第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営方針

 当社グループの経営理念は、「社会が求めるより良きものを合理的に生産し、信頼される健全経営を展開して参画者総ての文化の高揚を計る」であり、この経営理念を基本に進取の精神で挑戦と創造を積み重ね、常に新しいフィールドに事業活動を積極的に展開して行くことを経営の基本としております。

 

(2)経営環境、経営戦略等

 当社グループは、車載電装品、民生産業機器、ワイヤーハーネスの3分野での機器、部品等の製造・販売を事業としております。国内では人口の減少を背景として、当社の主たる事業分野である四輪、二輪、ホームエレクトロニクス等の製品の製造・販売拡大は非常に厳しい状況にあります。

 当社グループといたしましては、今後の会社の発展を図るため、国内事業における自社開発製品の充実を図っていくとともに、拡大するアジアの市場におけるシェアを高めるべく、海外事業における生産能力の強化を行っております。

 国内事業では、製品の自主開発の取組を進めております。新規事業として、メディカル・超音波製品分野における新製品開発の取組みを行うとともに、充電器・DCDCコンバータ・インバータといったパワーエレクトロニクス製品の製造開発を行っております。

 海外事業では、インド、ベトナム、中国にそれぞれ2拠点、フィリピンに1拠点を設置し、製造・販売を行っております。中国においては、EV市場の競争が激化しており、当社を取り巻く環境は非常に厳しい状況となっております。一方、成長著しいインド市場においては、特に車載電装品において非常に多くの引き合いを頂いており、今後も注力して販売拡大を図ってまいります。また、技術・開発面においては、ベトナム・ダナン市には研究開発拠点を設置、インドにおいてもハリアナ州の工場内に研究開発部門を設置し現地での開発力の強化に取組んでおります。また、海外より外国人技術者を日本へ転勤させる等、日本における研究開発人員の不足の補強を行っております。

 

(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループは売上高及び営業利益を経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標として用いております。

 

(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 継続する円安による資材及び生産経費の高騰、国際的な価格競争の激化などに加え、米国の関税政策に起因する国際的な貿易の縮小など、当社グループを取り巻く経営環境は引き続き厳しい状況が続くものと予想されます。また、当社グループの主要供給先である四輪車、二輪車、民生産業機器の業界は、それぞれに大きな変動期を迎えています。当社グループとしては、変動する経済環境の中で、今後も成長を続けるべく需要の変化に機敏に対応して生産の重点を変えてまいります。中期経営計画(VISION2025)では、次の4分野を重点的に強化しております。

 第1に「低炭素社会の実現に資する電子ユニット」です。従来培ってきた充電器、インバータ、DCDCコンバータの開発・生産技術を強化し、自社技術による製品受注を拡大していきます。また、日本における技術人材不足を補うため、ベトナム・ダナン、インド・マネサールの2拠点にR&D部門を設置し、設計・開発機能の拡充を図っております。

 第2に「重要電子機器をつなぐワイヤーハーネス」です。従来、ベトナム・ホーチミン工場における生産が主力でしたが、BCPを考慮し、フィリピンでの生産体制の拡充を図っております。また、外国人エンジニアの採用を進め、設計技術力の強化に努めております。

 第3に「新規事業」です。従来、研究開発を行ってきた、メディカル開発製品の美容分野商材の量産を開始いたしました。さらなる開発・生産を着実に進めるとともに、商材の販路拡大に注力してまいります。

 第4に「海外における受注生産事業」です。新規受注商材の生産を着実に行うとともに、特に好調なインド市場に注力した新たな受注拡大を図ってまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)戦略

 当社グループは、時代の変遷とともに、生産品目を変えながら60年を超える歴史を刻んでまいりました。時代の要請に応えた生産体制を構築することが持続的な企業であることの要諦であると考えております。

 現在の中期経営計画(VISION2025)におきましては、特に「低炭素社会の実現に資する電子ユニット」の開発・生産に重点をおいて取組んでおります。

 地球環境問題を背景として世界的な脱炭素化の流れが加速しており、当社グループとしては、従来培ってきた充電器、インバータ、DCDCコンバータの開発・生産技術を強化し、低炭素社会の実現に向けて製品開発を通じて貢献してまいります。

 また、浜松工場を「ゼロ・エミッション工場」と位置づけ、屋上にパネル1,404枚、発電量442kWの太陽光発電システムを設置、太陽光発電で賄いきれない電力は中部電力より「静岡Greenでんき」を購入することにより同工場における電力使用にかかる排出CO2ゼロを実現するなど、地球環境の保全活動も推進しております。

 人的資本につきましては、外国籍を含めた人材の多様性を図るため、目標とする指標を定め、それを実現するための人材育成制度及び人事施策を推進してまいります。

 

(2)ガバナンス及びリスク管理

 当社グループは、持続的な会社運営を安定的に継続するため、代表取締役社長が委員長を務めるリスク管理・コンプライアンス委員会及び品質保証委員会を設置しております。

 リスク管理・コンプライアンス委員会において、気候変動、自然災害、人事・労務など想定される様々な事業リスクについて議論し、企業としての方向性を試行錯誤し、取締役会に報告し、社外取締役からの助言を受けております。

 受託生産が9割を超える当社グループとしての存在意義は、製品の品質にあるとの観点から、品質保証委員会において不良品の発生を最小化すべく議論を重ね、知見を積み上げ、不良品ゼロに向けて日々歩んでおります。

 

(3)指標及び目標

 急激な少子化の進展は、当社として持続可能な人員の採用を困難にしております。

 当社としては、下記の目標を中期経営計画期間内(2025年度まで)に実現することにより、事業継続性を確保していきたいと考えております。

①外国籍従業員の社員比率5%  (2025年3月31日現在 2.7%)

②女性の管理職比率10%     (2025年3月31日現在 3.9%)

 当社グループの連結子会社はすべて海外に所在しており、各国における法制度や社会的背景の違いから、人的資本に関する統一的な目標設定は現時点では困難です。その為上記目標は日本国内における社会的課題である少子化への対応を目的として国内単体ベースで設定しております。

 今後は、グローバル全体での人的資本戦略の整備と情報収集体制の構築を進め、連結ベースでの開示に向けた取り組みを検討してまいります。

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項における投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)事業構造について

 当社グループの売上高につきましては、主要顧客であります四輪メーカー、二輪メーカー、家電メーカーなどの販売状況の影響を受ける立場にあります。半導体を始めとする材料の調達難など、世界的に不安定な市場環境により当社の販売も影響を受けておりますが、その影響額については現時点において合理的に算定することが困難であります。

 

(2)当社グループの主要顧客への販売割合について

 当社グループの販売先上位2社が占める売上高の割合は、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ③生産、受注及び販売の実績 (c)販売実績」に記載のとおりであり、主要顧客への販売状況の変化や取引条件等の変更により、当社グループの経営成績及び財政状況に大きな影響を与える可能性があります。

 当社グループとしての対応力を強化するために、新規顧客の開拓、自主ブランドにより販売できる製品開発を積極的に行っております。

 

(3)海外事業展開に伴うリスクについて

 当社グループは、インド、ベトナム、中国、フィリピンの各地において事業を展開しており、現地日系企業等からの需要増加に対応するため、工場の増設、生産設備の増強を進めてまいりました。

 設備投資に当たっては、将来の需要予測等を基に投資効率を勘案し投資を決定しておりますが、米国関税政策及び中国の景気停滞等に伴う受注変動、または半導体を始めとした原材料の入手難等の影響により当初予定していた販売量を確保できない可能性があります。そのような不安定な外部環境下においても採算が取れるよう、生産の合理化、ITを活用した省人化を進め、生産性の向上に努めております。

 今後も、工場所在国の政治・経済情勢、法律規制の変更、為替動向、労働問題、感染症の発生、戦争、テロ等が当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループとしての対応力を強化するために、本社における海外事業体制を強化して情報収集力を向上させるとともに、当社グループの工場の生産活動に制約が加えられるリスクを分散すべく、フィリピン子会社における生産体制の整備を進めております。

 

(4)地震等自然災害による影響について

 地震等の自然災害が発生した場合、当社グループの生産拠点が損害を受け、業績に影響を及ぼす可能性があります。

 特に、当社の国内の生産拠点は静岡県西部地域に集中しておりますので、南海トラフ地震に備えて、被害を最小限にするべく、すでに必要と考えられる対策を講じておりますが、地震による影響が大きい場合には、操業の中断や多額の復旧費用の発生により、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループといたしましては、浜松市北部の浸水想定のない地点に建設した浜松工場において、自然災害等により本社機能が麻痺した際には本社の代替として機能する体制を整えるとともに、有事の際の海外拠点におけるバックアップ体制の整備も進めてまいります。

 

(5)品質に関するリスクについて

 当社グループは、製品の品質に万全を期しておりますが、予期しない品質トラブルにより多額の回収費用及び補償費用が発生した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループといたしましては、国内事業だけでなく、生産の主体となりつつある海外事業における品質の維持・向上を最優先課題として取り組んでおります。

 

(6)財務制限条項付融資契約について

 当社グループは、一部の借入金に対して金融機関とのコミットメント契約を締結しております。この契約につきましては、各事業年度の中間決算期末及び決算期末の当社の貸借対照表における純資産の部の金額に関しての財務制限条項が付されており、それに抵触した場合には、貸付人の請求により期限の利益を喪失し、借入金全額を直ちに返済する義務を負うことになっており、当社グループの業績及び財政状況に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループといたしましては、製品受注時の支払い条件の変更による売掛金の削減により借入金の削減を行うべく、不断に交渉を続けております。

 

(7)その他、経営成績に影響を及ぼす可能性のある事項について

① 繰延税金資産について

 当社グループは、将来減算一時差異に対して、当連結会計年度末において673百万円の繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産は将来の課税所得に関する見積り及びタックス・プランニング等を基に回収可能性を検証し計上しておりますが、実際の課税所得が見積り等を大幅に下回った場合等には回収可能性の見直しを行い、繰延税金資産を回収可能額まで取崩すことにより、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 なお、将来の課税所得を見積る際には様々な仮定及び予測を用いており、その仮定及び予測は実際の結果と乖離する可能性があります。また、税制改正等により実効税率等が変更になった場合にも、繰延税金資産の計上額の見直しを実施することにより、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 固定資産の減損について

 当社グループは、固定資産の時価が著しく低下した場合又は事業の収益性が悪化した場合には、当該固定資産の減損の兆候の有無の判定を行い、減損の兆候がある場合には、将来キャッシュフロー等に基づいた回収可能価額の見積りによる減損テストを実施しております。その結果、固定資産の帳簿価額が回収可能額を上回った場合には、帳簿価額を回収可能額まで減額し減損損失を認識することとなり、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

 当連結会計年度におきましては、インドにおける四輪車市場の堅調な成長によるインド事業の拡大がありましたが、昨期末より始まりました検査問題に端を発する国内の自動車生産の停滞の影響、中国における景気低迷による消費の伸び悩み及び電気自動車の生産過剰による調達価格の低迷、主力納入先である二輪車・船外機市場でのコロナウイルス蔓延時の好調な受注後の在庫調整など、当社を取り巻く環境は一際厳しい状況となりました。また、円安に伴う資材価格の上昇、生産価格の上昇は、そのすべてを転嫁することはできず、厳しい経営環境となりました。

 このような状況の中、当社グループは中期経営計画(VISION2025)の4年目として、海外生産の拡大に向け、好調なインド市場にターゲットを絞った営業活動の強化を進め、新規商材を獲得しております。また、さらなるインド事業の拡大に向け、マネサール工場の増設工事に着手いたしました。

 当社グループの当連結会計年度の業績は、売上高は、前期とほぼ同様の 65,441百万円(前期比2.9%増)となりましたが、中国EV市場の過当競争の影響等によりワイヤーハーネスの採算性が悪化したことにより、営業利益は1,517百万円(同32.1%減)となりました。また、設備投資に対する補助金収入134百万円が発生したこと等により、経常利益は1,584百万円(同48.6%減)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、中国拠点におけるワイヤーハーネス事業縮小に伴う減損損失238百万円の計上及び繰延税金資産の取崩しを含む税金費用の増加により、624百万円(同76.8%減)となりました。

 提出会社の売上高は36,352百万円(前期比1.3%減)、営業利益は697百万円(同5.3%減)となりました。

 セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。

(車載電装品)

 車載電装品では、主にインドにおける各種電子制御ユニット等の販売増により、売上高は21,931百万円(前期比 0.9%増)、営業利益は740百万円(同11.0%増)となりました。

(民生産業機器)

 民生産業機器では、通信用スイッチユニット及び産業用ロボットコントローラ基板等の販売増により、売上高は 19,335百万円(前期比10.0%増)、営業利益は437百万円(同1,661.6%増)となりました。

(ワイヤーハーネス)

 ワイヤーハーネスでは、二輪用及び船舶用ワイヤーハーネスの販売減により、売上高は23,927百万円(前期比 1.0%減)となりました。営業利益は中国のEV車向け製品の収益性の悪化により、304百万円(同81.1%減)となりました。

(その他)

 その他では、医療関連製品の販売拡大により、売上高は246百万円(前期比112.9%増)、営業損失は18百万円

(前期は117百万円の営業損失)となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度末に比べ 1,530百万円増加し、4,310百万円となりました。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度において営業活動による資金の取得は、5,600百万円(前期は3,223百万円の取得)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益1,337百万円、減価償却費1,997百万円及び棚卸資産の減少額2,000百万円を反映したものであります。

 営業活動によるキャッシュ・フローは、国内及び海外拠点ともに、棚卸資産の削減を図ったことにより、大きく資金を取得する結果となりました。翌期においては米国関税政策の影響等により客先からの受注変動による影響等が懸念されますが、国内外における販売活動の強化・安定稼働のための体制作り及び生産性の向上・在庫削減に努め、営業キャッシュ・フローの増加に努めてまいります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度において投資活動による資金の支出は、1,455百万円(前期は1,959百万円の支出)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出1,695百万円を反映したものであります。

 国内においては、新工場の生産インフラの整備及び生産設備の更新等による設備投資を実施いたしました。海外においては、インドの生産能力増強のための設備投資を実施しております。翌期については、主にインドにおいて新工場の建設及び生産設備の増強など、グループの成長のために必要な投資を中心に投資活動を実施していく考えであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度において財務活動による資金の支出は、2,718百万円(前期は1,626百万円の支出)となりました。これは主に、借入金の減少額2,221百万円を反映したものであります。

 当期においては、棚卸資産の削減による営業キャッシュ・フローによる資金の取得により、借入金の返済に充当することで負債の削減を図ってまいりました。翌期においては、受注変動に即応した材料購買の実施により更なる在庫水準の減少を図り、設備投資資金を捻出してまいります。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

(a)生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年4月1日 至 2025年3月31日)

前年同期比

 

千円

車載電装品

24,533,413

△2.7

民生産業機器

20,449,593

10.1

ワイヤーハーネス

29,440,461

△0.7

 報告セグメント計

74,423,469

1.3

その他

453,319

57.1

合計

74,876,789

1.6

(注)金額は販売価格で表示しており、最終工程の生産実績をセグメント別に集計し、連結会社間取引消去前の数値によっております。

 

 

(b)受注実績

当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年4月1日 至 2025年3月31日)

受注高(千円)

前年同期比(%)

受注残高(千円)

前年同期比(%)

車載電装品

24,468,993

△5.8

2,251,144

△7.5

民生産業機器

20,580,726

10.3

3,553,700

6.6

ワイヤーハーネス

29,265,464

△3.0

1,833,755

△17.0

 報告セグメント計

74,315,184

△0.7

7,638,599

△4.3

その他

528,454

86.5

101,757

3,597.6

合計

74,843,639

△0.3

7,740,356

△3.0

(注)金額は販売価格で表示しております。

 

(c)販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年4月1日 至 2025年3月31日)

前年同期比

 

千円

車載電装品

21,931,227

0.9

民生産業機器

19,335,915

10.0

ワイヤーハーネス

23,927,719

△1.0

 報告セグメント計

65,194,862

2.7

その他

246,512

112.9

合計

65,441,375

2.9

(注)1.セグメント間の取引につきましては相殺消去しております。

 2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自 2023年4月1日

   至 2024年3月31日)

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

   至 2025年3月31日)

 

千円

千円

ヤマハ発動機㈱

8,328,051

13.1

7,803,903

11.9

スズキ㈱

7,353,041

11.6

7,115,176

10.9

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 重要な会計方針及び見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成しております。

 当社グループの連結財務諸表作成にあたっては、当連結会計年度末における資産、負債の報告金額及び収益、費用の報告金額に影響を与える見積り、判断及び仮定を使用することが必要となります。当社グループの経営陣は連結財務諸表の基礎となる見積り、判断及び仮定を過去の経験や状況に応じ合理的と判断される入手可能な情報により継続的に検証し、意思決定を行っております。しかしながら、これらの見積り、判断及び仮定は不確実性を伴うため、実際の結果と異なる場合があります。当連結会計年度末においては、将来の事業計画等の見込数値については、期末時点で入手可能な情報をもとに検証等を行っております。

 なお、連結財務諸表の作成のための重要な会計基準等は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載されているとおりであります。

 

② 当連結会計年度の経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

 当連結会計年度は、中期経営計画(VISION2025)の4年目として、「低炭素社会の実現に資する電子ユニット」「重要電子機器をつなぐワイヤーハーネス」「新規事業」「海外における受注生産事業」の4つの重点分野に集中的に取組んでまいりました。

 具体的には、「低炭素社会の実現に資する電子ユニット」について、世界的な脱炭素化の更なる加速化が予想される中で、二輪車用インバータ等、当社のパワーエレクトロニクス製品の開発を加速すべく、ベトナム・ダナン、インド・マネサールR&D部門を強化し、自社製品の開発・営業活動を進めてまいりました。

 「重要電子機器をつなぐワイヤーハーネス」につきましては、BCP対応として設立したフィリピン子会社での生産体制の整備を図り、四輪・二輪・船舶向けの各分野に対応できる生産体制の構築を進めております。

 「新規事業」につきましては、メディカル関連・超音波関連の新製品の開発・製造に注力しております。メディカル関連では、美容向け商材の新規量産を開始いたしました。

 「海外における受注生産事業」につきましては、主にインド市場においてEV・電動化商材の受注活動に注力し、今後の販売拡大に繋がる量産受注を獲得しております。また、中国においては、一部の不採算事業の事業縮小を図り、収益性の向上に努めてまいりました。

 

経営成績の分析

(売上高)

 当連結会計年度における売上高は、前連結会計年度に比べ1,833百万円増加し、65,441百万円(前期比2.9%増)となりました。アウトドア系需要の回復により民生産業機器で通信用スイッチユニットの販売が大きく増加した影響により、売上増となりました。各セグメントの外部顧客に対する売上高の連結売上高に占める割合は、車載電装品が33.5%、民生産業機器が29.5%、ワイヤーハーネスが36.6%、その他が0.4%となりました。

 提出会社の売上高は、36,352百万円(同1.3%減)となり、前事業年度に比べ減少となりました。前期後半より始まりました検査問題に端を発する国内自動車生産の低迷、四輪車・船外機市場のコロナ禍における好調な受注後の在庫調整などが背景にあります。

(売上総利益)

 当連結会計年度における売上総利益は、前連結会計年度に比べ794百万円減少し、6,381百万円(前期比11.1%減)となりました。売上総利益率は、中国EV市場の過当競争による採算性の悪化及び賃上げに伴う労務費の増加の影響等により、前連結会計年度に比べ1.5ポイント減少の9.8%となりました。

(営業利益)

 当連結会計年度における販売費及び一般管理費は前連結会計年度に比べ77百万円減少し、4,864百万円(前期比1.6%減)となりました。経費の節減取組みの強化により固定費の改善を実施いたしました。

 提出会社の営業利益は697百万円(同5.3%減)となりました。運送費の削減や減価償却費の減少あったものの、賃上げに伴う労務費の増加により、前事業年度に比べ減少となりました。

 以上の結果、当連結会計年度の営業利益は、前連結会計年度に比べ716百万円減少し、1,517百万円(同32.1%減)となりました。

(経常利益)

 当連結会計年度における営業外収益は、当連結会計年度では為替差損となったことが影響しており、前連結会計年度に比べ745百万円減少し、326百万円(前期比69.6%減)となりました。

 営業外費用は、固定資産の圧縮記帳40百万円の計上等により、前連結会計年度に比べ35百万円増加し、259百万円(同15.7%増)となりました。

 以上の結果、当連結会計年度の経常利益は、前連結会計年度に比べ1,496百万円減少し、1,584百万円(同48.6%減)となりました。

(親会社株主に帰属する当期純利益)

 当連結会計年度における特別利益は、10百万円(前期比96.6%減)となりました。特別損失は、中国拠点におけるワイヤーハーネス事業縮小に伴う減損損失の計上により、前連結会計年度に比べ235百万円増加し、257百万円(同1,064.8%増)となりました。

 以上の結果、当連結会計年度における親会社株主に帰属する当期純利益は、624百万円(同76.8%減)となりました。

 

 米国関税政策に伴い受注動向の不確実性が高まる等、世界経済は当面予断を許さない状況が続くと想定されるため、受注の変動に対応できる生産体制の合理化、自動化の推進等に注力してまいります。中期的には、販売先の多角化が必須な状況であり、新規顧客の開拓、新規商品の開発及び販売拡大を進めてまいります。

財政状態の分析

(流動資産)

 当連結会計年度末における流動資産の残高は、29,599百万円(前期末比4.3%減)となりました。原材料及び貯蔵品の減少1,653百万円(同12.8%減)が主な要因であります。

(固定資産)

 当連結会計年度末における固定資産の残高は、16,449百万円(前期末比3.8%減)となりました。建物及び構築物の減少740百万円(同9.9%減)及び機械装置及び運搬具の減少533百万円(同13.7%減)が主な要因であります。

(流動負債)

 当連結会計年度末における流動負債の残高は、12,034百万円(前期末比14.8%減)となりました。短期借入金の減少2,035百万円(同31.7%減)が主な要因であります。

(固定負債)

 当連結会計年度末における固定負債の残高は、9,431百万円(前期末比1.4%減)となりました。長期借入金の減少181百万円(同2.0%減)が主な要因であります。

(純資産)

 当連結会計年度末における純資産の残高は、24,583百万円(前期末比1.1%増)となりました。利益剰余金の増加156百万円(同0.9%増)が主な要因であります。

 

キャッシュ・フローの分析

 キャッシュ・フローの状況につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

 当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

 当社グループの資本の財源及び資金の流動性につきましては、次のとおりです。

 当社グループの運転資金需要のうち主なものは、材料及び部品の購入のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、設備投資等によるものであります。

 当社グループは、事業運営上必要な資金の流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。

 短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資や長期運転資金の調達につきましては、金融機関からの長期借入を基本としております。

 なお、当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は13,500百万円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は4,310百万円となっております。

 

5【重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

 当社グループは、創設以来「新しい時代の流れの中での新しい価値の創出」を基本理念として、新規分野への可能性を求めて開発に取り組んでおります。

 業界における技術的進歩、発展にはめざましいものがあります。その中にあって、ユーザーニーズや技術動向を的確にとらえ素早く商品に反映させることが極めて重要であると認識しております。近年加速する電動化の流れに対応し、車載用パワーエレクトロニクス製品として、弊社ブランドによる車載用充電器やDCDCコンバータを上市しております。また、国内メーカー向けに自社で開発した電動二輪車用充電器の量産も行っております。

 今後もこの分野での技術開発を継続し、これまで培ってきた電力変換技術を活かし、充電器やDCDCコンバータに加え、車載用モーターインバータ機器の開発に取り組んでまいります。

 また、微細加工の技術を応用し、極細注射針の国内販売を開始する等、医療分野やヘルスケア分野における製品開発にも取り組みをしております。

 なお、当社グループの研究開発は、基礎技術の研究及び自社の企画商品として開発する場合と、得意先から開発テーマをいただき、ODMとして開発する場合があります。

 当連結会計年度における各セグメント別の主な成果は次のとおりであります。なお、当連結会計年度の研究開発費の総額は268百万円であります。

 

(1)車載電装品

 車載電装品につきましては、EV二輪向けバッテリー用充電器において、仕向け国及び用途拡大へ向けた取り組みを推進中です。当連結会計年度においては、インド仕向けの設計開発が完了し量産を開始いたしました。来期以降では他の仕向け国における量産立上げを計画しております。また既存開発品である汎用DCDCコンバータのマリン向け派生品は、設計開発が完了して量産を開始しました。

 電動化へ向けてユニットの競争力が激化していく中、ASTIとして新たな製品開発に向けて更なる開発取組みを推進しております。当連結会計年度は放熱技術を追求し、大電流大容量DCDCコンバータ、超小型DCDCコンバータの開発試作品が完成いたしました。またデジタル制御を活用した充電器開発は進行中で、来期に開発試作品の完成を見込んでおります。

 また、小型モビリティ向け10kWインバータについては、顧客のニーズに合わせた設計変更及び評価試験を進めて参りました。EV二輪を視野に入れた48V6kWインバータはインドでの試作を行うとともに、さらなる小型化へ向けた設計、評価を進めてまいりました。

 国際規格への対応としては、自動車のサイバーセキュリティへの対応にむけて、ISO21434に対応した車載ECU製品の開発を完了し、2025年10月からの量産に向けて準備を進めております。

 また、主にxEV向けとなる電気式膨張弁用制御基板の派生モデルの設計を完了し、来期の量産に向けて準備を進めております。

 なお、当連結会計年度の研究開発費の金額は、168百万円であります。

 

(2)民生産業機器

 量産中の超音波ホッチキスや超音波カッターで培った技術を応用して超音波振動を用いた清掃用ツールを開発し、ASTIブランドで販売を行っております。

 超音波振動吸引ノズル(ウルトラソニック クリーナーノズル)の販売を皮切りに、当連結会計年度には幅を2倍以上にして立って作業ができるスタンディングモデルと超音波振動スクレーパーの販売を開始いたしました。

なお、当連結会計年度の研究開発費の金額は、23百万円であります。

 

 

(3)ワイヤーハーネス

 ワイヤーハーネスでは、HEV EV向け電池用バスバーの超音波接合技術(銅とアルミの異種金属接合)と自動化の研究取り組み、従来の単発溶接に対し、生産タクト短縮の為の順送連続端子式での連続溶接を実現しました。連続端子化することによって、アンビルの共振による振動の伝播が抑制され、溶接部に超音波振動を集中させることができエネルギー損失の低下が見込めるため、HEV EVの電池価格低減に貢献できる技術の確立を目指して取組みをしております。

 ワイヤーハーネスの部品事業拡充のための新規部品については、中期経営計画(VISION2025)の4年間において90件を超える起案を実施しております。開発コンセプトは他に無いオリジナルな機能や意匠を搭載することであり、性能向上を原則とし、新技術を盛り込んだ部品を提案してまいりました。特に超音波接合技術の応用は、従来のカシメによる接触抵抗の問題を解決する手段として重要な工法技術であり、それを安定的に低価格で供給できるようにするための研究を進めており、来期以降の部品にも搭載できる目途がついてまいりました。

 ハーネス設計の分野では、新規車両の開発段階より顧客に入り込み製品開発を行っています。既存の工法ではなく、超音波溶接を用いた新しい工法に取り組んでおります。自社部品の提案や、新工法の提案は一部客先製品に採用されております。また、他社ハーネスのベンチマークを実施し、ゲストエンジニア活動でも技術提案を行っていくことで、新たなハーネス受注へ繋げております。

なお、当連結会計年度の研究開発費の金額は、70百万円であります。

 

(4)その他

 医療機器分野においては、経済産業省の補助金を受け、薬液ムダが少ない極細注射針を2024年2月から欧州で先行販売しておりましたが、2024年11月に国内医療機器承認(φ0.16mmとしては初)を取得し、2025年初頭から国内販売も開始いたしました。

 また、微細加工技術を用いたヘルスケアデバイス分野において、大手化粧品メーカーと次世代型マイクロニードルデバイスの共同開発を数年に亘り行ってきた結果、2024年秋から量産開始に至っております。

 今後も広くヘルスケアに貢献する独創的な製品の開発に邁進してまいります。

なお、当連結会計年度の研究開発費の金額は、5百万円であります。