第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)会社の経営の基本方針

当社グループは、下記の経営理念ならびに行動指針を経営の基本方針とし、FA業界向け制御機器メーカーとして、これまで蓄積してきた総合エレクトロニクス技術を活用し、常に新しい技術・商品・システム・サービス・信頼を幅広く提供しております。

 

「経営理念」

当社グループは、高い企業倫理に基づき、人間性を尊重し、時代の変化に適切に対応しながら、共存共栄のもとに豊かな社会づくりに貢献する。

 

「行動指針」

・会社が、常に社会的存在であることを自覚し、継続的かつ適正な利益の創出をもって、事業の健全な存続と成長をめざす。

・法令と社会規範を遵守し、正々堂々、公正で自由な事業活動に邁進する。

・個性と自主性を重視し、働き甲斐ある職場づくりをめざす。

・広く社会との融和を図り、企業情報を公正かつ適切に公開する。

・環境に配慮した事業革新に挑み、地球規模の環境保全に努める。

 

(2)企業構造及び主力製品

「第1 企業の概況 3 事業の内容」をご参照願います。

 

(3)経営環境、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

当社グループは、第二次中期経営計画の初年度を終了いたしました。原材料価格・外注費及び労務費等の高騰により厳しい環境下ではありましたが、生産性向上と成長性分野への資源集中に注力し、収益確保に努めてまいりました。地政学的リスクに加え、米国の経済政策の不透明性など経済環境は大きく変化しており、経営環境は一層厳しい状況が想定されますが、品質の向上による付加価値を高めることに注力しその上で適正な価格転嫁を進め、売上確保に努めてまいります。

2025年度は、第二次中期経営計画の2年目にあたります。経営ビジョンをしっかりと持って、省人化・省力化に向けたDXソリューションなどのニーズを取り込み積極的に提案し、受注活動に努めてまいります。

そのために、以下の施策に優先的に取り組んでまいります。

 

 

① SDGsの推進

持続可能な社会創りに全社をあげて参画意識を高め、環境に優しい製品作りを通じて社会貢献をしていくことに注力してまいります。そのために、SDGs推進室の下、社員の思いと社会の思い、更に経営者の思いを融合させて、全員参加で策定した中期経営計画を断行してまいります。

 

② 適正な金額の受注・売上の確保

広範囲かつ継続的な部品・原材料価格の高騰に伴う製造原価の上昇を反映した、適正な金額と根拠について誠意をもって顧客に説明し、受注・売上に繋げていくことを目指してまいります。そのためコア技術を磨き、一層の競争優位性を確保することに努めてまいります。また、事業戦略に合致した製品の投入、海外・国内成長市場への新規・深耕開拓、在外子会社(南京華洋電気有限公司、Thai Toyo Electric Co.,Ltd.)との連携強化に努めてまいります。

 

③ 部品・原材料調達の安定化

部材の長納期化は緩和されたものの、世界情勢の不安定化、エネルギーや原材料などの資源価格の高騰や円安の著しい進行により、収束するには、まだまだ時間を要する見通しです。そのため、部品や原材料の調達ルートの多様化、代替部材への変更等の検討を実施し、製品作りに支障が出ないように対応してまいります。

 

④ 生産性向上と働き方改革

各製品に適した生産技術のレベルアップにより全社規模での生産性向上を目指してまいります。また、時間あたりの生産性に対する意識向上を図り、働き方改革の推進と経営体質の強化に努めてまいります。

 

⑤ 技術と開発

コア技術製品の競争力強化や次世代に繋がる技術・製品開発の推進、戦略的な知的財産マネジメント、産学連携を中心としたオープンイノベーションの活用による新製品のリードタイム短縮により全社的な技術レベルの向上に努めてまいります。

 

⑥ 人財育成と環境改善

女性活躍・ダイバーシティの取り組み推進により働き甲斐ある職場環境を整備してまいります。技術継承を効率的かつ確実に実施するため「技術継承の見える化」を形にしていくことに拘り、それを活用し、将来を担う人財育成に活用してまいります。内部統制システムやリスク管理体制を充実し、コーポレートガバナンスとコンプライアンスの徹底、法令遵守の労務管理と安全衛生活動の啓蒙を進めてまいります。

 

⑦ その他の取り組み

自然災害や感染症の拡大(パンデミック)等の緊急事態に備え、事業継続計画(BCP)に基づき、事業継続マネジメント(BCM)に引き続き取り組んでまいります。

 

(4)目標とする経営指標

当社グループは、適切な利益を安定的に確保するために、経営体質の強化を推進し、企業価値を高めることを重要な経営目標としています。

この目標を達成するために、売上高、営業利益、営業利益率、経常利益を重要な経営指標と位置づけており、数値目標を以下の通り設定しています。

 

2026年3月計画

2027年3月計画

2028年3月計画

売上高(百万円)

9,250

9,391

9,699

営業利益(百万円)

321

471

569

営業利益率(%)

3.5

5.0

5.9

経常利益(百万円)

338

496

594

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において合理的であると判断する一定の前提に基づいており、実際の結果とは様々な要因により大きく異なる可能性があります。

 

(1)サステナビリティ基本方針

当社グループは、「高い企業倫理に基づき、人間性を尊重し、時代の変化に適切に対応しながら、共存共栄のもとに豊かな社会づくりに貢献する」との経営理念のもと、誰もが人間性を十分に発揮できる持続可能な社会を目指し、事業活動をしています。その実現に向けて、当社グループでは活力ある未来を創造するために、代表取締役社長執行役員を中心とするSDGs推進室を2021年3月期に設置し、今日に至っております。

 

(2)マテリアリティの特定

当社グループが持続的成長を果たすためには、すべてのステークホルダーに対し、誠実であることが重要と考えます。サステナビリティに関するマテリアリティ(重要課題)を定め、社会への責任と貢献を果たしていきます。

マテリアリティ及びSDGsとの関連

取り組み

 

お客様に対する取り組み

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全社品質・環境委員会での品質に対する活動を進め、お客様の視点を基準に社内ルールを遵守し、お客様の要求される製品を確実に生産納入できるよう定期的にフォローアップし、お客様の満足度を高めていきます。

 

株主・投資家に対する取り組み

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企業価値向上に向けての改善を進めるとともに、適時的確な情報開示、コミュニケーションの充実を通じて、経営の質を更に高めていく努力を継続しています。

 

地域社会に対する取り組み

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地域社会への責任と貢献を重視し、関連するグループ企業と共に雇用の創出に貢献しています。また、毎年地域の皆様と催事を通じてコミュニケーションを深め、さらに美化活動として工場周辺の清掃を月2回設定して活動をしております。

 

従業員に対する取り組み

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従業員の健康・安全衛生に関し、継続的な活動を実施しております。健康診断、人間ドックの受診を促す活動、各職場の作業環境測定の実施、メンタルヘルスチェックの実施などをしております。

 

仕事と生活の調和

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従業員が各々のライフスタイルにおいて仕事と生活のバランスを取り、「仕事の充実」と「仕事以外の生活の充実」の好循環が会社の発展につながるものと考え、各種制度の充実や職場環境の整備を図っております。

 

安全に対する取り組み

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「安全はすべてに優先する」という基本方針のもと、安全衛生委員会が中心となり活動を展開しております。また、自然災害に対して可能な限りの備えを施すことは大きな社会的責務と考え、防災教育の徹底を図り、防災体制の充実に力を入れております。

 

気候変動に対する取り組み

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SDGs推進室と脱炭素相談窓口を設立し、地球環境が全世界の課題であることを認識し、地球環境の保全と環境問題の改善に努め、社会の課題解決と地域社会の発展に貢献するため取り組んでおります。

 

(3)気候変動への取組みとTCFDへの対応

異常気象による被害が増大するなど、気候変動をはじめとする地球環境の変化は、経済活動のみならず私たちの日常生活に大きな影響を及ぼしつつあり、人類共通の大きなリスクとなっております。TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言を踏まえ、以下の枠組みで取り組みを推進しております。

 

① ガバナンス

当社では、気候変動の原因となる地球温暖化への対応を重要な課題の一つとして認識してまいりました。課題解決に向けて2022年3月期に脱炭素相談窓口を設立し、GHG排出削減のため調査・現状分析を実施し経営戦略会議にて内容を報告しております。

 

② 戦略

事業活動に影響を与えると想定される気候変動リスク・機会について特定し、特に影響の大きいリスクの軽減ないし、機会の獲得に向けた対応策として、脱・低炭素に寄与する製品開発により、新たなビジネス機会の獲得に取り組んでまいります。

分類

事業活動への影響

影響度

移行リスク

政策・法規制

GHG排出に関する規制・炭素税等によるコストの増加

技術・市場

再生可能エネルギーへの転換に伴う調達コストの増加、気候変動に係る顧客ニーズの変化に未適合による売上と利益の損失

評判

情報開示不足による株価・企業価値の毀損

物理リスク

急性

異常気象の激甚化に伴うサプライチェーンの混乱による機能不全、自社工場の被災による生産遅延・停止

慢性

平均気温の上昇による従業員の健康リスク管理・労働環境改善のための空調エネルギーの増加

機会

技術・市場

環境負荷の低い新製品事業の需要増加

 

③ リスク管理

当社は、グループ全体のリスクを網羅的・統括的に管理する体制を確保するために、四半期に1回以上定期的に開催される「リスク管理委員会」においてリスクアセスメントを実施し、リスク回避や低減に向けた改善を施しております。

 

④ 指標及び目標

自社および取引先も含めたサプライチェーン全体で脱炭素社会に向けた取り組みを進めることが規制対応コスト増加などの移行リスクに対して効果があり、また省エネ技術、サステナブル製品やサービスなどが生み出す持続可能性価値により市場に貢献し、物理的リスク低減にも間接的に寄与すると考えています。当社では、2030年までにCO2排出量を2013年基準で46%削減し、2050年までにカーボンニュートラルの実現に向けて、太陽光発電等自然エネルギー活用、DX推進による業務効率改善や工場設備の改修・新設等による電力消費の抑制などを検討してまいります。その第一歩として、春日井工場本館建屋に自家消費型太陽光発電設備の設置を行い、2025年8月より運用開始予定であります。

 

(4)人財の育成及び社内環境整備に関する方針

従業員一人ひとりがやり甲斐や充実感を持って仕事をしていくことが当社のものづくり、発展を支える原動力と考え、年齢、性別、国籍などの属性にかかわらず、全員が「働き甲斐」を感じられる会社を目指して環境づくりを進めており、2018年より女性活躍推進に主眼をおいた取り組みを開始しております。また、従業員がその能力を最大限に発揮できるような育成を念頭においたキャリアビジョン制度の導入、社内風土や意識改革のための研修の実施、専門性スキルアップのための外部研修プランの紹介、多様な人財の活躍を支援するための制度改定など着実に見直し・推進を実施しています。

 

① ガバナンス

中長期的な企業価値の向上を向けた人財戦略として、環境問題への取組みや情報技術の変革、様々な外部環境の変化等に柔軟に対応していく人財を育成するために、現在取組んでいる働き方改革の一層の推進と共に社員が活躍し易い職場環境を整えてまいります。また、当社のコア技術を継承していくために「技術継承の見える化」活動に取り組んでおり、次世代を担う技術者の育成に努めております。

 

② 戦略

将来的に組織の意思決定に関わる女性社員を増やしていくためにキャリア意識の醸成が不可欠と考えており、引き続き女性の活躍できる職場づくりに努め、当社の掲げるSDGsの実現に向けて活動していくことを計画しております。また、環境変化が著しい中、経営理念が目指す社会貢献を果たすことができる人財を育成するために階層別の教育体系に基づき、必要な一般知識、専門性のカリキュラムを紹介、受講することで段階的にプロフェッショナル人財へと導きます。

 

③ リスク管理

社員一人ひとりが持つ能力と個性を発揮できることが重要であり、人財の流動性が高まる中、採用競争力が低下して人財獲得が進まなくなることに加え、社員の離職により組織の力が低下することをリスクと考えています。社員に成長の機会を提供し、社員が仕事と生活を充実させられる『働き甲斐ある職場』をつくることによって、社員が活躍できる職域を拡大するために配属職場の更なる環境改善を進めてまいります。

 

④ 指標及び目標

指標

目標

2023年度実績

2024年度実績

全管理職に占める女性管理職の割合

2027年3月末時点5以上

3.3%

3.1

技術継承のための年間教育研修時間

2027年3月末時点300時間

292.3時間

432.7時間

一人当たりの年間教育研修費用

2027年3月末時点3.5万円

2.8万円

4.3万円

 

全管理職に占める女性管理職の割合は、男性管理職の増加によって減少しましたが、引き続き女性管理職の登用に向けた人財教育に取り組んでおります。

技術継承の教育研修時間は、技術継承の見える化の活動報告発表会を年2回開催し、各部門での啓蒙活動が浸透したため現場でのOJT研修が定着し、外部機関の研修へ積極的に参加したことで研修時間が順調に推移しました。したがいまして目標値を当初の65時間から300時間へと見直し、今後も目標を達成すべく活動してまいります。

一人当たりの年間の教育研修費は、社内における公的資格取得支援等の自己啓発支援制度の活用、次世代の管理職を育成するための研修、業務効率化やDX推進を目的とした教育ツールの導入などによって増加しております。

なお、人材の育成に関する指標について提出会社においては、関連する指標のデータ管理とともに、具体的な取り組みが行われているものの、連結グループに属する会社では行われていないため、連結グループにおける主要な事業を営む提出会社のものを記載しております。

 

3【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

以下のリスク発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針であります。

なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1)経済、市場環境の状況について

当社グループが展開する事業及び製品は、主に生産設備の稼動支援を目的に用いられており、公共投資及び民間設備投資の動向に大きく影響を受けます。このため、公共投資及び民間設備投資需要が予想以上に抑制された場合には、当社グループの業績が下振れする可能性があります。

これに対し当社グループでは、海外・国内成長市場への新規・深耕開拓、在外子会社(南京華洋電気有限公司、Thai Toyo Electric Co.,Ltd.)との連携強化により、事業基盤の強化に努めております。

 

(2)販売価格戦略の複雑化による影響について

当社グループが事業を展開する市場は厳しい競争に直面しており、製品の販売価格は大きな潮流として低下傾向にあります。しかしながら、原材料価格高騰の影響を緩和するための販売価格の適正化は重要課題となっており、価格戦略は一層複雑化しております。このため、競争のさらなる激化や長期化により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

これに対し当社グループでは、既存製品のモデルチェンジや新製品の開発、コスト削減に向けた生産体制の見直しなど諸施策に取り組み、安定した収益の確保に努めております。

 

(3)原材料の価格変動による影響について

当社グループの主要製品に材料として使用される銅・鉄鋼などの価格は、国際市況に連動しており、原材料の価格変動が当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

これに対し当社グループでは、常に国際市況をモニタリングするとともに、生産性の向上による原価低減や販売価格への転嫁、性能を確保しながらの低価格原材料変更等により、原材料の価格変動による影響を最小限に抑えるべく努めております。

 

(4)特定顧客への依存について

当社グループの売上高は、主要得意先からの製品製作の受託比率が高まりつつあり、特定顧客への依存度が増しております。このため、これら主要得意先の受注・生産動向や外注政策が大きく変動した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

これに対し当社グループでは、常に新規顧客開拓に努め、特定顧客への依存度を低減するための活動を展開しております。

 

(5)製品やサービスの品質について

製品やサービスの欠陥や瑕疵等により、損失計上を伴う可能性があります。また、当社グループの製品やサービス品質に対する評価の低下は、経営全般に影響を及ぼす可能性があります。

これに対し当社グループでは、品質マネジメントシステムを運用することで、予期せぬコスト負担を最小限に抑えるべく努めております。

 

(6)海外生産における影響について

当社グループは、中国及びタイ王国に連結子会社を有し、為替変動・現地国の政治・経済情勢などにより当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

これに対し当社グループでは、上記のカントリーリスクを十分に検討し、事業運営の安定に努めております。

 

(7)自然災害等について

当社グループは、自然災害等の緊急事態に備え、事業継続のための体制を整備しております。しかしながら、想定を著しく上回る大規模な自然災害等が発生した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

これに対し当社グループでは、事業継続計画(BCP)に基づき、事業継続マネジメント(BCM)を運用することで、予期せぬコスト負担を最小限に抑えるべく努めております。

(8)感染症に係るリスクについて

当社グループが事業活動を展開する国や地域において、感染症等が発生した場合には、当社グループの事業活動に影響を及ぼす可能性があります。

これに対し当社グループでは、感染症発生時における在宅勤務や時差出勤ならびにWeb会議、リモート営業の環境を整え、各種対策を講じることで、業績への影響を最小限に抑えるべく努めております。

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(経営成績等の状況の概要)

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

(1)財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度におけるわが国の経済は、経済活動の正常化が進む中、雇用・所得環境の改善やインバウンド需要の増加などにより、緩やかな回復傾向で推移しました。しかしながら、ウクライナや中東情勢などの地政学的リスクの長期化、エネルギー価格や為替の変動、米国経済政策の不確実性の高まりがみられるなど、依然として先行き不透明な状況が続いております。

当社グループの主な関連業界である電気機器業界におきましては、カーボンニュートラルの実現や省力化などの課題解決を目的とした設備投資が堅調に推移しております。

このような状況のもと、当社グループは、営業支援ツールを活用した効率的な営業活動を行い、DXを意識した業務効率改善を進め、次世代に繋がる技術開発や、ベテラン社員が保有する技術を継承するために技術継承の見える化を推進し、サステナビリティに対する意識を高め、持続可能な社会に貢献するための製品開発に努めております。

当連結会計年度の経営成績につきましては、前連結会計年度に比べ国内制御装置関連事業、樹脂関連事業は増収となり、海外制御装置関連事業においては減収となりました。当社グループ全体の利益面では、原価率の抑制に努めましたが、固定費の増加等により、営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益は減益となりました。

その結果、売上高は9,348百万円(前連結会計年度比5.9%増)、営業利益は292百万円(前連結会計年度比22.8%減)、経常利益は348百万円(前連結会計年度比19.9%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は281百万円(前連結会計年度比37.8%減)となりました。

なお、当連結会計年度の為替レートは、中国人民元が21.53円(前連結会計年度は19.86円)、タイバーツが4.57円(同 4.10円)と、前連結会計年度に比べ中国人民元に対し1.67円安、タイバーツに対し0.47円安で推移いたしました。

各セグメントの経営成績は、以下のとおりであります。

 

① 国内制御装置関連事業(当社、アドヴァンコーティング株式会社)

エンジニアリング部門の売上高につきましては、搬送制御装置分野、監視制御装置分野、配電盤の分野における大型案件の売上増により、2,691百万円(前連結会計年度比748百万円増、38.5%増)となりました。

機器部門の売上高につきましては、センサ分野における価格競争の激化と市場ニーズの変化などにより、2,121百万円(前連結会計年度比386百万円減、15.4%減)となりました。

変圧器部門の売上高につきましては、データセンター向けや再生可能エネルギー関連の設備投資が堅調に推移したことにより、2,900百万円(前連結会計年度比102百万円増、3.7%増)となりました。

以上の結果、国内制御装置関連事業の売上高は7,713百万円(前連結会計年度比464百万円増、6.4%増)となり、セグメント利益は318百万円(前連結会計年度比64百万円減、16.9%減)となりました。

② 海外制御装置関連事業(南京華洋電気有限公司、Thai Toyo Electric Co.,Ltd.)

海外制御装置関連事業の売上高につきましては、中国経済の低迷に影響を受けた南京華洋電気有限公司が売上高と利益面を押し下げ、897百万円(前連結会計年度比21百万円減、2.4%減)となり、セグメント利益は6百万円(前連結会計年度比54百万円減、90.0%減)となりました。

③ 樹脂関連事業(東洋樹脂株式会社)

樹脂関連事業の売上高につきましては、事務機器関連向け製品の受注が好調であったことにより、736百万円(前連結会計年度比76百万円増、11.6%増)となり、セグメント利益は25百万円(前連結会計年度比1百万円増、5.4%増)となりました。

 

財政状態の状況は、以下のとおりであります。

 

① 資産の状況

当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ40百万円減少の10,814百万円となりました。

流動資産は、154百万円減少の7,510百万円となりました。これは主に、現金及び預金の減少29百万円、受取手形、売掛金及び契約資産の減少132百万円、棚卸資産の減少277百万円、電子記録債権の増加283百万円などによるものであります。

固定資産は、114百万円増加の3,304百万円となりました。これは主に、有形固定資産の増加84百万円、無形固定資産の増加56百万円などによるものであります。

 

② 負債の状況

当連結会計年度末の負債は、前連結会計年度末に比べ328百万円減少の4,469百万円となりました。

流動負債は、607百万円減少の2,881百万円となりました。これは主に、支払手形及び買掛金の減少129百万円、電子記録債務の減少356百万円、未払法人税等の減少48百万円、その他に含まれる未払金の減少33百万円などによるものであります。

固定負債は、278百万円増加の1,587百万円となりました。これは主に、長期借入金の増加272百万円などによるものであります。

 

③ 純資産の状況

当連結会計年度末の純資産は、前連結会計年度末に比べ288百万円増加の6,345百万円となりました。これは主に、利益剰余金の増加177百万円、為替換算調整勘定の増加94百万円などによるものであります。

 

(2)キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、1,707百万円となり、前連結会計年度末に比べ90百万円減少(5.0%減)となりました。

営業活動の結果使用した資金は80百万円(前連結会計年度は618百万円の獲得)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益346百万円に加え、売上債権の増加108百万円、仕入債務の減少519百万円、その他流動負債に含まれる未払金の減少86百万円、法人税等の支払額110百万円、減価償却費160百万円、棚卸資産の減少298百万円等によるものであります。

投資活動の結果使用した資金は、203百万円(前連結会計年度は65百万円の使用)となりました。これは、有形固定資産の取得による支出162百万円等によるものであります。

財務活動の結果得られた資金は、179百万円(前連結会計年度は394百万円の使用)となりました。これは主に、長期借入れによる収入550百万円、長期借入金の返済による支出228百万円、配当金の支払額105百万円等によるものであります。

 

(3)生産、受注及び販売の実績

① 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(千円)

前年同期比(%)

国内制御装置関連事業

7,454,901

1.8

海外制御装置関連事業

996,412

△4.8

樹脂関連事業

741,936

10.2

合計

9,193,250

1.7

(注) セグメント間取引については、相殺消去しております。

 

② 受注実績

当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(千円)

前年同期比(%)

受注残高(千円)

前年同期比(%)

国内制御装置関連事業

7,275,804

△2.4

2,951,111

△12.9

海外制御装置関連事業

806,171

△1.0

115,025

△44.3

樹脂関連事業

742,587

10.8

61,652

10.2

合計

8,824,563

△1.3

3,127,789

△14.3

(注) セグメント間取引については、相殺消去しております。

 

③ 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(千円)

前年同期比(%)

国内制御装置関連事業

7,713,816

6.4

海外制御装置関連事業

897,690

△2.4

樹脂関連事業

736,887

11.6

合計

9,348,394

5.9

(注) セグメント間取引については、相殺消去しております。

 

(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(1)経営成績の分析

① 売上高について

当連結会計年度における売上高の概況は、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (経営成績等の状況の概況)」をご参照願います。

 

② 営業利益について

売上原価は、537百万円増加(前連結会計年度比8.4%増)し、6,942百万円となり、固定費が増加したこと等により、売上原価率は74.3%(前連結会計年度比1.7%増)となりました。

販売費及び一般管理費は、運賃及び荷造費の増加10百万円、旅費及び交通費の増加10百万円、その他に含まれる手数料の増加45百万円などにより、68百万円増加(前連結会計年度比3.4%増)の2,113百万円となりました。

以上の結果、当連結会計年度の営業利益は、292百万円(前連結会計年度比22.8%減)となりました。

 

③ 経常利益について

営業外収益は、雑収入の増加4百万円などにより、10百万円増加(前連結会計年度比11.7%増)の97百万円となりました。

営業外費用は、為替差損の増加5百万円などにより、10百万円増加(前連結会計年度比32.8%増)の42百万円となりました。

以上の結果、当連結会計年度における経常利益は、348百万円(前連結会計年度比19.9%減)となりました。

 

④ 税金等調整前当期純利益について

当連結会計年度における税金等調整前当期純利益は、346百万円(前連結会計年度比21.2%減)となりました。

 

⑤ 親会社株主に帰属する当期純利益について

当連結会計年度における親会社株主に帰属する当期純利益は、法人税等調整額の増加99百万円などにより、281百万円(前連結会計年度比37.8%減)となりました。

 

(2)財政状態の分析

「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (経営成績等の状況の概要)」をご参照願います。

 

(3)経営成績に重要な影響を与える要因について

「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」をご参照願います。

 

(4)経営戦略の現状と見通し

「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照願います。

 

(5)キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

① キャッシュ・フローの状況の分析

「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (経営成績等の状況の概況)」をご参照願います。

 

② 資本の財源及び資金の流動性

当社グループの運転資金需要のうち主なものは、部品や材料の仕入のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、老朽化に伴う生産設備の更新等の設備投資によるものであります。また、株主還元につきましては、財務の健全性等に留意しつつ、配当政策に基づき実施してまいります。

また、当社グループは、健全な財務体質、継続的な営業活動によるキャッシュ・フロー創出能力により、今後も事業成長を確保する目的で手元流動性を高める資金調達や、個別投資案件への資金調達は可能であると考えております。

 

(6)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

(7)経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループでは、2022年3月期を初年度とする中期経営計画がスタートし、2025年3月期は第二次中期経営計画の初年度となる1年でした。原材料価格・外注費の高騰が続き、また賃金上昇圧力もあり、企業経営に与える影響は厳しいものがありました。各セグメントによっては売上が大幅未達成の部門もありましたが、昨今のトレンドの気候変動対策関連分野及びデータセンター等の情報産業分野の設備投資は堅調であり、当初予想を上回る引き合いが多かったことから、連結ベースでは目標並みの売上を確保することができました。

また、利益面では、第一次中期経営計画の後半から販売価格適正化・原価低減策の実施は定着してきておりますが、原材料価格高騰、人件費高及び海外部門の苦戦をカバーしきれず、目標を下回る結果となりました。

2025年3月期の計画値(2024年5月10日開示)と実績値の結果は以下のとおりです。

単位:百万円

 

 

2025年3月計画

2025年3月実績

計画比

売上高

9,386

9,348

△38 ( △0.4%)

営業利益

354

292

△61 (△17.4%)

営業利益率(%)

3.8

3.1

経常利益

397

348

△49 (△12.3%)

 

(8)経営者の問題認識と今後の方針について

当社グループの経営陣は、現状の事業環境及び入手可能な情報に基づき、最善の方針を立案するように努めておりますが、ここ数年の景況や先行きの不透明さなどの影響により、今後も厳しい状況が継続していくことが予想されます。

当社グループでは、厳しい状況に際しても、適正な利益を安定的に確保するために、経営体質の強化を推進し、企業価値を高めていくことを重要な経営目標としており、その内容につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照願います。

 

5【重要な契約等】

(取得による企業結合)

当社は、2024年8月7日開催の取締役会において、アドヴァンコーティング株式会社の株式を取得し、連結子会社化することについて決議し、2024年8月20日付で合併いたしました。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (企業結合等関係)」に記載のとおりであります。

 

6【研究開発活動】

当社グループは、事業戦略に合致したコア技術・製品の競争力強化と次世代につながる技術・製品開発を推進しております。当連結会計年度における研究開発活動は、主に国内制御装置関連事業が主体となりテーマごとに優先度を検討し、優先度の高いテーマを中心に効率的な開発活動に取り組んでまいりました。

当連結会計年度における当社グループの研究開発費は157百万円となりました。

研究開発活動は、以下のとおりであります。

 

国内制御装置関連事業

国内制御装置関連事業における研究開発活動では、市場や顧客のニーズに対応するために、製品改良やモデルチェンジ、新製品の開発に取り組んでまいりました。またR&D部門を中心として将来を見据えた新技術の研究開発に取り組み、新技術開発テーマには、大学等との共同研究を積極的に推進し、研究開発の迅速化・効率化に努めました。

その結果、研究開発として主に下記内容を実施し、国内制御装置関連事業における研究開発費は157百万円となりました。

 

① 研究

・TOFセンサの基礎研究

・産学連携による耐雷変圧器の共同研究

・高速空間光伝送装置の研究

・樹脂押し出し不良検知AIカメラシステムの研究

・バッテリーレス漏液センサの応用展開の研究

 

② 開発製品

・交流電力調整器の新製品開発

・広角光映像伝送装置の新製品開発

・クレーン接近検出装置の新製品開発

・モールド変圧器の新製品開発