当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは、創業以来の経営基本方針である「3つの安心」の価値観を受け継ぎ、内外環境変化に適応するために発展的に再定義したグループ企業理念「Sysmex Way」及び「Shared Values」を定めております。
当社グループの進むべき方向性と大切にすべき価値観を表した「Sysmex Way」をグループ全体で実践し、社会からのより厚い信頼と更なる飛躍を目指します。
(2) 経営環境の認識
今後の見通しにつきましては、国内経済活動は内需主導で緩やかに回復する傾向にあり、賃上げや設備投資の拡大等の前向きな動きにつながると見込まれます。海外経済においては、米国では金融環境の引き締まりが製造業を中心に企業部門の経済活動を下押しし、経済活動が緩やかに減速することが見込まれます。欧州ではインフレ圧力の緩和による景気の底打ち、中国では消費回復力の弱さ・不動産不況の継続により再び景気低迷が見込まれます。加えて、中東やロシア・ウクライナ問題の地政学的リスクが残る等、依然として不透明な状況が続いております。
医療を取り巻く環境は、医療の質・サービス向上へのニーズの高まり、人工知能(AI)・情報通信技術(ICT)等の最先端技術のヘルスケア領域への実装が急速に進展しております。加えて、新興国の経済成長に伴う医療需要の拡大等、今後も継続した成長が期待されております。また、新型コロナウイルス感染症のグローバルなパンデミックを起点とし、医療提供体制の在り方や医療環境自体が大きく変化する可能性もあり、医療機能の分散化、医療アクセスの向上、セルフメディケーション領域における新たな価値の創出等、更なる成長機会が見込まれております。
こうした中、当社グループでは、2023年4月より新たな中期経営計画(2024年3月期から2026年3月期まで)をスタートさせました。同期間中における重点アクションの推進により、持続的な成長の実現とそれを支える経営基盤の強化を図ってまいります。
2025年3月期の連結業績予想につきましては、製品ラインアップの拡充や販売・サービス体制の強化等により、売上・利益共に伸張することを想定しており、売上高510,000百万円、営業利益87,000百万円、税引前利益82,500百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益55,000百万円を予想しております。
(注)算定にあたりましては、通期の為替レートを対米ドル147円、対ユーロ158円で想定しております。
なお、上記予想は、現時点で入手している情報に基づき算定したものであり、様々な要因により変動する可能性があります。
(3) 目標とする経営指標
グループ中期経営計画におきまして、2026年3月期を最終年度として、連結売上高560,000百万円、連結営業利益112,000百万円を達成することを目指します。
(4) 新たな長期経営戦略
今後、医療を取り巻く環境は大きく変化することが予測されております。医療資源を有効に活用するために、医療のデジタル化に加え、医療機能の分散化、予防や個人でのセルフメディケーションが更に重要になると見込まれております。また、医療の高度化による、再生細胞医療や遺伝子治療等、新たな治療法の実用化や医療現場におけるロボット技術の活用が期待されております。
このような中、当社グループでは、グループ企業理念「Sysmex Way」のもと、2033年度を最終年度とする新たな長期経営戦略を策定いたしました。
<長期ビジョン>
「より良いヘルスケアジャーニーを、ともに。」
当社グループは、健康で長生きしたいという人々の普遍的な願いに寄り添い、一人ひとりの身体状態を正確に捉え、個々に最適な医療・サービスが提供されることにより、生涯にわたり健康な状態が維持できる社会の実現を目指します。
「ヘルスケアジャーニー」は当社グループが新たに提唱する概念であります。人が一生の中(ライフステージ)で、自身のヘルスケアについて経験する各種イベントと、医療機関等を含む対応のプロセスを「旅路」として捉えるものであります。「より良いヘルスケアジャーニーの実現」は世界の人々のQOL向上という重要な社会的課題の一つであります。当社グループは、一人ひとりのヘルスケアジャーニーがより良いものになるよう、様々な協創を通じて新たな価値を提供し、社会にとって不可欠な存在として成長していくことを目指します。
当社が、創業以来取り組んでいるダイアグノスティクス事業はヘルスケアジャーニーの中で重要な役割を担うものであります。高い成長と収益性を実現すると共に、更に強化することによる「イノベーションの創出」や新たな価値提供を目指す「新興国市場へのフォーカス」、一人ひとりの最適な治療に不可欠な「個別化診断」、健常・未病・予防のための「個別化予防」、慢性疾患等を持ちながらも日常生活を続けるための「予後モニタリング」に取り組んでまいります。
またダイアグノスティクス事業とは異なる領域である手術支援ロボットや再生細胞医療の治療領域への挑戦等、価値創出できる領域を選択・追加し、当社の成長につなげてまいります。
(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループでは、2023年4月より新たな中期経営計画(2024年3月期から2026年3月期まで)をスタートさせております。2033年に向けた長期ビジョンの実現を目指し、今後3年間で取り組むべき重点アクションを設定し、具体的施策の実行を継続して推進いたします。今後の成長が期待される免疫検査分野への注力、グループ最大の収益源であるヘマトロジー分野における競争力の再強化に取り組みます。また、新興市場においては、市場ニーズに適応した新製品・サービスの開発により、成長機会を確実に獲得いたします。更に、非連続な成長を実現するため、MR(Medical Robot)事業、再生細胞医療事業等を新たに加え、事業領域の拡大に向けた取り組みを推進いたします。
また、新たな価値創造及び企業体質強化に向けたビジネスプロセス改革をグローバルに推進するため、次世代基幹システムやデジタル基盤刷新への取り組みを継続いたします。グループ全体の生産性を向上すると共に、お客様に対する新たなソリューションの創出に向けたデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現を目指します。
加えて、地球環境の持続可能性が喫緊の課題となっている中、グローバルに事業を展開する企業として、事業活動における環境への負荷低減が重要な課題の一つだと認識しております。長期的な環境マネジメントの指針として「シスメックス・エコビジョン2033」を策定しており、製品ライフサイクルにおけるCO2排出量や水消費量の削減、環境に配慮したグリーン調達等を継続して推進いたします。このように製品・サービスの提供を通じた医療課題解決に取り組むと共に、環境への配慮や魅力ある職場の実現等、優先的に取り組むべき課題(マテリアリティ)をグループ全体で推進し、多様なステークホルダーの皆様へ安心をお届けすると共に、サステナビリティ経営の実現を目指します。
経営戦略の実行における重要な課題は以下のとおりであります。
<長期ビジョンの実現に向けた取り組み>
① 既存事業領域のイノベーションによる競争力の強化と市場の拡大
免疫検査分野において、全自動免疫測定装置 HISCLTM-5000/HISCL-800の試薬項目の拡充、アルツハイマー型認知症の診断支援を目的としたビジネスの早期事業化を推進いたします。ヘマトロジー分野では、「多項目自動血球分析装置 XRTMシリーズ」のグローバル展開を加速させることで、成長性・収益性の向上を目指します。また、人口増加及び経済成長、医療品質の向上が大きく期待される新興国において、市場ニーズに適した製品の導入を進め、医療アクセスの向上や医療インフラ強化に貢献いたします。特に、インドを重要市場と位置付け、事業企画・製品開発・市場導入を加速させ、新興国における市場シェアの拡大に取り組みます。
また、血液凝固検査分野においては、Siemens Healthcare Diagnostics Inc.とのグローバルOEM契約締結により、機器・試薬を相互に供給する協業体制のもと、顧客価値の更なる向上を目指します。
② 個別化医療領域における、遺伝子検査を中心とした事業化の加速
今後、大きな成長が期待される個別化医療領域において、当社が強みを持つリキッドバイオプシー技術(遺伝子、細胞、タンパク)を活用した新規項目開発に取り組みます。すでに当社が有する研究用製品・技術を活用し、個別化医療領域を牽引する技術の商品化及び市場導入への移行を目指します。加えて、既存の検査技術の組み合わせやデータサイエンスの活用により、造血器腫瘍、癌、遺伝性疾患、加齢関連疾患等を対象とした新たな診断ソリューションの創出に取り組みます。
③ 予防・セルフメディケーション領域における新たなビジネスモデルの創出
社会的ニーズが更に高まる予防・セルフメディケーション領域において、より個人を主体とする医療への移行、医療の分散化を背景に、在宅検査・高齢者向け低侵襲検査を可能とする製品・サービスの開発を推進いたします。個人の時系列データ、集団の統計学的データの両面からの初期医療支援、ヘマトロジー等の既存アセットを活かした集団感染の予防やマラリア等の感染症向け検査の充実に取り組み、ユニバーサルヘルスカバレッジを実現してまいります。
④ 治療領域における、MR事業を中心とした事業成長の加速
手術支援ロボット「hinotori™」による外科領域のビジネスを日本で着実に拡大させると共に、グローバル展開に向け、海外薬事承認取得に向けた活動を推進いたします。また、当社が検体検査領域で培った技術やノウハウを活かすことで、再生医療や遺伝子治療等、診断と治療の境界に位置する領域での新たな事業の創出や、革新的なデジタル技術の社会及び医療への実装を見据えたオープンイノベーションを推進し、医療データを利活用した新たな事業の創出にも取り組みます。
⑤ 資源循環型バリューチェーン実現と社会課題解決に向けた変革
2040年のカーボンニュートラルの達成に向け、包装材、消耗品をターゲットに環境配慮材料へと切り替え、脱プラスチックを推進いたします。また、全てのバリューチェーンで4R※によるグリーンイノベーションを創発し、顧客、アライアンスパートナー、他社、サプライヤー等とのオープンイノベーションと共に、資源の無駄を出さない循環型バリューチェーンの変革を行います。また、医療課題の解決、品質の向上、環境配慮への対応強化、ガバナンスの強化等、当社の持続的成長に向けた優先的に取り組むべき課題(マテリアリティ)やサステナビリティ目標に基づき、事業活動を通じた社会課題解決への貢献を通じて、サステナビリティ経営を推進してまいります。
⑥ 人的資本及び経営基盤強化を通じた企業価値の向上
持続的な成長を支える次世代リーダーと高度専門人材の獲得及び育成を通じ、経営戦略に合わせた人的資本ポートフォリオの拡充を図ります。また、スマートワークの推進や公正で魅力的な企業カルチャーの醸成によるエンゲージメントの向上に取り組みます。引き続き、内部統制の仕組み強化とリスクマネジメント機能の最適化によるグループ管理の高度化、DXによる業務プロセスの改善と生産性の向上に取り組みます。また、経営基盤強化の一環として、ROIC及び主要関連指標の分析、モニタリングを行い、改善施策を立案・実行する等、資本コストを意識した取り組みを強化してまいります。
※ 4R:Reduce、Reuse、Recycle、Replace
当社グループは創業以来、お客様、取引先、従業員への「三つの安心」を提供することを大切にしてきました。その姿勢は現在においても変わることなく、現在のグループ企業理念「Sysmex Way」及び「Shared Values」においても、株主様と社会を加えたステークホルダー全般を意識した経営、事業活動を通じて「安心」の提供に努めております。2023年に長期ビジョン「より良いヘルスケアジャーニーを、ともに。」を掲げ、その実現に向けてスタートさせた新しい長期経営戦略ではサステナビリティを重視した経営を推進しております。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
<サステナビリティ経営について>
① ガバナンス
サステナビリティ関連のリスク及び機会の監督に責任を負うガバナンス機関として内部統制委員会を設置し、事業部門から独立した社長直轄の組織である内部統制室が事務局を務めております。内部統制委員会の委員長は取締役社長が務め、メンバーは取締役会長、担当執行役員及び常勤監査等委員、オブザーバーは社外取締役が務めております。
内部統制委員会にて、リスク領域毎の対応計画を審議・決定し、コンプライアンス委員会等、関連委員会、部門・関係会社で計画を推進し、取り組み状況を半期毎にモニタリングし、取締役会に報告しております。
リスクマネジメント体制及び関連する委員会は「
② 戦略
サステナビリティ関連のリスク及び機会、当社の事業に与えると予想される影響、対応策については、「
③ リスク管理
①のリスクマネジメント体制において、内部統制委員会では、当社グループは社内外の環境変化を考慮した上、毎年リスクアセスメントを実施しております。リスクの抽出に漏れが生じないよう、主要なリスク領域を担当する委員会や部門、及び関係会社にてリスクを特定し、内部統制委員会において、影響度と発生可能性等の観点からリスクの重要度を分析・評価しております。
リスクマネジメントプロセスについては、「
④ 指標と目標
②の戦略に関連する「サステナビリティ目標」を設定し、取り組みのモニタリングを行っております。
サステナビリティ目標の進捗状況
|
マテリアリティ |
KPI※1 |
目標 |
実績 |
||||
|
2023年度 |
2025年度 |
2033年度 (エコビジョン) |
2023年度 |
||||
|
健康社会への新たな価値創出 |
イノベーションを通じた医療課題解決 |
ヘマトロジー検査件数 |
CBCテスト数(試薬数ベース) |
- |
- |
- |
3,325百万件 |
|
ヘマトロジー 市場シェア※2 |
ヘマトロジー分野における単年度の機器・試薬・サービスの市場規模に対する連結売上高比率 |
- |
- |
- |
53.0% |
||
|
手術支援ロボットに よる症例数 |
手術支援ロボットシステム(株式会社メディカロイド製)を用いた症例数 |
- |
- |
- |
2,903件 |
||
|
特許保有件数 |
特許、実用新案、意匠の保有件数の合計 |
- |
- |
- |
3,868件 |
||
|
特許出願件数 |
特許、実用新案、意匠の出願件数の合計 |
- |
- |
- |
200件 |
||
|
がんゲノム医療解析 実施件数※3 |
NCCオンコパネルを用いたがんゲノム医療解析実施件数 |
- |
- |
- |
1.6千人 |
||
|
OSNA法による 乳がん患者検査数 |
乳がん患者に対してOSNA法(がんリンパ節転移検査システム)を用いた検査の実施件数 |
- |
- |
- |
52千件 |
||
|
医療アクセスの向上 |
新興国・開発途上国 売上高 |
新興国・開発途上国の連結売上高 |
- |
- |
- |
1,646億円 |
|
|
責任ある製品・サービス・ソリューションの提供 |
品質と信頼の追求 |
リコール件数 |
販売している製品(機器・試薬)を対象として、自主回収・自主改修を実施した件数 |
- |
- |
- |
2件 |
|
FDA Warning Letter 件数 |
FDA Warning Letterを受けた件数 |
- |
- |
- |
0件 |
||
|
サプライチェーンマネジメントの強化 |
CSR調査回答率 (国内・海外一次サプライヤー) |
原材料一次サプライヤー(国内・海外)に対して、CSR調査に回答したサプライヤーの割合(海外関係会社の直サプライヤーは含まない) |
90% |
90% |
- |
95% |
|
|
サプライヤー(国内)に対するトレーニング件数※4 |
サプライヤー(国内)を対象とした説明会、研修・トレーニング等の実施回数(単年度) |
5件 |
5件 |
- |
6件 |
||
|
サプライヤー (国内一次)第三者認証取得率※4 |
原材料一次サプライヤー(国内)の製造や製品品質に関する第三者認証の取得率 |
- |
- |
- |
88% |
||
|
環境への負荷低減 |
製品ライフサイクルにおける資源循環 |
プロダクトロスの ゼロ化 |
自社製造品、原材料、スペアパーツの未使用廃棄率(自社製品の未使用廃棄物の原価/売上高) |
0.22% |
0.18% |
0.1%未満 |
0.40% |
|
リサイクル・環境配慮材料への完全代替 |
容器と包装材のリサイクル・環境配慮材料の利用率 |
30% |
60% |
100% |
43% |
||
|
GHG排出量削減率 (スコープ3) |
2022年度を基準年度とするGHG排出量(スコープ3)の削減率 |
3%削減 |
10%削減 |
35%削減 |
4%削減*5 |
||
|
包装用資材削減率 |
2019年度を基準年度とする包装材料総重量の削減率 |
- |
- |
- |
9%削減 |
||
|
事業活動における環境負荷低減 |
GHG排出量削減率 (スコープ1、2) |
2022年度を基準年度とするGHG排出量(スコープ1、2)の削減率 |
30%削減 |
40%削減 |
55%削減 |
30%削減*5 |
|
|
再生可能エネルギー 比率 |
全電気使用量に対する再生可能エネルギー使用量の比率 |
65% |
75% |
90%以上 |
63%*5 |
||
|
一人当たりエネルギー使用量削減率 |
2022年度を基準年度とする一人当たりのエネルギー使用量の削減率 |
1%削減 |
3%削減 |
- |
11%削減*5 |
||
|
マテリアリティ |
KPI※1 |
目標 |
実績 |
||||
|
2023年度 |
|
2033年度 (エコビジョン) |
2023年度 |
||||
|
環境への負荷低減 |
事業活動における環境負荷低減 |
水消費量削減率 (主要試薬工場) |
2022年度を基準年度とする試薬生産量当たりの水使用量の削減率 |
4pt削減 |
23pt削減 |
90pt削減 |
2pt増加*5 |
|
総廃棄物量削減率 |
2022年度を基準年度とする連結売上高当たりの事業活動に伴う総廃棄物量の削減率 |
1%削減 |
5%削減 |
15%削減 |
31%削減*5 |
||
|
製商品廃棄額対 売上高比率 |
有効期限切れ等の理由により廃棄となった製商品の廃棄額の対連結売上高比率 |
- |
- |
- |
0.4% |
||
|
ガバナンスの強化 |
コーポレート・ガバナンス |
投資家アナリスト ミーティング数※4 |
機関投資家・証券会社アナリストとのミーティング実施社数 |
- |
- |
- |
723件 |
|
コンプライアンス |
内部通報件数 |
内部通報受付件数 |
- |
- |
- |
26件 |
|
|
倫理違反件数 |
法律に違反した事象、及びグローバルコンプライアンスコード違反があったとして制裁処分が科された事象の合計件数 |
- |
- |
- |
15件 |
||
|
リスクマネジメント |
情報リテラシー教育 受講者数※3 |
情報セキュリティに関するトレーニングの受講者数(延べ) |
- |
- |
- |
11,097名 |
|
|
災害対応訓練 参加率※3 |
災害等を想定した安否確認ツールを用いた訓練参加率(長期休業者含む) |
- |
- |
- |
99.4% |
||
|
魅力ある職場の実現 |
エンゲージメントの向上 |
エンゲージメント スコア |
企業風土調査結果におけるエンゲージメント項目の好意的回答率 |
75% |
|
- |
|
|
|
正社員のみの離職率 (解雇、人員削減、転職、定年等、理由を問わず組織を離れた人の割合) |
10%以下 |
10%以下 |
- |
|
||
|
|
自己都合の年間退職率 |
- |
- |
- |
|
||
|
育児休業からの復帰率 ※4 |
育児休暇取得後の職場への復帰率 |
- |
- |
- |
99% |
||
|
男性育児休業取得率 ※4 |
男性従業員(嘱託・パートタイマー含む)のうち、配偶者が出産した男性従業員に対する育児休業取得者の割合 |
60%以上 |
65%以上 |
- |
61% |
||
|
ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョンの推進 |
|
課長級以上の女性比率 |
18%以上 |
|
- |
|
|
|
|
Managerポジションの女性比率 |
- |
- |
- |
|
||
|
|
女性従業員比率 |
- |
- |
- |
|
||
|
管理専門職層の 中途採用者比率※4 |
管理専門職ポジションにおける中途採用者の比率 |
- |
- |
- |
39.8% |
||
|
採用者の男女比率 (新卒、中途)※4 |
新卒採用における女性比率、中途採用における女性比率 |
- |
- |
- |
新卒 45.2% 中途 25.8% |
||
|
経営層の女性比率、 外国籍比率※4 |
経営層における女性比率、外国籍比率 |
- |
- |
- |
女性 8.3% 外国籍16.7% |
||
|
|
経営層における女性比率 |
- |
- |
- |
|
||
|
管理専門職層の賃金 格差(総報酬額)※4 |
平均総報酬額における性別比率:管理専門職層(男性の賃金に対する女性の賃金の割合) |
- |
- |
- |
94.0% |
||
|
一般社員層の賃金 格差(総報酬額)※4 |
平均総報酬額における性別比率:一般社員層(男性の賃金に対する女性の賃金の割合) |
- |
- |
- |
82.1% |
||
|
障がい者雇用率※3 |
従業員に占める身体障がい者・知的障がい者・精神障がい者の割合 |
2.35%以上 |
2.65%以上 |
- |
2.38% |
||
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
マテリアリティ |
KPI※1 |
目標 |
実績 |
||||
|
2023年度 |
2025年度 |
2033年度 (エコビジョン) |
2023年度 |
||||
|
魅力ある職場の実現 |
人材の育成 |
|
会社が提供する研修を対象とした従業員一人当たりの平均教育時間(オンライン学習含む) |
40.0時間 |
|
- |
|
|
付加価値生産性 (単体)※4 |
付加価値生産性/時間 |
- |
- |
- |
14,760円 |
||
|
付加価値生産性 (グループ) |
付加価値生産性/人 |
2,000万円 |
|
- |
|
||
|
人材育成投資 (単体)※4 |
人材開発・研修の総投資額 |
2.34億円 |
2.52億円 |
- |
2.41億円 |
||
|
人材育成投資 (グループ) |
人材開発・研修の総投資額 |
- |
- |
- |
|
||
|
研修への参加率 (単体)※4 |
各年度の研修を受講した従業員の総数÷総従業員数 |
90%以上 |
90%以上 |
- |
100% |
||
|
研修への参加率 (グループ) |
各年度の研修を受講した従業員の総数÷総従業員数 |
- |
- |
- |
|
||
|
サクセッションプラン有効率※4 |
キーポジションにおける内部登用率 |
- |
- |
- |
100% |
||
|
サクセッション・カバレッジ率※4 |
キーポジションにおける後継候補準備率 |
- |
- |
- |
311.0% |
||
|
健康増進と労働安全の推進 |
年間総労働時間※3 |
正社員一人当たりの年間総労働時間 |
2,000時間 |
1,980時間 |
- |
2,017時間 |
|
|
有給休暇取得率※3 |
正社員一人当たりの年次有給休暇取得率 |
70%以上 |
75%以上 |
- |
74.6% |
||
|
労働災害度数率※3 |
延べ実労働100万時間当たりの死傷者数の割合 |
0.5未満 |
0.5未満 |
- |
0.78 |
||
|
労働災害強度率※3 |
延べ実労働1,000時間当たりの労働損失日数の割合 |
0.05未満 |
0.05未満 |
- |
0.07 |
||
※1 目標を「-」で表示している項目は、目標を設定しないモニタリング項目であります。
※2 当社及びClearstate社が出所であります。
※3 国内グループ会社が対象であります。
※4 当社単体が対象であります。
※5 有価証券報告書提出日現在の速報値であります。確定値は2024年9月頃公表予定の「
<人的資本>
① ガバナンス
サステナビリティ関連のリスク及び機会の監督に責任を負うガバナンス機関として内部統制委員会を設置し、事業部門から独立した社長直轄の組織である内部統制室が事務局を務めております。内部統制委員会にて、リスク領域毎の対応計画を審議・決定し、人的資本については、人事委員会、各セグメントで実施する人活会議を定期的に開催し計画を推進しております。また、内部統制委員会では計画に対する活動状況をモニタリングし、取締役会に報告しております。
リスクマネジメント体制は「
② 戦略
人材獲得競争の激化や人材流出のリスク、魅力ある職場の実現による経営基盤強化を機会として捉えております。長期経営戦略においては、人的資本戦略を設定し、3つの人的資本の目指す姿に向けた取り組みを推進しております。
1つ目の「人材ポートフォリオの最適化」とは、戦略を推進し、企業の持続的な価値向上に寄与する人材が適切に配置されていることです。この実現に向けて、経営戦略が目指す事業領域や機能、スキル・専門性、多様性等多面的な視点で組織づくりに取り組みます。2つ目の「高いエンゲージメント」とは、従業員一人ひとりが心身共に充実し、個々の働きがいが実現されていることです。そのため、個々のウェルビーイングを向上させる職場環境の構築や、従業員の成長機会を提供していきます。更に、公平かつ公正な機会の提供や、DE&Iの取り組みを推進する他、時間、場所、雇用形態に関わらず多様な人材が活躍できる仕組みを構築します。3つ目が「最高のチームワークの発揮」です。チームワークを最大限発揮するためには、自主性を尊重し、チャレンジを促進する 企業風土と豊富なリーダー層の確保・育成が重要です。グローバルキーポジションの後継者の可視化や育成機会を充実することで、既存事業と新規事業をけん引するリーダーを持続的に確保・育成していきます。組織風土についても、企業風土調査結果を従業員に公開し、対話を通じて向上に取り組みます。
③ リスク管理
グループ全体のリスクマネジメントを推進する内部統制委員会において、人的資本を含むリスクと機会全般におけるアセスメントを毎年実施し、グループとして事業に与える影響が大きなリスクと機会を特定し対策を講じる体制を構築しております。
また、人事委員会では、企業風土調査やココロの健康診断等の従業員からの声、ISO30414※の審査時に受けた第三者からの評価内容等、多面的に課題を抽出し、人的資本に関するリスクと機会に対して必要な取り組みを行っております。
④ 指標と目標
人的資本戦略では、実効性ある人的資本の活用及び成果のモニタリングのため、サステナビリティ目標の各指標に加え、モニタリング項目を設定して、適時適切な対応を実施いたします。また、2023年10月には、人的資本に関する情報開示の国際的なガイドラインであるISO30414※の認証を取得しました。今後もこれらの開示情報を通じて人的資本経営の質を高め、社内外のステークホルダーとの対話を充実させてまいります。
※国際標準化機構(International Organization for Standardization)のマネジメントシステム規格の一つで、人的資本情報について、定量化し、分析し、開示するための国際的な指標として設けられたガイドライン。生産性やダイバーシティ等、人的資本に関する11の項目と58の指標で構成されている。
※項目は当社を対象としており、その他は当社グループが対象であります。
(注)1.要員計画・人員数は期末時点の人員数であります。また、派遣労働者等を含んだ人員数であります。
2.人件費は主に外貨建ての人件費に関する換算レートについて、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 22.主な費用の性質に関する情報」に記載されている人件費と異なっています。
3.目標を「-」で表示している項目は、目標を設定しないモニタリング項目であります。
<気候変動>
① ガバナンス
サステナビリティ関連のリスク及び機会の監督に責任を負うガバナンス機関として内部統制委員会を設置し、事業部門から独立した社長直轄の組織である内部統制室が事務局を務めております。内部統制委員会にて、リスク領域毎の対応計画を審議・決定し、環境課題については、環境マネジメントオフィサー(取締役 常務執行役員 小野 隆)の統括・管理のもと、環境管理委員会を定期的に開催し計画を推進しております。また、内部統制委員会では計画に対する活動状況をモニタリングし、取締役会に報告しております。
リスクマネジメント体制は「
② 戦略
シスメックスは、2020年に実施の2℃シナリオに加え、1.5℃シナリオ※1を取り込んでシナリオを更新し、それに伴うリスクと機会の再評価を実施しました。グループの全事業※2を対象に特定したリスクと機会が及ぼす財務影響は、2033年度の営業利益に与える影響を基準として3段階で評価しました。1.5℃シナリオでは市場リスクや評判リスク、4℃シナリオ※3では自然災害等の物理的リスクの影響が相対的に大きく、機会の観点では、資源の効率、製品及びサービス、レジリエンスにおける影響が相対的に大きいと分析しております。※4
※1 IEA NZE2050、IPCC RCP2.6等。気候変動に対する厳しい対策を取ることにより、産業革命前からの世界の平均気温上昇が1.5℃未満に抑えられるシナリオ。
※2 自社のみならず、原材料や出荷物流等の上流や製品の使用等下流を含めたサプライチェーン全体を分析対象としている。
※3 IPCC RCP8.5等。現状を上回る温暖化対策をとらないことにより、産業革命前からの世界の平均気温上昇が4℃未満となるシナリオ。
※4 リスクと機会のシナリオ分析については2024年9月頃公表予定の「
③ リスク管理
グループ全体のリスクマネジメント体制の中で、内部統制委員会にて環境や気候変動を含むリスクと機会全般におけるアセスメントを毎年実施し、グループとして事業に与える影響が大きなリスクと機会を特定し対策を講じる体制を構築しております。
また、環境管理委員会では年2回の頻度で気候変動を含む環境関連のリスクと機会を抽出し、環境管理委員会や関連する各部門が中心となって必要な取り組みを行っております。
④ 指標と目標
シスメックスは、2040年までにグループの事業所から排出される温室効果ガス排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル宣言」を行いました。2023年5月に新たに策定した長期環境目標「シスメックス・エコビジョン2033」では、温室効果ガス排出量削減と再エネ比率の目標を設定し、研究開発から生産・物流・廃棄まで製品ライフサイクルのあらゆる段階で、様々な取り組みを継続して推進していきます。
エコビジョン2033
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KPI |
実績 |
目標 |
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2023年度 |
2023年度 |
2025年度 |
2033年度 (エコビジョン) |
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CO2排出量の 削減 |
GHG排出量削減率 (スコープ1、2) |
30%削減 |
30%削減 |
40%削減 |
55%削減 |
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GHG排出量削減率 (スコープ3) |
4%削減 |
3%削減 |
10%削減 |
35%削減 |
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再生可能 エネルギー比率 |
63% |
65% |
75% |
90%以上 |
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(注)有価証券報告書提出日現在の速報値であります。確定値は2024年9月頃公表予定の「
当社グループは、主たる事業である検体検査分野を中心に、個別化医療や個別化予防、更にはメディカルロボット事業や再生細胞医療等の取り組みを推進し、医療機関に不可欠な製品・サービスを安定的に提供しております。世界190以上の国や地域に製品・サービスを供給しており、当社グループの業績は、国内外で今後発生し得る様々な要因によって影響を受ける可能性があります。
当社グループでは、グループ内外における様々なリスクを組織的・体系的に管理する取り組みを推進しております。事業の継続と発展のため、適切にリスクを取り企業成長を促進すると共に、経営及びその持続性に影響を与える可能性について、それぞれの重要度に応じて予防及び発生時の対策を講じております。また、それらの対応状況を共有することにより、投資家をはじめとするステークホルダーの皆様に安心いただけるよう取り組んでおります。
<リスク管理の体制及びプロセスについて>
グループ全体のリスクマネジメントを推進する体制として内部統制委員会を設置し、事業部門から独立した社長直轄の組織である内部統制室が事務局を務めております。内部統制委員会は、当社グループの内部統制・リスクマネジメント全般を統括しております。内部統制委員会の委員長は取締役社長が務め、メンバーは取締役会長、担当執行役員及び常勤監査等委員、オブザーバーは社外取締役が務めております。
また、下図のとおり、主要なリスク領域については、コンプライアンス委員会等、関連委員会を設置しております。各委員会はグループ横断的に活動を推進すると共に、部門・関係会社での取り組み状況を定期的にモニタリングし、内部統制委員会へ報告しております。
上述のリスクマネジメント体制において、当社グループは社内外の環境変化を考慮した上、毎年リスクアセスメントを実施しております。リスクの抽出に漏れが生じないよう、主要なリスク領域を担当する委員会や部門、及び関係会社にてリスクを特定し、影響度と発生可能性等の観点からリスクの重要度を分析・評価しております。その後、業務全般にわたるリスクを管轄する内部統制委員会や、戦略の意思決定に係るリスクを管轄するグローバル戦略会議・執行役員会議等において、グループ全体を俯瞰する観点から重点的に管理すべきリスクや具体的な対応計画等について審議・決定し、定期的に進捗をモニタリングしております。以上のプロセスにおける審議及び報告内容はタイムリーに取締役会に報告され、必要に応じて審議されております。
<リスク及びその対応について>
有価証券報告書に記載した事業及び経理の状況等に関する事項のうち、投資家の判断に重大な影響を及ぼす可能性のある事項は13項目あり、それらを以下のとおりマクロ環境に由来するリスクとミクロ環境に由来するリスクに分類しております。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであると共に全てのリスクを網羅したものではなく、記載以外のリスクにより将来的に予期せぬ影響を受ける可能性があります。
また、当社は、2024年6月4日に、日本市場における血液凝固測定装置および試薬(FDPを測定する試薬およびDダイマーを測定する試薬)の取引に関し、独占禁止法違反(抱き合わせ販売等)の疑いがあるとして、公正取引委員会による立ち入り検査を受けました。当社といたしましては、公正取引委員会の検査に全面的に協力してまいります。
① 地政学に関わるリスクについて
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脅威・機会 |
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<脅威>地政学的な緊張の高まりによる事業への影響 当社グループは、生産、販売・サービス、研究開発等の活動をグローバルに展開しており、世界中に拠点を有しております。国家間の対立や貿易摩擦等、地政学的な緊張の高まりにより、当社グループの活動拠点を有する国や周辺地域において、輸出入規制の厳格化や、更なる自国産業保護の動き等が生じ、販売・調達等の事業活動が制限される可能性があります。 また、国家間紛争に発展した場合は、上述のような事業活動の制限のみならず、従業員等の安全に影響を及ぼす可能性があります。
<機会>製品・サービスの供給継続による信頼性向上 診断薬の現地生産化をグローバルに推進し、安定供給体制を強化することにより、お客様からの信頼性や競争力が向上する可能性があります。更に、活動拠点を各地に有することにより、現地のニーズを的確に把握すると共に、きめ細やかに対応した製品・サービスを提供できる可能性があります。 |
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対応 |
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当社グループではグローバルなネットワークを活用し、各国・地域の情勢を継続的にモニタリングしております。自国産業保護の動きが見られる国においては、現地での生産や部品・原材料の調達等が必要となる場合があるため、最新情報の把握に努めると共に、主に診断薬において現地への生産移管に向けた取り組みを行っております。 また、国家間紛争等の有事の際においても、人命保護を最優先に、安全保障に関する輸出入規制等を遵守しながら、人道支援・医療に貢献する当社製品の供給が中断することがないよう対策を推進しております。 今後も刻々と変化する世界情勢に対して、当社グループの事業への影響を考慮し、適切に対応してまいります。 |
② 経済動向に関わるリスクについて
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脅威・機会 |
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<脅威>経済情勢悪化による販売機会低下 当社グループは比較的需要が安定しているヘルスケアを主たる事業としておりますが、世界的な経済情勢の悪化に起因し、各国政府の医療財政ひっ迫や医療機関における予算縮小等が発生した場合、設備投資意欲が低下し、経営成績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。 また、急速なインフレ進行やエネルギー価格の高騰等、経済環境の著しい変化により、原材料や輸送等のコストが大幅に増加し、業績へ影響を及ぼす可能性があります。
<機会>経済好況に伴う医療インフラへの投資増加 世界経済が好調に推移した際は、医療インフラへの投資増加等に伴い、当社グループの製品についても販売機会が拡大する可能性があります。 特に、人口増加及び経済成長が期待される新興国においては、医療水準向上のニーズが増加し、更なる市場の拡大が期待できます。 |
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対応 |
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当社グループは各国・地域の拠点を通じ、市場環境の変化をグローバルにモニタリングしております。また、ロボティクスやAI等を活用した医療機関の収益向上に資するソリューションの提供により、検査の標準化・効率化に取り組んでおります。更に、経済成長及び人口増加に伴い、医療インフラへの投資が大きく期待される新興国において、多種多様な市場ニーズに適した製品の開発・市場導入を進め、医療アクセスや医療の質を向上させることにより、ユニバーサルヘルスカバレッジ※1にも貢献しております。特に、高い潜在成長力を有するインドを重要市場の一つと位置付け、市場シェアの拡大に向けて製品の開発・市場導入を加速させております。今後も、グループ全体で更なる付加価値の創出を進めてまいります。
※1 全ての人が、適切な健康増進、予防、治療、機能回復に関するサービスを、支払い可能な費用で受けられることを意味する。 |
③ 為替の変動に関わるリスクについて
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脅威・対応 |
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<脅威>円高による海外売上・資産の減少等、連結業績へのマイナス影響
<機会>円安による海外売上・資産の増加等、連結業績へのプラス影響
当社グループは海外関係会社及び代理店を経由して各国・地域へ販売を行っており、連結売上高に占める海外売上高の比率は、2023年3月期85.4%、2024年3月期86.5%と高い水準で推移しております。海外関係会社の現地通貨建て財務諸表の各項目は、円換算時に為替レートの変動による影響を受けるため、当社グループの経営成績及び財務状況に影響を及ぼします。為替が円高に推移した場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。一方、円安時には海外関係会社における販管費等が円換算ベースで増加しますが、それを上回る売上増加により連結業績では好影響を受ける可能性があります。 なお、2024年3月期の売上高、営業利益における為替の1円変動の影響は、以下のとおりであります。
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対応 |
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外貨建営業債権、関係会社貸付金及び借入金等を含む、外貨建の債権債務について、主に為替予約を行うことによりリスクをヘッジしております。 また、診断薬の生産拠点をグローバルに分散することにより、為替による影響を軽減させる措置を講じております。 |
④ 人権に関わるリスクについて
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脅威・機会 |
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<脅威>人権対応の不備による社会的信用の低下 企業活動において人権を尊重することは非常に重要な要素の一つであり、各国においても様々な施策が講じられております。当社グループの人権尊重に対する取り組みの不備や遅れにより、人種・性別等による差別や強制労働・児童労働等の人権侵害が発生した場合、取引先や投資家をはじめとするステークホルダーからの信用を低下させる可能性があります。
<機会>適切な人権対応による信頼性向上 多様な人材が働きやすい環境を整備し受容するDE&I※1の推進やサプライチェーンにおける差別の排除等、公正かつ持続可能な企業経営を推進し、人権に対して適切に対応することにより、ステークホルダーからの信頼性の向上、ひいては競争優位性の創出につながる可能性があります。
※1 ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン |
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対応 |
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当社グループでは、人権尊重と差別撤廃をグローバルコンプライアンスコードに掲げ、全てのステークホルダーの人権を尊重した企業経営や職場環境づくりに取り組んでおります。また、人権方針においては、人権デュー・デリジェンスの実施を規定し、自社内にとどまらず、サプライチェーンに関わる外部パートナーを含め、人権への負の影響を防止・緩和する取り組みを進めております。強制労働・児童労働の禁止、男女・障がい者・人種等に対する差別の排除等、事業活動が人権侵害に関与・加担することのないよう、予防的に対処する仕組みを整備しております。 また、国内外に設けた内部通報窓口において、差別・ハラスメントをはじめとする人権相談を受け付けております。更に、ハラスメントの防止や、労働に関する正しい知識の浸透等を目的とする教育を実施し、人権侵害の防止に努めております。 |
⑤ 技術革新に関わるリスクについて
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脅威・機会 |
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<脅威>技術革新への対応遅延による競争優位性低下 近年の技術革新により、ヘルスケア領域においても新技術が台頭し、ビジネスモデルが大きく変化する可能性があります。このような環境下においては、当社グループの対応が遅れることにより、競争優位性の低下を招く可能性があります。
<機会>イノベーションによる付加価値向上 革新的技術の創出及び積極的な活用により、更なるイノベーションや検査業務をはじめとする医療の効率化を実現した高付加価値な製品・サービスの提供が可能になります。 また、革新的技術の普及に伴うビジネスモデルの変革に対し、いち早く適応することにより、販売機会拡大の可能性があります。 |
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対応 |
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当社グループは、企業理念「Sysmex Way」に基づき、様々な技術開発を通じたイノベーションを創出し、社会課題の解決に資する製品・サービスの提供に努めております。新たな技術の開発に向け積極的な投資を継続すると共に、大学や研究機関、企業等が持つ技術と当社の技術を融合させ、新たな臨床価値を効果的に生み出すオープンイノベーションに取り組んでおります。世界各地にこれらの活動を促進する研究開発拠点を開設し、従来の検体検査のみならず、個別化医療や予防医療等への貢献に取り組んでおります。 今後も、新たな技術やイノベーションの創出を通じて医療課題の解決に取り組むことにより、人々の健康寿命の延伸へ貢献すると共に、持続的な成長を目指してまいります。 |
⑥ 気候変動等の環境に関わるリスクについて
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脅威・機会 |
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<脅威>環境対応の不備や自然災害による事業への影響 地球環境の持続可能性が喫緊の課題となっており、欧米をはじめとする各国において環境規制が強化されております。当社グループにおいて、規制等に対する違反や対応の遅延が生じた場合、罰則や入札制限等を招く可能性があります。 また、気候変動に由来する自然災害により、世界各国のお客様への製品安定供給や従業員等の安全へ影響を及ぼす可能性があります。
<機会>環境課題への取り組みによる信頼性・競争優位性向上 各国における環境に関する法規制等の情報を適宜入手し、プロアクティブに対応を実施することにより、ステークホルダーからの信頼性向上並びに販売機会の拡大につながる可能性があります。 また、環境に配慮した製品開発や生産活動等、エコソーシャル面での付加価値提供と、それに伴う競争優位性の確立により、事業成長に貢献する可能性があります。 |
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対応 |
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当社グループでは、環境マネジメントを推進する組織として環境管理委員会を設置しております。資源循環型社会の実現に取り組んでおり、当社の製品・サービスを通じた社会課題解決と事業成長の両立により、持続的な環境・社会への価値提供を目指しております。 『シスメックス・エコビジョン 2033』を策定し、生産・開発・販売・サービス等のあらゆるバリューチェーンにおいて、濃縮試薬の普及促進や、ドライアイスフリー輸送の導入、脱動物由来の原材料を使用した製品の開発等、CO2削減や生物多様性等に配慮した環境配慮型製品・サービスを通じて環境負荷低減に取り組んでおります。また、TCFD※1の提言に賛同し、そのフレームワークに基づく情報開示の充実に努めております。更に、2040年までのカーボンニュートラル※2及びSBT※3に基づく目標を設定し、環境課題への取り組みを加速しております。
※1 Task Force on Climate-related Financial Disclosures(気候関連財務情報開示タスクフォース) ※2 カーボンニュートラル:Scope1及びScope2が対象 ※3 Science Based Targets(パリ協定が求める水準と整合した企業の温室効果ガス排出削減目標) |
⑦ 医療制度改革に関わるリスクについて
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脅威・機会 |
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<脅威>医療制度改革等への対応不備・遅延による販売機会減少 当社グループの機器・診断薬製品の販売には基本的に薬事承認が必要でありますが、各国において承認取得に関する要求事項が複雑・高度化する傾向にあります。このような傾向は、対応コストを増加させる可能性があると共に、対応が遅れた場合は新製品の発売への影響等、市場獲得機会の喪失を招く可能性があります。 また、各国において保険収載に関する制度の見直しや、保険点数等の検査に係る費用引き下げ等が発生した場合は、当社製品の販売機会減少の可能性があります。
<機会>規制やニーズへの迅速な対応による競争優位性向上 ヘルスケア業界での、欧州におけるIVDR※1をはじめとする厳格化する薬事規制への対応は、新規参入企業に対する障壁となり、当社グループの競争優位性が向上する要因となる可能性があります。また、各国での医療財政の改善により医療機関の予算が増加した場合、販売機会の拡大が見込める可能性があります。更に、新興国での医療制度拡充、及び医療インフラへの投資増加等により、需要の拡大が期待できます。
※1 In Vitro Diagnostic Medical Devices Regulation(体外診断用医療機器規則) |
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対応 |
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薬事規制に対しては各国業界団体への参画等を通じて最新情報の把握に努めると共に、当社グループのグローバルなネットワークを活用した体制により、適時的確な薬事承認の取得・維持に取り組んでおります。各国・地域における様々な環境変化において、多様化・高度化するニーズを正確に捉えた上、個別化医療に資する新たな診断技術の開発を推進しております。また、検体検査機器・診断薬・IT・サービス&サポートをトータルに保有する強みを活かし、今後も医療ワークフローの効率化や疾病の早期発見、更には新興国における医療アクセス向上等の医療課題解決に取り組んでまいります。 |
⑧ 知的財産に関わるリスクについて
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脅威・機会 |
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<脅威>知的財産権の侵害や被侵害による事業への影響 当社グループは、特許、商標、意匠等をグローバルに出願しておりますが、一部又は全ての国で権利が付与されない可能性があります。更に、当社グループの知的財産権を侵害する模倣品が流通した場合、検査結果の信頼性が確保できず、医療機関及び患者さんへ影響をもたらす可能性があります。 また、当社グループの正当性の有無に関わらず、第三者の知的財産権の侵害に対する訴訟の提起や、ロイヤルティの支払い要求等の知的財産権を巡る紛争が生じる可能性があります。
<機会>知的財産権取得による独自性のある製品・サービスの提供 当社グループが保有する知的財産権の適切な保護により、独自性及び競争力の強化や、ブランドイメージの向上が期待できます。 また、当社グループが保有する知的財産権のみならず、第三者のライセンスを適切に活用することにより、更にイノベーションを加速させる可能性があります。 |
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対応 |
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当社グループでは、当社及び第三者の知的財産権を尊重し、全ての事業活動で創出された価値のある知的財産を積極的に権利化すると共に、第三者の知的財産権に対して適切に対応することにより、グローバルな競争優位性の確立を目指しております。従業員に対しても社内教育を通じ、当社グループ及び第三者の知的財産権を尊重しながら事業活動を推進することを周知徹底しております。更に、知的財産権獲得に対する従業員のモチベーション向上を目的とした表彰制度を設けております。 また、当社グループの知的財産権侵害への対策として、世界各国において特許を取得すると共に、徹底的に模倣品を排除することにより、お客様に安心して製品をお使いいただけるよう取り組んでおります。重要なブランドについて、新興国や開発途上国を含めグローバルに知的財産権の確保を進め、特にコーポレートブランドについては195の国・地域に商標権を出願しております。これらの結果、全体の知的財産権のうち海外保有比率は85%に達しております。 |
⑨ 安定供給に関わるリスクについて
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脅威・機会 |
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<脅威>調達や生産の中断・遅延による製品供給への影響 当社グループでは、医療機関が日々の検査を行う上で不可欠な検体検査機器及び診断薬等を世界各国のお客様に対し供給しております。お客様への製品の供給が中断しないよう努めておりますが、急激な市況の変化やサプライヤーの事業停止等により部品・原材料等の調達が困難な場合や、生産工場・倉庫等を含むサプライチェーン拠点における大規模な自然災害や火災等の重大な事故、パンデミック等が発生した場合、あるいは国家間紛争・貿易摩擦による流通ルートの遮断等が発生した場合、製品の安定供給に支障を及ぼす可能性があります。
<機会>製品・サービスの安定供給への取り組みによる安心の提供・信頼性向上 自然災害や重大な事故等、有事の際にも検査に必要な製品を安定的に供給し、医療業務を中断させる事態を回避すると共に、そのような有事に備えた体制の構築により、緊急時の製品の供給継続に対する信頼を獲得し、更なるブランドイメージの向上につながる可能性があります。 |
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対応 |
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世界中に高品質な製品をお届けすることで、正確な検査結果と確かな安心を提供し、医療を支えるという社会的使命のもと、当社グループはグローバルに製品・サービスの安定供給に取り組んでおります。平時より部品・原材料等における在庫の確保や複数社購買等に取り組むと共に、工場や倉庫での地震・風水害等の大規模災害に対する予防及び復旧対策の充実に取り組んでおります。特に、当社グループ売上高の60.8%(2024年3月期)を占める診断薬に関しては、事業継続のための復旧期間を考慮した在庫確保はもとより、複数拠点での生産を行っており、特に主力事業であるヘマトロジー分野の診断薬については、主要拠点間で相互供給のネットワークを構築し、安定的な供給を継続できる体制を整えております。 また、当社グループ全体で事業継続計画を策定し、日頃から訓練により定着を図ることで、有事の際にも迅速に復旧し、医療機関の検査業務を継続いただけるよう備えております。 今後も、お客様に安心して製品をお使いいただけるよう取り組みを強化してまいります。 |
⑩ 品質に関わるリスクについて
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脅威・機会 |
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<脅威>製品・サービスの品質不良による信頼性の低下 ヘルスケア業界の製品においては高い品質と安全性が要求されますが、当社製品や仕入商品等に品質不良が発生した場合、医療機関での検査に遅れや誤りが発生し、お客様や患者様へ影響を及ぼす可能性があります。また、製品並びに当社グループ全体に対する信頼性の低下を招く可能性があると同時に、業績へ影響が生じる可能性があります。
<機会>品質向上による信頼性・競争優位性の向上 各国の法令・国際規格等に準拠する品質管理の仕組みの整備・運用を通じて更なる品質の向上を図ることにより、お客様からの信頼の獲得、並びに販売機会拡大の可能性があります。 また、当社グループでは創業以来、確かな品質によりお客様に安心をお届けすることを企業理念「Sysmex Way」に掲げており、これまで築き上げたブランドイメージは、企業価値並びに競争優位性の維持・向上につながる可能性があります。 |
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対応 |
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当社グループでは、各国の法令・国際規格等に準拠する品質維持のためのマネジメントにグループ全体で取り組んでおります。グループの品質方針を策定し、製品・サービスの品質及び安全性のモニタリングと改善に向けた対策を行っております。また、全ての生産拠点において品質マネジメントシステムに関する国際規格ISO9001又はISO13485の認証を取得しております。更に、製品の信頼性や安全性に関する情報を幅広く国内外から収集・分析し、製品の品質向上に活かしております。 今後も、当社グループの高品質な製品・サービスを通じ、お客様の安心の創出に取り組んでまいります。 |
⑪ 情報システム・セキュリティに関わるリスクについて
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脅威・機会 |
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<脅威>サイバー攻撃等によるお客様及び事業への影響 当社グループの製品にはネットワークを活用したサービス機能が搭載されております。万一、医療機関を標的としたサイバー攻撃により当社製品が感染した場合、検査業務の停止や、第三者による個人情報への不正なアクセスが行われる可能性があります。 また、社内においても情報伝達や基幹業務支援、稟議決裁手続等に各種情報システムを導入し、業務効率化を図っており、事業上の情報の多くはネットワークを介して管理・運用されております。これらのシステムやネットワークにおける障害や、サイバー攻撃によりシステムの稼働停止や機密情報の漏えいが発生した場合、又は近年活用を進めている生成AI等の誤った使用により、虚偽情報の提供や第三者の権利侵害等が発生した場合、当社グループの業務の効率性や信頼性の低下を招く可能性があります。
<機会>セキュリティ対応強化による製品・サービスの信頼性向上 製品・サービスにおけるセキュリティ対応を充実させることにより、製品への更なる信頼性向上や、お客様へ安心してご利用いただけるネットワークを活用したサービスの提供が可能になります。 また、セキュリティ強化を含めたDXの推進や適切な生成AIの活用等を通じ、適切な情報管理を行いながらグループ内の情報連携を強化することにより、更なる業務の効率化及び生産性の向上が期待できます。 |
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対応 |
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当社グループでは、お客様や患者様に確かな安心をお届けするために、製品サイバーセキュリティ委員会を中心として、製品・サービスにおけるサイバーセキュリティ対策を進めております。その一環として、「製品セキュリティポリシー」を定めPSIRT※1を設置し、各地域の製品セキュリティ責任者と連携して、セキュリティポリシーに基づいた製品の設計・生産、及び販売後の脆弱性管理に取り組んでおります。 更に、情報システムやネットワーク回線の障害、あるいはコンピューターウイルスや外部からの情報システムへの侵入等による業務への影響を最小限に抑えるために、不正通信検知やマルウェアの隔離等の仕組みの導入、24時間の監視、CSIRT※2の設置、有事や重大インシデントに対する情報の早期入手のための外部団体加盟等によるセキュリティ対策や、事業継続に関する体制整備等、情報管理の厳格化に取り組んでおります。 また、AI技術全般に関して、従業員に対しセキュリティを考慮した利用ルールを周知すると共に、積極的な活用によりイノベーションを加速させる取り組みを推進しております。
※1 Product Security Incident Response Team(製品セキュリティインシデント対応チーム) ※2 Computer Security Incident Response Team(コンピューターセキュリティインシデント対応チーム) |
⑫ 企業買収等、投資に関わるリスクについて
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脅威・機会 |
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<脅威>投資効果不足による戦略目標達成の遅延 当社グループは、研究開発や生産等の拠点拡充を図ると共に、ITインフラ及び最新技術等への積極的な投資や企業買収、資本提携等により成長を加速させております。これらの取り組みにおいて、経営環境の変化や事前に予測し得なかったリスクの露呈等により、期待されていた効果が十分に実現できず、戦略目標の達成に影響を及ぼす可能性があります。
<機会>投資効果の最大化によるビジネスの加速 経営戦略に基づき、長期的かつグローバルな視点で積極的な投資を行うことにより、更に高い投資効果を生み出すと共に、戦略実現のスピードを加速させる可能性があります。 |
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対応 |
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当社グループでは、投資に対する検討・意思決定、及びPMI※1のモニタリングにおける仕組みの強化により、投資効果の最大化を目指しております。投資判断については、事前に十分な調査を行った上、目的・効果・想定されるリスク等について経営会議等で審議し決定しております。意思決定後においても、機動的な変化への対応と柔軟な軌道修正が重要であると捉え、定期的にモニタリングを実施し、投資に対する管理プロセス強化に取り組んでおります。 今後も適切な意思決定のもと、事業成長に必要な投資については積極的なリスクテイクにより、事業の拡大や新たな技術獲得を通じた高付加価値な製品・サービスの提供を継続し、当社グループの成長を加速させてまいります。
※1 Post Merger Integration(合併・買収後の統合プロセス) |
⑬ 人材確保に関わるリスクについて
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脅威・機会 |
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<脅威>人材獲得競争の激化及び人材流出による競争力低下 グローバルな人材市場における獲得競争は激化しており、事業推進に必要な人材が獲得できない場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。 また、職場環境の安全衛生の確保が十分でなかった場合、従業員の心身の健康を損ね、士気低下や人材流出等を招く可能性があります。
<機会>魅力ある職場の実現による経営基盤強化 当社グループは企業理念「Sysmex Way」において、多様な人材が安心して能力を発揮できる職場環境について定めており、他社と差別化された魅力ある人事制度や企業風土等を通じた人材の獲得・維持により、従業員のエンゲージメントと付加価値生産性を両立させることで、更なる企業成長が期待できます。 |
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対応 |
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当社グループでは、人材を持続的な成長のための重要な経営資源の一つと捉えております。企業理念「Sysmex Way」では、従業員に対し「多様性を受け入れ、一人ひとりの人格や個性を大切にすると共に、安心して能力が発揮できる職場環境を整えること、自主性とチャレンジ精神を尊重し、自己実現と成長の機会、成果に応じた公正な処遇を提供すること」を宣言し、それぞれの従業員が描くキャリアに基づいた教育プログラムの提供等、自主的なキャリア実現が可能となる環境を整備しております。 また、自律的なキャリアの実現を支援する基盤として、グループ全体でジョブ型人事制度を採用すると共に、従業員の資産形成にも資する報酬制度としての信託型株式報酬等、魅力ある制度の導入を推進しております。 更には、アジアの製造業で初となる、人的資本に関する情報開示の国際的なガイドラインであるISO30414を取得しております。今後も透明性のある人材関連情報の開示に努めると共に、人材と企業の持続的な成長を可能にする人事制度を充実させてまいります。 |
1.経営成績等の概要
(1) 経営成績の分析
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度の末日現在において判断したものであります。
当連結会計年度における我が国経済は、新型コロナウイルス感染症による経済活動への影響が収束したことを背景に、底堅い個人消費等に下支えされ、緩やかながら回復基調となりました。海外においては、米国では個人消費や設備投資が堅調に推移する一方、欧州ではインフレ進展による経済の減速、中国では国内の需要低迷や輸出の伸び悩みが見られました。更に、中東やロシア・ウクライナ問題の地政学的リスクが残る等、依然として不透明な状況が継続いたしました。
医療面におきましては、国内では医療及びヘルスケア分野は高齢化や健康・医療ニーズの多様化を背景に、需要が高まっております。政府も成長戦略の一つとして「次世代ヘルスケア」を挙げており、引き続き活性化が見込まれております。海外においても先進国の高齢化や新興国の経済成長に伴う医療需要の拡大と医療の質・サービス向上へのニーズの高まりに加えて、人工知能(AI)や情報通信技術(ICT)等の最先端技術のヘルスケア領域への実装が急速に進展しており、今後も継続した成長が期待されております。
このような状況のもと、当社は微量の血液からアルツハイマー病の原因となる脳内アミロイドβ(Aβ)の蓄積状態を調べる検査試薬の日本、欧州での発売及び米国におけるLDT※1向け試薬として大手検査センターに供給を開始いたしました。
また、富士レビオ・ホールディングス株式会社と研究・開発、生産、臨床開発、販売等多面的な協業の強化に向けた、免疫検査領域における業務提携基本契約を締結いたしました。同契約に基づき、神経変性疾患関連領域における当社の全自動免疫測定装置 HISCL™シリーズ専用試薬に関するCDMO※2契約の締結や、両社が保有する試薬原料供給に関し基本合意いたしました。今後、両社が保有する質の高い試薬原料の相互利活用を推進し、新規項目開発や新たな技術開発も視野に入れ、更に連携して取り組んでまいります。
加えて、CellaVision ABと次世代の血液像分析装置を含むポートフォリオ拡大により、ヘマトロジーソリューションの進化を目指すStrategic Alliance Agreementを締結いたしました。今後、検査ワークフローの更なる効率化・標準化、細胞形態分類の精度向上を実現し、診断支援への価値提供を推進します。
更に、当社と株式会社日立ハイテクは、2023年8月に新たな遺伝子検査システムの開発に向けてフィージビリティ・スタディ契約を締結し、共同研究を推進してきました。その成果に基づき両社で協議を重ねた結果、キャピラリー電気泳動シーケンサー※3を基盤とした遺伝子検査システムの開発に向けて両社が合意いたしました。今後両社は、臨床実装に向けて、低コストかつ効率化を実現した遺伝子検査システムを開発し、疾患毎に最適な遺伝子検査の普及を目指します。
そして、イタリアにおいて、これまで直接販売・サービスを実施していたライフサイエンス分野等に加え、ヘマトロジー、尿検査、血液凝固検査分野においても、2024年4月より直接販売・サービスを開始いたしました。各検査分野のシェア拡大を推進すると共に、お客様との直接的なコミュニケーションを通して医療現場の多様な課題へのソリューション提案を行うことで、イタリアにおける事業の拡大を目指します。
最後に、日本発の手術支援ロボットシステム「hinotori™ サージカルロボットシステム」(以下、hinotori)のグローバル総代理店である当社は、日本の医療機関を対象に製品導入を推進しております。また、当社と川崎重工業株式会社が共同出資する株式会社メディカロイド(以下、メディカロイド)は、グローバル展開に向けた薬事・販売体制等の準備を推進しております。2023年7月には、手術操作と鉗子動作の接続を遮断するクラッチ操作を、足元のフットペダルに加え、手元でも操作できる「ハンドクラッチ機能」を搭載したバージョンアップモデルの販売を開始いたしました。メディカロイドと同社シンガポール現地法人Medicaroid Asia Pacific Pte. Ltd.は、hinotoriについて、2023年9月にシンガポールのHealth Sciences Authority(健康科学庁)より販売承認を取得いたしました。日本国内では、hinotoriが現在適応しております三診療科(泌尿器科、消化器外科、婦人科)に加え、胸部外科領域(呼吸器外科)への適応について申請を行いました。今後も、メディカロイドが進める国内外の薬事申請活動と連携し、順次製品の導入を目指します。
※1 LDT:Laboratory Developed Testの略
医療機関や検査センター等の臨床検査室内において、独自の品質管理規程に基づき行われる自家調製検査
※2 CDMO:
Contract Development and Manufacturing Organization(受託開発製造)の略。
※3 キャピラリー電気泳動シーケンサー
DNAの塩基配列や塩基長を短時間かつ比較的安価に分析できる解析装置。個々のDNAの違いを分析する医療・健康分野や犯罪捜査のためのDNA鑑定等に幅広く利用されております。
<参考>地域別売上高
|
|
前連結会計年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
前期比 (%) |
|||
|
金額 (百万円) |
構成比 (%) |
金額 (百万円) |
構成比 (%) |
|||
|
国内 |
59,832 |
14.6 |
62,184 |
13.5 |
103.9 |
|
|
|
米州 |
105,905 |
25.8 |
118,782 |
25.7 |
112.2 |
|
|
EMEA |
111,376 |
27.1 |
127,486 |
27.6 |
114.5 |
|
|
中国 |
96,902 |
23.6 |
109,952 |
23.9 |
113.5 |
|
|
アジア・パシフィック |
36,485 |
8.9 |
43,104 |
9.3 |
118.1 |
|
海外計 |
350,669 |
85.4 |
399,325 |
86.5 |
113.9 |
|
|
合計 |
410,502 |
100.0 |
461,510 |
100.0 |
112.4 |
|
国内販売につきましては、新型コロナウイルス感染症に関する検査需要の低下により、免疫検査分野における試薬の売上が減少いたしました。一方で、ヘマトロジー分野、尿検査分野及び凝固検査分野における機器の売上が増加いたしました。その結果、国内売上高は62,184百万円(前期比3.9%増)となりました。
海外販売につきましては、ヘマトロジー分野における機器、試薬及び保守サービス、尿検査分野及び凝固検査分野の試薬の売上が増加いたしました。加えて、為替相場が円安に推移した結果、当社グループの海外売上高は399,325百万円(前期比13.9%増)、構成比86.5%(前期比1.1ポイント増)となりました。
また、販売費及び一般管理費につきましては、主に人件費の高騰及びデジタル化投資による増加の結果、133,798百万円(前期比19.1%増)となりました。研究開発費につきましては、31,402百万円(前期比1.1%増)となりました。
以上により、当連結会計年度の連結業績は、売上高は461,510百万円(前期比12.4%増)、営業利益は78,382百万円(前期比6.4%増)、税引前利益は74,600百万円(前期比8.6%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益は49,639百万円(前期比8.4%増)となりました。
セグメントの経営成績は、以下のとおりであります。
① 日本
新型コロナウイルス感染症に関する検査需要の低下により、免疫検査分野における試薬の売上が減少いたしました。一方で、ヘマトロジー分野、尿検査分野及び凝固検査分野における機器の売上が増加いたしました。その結果、売上高は67,205百万円(前期比6.2%増)となりました。
利益面につきましては、販売費及び一般管理費が増加いたしましたが、増収により、セグメント利益(営業利益)は58,127百万円(前期比13.2%増)となりました。
② 米州
北米においては、ヘマトロジー分野における試薬、尿検査分野における試薬及び保守サービスの売上が増加いたしました。中南米においては、ヘマトロジー分野及び尿検査分野における機器、試薬の売上が増加いたしました。その結果、米州全体における売上高は112,479百万円(前期比11.6%増)となりました。
利益面につきましては、販売費及び一般管理費が増加いたしましたが、増収により、セグメント利益(営業利益)は5,674百万円(前期比39.6%増)となりました。
③ EMEA
サウジアラビアにおける直販化の効果も寄与し、ヘマトロジー分野における機器、試薬及び保守サービスの売上が増加いたしました。その結果、売上高は129,137百万円(前期比14.0%増)となりました。
利益面につきましては、売上原価率が改善いたしましたが、販売費及び一般管理費の増加により、セグメント利益(営業利益)は6,819百万円(前期比18.7%減)となりました。
④ 中国
検査需要の回復を背景に、現地生産化による効果も寄与し、ヘマトロジー分野における機器、試薬及び凝固検査分野における試薬の売上が増加いたしました。その結果、売上高は109,797百万円(前期比13.4%増)となりました。
利益面につきましては、売上原価率の悪化及び販売費及び一般管理費の増加により、セグメント利益(営業利益)は7,852百万円(前期比21.2%減)となりました。
⑤ アジア・パシフィック
ヘマトロジー分野及び凝固検査分野において機器、試薬の売上が増加いたしました。その結果、売上高は42,891百万円(前期比18.1%増)となりました。
利益面につきましては、販売費及び一般管理費が増加いたしましたが、増収及び売上原価率の改善により、セグメント利益(営業利益)は4,088百万円(前期比18.3%増)となりました。
(2) 財政状態の分析
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末と比べて87,845百万円増加し、618,920百万円となりました。この主な要因は、営業債権及びその他の債権が30,747百万円増加、有形固定資産が14,587百万円増加、無形資産が13,256百万円増加したこと等によるものであります。
一方、負債合計は、前連結会計年度末と比べて43,305百万円増加し、186,023百万円となりました。この主な要因は、長期借入金が28,600百万円増加したこと等によるものであります。
資本合計は、前連結会計年度末と比べて44,540百万円増加し、432,897百万円となりました。この主な要因は、利益剰余金が31,793百万円増加、その他の資本の構成要素が23,889百万円増加したこと等によるものであります。また、親会社所有者帰属持分比率は前連結会計年度末の73.0%から3.2ポイント減少して69.8%となりました。
(3) キャッシュ・フローの分析
当連結会計年度末の現金及び現金同等物(以下、資金)は、前連結会計年度末より6,047百万円増加し、75,507百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、以下のとおりであります。
<営業活動によるキャッシュ・フロー>
営業活動の結果得られた資金は、63,905百万円(前期比4,929百万円減)となりました。この主な要因は、税引前利益が74,600百万円(前期比5,887百万円増)、減価償却費及び償却費が35,888百万円(前期比4,081百万円増)、営業債権の増加額が21,987百万円(前期比19,007百万円増)、法人所得税の支払額が28,974百万円(前期比4,693百万円増)となったこと等によるものであります。
<投資活動によるキャッシュ・フロー>
投資活動の結果使用した資金は、54,970百万円(前期比3,218百万円増)となりました。この主な要因は、有形固定資産の取得による支出が25,610百万円(前期比8,125百万円増)、無形資産の取得による支出が24,581百万円(前期比439百万円減)、資本性金融商品の取得による支出が4,026百万円(前期比1,162百万円減)となったこと等によるものであります。
<財務活動によるキャッシュ・フロー>
財務活動の結果使用した資金は、9,013百万円(前期比15,220百万円減)となりました。この主な要因は、長期借入れによる収入が29,000百万円(前期比29,000百万円増)、配当金の支払額が17,579百万円(前期比1,050百万円増)、リース負債の返済による支払額が9,068百万円(前期比1,108百万円増)となったこと等によるものであります。
(4) 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメント毎に示すと、以下のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前期比(%) |
|
日本 |
61,364 |
99.8 |
|
米州 |
5,064 |
113.5 |
|
EMEA |
8,132 |
114.2 |
|
中国 |
3,829 |
95.0 |
|
アジア・パシフィック |
1,183 |
109.9 |
|
合計 |
79,573 |
101.8 |
(注)金額は製造原価によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。
b.受注実績
見込み生産を行っているため、該当事項はありません。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメント毎に示すと、以下のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前期比(%) |
|
日本 |
67,205 |
106.2 |
|
米州 |
112,479 |
111.6 |
|
EMEA |
129,137 |
114.0 |
|
中国 |
109,797 |
113.4 |
|
アジア・パシフィック |
42,891 |
118.1 |
|
合計 |
461,510 |
112.4 |
(注)セグメント間の内部売上高は相殺消去しております。
2.経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は以下のとおりであります。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 当連結会計年度の経営成績の分析
当連結会計年度の売上高は前期比51,008百万円増加(12.4%増)の461,510百万円、営業利益は前期比4,703百万円増加(6.4%増)の78,382百万円、税引前利益は前期比5,887百万円増加(8.6%増)の74,600百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益は前期比3,854百万円増加(8.4%増)の49,639百万円となりました。また、親会社所有者帰属持分当期利益率は前連結会計年度の12.4%から当連結会計年度は12.1%へと低下いたしました。
当社グループは、前中期経営計画において2024年3月期を最終年度として、連結売上高420,000百万円、連結営
業利益80,000百万円を達成することを目指しておりました。その結果、当連結会計年度の売上高は計画を上回る増収を達成し、営業利益は、計画を下回るも増益を達成いたしました。
こうした中、2023年4月より2026年3月期を最終年度とする新たな中期経営計画をスタートしており、長期ビジョン「より良いヘルスケアジャーニーを、ともに。」の実現を目指して引き続き重要な課題に取り組み、2026年3月期の経営指標(連結売上高560,000百万円、連結営業利益112,000百万円)を達成することを目指します。
① 売上高
当連結会計年度は、国内販売につきましては、新型コロナウイルス感染症に関する検査需要の低下により、免疫検査分野における試薬の売上が減少いたしました。一方で、ヘマトロジー分野、尿検査分野及び凝固検査分野における機器の売上が増加いたしました。その結果、国内売上高は62,184百万円(前期比3.9%増)となりました。海外販売につきましては、ヘマトロジー分野における機器、試薬及び保守サービス、尿検査分野及び凝固検査分野の試薬の売上が増加いたしました。加えて、為替相場が円安に推移した結果、当社グループの海外売上高は399,325百万円(前期比13.9%増)、構成比86.5%(前期比1.1ポイント増)となりました。以上により、売上高は前連結会計年度に比べて51,008百万円増加(12.4%増)の461,510百万円となりました。
国内での売上高は62,184百万円と2,352百万円の増加(3.9%増)となり、海外での売上高は399,325百万円と48,656百万円の増加(13.9%増)となった結果、海外売上高比率は前期比1.1ポイント増加の86.5%となりました。
海外の地域別では、米州が118,782百万円(前期比12,877百万円増、12.2%増)、EMEAが127,486百万円(前期比16,109百万円増、14.5%増)、中国が109,952百万円(前期比13,050百万円増、13.5%増)、アジア・パシフィックが43,104百万円(前期比6,618百万円増、18.1%増)となりました。
② 売上原価
売上原価は、前期比24,593百万円増加(12.6%増)の219,013百万円となりました。また、売上原価率は47.5%(前期比0.1ポイント増加)でありました。
③ 販売費及び一般管理費
販売費及び一般管理費は、主に人件費の高騰及びデジタル化投資による増加の結果、前期比21,426百万円増加(19.1%増)の133,798百万円となりました。また、売上高に対する比率は29.0%(前期比1.6ポイント増加)でありました。
④ 研究開発費
研究開発費は、主に製品開発への継続投資及び薬事関連費用等による増加の結果、前期比342百万円増加(1.1%増)の31,402百万円となりました。また、売上高に対する比率は6.8%(前期比0.8ポイント減少)でありました。
⑤ 損益の状況
営業利益は売上高の増加による売上総利益の伸張等により前期比4,703百万円増加(6.4%増)の78,382百万円、売上高営業利益率は17.0%(前期比0.9ポイント減少)となりました。なお、為替の影響は、前連結会計年度と比較して8,707百万円の増益要因となりました。
税引前利益は、為替差益が516百万円(前期は為替差損が1,339百万円)となり、営業利益が増益となったこと等によって、前期比5,887百万円増加(8.6%増)の74,600百万円となりました。
親会社の所有者に帰属する当期利益は、法人所得税費用が前期比1,838百万円増加(8.0%増)の24,826百万円となり、前期比3,854百万円増加(8.4%増)の49,639百万円となりました。
(2) 経営成績に重要な影響を与える要因について
当社グループが事業を展開していく上で、経営成績に重大な影響を及ぼす可能性のある事項については、「3 事業等のリスク」に記載しておりますので、ご参照ください。
(3) 資本の財源及び資金の流動性についての分析
① 資金調達と流動性マネジメント
運転資金は必要に応じて短期銀行借入等で調達いたします。各連結子会社については、運転資金確保のために必要に応じて銀行借入を行いますが、国内の子会社については、2003年10月より当社と各社との資金決済にCMS(キャッシュ・マネジメント・システム)を導入し、資金の調達・運用を一元化して効率化を図っております。更に、海外の一部の地域統括会社についても、2024年1月より当社と各社間でCMSによる資金融通を開始し、グループ内の流動性確保、資金効率向上に努めております。
また、当社は、現在、株式会社格付投資情報センター(R&I)よりAA-(ダブルAマイナス)の発行体格付を取得しており、毎年レビューを受けて格付を更新しております。高い格付は資本市場から資金調達する際の調達コストを低減するだけではなく、ステークホルダーや世間一般からの信用向上にも貢献します。今後も格付を維持・向上していくために、売上高・利益と資産及び負債・資本のバランスに考慮してまいります。
設備投資等の長期資金需要に関しては、投資回収期間とリスクを勘案した上で調達方法を決定しております。なお、当連結会計年度は、設備投資及び研究開発活動等の資金について、主に営業活動の結果得られた資金から充当しておりますが、一部の長期資金需要に関しては銀行から長期借入を実施の上充当しております。
② 財政状態の分析
財政状態の分析については、「1.経営成績等の概要 (2) 財政状態の分析」に記載しておりますので、ご参照ください。
③ キャッシュ・フローの分析
キャッシュ・フローの分析については、「1.経営成績等の概要 (3) キャッシュ・フローの分析」に記載しておりますので、ご参照ください。
(4) 重要な会計方針及び見積り
当社グループは、IFRSに準拠して連結財務諸表を作成しております。この連結財務諸表の作成に関する重要な会計方針及び見積りについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 2.作成の基礎 3.重要性がある会計方針」に記載しておりますので、ご参照ください。
・アライアンス契約
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契約会社名 |
相手先 |
国名 |
契約の内容 |
契約期間 |
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当社 |
シーメンスヘルスケア・ダイアグノスティックス社 |
米国 |
血液凝固検査関連製品の相互グローバルOEM供給(注1) |
自 2023年3月1日 至 2038年2月28日 |
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当社 |
ロシュ・ダイアグノスティックス社(以下、ロシュ社) |
スイス |
当社とロシュ社とのグローバルパートナーシップ(注2) |
自 2021年1月1日 至 2030年12月31日 |
(注)1.本契約には以下の個別契約を含んでおります。
血液凝固検査関連製品の相互供給、販売及びサービスに関する契約(契約期間:自2021年2月1日 至 2025年12月31日)
2.本契約には以下4つの個別契約を含んでおります。
・ロシュ社による当社のヘマトロジー分野製品の販売・サービスに関する契約(契約期間:自 2021年1月1日 至 2026年8月31日)
・生化学検査分野、免疫検査分野及びヘマトロジー分野製品を1社から同時に求められる案件に関する非独占協業契約(契約期間:自 2021年1月1日 至 2030年12月31日)
・両社のITプラットフォームを活用し、短中期的には顧客サービスの向上を、長期的にはクリニカルバリューの向上を狙いとした協業検討に関する契約(契約期間:自 2021年1月1日 至 2030年12月31日)
・社会課題解決に向けた協業テーマの検討を開始することを定めた契約(契約期間:自 2023年7月3日 至 2030年12月31日)
当社グループはヘマトロジーをはじめとした既存領域の成長を目指し、ダイアグノスティクス事業における技術拡充を図っております。
また、個別化医療・検査の精緻化を実現するための、臨床価値の高い診断技術、リキッドバイオプシー技術の社会実装を目指して、新たな技術開発に取り組んでおります。
新規領域への挑戦として、検査・診断の価値を検査の場及びその対象を拡大することで高めると共に、個別化予防・予後モニタリングを実現するための技術開発にも取り組んでいきます。また、メディカルロボット事業や再生細胞医療などの治療領域に対しても、シスメックスの強みを活かしていきます。
当連結会計年度における、主な研究開発活動の状況は以下のとおりであります。
(1) 2023年5月 当社は、日本国内において、「フローサイトメーター XF-1600」、「検体前処理装置 PS-10」を合わせたクリニカルフローサイトメトリー※1システム、及び抗体試薬等の関連製品を発売いたしました。
※1 フローサイトメトリー(FCM):
微細な粒子を流体中に分散させ、その流体を細く流して、個々の粒子を光学的に分析する手法のこと。主に細胞を個々に観察する際に用いられる。
(2) 2023年6月 当社は、血液からアルツハイマー病の原因となる脳内アミロイドβ(Aβ)の蓄積状態を調べる検査試薬「HISCL™ β-アミロイド 1-42 試薬」及び「HISCL β-アミロイド 1-40 試薬」を日本で発売いたしました。
(3) 2023年6月 当社は、尿路感染症※2が疑われる患者さんの尿検体を用いて、測定開始後最短約30分で細菌の有無及び抗菌薬の有効性を判定する迅速薬剤感受性検査システムを欧州で発売いたしました。
※2 尿路感染症:
尿路(腎臓から尿の出口まで)に細菌が進入し炎症が生じたものを尿路感染症という。膀胱では膀胱炎、腎臓では腎盂腎炎を引き起こす。日常診療において最も頻度が高いとされる細菌感染症の一つで、女性の約6割が生涯に一度は感染するとされている。
(4) 2023年7月 当社と川崎重工業株式会社が共同出資する株式会社メディカロイドは、手術支援ロボット「hinotori™サージカルロボットシステム」において、手術操作と鉗子動作の接続を遮断するクラッチ操作を、足元のフットペダルに加え、手元でも操作できる「ハンドクラッチ機能」を搭載したバージョンアップモデルの販売を開始いたしました。
(5) 2023年8月 当社は、血液中のAβを測定する試薬を米国におけるLDT※3向け試薬として大手検査センターに供給を開始いたしました。本LDTは、アルツハイマー病の原因とされる脳内のAβの蓄積状態の把握を補助する検査であります。
※3 LDT:
Laboratory Developed Test(自家調製検査)の略。医療機関や検査センター等の臨床検査室内において、独自の品質管理規程に基づき行われる検査。
(6) 2023年8月 当社は、遺伝性網膜ジストロフィ(Inherited Retinal Dystrophy: IRD)※4の患者さん又はIRDと疑われる患者さんの血液から包括的なゲノムプロファイル※5を取得することで、IRDの原因遺伝子の同定に有用な情報を提供する「PrismGuide™ IRDパネル システム」(2023年5月に国内での製造販売承認取得)が、IRDの遺伝子パネル検査※6システムとして国内で初めて保険適用を受けました。
※4 遺伝性網膜ジストロフィ(Inherited Retinal Dystrophy: IRD):
遺伝子変異が原因と考えられる遺伝性進行性の疾患。類似の症状を示すいくつかの疾患を総じて遺伝性網膜ジストロフィと呼ぶ。夜盲(暗いところでものが見えにくくなる)や視野狭窄(視野が狭くなる)、視力低下が主な症状であり、進行すると場合によっては失明に至ることもある。代表的な疾患は網膜色素変性症(指定難病:告示番号90)であり、頻度は4,000~8,000人に一人とされている。
※5 包括的なゲノムプロファイル:
疾患の診療上重要な、検体中の複数の遺伝子の変異を同時に解析して得られる情報。
※6 遺伝子パネル検査:
関連する複数の遺伝子の変異状況を一度に調べる検査法。
(7) 2023年9月 当社は「OncoGuide™ NCCオンコパネルシステム」が、大鵬薬品工業株式会社が開発した「がん化学療法後に増悪したFGFR2融合遺伝子※7陽性の治癒切除不能な胆道がん」への治療薬フチバチニブ※8の胆道がん※9患者さんへの適応を調べるコンパニオン診断として、日本における保険適用を受け、子会社である株式会社理研ジェネシスでの保険適用に対応したアッセイサービスを開始いたしました。
※7 FGFR2融合遺伝子:
FGFR(fibroblast growth factor receptor)はFGFR1-4の4種類が同定されており、細胞の成長や増殖に関わる線維芽細胞増殖因子受容体と呼ばれるタンパク質である。FGFR遺伝子異常には、融合、変異、増幅等があり、これら遺伝子異常により機能が活性化されると、がん細胞の増殖、生存、遊走、腫瘍血管新生、薬剤耐性等に結び付くと考えられている。日本において胆道がんの一種である切除不能な胆管がんの患者さんを対象とした研究では、FGFR2遺伝子再構成の陽性率は、肝内胆管がんで7.4%、肝外胆管がん(肝門部領域胆管がん)で3.6%との報告がある。
※8 フチバチニブ:
大鵬薬品工業株式会社が創製した新規経口抗がん剤で、遺伝子異常を持つ線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)と呼ばれるタンパク質の働きを阻害することにより、がん細胞の増殖を抑制する。2022年9月には、米国において「前治療歴を有するFGFR2融合遺伝子又はその他の再構成を伴う切除不能な局所進行又は転移性肝内胆管がん」の適応での迅速承認、2023年7月には、欧州において「全身療法後に進行したFGFR2融合又は再構成を伴う局所進行又は転移性の胆管がん」の適応で条件付き販売承認を取得している。
※9 胆道がん:
胆道に発生するがんの総称で、発生部位により、胆管がん(肝臓内の胆管に発生する肝内胆管がんを含む)、胆のうがん、乳頭部がんに分類される。
(8) 2023年10月 当社と富士レビオ・ホールディングス株式会社(以下、富士レビオHD)は、免疫検査領域における研究・開発、生産、臨床開発、販売等多面的な協業の強化に合意し、業務提携基本契約を締結いたしました。11月には本契約に基づき、富士レビオHDの子会社が行っている当社の全自動免疫測定装置 HISCLシリーズを対象とした検査試薬の開発に、神経変性疾患関連領域の項目を追加する旨のCDMO(Contract Development and Manufacturing Organization:受託開発製造)契約を締結いたしました。また、12月には両社が保有する試薬原料供給に関し基本合意いたしました。
(9) 2023年11月 当社と川崎重工業株式会社が共同出資する株式会社メディカロイドは、手術支援ロボット「hinotori サージカルロボットシステム」の呼吸器外科への適応について、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)に申請を行いました。
(10) 2023年12月 慢性肝炎・肝硬変の患者さんの診断・治療において、血液のみで肝臓の線維化の進行度を定量的に評価できる当社の検査用試薬「HISCL M2BPGiTM-Qt 試薬」について、国内の保険適用が開始されました。
(11) 2023年12月 当社は、再生細胞医療領域への取り組み加速に向けて、ヒトiPS細胞※10から血小板を産生させる基盤技術を有する株式会社メガカリオンの株式を追加取得し、連結子会社化いたしました。
※10 iPS細胞(人工多能性幹細胞:induced pluripotent stem cell):
ヒトの皮膚の細胞等にいくつかの因子を導入することによって作製された、様々な組織や臓器の細胞に分化する能力を持った幹細胞。山中伸弥教授率いる京都大学の研究グループによって発見された。この細胞を分化誘導することにより、理論上は体を構成する全ての組織や臓器に分化させることが可能と考えられており、再生医療の実現に向けて注目が集まっている。
(12) 2024年1月 当社はアルツハイマー病の原因とされる脳内Aβの蓄積状態を微量の血液から調べるAβ検査試薬を日本、米国に続き、欧州へ販売を拡大いたしました。
(13) 2024年2月 当社とCellaVision ABは次世代の血液像分析装置を含むポートフォリオの拡大により、ヘマトロジーソリューションの進化を目指すStrategic Alliance Agreementを締結いたしました。
(14) 2024年2月 当社と株式会社日立ハイテクは、キャピラリー電気泳動シーケンサー※11を基盤とした新たな遺伝子検査システムの共同開発に向けて合意いたしました。
※11 キャピラリー電気泳動シーケンサー:
DNAの塩基配列や塩基長を短時間かつ比較的安価に分析できる解析装置。個々のDNAの違いを分析する医療・健康分野や犯罪捜査のためのDNA鑑定等に幅広く利用されている。
(15) 2024年2月 当社は「HISCL TARC試薬」及び「HISCL ANP試薬」の製造販売承認を塩野義製薬株式会社から承継し、自社による製造を開始いたしました。
(16) 2024年3月 当社は婦人科・性腺ホルモンの免疫検査パネル6項目(「HISCL LH 試薬」、「HISCL FSH 試薬」、「HISCL プロラクチン 試薬」、「HISCL エストラジオール 試薬」、「HISCL プロゲステロン 試薬」、「HISCL テストステロン 試薬」)の国内販売を開始いたしました。
なお、当連結会計年度における研究開発費は