当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループの経営理念は、「社会が求めるより良きものを合理的に生産し、信頼される健全経営を展開して参画者総ての文化の高揚を計る」であり、この経営理念を基本に進取の精神で挑戦と創造を積み重ね、常に新しいフィールドに事業活動を積極的に展開して行くことを経営の基本としております。
(2)経営環境、経営戦略等
当社グループは、車載電装品、民生産業機器、ワイヤーハーネスの3分野での機器、部品等の製造・販売を事業としております。国内では人口の減少を背景として、当社の主たる事業分野である四輪、二輪、ホームエレクトロニクス等の製品の製造・販売拡大は非常に厳しい状況にあります。
当社グループといたしましては、今後の会社の発展を図るため、国内事業における自社開発製品の充実を図っていくとともに、拡大するアジアの市場におけるシェアを高めるべく、海外事業における生産能力の強化を行っております。
国内事業では、製品の自主開発の取組を進めております。新規事業として、メディカル・超音波製品分野における新製品開発の取組みを行うとともに、充電器・DCDCコンバータ・インバータといったパワーエレクトロニクス製品の製造開発を行っております。
海外事業では、インド、ベトナム、中国にそれぞれ2拠点、フィリピンに1拠点を設置し、製造・販売を行うとともに、ベトナム・ダナン市には研究開発拠点を設置、インドにおいてもハリアナ州の工場内に研究開発部門を設置し現地での開発力の強化に取組んでおります。また、海外より外国人技術者を日本へ転勤させる等、日本における研究開発人員の不足の補強を行っております。
(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは売上高及び営業利益を経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標として用いております。
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
急激な円安による資材及び海外生産経費の急騰、国際的な往来の復活に伴う価格競争の激化など、当社グループを取り巻く経営環境は引き続き厳しい状況が続くものと予想されます。また、当社グループ主要供給先である四輪車、二輪車、民生産業機器の業界は、それぞれに大きな変動期を迎えております。当社グループとしては、変動する経済環境の中で、今後も成長を続けるべく需要の変化に機敏に対応して生産の重点を変えてまいります。中期経営計画(2021年度~2025年度)では、次の4分野を重点的に強化しております。
第1に「低炭素社会の実現に資する電子ユニット」です。地球環境問題を背景として世界的な脱炭素化の流れが加速しております。四輪車・二輪車は急速に電動化しております。従来培ってきた充電器、インバータ、DCDCコンバータの開発・生産技術を強化し、自社技術による製品受注を拡大していきます。日本における人材不足に対応するため、ベトナム・ダナン、インド・ハリアナの2拠点にR&D部門を設置しております。
第2に「重要電子機器をつなぐワイヤーハーネス」です。従来、ベトナム・ホーチミン工場における生産が主力でしたが、BCPを考慮し、フィリピンでの生産体制を構築し機能を拡充しております。また、外国人エンジニアの採用を進め、設計技術力の強化に努めております。
第3に「新規事業」です。従来、研究開発を行ってきた、メディカル関連製品、超音波関連製品の開発・生産を着実に進めるとともに、商材の販路拡大に注力してまいります。
第4に「海外における受注生産事業」です。新規受注商材の生産を着実に行うとともに品質管理体制を強化し、新たな受注拡大を図ってまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)戦略
当社グループは、時代の変遷とともに、生産品目を変えながら60年を超える歴史を刻んでまいりました。時代の要請に応えた生産体制を構築することが持続的な企業であることの要諦であると考えております。
現在の中期経営計画におきましては、特に「低炭素社会の実現に資する電子ユニット」の開発・生産に重点をおいて取組んでおります。
地球環境問題を背景として世界的な脱炭素化の流れが加速しており、当社グループとしては、従来培ってきた充電器、インバータ、DCDCコンバータの開発・生産技術を強化し、低炭素社会の実現に向けて製品開発を通じて貢献してまいります。
また、新設した浜松工場を「ゼロ・エミッション工場」と位置づけ、屋上にパネル1,404枚、発電量442Kwの太陽光発電システムを設置、太陽光発電で賄いきれない電力は中部電力より「静岡Greenでんき」を購入することにより同工場における電力使用にかかる排出CO2ゼロを実現するなど、地球環境の保全活動も推進してまいります。
人的資本につきましては、外国籍を含めた人材の多様性を図るため、目標とする指標を定め、それを実現するための人材育成制度及び人事施策を推進してまいります。
(2)ガバナンス及びリスク管理
リスク管理・コンプライアンス委員会において、気候変動、自然災害、人事・労務など様々な想定される事業リスクについて議論し、企業としての方向性を試行錯誤し、取締役会に報告し、社外取締役からの助言を受けております。
受託生産が9割を超える当社グループとしての存在意義は、製品の品質にあるとの観点から、品質保証委員会において不良品の発生を最小化すべく議論を重ね、知見を積み上げ、不良品ゼロに向けて日々歩んでおります。
(3)指標及び目標
急激な少子化の進展は、当社として持続可能な人員の採用を困難にしております。
当社としては、下記の目標を中期経営計画期間内(2025年度まで)に実現することにより、事業継続性を確保していきたいと考えております。
①外国籍従業員の社員比率5% (2024年3月31日現在 1.9%)
②女性の管理職比率10% (2024年3月31日現在 3.8%)
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項における投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)事業構造について
当社グループの売上高につきましては、主要顧客であります四輪メーカー、二輪メーカー、家電メーカーなどの販売状況の影響を受ける立場にあります。半導体を始めとする材料の調達難など、世界的に不安定な市場環境により当社の販売も影響を受けておりますが、その影響額については現時点において合理的に算定することが困難であります。
(2)当社グループの主要顧客への販売割合について
当社グループの販売先上位2社が占める売上高の割合は、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ③生産、受注及び販売の実績 (c)販売実績」に記載のとおりであり、主要顧客への販売状況の変化や取引条件等の変更により、当社グループの経営成績及び財政状況に大きな影響を与える可能性があります。
当社グループとしての対応力を強化するために、新規顧客の開拓、自主ブランドにより販売できる製品開発を積極的に行っております。
(3)海外事業展開に伴うリスクについて
当社グループは、インド、ベトナム、中国、フィリピンの各地において事業を展開しており、現地日系企業等からの需要増加に対応するため、工場の増設、生産設備の増強を進めてまいりました。
設備投資に当たっては、将来の需要予測等を基に投資効率を勘案し、投資を決定しておりますが、中国の景気停滞、もしくは半導体を始めとした原材料の入手難等の影響により当初予定していた販売量を確保できない可能性があります。そのような不安定な外部環境下においても採算が取れるよう、生産の合理化、ITを活用した省人化を進め、生産性の向上に努めております。
今後も、工場所在国の政治・経済情勢、法律規制の変更、為替動向、労働問題、感染症の蔓延、戦争、テロ等が当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループとしての対応力を強化するために、本社における海外事業体制を強化して情報収集力を向上させるとともに、当社グループの工場の生産活動に制約が加えられるリスクを分散すべく、フィリピン子会社における生産能力の増強を進めております。
(4)地震等自然災害による影響について
地震等の自然災害が発生した場合、当社グループの生産拠点が損害を受け、業績に影響を及ぼす可能性があります。
特に、当社の国内の生産拠点は静岡県西部地域に集中しておりますので、南海トラフ地震に備えて、被害を最小限にするべく、すでに必要と考えられる対策を講じておりますが、地震による影響が大きい場合には、操業の中断や多額の復旧費用の発生により、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループといたしましては、浜松市北部の浸水想定のない地点に建設した浜松工場が稼働を開始しております。自然災害等により本社機能が麻痺した際には本社の代替として機能する体制を整えるとともに、有事の際の海外拠点におけるバックアップ体制の整備も進めてまいります。
(5)品質に関するリスクについて
当社グループは、製品の品質に万全を期しておりますが、予期しない品質トラブルにより多額の回収費用及び補償費用が発生した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループといたしましては、国内事業だけでなく、生産の主体となりつつある海外事業における品質の維持・向上を最優先課題として取り組んでおります。
(6)財務制限条項付融資契約について
当社グループは、一部の借入金に対して金融機関とのコミットメント契約を締結しております。この契約につきましては、各事業年度の中間決算期末及び決算期末の当社の貸借対照表における純資産の部の金額に関しての財務制限条項が付されており、それに抵触した場合には、貸付人の請求により期限の利益を喪失し、借入金金額を直ちに返済する義務を負うことになっており、当社グループの業績及び財政状況に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループといたしましては、製品受注時の支払い条件の変更による売掛金の削減により借入金の削減を行うべく、不断に交渉を続けております。
(7)その他、経営成績に影響を及ぼす可能性のある事項について
① 繰延税金資産について
当社グループは、将来減算一時差異に対して、当連結会計年度末において784百万円の繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産は将来の課税所得に関する見積り及びタックス・プランニング等を基に回収可能性を検証し計上しておりますが、実際の課税所得が見積り等を大幅に下回った場合等には回収可能性の見直しを行い、繰延税金資産を回収可能額まで取崩すことにより、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
なお、将来の課税所得を見積る際には様々な仮定及び予測を用いており、その仮定及び予測は実際の結果と乖離する可能性があります。また、税制改正等により実効税率等が変更になった場合にも、繰延税金資産の計上額の見直しを実施することにより、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
② 固定資産の減損について
当社グループは、固定資産の時価が著しく低下した場合又は事業の収益性が悪化した場合には、当該固定資産の減損の兆候の有無の判定を行い、減損の兆候がある場合には、将来キャッシュフロー等に基づいた回収可能価額の見積りによる減損テストを実施しております。その結果、固定資産の帳簿価額が回収可能額を上回った場合には、帳簿価額を回収可能額まで減額し減損損失を認識することとなり、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におきましては、新型コロナウイルス感染症に対する行動制限の緩和により、経済活動は緩やかな回復基調となってまいりました。しかしながら、中国の不動産市場の低迷に伴う景気停滞、長期化するロシア・ウクライナ紛争や中東情勢の緊迫化、円安に起因する材料エネルギー価格の高騰など収益性低下の要因は引き続き解消されておらず、当社を取り巻く環境には、依然として厳しいものがありました。
このような状況の中、当社グループは、中期経営計画(VISION2025)の3年目として、低炭素社会の実現に資する関連製品の生産・開発拠点となる浜松工場の稼働開始及びBCP(事業継続計画)強化として設立したフィリピン子会社における生産品目の増大など、中期経営計画の実現に向けた取組を強化してまいりました。
当社グループの当連結会計年度の業績は、民生産業機器の販売減少により売上高は63,607百万円(前期比2.0%減)となりましたが、車載電装品の販売増加による付加価値の増加、生産及び物流の安定化に伴う生産性の向上等により、営業利益は2,234百万円(同18.0%増)となりました。経常利益は、円安により海外子会社における資産・負債の為替換算に伴う為替差益805百万円の発生により、3,081百万円(同47.1%増)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、2023年5月に稼働を開始した浜松工場に対する補助金278百万円の計上等により、2,695百万円(同78.2%増)となりました。
提出会社の売上高は36,826百万円(前期比6.1%減)、営業利益は736百万円(同42.1%減)となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
(車載電装品)
車載電装品では、主に海外拠点における各種電子制御ユニット等の販売増により、売上高は21,742百万円(前期比20.0%増)、営業利益667百万円(同47.9%増)となりました。
(民生産業機器)
民生産業機器では、通信用スイッチユニット及び洗濯機用電子制御基板等の販売減により、売上高は17,575百万円(前期比18.6%減)、営業利益は24百万円(同91.2%減)となりました。
(ワイヤーハーネス)
ワイヤーハーネスでは、四輪用及び船舶用ワイヤーハーネスの販売減により、売上高は24,174百万円(前期比3.6%減)、営業利益は1,613百万円(同12.5%増)となりました。
(その他)
その他では、売上高は115百万円(前期比36.1%増)、営業損失は117百万円(前期は279百万円の営業損失)となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という)は前連結会計年度末に比べ58百万円減少し、2,779百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において営業活動による資金の取得は、3,223百万円(前期は4,911百万円の取得)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益3,368百万円、減価償却費2,272百万円及び法人税等の支払額1,055百万円を反映したものであります。
営業活動によるキャッシュ・フローは、車載電装品の売上高の増加による付加価値の増加及びワイヤーハーネスの生産性向上等により当期純利益が増加したことにより、大きく資金を取得する結果となりました。翌期においては客先からの受注変動による生産性の悪化等が懸念されますが、国内外における販売活動の強化・安定稼働のための体制作り及び在庫削減に努め、営業キャッシュ・フローの増加に努めてまいります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において投資活動による資金の支出は、1,959百万円(前期は4,980百万円の支出)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出1,756百万円を反映したものであります。
国内においては、新工場の生産インフラの整備及び生産設備の更新等による設備投資を実施いたしました。海外においては、フィリピンの生産能力増強のための設備投資を実施しております。翌期については、主にインドにおいて工場刷新投資及び生産設備の増強など、グループの成長のために必要な投資を中心に投資活動を実施していく考えであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において財務活動による資金の支出は、1,626百万円(前期は890百万円の取得)となりました。これは主に、借入金の減少1,250百万円を反映したものであります。
当期においては、設備投資については重要なものに絞って実施した結果、営業活動によるキャッシュ・フローによる資金の取得により、借入金を返済に充当することで負債の削減を図ってまいりました。翌期においては、受注変動に対応した材料購買の実施により在庫水準の減少を図り、設備投資資金を捻出してまいります。
③ 生産、受注及び販売の実績
(a)生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
前年同期比 |
|
|
千円 |
% |
|
車載電装品 |
25,211,472 |
29.9 |
|
民生産業機器 |
18,579,208 |
△18.7 |
|
ワイヤーハーネス |
29,644,818 |
△0.5 |
|
報告セグメント計 |
73,435,498 |
1.9 |
|
その他 |
288,592 |
30.4 |
|
合計 |
73,724,091 |
2.0 |
(注)金額は販売価格で表示しており、最終工程の生産実績をセグメント別に集計し、連結会社間取引消去前の数値によっております。
(b)受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
|||
|
受注高(千円) |
前年同期比(%) |
受注残高(千円) |
前年同期比(%) |
|
|
車載電装品 |
25,988,221 |
37.9 |
2,433,454 |
64.7 |
|
民生産業機器 |
18,666,799 |
△16.1 |
3,334,734 |
3.0 |
|
ワイヤーハーネス |
30,166,002 |
4.3 |
2,209,687 |
16.2 |
|
報告セグメント計 |
74,821,023 |
6.9 |
7,977,875 |
20.6 |
|
その他 |
283,303 |
26.0 |
2,752 |
△65.0 |
|
合計 |
75,104,326 |
6.9 |
7,980,627 |
20.5 |
(注)金額は販売価格で表示しております。
(c)販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
前年同期比 |
|
|
千円 |
% |
|
車載電装品 |
21,742,783 |
20.0 |
|
民生産業機器 |
17,575,364 |
△18.6 |
|
ワイヤーハーネス |
24,174,020 |
△3.6 |
|
報告セグメント計 |
63,492,168 |
△2.0 |
|
その他 |
115,807 |
36.1 |
|
合計 |
63,607,975 |
△2.0 |
(注)1.セグメント間の取引につきましては相殺消去しております。
2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
|
相手先 |
前連結会計年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
||
|
|
千円 |
% |
千円 |
% |
|
ヤマハ発動機㈱ |
8,453,443 |
13.0 |
8,328,051 |
13.1 |
|
スズキ㈱ |
7,737,411 |
11.9 |
7,353,041 |
11.6 |
|
㈱シマノ(注)3 |
6,533,445 |
10.1 |
- |
- |
3.当連結会計年度においては、当該割合が10%未満であったため、記載を省略しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成しております。
当社グループの連結財務諸表作成にあたっては、当連結会計年度末における資産、負債の報告金額及び収益、費用の報告金額に影響を与える見積り、判断及び仮定を使用することが必要となります。当社グループの経営陣は連結財務諸表の基礎となる見積り、判断及び仮定を過去の経験や状況に応じ合理的と判断される入手可能な情報により継続的に検証し、意思決定を行っております。しかしながら、これらの見積り、判断及び仮定は不確実性を伴うため、実際の結果と異なる場合があります。当連結会計年度末においては、将来の事業計画等の見込数値については、期末時点で入手可能な情報をもとに検証等を行っております。
なお、連結財務諸表の作成のための重要な会計基準等は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載されているとおりであります。
② 当連結会計年度の経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度は、中期経営計画「VISION2025」の3年目として、「低炭素社会の実現に資する電子ユニット」「重要電子機器をつなぐワイヤーハーネス」「新規事業」「海外における受注生産事業」の4つの重点分野に集中的に取組んでまいりました。
具体的には、「低炭素社会の実現に資する電子ユニット」について、世界的な脱炭素化の流れが加速している中で、当社のパワーエレクトロニクス製品の開発を加速すべく、ベトナム・ダナン、インド・ハリアナにR&D部門を設置し、自社製品の開発・営業活動を進めてまいりました。また、浜松市北部に低炭素社会に適応した浜松工場の稼働を開始し、ゼロエミッション工場として低炭素化の推進を進めております。
「重要電子機器をつなぐワイヤーハーネス」につきましては、BCP対応として設立したフィリピン子会社での生産体制を構築し、生産能力の増強を図っております。
「新規事業」につきましては、メディカル関連・超音波関連の新製品の開発・製造に注力、メディカル関連では薬液ムダが少ない注射器の販売拡大に努めております。
「海外における受注生産事業」につきましては、新規製品の受注による海外生産の拡大を図るとともに、品質管理体制の強化にも注力しております。
経営成績の分析
(売上高)
当連結会計年度における売上高は、前連結会計年度に比べ1,275百万円減少し、63,607百万円(前期比2.0%減)となりました。部品不足の影響が緩和され主に海外における得意先企業の好調な受注の影響から特に車載電装品で販売増となりましたが、アウトドア系需要の減少により民生産業機器での販売減少が大きく影響し、売上減となりました。各セグメントの外部顧客に対する売上高の連結売上高に占める割合は、車載電装品が34.2%、民生産業機器が27.6%、ワイヤーハーネスが38.0%、その他が0.2%となりました。
提出会社の売上高は、36,826百万円(同6.1%減)となり、連結売上高よりも大きな減少となりました。新型コロナウイルス感染症の影響縮小により生産活動の海外移転が活性化してきていることが背景にあります。
(売上総利益)
当連結会計年度における売上総利益は、前連結会計年度に比べ787百万円増加し、7,175百万円(前期比12.3%増)となりました。売上総利益率は、前連結会計年度において新型コロナウイルス感染症の影響を大きく受けたベトナム子会社における生産の安定化及び国際物流の正常化に伴う物流費用の減少により、前連結会計年度に比べ1.5ポイント増加の11.3%となりました。
(営業利益)
当連結会計年度における販売費及び一般管理費は前連結会計年度に比べ447百万円増加し、4,941百万円(前期比10.0%増)となりました。
提出会社の営業利益は736百万円(同42.1%減)となり、賃上げに伴う労務費の増加及び新工場稼働に伴う減価償却費の増加により、前期比減少となりました。
以上の結果、当連結会計年度の営業利益は、前連結会計年度に比べ340百万円増加し、2,234百万円(同18.0%増)となりました。
(経常利益)
当連結会計年度における営業外収益は、前連結会計年度に比べ為替差益が大きく発生したことにより、前連結会計年度に比べ661百万円増加し、1,071百万円(前期比161.7%増)となりました。
営業外費用は、円安に伴うデリバティブ評価損の発生により、前連結会計年度に比べ16百万円増加し、224百万円(同7.9%増)となりました。
以上の結果、当連結会計年度の経常利益は、前連結会計年度に比べ986百万円増加し、3,081百万円(同47.1%増)となりました。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
当連結会計年度における特別利益は、浜松工場に対する補助金収入278百万円の発生により、前連結会計年度に比べ305百万円増加し、309百万円(前期比8,569.1%増)となりました。特別損失は、前期と同程度の固定資産処分損の発生があり、22百万円(同13.6%減)となりました。
以上の結果、当連結会計年度における親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に比べ1,182百万円増加し、2,695百万円(同78.2%増)となりました。
新型コロナウイルス感染症の影響は落ち着き生産活動は正常化しておりますが、ロシア・ウクライナ紛争及び中東情勢の緊迫化により世界経済は当面予断を許さない状況が続くと想定されるため、受注の変動に対応できる生産体制の合理化、省人化等に注力してまいります。中期的には、販売先の多角化が必須な状況であり、新規顧客の開拓、新規商品の開発及び販売拡大を進めてまいります。
財政状態の分析
(流動資産)
当連結会計年度末における流動資産の残高は、30,918百万円(前年度末比7.1%増)となりました。原材料及び貯蔵品の増加1,255百万円(同10.7%増)が主な要因であります。
(固定資産)
当連結会計年度末における固定資産の残高は、17,091百万円(前年度末比2.3%減)となりました。磐田工場及び浜松倉庫の売却に伴う建物の減少196百万円(同2.6%減)及び土地の減少162百万円(同5.8%減)が主な要因であります。
(流動負債)
当連結会計年度末における流動負債の残高は、14,131百万円(前年度末比5.3%減)となりました。短期借入金の減少406百万円(同5.9%減)が主な要因であります。
(固定負債)
当連結会計年度末における固定負債の残高は、9,560百万円(前年度末比7.5%減)となりました。長期借入金の減少821百万円(同8.2%減)が主な要因であります。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産の残高は、24,318百万円(前年度末比15.2%増)となりました。利益剰余金の増加2,414百万円(同16.3%増)が主な要因であります。
キャッシュ・フローの分析
キャッシュ・フローの状況につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性につきましては、次のとおりです。
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、材料及び部品の購入のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、設備投資等によるものであります。
当社グループは、事業運営上必要な資金の流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。
短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資や長期運転資金の調達につきましては、金融機関からの長期借入を基本としております。
なお、当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は15,723百万円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は2,779百万円となっております。
該当事項はありません。
当社グループは、創設以来「新しい時代の流れの中での新しい価値の創出」を基本理念として、新規分野への可能性を求めて開発に取組んでおります。
業界における技術的進歩、発展にはめざましいものがあります。その中にあって、ユーザーニーズや技術動向を的確にとらえ素早く商品に反映させることが極めて重要であると認識しております。近年加速する電動化の流れに対応し、車載用パワーエレクトロニクス製品として、弊社ブランドによる車載用充電器やDCDCコンバータを上市しております。また、国内カーメーカー向けに自社で開発した電動二輪車用バッテリー充電器の量産も行っております。
今後もこの分野での技術開発を継続し、これまで培ってきた電力変換技術を活かし、充電器やDCDCコンバータに加え、車載用モーターインバータ機器の開発に取組んでまいります。
また、微細加工の技術を応用し、単回使用注射用針の製品等、医療分野における製品開発にも取組みをしております。
なお、当社グループの研究開発は、基礎技術の研究及び自社の企画商品として開発する場合と、得意先から開発テーマをいただき、ODMとして開発する場合があります。
当連結会計年度における各セグメント別の主な成果は次のとおりであります。なお、当連結会計年度の研究開発費の総額は
(1)車載電装品
車載電装品では、昨年よりインド工場で量産を開始した電動二輪車用バッテリー充電器の仕向け及び用途拡大へ向けた設計開発を進めております。
また、電動化へ向けた流れが加速し競争が激化していく中、低電圧大電流DCDCコンバータの課題である放熱の技術開発を進め商品化へ向けた開発を進めております。また、デジタル制御電源を活用した小型化、多機能化へ向けた充電器の開発も進行中で、今期中の開発試作品の完成を目指して取組んでおります。
インバータ開発では、小型モビリティ向け10kWインバータについて、電源電圧48Vに加え72V品の開発・設計、評価を進めて参りました。電動二輪車用バッテリー充電器を視野に入れた48V6kWインバータはさらなる小型化へ向けた開発・設計、評価を進めており、次期も引き続き注力し開発に取組んで参ります。加えて、マリン向け製品として、船外機用のインターフェイスユニットの次期モデルの設計を開始いたしました。マリン向け電動推進機用の無線通信ユニットの開発試作品を製作し、受注拡販活動に取組んでおります。
国際規格対応としては、自動車のサイバーセキュリティISO21434に対応した製品開発プロセスの構築を完了いたしました。現在、車載ECUの開発が完了し2025年10月の量産に向けて準備を進めております。
なお、当連結会計年度の研究開発費の金額は、
(2)民生産業機器
量産中の超音波ホッチキスや超音波カッターで培った技術を応用して超音波振動を用いた清掃用ツールを開発し、ASTIブランドで販売を行っております。超音波振動吸引ノズル(ウルトラソニック クリーナーノズル)の販売を皮切りに、バッテリーレスの廉価版、2024年4月には超音波振動スクレーパーの販売を開始いたしました。
なお、当連結会計年度の研究開発費の金額は、
(3)ワイヤーハーネス
ワイヤーハーネスでは、電動自動車市場拡大に伴うリチウムイオン電池の今後益々の需要増大と価格低減に対応すべく、電池用バスバーの超音波接合技術(銅とアルミの異種金属接合)と全自動化の研究に取組んで参りました。製品試作と全自動装置の開発機を制作し、ハイボリュームトライアルを実施しております。接合性能や製造タクトなどのデータを取得及び課題抽出の結果、十分量産に耐えうる性能が得られ、且つ、コストパフォーマンスの優れたバスバーを開発いたしました。リチウムイオン電池の製造能力確保と価格低減に貢献できるよう引き続き量産に向け準備を進めてまいります。
また、部品事業拡充のため、ワイヤーハーネス用新規部品を35案件起案し、量産に向け開発プロセスを進行中であります。
ハーネス設計の分野では、新規車両の開発段階より顧客に入り込み製品開発を行っております。既存の工法ではなく、超音波溶接を用いた新しい工法の実現化への取組みを行っております。その一環として自社部品の提案や、新工法の提案を推進し、一部採用が決まっております。また、他社ハーネスのベンチマークを実施し、ゲストエンジニア活動でも技術提案を行っていくことで、新たなハーネス受注へつながっております。
なお、当連結会計年度の研究開発費の金額は、
(4)その他
メディカルデバイス分野では、経済産業省の補助金を受けて、ワクチン注射などに適した薬液ムダが少ない注射針の開発を行い、2024年2月から欧州販売を開始いたしました。注射針認証品としては、最も細い直径0.16mmをラインナップに揃え、各国から高い評価を得ております。今後は、国内の薬事申請を行い、次期中の承認取得を目指しております。
微細加工技術の分野では、大手メーカー数社と血液分析チップや細胞チップ、マイクロニードル等の製品化開発を加速しており、今後量産化に向けた製造環境・体制整備を進めてまいります。
なお、当連結会計年度の研究開発費の金額は、21百万円であります。