第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経営方針

当社グループは、「革新」により社業の発展を図り、「信頼」により顧客との共存を維持し、「創造」により社会に貢献し続ける存在でありたいという経営理念のもと1990年に創業して以降、経営資源を研究開発に集中することで独自技術を磨くとともに、顧客の製品やサービスなどのアプリケーションに関する知識と長年培ってきたLSIの知識を融合させることで、顧客の課題解決と競争力向上に貢献するシステムLSIを企画・開発してまいりました。

また、生産を外部に委託するファブレスメーカーでありながら製品の解析を行う開発解析センターを整備するなど、厳格な品質保証体制を構築することで信頼性の高い製品を供給するとともに、システムLSIの企画・開発から供給まで一貫して顧客サポートができる体制で顧客の課題を解決するソリューションを提供し、顧客と共に成長してまいりました。

今後も当社グループは、経営理念のもと、「システム(機器)のソリューションを提供し、顧客と共に発展する」ことをミッションとして掲げ、新たな価値創造に挑戦し、独創性のある幅広いソリューションを顧客に提供することで、より豊かで安心できる社会の実現に貢献してまいります。そして、持続可能な社会の実現のために事業活動を通じて何ができるか、これらの課題をどう解決して社会に貢献できるかという発想で事業を展開し、地球環境、資源、社会、人権、多様性といった様々な課題に対して、ステークホルダーとの協働により長期的な視点で課題解決に取り組み、当社グループの成長と持続可能な社会をともに実現することを目指してまいります。

また、株主の皆様への適切な利益還元を重要な経営課題のひとつとして位置付け、経営環境の変化に柔軟に対応できる健全な財務体質を維持しながら積極的な利益還元に努めてまいります。

 


 

〔価値創造プロセスの循環〕

当社グループは独創性のある技術を活かし、お客様の製品やアプリケーションの問題を解決するLSIの設計、開発、生産を行っております。近年ますます高度化する多種多様な電子機器に使われる半導体製品により、複雑化する機能や仕様に新たな価値を提供していくことで、電子機器やシステムの性能を向上させ、さまざまな課題を解決いたします。当社の経営理念のもと、この価値創造プロセスを循環させ、より豊かで安心な持続可能な社会の実現に貢献してまいります。

 


 

(2) ビジョン

当社グループが属するエレクトロニクス産業分野においては、あらゆるものがネットワークに繋がる高度なネットワーク社会の実現に向けて、様々な機器に搭載される電子部品の高性能化・多機能化が進み、今後の産業発展を支えるものとしてその重要性が高まってきております。

当社が成長市場として主要なターゲットとする通信分野では、様々なものがインターネットに接続されるようになり、通信速度や通信距離の向上、タイムラグの減少、多数の機器が同時に接続できる多接続の実現等、IoT時代に対応する多岐にわたる通信技術の開発が進展しております。また、産業機器分野では、世界的な自動化ニーズの高まりやデジタルシフトが進む中で、物流、製造オートメーションをはじめ日常のいたるところで自動化の動きが加速し、産業用ロボットや各種の自動化機器の重要性が増しております。

このような状況から、様々な分野の機器に使用される電子部品の高性能化のニーズが高まるにつれ、機器の高精度・多機能・小型・低消費電力などを実現するためのキーデバイスとなるLSI製品の需要拡大は続くものと見込まれております。

このような環境の中、当社グループは、これまで培ってきた独自技術と他社の独創的な最先端技術やノウハウとを融合させることで、より付加価値の高い製品やサービスの創造に取り組み、顧客の課題を解決するソリューションを提供してまいります。主力事業であるアミューズメント事業の事業基盤を強化しつつ、成長市場である産業機器分野、通信機器分野等をターゲットに経営資源を集中的に投下し、ASIC・ASSP事業の拡大と新規事業の育成により事業構造転換を推進してまいります。

あわせて、自社の資本コストを把握した上で収益性や資本効率性を高めること、投資家との建設的な対話により市場評価を高めること、また、企業活動を通じたサステナビリティに関する取り組みを積極的に推進することで、会社の持続的成長と、エレクトロニクス産業の発展への貢献をともに実現していく考えです。

 

 

(3) 中長期の経営戦略

今後の中長期においては、主力のアミューズメント事業と、ビジネスモデルの異なるASIC事業、ASSP事業の三つの事業を柱として事業ポートフォリオを強化するとともに、次世代を担う新たな事業の育成にも注力し、さらなる成長力と収益構造の強化を図っていく考えです。

各事業においては、国内はもとより、北米、アジアを中心とした海外展開を推進するとともに、新技術の獲得、当社技術との融合、最先端技術によるソリューションの創造、新市場・顧客の開拓などを狙いとして、国内外の大学との共同研究開発や、最先端の技術やアイデアを持つスタートアップ企業に対しての事業投資や戦略的提携を推進し、独自性のあるビジネスの創出と事業化につなげていく考えです。

さらに、「社会・環境・人にやさしい会社」としてサステナビリティ経営を推進するとともに、社内環境整備とダイバーシティ、健康経営施策、エレクトロニクス分野の技術者やグローバル人材の育成など、人材強化に向けた取り組みを推進いたします。また、投資家との対話を重視するとともに、安定的な配当と機動的な自己株式取得により株主還元策の充実を図ってまいります。

これらの経営戦略を着実に実行することで企業価値の向上を図り、中長期で目指す姿としては、収益力と資本効率性の目標としてROE8%以上、市場評価の目標としてPBR1倍以上の安定化を達成できるよう取り組んでまいります。

 


 

① アミューズメント事業

主力事業であるアミューズメント事業においては、引き続き顧客密着型の提案活動とサポート体制を強化することで、さらなるサービスの向上に努めるとともに、シェア獲得や製品の安定供給のため、パートナー企業や製造委託先等との情報連携や生産体制の強化を図り、サプライチェーン全体が盤石なものとなるように取り組むことで、これまで以上に主要なサプライヤーとしての地位を確実なものとし、安定した売上と収益の確保を目指します。

 

 

② ASIC事業

ASIC事業については、これまでの主力であったコンシューマ機器分野やOA機器分野等を中心とした事業展開に、産業機器分野と通信インフラ分野を新たな成長ターゲットとして加え、引き続き事業の拡大に取り組みます。今後は、これまで培ってきた上流設計やアナログ技術、特に当社が得意とする通信インターフェース技術、セキュリティ技術や画像処理技術などを活用し、画像関連機器・FA機器・通信インフラ機器向けの製品開発を進め、順次量産化してまいります。あわせて、国内に加え海外(北米・アジア地域)における市場開拓とビジネス獲得にも注力し、中長期における継続的な増収増益を目指します。

 

③ ASSP事業

ASSP事業においては、オーストラリアのMorse Micro社との戦略的提携による通信ビジネスの本格量産化を進めております。この通信ビジネスにおいては、当社がこれまで培ってきた有線通信技術と、約1kmの非常に長い通信距離と低消費電力を実現したMorse Micro社の無線通信技術によって、LSIやモジュールを提供し顧客のニーズに応じた幅広い通信ソリューションによる事業展開を進めております。

あわせて、最先端の技術やアイデアを持つスタートアップ企業に対しての事業投資や戦略的提携を推進し、日本国内及び海外(北米・アジア地域)において、新市場の開拓や新製品の開発を積極的に推進することで、新規事業の事業化を目指します。

 

④ サステナビリティに関する取り組み

サステナビリティに関する取り組みについては、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組」をご参照ください。

 

⑤ 資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応

当社グループは、高い資本効率と健全な財務体質の両立を目指しており、市場環境・競争環境・成長機会などに応じて適切な経営資源の配分を行ってまいります。

資本効率については、自社の資本コストを把握するとともに、資本収益性を評価する指標であるROEと市場評価に関する指標であるPBRを重要な指標として捉え、中長期の企業価値向上を図るべく資本コストを意識した経営に取り組んでまいります。当社グループの自己資本利益率(ROE)は、現状において当社が認識している資本コストを下回る水準となっております。当社としては、自社が把握する資本コストを上回るROEの水準を8%程度以上として定め、中長期においてこの水準を超えるROEを達成すべく、引き続き資本効率の向上と中長期の経営戦略を着実に実行し収益性の向上を図っていく考えです。また、資本効率の向上を図るとともに、投資家との対話を通じ当社の成長戦略について十分な理解を得ていくことで市場評価を高め、PBR1倍以上の安定化を図っていく考えです。

IR活動においては、機関投資家との個別のIRミーティング等のコミュニケーション機会を充実し、経営戦略等について建設的な対話を推進し理解を得ていくとともに、対話から得られた意見や要望を社内で共有し、今後の取り組み検討にも活用いたします。また、当社のウェブサイト等において、非財務情報についても積極的に発信し、投資家との対話の材料となる情報の提供に努めてまいります。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

(1) サステナビリティに対する考え方

メガチップスグループは、持続可能な社会の実現を経営戦略の重要課題として認識し、企業活動や事業を通じてサステナビリティに関する取り組みを積極的に推進しております。ステークホルダーとの協働を通じて企業価値の向上を目指すとともに、社会全体の持続的な発展の実現に向けて取り組んでおります。

創業当時からの経営理念である『「革新」により社業の発展を図り、「信頼」により顧客との共存を維持し、「創造」により社会に貢献し続ける存在でありたい』にも深く合致しており、この理念のもと、様々な社会課題の解決に取り組み、「社会・環境・人にやさしい会社」として、より豊かで安心できる持続可能な社会の実現に貢献してまいります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 


 

① 法令・社会的規範等の遵守

あらゆる法令や国際社会のルールを遵守し、会社の規程・標準に基づき、社会的規範にそむくことのない公正で健全な企業活動を行います。社会の秩序や安全に脅威を与える反社会的勢力には断固とした姿勢で対応し、企業としての社会的責任を果たします。また、リスクマネジメントに継続して取り組み、様々なリスクの予防・低減に努めます。

② 優れた製品の提供を通じた社会貢献

市場や顧客のニーズを迅速に取り込み、独自の技術力をベースにシステム(機器)のソリューションを提供することを通じて顧客の信頼に応え、安心で快適な社会の実現に貢献します。技術と知恵の融合により、製品の企画力や開発力の向上に最大限努め、新たな価値創造に挑戦します。

③ 働きやすい職場環境づくり(ダイバーシティの推進)

職場の安全と全ての社員の健康を守るとともに、人権・プライバシーを尊重し、多様な人材が能力を発揮することのできる職場環境の整備と多様な働き方を推進します。また、人格や個性を尊重しつつ、社員一人ひとりが主体性と創造力を発揮できる企業風土を醸成し、専門性と創造性に富む個性豊かな人材を育成します。

④ 取引先・サプライヤーとの公正な取引の推進

サプライヤーをはじめとする取引先やパートナー企業との信頼関係を高め、各国の法令遵守と国際的なルール・慣行に配慮し、自由な競争のもと公正な取引を行うとともに、取引先との間における強要や贈収賄を含むあらゆる形態の腐敗防止を徹底します。また、サプライチェーンにおける人権侵害をはじめとする様々な課題の把握に努め、持続可能なサプライチェーンの構築を推進します。

 

⑤ ステークホルダーの尊重

全てのステークホルダーの立場を尊重するとともに、積極的な情報開示とコミュニケーションにより信頼関係を築き、ステークホルダーとの協働により社会課題の解決に取り組みます。また、地域社会の伝統・文化を尊重して人々との信頼関係を深め、次世代を担う技術者の育成支援等を通じて、地域社会での発展に貢献します。

⑥ 自然環境の保全、豊かな社会づくりへの貢献

より安全な未来社会を実現するために環境保全を推進することが必要不可欠であるとの考えのもと、「環境と経営の共生」を実現することで、持続可能な自然環境の実現に貢献します。環境に配慮した製品づくり、製造における資源利用の効率化や化学物質の削減、輸送時のエネルギー削減等、事業活動に伴う環境負荷の削減に継続的に取り組みます。

⑦ 人権の尊重

当社グループは社会課題のひとつである人権保護についてその責任を認識し、全ての社員に尊厳をもって接し、あらゆる企業活動において人権を尊重するとともに、不当な差別、児童労働や強制労働を認めないことを表明します。

 

(2) ガバナンス及びリスク管理

当社はサステナビリティに対する取り組みの検討とその対応を、関係部門の代表者が参加するチームを中心として部門間で連携して実施しており、コーポレート・ガバナンス体制において運用しております。コーポレート・ガバナンス体制については「第4 提出会社の状況 (1)コーポレート・ガバナンスの概要」をご参照ください。

また、コーポレート・ガバナンス体制において、サステナビリティに関するリスクをはじめとする経営に影響を与える可能性のあるリスク情報を認識し、その評価を行うとともに、重要なリスクへの対処を検討し、取締役会に報告する体制でリスクマネジメントを行っております。

 

 

(3) 気候変動とTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)に対する取り組み

気候変動は、人類の生活全体に影響を与えるだけでなく、安全保障、地政学的環境、自然資源に対して脅威ともなる社会全体で取り組むべき重要な課題です。当社は気候変動によってもたらされる問題を重要な経営課題のひとつとして認識し、持続可能な社会の構築に貢献するため「環境と経営の共生」の実現に向けた取り組みを推進しております。今後の気候変動に関連する事象をリスクと捉え対応すると同時に、新たな機会を見いだし、経営戦略に活かしてまいります。

 

① 戦略(シナリオ分析)

当社では気候変動によるインパクトを踏まえ、世界平均気温の上昇を「2℃」に抑制する社会を目指す上で、2030年度における気温上昇のシナリオを想定したリスクと機会を洗い出し、事業への影響度の分析と対応策の検討を行いました。引き続き、シナリオ分析の精度を高め、目標値の設定やその達成に向けた各取り組みの推進に役立ててまいります。

② リスクの認識と対応

[気候変動に対応した低炭素経済への移行リスクと財務への影響]

当社は自社で製造設備を保有せず生産を外部に委託する、製品の設計・開発に特化したファブレスメーカーであるため建物や設備などの長期資産への気候変動の影響は軽微です。

また、低炭素経済に対応した製品開発のための研究開発費の増加に備え、自己資本の充実を図っており、必要資金の需要の増加にも十分対応できる強固な財務基盤を確立しております。今後も引き続き、オフィス等におけるエネルギー使用量のデータを収集し管理するとともに、省エネルギー・省資源に配慮した事業活動を行います。

当社の国内の事業所におけるエネルギー使用量については、次のとおりです。

回次

第31期

第32期

第33期

第34期

第35期

決算年月

2021年3月

2022年3月

2023年3月

2024年3月

2025年3月

電気使用量(kw/h)

1,175,139

1,011,365

947,034

810,649

812,146

ガス使用量(㎥)

58,133

52,019

69,685

73,603

72,094

CO2排出量(t-CO2)

607

521

600

487

477

 

 

[低炭素経済への移行を想定した財務影響のあるリスク項目]

環境関連法規制の強化による人件費の上昇

低炭素経済に対応した顧客製品向けのLSI製品の開発費の増加

消費者行動の変化による顧客製品の需要の減少

生産委託先におけるエネルギーコストの上昇、原材料費の増加

LSI製品の輸送コストの上昇

[異常気象による物理的リスクと財務への影響]

異常気象による物理的リスクの財務影響のある項目としては、生産委託先における製造能力の低下や、気温の上昇による空調管理のためのエネルギーコストの上昇を想定しております。

[財務影響のあるリスク項目についての対応]

製造委託先と共同での温室効果ガスの排出量の把握と削減

従来の開発プロセスの見直しによる開発費の削減

低炭素経済に対応した低消費電力型LSI製品の開発

新たな事業分野のビジネス育成の強化

サプライチェーンのバックアップ体制の強化

製造委託先との連携強化による情報収集体制の強化及びBCP(事業継続計画)体制の再構築

製造委託先企業の範囲拡充、複数拠点化の推進

 

③ 機会の認識と取り組み

[気候変動に関する機会]

気候変動の緩和や気候変動に対する取り組みが進んでいく中でもたらされる機会については、LSI製品の需要増大による収益機会の確保、省エネ対応製品を通じた社会貢献及び認知度の向上、柔軟な原材料調達による新たな製品開発への積極的投資などを想定しております。

具体的には、製品の販売機会として、低消費電力のLSI製品、顧客製品の省エネ化・小型化に対応するLSI製品の市場への供給量の増加、製品開発面では、顧客ニーズに応える先進的な技術開発や研究開発を推進する積極的な開発投資の必要性が高まります。また、原材料の調達条件が緩和されると新しい素材を使ったLSI製品の開発や、既存製品の生産の安定化・効率化によるコストの減少が可能となります。

[機会に対する取り組み]

気候変動に関する機会をビジネスにつなげていくために、低炭素社会に対応した、低消費電力LSI製品や顧客製品の省エネ・小型化に貢献するLSI製品を市場に供給し、顧客のニーズにあった提案型営業を推進いたします。

また、新しい原材料を使った先進的製品の開発への投資や、市場の拡大が見込まれる事業分野へ経営資源を集中してビジネス拡大を図るとともに、新規事業創出のため、国内外における企業・大学との連携を推進し、CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)ファンドによる米国でのスタートアップ企業との提携や事業投資を行っていきます。

 

(4) 環境配慮型製品に対する取り組み

当社は、「革新」により社業の発展を図り、「信頼」により顧客との共存を維持し、「創造」により社会に貢献し続けることを理念として成長してきました。この経営理念のもと、独自の技術力で低消費電力化、小型化、高速処理化といったLSIの機能・性能及び品質の向上に取り組み、省エネルギー・省資源化を実現するソリューションを提供することで、お客様とともに発展・成長し、地球環境の保全に貢献していきます。

① 環境配慮型製品の開発による環境負荷削減

環境影響を考慮し、製品の低消費電力化・小型化、部品点数削減、開発・設計効率向上など、環境配慮型製品の開発・設計に取り組んでいます。製品の直接材料・間接材料だけでなく、製造・輸送・製品の利用の際に使用するエネルギーや廃棄物の排出量の削減に努めています。

② 製品事例:低消費電力のASIC設計

環境への配慮が重要視される現在はASIC開発における低消費電力の追求が欠かせません。当社はファブレスの強みを活かし、世界中のウエハ製造ベンダーが提供する「低消費電力向け製造プロセス」と、IPベンダーが提供する「低消費電力向け特殊ライブラリ」を意欲的に採用することでASICの大幅な消費電力削減を達成しています。直近の具体的な事例では、CMOSトランジスタの動作電圧をダイナミックにコントロールする技術の適用により、それらを採用しなかった場合に比べて50%を超える消費電力の削減を達成しています。これらのASICは産業機器、通信機器、IoTデバイスなどの幅広いアプリケーションにおいて使用され、環境に配慮しつつ人々の暮らしをサポートすることに貢献いたします。

 

 

(5) 人的資本に関する方針と取り組み

① 人的資本政策に関する基本方針

人的資本政策において、当社は自社の価値観(経営理念、経営原則等)に立脚し、社員と会社が共に成長を続けることで企業価値を拡大させる事を目指しております。具体的にはそれぞれに対して次の政策を実施しております。

まず一つ目は社員向けの政策です。ファブレスメーカーである当社において最大の財産は人材であり、すぐれた人材の育成や確保こそ企業の発展の根源と考えております。このため、人材育成や社内環境整備を通じて社員のエンゲージメントを向上させ、国籍、性別、年齢等に関係なく個々の能力を最大限発揮できる環境づくりを目指します。二つ目として、これからの日本産業の競争力となる学生に向けた教育支援や、国内外の大学への研究支援と共同開発を行う事により、社会課題の解決に寄与する新たなイノベーション創出を支援しております。これにより社会課題の解決と人材育成に貢献してまいります。

 以上のように、社員個々の付加価値向上、それによる当社の企業価値向上に加え、学生・産業界への取り組みを包括的にとらえた人的資本政策を通して、より良い社会の実現に貢献いたします。

 

[人的資本政策に関する全体像]


 

[人的資本投資のサイクル]


 

[人材育成方針]

当社は、社員一人ひとりの価値向上と能力の最大限の発揮を図るため、教育施策を積極的に実施し、その成長を会社の成長、そして持続的な発展へと繋げることを目的に、以下の人材育成方針を定めます。

・当社の価値観(経営理念、経営原則)に沿った考えと行動ができる人材の育成

創業以来培ってきた経営理念と経営原則を、社員一人ひとりが深く理解し、日々の業務における判断や行動の拠り所とすることを重視します。日々の業務やコミュニケーションを通じて、当社の価値観を浸透させ、組織全体が同じ方向を向き、一体感を持って業務に取り組むことができる人材を育成します。

・仕事に誇りとやり甲斐を持って働き、持てる能力を最大限に発揮し、自己成長できる人材の育成

社員が自身の仕事に誇りを持ち、その仕事を通じて社会に貢献しているという実感を得られるよう、多様な職務経験の機会や、個々の能力や適性に合わせた育成プログラムを提供します。

・自律的に学び、考え、創造性を発揮し、挑戦し続ける人材の育成

社員の自律的な学びを支援するため、多様な研修・学習機会を提供します。これにより、個人の創造性を刺激し、失敗を恐れずに新たな挑戦を続けることができる人材を育成します。

 

[社内環境整備方針]

多様な個性を持つ社員一人ひとりにとって魅力的な職場環境、働き方、制度を提供することで、社員のエンゲージメントを向上させ、いきいきと活躍できる魅力的な職場環境の実現と、人材の定着・優秀な人材の確保を目的に、以下の社内環境整備方針を定めます。

・多様性の尊重

国籍、性別、年齢等に関係なく社員一人ひとりが意欲をもって活躍し、能力を十分に発揮できる仕組みを整備します。多様な視点や発想を活かすことで、組織全体の創造性と競争力を高めます。

・女性の活躍推進と仕事と生活の両立支援

女性のキャリア形成やリーダーシップの発揮を促進するとともに、全ての社員が仕事と生活を両立できる就業環境を整備します。

・心身の健康をサポートし、安心して能力を発揮できる快適な職場環境の整備

社員が心身ともに健康な状態で、安心してその能力を最大限に発揮できるよう、健康経営を積極的に推進します。社員の心身の健康づくりに加え、男女問わず子育て中の社員も安心して働き、能力を発揮できる快適な職場環境を整備します。

 

② 社内への取り組み

[人材育成]

人材育成方針に基づいた取り組みの概要は次のとおりです。

・階層別教育

社員の階層(役職、年齢、勤務年数等)ごとに、必要なスキルを習得するプログラムを行っています。

・女性リーダー育成

女性社員のキャリア形成の促進を目的に、リーダーとして必要な思考力・スキルを学ぶ女性向けプログラムを行っています。

・語学支援

語学力向上のため、社員が選んだ語学スクール・通信教育の費用を補助します。また定期的なTOEIC受験支援を行っています。

・Eラーニング

組織上の役割・職位に応じた教育から、企業人として身につけるべき教育まで、幅広い研修コンテンツを用意したオンライン学習管理システムを受講することができます。

・社会人博士、MBA取得支援制度

働きながら博士号・MBA取得できる環境をサポートしています。

・キャリア開発休職制度

大学・専門学校等就学や資格取得できる休職制度を導入しています。なお学習するテーマの制限はなく、自身が実現したいキャリアの開発に向けて、一人ひとりの自律的な学びを支援しています。

 

・グローバル人材の早期育成

本人の意欲や適性を考慮し、海外大学との共同研究、海外子会社への駐在、海外大学への留学の機会を提供し、グローバルに通用する人材の早期育成に取り組んでいます。

・インターンシップの充実

学生に対し、幅広い分野での就業体験や高度な知識・技術に触れる機会を提供するインターンシップを実施しています。これにより、社会人として必要となる実践的な能力向上を支援し、学生の成長を促すことで、当社にとっての優秀な人材の確保に繋げています。

 

[社内環境整備]

社内環境整備方針に基づいた、取り組みの概要は次のとおりです。

・ダイバーシティ

当社は、性別・属性に関わらず全社員が仕事と生活を両立させ、その能力を発揮できる就業環境の整備を行います。女性社員にはキャリア形成やリーダーシップの発揮を促進し、女性が活躍できる仕組みを作るとともに、男性社員には育児休業を取得しやすい環境を整えています。具体的には育児介護等と仕事の両立支援として、育児・介護休暇等に関する制度を定め推進しております。子育てサポート企業として「くるみん」を取得しているほか、大阪府「男女いきいきプラス」事業者、大阪市女性活躍リーディングカンパニー(☆☆☆三つ星)に認定されており、社員一人ひとりがその能力を最大限に発揮できる環境づくりを推進しています。なお、育休復帰3年後定着率は2023年度に引き続き2024年度も100%を維持しております。

・働き方改革(多様な働き方)

時間、場所、雇用形態にとらわれない柔軟な働き方を選択することができるように、フルフレックスタイム制、時短勤務制度、フレックスワーク制度、在宅勤務制度、副業制度といった柔軟な働き方を可能とする各種制度を導入しています。なお、兼業及び副業制度の2024年度の利用人数は7名となっており、前年度より1名増えております。

・健康経営の促進

社員の健康維持・増進活動を目的とし、疾病欠勤休暇制度の拡充、フレックスホリデー制度等、有給休暇の取得促進のほか、産業医との連携によるサポート体制の強化、ストレスチェック、女性の健康に関する勉強会、コミュニケーション促進を目的とした健康イベント等を実施します。なお、2024年度のストレスチェック受験率は100%でしたが、高ストレス者率は19.5%と前年度に比べ上昇しました。この結果を受け、当社は社員の心の健康を支えるため、有給休暇の取得促進や産業医によるサポート体制のさらなる強化など、現在の取り組みを一層充実させていきます。また、疾病休職者(フィジカル・メンタル含む)の割合は前年度と同率の1.5%となっております。

・ライフの充実

ライフイベントと仕事を調和させ、力を発揮できる環境を整えることで、ワーク・ライフ・バランスの実現を支援します。男性社員の育児休業取得制度、育児時短勤務の子供の対象年齢の引き上げ、配偶者転勤休職、ファミリーサポート休暇等、ライフイベントに合わせた休暇・休職制度の充実や利用を促進します。

・社員と株主との価値共有を促進するための制度導入

当社は、企業価値の持続的な向上を目的とし、社員と株主との一層の価値共有と会社の成長へのモチベーションを高めるため、持株会を通じて譲渡制限付株式を社員に付与する制度の導入を2024年5月に決定いたしました。

本制度は、当社が特別奨励金として金銭債権を社員に支給し、従業員持株会が社員からの拠出金を当社に出資することで、譲渡制限付株式を社員に付与し、社員の資産形成を支援するものです。

また、当社は社員の中長期的な資産形成と経営への参加意識の向上を目的に従業員持株会制度を設けており、社員の拠出金に対して導入企業の平均を上回る15%の奨励金を当社が支給し、自己株式の取得を支援しております。

 

 

なお、当社のダイバーシティや社内環境整備に関する実績及び目標は次のとおりです。

区分

項目

2023年度実績

2024年度実績

2025年度目標

ダイバー
シティ
(多様性)

男女別人員比率

男性82.1%
女性17.9%

男性79.5%
女性20.5%

男性80.0%
女性20.0%

管理職に占める女性
社員の割合

7.1%

10.0

10.0%以上

社内環境
整備

男性の育児休業取得率

100.0%

100.0

100.0

平均残業時間(月)

17.7時間

17.2時間

15.0時間

年休取得率

77.6%

74.2

70.0%以上

 

 

※ 上記指標については、連結子会社においてデータが集計されていないため、提出会社のものを記載しております。

※ 当社の人材育成、社内環境整備に関する具体的な取り組み内容は、当社ウェブサイトにて紹介しておりますのでご参照ください。

https://www.megachips.co.jp/sustainability/social/work_environment/

 

③ 社会への取り組み

・学生向け人材育成

理系の女性が少ないと言われる中で、当社は日本国内の大学・大学院の理系学部・学科・専攻へ進学する女子学生が安心して学業に専念できるよう、奨学金による支援を行っております。

また、当社創業者が設立した公益財団法人進藤記念財団において、ひとり親家庭の環境にある学業優秀かつ品行方正な中高生が、厳しい経済状況の中でも学べるよう、給付型奨学金支給による支援を行っております。

・産業界への貢献

国内外大学への研究支援や共同開発を推進しております。研究費用の支援を通じて研究活動を充実させ、新たなイノベーションの実現に挑戦しております。また、共同研究を通じて研究開発分野における人材の育成にも貢献します。

※ 当社の社会貢献に関する具体的な取り組み内容は、当社ウェブサイトにて紹介しておりますのでご参照ください。

https://www.megachips.co.jp/sustainability/social/contribution/

 

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 事業について

① LSI製品の需給バランスにおけるリスク

当社グループはLSIの設計、開発から生産までのトータルソリューションを提供しておりますが、自社で生産設備は保有せず、生産は全て外部に委託するファブレスの事業形態をとっており、台湾を中心に主に海外の大手ファウンドリーとのネットワークを構築し、顧客のニーズにあわせて製品の製造を委託しております。

したがって、半導体市況の需給バランスにより調達数量と価格が影響を受け、当社グループの望む納期、数量及び価格で製品が調達できない可能性があります。

これに対処するために、既存ファウンドリーとの連携をこれまで以上に強固なものとし、製品を優先的に調達できる環境整備に取り組んでおります。これに加え、新たなファウンドリーを検討し調達先を増やすことで、リスクの最小化に努めております。

② 販売先におけるリスク

当社グループは、LSI製品として、アミューズメント分野向けに使用されるゲームソフトウェア格納用LSI(カスタムメモリ)、ゲーム機本体・周辺機器向けのLSIの他、デジタルカメラ向け等画像処理用LSI、事務機器向けLSIを主に販売しておりますが、ゲームソフトウェア格納用LSI(カスタムメモリ)を主に供給している、任天堂株式会社への売上高の割合が高くなっております。

したがって、これらのLSI製品が使用されるゲーム機器やゲームソフトウェアの販売動向、また、同社におけるLSIの採用状況などにより、当社グループの業績が変動する可能性があります。

当該リスクは完全に排除できる性格のものではありませんが、当社は任天堂株式会社と良好かつ緊密な関係を構築し、最適なソリューションの提供や安定した製品の供給等により顧客満足の獲得に努め、リスクの最小化に努めております。また、今後の成長が見込める産業機器分野、通信分野等における新たな事業の育成にも注力し、中長期において事業ポートフォリオの適正化を進めていく考えです。

なお、任天堂株式会社への売上高については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (経営成績等の状況の概要) (4) 生産、受注及び販売の実績」に記載のとおりであります。

③ 生産委託先(外注加工先)におけるリスク

当社グループは、製品の生産を外部に委託するファブレスメーカーという事業形態を採用し、特徴のある技術力を核に顧客のニーズに最適な製品を開発しております。当社グループの主力取引先である任天堂株式会社へ供給するゲームソフトウェア格納用LSI(カスタムメモリ)及びゲーム機本体・周辺機器向けのLSIなどの製品の生産については、主にMacronix International Co.,Ltd.(以下「マクロニクス社」)へ委託しており、マクロニクス社への外注割合が高くなっております。

したがって、何らかの理由によりマクロニクス社で生産ができなくなった場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

現在のところ、当該リスクの顕在化の兆候はございません。なお、当社は任天堂株式会社及びマクロニクス社との間で製造委託契約を締結しており、両社と良好かつ緊密な関係を構築し、安定的な製品の供給に努めております。

また、生産委託しているファウンドリーは台湾が中心となっているため、地政学的なリスク等があることも認識しております。これらに対処するために、ファウンドリーを国内外に広く求め、信頼関係を築き不測の事態に備えてまいります。

 

④ 人材の確保におけるリスク

当社グループは、独自のアナログ・デジタル技術を駆使し、技術開発力をベースとして事業を展開しており、その成長は人材に大きく依存しております。そのため、優れた技術者を獲得して維持することや、必要とする人材をどのように処遇し、どのように育成していくかは、人事政策上の重要事項となっております。

したがって、将来において、当社グループの国内外の優秀な技術者の維持や、人材の新規採用・育成・グローバル化が計画どおりにできなかった場合、当社グループの競争力が弱まり、企業価値そのものに影響を与える可能性があります。

これらに対処するため、当社グループは人事処遇体系を整備し、中長期の新たな事業育成等のための人材投資について、育成計画に基づいて人事政策を実行いたします。また、多様な環境で能力を発揮し、組織の成果を最大化出来る人材を育成できるよう、人材育成に積極的に取り組んでおります。なお、詳細につきましては、2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (5) 人的資本に関する方針と取り組みをご参照ください。

 

(2) 経営について

① 戦略的投資におけるリスク

当社グループは、将来の成長に向けて事業の拡大を図るため、投資先との提携等によるシナジー効果の創出を目的に、提携先企業並びに最先端の技術やアイデアを持つスタートアップ企業への戦略的投資を行っております。当連結会計年度末のこれらの投資有価証券の残高は12,153百万円となっており、連結総資産の8.1%を占めております。

このような将来の事業の成長のための戦略的投資におきましては、シナジー創出や事業上の補完関係の構築・業績拡大等において、当社の予測どおりの効果が得られない可能性があります。また、投資株式の時価の下落や実質価額の著しい低下による評価損の発生により、当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。

なお、これら戦略的投資に関しては、取締役において当社とのシナジー創出や事業の進捗状況・将来性等を総合的に勘案し、投資効果やリスクの検証を行ったうえで投資先ごとに保有の適否を判断しております。

② 為替変動について

当社グループと顧客や生産委託先などのパートナーとの取引においては、米ドルや台湾ドルを主とする外貨建取引が一定割合含まれております。また、海外子会社の財務諸表は連結財務諸表作成のために円換算されていることから、外国為替相場、殊に日本円・米ドル間の為替相場の変動により、当社グループの業績が変動する可能性があります。外国為替相場が円高方向に進行した場合、概して損失方向に影響し、その変動幅が大きいほど当該リスクの顕在化の可能性が高まります。

なお、為替リスクの低減のため、必要に応じて為替予約取引を利用しております。

③ 知的財産権について

当社グループは、研究開発を主体としたファブレスメーカーであり、知的財産権の保護は事業展開上の重要課題と認識しております。

しかしながら、当社グループが出願する特許や商標などがすべて登録されるとは限らないこと、また、公開前の他社技術など、他社権利を調査しても把握できないものもあることから、他社の知的財産権を侵害し、訴えを提起された場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループの独創的な技術が、特定の国・地域においては、法整備等の理由により充分な保護を受けることができない可能性があります。このような状況下で、他社が当社グループの知的財産を無断で使用し、類似の製品を市場に販売した場合、これを効果的に阻止することができない可能性があります。

なお、当社グループは、知的財産に係わる社内体制及び特許事務所との連携を強化し、当社グループが提供する製品・サービスを保護するための特許や商標などの出願・登録を積極的に行うと同時に、他社権利の調査を徹底することにより他社権利の侵害を防止するなど、リスクの最小化に努めております。

 

④ 情報セキュリティに関するリスク

当社グループは、製品開発や知的財産などの機密情報の他、事業活動を通じて顧客やサプライヤー等の機密情報や従業員等の個人情報等を保有しております。このため、昨今のセキュリティリスクの高まりの中、情報の適切な管理と情報セキュリティ対策を十分に行うことが、事業を展開する上での重要課題となっております。

これらの情報の取り扱いにつきましては、社内に情報システムを整備し、情報の適切な管理とセキュリティ対策を行っておりますが、サイバー攻撃、不正アクセス、コンピューターウイルスの侵入等により、万一これらの情報が流出した場合や、重要データの破壊、改ざん、システム停止等が生じた場合には多額のコストが発生し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

なお、当社グループは、社内の情報システムのセキュリティ強化や従業員に対するIT教育等による意識向上など、システムと運用の両面において情報セキュリティ対策に努めております。また、情報セキュリティの確保においては、政府や他社との連携により早期の情報共有を図り、万全を期すなど、リスクの最小化に努めております。

⑤ 偶発的な災害等におけるリスク

当社グループが事業を展開する国内外において、大規模な地震をはじめとする自然災害や火災、未知の感染症の流行、テロ行為や社会騒動、その他の事故・事件等が発生した場合、当社グループの事業拠点、生産を委託するファウンドリーやメーカー、あるいは顧客自身に対して大きな被害が発生する可能性があります。また、これらの影響によって当社グループの事業活動の縮小等を余儀なくされた場合、当社グループの経営成績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。

このような偶発的な災害等におけるリスクを全て回避することは極めて困難でありますが、当社においては、リスクの予防回避及び発災時の人命の安全、並びに被害の抑制・軽減、二次災害の防止、早期の業務再開を図ることを目的に危機管理マニュアルを策定し、危機管理についての必要事項と対応方法を定めるとともに、リスクの軽減に向けた対応を可能な範囲において実施しております。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(経営成績等の状況の概要)

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という)の状況の概要は次のとおりであります。

 

(1) 経営成績の状況

 昨今の世界経済は、米国をはじめとした各国の関税政策の影響が懸念される中、不確実性が一層高まっています。さらに、ロシアによるウクライナ侵攻の長期化や中東情勢の緊迫化といった地政学的リスクに加え、世界的なインフレ圧力の高まりにより世界経済の先行きが一層不透明となっております。日本経済は緩やかな回復基調を維持しているものの、世界経済の減速懸念や原材料価格の上昇といった要因が景気の下振れリスクとして依然存在しております。

また、為替市場では、各国の金融政策の違いが影響し、当年度前半は円安基調が続いていました。しかし、円高が急速に進む場面もあり、為替相場は激しい変動を繰り返しています。そのため、今後の動向を予測することが極めて困難な状況となっています。

このような市況の中で、当社の主力であるASIC(顧客専用LSI)においては、需要減少による一時的な在庫調整局面にあるものの、引き続きAIやIoT技術の進展によって産業機器分野や通信分野の半導体需要の拡大が進展しております。このような状況の下、当社はアミューズメント分野向けにおいて顧客密着型の提案活動とサポート活動に注力するとともに、これまで培ってきた上流設計やアナログ技術、特に当社が得意とする通信インターフェース技術、セキュリティ技術や画像処理技術などを活用し、画像関連機器や成長市場である産業機器分野や通信インフラ分野向けの製品開発を進め、事業の基盤強化による収益拡大を図っております。

ASSP(特定用途向けLSI)においては、AIやIoT、5Gによる情報通信技術の革新が進展している状況の下、今後の成長が見込める通信分野・産業機器分野などをターゲットとした新規LSI事業の立ち上げに経営資源を集中しております。アナログ・デジタル回路の開発・設計技術の競争力強化を図るとともに、通信分野においては、Morse Micro PTY. LTD.(以下、Morse Micro社という)との資本提携及び戦略的パートナーシップによる事業化を進めており、長距離の無線通信技術を活用したLSIやモジュールを提供し、顧客のニーズに応じた幅広い通信ソリューションによる事業展開を図っております。

引き続き、当社グループは安定した収益基盤を維持しつつ、事業ポートフォリオの強化による収益拡大を図ってまいります。また、次世代を担う新たな事業の育成のため、新市場の開拓や新製品開発に取り組み、独自性のあるビジネス創出と事業化を図ってまいります。これらの取り組みを通じて、中長期の持続的な成長を目指してまいります。

当連結会計年度の経営成績につきましては、アミューズメント事業においてLSIの需要が減少したこと、ASIC事業において受託開発売上(NRE売上)が堅調に推移したものの、顧客の在庫調整によりLSIの需要が減少したことにより、売上高は42,326百万円前年同期比27.0%減)、営業利益は2,190百万円同60.1%減)となりました。

経常利益は、受取利息が275百万円、投資事業組合に係る投資有価証券評価益が206百万円発生したこと等により、2,608百万円同24.5%減)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、SiTime Corporation株式の一部売却による投資有価証券売却益が7,705百万円あった一方で、固定資産除却損が1,326百万円、投資有価証券評価損が919百万円それぞれ発生したこと等により、5,371百万円同19.7%増)となりました。

当社グループは単一の事業セグメントであるため、セグメント情報に関連付けた記載を行っておりません。

 

(2) 財政状態の変動状況

<資産>

当連結会計年度末における総資産は149,940百万円(前連結会計年度末に比べ23,329百万円の増加)となりました。

主要な項目を前連結会計年度末と比較すると、受取手形、売掛金及び契約資産が5,080百万円、主にSiTime Corporation株式の時価評価により投資有価証券が26,012百万円それぞれ増加した一方で、現金及び預金が7,229百万円減少しております。

<負債>

当連結会計年度末における負債は31,699百万円(前連結会計年度末に比べ7,762百万円の増加)となりました。

主要な項目を前連結会計年度末と比較すると、繰延税金負債が9,171百万円増加した一方で、未払法人税等が1,408百万円減少しております。

<純資産>

当連結会計年度末における純資産は118,241百万円(前連結会計年度末に比べ15,567百万円の増加)となりました。

主要な項目を前連結会計年度末と比較すると、その他有価証券評価差額金が17,416百万円増加した一方で、自己株式の取得等により自己株式が3,922百万円増加しております。

 

(投資有価証券 SiTime Corporation株式の時価評価による影響について)

当社が保有するSiTime Corporation(以下「SiTime社」という)株式について、前連結会計年度末に持分法適用の関連会社から除外したことに伴い、関係会社株式から投資有価証券へ科目が変更となり、各決算期末に時価評価を行っております。この影響により、連結貸借対照表においては、投資有価証券の額が1千億円を超える水準となり、総資産に占める投資有価証券の割合が高い状況で推移しております。あわせて、負債・純資産の部においても、相手科目となる繰延税金負債及びその他有価証券評価差額金の占める割合が高い状況となりました。

当社として、SiTime社株式については、当社の中長期における持続的成長に向けた事業構造改革を含む成長投資及び株主還元に活用する方針です。

今後においても、SiTime社株式の売却によって得られる資金は、事業の成長投資及び株主還元に充当し、最適な経営資源の配分により中長期における持続的成長に向けた事業構造改革を推進する考えであります。既存事業の強化に加え、産業機器や通信インフラ等の成長分野をターゲットとして新規事業の立ち上げを推進することで、企業価値の向上を目指してまいります。

 

(3) キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、17,547百万円となり、前連結会計年度末に比べ7,612百万円の減少(前連結会計年度末は4,442百万円の増加)となりました。

また、営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローを合算したフリー・キャッシュ・フローは、136百万円の支出(前連結会計年度末に対し8,511百万円のマイナス)となりました。

 

当連結会計年度末における各キャッシュ・フローの状況は以下のとおりです。

<営業活動によるキャッシュ・フロー>

当連結会計年度末における営業活動によるキャッシュ・フローは、3,726百万円の支出(前連結会計年度末に対し11,887百万円のマイナス)となりました。

これは主に、税金等調整前当期純利益が8,067百万円あった一方で、投資有価証券売却益が7,705百万円、売上債権の増加が5,080百万円、法人税等の支払額が4,169百万円あったことによるものです。

 

<投資活動によるキャッシュ・フロー>

当連結会計年度末における投資活動によるキャッシュ・フローは、3,590百万円の収入(前連結会計年度末に対し3,376百万円のプラス)となりました。

これは主に、投資有価証券の売却による収入が8,708百万円あった一方で、有形固定資産の取得による支出が2,299百万円あったことによるものです。

<財務活動によるキャッシュ・フロー>

当連結会計年度末における財務活動によるキャッシュ・フローは、7,511百万円の支出(前連結会計年度末に対し2,119百万円のマイナス)となりました。

これは主に、自己株式の取得による支出が5,621百万円、配当金の支払額が1,994百万円あったことによるものです。

 

(4) 生産、受注及び販売の実績

当連結会計年度における生産実績、受注実績及び販売実績は次のとおりであります。

なお、当社グループは単一の事業セグメントであるため、セグメント情報に関連付けた記載を行っておりません。

 

① 生産実績

 

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日

前年同期比(%)

生産高(千円)

35,523,759

77.6

 

 

② 受注実績

 

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日

前年同期比(%)

受注高(千円)

42,547,341

72.9

受注残高(千円)

8,277,377

102.7

 

 

③ 販売実績

 

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日

前年同期比(%)

販売高(千円)

42,326,428

73.0

 

 

(注) 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

前連結会計年度(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日

相手先

金額(千円)

割合(%)

任天堂㈱

42,976,963

74.2

 

当連結会計年度(自 2024年4月1日 至 2025年3月31日

相手先

金額(千円)

割合(%)

任天堂㈱

30,520,989

72.1

 

 

 

(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)

当連結会計年度における経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(1) 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

① 売上高

アミューズメント事業においてLSIの需要が減少したこと、ASIC事業において受託開発売上(NRE売上)が堅調に推移したものの、顧客の在庫調整によりLSIの需要が減少したことにより、売上高は42,326百万円(前年同期比27.0%減)となりました。

② 売上原価・販売費及び一般管理費並びに営業利益

当連結会計年度の売上原価は34,500百万円となりました。売上の製品構成の変化等に伴い当連結会計年度の原価率は前年同期比1.2ポイント増加し81.5%となった一方で、売上高の減少に伴い売上総利益は7,826百万円前年同期比31.6%減)となりました。

販売費及び一般管理費は5,636百万円となり、前連結会計年度と比較して325百万円減少いたしました。この主な内訳は、給料、賞与引当金繰入額等の人件費が2,171百万円(同1.0%減)、研究開発費が1,715百万円(同16.1%減)となっております。

以上の結果、当連結会計年度の営業利益は2,190百万円(同60.1%減)となりました。

当社は連結売上高営業利益率を重要な指標と考えており、その動向を注視しております。当該指標等の5年間の推移は次のとおりであります。

回次

第31期

第32期

第33期

第34期

第35期

決算年月

2021年3月

2022年3月

2023年3月

2024年3月

2025年3月

売上高(百万円)

83,814

75,256

70,722

57,942

42,326

研究開発費(百万円)

3,058

2,537

1,972

2,045

1,715

営業利益又はのれん等償却前営業利益(百万円)

5,608

7,030

6,029

5,483

2,190

売上高営業利益率又は売上高のれん等償却前営業利益率(%)

6.7

9.3

8.5

9.5

5.2

 

 

(注)1.各指標の計算方法は下記のとおりであります。なお、第31期は営業利益に代えてのれん等償却前営業利益を使用しております。
のれん等償却前営業利益: 営業利益+企業買収によるのれん及び無形固定資産の償却費
売上高営業利益率: 営業利益/売上高×100
売上高のれん等償却前営業利益率: のれん等償却前営業利益/売上高×100

2.各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。

3.「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を第32期の期首から適用しており、第32期以降に係る主要な経営指標等については、当該会計基準等を適用した後の指標等となっております。

 

 

③ 税金等調整前当期純利益

営業外収益として受取利息が275百万円、投資事業組合に係る投資有価証券評価益が206百万円、為替差益が111百万円それぞれ発生した一方で、投資事業組合管理費が115百万円発生したこと等により、営業外収益及び営業外費用の差引額は418百万円の収益となりました。

また、特別利益としてSiTime Corporationの株式を一部売却したこと等により投資有価証券売却益が7,705百万円発生した一方で、特別損失として固定資産除却損が1,326百万円、投資有価証券評価損が919百万円それぞれ発生したことにより、特別利益及び特別損失の差引額は5,459百万円の利益となりました。

以上の結果、当連結会計年度の税金等調整前当期純利益は8,067百万円(前年同期比1.9%減)となりました。

④ 親会社株主に帰属する当期純利益

当連結会計年度の法人税、住民税及び事業税の額は2,808百万円(前年同期比23.2%減)、法人税等調整額がマイナス133百万円(前年同期はプラス95百万円)となった結果、親会社株主に帰属する当期純利益は5,371百万円19.7%増)となりました。

当社は自己資本当期純利益率を重要な指標と考えており、その動向を注視しております。当該指標の5年間の推移は次のとおりであります。

回次

第31期

第32期

第33期

第34期

第35期

決算年月

2021年3月

2022年3月

2023年3月

2024年3月

2025年3月

自己資本当期純利益率(%)

53.6

46.9

10.0

5.1

4.9

 

 

(注)1.各指標の計算方法は下記のとおりであります。
自己資本当期純利益率: 親会社株主に帰属する当期純利益/期中平均自己資本×100

2.各指標は、連結ベースの財務数値により計算しております。

 

(2) キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

① 資本の財源及び資金の流動性についての分析

当社グループは、経営環境が急激に変化するような状況下におきましても、顧客にとって基幹部品である当社製品を長期にわたり安定的に供給し続けるという社会的使命を担っております。この使命を確実に果たしていくため、財務基盤の安定性を高め、内部留保の充実に努めるとともに、一定の水準で資金流動性を維持することを基本方針としております。

当連結会計年度末における総資産は149,940百万円(前連結会計年度末比23,329百万円の増加)となりました。流動資産は、現金及び預金、受取手形、売掛金及び契約資産を中心に43,602百万円2,527百万円の減少)となりました。固定資産は、投資有価証券を中心に106,338百万円25,857百万円の増加)となりました。

流動負債は7,962百万円650百万円の減少)となり、流動比率は547.6となりました。流動資産から、棚卸資産4,428百万円を控除した額は39,174百万円となり、当座比率は492.0%となりました。このような財務基盤の安定性を確保できている背景は、当社グループが資金を長期に亘り固定化する生産設備等の資産を持たないファブレスメーカーとして事業を展開してきたことによるものです。当社グループは、今後も流動性の向上と健全な資産構成のバランスシートの維持に努めてまいります。

当連結会計年度末の負債合計は31,699百万円7,762百万円の増加)となりました。負債の主な内容は、LSI製品の製造委託先からの仕入等に対する仕入債務及び繰延税金負債であります。なお、有利子負債の残高はありません。

純資産合計は118,241百万円15,567百万円の増加)となりました。

以上の結果、自己資本は117,805百万円となり、自己資本比率は78.6%(同2.3ポイントの下落)となりました。引き続き、経営環境の変化に柔軟かつ迅速に適応できるよう健全で強靭な財務体質を維持してまいります。当社グループの安全性指標等の推移は次のとおりであります。

 

 

回次

第31期

第32期

第33期

第34期

第35期

決算年月

2021年3月

2022年3月

2023年3月

2024年3月

2025年3月

流動比率(%)

213.5

269.0

350.7

535.6

547.6

自己資本比率(%)

67.1

75.1

83.7

80.9

78.6

時価ベースの自己資本比率(%)

109.0

92.4

80.7

64.7

60.4

 

 

(注)1.各指標の計算方法は下記のとおりであります。
流動比率: 流動資産/流動負債×100
自己資本比率: 自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率: 株式時価総額(期末株価終値×期末発行済株式数)/総資産 

2.各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容

当社グループは、営業キャッシュ・フローの創出力を強化し、事業運営および持続的成長に必要な資金を安定的に確保するため、売掛債権の回収期間短縮と棚卸資産の効率化を推進してまいります。

また、当社グループの成長に必要な資金を、保有する売掛債権の売却、銀行借入れ又は増資などにより、必要に応じて調達できるものと考えております。

 

当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは3,726百万円のマイナス(前連結会計年度は8,160百万円のプラス)となり、これは主に、これまで実施してきた売上債権の流動化を取りやめたことによる、売上債権の増加によるものです。

 

当社グループのキャッシュ・フロー関連指標の5年間の推移は下記のとおりであります。

回次

第31期

第32期

第33期

第34期

第35期

決算年月

2021年3月

2022年3月

2023年3月

2024年3月

2025年3月

営業活動によるキャッシュ・フロー(百万円)

5,513

△195

1,241

8,160

△3,726

フリー・キャッシュ・フロー(百万円)

22,536

19,823

△4,279

8,375

△136

有利子負債(百万円)

4,790

キャッシュ・フロー対有利子負債比率(%)

86.9

 

 

(注)1.各指標の計算方法は下記のとおりであります。
フリー・キャッシュ・フロー: 営業活動によるキャッシュ・フロー+投資活動によるキャッシュ・フロー
キャッシュ・フロー対有利子負債比率: 有利子負債/営業活動によるキャッシュ・フロー

2.各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。

3.有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。

4.第31期を除く期間のキャッシュ・フロー対有利子負債比率については、有利子負債の残高がないため記載しておりません。

 

 

(3) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、当社グループの重要な判断と見積りに大きな影響を及ぼすと考えられる特に重要な会計方針は以下のとおりであります。

連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

① 貸倒引当金

貸倒引当金に関して、過去の貸倒実績率により算定した額のほか、個別に債権の回収可能性を見積もって計上いたします。

② 棚卸資産

棚卸資産に関して、正味売却価額が取得原価よりも下落した場合に簿価の切下げを行います。

③ 投資有価証券

投資有価証券に関して、時価が著しく低下した場合には、当該投資有価証券は時価で連結貸借対照表に計上し、時価と簿価との差額はその期間の損失として認識いたします。適正な時価が容易に入手できない場合で、当該投資有価証券の実質価額が著しく低下している場合は、実質価額まで簿価の切下げを行います。

詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

④ 有形固定資産、無形固定資産及び長期前払費用

有形固定資産、無形固定資産及び長期前払費用に関して、回収見込額が取得価額よりも下落した場合に簿価の切下げを行います。

⑤ 工事損失引当金

工事契約に関して、工事原価総額が工事収益総額を超過する可能性が高く、かつ、その金額を合理的に見積もることができる場合に、その超過すると見込まれる額を計上いたします。

⑥ 繰延税金資産

繰延税金資産に関して、事業計画やタックス・プランニングを基に将来の課税所得を見積って計上いたします。その見積りの変更により回収が見込めなくなった場合に繰延税金資産の取崩しを行います。

 

 

5 【重要な契約等】

(1) 製造・販売の提携

契約の名称

製造委託契約

契約年月日

2001年3月22日

契約期間

2001年7月31日より2005年6月30日、以降1年間単位で異議申立のない限り自動延長

契約相手先

任天堂株式会社及びMacronix International Co.,Ltd.

契約内容

① Macronix International Co.,Ltd.は、任天堂㈱向けマスクROM、フラッシュメモリ及び各種ICを継続的に生産し、当社は同マスクROM、フラッシュメモリ及び各種ICを買い取った上、任天堂㈱に販売する。

② 任天堂㈱が購入を望むMacronix International Co.,Ltd.製マスクROM、フラッシュメモリ及び各種カスタムICは、全量当社が販売するものとする。

③ Macronix International Co.,Ltd.及び当社は、同マスクROM、フラッシュメモリ及び各種カスタムICが任天堂㈱向けのカスタム製品である場合、任天堂㈱以外の第三者に販売その他交付できない。

④ 任天堂㈱は、当社に対し継続してウエハ枚数で月間2,200枚以上の同マスクROM、フラッシュメモリ及び各種カスタムICを発注するよう最善の努力をする。

⑤ 本契約の効力発生日をもって、1995年3月31日に当社、任天堂㈱及びMacronix
International Co.,Ltd.の3社で締結した製造委託契約はその効力を失う。

 

 

(2) 販売の提携

契約の名称

Sales Agency Agreement(販売代理店契約)

契約年月日

1994年3月23日

契約期間

1994年3月23日より5年間、以降5年間単位で異議申立のない限り自動延長

契約相手先

Macronix International Co.,Ltd.

契約内容

① Macronix International Co.,Ltd.は、当社を任天堂㈱向けカスタムマスクROMの独占販売代理店として指名する。

② 当社は任天堂㈱より当該製品を受注し、Macronix International Co.,Ltd.に発注する。Macronix International Co.,Ltd.は当社より注文を受取り、生産し当該製品を当社に供給する。

③ Macronix International Co.,Ltd.は、当社以外のチャネルを通して直接的にも間接的にも当該製品を任天堂㈱に販売してはならない。

④ 当社は任天堂㈱に対する販売価格に対して、一定割合のマージンを差し引いた価格を仕入金額としてMacronix International Co.,Ltd.に支払う。

 

 

 

6 【研究開発活動】

当社グループは、「独自のアナログ・デジタル技術をベースとしたシステムLSI及び当該製品を利用したソリューションを提供すること」を方針として掲げ、製品の差別化を実現する応用技術の研究開発活動に取り組んでおります。

半導体を必要とする技術革新の著しい市場において競争優位性を確保し維持するため、当社グループが保有するLSI開発の知識とアプリケーションの知識を活用し、顧客や市場の要求に応じた独創的なアルゴリズム(データの計算方法や処理方法)やアーキテクチャ(アルゴリズムを実現するためのソフトウェアやハードウェア構成)を開発し提供することで、製品の競争力と独自性の確保に努めております。

当社グループでは、従業員の過半数が研究開発に従事しており、当社グループの開発部門では、他社製品との差別化を図るアナログ・デジタル技術をベースとしたシステムLSIや、システムLSI向けIP(設計資産)などの研究開発に注力しております。

アナログ技術では、特に高速インターフェース関連の独自技術を保有しており、高耐圧技術と当社のコア技術である高速有線通信技術を組み合わせた産業向け低遅延電力線通信技術や、産業向けEthernet PHY(ネットワーク機器が電気信号をやり取りするための部品)など、将来のネットワーク社会を支えるインフラ向けの製品開発に取り組んでおります。また、高速インターフェース技術では、デジタル制御技術との組み合わせが必須でありますが、当社ではアナログとデジタルを融合した技術を確立しており、さらに、多数準備しているIPによるデジタルセキュリティ技術なども活用し、エレクトロニクス製品のデジタル化やIoT機器向け製品の開発に注力しております。

当連結会計年度における研究開発費の総額は、1,715百万円となりました。なお、当社は単一の事業セグメントであるため、セグメント情報に関連付けた記載を行っておりません。

 

〔知的財産の保護〕

当社グループは、事業競争力の源となる特許権等の工業所有権による知的財産の保護を重視しております。当連結会計年度末における工業所有権の所有状況並びに工業所有権のうち特許権の国別の所有状況は、次のとおりであります。

 

工業所有権所有状況

 

2025年3月31日現在

 

特許権

商標権

合計

取得済み件数

519

21

540

出願中件数

74

74

合計

593

21

614

 

 

特許権地域別所有状況

 

 

 

2025年3月31日現在

 

日本

北米

アジア
(日本を除く)

EU

その他

合計

取得済み件数

276

182

39

22

519

出願中件数

52

10

3

7

2

74

合計

328

192

42

29

2

593

 

 

〔研究開発の状況〕

(1) アミューズメント事業

① ゲーム機向けゲームソフトウェア格納用LSI

ゲーム機向けの、大容量、低消費電力を実現したゲームソフトウェア格納用LSI(カスタムメモリ)を、引き続き開発し、コスト面においても優位性を確保しております。

 

② セキュリティ技術の開発

 昨今、様々な分野における機器のデジタル化が進むにつれて、セキュリティ技術が幅広く使われております。プライバシーや機密情報の保護がますます重要となりセキュリティの重要性が高まる中、セキュリティを侵害する技術も進化しており、機器の開発においても新しいセキュリティ技術や対策技術の採用が求められております。このようなセキュリティを重視する顧客の製品競争力の維持・向上に貢献するため、当社では実用的な先進のセキュリティ技術や対策技術の研究開発を進めております。

③ メモリ制御技術の開発

不揮発性メモリの大容量化とコスト低減を実現するため、平面上にメモリセルを配置する従来の平面メモリから、複数の層で構成される3次元構造の3Dメモリが主流となっております。3Dメモリはその複雑な構造により平面メモリとは異なる特性を有しておりますが、当社では100層を超える3Dメモリの活用により、平面メモリに匹敵する信頼性を技術開発において実現しております。さらに、容量増加とコスト低減を実現しつつ高い信頼性が求められる顧客のニーズに対しても、実現を目指した取り組みを進めてまいります。

(2) ASIC事業

① アナログIPプラットフォームの開発

当社では、主に産業機器向けの顧客製品の小型化とコスト削減を実現するため、各種アナログマクロの開発プラットフォームを整備しております。IO-Link Transceiver IPに加えて、センサーインターフェースに必要なADC(アナログーデジタルコンバータ)、DAC(デジタル-アナログコンバータ)、Clock Generator、LED Driverなどの各種アナログマクロを保有しており、顧客の特定の要求に応じてアナログマクロをカスタマイズできる開発プラットフォームを構築しております。引き続き低コスト化や品質向上などの顧客ニーズに対応するためプラットフォームの機能向上を図っていきます。

② アナログ分野でのモデルベース開発

大規模ASIC製品に搭載するアナログ回路の設計においては、システム全体の要件を理解し、複雑なシステムレベルの要件をあらかじめ回路設計に組み込むことが有用です。そのため、当社ではシステムレベルの検証に有効なアナログ回路のビヘイビアモデルの開発を進め、これを活用することでアナログ回路の仕様妥当性を検証できる開発フローを構築しております。これにより、システムレベルの視点でアナログ実設計のトレードオフポイントを明確にし、確実に製品開発を進めることができます。引き続き、モデルベース開発の活用による開発の効率化及び品質向上を図っていきます。

③ 大規模LSI開発環境の整備

大規模なLSI開発では複数社で100名を超える多数のメンバーが参加するため、クラウド(AWS等)上でのLSI設計環境を整備し、ロケーションフリーでの開発を実施しております。最先端のネットワーク環境を活用することで、大規模化するLSI開発に迅速に対応しております。

(3) 通信事業

① Wi-Fi HaLow製品

Morse Micro PTY.LTD.(以下、Morse Micro社という)との戦略的パートナーシップを通じて、Morse Micro社のLSI製品を活かしたWi-Fi HaLowモジュールを開発しております。Wi-Fi HaLowは、高データレートでかつ長距離通信を可能とする技術であり、従来の技術では実現困難な領域に対応いたします。この技術は900MHz帯の電波を利用するため、各国の電波法に準拠したModule製品の開発に取り組んでおります。2023年度には日本の電波法に適合したモジュール製品を開発し、量産化いたしました。さらに、2024年度は今後の成長が見込まれる北米市場向けの製品を開発し、量産化いたしました。Wi-Fi HaLowは、進化するIoT分野においてますます重要な技術となっております。当社は引き続き高い付加価値を持つ製品の開発に注力いたします。