ12億1千3百万円増加し、132億8千5百万円となりました。

 

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度の期末残高に比べ5億3千8百万円(20.4%)増加し、31億8千4百万円となりました。

 

 (営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、12億3千2百万円の収入(前連結会計年度3千7百万円の収入)となりました。これは、税金等調整前当期純利益19億1千9百万円の計上及び棚卸資産の減少額5億9百万円等による資金の増加が、売上債権の増加7億9千5百万円及び仕入債務の減少額4億8千2百万円等による資金の減少を上回った結果によるものであります。

 

 (投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、2億6千4百万円の支出(前連結会計年度6千1百万円の支出)となりました。これは、有形固定資産の取得による支出2億7千2百万円及び無形固定資産の取得による支出2千6百万円等による資金の減少が、有価証券の売却及び償還による収入5千万円等による資金の増加を上回ったことによるものであります。

 

 (財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、4億6千1百万円の支出(前連結会計年度2億5千4百万円の支出)となりました。これは、配当金の支払額3億1千7百万円及び自己株式の取得による支出1億3千9百万円等により資金が減少したことによるものであります。

 

③ 生産、受注及び販売の状況

当社グループは、電気計測器等の製造、販売を行っているものであり、セグメントは単一であります。したがいまして、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示すことはしておりません。

このため生産、受注及び販売の状況については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況 a 経営成績」における営業品目の製品群別に関連付けて示しております。

 

a 生産実績

当連結会計年度における生産実績を区分別に示すと、次のとおりであります。

 

区分

生産高(千円)

前年同期比(%)

電子計測器

2,077,241

△37.9

電源機器

8,955,896

+8.9

合計

11,033,137

△4.6

 

(注) 金額は販売価額によっております。

 

b 外注実績

当社グループは、製品の製造において、組立配線、調整等の作業を外注に依存しております。

その依存度は、総製造費用に対して前連結会計年度5.3%、当連結会計年度4.8%であります。

なお、外注加工の依頼先は、主に昇辰電気㈱、㈱光洋電子工業、㈱ハイビックであります。

 

c 受注実績

当社グループは、原則として販売計画に基づく生産計画によって生産をしており、該当事項はありません。

 

 

d 販売実績

当連結会計年度における販売実績を区分別に示すと、次のとおりであります。

 

区分

販売高(千円)

前年同期比(%)

電子計測器

2,547,742

△21.1

電源機器

9,464,812

+13.0

修理・校正サービス等

476,226

+3.8

合計

12,488,780

+3.5

 

(注)   最近2連結会計年度における主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合

 

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

販売高(千円)

割合(%)

販売高(千円)

割合(%)

日本電計㈱

2,308,863

19.1

2,210,410

17.7

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するに当たって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5  経理の状況  1  連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表  注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a 当連結会計年度の経営成績等の分析

当社グループの当連結会計年度における財政状態及び経営成績の状況につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。

 

b 経営成績に重要な影響を与える要因について

当社グループにおける経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおり、経済状況、市場環境、人材確保及び自然災害等、様々なリスク要因が当社グループの経営成績に影響を与える可能性があると認識しております。

そのため、当社グループは常に市場動向に留意しつつ、優秀な人材を確保し、顧客ニーズに合った製品・サービスを提供していくことにより、経営成績に重要な影響を与えるリスク要因を分散・低減し、適切に対応を行ってまいります。

 

 

c 戦略的現状と見通し

当社グループといたしましては、目標とする客観的な経営指標は定めておりませんが、経営の基本方針の下、グローバル化と多様化する顧客ニーズへの対応力の強化のため、新製品の開発、ソリューションビジネスの積極的展開、Webマーケティングの活用によるブランドプレゼンスの向上、さらに納期短縮と原価低減に努めてまいります。

具体的には、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。

 

d 資本の財源及び資金の流動性についての分析

当社グループでは、株主還元とのバランスを考えながら、将来の事業拡大及び収益性向上に不可欠な設備投資や研究開発投資の実行に備えた内部留保を充実させていくことを基本としております。

資金調達に関しましては、自己資金を基本としており、自己資金で賄えない場合は金融機関から借入れることとしております。

また、資金需要の主なものは、製品製造のための材料及び部品購入、商品及び製品の仕入のほか、製造費用、販売費及び一般管理費等の運転資金需要であります。投資を目的とした資金需要は、設備投資等によるものであります。

なお、当社グループの当連結会計年度における資金状況につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであり、設備投資等の概要につきましては、「第3 設備の状況 1 設備投資等の概要」に記載のとおりであります。

また、重要な資本的支出の予定はありません。

 

③ 経営者の問題認識と今後の検討内容について

当社グループの経営陣は、現在の事業環境及び入手可能な情報に基づき最善の経営方針を立案し実行するよう努めております。しかしながら、技術の進歩は目覚しく、それに伴い顧客ニーズも目まぐるしく変化いたします。当社グループといたしましては、このような技術進歩と顧客ニーズへの対応がむしろビジネスを大きくする好機でもあると捉え、業績を伸長しかつ当社グループ全体の企業価値を高めるべく、新製品の開発、グローバルビジネス及びソリューションビジネスの更なる拡大、事業領域拡大、経営基盤の強化を経営の最重点課題として取り組んでいく所存でございます。

なお、今後の検討内容につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。

 

5 【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

 

6 【研究開発活動】

当社グループは、電気計測器等の製造、販売を行っているものであり、セグメントは単一であります。したがいまして、セグメントごとに研究開発活動の状況及び研究開発費の金額を示すことはしておりません。

また、当社グループにおける研究開発活動は、主に菊水電子工業株式会社が行っております。

その菊水電子工業株式会社における研究開発活動は、以下のとおりであります。

 

当連結会計年度の研究開発活動は、当社グループの経営計画の基本方針である「グローバルの進化」「ソリューションの深化」「事業ドメインの新化」「経営基盤の強化」に基づき取り組んでまいりました。グローバルの進化といたしましては現地ニーズに対応しグローカルに戦える製品開発を、ソリューションビジネスの深化においては航空宇宙、電池、CASE、サーバー・ICTを中心とした成長市場へ向けたソリューション提案を、「事業ドメインの新化」といたしましては技術力を生かした事業の開拓を、経営基盤の強化といたしましてはIT技術・インフラの導入及び活用を、それぞれ積極的に推進してまいりました。

なお、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況 a 経営成績」における営業品目の製品群別の研究開発活動は、次のとおりであります。

 

《電子計測器群》

安全関連試験器において、TOS9300シリーズの出力電圧を10kVとした新製品の開発を進めております。また、電力計KPM1200/3200を応用した高調波測定システムの開発にも取り組んでおります。

 

《電源機器群》

直流電源装置では、3Uサイズの筐体に定格出力20kWを実現した高性能・大容量ワイドレンジ直流電源PXTシリーズを開発し販売いたしました。また、双方向大容量直流電源PXBシリーズのシリーズ展開を進めラインアップを拡充いたしました。

電子負荷装置では、3Uサイズの筐体に定格電力20kWで回生効率90%以上を実現した大容量回生電子負荷装置PXZシリーズを開発し販売いたしました。

ソリューション事業への取り組みといたしましては、航空宇宙、電池、CASE、サーバー・ICT市場を中心に既存技術・既存製品を応用したソリューション提案を行ってまいりました。EV試験の様々なニーズにお応えするため、一台で世界の主要な充電規格をサポートするEV充電/放電多目的コントローラKEV1000シリーズを開発し販売いたしました。

また、アプリケーションソフトウエアSD036-PXBと双方向大容量直流電源PXBシリーズの組み合わせによりバッテリの充放電動作を模擬することができるバッテリエミュレータシステムを開発し販売いたしました。

 

これらの研究開発費の総額は、1,264百万円、売上高比率10.1%であります。

なお、電子計測器、電源機器等の研究開発活動において使用する研究開発用設備、研究開発用部品及び試作設計作業等に共通性が高いため、それぞれの製品群別に研究開発費を示すことはしておりません。

また、現在所有する工業所有権の総数は、81件であります。