第2【事業の状況】

1【事業等のリスク】

 当中間連結会計期間において、新たな「事業等のリスク」の発生、又は、前事業年度の有価証券報告書に記載した「事業等のリスク」において重要な変更はありません。

 

2【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 文中の将来に関する事項は、当中間連結会計期間の末日現在において判断したものであります。

 

(1) 経営成績の分析

当中間連結会計期間における当社グループの連結業績は、以下のとおりであります。

 

地域別売上高

 

前中間連結会計期間

当中間連結会計期間

前年同期比

(%)

金額

(百万円)

構成比

(%)

金額

(百万円)

構成比

(%)

国内

30,323

12.5

25,435

10.9

83.9

 

米州

63,745

26.3

64,686

27.8

101.5

 

EMEA(欧州・中東・アフリカ)

69,121

28.5

72,968

31.4

105.6

 

中国

54,540

22.5

43,282

18.7

79.4

 

AP(アジア・パシフィック)

24,748

10.2

26,153

11.2

105.7

海外計

212,156

87.5

207,092

89.1

97.6

合計

242,479

100.0

232,527

100.0

95.9

 

 国内販売につきましては、ヘマトロジー分野の機器、免疫検査分野及び血液凝固検査分野における試薬の売上が減少いたしました。その結果、国内売上高は25,435百万円(前年同期比16.1%減)、構成比10.9%(前年同期比1.6ポイント減)となりました。

 海外販売につきましては、ヘマトロジー分野における機器、試薬及び保守サービスの売上が減少したことに加え、為替相場が円高に推移した結果、海外売上高は207,092百万円(前年同期比2.4%減)、構成比89.1%(前年同期比1.6ポイント増)となりました。

 販売費及び一般管理費につきましては、事業規模拡大に伴う人員の増加並びにデジタル基盤構築に係る投資による償却費の増加により、77,873百万円(前年同期比7.6%増)となりました。研究開発費につきましては、13,203百万円(前年同期比13.4%減)となりました。

 この結果、当中間連結会計期間の連結業績は、売上高は232,527百万円(前年同期比4.1%減)、営業利益は32,957百万円(前年同期比25.9%減)、税引前中間利益は29,955百万円(前年同期比21.7%減)、親会社の所有者に帰属する中間利益は19,019百万円(前年同期比26.9%減)となりました。

 

 セグメントの経営成績は、以下のとおりであります。

 ① 本社統括

 韓国では、ヘマトロジー分野の機器の売上が増加いたしましたが、日本において、ヘマトロジー分野の機器、免疫検査分野及び血液凝固検査分野の試薬の売上が減少いたしました。またメディカルロボット事業においては、保守サービスの売上が増加した一方で、機器の売上が減少いたしました。その結果、売上高は38,371百万円(前年同期比11.5%減)となりました。

 利益面につきましては、減収に加え、売上原価率の悪化、販売費及び一般管理費の増加により、セグメント利益(営業利益)は11,874百万円(前年同期比57.0%減)となりました。

 ② 米州統括

 北米では、尿検査分野の機器及び保守サービス、ヘマトロジー分野の機器の売上が増加いたしました。中南米では、ヘマトロジー分野の機器の売上が減少した一方、尿検査分野における機器及び試薬の売上が増加いたしました。その結果、売上高は61,164百万円(前年同期比2.3%増)となりました。

 利益面につきましては、売上は増加いたしましたが、事業規模拡大に伴う人員の増加により販売費及び一般管理費が増加し、セグメント利益(営業利益)は前年同期並みの3,175百万円(前年同期比0.1%減)となりました。

 

 ③ EMEA統括

 ヘマトロジー分野及び尿検査分野において、機器、試薬の売上が増加いたしました。その結果、売上高は70,531百万円(前年同期比6.1%増)となりました。

 利益面につきましては、増収により売上総利益は増益となりましたが、事業規模の拡大等による販売費及び一般管理費の増加により、セグメント利益(営業利益)は5,721百万円(前年同期比15.7%減)となりました。

 ④ 中国統括

 血液凝固検査分野の機器及び試薬の売上が増加いたしましたが、政府主導の医療費抑制政策による厳しい環境下において、ヘマトロジー分野の機器及び試薬の売上が減少いたしました。その結果、売上高は43,227百万円(前年同期比20.6%減)となりました。

 利益面につきましては、売上原価率が改善し、販売費及び一般管理費が減少いたしましたが、減収の影響が大きく、セグメント利益(営業利益)は5,688百万円(前年同期比2.1%減)となりました。

 ⑤ AP統括

 ヘマトロジー分野において、機器及び保守サービスの売上が減少した一方で、試薬の売上が増加いたしました。また血液凝固分野及び尿検査分野においても試薬の売上が増加いたしました。その結果、売上高は19,232百万円(前年同期比4.6%増)となりました。

 利益面につきましては、売上は増加いたしましたが、2024年8月に竣工したインドの新生産拠点の償却費等により売上原価率が悪化し、セグメント利益(営業利益)は3,626百万円(前年同期比3.1%減)となりました。

 

(2) 財政状態の分析

 当中間連結会計期間末の資産合計は、前連結会計年度末と比べて4,141百万円増加し、669,410百万円となりました。この主な要因は、流動資産の営業債権及びその他の債権が12,708百万円減少したものの、棚卸資産が9,529百万円、有形固定資産が5,328百万円増加したこと等によるものであります。

 一方、負債合計は、前連結会計年度末と比べて14,480百万円減少し、186,253百万円となりました。この主な要因は、未払法人所得税が4,663百万円、未払賞与が4,440百万円、営業債務及びその他の債務が3,179百万円、未払費用が1,507百万円減少したこと等によるものであります。

 資本合計は、前連結会計年度末と比べて18,622百万円増加し、483,156百万円となりました。この主な要因は、その他の資本の構成要素が11,217百万円、利益剰余金が8,376百万円増加したこと等によるものであります。また、親会社所有者帰属持分比率は前連結会計年度末の69.7%から2.4ポイント増加して72.1%となりました。

 

(3) キャッシュ・フローの分析

 当中間連結会計期間末の現金及び現金同等物(以下、資金)は、前連結会計年度末より3,468百万円減少し、86,101百万円となりました。

 当中間連結会計期間における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、以下のとおりであります。

<営業活動によるキャッシュ・フロー>

 営業活動の結果得られた資金は、38,062百万円(前年同期比12,069百万円減)となりました。この主な要因は、税引前中間利益が29,955百万円(前年同期比8,324百万円減)、減価償却費及び償却費が22,832百万円(前年同期比3,641百万円増)、営業債権の減少額が15,791百万円(前年同期比802百万円減)、棚卸資産の増加額が6,905百万円(前年同期比508百万円減)、法人所得税の支払額が14,389百万円(前年同期比934百万円増)となったこと等によるものであります。

<投資活動によるキャッシュ・フロー>

 投資活動の結果使用した資金は、26,604百万円(前年同期比2,845百万円増)となりました。この主な要因は、有形固定資産の取得による支出が15,645百万円(前年同期比4,154百万円増)、無形資産の取得による支出が10,011百万円(前年同期比1,834百万円減)となったこと等によるものであります。

<財務活動によるキャッシュ・フロー>

 財務活動の結果使用した資金は、17,577百万円(前年同期比7,044百万円増)となりました。この主な要因は、配当金の支払額が10,601百万円(前年同期比1,872百万円増)、リース負債の返済による支払額が5,789百万円(前年同期比781百万円増)となったこと等によるものであります。

 

(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 前事業年度の有価証券報告書に記載した「第一部 企業情報 第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」内の「優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」の記載について重要な変更はありません。

 

(5) 会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 前事業年度の有価証券報告書に記載した「第一部 企業情報 第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」内の「重要な会計方針及び見積り」の記載について重要な変更はありません。

 

(6) 研究開発活動

 当中間連結会計期間におけるグループ全体の研究開発費は13,203百万円であります。

 また、当中間連結会計期間において、当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。

 なお、当中間連結会計期間における、主な研究開発活動の状況は以下のとおりであります。

 ① 2025年6月 当社と川崎重工業株式会社が共同出資する株式会社メディカロイド、一般社団法人日本外科学会及びNTTコミュニケーションズ株式会社は、兵庫県神戸市とフランス ストラスブール間において手術支援ロボット「hinotoriTM サージカルロボットシステム」を用いた遠隔ロボット手術の実証実験を成功させました。当実証実験の成果は、安全かつ正確な遠隔手術の社会実装及び世界的な医療アクセスの大幅な向上に寄与することが期待されております。

 ② 2025年6月 当社は、2024年9月に申請していた血液中のゲノムDNAからAPOE 遺伝型※1を判定する「PrismGuideTMAPOE 遺伝型判定キット」の製造販売承認を取得いたしました。国内初の承認を受けた本検査試薬は、アルツハイマー病患者さんにおいて、治療薬である抗アミロイドβ抗体薬の副作用の発現リスクを予測し、主治医と患者さんやそのご家族との共同意思決定(SDM)※2に貢献すると期待されております。

※1 APOE遺伝型:

脂質代謝に関わるアポリポタンパク質E(ApoE)をコードする遺伝子。112番目と158番目のアミノ酸をコードする2つの一塩基置換(rs429358,rs7412)の組み合わせにより3つの遺伝型(ε2,ε3,ε4)が規定される。

※2 共同意思決定(SDM):

治療の意思決定過程において患者参画を推進し、主治医が患者さんにとってよりよい選択を共に行う。

 ③ 2025年9月 当社の子会社である株式会社理研ジェネシスは、「OncoGuideTM OncoScreenTM Plus CDx システム」の製造販売承認を取得いたしました。本製品は、「トルカプ®錠160mg/トルカプ®錠200mg」と「フェソロデックス®」との併用療法の適応となるPIK3CA、AKT1、又はPTEN 遺伝子変異を有するホルモン受容体(HR)陽性かつHER2陰性の手術切除不能又は再発乳がんに対するコンパニオン診断※3として使用可能となります。

※3 コンパニオン診断(Companion Diagnostics: CDx):

医薬品の効果や投与量を投薬前に予測するために、遺伝子等のバイオマーカーを調べる体外診断用医薬品又は医療機器。CDxの使用により、最適な治療法や医薬品の選択が可能となる。

 ④ 2025年9月 当社の子会社であるOxford Gene Technologyは、米国食品医薬品局(FDA)より、「CytoCell® KMT2A Breakapart FISHプローブキットPDx※4」のDe Novo制度を利用した市販前認可※5を取得いたしました。今回の認可により、「Revuforj」のKMT2A 再構成(KMT2Ar)急性白血病※6のコンパニオン診断薬として、米国において本品の使用が可能になります。

※4 CytoCell® KMT2A Breakapart FISHプローブキットPDx:

OGTが提供するハイブリダイゼーションベースのFISH法による体外診断用キット。急性白血病患者の骨髄検体を対象に、KMT2A 遺伝子再構成の検出を目的とし、高感度・高精度な診断をサポートします。

※5 De Novo認可:

米国食品医薬品局(FDA)が新しいタイプの医療機器を市販前確認するための制度であります。既存の類似製品が米国市場に存在しない場合に適用され、安全性と有効性が十分に確認された場合に、新たな医療機器としてクラスI又はクラスIIに分類され、市場での販売が認められます。

※6 KMT2A 再構成(KMT2Ar)急性白血病:

KMT2A 遺伝子の再構成は、乳児を含む急性白血病で頻繁に認められ、治療や予後に重要な影響を与える遺伝子異常であります。急性リンパ性白血病(ALL)や急性骨髄性白血病(AML)、混合表現型急性白血病(MPAL)等で検出され、複数のパートナー遺伝子が知られております。

 

3【重要な契約等】

株式譲渡契約

(1) 契約の概要

当社は、日本電子株式会社(以下、JEOL)の医用機器事業(以下「対象事業」)を譲り受けることを決議し、2025年9月2日に株式譲渡契約を締結いたしました。

JEOLが新たに設立した新会社(以下、対象会社)に対象事業を吸収分割の方法で承継させた上で、当社が対象会社の全株式を取得(子会社化)することを予定しております。今後、各種手続及び関係当局の承認等を条件として、2026年4月に株式譲渡の完了を予定しております。

 

(2) 事業譲受の目的

対象事業が有する生化学自動分析装置※1 BioMajesty™※2(以下、BioMajesty)は、検体量の微量化・試薬使用量の低減を実現する独自技術を搭載し、日本市場において高いシェアを獲得しております。一方で、海外市場においてはOEMや販売代理店を通じた事業を展開しており、当社は、2010年にJEOLと売買基本契約を締結し、アジア・パシフィック地域において中型モデルを販売しております。

競争力が高く、高品質なBioMajestyを含む対象事業を譲り受けることにより、これまで築いてきた試薬メーカーとのパートナーシップを発展させると共に、世界中で新たな協業の機会を広げ、製品ポートフォリオの強化を図ります。また、試薬ビジネスの拡大を伴う生化学検査・免疫検査分野での事業展開に加え、基本的なスクリーニング検査を網羅的に提供可能な製品ポートフォリオと販売・カスタマーケアの強みを活かし、グローバル市場での堅調な検査ニーズにお応えすることを目指してまいります。

 

※1 生化学自動分析装置:

血液や尿等の体液成分を検体とし、糖やコレステロール、タンパク、酵素等の各種成分の測定を行う装置。現在では、一般的な生化学項目だけでなく、免疫血清、腫瘍マーカー、血液凝固検査の一部の項目など幅広い分野の測定が可能となっている。

※2 BioMajesty™シリーズ:

採取した検体を希釈するという独自の手法で、検体量の微量化・試薬の少量化を実現した生化学自動分析装置シリーズ。ハイエンド製品として高速大量処理を追求したJCA-BM8000 seriesから、ローエンド製品として省スペースモデルに多機能と使いやすさを凝縮したJCA-BM6010 Gまで、フルラインアップを揃えており、検査機関のあらゆるニーズに対応できる。