(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは、創業以来の経営基本方針である「3つの安心」の価値観を受け継ぎ、内外環境変化に適応するために発展的に再定義した新たな企業理念「Sysmex Way」を制定し、これに基づき、お客様、従業員、取引先、株主、社会に対する提供価値を示した「行動基準」を掲げております。
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Mission ヘルスケアの進化をデザインする。 Value 私たちは、独創性あふれる新しい価値の創造と、 人々への安心を追求し続けます。 Mind 私たちは、情熱としなやかさをもって、 自らの強みと最高のチームワークを発揮します。
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当社グループの進むべき方向性と大切にすべき価値観を表した「Sysmex Way」をグループ全体で実践し、社会からのより厚い信頼とさらなる飛躍を目指します。
(2) 経営環境の認識
今後の見通しにつきましては、国内においては、新型コロナウイルス感染症の影響が長期化する中、ワクチン接種によるコロナとの共生が進む等、個人消費や企業収益の回復が期待されております。一方で、世界的な原油価格の上昇や更なる円安の進展による物価上昇等、景気の先行きは依然として不透明な状況にあります。また、海外においても、地政学的リスクの顕在化、米中関係の動向、エネルギー価格の高騰等、景気の不確実性が一層高まっております。
医療を取り巻く環境につきましては、先進国の高齢化に伴う医療の効率化、新興国の経済成長に伴う医療需要の拡大と医療の質・サービス向上へのニーズの高まりに加えて、人工知能(AI)、情報通信技術(ICT)等の最先端技術のヘルスケア領域への応用が急速に進展しており、今後も継続した成長が期待されております。また、グローバルでの新型コロナウイルス感染症のパンデミックを起点とした医療体制の在り方や医療環境自体が大きく変化する可能性もあり、医療アクセスの向上、セルフメディケーションへの注目等、更なる成長機会が見込まれております。
こうした中、当社グループでは、2021年4月より新たな中期経営計画(2022年3月期から2024年3月期まで)をスタートさせました。長期ビジョンに基づくポジショニング目標達成に向けて、グループの力強い成長の持続とそれを支える経営基盤の強化を推進いたします。
2023年3月期の連結業績予想につきましては、製品ラインアップの拡充や販売・サービス体制の強化等により、売上・利益共に伸張することを想定しており、売上高410,000百万円、営業利益76,000百万円、税引前利益72,500百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益50,000百万円を予想しております。
(注)新型コロナウイルス感染症が収束に向かい、経済活動も徐々に正常化する前提であります。
また、算定にあたりましては、通期の為替レートを対米ドル120円、対ユーロ130円で想定しております。
なお、上記予想は、現時点で入手している情報に基づき算定したものであり、様々な要因により変動する可能性があります。
(3) 目標とする経営指標
グループ中期経営計画におきまして、2024年3月期を最終年度として、連結売上高420,000百万円、連結営業利益80,000百万円を達成することを目指します。
(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループでは、2021年4月より新たな中期経営計画(2022年3月期から2024年3月期まで)をスタートさせております。2025年に向けた長期ビジョン(2018年制定)に基づくポジショニング目標の達成を目指し、今後3年間で取り組むべき重点アクションを設定し、具体的施策の実行を継続して推進いたします。グループ最大の収益源であるヘマトロジー※分野に加え、血液凝固検査分野、免疫検査分野、ライフサイエンス分野を重点分野と定め、優先的な資源配分により研究開発活動を強化し、新たな価値の創出と製品ラインアップの拡充を実現いたします。更に、手術支援ロボットを核とした新たな事業の創出と育成にも引き続き取り組み、非連続な成長の実現を目指します。
また、新たな価値創造及び企業体質強化に向けたビジネスプロセス改革をグローバルに推進するため、次世代基幹システムやデジタル基盤刷新への取り組みを継続いたします。グループ全体の生産性を向上すると共に、お客様に対する新たなソリューションの創出に向けたデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現を目指します。
加えて、地球環境の持続可能性が喫緊の課題となっている中、グローバルに事業を展開する企業として、事業活動における環境への負荷低減が重要な課題の一つだと認識しております。長期的な環境マネジメントの指針として「シスメックス・エコビジョン2025」を策定しており、製品ライフサイクルにおけるCO2排出量や水消費量の削減、環境に配慮したグリーン調達等を継続して推進いたします。このように製品・サービスの提供を通じた医療課題解決に取り組むと共に、環境への配慮や魅力ある職場の実現等、優先的に取り組むべき課題(マテリアリティ)をグループ全体で推進し、多様なステークホルダーの皆様へ安心をお届けすると共に、サステナビリティ経営の実現を目指します。
経営戦略の実行における重要な課題は以下のとおりであります。
<ポジショニング目標達成に向けた取り組み>
① 成長性・収益性の向上を目指した新製品の投入加速、新興国戦略の推進
ヘマトロジー分野では、「多項目自動血球分析装置 XRシリーズ」及び「多項目自動血球計数装置XQシリーズ」のグローバル展開を加速させることで、成長性・収益性の向上を目指します。また、人口増加及び経済成長、医療品質の向上が大きく期待される新興国において、ニーズに適した製品の導入を進め、医療アクセスの向上や医療インフラ強化に貢献します。特に、2019年度に直接販売・サービスを開始したインドを重要市場と位置付け、事業企画・製品開発・市場導入を推進し、新興国における市場シェアの拡大に取り組みます。
また、各事業分野及び分野横断的な新たなクリニカルバリューを継続的に創出するため、戦略的にKOL(Key Opinion Leader)ネットワークを構築し、連携強化を図ります。更に、新製品投入加速に向け、商品開発に関わるバリューチェーン全体を変革する他、売上原価率の低減、サービス収益の向上及び事業活動全般のプロセスを効率化し、収益性向上を目指します。
② 重点分野(血液凝固検査分野、免疫検査分野、ライフサイエンス分野)への積極的な投資による高成長の実現
今後、大きな成長が期待される血液凝固検査分野、免疫検査分野、ライフサイエンス分野を重点分野に定め、経営資源を優先配分し、製品ラインアップの拡充と販売・サービス体制の強化により高成長と大幅な収益性の改善を目指します。また、必要に応じて戦略的なアライアンスやM&Aを効果的に活用し、強固な事業構造への変革を推進します。
加えて、既に保有している技術の早期事業化に向け、製品開発の早期ステージから共同開発先や病院等のステークホルダーと連携することで、新しい価値創出に向けた取り組みを加速させます。
③ 非連続な成長実現のための新たな事業の育成
手術支援ロボット「hinotori™」による外科領域のビジネスを日本で着実に拡大すると共に、将来のグローバル展開に向け、海外薬事承認取得に向けた活動を推進します。また、当社が検体検査領域で培った技術やノウハウを活かすことで、再生医療や遺伝子治療等、診断と治療の境界に位置する領域での新たな事業の創出や、革新的なデジタル技術の社会及び医療への実装を見据え、オープンイノベーションを推進し、医療データを利活用した新たな事業の創出にも取り組みます。
④ グループのデジタル化推進と顧客価値創出に向けたDXの実現
新たな価値創造及び企業体質強化に向けたビジネスプロセス改革をグローバルに推進するため、継続的に次世代基幹システムやデジタル基盤の刷新に取り組み、バリューチェーン全体の最適化・効率化を目指します。また、お客様に対するデジタル化については、既に提供を開始しているICTソリューション「Caresphere™」のアプリケーション拡充による新たな付加価値の提供により、新しいソリューションの創出に向けて取り組みを推進します。
⑤ 戦略実行に資する人材ポートフォリオの充実と多様な人材を活かす魅力ある組織風土への転換
持続的な成長を支える次世代リーダーと高度専門人材の獲得及び育成を強化するため、グローバル共通のジョブ型人材マネジメントシステムの定着を推進します。また、健康経営施策の実行による従業員の心身の健康をサポートし、すべての従業員が心身ともに健康で安心して働ける環境を整え、従業員の能力発揮とエンゲージメント向上を目指します。
⑥ サステナビリティ経営の強化・実践に向けたビジョン策定、施策展開
医療課題の解決、品質の向上、環境配慮への対応強化、ガバナンスの強化等、当社の持続的成長に向けた優先的に取り組むべき課題(マテリアリティ)及びサステナビリティ目標に基づき、事業活動を通じた社会課題解決への貢献を通じて、企業価値の向上を図ります。
※ ヘマトロジー:
前連結会計年度において表記していた「血球計数検査」について、当連結会計年度より「ヘマトロジー」として表記している。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当社グループは検体検査に関連する製品及び関連するサービスを提供する「ヘルスケア事業」を主たる事業としております。また、事業活動をグローバルに展開しているため、当社グループの業績は、各国・地域で今後起こりうる様々な要因によって大きな影響を受ける可能性があります。
当社では、リスクマネジメントを含む当社グループの内部統制全般を統括する組織として「内部統制委員会」を設置しております。メンバーは取締役社長と担当執行役員及び監査等委員(社外取締役を除く)で構成されており、当委員会では、様々なリスクについて定期的に抽出を行い、その中でも当社グループとして事業に与える影響が大きなリスクを特定して対策を講じております。更に各地域、各部門の活動テーマにおいても、年度単位で計画立案し、定期的に報告を行っております。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項は以下のようなものがあります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 新型感染症の拡大による影響について
新型コロナウイルス感染症の拡大による各国の医療環境を含む社会情勢は刻々と変化しており、今後も引き続き不確実な状況が続くと想定されます。当社グループの生産・販売等の活動は各種感染予防対策の実施やオンラインでのコミュニケーションの活用等により支障なく継続しておりますが、特に物流網や原材料調達等においては未だ混乱が見られ、状況が長期にわたって改善しない場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、確実な事業継続のために対策チームを設置しており、今後も製品の安定供給、顧客へのサービス活動の継続、従業員の安全確保等に努めてまいります。また、新型コロナウイルス感染症の診断で使用される検査試薬等、新たな需要に応えるべく、製品の開発・販売を行っております。
(2) 為替変動による影響について
当社グループは海外関係会社及び代理店を経由して海外へ販売を行っており、連結売上高に占める海外売上高の比率は、2021年3月期84.0%、2022年3月期84.7%と高い水準で推移しております。海外関係会社の現地通貨建て財務諸表の各項目は、円換算時の為替レート変動の影響を受けております。当社グループの外貨建て資産及び負債の決済及び期末時評価額については、為替予約等によりリスクを軽減させる措置を講じておりますが、予測を上回る為替変動によって、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
なお、2022年3月期における為替変動の影響は、以下のとおりであります。
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1円変動の影響 |
売上高 |
営業利益 |
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USD |
688百万円 |
166百万円 |
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EUR |
534百万円 |
153百万円 |
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CNY |
5,246百万円 |
3,921百万円 |
(3) 医療制度改革の影響について
急速な少子高齢化、医療技術の進歩、患者の医療の質に対する要望の高まり等、医療を取り巻く環境変化を背景に、医療費を適正化し質の高い医療サービスを効率的に提供するための医療制度改革が継続して進められております。また、コロナ禍を機に医療インフラの比較的脆弱な国においても検査・医療の重要性が再認識され、医療制度改革が加速されると共に新たなニーズが生まれることが想定されます。当社グループの経営成績及び財政状態は、このような医療制度改革の影響を受ける可能性があります。このため、当社グループのネットワークを活用して様々な環境変化の中から的確に機会を捉えた上、今後も個別化医療に資する診断技術創出等のライフサイエンスの事業化を進める一方、検体検査機器、検体検査試薬、IT、サービス&サポートを合わせたトータルソリューションを提供し、多様化するニーズにきめ細かく対応できるよう努めてまいります。
また、当社の機器・試薬の大部分は各国の薬事承認や登録が必要ですが、各国において規制見直しの動きが加速しており、薬事承認取得に関する要求事項が複雑・高度化する一方、規制緩和に向けた動きも見受けられます。このような変化に迅速かつ的確に対応することができず、取得済みの薬事承認の維持や新製品の薬事承認取得が遅延した場合等には、市場獲得機会の損失や対応コストが増加する可能性があると共に、お客様に製品をタイムリーにお届けすることができなくなる可能性があります。
そのため、各国業界団体への参画等を通じて法規制に関する最新情報の把握に努めると共に、当社のネットワークを活用したグローバルな薬事承認取得体制により、薬事承認の適時的確な取得・維持に取り組んでおります。
(4) 当社グループ及び第三者の知的財産権について
当社グループは、特許、商標、意匠等をグローバルに出願しておりますが、一部または全ての国で権利が付与されない可能性があります。また、当社グループの保有する知的財産権が無断使用された場合に、その無断使用を防ぐために講じる手段が十分には成功しない可能性があります。一方、第三者の知的財産権に関して、当社グループに正当性があるか否かに関わらず、訴訟を提起される、ロイヤルティの支払いを要求される等の知的財産紛争が起こる可能性があります。
当社グループでは、グローバルコンプライアンスコード及び従業員への知的財産教育を通じて、当社グループ及び第三者の知的財産権を尊重しながら事業活動を推進するよう努めております。また、社規定にて知的財産レビューシステムを導入し、研究開発・事業に即した知的財産権の獲得を進めると共に、第三者の知的財産権に関する知財紛争の可能性を低下させるよう、取り組んでおります。
(5) 製品の品質について
当社グループが提供する検体検査機器製品及び診断薬製品等には高い信頼性が要求されるため、万全の品質管理体制の下、製品の品質保証に取り組んでおります。しかしながら、万が一製品に品質問題が発生した場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。
そのため、各国の法令・国際規格等に準拠する品質を維持するための仕組みの整備・運用はもとより、国内外の市場及び社内からの信頼性や安全性に関する情報を調査・分析し、設計品質の向上につながる技術情報の蓄積、新製品の量産開始・市場導入前の品質チェックに生かすことによって、品質保証の強化に取り組んでおります。
(6) 製品の安定供給について
当社グループでは、検体検査機器製品及び診断薬製品等を世界190カ国以上に供給しており、市場への製品の安定的供給に努めております。しかしながら、急激な市況の変化やサプライヤーの事業停止等により部品・原材料等の調達が困難となった場合や、製造やサプライチェーンの拠点が大規模な自然災害や感染症等の発生、また、火災等の重大な事故に罹災した場合には、市場への製品供給に支障をきたす可能性があります。
部品・原材料等は在庫の確保や複数社購買等によるリスク回避に努め、また、製造拠点においても災害等に対する予防、復旧対策の充実に取り組んでおります。
特に、当社グループ売上高の59.4%(2022年3月期)を占める診断薬製品に関しては、1カ月以上の安全在庫の維持や生産拠点の複数化を推進すると共に中でも主力事業であるヘマトロジー分野の診断薬については、現地生産による製造拠点の複数化に加え、欧州・米州・中国・日本の主要拠点間での相互供給体制を構築し、供給を継続できるよう備えております。
(7) 情報システム利用におけるリスクについて
当社グループでは、情報伝達や基幹業務支援、稟議等の決裁手続きに各種情報システムを導入しており、事業上の情報の多くはネットワークを通じて処理しております。
そのため、情報システムやネットワーク回線の障害、あるいはコンピュータウイルスや外部からの情報システムへの侵入等による業務への影響を最小限に抑えるために、不正通信検知やマルウェアの隔離等の仕組みの導入、24時間の監視、CSIRT(Computer Security Incident Response Team)の設置と団体加盟等によるセキュリティ対策と IT-BCP(事業継続計画)の見直しのほか、厳格なユーザー管理やアクセス制限等の内部統制の強化に取り組んでおります。
(8) 企業買収等に関わるリスクについて
当社グループでは、持続的成長や事業展開の手段としてM&Aまたは資本提携等を実施することがあります。これらのM&A等の実施にあたっては事前に十分な調査を行い、当社の負担するリスクを限定するよう努めております。しかし、対象会社の経営環境や事業の変化、事前調査において判明しなかった情報の露呈、または買収後の対象企業の経営環境や事業の変化等の影響を受け、期待されていた効果等が実現されない可能性があります。
(9) その他のリスクについて
当社グループは、製造、販売、研究等の活動をグローバルに展開しており、世界中に拠点を有しております。これらの拠点や周辺地域において、地震・風水害等の大規模な自然災害や、テロ・紛争、国家間の経済摩擦等の地政学的な問題が発生し、当社グループの設備・インフラ及び人材に甚大な被害が生じて生産・販売等の活動が制限されたり、顧客からの需要の低下等が起きた場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
なお、今般のロシア・ウクライナ紛争に関して、当社はロシアにおいては販売子会社シスメックス ルース エルエルシーを通じて、またウクライナにおいては代理店を通じて販売サービスを行っておりますが、ロシア及びウクライナにおける売上高はグループ全体の約2%に留まるため、業績への直接的な影響は軽微と考えております。ただし、同紛争がもたらす世界経済への影響は刻々と変化しておりますので、注意深く情報収集・モニタリングを行い、当社への影響や必要な対応を適時検討してまいります。
1.経営成績等の概要
(1) 経営成績の分析
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度の末日現在において判断したものであります。
当社グループでは、クラウド・コンピューティング契約におけるコンフィギュレーションまたはカスタマイゼーションのコストについて、前連結会計年度までその他の非流動資産に計上しておりましたが、当連結会計年度より2021年4月に公表されたIFRS解釈指針委員会のアジェンダ決定に至る議論を踏まえて、サービスを受領したときにそのコストを費用として認識する方法に変更いたしました。当該会計方針の変更は遡及適用され、遡及処理の内容を反映させた前連結会計年度の数値との比較、分析を行っております。
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の一時的な収束と共に、企業収益、生産、設備投資において持ち直しの動きも一部見られましたが、新たな感染拡大による個人消費の減少や、原油や資源価格の上昇等による悪影響等、依然として先行きは不透明な状況が続いております。海外においても、国や地域によるばらつきはあるものの、全体的には回復基調にありましたが、地政学リスクの増大を背景とする原材料価格の高騰やサプライチェーンの混乱に加え、米国金融政策の引き締め方向への転換等により、経済の減速が懸念されております。
医療面におきましては、国内では医療及びヘルスケア分野は高齢化や健康・医療ニーズの多様化を背景に、需要期待が高まっております。政府も成長戦略の一つと位置付けており、医療関連産業は引き続き活性化が見込まれております。海外においても先進国の高齢化に伴う医療の効率化、新興国の経済成長に伴う医療需要の拡大と医療の質・サービス向上へのニーズの高まりに加えて、人工知能(AI)や情報通信技術(ICT)等の最先端技術のヘルスケア領域への応用が急速に進展しており、今後も継続した成長が期待されております。
このような状況の下、当社はヘマトロジー分野における製品ポートフォリオの持続的な進化を目指し、次世代フラッグシップモデル「多項目自動血球分析装置XRシリーズ」と、白血球3分類コンパクトモデル「多項目自動血球計数装置XQシリーズ」を日本国内において発売いたしました。現在、各国における許認可取得を進めており、順次グローバルな販売活動を推進すると共に、地域の特性や施設のニーズに応じた検査室運営の最適化に貢献すべく、ヘマトロジー分野における製品ポートフォリオの進化に引き続き取り組んでまいります。
加えて、中東地域の中でも高い市場成長が期待されるサウジアラビアにおいて、事業基盤をさらに強化するため、新たに現地法人を設立いたしました。これまでの現地代理店を通じた活動から直接販売・サービス体制へ移行することで、お客さまのニーズを的確に捉え、主力のヘマトロジー分野の更なるシェア拡大、尿検査分野及び血液凝固検査分野における市場獲得やその他事業への展開を推進してまいります。
また、個別化医療の実現を目指した取り組みとして、自社の全自動免疫測定装置HISCL™-5000/HISCL™-800を用いた血液中のアミロイドβ測定検査試薬について、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)へ製造販売承認申請を実施いたしました。アルツハイマー型認知症は、アミロイドβと呼ばれるタンパク質が脳にたまり、神経細胞に障害を与えることが原因とされております。当社は脳内のアミロイドβの蓄積状態の把握を補助する検査試薬の提供により、患者さんの負担を減らし、いち早く治療を開始できる環境構築を目指してまいります。
更に、国産初の手術支援ロボットシステム「hinotori™ サージカルロボットシステム」のグローバル総代理店である当社は、日本の医療機関を対象に製品導入を推進しております。今後は、国内市場導入を基盤として、海外市場導入にむけた薬事・販売体制等の準備を推進してまいります。
<参考>地域別売上高
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|
前連結会計年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
前期比 (%) |
|||
|
金額 (百万円) |
構成比 (%) |
金額 (百万円) |
構成比 (%) |
|||
|
国内 |
48,756 |
16.0 |
55,618 |
15.3 |
114.1 |
|
|
|
米州 |
65,890 |
21.6 |
83,655 |
23.0 |
127.0 |
|
|
EMEA |
82,140 |
26.9 |
101,528 |
27.9 |
123.6 |
|
|
中国 |
83,830 |
27.5 |
93,373 |
25.7 |
111.4 |
|
|
アジア・パシフィック |
24,454 |
8.0 |
29,604 |
8.1 |
121.1 |
|
海外計 |
256,316 |
84.0 |
308,161 |
84.7 |
120.2 |
|
|
合計 |
305,073 |
100.0 |
363,780 |
100.0 |
119.2 |
|
国内販売につきましては、主に新型コロナウイルス感染症の検査に関する血液凝固検査分野、免疫検査分野及びライフサイエンス分野における試薬の売上が増加したことに加え、メディカルロボット事業分野における機器の販売が伸長しました。その結果、国内売上高は55,618百万円(前期比14.1%増)となりました。
海外販売につきましては、前年同期は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けましたが、検査需要の回復に伴い、主にヘマトロジー分野、尿検査分野及び血液凝固検査分野における試薬の売上が増加したことに加え、為替相場が円安に推移した結果、当社グループの海外売上高は308,161百万円(前期比20.2%増)、構成比84.7%(前期比0.7ポイント増)となりました。
また、販売費及び一般管理費につきましては、前年同期は、全地域において新型コロナウイルス感染症拡大に伴い活動制限等の影響がありましたが、主に販売・サービス活動の再開に伴い増加し、94,235百万円(前期比14.1%増)となりました。加えて、研究開発費につきましては、積極的な開発投資に伴い増加し26,784百万円(前期比19.0%増)となりました。
この結果、当連結会計年度の連結業績は、売上高は363,780百万円(前期比19.2%増)、営業利益は67,416百万円(前期比34.8%増)、税引前利益は64,346百万円(前期比39.1%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益は44,093百万円(前期比38.2%増)となりました。
セグメントの経営成績は、以下のとおりであります。
① 日本
主に新型コロナウイルス感染症の検査に関する血液凝固検査分野、免疫検査分野及びライフサイエンス分野における試薬の売上が増加したことに加え、メディカルロボット事業分野における機器の販売が伸長しました。その結果、売上高は59,743百万円(前期比13.4%増)となりました。
利益面につきましては、販売費及び一般管理費、研究開発費は増加しましたが、増収及び売上原価率の改善により売上総利益が増加し、セグメント利益(営業利益)は38,246百万円(前期比33.5%増)となりました。
② 米州
北米においては、検査需要の回復及び機器販売が伸長したこと等により、ヘマトロジー分野において機器、試薬及び保守サービスの売上が増加しました。また、シーメンス社との協業のもと、尿検査分野において機器、試薬及び保守サービスの売上が増加しました。その結果、売上高は78,964百万円(前期比28.4%増)となりました。
利益面につきましては、販売費及び一般管理費は増加しましたが、増収による売上総利益の増加により、セグメント利益(営業利益)は4,625百万円(前期比84.1%増)となりました。
③ EMEA
検査需要の回復及びロシア、中欧、東欧での入札案件の獲得等により、ヘマトロジー分野、尿検査分野、血液凝固検査分野において機器及び試薬の売上が増加しました。また、新型コロナウイルス抗原検査キットの仕入販売により、関連試薬の売上が増加しました。その結果、売上高は102,411百万円(前期比23.6%増)となりました。
利益面につきましては、販売費及び一般管理費は増加しましたが、増収による売上総利益の増加により、セグメント利益(営業利益)は12,310百万円(前期比22.1%増)となりました。
④ 中国
中国政府調達方針の影響による購入先送り等があり、主要分野の機器売上が減少しましたが、検査需要の回復に伴い、ヘマトロジー分野、尿検査分野、血液凝固検査分野、免疫検査分野において試薬の売上が増加、円安の影響による増収要因もあり、売上高は93,295百万円(前期比11.4%増)となりました。
利益面につきましては、販売費及び一般管理費は増加しましたが、増収及び売上原価率の改善により売上総利益が増加し、セグメント利益(営業利益)は11,572百万円(前期比128.4%増)となりました。
⑤ アジア・パシフィック
検査需要の回復に伴い、ヘマトロジー分野及び尿検査分野において試薬の売上が増加しました。また南アジアでは、インドでの入札案件の獲得により、ヘマトロジー分野において機器の販売が伸長した他、インド、東南アジアにおいて血液凝固検査分野における機器及び試薬売上が増加しました。その結果、売上高は29,364百万円(前期比20.8%増)となりました。
利益面につきましては、販売費及び一般管理費が増加しましたが、増収及び売上原価率の改善により売上総利益が増加し、セグメント利益(営業利益)は2,176百万円(前期比2.0%増)となりました。
(2) 財政状態の分析
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末と比べて58,811百万円増加し、483,707百万円となりました。この主な要因は、営業債権及びその他の債権が18,056百万円増加、棚卸資産が14,959百万円増加、無形資産が10,419百万円増加したこと等によるものであります。
一方、負債合計は、前連結会計年度末と比べて15,847百万円増加し、134,654百万円となりました。未払法人所得税が6,249百万円増加、その他の非流動負債が4,476百万円増加、未払費用が3,271百万円増加したこと等によるものであります。
資本合計は、前連結会計年度末と比べて42,963百万円増加し、349,053百万円となりました。この主な要因は、利益剰余金が28,812百万円増加、その他の資本の構成要素が12,392百万円増加したこと等によるものであります。また、親会社所有者帰属持分比率は前連結会計年度末の71.9%から0.1ポイント増加して72.0%となりました。
(3) キャッシュ・フローの分析
当連結会計年度末の現金及び現金同等物(以下、資金)は、前連結会計年度末より7,284百万円増加し、73,752百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、以下のとおりであります。
<営業活動によるキャッシュ・フロー>
営業活動の結果得られた資金は、58,739百万円(前期比1,866百万円増)となりました。この主な要因は、税引前利益が64,346百万円(前期比18,095百万円増)、減価償却費及び償却費が27,431百万円(前期比2,014百万円増)、営業債権の増加額が10,297百万円(前期比1,230百万円増)、棚卸資産の増加額が12,495百万円(前期は3,851百万円の減少)、法人所得税の支払額が14,705百万円(前期比1,532百万円増)となったこと等によるものであります。
<投資活動によるキャッシュ・フロー>
投資活動の結果使用した資金は、35,052百万円(前期比5,860百万円増)となりました。この主な要因は、有形固定資産の取得による支出が12,768百万円(前期比2,837百万円増)、無形資産の取得による支出が19,266百万円(前期比3,403百万円増)となったこと等によるものであります。
<財務活動によるキャッシュ・フロー>
財務活動の結果使用した資金は、20,542百万円(前期比288百万円増)となりました。この主な要因は、配当金の支払額が15,258百万円(前期比220百万円増)となったこと等によるものであります。
(4) 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、以下のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前期比(%) |
|
日本 |
174,795 |
94.8 |
|
米州 |
7,593 |
118.5 |
|
EMEA |
15,194 |
120.4 |
|
中国 |
4,297 |
141.5 |
|
アジア・パシフィック |
1,445 |
121.9 |
|
合計 |
203,325 |
98.0 |
(注)金額は販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。
b.受注実績
見込み生産を行っているため、該当事項はありません。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、以下のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前期比(%) |
|
日本 |
59,743 |
113.4 |
|
米州 |
78,964 |
128.4 |
|
EMEA |
102,411 |
123.6 |
|
中国 |
93,295 |
111.4 |
|
アジア・パシフィック |
29,364 |
120.8 |
|
合計 |
363,780 |
119.2 |
(注)セグメント間の内部売上高は相殺消去しております。
2.経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 当連結会計年度の経営成績の分析
当連結会計年度の売上高は前期比58,707百万円増加(19.2%増)の363,780百万円、営業利益は前期比17,405百万円増加(34.8%増)の67,416百万円、税引前利益は前期比18,095百万円増加(39.1%増)の64,346百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益は前期比12,187百万円増加(38.2%増)の44,093百万円となりました。また、親会社所有者帰属持分当期利益率は前連結会計年度の10.9%から当連結会計年度は13.5%へと上昇いたしました。
当社グループは、前中期経営計画において2022年3月期を最終年度として、連結売上高380,000百万円、連結営業利益78,000百万円を達成することを目指しておりました。その結果、当連結会計年度の売上高及び営業利益は、計画を下回るもそれぞれ増収、増益を達成いたしました。
こうした中、2021年4月より2024年3月期を最終年度とする新たな中期経営計画をスタートしており、長期ビジョンに基づくポジショニング目標達成に向けて引き続き重要な課題に取り組み、2024年3月期の経営指標(連結売上高420,000百万円、連結営業利益80,000百万円)を達成することを目指します。
① 売上高
当連結会計年度は、国内販売につきましては、主に新型コロナウイルス感染症の検査に関する血液凝固検査分野、免疫検査分野及びライフサイエンス分野における試薬の売上が増加したことに加え、メディカルロボット事業分野における機器の販売が伸長しました。その結果、国内売上高は55,618百万円(前期比14.1%増)となりました。海外販売につきましては、前年同期は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けましたが、検査需要の回復に伴い、主にヘマトロジー分野、尿検査分野及び血液凝固検査分野における試薬の売上が増加したことに加え、為替相場が円安に推移した結果、当社グループの海外売上高は308,161百万円(前期比20.2%増)、構成比84.7%(前期比0.7ポイント増)となりました。以上により、売上高は前連結会計年度に比べて58,707百万円増加(19.2%増)の363,780百万円となりました。
国内での売上高は55,618百万円と6,862百万円の増加(14.1%増)となり、海外での売上高は308,161百万円と51,845百万円の増加(20.2%増)となった結果、海外売上高比率は前期比0.7ポイント増加の84.7%となりました。
海外の地域別では、米州が83,655百万円(前期比17,764百万円増、27.0%増)、EMEAが101,528百万円(前期比19,387百万円増、23.6%増)、中国が93,373百万円(前期比9,542百万円増、11.4%増)、アジア・パシフィックが29,604百万円(前期比5,150百万円増、21.1%増)となりました。
② 売上原価
売上原価は、前期比22,424百万円増加(14.9%増)の173,195百万円となりました。また、売上原価率は47.6%(前期比1.8ポイント減少)でありました。
③ 販売費及び一般管理費
販売費及び一般管理費は、前年同期は全地域において新型コロナウイルス感染症拡大に伴い活動制限等の影響がありましたが、主に販売・サービス活動の再開に伴い増加し、前期比11,613百万円増加(14.1%増)の94,235百万円となりました。また、売上高に対する比率は25.9%(前期比1.2ポイント減少)でありました。
④ 研究開発費
研究開発費は、商品ポートフォリオ充実のために新商品の開発及び新型コロナウイルス感染症関連の分野を中心に研究開発を推進したこと等により、前期比4,267百万円増加(19.0%増)の26,784百万円となりました。また、売上高に対する比率は前連結会計年度と同水準の7.4%でありました。
⑤ 損益の状況
営業利益は売上高の増加及び原価率の改善による売上総利益の伸張等により前期比17,405百万円増加(34.8%増)の67,416百万円、売上高営業利益率は18.5%(前期比2.1ポイント増加)となりました。なお、為替の影響は、前連結会計年度と比較して9,183百万円の増益要因となりました。
税引前利益は、為替差益が850百万円(前期は為替差損が230百万円)となり、営業利益が増益となったこと等によって、前期比18,095百万円増加(39.1%増)の64,346百万円となりました。
親会社の所有者に帰属する当期利益は、法人所得税費用が前期比5,889百万円増加(40.9%増)の20,274百万円となり、前期比12,187百万円増加(38.2%増)の44,093百万円となりました。
(2) 経営成績に重要な影響を与える要因について
当社グループが事業を展開していく上で、経営成績に重大な影響を及ぼす可能性のある事項については、「2 事業等のリスク」に記載しておりますので、ご参照ください。
(3) 資本の財源及び資金の流動性についての分析
① 資金調達と流動性マネジメント
運転資金は必要に応じて短期銀行借入等で調達いたします。各連結子会社については、運転資金確保のために必要に応じて銀行借入を行いますが、国内の子会社については、2003年10月より当社と各社との資金決済にCMS(キャッシュ・マネジメント・システム)を導入し、資金の調達・運用を一元化して効率化を図っております。
また、当社は、現在、株式会社格付投資情報センター(R&I)よりAA-(ダブルAマイナス)の発行体格付を取得しており、毎年レビューを受けて格付を更新しております。高い格付は資本市場から資金調達する際の調達コストを低減するだけではなく、ステークホルダーや世間一般からの信用向上にも貢献します。今後も格付を維持・向上していくために、売上高・利益と資産及び負債・資本のバランスに考慮してまいります。
設備投資等の長期資金需要に関しては、投資回収期間とリスクを勘案したうえで調達方法を決定しております。なお、当連結会計年度は、設備投資及び研究開発活動等の資金について、主に営業活動の結果得られた資金から充当しております。
② 財政状態の分析
財政状態の分析については、「1.経営成績等の概要 (2) 財政状態の分析」に記載しておりますので、ご参照ください。
③ キャッシュ・フローの分析
キャッシュ・フローの分析については、「1.経営成績等の概要 (3) キャッシュ・フローの分析」に記載しておりますので、ご参照ください。
(4) 重要な会計方針及び見積り
当社グループは、IFRSに準拠して連結財務諸表を作成しております。この連結財務諸表の作成に関する重要な会計方針及び見積りについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 2.作成の基礎 3.重要な会計方針」に記載しておりますので、ご参照ください。
なお、会計上の見積りに対する新型コロナウイルスの影響に関して、翌連結会計年度以降の業績に対する影響は限定的であるとの仮定に基づき、当連結会計年度において会計上の見積りを行っており、その結果、当連結会計年度における連結財務諸表に及ぼす影響は軽微なものと判断しております。
(1) アライアンス契約
|
契約会社名 |
相手先 |
国名 |
契約の内容 |
契約期間 |
|
当社 |
シーメンスヘルスケア・ダイアグノスティックス社 |
米国 |
血液凝固検査関連製品の相互供給、販売及びサービスのグローバルでの実施 |
自 2021年2月1日 至 2023年12月31日 |
|
当社 |
ロシュ・ダイアグノスティックス社(以下、ロシュ社) |
スイス |
当社とロシュ社とのグローバルパートナーシップ(注) |
自 2021年1月1日 至 2030年12月31日 |
(注)本契約には以下3つの個別契約を含んでおります。
・ロシュ社による当社のヘマトロジー分野製品の販売・サービスに関する契約(契約期間:自 2021年1月1日 至 2026年8月31日)
・生化学検査分野、免疫検査分野及びヘマトロジー分野製品を1社から同時に求められる案件に関する非独占協業契約(契約期間:自 2021年1月1日 至 2030年12月31日)
・両社のITプラットフォームを活用し、短中期的には顧客サービスの向上を、長期的にはクリニカルバリューの向上を狙いとした協業検討に関する契約(契約期間:自 2021年1月1日 至 2030年12月31日)
(2) 完全子会社の吸収合併契約
当社は、2021年9月21日開催の取締役会において、当社の完全子会社であるシスメックス国際試薬株式会社を吸収合併することを決議し、2022年4月1日付で吸収合併いたしました。詳細については「第5 経理の状況 2 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項 (重要な後発事象)」に記載しておりますので、ご参照ください。
当社グループは既存の体外診断領域の拡充を図ると共に、個人毎の特性に応じた個別化医療の推進と、より患者さんの近くで検査を提供するプライマリケアの推進に取り組んでおります。
個別化医療においては、医薬品の投与に関わるコンパニオン診断薬の開発や、血液等の体液からより多くの情報を得るためのリキッドバイオプシー技術の開発に取り組んでおり、プライマリケアにおいては、患者負担の少ない検査法の樹立や、装置の小型化、操作性の向上を目指した開発等に取り組んでおります。
当連結会計年度における、主な研究開発活動の状況は以下のとおりであります。
(1) 2021年4月 当社は、新型コロナウイルスのRNAを検出するSARS コロナウイルス核酸キット「DetectAmp SARS-CoV-2 RT-PCRキット」について、体外診断用医薬品としての製造販売承認を取得、保険適用を受けました。
(2) 2021年5月 当社は、シンクサイト株式会社と、AIベースの細胞分析技術の実用化に向けた共同開発及び資本提携に関する契約を締結いたしました。
(3) 2021年5月 当社は、2020年6月、神戸医療産業都市内に構築した全国初の官民連携による新型コロナウイルス感染症のPCR検査ラボラトリーをPCR検査数の拡大と機能拡充に向けて当社研究開発センター内に移転、運用を開始いたしました。
(4) 2021年5月 当社と国立研究開発法人国立がん研究センターは、がん患者における新型コロナウイルスの罹患状況とリスクを評価するため、2020年8月から10月にかけてがん患者と健常人について新型コロナウイルスの抗体保有率と抗体量を調査し、その結果を発表いたしました。
(5) 2021年6月 塩野義製薬株式会社は、当社と共同開発したTh2 ケモカイン・TARC キット「HISCL™ TARC 試薬」について、新型コロナウイルス陽性患者の重症化リスクの判定補助を使用目的とする適応追加承認を取得いたしました。本製品は、当社製の全自動免疫測定装置 HISCL-5000/HISCL-800にて使用いたします。
(6) 2021年6月 当社は、OSNA™法※1を測定原理とする遺伝子増幅検出試薬「LYNOAMP™ CK19 E」について、欧州における体外診断用医療機器規則(IVDR)※2の認証を取得いたしました。
※1 OSNA法:
当社が開発した直接遺伝子増幅(One-Step Nucleic Acid Amplification)法。リンパ節へのがん転移の有無を判定できる。
※2 体外診断用医療機器規則(IVDR):
In Vitro Diagnostic Medical Devices Regulation(Regulation (EU) 2017/746)のことで、欧州市場において体外診断用医療機器を上市・販売・流通する場合に適用される新たな法規制。
(7) 2021年7月 当社は、QIAGEN N.V.(キアゲン)と、がん領域コンパニオン診断薬※3の共同開発、グローバル事業に関する戦略的な業務提携に合意いたしました。
※3 コンパニオン診断薬:
医薬品の効果や副作用を投薬前に予測するために行われる臨床検査のこと。
(8) 2021年9月 当社と地方独立行政法人神戸市民病院機構 神戸市立神戸アイセンター病院が、共同で開発を進めてきた遺伝子パネル検査「IRDパネル検査システム(仮称)」を用いて行う「遺伝性網膜ジストロフィー※4における遺伝子診断と遺伝カウンセリング」が、先進医療B※5として承認されました。
※4 遺伝性網膜ジストロフィー(Inherited Retinal Dystrophy: IRD):
遺伝子変異が原因と考えられる遺伝性進行性の疾患。夜盲や視野狭窄、視力低下が主な症状であり、進行すると場合によっては失明に至ることもある。類似の症状を示すいくつかの疾患を総じて遺伝性網膜ジストロフィーと呼ぶ。
※5 先進医療B:
先進医療とは、効果、安全性等の評価が定まっていない新しい試験的な医療技術のうち、将来的に保険適用の対象にするかどうかを判断するため有効性、安全性の評価を行う医療技術として厚生労働省が指定したもの。そのうち先進医療Bは、医療技術ごとに施設基準を設定し、その要件を満たす医療機関でのみ実施が認められる。
(9) 2021年12月 当社は、全自動免疫測定装置HISCL-5000/HISCL-800を用いて血液中のアミロイドβを測定し、脳内アミロイドβの蓄積状態の把握を補助する検査試薬の製造販売承認申請を実施いたしました。
(10) 2022年2月 当社は、免疫検査分野における診断薬の開発及び生産力の強化を目的に、株式会社カイノスとの資本業務提携に合意いたしました。
なお、当連結会計年度における研究開発費は