当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループは、エレクトロニクス産業に限らず、ものづくりにおける要素技術を拡充し、高品質の製品を国際競争力のある価格で世界に送り出すグローバル企業を目指しております。
企業活動のあらゆる面で企業理念である「顧客に満足を」「地球にやさしさを」「社会に夢と活力を」に基づき、環境保全活動とグループガバナンスを積極的に推進するとともに、ステークホルダーの皆様にとって「成長する楽しみが持てる企業」であり続けることに努めております。
半導体用マテリアル製品をはじめとする新素材及び生産技術の開発に注力し、品質を第一に考えて顧客満足の向上を追求する旨の「品質理念」を掲げ、生産の自動化、デジタル化、標準化を進めております。世界での市場シェアを高め、安定的な収益体質の企業集団を形成することを経営の基本方針としております。
(2)経営戦略等
当社グループの属する主な市場は、エレクトロニクス産業でありますが、高度情報化の進展や新興国の経済発展に伴い、今後も市場規模の拡大が期待されます。同時に技術革新のスピードが早く、国際競争の激しい市場です。このような環境の中で当社グループが安定的に成長するためには、「顧客に満足を」を念頭に既存製品の拡充とともに新たな製品事業の育成を遂行する必要があります。
中期的な会社の経営戦略の具体的な項目は、以下のとおりです。
① 半導体分野では、製造装置メーカーからの需要が強いマテリアル製品(石英・セラミックス・シリコンパーツ・CVD‐SiC等)に関し、製造ラインの増設を行うとともに新たな素材開発も進めてまいります。デバイスメーカーやFPDメーカーが保有する製造装置の部品洗浄サービスをさらに拡充してまいります。また、シリコンウエーハの再生サービスも行っております。
② 受託製造分野は、半導体市場の需要に対応し、祖業である真空シール製造で培ってきた当社グループの真空技術と精密金属加工を組合せ、半導体製造装置メーカー等からの受託製造を拡充してまいります。
③ パワー半導体分野では、絶縁放熱回路基板の増産を図ってまいります。ロボット、工作機械、家電製品などに使用されるIGBTパワー半導体用DCB基板、電気自動車(EV)や鉄道車両などより高電流、高電圧下で使用されるAMB基板をはじめ、各種用途向け基板新製品等の製造拠点づくり、製造ラインの増設を進めてまいります。
④ 通信分野では、5G移動通信システムの通信機器、中継器、アンテナ内部の熱対策として熱電素子が採用されており、超高速・大容量化・多数端末接続などの運用による需要拡大を見込んでおります。また、大容量のデータ送信に欠かせない光トランシーバー内の熱対策にも当社マイクロモジュールが採用されており、こちらにも注力してまいります。
⑤ 自動車分野では、電気自動車(EV)向けやプラグインハイブリッド車のパワー半導体用AMB基板、コンプレッサー、二次電池ほか各種温度検知を行う温度センサの販売や熱電素子を採用した温調シート、カップホルダーなど応用製品の用途開発に取り組んでまいります。磁性流体は、サスペンションやカー・オーディオスピーカー向けの採用を広げてまいります。
⑥ バイオ・メディカル分野では、当社の熱電素子サーモモジュールを利用した血液分析装置やDNA増幅装置、再生医療装置などへ拡販してまいります。遠隔医療機器に使用されているセラミックス製品は継続して提供してまいります。
⑦ 業務提携やM&Aを視野に入れ、既存製品のシェア拡大のほか、新規事業への参入も重要と考えております。
(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、3か年を対象期間とした「中期経営計画」をローリングプランとして毎年公表することとしております。現時点では2026年3月期会計年度から2028年3月期会計年度までの計画を公表しており、事業成長の追求、生産効率・競争力の強化、人材強化・企業文化の醸成、財務強化を基本方針として掲げております。
目標の達成状況を判断するための客観的な指標に関しては、本計画のKPI(Key Performance Indicator)として「売上高」、「営業利益」、「当期純利益」(*1)、「ROE(株主資本当期純利益率)」、「ROIC(投下資本利益率)」(*2)、「自己資本比率」の6指標を掲げており、達成度や進捗状況を外部公表しております。
*1 当期純利益=親会社株主に帰属する当期純利益
*2 ROIC =親会社株主に帰属する当期純利益/(有利子負債+純資産)、このうち純資産からは新株予約権、非支配株主持分を除く
(4)経営環境
当連結会計年度における経営環境については、米国は個人消費や非製造業の景況感も良好な状況が続きました。一方、製造業ではAI関連産業は良好ながら他産業の生産は低迷しました。欧州は、ユーロ圏、英国も個人消費や非製造業は比較的良好に推移しましたが、製造業は外需の下振れ等からドイツを中心に低迷しました。日本は、食料品価格上昇が続くなか、雇用情勢の堅調さもあり個人消費は良好な状況でした。インバウンド消費や外需の好調から企業の景況感も良好であり、設備投資も伸長しました。中国はGDPが5%前後で推移するものの、自動車の買い替え支援など政府支出による下支えの部分も多い状況です。輸出の持ち直しや個人消費の回復もみられましたが、持続的な動きとはならず、消費マインドの低下傾向がみられました。
為替相場は、対米ドルレートは2024年中総じて円安方向に進みましたが、2025年に入ってから円高の方向に転換しております。
当社グループの属するエレクトロニクス産業では、生成AI成長に伴うサーバー投資も好調を維持したほか、中国の旺盛な需要が引き続き市場を牽引、欧米需要も昨年からの回復により全体では堅調でした。パワー半導体分野も、主要用途であるEV市場で中国の販売台数が伸びるなど引き続き好調でした。一方、太陽光パネル市場はパネル価格が低迷する状況が続き、今は在庫調整の局面となっております。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の対処すべき課題
当社として対処すべき課題と考えておりますのは、事業成長の追求、生産効率・競争力の強化、人材強化・企業文化の醸成、財務バランスと株主還元についてです。
当社グループは「顧客に満足を」を企業理念に掲げ、顧客要求仕様の高品質な製品を指定期間で納められる生産体制を実現したいと考えております。事業成長に向けては、半導体関連、及び電気自動車(EV)を中心とする自動車関連の事業成長を追求し、業界上位ポジションの事業を拡大させるよう努めてまいります。そのなかで、新規事業の育成を図り、一定の事業規模へと成長させていくことも課題と考えております。能力面では、30年来量産拠点づくりをしてきた中国の量産拠点を更に強化し、近年旺盛な中国国内の需要を最大限取り込んでいくと同時に、顧客の地域戦略に合わせ、マレーシア、日本での量産拠点の設置と円滑な立上げにより、早期に収益貢献を図ることが課題です。具体的には、2025年より稼働開始する中国麗水のセンサ工場、青島の部品洗浄工場、マレーシア南部(ジョホール)のパワー半導体工場、日本石川のセラミックス第3工場、熊本の部品洗浄工場の生産を軌道に乗せ、各国顧客の調達ニーズに応えてまいります。
そして、当社の持つ量産能力を最大限に研ぎ澄ましていくことが競争力強化のために重要であると考えており、デジタル化、自動化、AI化、見える化など「ものづくり力」の強化施策を徹底して実施し、生産効率向上、品質向上を図ります。ものづくりの現場での品質管理の徹底、研究開発、設計の段階での品質へのこだわり、納入やアフターサービスに至るまでの品質保持と顧客満足の追求、品質監査による実施状況のモニタリング、これらにより当社製品への信頼、ブランド力向上につながっていくものと考えております。
また、これら施策を担う人材を広く募り、育成していくことが当社事業の永続性につながるものと考えております。人材重視を重要な経営戦略と位置付け、各種施策を展開してまいります。さらに、当社事業のために集った人材各々が最大限の能力を発揮しながら、同じ事業目的に向かっていくために、良い「企業文化」を醸成していくことが重要であると考えております。
財務に関しては、事業成長を実現するための積極的な成長投資を行いながら、財務状況の適切なバランスを確保することが課題です。より効率的な資産運用、資金運用に努め、ROE・ROIC向上、フリーキャッシュ・フロー改善への取組みを強化してまいります。株主還元については、還元の強化を図るため、新たにDOE(連結株主資本配当率(注))を採用し、下限を3.5%に設定することといたしました。また、持続的な収益増強により配当水準の引上げを目指すとともに、財務の状況等を考慮しながら、自社株式の取得を機動的に検討し、総還元性向は50%を目指して充実を図っていく所存です。これらの対応を通じ、資本コストや株価を意識した経営を実現してまいります。
内部管理面では、当社は業務の適正を確保する体制整備に努め、J-SOXに対応した内部統制システムの運営をグループ各社で実施しております。今後とも、適正な財務諸表の作成を保証する体制の強化を目指し、適切な運営の実施と監査を継続的に行ってまいります。
(注)連結株主資本=資本金+資本剰余金+利益剰余金-自己株式
連結株主資本配当率=配当金総額÷連結株主資本
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)サステナビリティ共通
・サステナビリティに関する考え方
フェローテックグループは、「顧客に満足を、地球にやさしさを、社会に夢と活力を」を企業理念に、国際社会との調和を図りながら、生活に貢献し、高品質かつコスト競争力のある革新的な製品やサービスの提供を通じて、社会貢献を果たしながら成長する楽しみが持てる企業を目指しています。これを実現するために私たちは、コア技術を活用した環境にやさしいモノづくりや素材・製品の開発により地球環境問題の解決に貢献して行くとともに、適正な企業統治の下、社会から信頼される企業として、フェローテックらしい形で社会の課題解決と持続的発展に貢献していきます。取引先においても、この方針を支持し、それに基づいて行動することを要請します。
なお、フェローテックグループのサステナビリティ基本方針は、当社ウェブサイトに公開しております。
https://www.ferrotec.co.jp/esg/sdgs.php
①ガバナンス
当社グループは、2023年3月に、「サステナビリティ委員会」を執行役員会傘下の委員会として設置いたしました。同委員会において、サステナビリティへの取り組みの状況確認、検討、審議を行い、外部専門家等からサステナビリティに関する情報・知見を収集し、取締役会等に適宜に報告し、サステナビリティの全社的な検討・推進を行っております。
②戦略
当社グループは、企業理念に「顧客に満足を、地球にやさしさを、社会に夢と活力を」を掲げ、環境規制への厳格な対応及び自社工場等における太陽光発電の導入を進める等、サステナビリティへの取り組みを行ってまいりました。
今後、サステナビリティ委員会を中心として、気候変動問題等のサステナビリティに関する現状認識と課題の洗い出しを行い、サステナビリティ推進への施策の検討・推進を進めてまいります。
③リスク管理
サステナビリティ関連のリスクと機会を識別、評価、管理するため、サステナビリティ委員会は外部専門家を活用し、気候変動リスク等に関する現状認識を行い、サステナビリティ委員会において審議すると共に、必要に応じて取締役会等へ報告し、審議するプロセスとしております。
④指標と目標
《気候変動対策》
気候変動対策に関しては、グループ内及び当社サプライチェーンのGHG(CO2)排出量の削減を進めるため、2024年3月期に対応するGHG排出量の算定いたしました。具体的な数値は下記のとおりであり、第三者による限定的保証をうけております。
当社におけるGHG排出量は307千トン(うちScope1:14千トン、Scope2:293千トン)であります。本データを踏まえ、削減目標、削減計画、アクションプランを定めてまいります。
《人的資本》
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テーマ |
指標 |
2025年3月期 (実績) |
(目標) |
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優秀な人材獲得と多様性 |
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安心して働くことができる環境整備 |
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(注)上記の目標について、当社においては、関連する指標のデータ管理が行われているものの、連結グループに属する全ての会社で行われてはいないため、連結グループにおける記載が困難であります。このため目標および実績は、提出会社のものを記載しております。
(2)人的資本
①基本方針
当社グループは、創業時よりトランスナショナルな企業を目指し、当社グループの独自技術と製品により、人々のより良い暮らしを実現するためビジネスを展開してまいりました。
その中でも、組織・人材については、2つの大きな基本方針のもとグループを運営してまいりました。1つは、従業員のあらゆる属性に関係なく優秀な人材を登用し、社員一人ひとりが志をもって自律的に行動ができる組織、働きがいを持つことができる組織であること、もう1つは、マネジメントを現地化することにより、迅速な意思決定と、地域の特性にあわせたビジネスと組織運営を行うことであります。この基本方針のもと、当社グループは事業を通じ当社理念である「人々に夢と活力を与えられる企業」実現のため人材育成および社内の環境整備に取り組んでまいります。
②人材戦略
当社グループの成長を支える原動力の1つには、各拠点の多様な人材が、個人の個性や強み、地域の特性を活かし、社員が十分に能力発揮できる場の提供があると考えております。
現在、国内では石川・熊本の両県、海外では中国・マレーシアに新たな拠点の建設を進めております。これらの新たな拠点には、これまで当社が日本・中国を中心に培ってきたものづくりの精神と、より効率的かつより高品質な製品を生み出すための経験や知恵についても国を跨いで共有・投入しております。また同時に、拠点の現地化を進めていくという当社創業以来の方針の下、国や地域による特性を捉えた上で新工場を立ち上げており、このことは早期の顧客ニーズへの対応と当社グループの収益にも貢献できるものと考えております。このような中、当社は以下を人的資本経営の戦略と位置付けて取り組んでまいります。
1)優秀な人材の採用・登用
当社の経営理念・経営方針に賛同して頂ける人材であることを前提に、創業時より年齢・性別・国籍など、あらゆる属性にとらわれず人物本位の採用活動を行ってまいりました。少子高齢化がより進む厳しい採用環境の中でも成長を続けている当社事業を支える優秀な人材獲得はより重要性を増した課題の1つであります。そのため、例えば「重いものを扱う」「機械を扱う」などの業界的な先入観をより廃し、人物本位での採用活動を更に推し進めてまいります。
施策の例
・大学や研究機関等との産学官連携の活動、学生への修学支援
・知名度向上のためのメディア活用などブランディング活動の強化
・新卒・キャリア採用、年齢、その他の属性によらない任用・適材適所の人材配置
・次世代経営者人材、高専門性人材を採用するための柔軟な報酬・処遇の仕組み
2)次世代人材育成
当社を取り巻く環境は日々変化しており、かつ複雑化しております。このような変化に適応し成長路線を維持していくためにも、冷静に状況を判断し、且つ志をもって課題を解決する道を切り開くことのできるリーダー(経営者的人材)を育成していくことの重要性はより増しております。そのため、学びを実践に繋げ学習スピードを上げるような研修・育成プログラムを構築してまいります。
施策の例
・知識・スキルの習得を目的とした通常の研修制度に加え、外部教育機関への通学サポートによる自主学習の支援
・公的資格の取得支援
・当社を知る社内研修プログラムによるエンゲージメントの向上
3)評価・処遇
当社の人事制度では、「成果」と成果を創出するための「課題解決プロセス」に焦点を当てることにより、社員ひとり毎の職場・部門・会社への貢献を的確に把握し、結果を報酬に繋げること、プロセスを考え抜くことによる「社員の成長」を後押しする仕組みとなることを目指しております。今後、グループ会社にも同様の仕組みを展開していき、「高い目標にチャレンジする風土」「掲げた目標を最後までやり遂げる風土」づくりにも繋げていき、社員がより「働きがい」を感じられるような仕組みの構築を進めてまいります。
施策の例
・会社業績・部門業績・個人業績に連動した報酬制度
・継続的かつ高い水準での社員の報酬引き上げ
・出る杭をより成長させるため、年齢・性別・その他に寄らない役職の任用、より役割の大きな仕事へのコミット
4)安心して働くことが出来る社内の環境整備
当社は社員一人ひとりが健康で安心して働くことができる職場環境づくりが、活気ある職場づくりに繋がる取り組みであると考えております。また、国内でも新たな拠点の整備に伴い、採用人数も年々増加傾向にあることから、新しい仲間が定着して頂けることも採用・育成・評価・処遇などの施策と同様に重要な課題であると認識しております。
施策の例
・育児休業・介護休業制度の更なる理解促進と実際に取得しやすい職場づくり。また職場復帰しやすい人に寄り添った柔軟なプログラムを選択できる仕組みづくり
・早期に心と体の健康リスクを把握するための定期健康診断時のオプション検査補助などの取り組み
・従業員の疾病等に備えた治療と仕事の両立サポートの取り組み
・事故ゼロを目標とした職場の安全マネジメント体制づくりと快適な職場作りのためのきれいで効率的に仕事ができる環境づくり
・フレックス、時間単位での有給休暇取得、時短勤務などの柔軟な働き方を選択できる仕組み
当社グループは、現事業展開上のリスク要因となる可能性があると考えられる事項については、内部統制委員会に加え、2020年1月にリスク管理委員会を設置し、可能な限りリスク要因の排除、事故等の原因究明等の対応を行っております。その活動内容は随時、代表取締役に報告されるとともに、必要に応じて取締役会に報告されます。
当社グループの経営成績、株価及び財務状況等に影響を及ぼす可能性のあるリスク要因は以下のとおりです。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(エレクトロニクス産業の製品需給動向及び設備投資動向について)
①当社グループの半導体等装置関連セグメントの主力製品である真空シールは、液晶製造装置や半導体製造装置用の部品として販売されており、石英製品、セラミックス及びシリコンパーツ製品等は、ICやメモリの製造プロセスに利用される消耗部品のものが多く、エレクトロニクス産業における製品需給動向及び設備投資動向の影響を受ける傾向にあります。
②リスクが顕在化する可能性
エレクトロニクス産業の半導体業界では、4~5年周期で好不況を繰り返すシリコンサイクルと呼ばれる景気循環が見受けられました。この周期で設備投資の抑制、在庫調整や生産調整などが発生し、業績への影響が顕在化するものと認識しておりましたが、近年半導体はハード面では微細化技術、多層化技術等による回路のさらなる集積化、用途面ではスマートフォンの普及に加え、AI(人工知能)、電気自動車(EV)、自動運転、暗号資産などへの用途拡大、それらの利用を可能にするためのサーバーや大容量通信網へのニーズの増大が見られます。同時に、各国政府が安全保障上の問題から、国家間の製品、技術、人材流出を抑制する動き、それらに対応する半導体産業保護政策、産業振興のための補助金政策の実施などにより、景気循環の周期や好不況の波の大きさも変容してきている状況であります。
③リスクが顕在化した際の影響度
半導体等装置関連事業における売上高に対し、従来想定(対前年15%)以上の減少の影響があるものと予想されます。
④リスクへの対応
製品需給動向及び設備投資動向の対応策として、対象となる製品を製造設備部品グループと消耗製品グループに区分してリスクを分散しております。また、客先保有の製造設備の洗浄・メンテナンスサービスを行っており、さらにリスクを分散し対応策としております。また、当社ではロジック、メモリ半導体市場用向け製品が主な対象顧客でしたが、近年パワー半導体分野やクリーンエネルギー関連、EVを中心とする自動車向けにも注力し、リスクの分散を図っております。
(自動車産業における新車販売台数の影響について)
①電子デバイスセグメントの主力製品であるサーモモジュールは、自動車温調シートに使用されており、自動車産業における新車販売台数の影響を受ける傾向にあります。また、パワー半導体用基板のうち主にEV向けの製品があり、EVの新車販売台数の影響を受ける傾向にあります。センサについても自動車向けの販売が多く、新車販売台数の影響を受ける傾向にあります。
②リスクが顕在化する可能性
自動車産業は成長産業として捉えておりますが、半導体不足によるサプライチェーンの寸断、原油価格や各国の金利状況、補助金政策の動向により自動車販売に影響があります。また、欧州を中心にEV車への移行が表明されるなど、自動車産業の構造変革が進む過渡期であるといえますが、次世代の主流と思われるEV化への対応ができない場合、旧車種販売台数減少に伴い販売が減少する可能性があります。
③リスクが顕在化した際の影響度
これまでの経験則から、自動車向け製品の売上高に対し、対前年10%前後の減少の影響があるものと予想されます。
④リスクへの対応策
当社におきましては、サーモモジュールについては自動車温調シート以外の用途拡大(例えば自動運転分野向けやカップホルダーの冷熱用途等)を図ってまいります。パワー半導体用基板はEVへの採用を伸ばすよう努めてまいります。同時に、景気に左右されにくい移動通信機器向けの販売の強化、医療・バイオ向けの販売等、他の産業への展開を行ってまいります。
(原材料の市況状況について)
①当社グループの製品の原材料は、市況価格の上昇や需要量が供給量を大きく上回り、調達が困難となる可能性があります。市況価格の暴騰等、市況の急変動があった場合に影響を受ける可能性があります。
②リスクが顕在化する可能性
原材料の原産国の政局不安や輸出方針の変更に伴いリスクが顕在化する可能性があり、需給バランスの変動による材料販売先の変更や企業買収・組織再編に伴う価格変動の可能性があります。顕在化する時期については見通しが出来ません。
③リスクが顕在化した際の影響度
これまでの経験則から、売上原価の材料費に対し、対前年5%前後の増加の影響があるものと予想されます。
④リスクへの対応策
当社グループでは調達先の多様化のため複数国から供給先を選定しており、定期的な情報交換や交流を行い、良好な関係を維持するよう努めております。
(中国における事業展開について)
①当社グループの製品の大半は、製造コストの低減等のための戦略に基づき、現地法人である中国子会社にて製造しております。今後とも製造能力増強に向けた設備投資を計画しておりますが、中国における投資・税制・通貨管理・貿易・環境・労働に関する法令や規制等の変更ならびに米中摩擦等による関税の引上げや貿易規制の強化といった政治的、経済的リスクが存在しており、これらが顕在化した場合には、当社グループの財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
②リスクが顕在化する可能性
米中貿易摩擦にみられるように中国単独の要因だけではなく、世界各国と中国の関係により顕在化する可能性があります。中国政府の政策等に対しても顕在化の可能性があるものと認識しており、発生する時期は随時と認識しております。
③リスクが顕在化した際の影響度
発生するリスクの事態により影響度合いが異なるため、単一での影響額の見積もりは出来ません。
④リスクへの対応策
中国における法令遵守や規制に適合した施策を着実に実施するとともに、現地法人の所属する各地方政府との関係を友好的に保ち、早期の情報収集、専門家に係る指導を受けるよう努めております。また、毎月定例でリスク管理委員会を開催し、中国子会社よりリスク情報の報告を受けることに加え、重要な事象に関しては都度現地とのコミュニケーション・連携を行っております。
米中貿易摩擦等による半導体装置メーカー等における中国外の生産品へのニーズについては、顧客とコミュニケーションを取りながら、マレーシア等の中国外の生産拠点を立ち上げて対応しております。迅速な課題の把握、早期の対策の実施及びリスクの未然防止に努めております。
(債権回収について)
①当社グループは、与信管理には十分な注意を払っておりますが、想定を超える景気後退や取引先の倒産や債務不履行が発生し、債権回収が困難となった場合には、当社グループの財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
②リスクが顕在化する可能性
当社グループは、顧客を定量・定性の両面及び回収状況を定期的にレビューしております。しかしながら、顧客の信用状態の悪化等により、当社グループの経営成績及び財務状態に影響を及ぼす可能性があります。
③リスクが顕在化した際の影響度
発生するリスクの事態により影響度合いが異なるため、単一での影響額の見積もりは出来ません。
④リスクへの対応策
貸倒リスク顕在化の影響を一定限度にとどめるべく、定期的に評価し、必要な引当金を計上しております。
(為替相場の変動について)
①当社グループは、米国ドル、中国人民元など多通貨の外貨建ての製品販売及び原材料や製造設備の購入を行っており、また、外貨建ての債権債務を有していることから、為替相場の変動は、当社グループの財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。連結財務諸表作成に際し、在外連結子会社・在外持分法適用関連会社の財務諸表項目(現地通貨金額)を円換算する際に、為替相場の変動の影響があることを認識しております。
②リスクが顕在化する可能性
各国の経済情勢や金融政策の影響により、為替相場が変動した場合に顕在化するものと認識しており、為替相場の変動は随時発生する可能性があると認識しております。
③リスクが顕在化した際の影響度
ドル円相場で1円の変動により、売上高は約12億円、営業利益で約2億円の影響があるものと予想されます。
④リスクへの対応策
輸出入取引につき適切な価格設定を行うと共に、為替リスクのある外貨借入の抑制などを実施し対応しております。
(株価及び金利の変動について)
①当社グループは、株式等の有価証券を保有しており、これらの有価証券の価格の下落は、当社グループの財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、市場金利の変動の状況によっては、借入金利息の負担の増大等、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、借入金の一部には財務制限条項が付加されており、この条項に抵触した場合には借入利率の上昇や期限の利益を喪失する等、当社グループの財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
②リスクが顕在化する可能性
各国の経済情勢や金融政策により、各国株式市場の株価の下落や金利の変動が顕在化する可能性があると認識しております。
③リスクが顕在化した際の影響度
当社が保有する有価証券は、コーポレートガバナンス・コードに基づき7銘柄に縮減しており、保有株式数も少なく、支払利息は年間28億円であることから影響は限定的と認識しております。
④リスクへの対応策
金利の変動対策として借入金の返済に努めてまいります。
(減損会計について)
①当社グループの保有している固定資産を利用した事業の収益性に著しい低下があった場合に、のれんを含む固定資産に対する減損処理が必要となり、当社グループの財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
②リスクが顕在化する可能性
各製品の販売先業界で長期に渡る需要の減少や、価格急落により著しく収益の低下を招く場合、また、感染症等の影響により当局からの操業停止命令等が長期に及んだ場合、又は当社グループの取引先の事業活動に影響を及ぼすような事象が発生し、当社グループの生産活動に影響を受ける場合は、当該製品の製造設備等に対し、減損処理を行う可能性が顕在化するものと認識しております。当社グループの製品は多岐にわたっており、発生時期は業界特有の事由や調整サイクルにより異なります。
③リスクが顕在化した際の影響度
当社グループでは製品別に管理しており、不採算製品となった製造設備等に対し減損処理を行います。保有する固定資産に対する減損処理が製品毎に異なるため見積もることができません。
④リスクへの対応策
当該製品業界動向の把握、営業活動促進、適切な業績管理を行い、収益を確保するよう努めております。減損懸念が顕在化した場合は迅速に施策を打ち出します。
(技術革新について)
①当社グループにおいては、磁性流体応用製品、サーモモジュール、石英製品など高度な技術を必要とする製品の開発、製造及び販売を行っており、当該事業における技術は重要な要素であります。日々、研究開発に取り組んでおりますが、技術の優位性が陳腐化し販売に影響が出る場合は、財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
②リスクが顕在化する可能性
エレクトロニクス産業では、新たな技術が次々と開発されております。今後、革新的な技術や製品が登場し、代替技術等が誕生することにより、当社グループの技術面の優位性が失われリスクが顕在化する可能性を認識しております。
③リスクが顕在化した際の影響度
革新的な技術や製品の登場により、影響度が製品毎に異なるため具体的な定量数値は示せませんが、軽微なものから商品寿命が尽きるほどの影響度があるとして認識しております。
④リスクへの対応策
技術開発の継続に尽きますが、技術の内容によってはライセンス契約による二次使用権の取得などを検討し、他社との業務提携やM&Aも対応策として考えております。
(知的財産権等について)
①当社グループは、開発・設計・製造の各プロセスにおいて蓄積した技術等については特許の取得により知的財産権の保護を実施しております。一方、当社グループは第三者の知的財産権に抵触することが無きよう調査しておりますが、当社グループの認識外でこれに抵触し、第三者より損害賠償・対価の支払等を求められた場合には、当社グループの財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
②リスクが顕在化する可能性
弁理士と相談し第三者の知的財産権に抵触することがないよう努めておりますが、警告を受ける場合があります。
③リスクが顕在化した際の影響度
提訴及び損害賠償が発生した場合により、影響度は異なるため測定できません。
④リスクへの対応策
慎重に知的財産の調査を行い、弁理士からの意見を聴収し、設計・製造の各プロセスを行うべきと考えております。
(人材確保について)
①当社グループの事業拡大に必要な人材の採用が困難となった場合、または、重要な人材が社外流出した場合には、当社グループの事業拡大に影響を及ぼす可能性があります。
②リスクが顕在化する可能性
当社グループは事業をグローバル展開しており、海外拠点の経営者及び部門責任者は現地採用が多いため、海外特有のヘッドハンティングやジョブホップなどが行われる環境であることを認識しております。
③リスクが顕在化した際の影響度
補佐する人材が複数いるため一時的な影響はあるものの限定的と考えております。
④リスクへの対応策
当社及び子会社の役員並びに従業員に対するストックオプションの付与等のインセンティブ施策、働く環境の改善等による従業員の定着に努めると共に、常に優秀な人材確保に努めております。
(自然災害・パンデミック・国際紛争等について)
①当社グループでは、主に中国をはじめとして日本国内及び東南アジアにも生産拠点を保有し、国内外の営業拠点等を通じて顧客に製品を供給しています。大規模な地震や洪水等の自然災害、感染症によるパンデミック、国際紛争の発生等により、当社グループの拠点の施設や設備又は従業員が損害を被り、事業活動が中断され、更には原材料の調達先や取引先、ロジスティクス等の操業が中断され、当社グループの事業、財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
②リスクが顕在化する可能性
自然災害や感染症によるパンデミック、国際紛争の発生などに対しては、予測ができないあるいは予測困難な側面があり、当社グループとして最善と考えられる対応策を展開した場合でも、そのリスクを完全に回避することは困難であり、当社の想定を上回る被害が生じた場合等においては、そのリスクが顕在化する可能性があるものと認識しております。
③リスクが顕在化した際の影響度
具体的な影響度は測定できませんが、想定を超えた大規模な地震や洪水等の自然災害やそれに起因する大規模停電、電力不足等によって大きな被害を受ける可能性があり、これらの影響により、製造中断、情報通信インフラの途絶、もしくは顧客自身に大きな被害が生じた場合、また感染症によるパンデミックによって、景気の悪化や、拠点の閉鎖もしくはサプライチェーンの混乱が起こった場合など、業績に大きな影響を及ぼす可能性があるものと認識しております。
④リスクへの対応策
当社グループでは、BCPに関する規程を策定しており、大地震マニュアルや安否確認システムの配備等、災害時に適応すべく備えております。また、製造拠点は同一製品毎に複数存在しており、リスクの分散化を実施しております。また、過去に培った経験も踏まえ、対応策の見直しを継続的に実施し、操業停止期間を最小限に留めるための策を講じてまいります。
ロシアのウクライナ侵攻の関連では、対ロシア経済制裁措置による当社ロシア拠点の事業活動への影響が懸念されておりますが、商流、物流の調整や取引金融機関の変更等により、影響を最小限に留めております。
(法令違反リスクについて)
①当社グループは、全社的なコンプライアンス体制の構築に注力し、法令遵守の徹底に取り組んでおりますが、当社グループの役員または従業員が法令に違反する行為を行い、当社グループまたはこれらの者の事業活動が制限された場合には、当社グループの財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
②リスクが顕在化する可能性
将来にわたって法令違反が発生する可能性は皆無ではなく、法令違反が生じ、あるいは対応の内容、効果等が不十分との指摘を受ける可能性があります。また、予期せぬ関係法令の制定や改廃、規制の大幅な変更や強化等により、法令違反を犯すリスクがあることを認識しております。
③リスクが顕在化した際の影響度
法令違反の内容、程度により、その影響内容、程度等が異なるため、具体的な影響度を測定することは困難であると考えております。
④リスクへの対応策
当社グループでは、法令遵守を旨とする「行動規範」を制定しており、日本語・英語・中国語に翻訳した上でグループ各社に配布し、イントラネット上や事務所、食堂等、従業員が目にする場所に掲げております。また、日本語・英語・中国語・ロシア語に翻訳したコンプライアンスガイドラインを策定しており、毎年、本社法務部主導でグループ各社において周知徹底に努めるよう促す期間を設けています。
(訴訟に関するリスクについて)
①当社グループが現在関与している訴訟、または将来訴訟が提起され、当社グループに不利な判決結果が生じた場合には、当社グループの財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
②リスクが顕在化する可能性
業務遂行の過程で、予期せぬ事象が生じた場合、損害賠償の請求や訴訟を提起されることがあり、一方で、取引相手先による契約不履行や当社グループに対する第三者からの侵害等が生じたときには、当社グループの権利保護を求めて訴訟を提起する場合がある可能性を認識しております。
③リスクが顕在化した際の影響度
訴訟本来の性質を考慮すると係争中又は将来の訴訟の結果は予測不可能であり、訴訟ごとに影響内容、程度等がすべて異なるため、具体的な影響度を一律的に測定することは困難であると考えております。
④リスクへの対応策
当社グループは事業を展開するにあたり、契約条件の明確化、知的財産権の適正な取得・使用、各種法規制の遵守等により、トラブルを未然に防止するよう努めています。訴訟が提起された場合等においては、弁護士等の外部専門家との連携や助言等に基づき、事態の調査を行い、適切な対応方針を策定の上、適切に訴訟手続を遂行しております。
(環境に関するリスクについて)
①当社グループは工場を多数有しており、その所在国・所在地域毎の環境基準を遵守する必要がありますが、これを遵守できていなかった場合は、設備等の変更によるコストの増加やこれに関連して工場の操業制限が行われる場合には、当社グループの財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
②リスクが顕在化する可能性
中国をはじめ生産拠点を置く国において環境規制強化に伴う関係法令等が変更され、新規設備への投資や排気・排水対策、廃棄物処理方法の変更を要求された場合に顕在化する可能性があります。
③リスクが顕在化した際の影響度
監督官庁からの営業停止処分等に伴う売上減少、設備等の改修及び増強(環境汚染の発生源及び破損個所等の修繕等)、汚染影響等を及ぼした対象物の現状復旧や再発防止対策、ならびに損害賠償請求等の費用発生により、業績に影響を及ぼす恐れがあります。
④リスクへの対応策
主たる製造拠点である中国製造子会社に環境対策専門部門を設置いたしました。常にモニタリング状況をオンラインで環境規制当局と接続し、適切な指導を受けております。また外部のコンサルタントとの契約を行い、新たな規制等の情報提供を得ております。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
a.経営成績
当連結会計年度における経営環境については、米国は個人消費や非製造業の景況感も良好な状況が続きました。一方、製造業ではAI関連産業は良好ながら他産業の生産は低迷しました。欧州は、ユーロ圏、英国も個人消費や非製造業は比較的良好に推移しましたが、製造業は外需の下振れ等からドイツを中心に低迷しました。日本は、食料品価格上昇が続くなか、雇用情勢の堅調さもあり個人消費は良好な状況でした。インバウンド消費や外需の好調から企業の景況感も良好であり、設備投資も伸長しました。中国はGDPが5%前後で推移するものの、自動車の買い替え支援など政府支出による下支えの部分も多い状況です。輸出の持ち直しや個人消費の回復もみられましたが、持続的な動きとはならず、消費マインドの低下傾向がみられました。
為替相場は、対米ドルレートは2024年中総じて円安方向に進みましたが、2025年に入ってから円高の方向に転換しています。
当社グループの属するエレクトロニクス産業では、生成AI成長に伴うサーバー投資も好調を維持したほか、中国の旺盛な需要が引き続き市場を牽引、欧米需要も昨年からの回復により全体では堅調でした。パワー半導体分野も、主要用途であるEV市場で中国の販売台数が伸びるなど引き続き好調でした。一方、太陽光パネル市場はパネル価格が低迷する状況が続き、今は在庫調整の局面となっております。
このような事業環境のなか、当社グループの半導体等装置関連事業では、製造装置向けの設備投資の回復を受け真空部品や受託加工の需要が大きく伸びました。また、工場稼働率の回復もあり半導体製造プロセス向けの各種マテリアル製品(石英・セラミックス等)や部品洗浄の事業も売上を伸ばすことができました。電子デバイス事業においては、サーモモジュールが生成AIサーバー投資に伴う光トランシーバー向け需要が高水準に推移しました。車載関連事業ではEV向けのパワー半導体用基板需要は概ね好調に推移しました。
なお、営業利益は、減価償却費負担増、製品構成の変化、販売費及び一般管理費の増加などにより、前年同期比で減少しました。経常利益は、中国での補助金収入が増加しましたが、持分法による投資損失の増加等により相殺されました。親会社株主に帰属する当期純利益は、非支配株主に帰属する当期純利益が減少したため、前期比で増加しました。
この結果、当連結会計年度につきましては、売上高は274,390百万円(前期比23.4%増)、営業利益は24,089百万円(前期比3.1%減)、経常利益は25,558百万円(前期比3.7%減)となり、親会社株主に帰属する当期純利益は15,692百万円(前期比3.6%増)となりました。
当連結会計年度のセグメントの経営成績は、次のとおりであります。
なお、当連結会計年度より報告セグメントの区分を変更しております。以下の前年同期比較については、変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較しております。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(セグメント情報等)」に記載しております。
(半導体等装置関連事業)
当該事業の主な製品は、真空シール及び各種製造装置向け金属加工製品、石英製品、セラミックス製品、CVD-SiC製品、シリコンパーツ、装置部品洗浄、石英坩堝などです。
半導体全体及び半導体製造装置の需要が回復基調のなか、当社の真空シール及び各種製造装置向け金属加工製品は米国メーカー、中国メーカーからの注文増などもあり大幅増収、半導体製造プロセスに使用される石英製品・セラミックス製品、部品洗浄サービスなども、工場稼働率の回復を背景に売上を伸ばしました。一方、石英坩堝については増収ながら、太陽光パネル製造メーカー向け売上が下期に停滞しました。利益面では、増産投資に伴う償却負担増、固定費増に加え、太陽光パネル製造向け石英坩堝の採算悪化などもあり、利益が伸び悩みました。
この結果、当該事業の売上高は165,245百万円(前期比27.0%増)、営業利益は12,305百万円(前期比24.3%減)となりました。
(電子デバイス事業)
当該事業の主な製品は、サーモモジュール、パワー半導体用基板、磁性流体、センサです。
サーモモジュールは、生成AI関連のサーバー投資の増加に伴い光トランシーバー向けの出荷が引き続き大きく伸びました。パワー半導体用基板についても、産業機械向け等で順調に売上を伸ばしました。センサの損益は株式会社大泉製作所の決算期変更により、2024年4月から12月までの9か月分となっております。
この結果、当該事業の売上高は50,487百万円(前期比21.0%増)、営業利益は8,250百万円(前期比20.8%増)となりました。
(車載関連事業)
当該事業の主な製品は、サーモモジュール、パワー半導体用基板、センサです。
サーモモジュールは、前年同期比で車載用冷蔵庫等の販売を伸ばしました。パワー半導体用基板については、電気自動車(EV)向けを中心に売上を伸ばし、全体では増収となりました。また、センサの損益は株式会社大泉製作所の決算期変更により2024年4月から12月までの9か月分となっております。利益面ではパワー半導体基板でDCB基板などの競争激化の影響から採算が低下しました。
この結果、当該事業の売上高は30,463百万円(前期比17.7%増)、営業利益は3,599百万円(前期比11.4%減)となりました。
(その他)
「その他」の区分は、報告セグメントに含まれない事業であり、ソーブレード、工作機械、太陽電池用シリコン製品等の事業を含んでおります。
工作機械、業務用洗濯機が前年同期比で増加しましたが、太陽電池用シリコン製品の出荷は減少しました。
この結果、当該事業の売上高は28,194百万円(前期比13.9%増)、営業利益は843百万円(前期は1,197百万円の営業損失)となりました。
b.財政状態
1) 資産
当連結会計年度末の資産は前連結会計年度末と比べ90,566百万円増加し、600,593百万円となりました。これは主に受取手形、売掛金及び契約資産30,667百万円、有形固定資産43,724百万円の増加によるものであります。
2) 負債
負債は、前連結会計年度末と比べ45,183百万円増加し、277,043百万円となりました。これは主に社債(1年内償還予定を含む)3,763百万円が減少したものの、支払手形及び買掛金17,059百万円、短期借入金8,028百万円、長期借入金(1年内返済予定を含む)22,871百万円増加によるものであります。
3) 純資産
純資産は、前連結会計年度末と比べ45,383百万円増加し、323,549百万円となりました。これは主に利益剰余金10,553百万円、為替換算調整勘定21,543百万円、非支配株主持分12,961百万円の増加によるものであります。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は、前連結会計年度末に比べ12,092百万円増加し、108,899百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次の通りであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は26,066百万円(前連結会計年度比2,653百万円減)となりました。収入の主な内訳は、税金等調整前当期純利益25,046百万円、減価償却費23,672百万円、仕入債務の増加11,684百万円によるものであります。支出の主な内訳は、売上債権の増加額22,550百万円、棚卸資産の増加額10,500百万円によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は39,627百万円(前連結会計年度比52,773百万円減)となりました。これは主に定期預金の純減少額13,912百万円の一方、有形固定資産の取得による支出51,239百万円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果得られた資金は18,965百万円(前連結会計年度比41,453百万円減)となりました。これは主に長期借入金の返済による支出19,102百万円の一方、長期借入れによる収入39,593百万円によるものであります。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
前年同期比(%) |
|
半導体等装置関連事業(百万円) |
169,415 |
127.3 |
|
電子デバイス事業(百万円) |
50,700 |
112.4 |
|
車載関連事業(百万円) |
32,000 |
144.6 |
|
報告セグメント計(百万円) |
252,116 |
125.9 |
|
その他(百万円) |
26,387 |
99.6 |
|
合計(百万円) |
278,503 |
122.8 |
(注)1.金額は販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。
2.当連結会計年度より、報告セグメントの区分を変更しており、前年同期比については前連結会計年度の数値を変更後のセグメント区分に組替えた数値で比較しております。
b.受注実績
当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
受注高(百万円) |
前年同期比(%) |
受注残高(百万円) |
前年同期比(%) |
|
半導体等装置関連事業 |
166,681 |
125.1 |
14,042 |
111.4 |
|
電子デバイス事業のうち受注生産品目 |
25,805 |
117.9 |
7,348 |
153.0 |
|
車載関連事業のうち 受注生産品目 |
28,967 |
131.4 |
7,262 |
135.5 |
|
その他 |
28,098 |
115.8 |
1,086 |
91.9 |
|
合計(百万円) |
249,554 |
123.9 |
29,739 |
124.2 |
(注)1.金額は販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。
2.電子デバイス事業及び車載関連事業のサーモモジュールは見込み生産を行っております。
3.当連結会計年度より、報告セグメントの区分を変更しており、前年同期比については前連結会計年度の数値を変更後のセグメント区分に組替えた数値で比較しております。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
前年同期比(%) |
|
半導体等装置関連事業(百万円) |
165,245 |
127.0 |
|
電子デバイス事業(百万円) |
50,487 |
121.0 |
|
車載関連事業(百万円) |
30,463 |
117.7 |
|
報告セグメント計(百万円) |
246,196 |
124.5 |
|
その他(百万円) |
28,194 |
113.9 |
|
合計(百万円) |
274,390 |
123.4 |
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
|
相手先 |
前連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
||
|
金額(百万円) |
割合(%) |
金額(百万円) |
割合(%) |
|
|
LAM RESEARCH CORPORATION |
23,964 |
10.8 |
- |
- |
(注)当連結会計年度の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、当該割合が10%未満であるため記載を省略しております。
3.当連結会計年度より、報告セグメントの区分を変更しており、前年同期比については前連結会計年度の数値を変更後のセグメント区分に組替えた数値で比較しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.財政状態の分析は「(1) 経営成績等の状況概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。
b.経営成績の分析
当連結会計年度の当社グループの売上高は274,390百万円(前連結会計年度比23.4%増)、営業利益は24,089百万円(前連結会計年度比3.1%減)、経常利益は25,558百万円(前連結会計年度比3.7%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は15,692百万円(前連結会計年度比3.6%増)となりました。
経営成績の状況に関する認識及び分析等は、「(1) 経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載したとおりであります。
1) 売上高
連結売上高の概要は「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載したとおりであります。
2) 売上原価
売上原価は201,029百万円(前連結会計年度比31.8%増)となり、売上高に対する売上原価率は4.7ポイント増加の73.3%となりました。これは主に設備投資に伴う減価償却費等の増加によるものであります。
3) 販売費及び一般管理費
販売費及び一般管理費は49,271百万円(前連結会計年度比9.5%増)となりました。これは主に事業拡大に伴う人件費、研究開発費の増加によるものであります。
4) 営業外損益
営業外収益10,318百万円(前連結会計年度比28.9%増)の主な内容は、受取利息1,992百万円、補助金収入5,284百万円によるものであります。また、営業外費用8,850百万円(前連結会計年度比39.6%増)の主な内容は、支払利息2,766百万円、持分法による投資損失5,420百万円によるものであります。
5) 特別損益
特別利益350百万円(前連結会計年度比53.6%減)の主な内容は、持分変動利益349百万円によるものであります。また、特別損失862百万円(前連結会計年度比24.8%減)の主な内容は、減損損失436百万円、事業構造改善費用425百万円によるものであります。
6) 法人税等合計
法人税、住民税及び事業税と法人税等調整額を合わせた法人税等合計は5,746百万円(前連結会計年度比4.3%増)となりました。
セグメントごとの経営成績等の認識及び分析・検討内容は、「(1) 経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載したとおりであります。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
1) キャッシュ・フローの分析
当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析は、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載したとおりであります。また、キャッシュ・フロー関連指標の推移は、以下のとおりであります。
キャッシュ・フロー関連指標の推移
|
|
2021年3月期 |
2022年3月期 |
2023年3月期 |
2024年3月期 |
2025年3月期 |
|
営業活動によるキャッシュ・フロー(百万円) |
13,217 |
17,833 |
43,024 |
28,720 |
26,066 |
|
投資活動によるキャッシュ・フロー(百万円) |
△20,879 |
△29,399 |
△68,760 |
△92,400 |
△39,627 |
|
財務活動によるキャッシュ・フロー(百万円) |
21,694 |
30,601 |
68,718 |
60,419 |
18,965 |
|
現金及び現金同等物の期末残高(百万円) |
30,202 |
52,579 |
95,905 |
96,806 |
108,899 |
|
自己資本比率(%) |
37.8 |
49.5 |
44.7 |
40.1 |
39.4 |
|
時価ベースの自己資本比率 (%) |
46.3 |
46.3 |
37.9 |
27.3 |
20.8 |
|
キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年) |
3.6 |
2.1 |
1.6 |
4.7 |
6.2 |
|
インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍) |
9.2 |
21.9 |
44.3 |
15.5 |
9.3 |
自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い
(注1)いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。
(注2)株式時価総額は自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しております。
(注3)キャッシュ・フローは、営業キャッシュ・フローを利用しております。
(注4)有利子負債は連結貸借対照表に計上されている負債のうち、短期借入金、社債(1年内償還予定を含む)、転換社債型新株予約権付社債、長期借入金(1年内返済予定を含む)を対象としております。
2) 当社グループの資本の財源及び資金の流動性
当社グループの運転資金、設備資金等に必要な資金は、営業キャッシュ・フローから得られる資金のほか、主に銀行等の金融機関からの借入金、社債、リースなどの資金調達などで賄っており、加えて、子会社への第三者割当増資等により資金調達する場合もあります。
当連結会計年度末の有利子負債(リース債務を除く)は、前連結会計年度末と比べ27,137百万円増加の162,298百万円となりました。有利子負債から現金及び預金を控除したネット有利子負債は、前連結会計年度末と比べ26,664百万円増加し、44,570百万円となりました。当社グループは、構築した事業基盤に基づき安定的なキャッシュ・フロー創出力を有することから、金融機関等から、必要な運転資金、設備資金を安定的に確保しております。また、当連結会計年度末では、現預金117,727百万円のほか、取引銀行とコミットメントライン契約を締結しており、資金の流動性を確保できているものと認識しております。
2026年3月期の投資金額は現時点では65,000百万円を予定していますが、営業キャッシュ・フローから得られる資金のほか、金融機関からの資金調達及び手許現預金等により賄う予定です。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。重要な会計方針については、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載のとおりであります。
この連結財務諸表作成に当たり、必要となる見積りに関しては、過去の実績や現在の状況等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性により、見積りと異なる結果となる可能性があります。当社グループの財政状態及び経営成績に重要な影響を与える可能性があると認識している特に重要な会計上の見積りについては、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)及び2財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
④経営成績に重要な影響を与える要因
経営成績に重要な影響を与える要因は、「第2 事業の状況 3事業等のリスク」に記載したとおりであります。
⑤経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、2024年5月に「中期経営計画(2025年3月期~2027年3月期)」を公表し、最終年度の2027年3月期に売上高3,800億円、営業利益600億円、親会社株主に帰属する当期純利益300億円を目標としておりましたが、2025年5月に半導体前工程製造装置(WFE)マーケット及び電気自動車(EV)マーケットにおける先行きの不透明感、成長の減速懸念等、並びに米中半導体摩擦の対応のため加速する中国外量産の増強に伴う減価償却費及び立上げコスト増加等を反映した「中期経営計画(2026年3月期~2028年3月期)ローリングプラン」を公表し、最終年度の2028年3月期に売上高4,000億円、営業利益470億円、親会社株主に帰属する当期純利益290億円に見直しております。
2026年3月期の見通しは、売上高2,850億円、営業利益280億円、親会社株主に帰属する当期純利益160億円であります。なお、当社グループは、重要な指標として、売上高、営業利益、親会社株主に帰属する当期純利益、株主資本利益率(ROE)、投下資本利益率(ROIC)及び自己資本比率を採用しております。ROEは15%、ROICは8%、自己資本比率は40%を目標としております。
当連結会計年度の計画達成状況等は以下のとおりであります。
|
|
2025年3月期 |
|
2026年3月期 |
|||
|
|
当初計画 (注1) |
修正計画 (注2) |
当期実績 |
|
当初計画 (注1) |
修正計画 (注3) |
|
売上高 |
2,350億円 |
2,650億円 |
2,743億円 |
|
3,000億円 |
2,850億円 |
|
営業利益 |
260億円 |
260億円 |
240億円 |
|
400億円 |
280億円 |
|
営業利益率 |
11.1% |
9.8% |
8.8% |
|
13.3% |
9.8% |
|
親会社株主に帰属する当期純利益 |
160億円 |
160億円 |
156億円 |
|
220億円 |
160億円 |
|
ROE |
15%(注4) |
7.1% |
|
15%(注4) |
||
|
ROIC |
8%(注4) |
3.9% |
|
8%(注4) |
||
|
自己資本比率 |
40%(注4) |
39.4% |
|
40%(注4) |
||
(注1)2024年5月公表値
(注2)2024年11月公表値
(注3)2025年5月公表値
(注4)中長期目標
該当事項はありません。
研究開発につきましては、技術革新と市場環境変化の激しい半導体、電子デバイス業界にあって、各ユーザーとの情報交換・技術交流を通して今後の技術発展動向とユーザーニーズを先取りすることを重視し、研究開発をすすめております。
現在の研究開発は、当社の技術担当部門が中心となり、日本・米国・欧州・アジアの各拠点で進めております。
当連結会計年度の研究開発費は
その主な成果は次のとおりであります。
(1)半導体等装置関連事業
①真空シール
真空シール事業におきましては、大手半導体製造装置メーカーの新機種や現行機の改良機種等向けの磁性流体シール開発の複数プロジェクトに取り組んでおります。新しいシールの製品開発については常に顧客やサプライヤーと一緒に進めております。さらに、顧客からの価格要求を満足させるべく、VE活動(製品開発段階から価値を最大化することを目的とした活動)も継続的に実施しております。
②セラミックス製品
ファインセラミックス及びマシナブルセラミックス事業におきましては、最先端の半導体製造・検査装置に搭載される高性能部材の開発を継続的に推進しており、国内外の大手顧客からの引き合いをいただいております。
また、新規事業の立ち上げを視野に入れた高付加価値製品の開発も順調に進捗しており、サンプル出荷及び実機評価を経て、主要顧客の量産ラインへの適用に向けた見通しが立ちつつあります。いずれの事業においても、主要顧客の技術開発動向と密接に連携しながら、研究開発活動を推進しております。
③CVD-SiC
CVD-SiC事業におきましては、半導体製造装置用部品の開発を進め、大手顧客での実機評価が複数進行中です。製造プロセス技術の高度化と合理化を進め生産効率の向上に寄与すると同時に、新しい方式の製造装置による新規開発品に取り組んでおります。
④石英坩堝製品
石英坩堝については、半導体向け石英坩堝の顧客品質要求を満足させるため、工程内設備の更新や製造プロセスの革新に取り組んでおります。さらに、需要及び品質面の向上も考慮し、プロセスの自動化にも積極的に取り組んでおります。
⑤シリコンウエーハ事業
半導体向けシリコンウエーハを単結晶インゴットからウエーハ加工まで一貫した製造を行っております。そのための量産技術開発に取り組んでおります。インゴット結晶引上げを銀川工場にて製造し、6インチ以下の小口径ウエーハを上海工場にて製造、8インチと12インチウエーハは、杭州工場で行っており、ウエーハ品質の重要な項目である欠陥制御、平坦度、清浄度などの品質向上を目指します。
顧客需要に応える為に中国麗水にエピウエーハ用工場が量産稼働しております。バイポーラIC用・ディスクリート用・MEMS用・CIS用などの量産品に向けた供給体制を築くための技術開発に取り組んで貢献してまいります。
麗水第二工場として12インチインゴットからウエーハ加工までの一貫工場を建築し、1期計画月産15万枚設備導入を進めており、本年稼働量産化実現のため、取り組んでおります。
⑥再生ウエーハ事業
再生ウエーハ事業としてシリコンウエーハ事業部の顧客の膜付ウエーハを回収し、膜剥離、再研磨、検査を行い再生ウエーハとして納入製造を行うための量産技術開発に取り組んでおります。顧客要望の強い12インチ大口径ウエーハを中心に8インチウエーハ含め、膜剥離プロセス、研磨プロセスの技術開発に取り組んでおります。
(2)電子デバイス事業
①サーモモジュール
サーモモジュールを使用したアッセンブリ製品については、お客様の幅広いニーズにお応えできるよう、カスタム品の開発・提案を積極的に進めております。また、サーモモジュールを応用した最終製品であるチラーの開発にも、中国の開発部隊と連携して取り組んでおります。サーモモジュールに限らず、熱に関するお客様の課題解決に向けては、機構設計含めた提案から、モノづくり、そして各種評価までを一貫で対応する「トータルサーマルソリューション」の活動に、これまで以上に力を入れて取り組んでおります。
②磁性流体
医療診断や検査などのバイオ系分野で使用される磁性ビーズ製品"Ferrobeads®"を、日米の技術開発部門が共同して開発いたしました。この分野はグローバル市場で大きく成長するとされており、開発品の積極的な拡販活動にて、既にいくつかの採用案件が出てきております。後発参入であるため、磁気応答性が優れた高機能・高品質の製品であるだけでなく、用途に応じたカスタム対応や価格面を強みとし、市場からの要望を取り込んだ製品ラインナップを充実してまいります。一方、最先端の音響製品や触感デバイスなど、工業分野への採用も増えており、各用途に対応した新製品を随時準備しております。更に、次世代のエネルギー・航空宇宙・医薬分野などを見据え、学術機関と共同で応用開発を推進しており、積極的な最先端技術をもって、将来の大きな事業の柱を増やしてまいります。
③パワー半導体用基板
当社はグローバルに事業を展開する中で、パワーデバイス分野のトップメーカー各社からの高度な要求に応えるべく、性能の向上及び品質の改善に継続的に取り組んでおります。これらの取り組みにより、顧客より高い評価を賜り、売上は堅調に推移しております。
④センサ
車載・空調・光通信・パワー半導体等用の温度センサ性能、品質、コスト競争力の向上に向けた活動を進めております。空調用製品は、顧客よりの価格ニーズに対応するため、組立生産の自動化、VE活動を推進してまいります。また、顧客からの需要が増えている光通信用やパワー半導体用等サーミスタ素子の市場ニーズに対応した開発を更に進めてまいります。
(3)車載関連事業
①サーモモジュール
車載関連事業におけるサーモモジュールについては、セグメントごとに明確に分けて活動していないため、(2)電子デバイス事業のサーモモジュールにおける活動に含まれます。
②パワー半導体用基板
信頼性が極めて重視される車載用途においても、当社のパワー半導体基板、特にAMB製品の採用及び検討が進んでいます。今後も継続した品質改善に取り組み、顧客ニーズを満足する製品開発を推進、更なる事業拡大を目指してまいります。
③センサ
カーボンニュートラル社会の到来に向け、電動車の販売数量が拡大する中、電動車に使用される二次電池用・モーター用・熱マネージメント用・パワー半導体用温度センサ分野の顧客ニーズに対応した開発を進めてまいります。また、既存品の競争力向上のため、組立生産の自動化やVE活動にも注力してまいります。