当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針及び経営環境
当社グループは、「モノづくりを通してお客様に最高の製品とサービスを提供し社員と社会に幸福を」という経営理念の下、企業価値の向上と持続的成長を実現する体制の構築を進めております。
当社グループを取り巻く環境は、世界的なインフレや金利上昇の進行、米国を除く主要国の経済や消費の停滞、地政学的緊張の高まりなど、先行きの不透明感が継続する中、デジタル技術活用により社会が大きく変容する時代を迎えるとともに、地球温暖化防止への取り組みをより加速するため、最先端の電子回路基板を大量かつ安定的に供給することが求められています。
(2) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
このような経営環境の中、当社グループは「エレクトロニクスの進化に挑戦し発展して社会に貢献する」をパーパスとして掲げ、2027年3月期を最終年度とする中期経営計画を策定しております。
課題への対処として基板事業においては、最先端の基板の生産に対応するため新工場建設や新ラインの導入を進めております。次世代の自動車向け電子回路基板の開発・生産に対応するため、天童工場を2023年10月に竣工いたしました。以降、量産に向けたラインの立ち上げが順調に進んでおり、早期の黒字化を図ってまいります。また、新規事業として半導体パッケージ基板分野に参入するべく、石巻第2工場及びベトナム第3工場に生産ラインの新設を行いましたが、半導体市況の悪化により当初計画に対して1年程度の遅延が生じております。お客様からの認定は順調に進んでおり、市況の回復に合わせて工場の黒字化に向け尽力してまいります。これにより、当社グループは、貫通多層基板、ビルドアップ基板、半導体パッケージ基板、モジュール基板及びフレキシブル基板を製品ラインアップとして取り揃え、様々なお客様の電子回路基板需要にお応えする生産体制の強化を進めてまいります。EMS事業においては、車載関連案件の強化に加え、受託開発事業を積極的に進めグローバルのワンストップサービスを展開し、お客様の多様なご要望にお応えしてまいります。
収益面では、工場、製造工程のスマート化、自動化を推進し、生産性向上や歩留まりの改善を進め、収益性の向上を追求し、持続的競争力維持に努めております。また、環境面においては、脱炭素社会実現に貢献するため、省エネ活動太陽光発電設備の増設を行うとともに、廃棄物削減のためのリサイクルを引き続き推進してまいります。
(3) 中長期的な会社の経営戦略
当社グループは、顧客のニーズにあった製品開発を積極的に推進するとともに、社内リソースを最大限活用した、弛まぬ生産性改善を全社一体となって推進し、経営基盤をより強固なものとし成長し続ける企業として事業に邁進し、企業価値の向上に取り組んでまいります。
また、当社グループは、ESG(Environment:環境、Social:社会、Governance:企業統治)に配慮した事業活動を通じて、社会への貢献、事業を展開するコミュニティへの貢献活動などに積極的に取り組んでまいります。ESGへの取り組みについては、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」に記載のとおりであります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) ガバナンス
当社グループでは、持続可能性の観点から企業価値を向上させるため、サステナビリティ体制を強化しており、代表取締役社長 名屋佑一郎がサステナビリティ課題に関する経営判断の最終責任を有しております。
当社グループは、サステナビリティをめぐる課題対応を経営戦略の重要な要素と認識し2021年10月25日の取締役会において「サステナビリティ基本方針」を策定いたしました。それに伴いサステナビリティ推進会議を発足させ、代表取締役社長直轄の機関として担当取締役執行役員を議長としサステナビリティに関連する方針の決定や目標の進捗管理・施策の審議等を行っております。具体的には、環境負荷低減の取組としての気候変動への対応や廃棄物の削減、人的資本の強化等について関連部署と連携し施策の落とし込みを行っております。この機関により具体的達成内容の評価報告を取締役会に適宜行うとともに、取組内容については対外的開示も行ってまいります。
(2) 戦略
当社グループでは気候変動関連のリスクと機会を正しく認識するため、事業戦略に及ぼす影響を評価し、事業戦略策定に活用していくためシナリオ分析を実施しております。気候変動に伴う事業環境の変化とその影響から、重要性の高い事業リスク及び機会を認識し、中長期的に対応を進めてまいります。具体的には、リスクとしてカーボンオフセットに伴うコストの発生、化石燃料の転換によるコストの増加、省エネ性能を高めるR&Dの投資コスト負担増加、気候変動対策の遅れによる企業価値の低下や受注減少等を、機会として、環境負荷低減の新工法技術の確立、環境負荷の低い製品の開発、EV対応製品の拡大、成長市場への対応、グローバル調達網の体制整備等が想定されております。
また、当社グループにおける人財の多様性の確保を含む人財の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針は、「企業の最大の財産は人」との考え方のもと、全ての社員にとって安全・安心・清潔で、多様性を尊重する、そして社員が成長できる「働きがいのある職場づくり」を推進しており、人種・信条・宗教・国籍・障がいなどで差別することなく、多様な人財が能力を発揮できるよう努めております。
当社グループにおきましては、外国人が89.5%を占めており、海外工場人財育成のため、外国人研修制度・技能実習制度を活用した中国及びベトナム工場社員の受入を2003年度から実施しております。修了生は300名を超え、帰国後現在は現地法人社長はじめ工場幹部として活躍しております。また、2013年度からは、企業内転勤制度を活用した海外現地法人の営業職及び技術職の日本勤務を行っており、国内新工場の立ち上げにも携わっております。また、長期的にグローバルに活躍できる人財の育成のために、新卒採用においても、国内の大学を卒業した留学生の採用を行っております。従来以上に英語教育にも力を入れ、選抜型の教育を行うとともに、海外法人への派遣も積極的に行ってまいります。
また、中途採用につきましては、国内では事業規模の拡大に対応し、新商品・新技術の開発、グローバル化への適応を目的として、即戦力として活躍できる人財を業界内外から積極的に獲得しております。海外におきましても、中国・ベトナム等海外事業の拡大と効率的なマネジメントシステムの確立のため、特に幹部候補生の確保に重点を置き、中途採用を行っております。
(3) リスク管理
当社グループにおいて、全社的なリスク管理は、リスク・コンプライアンス委員会において行っておりますが、サステナビリティに関わるリスクの識別、優先的に対応すべきリスクの絞り込みについて、サステナビリティ推進会議の中でより詳細な検討を行い、共有しております。優先的に対応すべきリスクの絞り込みについては、当社グループに与える影響、当社グループの活動が環境・社会に与える影響、発生可能性を踏まえ行われます。これらリスクへの対応として、「
当社グループのサステナビリティに関わる指標と目標につきましては、次のとおりであります。
また、当社グループでは、「(2) 戦略」において記載した、人財の多様性の確保を含む人財の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は、次のとおりであります。
指標
労働者の男女の賃金の差異(男性の賃金に対する女性の賃金の割合)
(注) 「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものであり、男女の平均年齢、勤務年数、勤務形態(短時間勤務等)といった差異を勘案しておりません。
男性労働者の育児休業取得率
目標
「グループで現状比率以上」を目標として上記取組を継続してまいります。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 事業環境に関するリスク
① 主要顧客とその業界動向等に関するリスク
当社グループは、車載、スマホ・タブレット、SSD・IoTモジュール、AI家電、アミューズメント、産業機器等のセットメーカー等を主要な顧客とし、最終製品の中核機能を構成する部品として位置付けられる電子回路基板の製造及び販売を主要な事業としております。更に、半導体パッケージ基板・EMS事業を新たな柱として強化・推進し、影響の分散を図っておりますが、景気の動向・自然災害等により主要顧客又は顧客の属する業界の状況が悪化した場合、業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。当社グループが実施する顧客とその業界の動向モニタリング及び影響の分散施策等によって、当該リスクを完全に排除できる性格のものではないことから、市況の急変等の場合においては、顕在化の時期・規模に応じた影響度をもって顕在化する可能性があると認識しております。
当社グループは、コモディティデリバティブ等によるリスクの低減に努めておりますが、原油・銅・金等、素材価格の不測の高騰が原材料仕入価格に影響を与え取引先との価格に反映されなかった場合、また、仕入材料の調達に支障をきたしビジネスチャンスを逸した場合等には、業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクは、上記リスク低減施策のみをもって軽減・排除できるものではなく、実際に顕在化した場合には、一定程度の影響を蒙ることは不可避であると認識しております。
自動車の電装化の進展、電気自動車の普及、高速通信をベースとしたコネクテッドカーの登場、IoTの世界的普及などにより、様々なものがつながる時代が到来します。電子回路基板の需要は拡大していくものと考えておりますが、中国又は東南アジア等からの低価格攻勢等もあり、世界的な競合が激化していることから、技術的に差別化していく必要があります。当社グループは、配線の細線化、放熱、穴径の極小化などの要素技術をはじめ、コスト低減技術など様々な技術の開発を進めておりますが、新技術が市場ニーズと乖離して受け入れられず、価格競争に巻き込まれる事態となった場合や、歩留まりが悪化した場合等、業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、顧客ニーズ・他社の技術及び価格の動向等を緊密にモニタリングしておりますが、このようなリスクは、事業運営に内在するリスクであり、完全な排除は困難であることから、事業運営の過程で日常的に顕在化する可能性があります。顕在化した場合の影響度は、顕在化の時期、その態様により変動するため確定的な見積もりを行うことは困難であると認識しております。
当社グループは、需要動向に応じた生産能力の適正化や製品の競争力維持のために適切な設備投資を行っております。設備投資については、市場動向やセットメーカーの動向等を勘案しながら慎重に決定しておりますが、景気後退等により当社グループの設備投資が過大となった場合や、セットメーカーが戦略を変更した場合又は新規設備の稼働が想定より遅れた場合には、減価償却費の負担等により、業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。また、資産価値が下落した場合や事業の収益性が悪化した場合には、減損損失が発生し、業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。当社グループの個別の設備投資に起因する減損損失のリスク顕在化の可能性は高くないと判断しておりますが、業界市況の急変・自然災害・感染症等の外部要因を起因とするリスクについては、当社グループのリスク管理のみをもって軽減・排除できる性格のものではないことから、かかる事態が発生した場合には、顕在化の時期・規模に応じた影響を蒙る可能性があります。
当社グループの各生産拠点では、生産設備の定期的な点検や保守作業やIoT技術を活用した工場監視を実施し、ラインの稼働停止にいたる設備の故障、火災等の事故の発生を極力抑えるべく努力を行っておりますが、これらを完全に防止又は軽減できる保証はありません。これらの要因で、生産及び出荷が長期にわたって停止した場合には、業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクは当社グループ独自のリスク管理施策のみをもって軽減・回避できるものではなく、顕在化した場合には、リスク顕在の頻度、顕在リスクの規模等に応じた影響を蒙る可能性がありますが、当該リスクの態様に照らし、その影響度について確定的な見積もりを行うことは困難であると認識しております。
電子回路基板は、電子部品が実装された後に最終製品に組み込まれております。当社グループは、世界標準の品質管理基準に従って製造しており、また、セットメーカーにおいては、受入検査及び最終製品検査などを実施する等、製品の欠陥の発生を未然に防止する仕組みが確保されております。しかしながら、大規模なリコール及び製造物責任賠償等が発生する事態となった場合には、付保額でカバーできない多額のコスト負担が発生し、企業ブランドが低下するなどして、業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクの顕在化の可能性は高くないと判断しておりますが、かかるリスクは当社グループ独自のリスク管理施策のみをもって軽減・排除できるものではなく、顕在化した場合には、一定程度の影響を蒙ることは不可避であると認識しております。
(2) 自然災害等に関するリスク
当社グループは、地震・津波・洪水・暴風・豪雨等の自然災害があった場合、設備の一部又は全部の稼動が停止し、生産及び出荷が遅延する可能性があります。当社グループは、過去の経験からリスク管理体制の見直しを適時に行い、従業員の安全確保と設備への対策の強化に努めておりますが、今後もこのような災害があった場合、設備復旧のための費用及び売上高の減少などにより、業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクは当社グループ独自のリスク管理施策のみをもって軽減・回避できるものではなく、顕在化した場合には、リスク顕在の頻度・顕在リスクの規模等に応じた影響を蒙る可能性がありますが、当該リスクの態様に照らし、その影響度について確定的な見積もりを行うことは困難であると認識しております。
当社グループは、新型コロナウイルス感染症に対して、お客様・取引先及び社員の安全第一を考え、また更なる感染拡大を防ぐために、各国保健行政の指針に従った感染防止策を継続的に実施しております。しかしながら、感染の長期化、パンデミックにあたる状況の継続や新たな感染症の蔓延により、当社グループ工場の操業停止、国内・世界全体の景気悪化及び経済活動の低迷が、業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクは当社グループ独自のリスク管理施策のみをもって軽減・回避できるものではなく、顕在化した場合には、リスク顕在の頻度・顕在リスクの規模等に応じた影響を蒙る可能性がありますが、当該リスクの態様に照らし、その影響度について確定的な見積もりを行うことは困難であると認識しております。
(3) コンプライアンスに関するリスク
当社グループは、国内外の拠点で事業を展開していることから、関連する法令・規制は多岐にわたっております。日本においては、会社法・金融商品取引法・独占禁止法・税法・労働法・環境法等を遵守する必要があり、同時に海外では、それぞれの国や地域の法令・規制に従う必要があります。当社グループは、リスク・コンプライアンス委員会を設け、法令・規制遵守を監督するとともに、固有のコンプライアンス施策の立案・実施により、コンプライアンス意識を高める努力を行っております。しかしながら、このような施策によってもコンプライアンスのリスクは完全に回避できない可能性があり、関連法令・規制上の義務を実行できない場合には、業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、コンプライアンス等に起因するリスクの顕在化の可能性は高くないと認識しておりますが、その顕在化の内容・時期等を当社グループが制御できるものではないことから、その影響度を事前に見積もることは困難であると認識しております。
当社グループは、車載基板やスマートフォン向け基板等に対する需要の増加及び技術革新による新製品への対応等に備え、設備投資を積極的に行っており、2024年3月期末現在の借入金の総資産に占める割合は34.3%になっております。今後、事業戦略上必要な設備投資の新規借入や既往借入金の借り換えの実行が、金融環境の変化や取引銀行の事情により困難になった場合、資金調達に影響を及ぼす可能性があります。加えて、借入金の金利上昇が業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。金融環境や取引銀行の固有の事情については、当社グループ独自の対策によって軽減・排除が難しいことから、顕在化した場合には、その時期・規模・態様等に応じて影響を受けるものと判断しておりますが、顕在化の影響を確定的な見積もりを行うことは困難であると認識しております。
当社グループは、営業取引を通じて、売掛金・前渡金などの取引与信の形態で取引先に対する信用供与を実施しており、取引先の信用悪化や経営破綻等による損失発生の信用リスクを負っております。当社グループでは、当該リスク管理のために、取引先ごとに与信限度額を定めた社内規程等に基づき、与信先の信用状態に応じた対応を行っておりますが、債権が回収不能となった場合には、業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクについては、与信先のモニタリングとリスク分散を図っており、顕在化の頻度・影響度は通常の業績変動の範囲内にとどまり、その影響は限定的であると判断しております。予期せぬ大口与信先に対する当該リスクが突発的に顕在化する可能性は皆無ではないものの、その蓋然性は低いと認識しております。
中国・ベトナムにおける工場の操業に際して、米ドル等の外貨建資産を保有する必要が生じるため、当社グループは、米ドル・人民元・円等の為替変動の影響を受けており、当該為替変動の影響により損失が生じることがあります。当社グループでは、通貨マリーや為替ヘッジ等による一定のリスク低減に努めておりますが、不測の為替変動が発生した場合には、業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクは、為替変動に左右されるため、当社グループ独自で軽減・排除できる性格のものではないことから、顕在化の時期・影響度について確定的な予測を行うことは困難であると認識しております。
当社グループは、事業の成長に必要な技術・製品・販売網・顧客基盤・人財を有する他社との資本提携や合弁事業を実施しております。しかしながら、市場環境や競争環境の著しい変化があった場合には、事業が計画通りに展開できず、当初想定した効果が得られない可能性又は追加的費用・減損損失が発生する可能性があります。そのような場合、予想通りの収益があがらず、業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。かかるリスクは当社グループ独自のリスク管理施策のみをもって軽減・排除できるものではなく、実際に顕在化した場合には、一定程度の影響を蒙ることは不可避であると認識しております。
当社グループは、生産能力の拡大と生産コストの引き下げを目的として、中国の香港・広州・武漢及びベトナムに現地法人を設立し、生産販売活動を行っております。これらの国においては、伝染病等の衛生問題の発生、環境規制・各種法令及び税制の変更もしくは導入、電力・水及び輸送等のインフラ障害発生、政情不安及び治安の問題発生、反日デモ及び労働争議の発生、資産の収用、戦争・紛争による設備の破壊及び資金移動に対する制限(送金制限)等の困難に直面する可能性があります。これらの政治又は法環境の変化・経済状況の変化・環境規制の変化など、予期せぬ事象が発生した場合、生産設備の管理やその他の事業の遂行に問題が生じることや、環境保全やその他の規制の遵守に伴う多額の債務・義務が発生することにより、業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクは当社グループ独自のリスク管理施策のみをもって軽減・回避できるものではなく、顕在化した場合には、リスク顕在の頻度・顕在リスクの規模等に応じた影響を蒙る可能性がありますが、当該リスクの態様に照らし、その影響度について確定的な見積もりを行うことは困難であると認識しております。
当社グループは、事業活動において顧客情報等を入手することがあり、技術・営業・個人及び経営全般に関する機密情報を保有しており、サイバー攻撃及び人為的ミス等に起因した不正アクセス・改ざん・破壊・漏洩及び滅失等を防ぐために管理体制を構築して、合理的な技術的対策を実施するなどの適切な安全措置を講じるとともに、サイバーセキュリティリスクに備えた訓練を実施しております。しかしながら、漏洩・滅失等が起きた場合には、業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、情報の機密保持管理体制の適切な運用に努めており、かかるリスクが顕在化する蓋然性は低いと認識しております。
当社グループにとって知的財産は、重要な経営資源であると認識しており、知的財産の保護を目的として、独自に開発した技術等について、特許等の知的財産権取得のための出願を行っております。しかしながら、出願案件全てについて権利が認められるとは限らず、また第三者からの異議申し立て等により取得した権利が無効になる可能性があります。なお、取得した知的財産については、主管部門において管理を行い、外部からの侵害にも注意を払っておりますが、不正に使用される等の事態が起こった場合には、本来得られるべき利益が失われる可能性があります。一方、当社グループが第三者の知的財産権を侵害したとして訴訟を提起された場合には、製造差し止めによる顧客への補償や損害賠償金の発生、また製造を開始するための特許使用に関わるライセンス料等の支払いが、業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクが突発的に顕在化する可能性は皆無ではないものの、その蓋然性は極めて低いと認識しております。
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
当連結会計年度における電子部品業界は、世界的にインフレや金利上昇が進行し、米国を除く主要国の経済や消費が伸び悩む中、地政学的緊張の高まりなどもあり、先行きの不透明感は払拭されるに至りませんでした。一方、半導体不足の解消による自動車生産台数の増加やスマートフォン需要の回復なども見られました。
このような環境の下、当社グループでは、車載向け基板は自動車需要の回復を受け、売上・利益ともに好調に推移しました。スマートフォン向け基板は、中華系スマートフォン向け販売が減少し減収となりましたが、ハイエンドモデル向け基板の拡販に取り組んだ結果増益となりました。EMS事業は受託開発案件が堅調に推移し売上・利益とも大幅に増加いたしました。生産面では受注が拡大したことから工場稼働率が向上するとともに、コスト削減効果、為替の影響等が相まって収益が改善基調となりました。
以上の結果、当連結会計年度の経営成績は、売上高179,458百万円(前期比7.3%増)となり、営業利益11,660百万円(前期比21.8%増)、経常利益14,267百万円(前期比27.2%増)、親会社株主に帰属する当期純利益11,310百万円(前期比27.8%増)となりました。
また、財政状態につきましては、当連結会計年度末の資産合計は229,960百万円となり、前連結会計年度末に比べ27,565百万円増加しました。当連結会計年度末の負債合計は124,501百万円となり、前連結会計年度末に比べ6,581百万円増加しました。当連結会計年度末の純資産合計は105,458百万円となり、前連結会計年度末に比べ20,983百万円増加しました。
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、21,363百万円となり、前連結会計年度に比べ4,028百万円増加しました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は、23,357百万円で、前連結会計年度に比べ7,642百万円増加しました。増加の主な内訳は、税金等調整前当期純利益13,873百万円、減価償却費11,215百万円、仕入債務の増加2,261百万円であり、減少の主な内訳は、為替差益2,066百万円、法人税等の支払額2,544百万円であります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は、21,586百万円で、前連結会計年度に比べ7,456百万円支出が減少しました。支出の主な内訳は、有形固定資産の取得による支出21,447百万円、投資有価証券の取得による支出1,058百万円であります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果得られた資金は、681百万円で、前連結会計年度に比べ19,280百万円減少しました。収入の主な内訳は、短期借入金の純増額1,551百万円、長期借入れによる収入9,100百万円であり、支出の主な内訳は、長期借入金の返済による支出7,991百万円、配当金の支払額1,730百万円であります。
なお、当社グループのキャッシュ・フロー指標のトレンドは、以下のとおりであります。
自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い
※ 各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により算出しております。
※ 株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しており、普通株式を対象としております。
※ 営業キャッシュ・フローは、連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。また、利払いにつきましては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。
当社グループの事業は、電子回路基板等の設計、製造販売及びこれらの付随業務の電子関連事業を主としております。
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 生産実績は、販売価格によっております。
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 「その他」区分は、報告セグメントに含まれない事業セグメントであり、売電事業であります。
2 主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合
3 販売高には、当該顧客と同一の企業集団に属する顧客に対する販売高を含めております。
4 主な相手先別の販売実績のうち、当該販売実績の総販売実績に対する割合が10%未満の相手先につきましては記載を省略しております。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(売上高)
当社グループが属する電子部品業界においては、半導体不足の解消による自動車生産台数の増加やスマートフォン需要の回復なども見られました。車載向け基板の受注は自動車需要の回復を受け、また、為替相場が円安に進行したことにより車載向け基板の販売は好調に推移したことなどから、当連結会計年度の売上高は、前連結会計年度に比べ12,181百万円増加し、179,458百万円(前期比7.3%増)となりました。
(売上総利益)
売上原価は、原材料費、労務費及び減価償却費等が増加したものの、生産面では受注拡大に伴い工場稼働率が向上するとともに、コスト削減等の原価低減を推進したことから7,649百万円増加し、148,910百万円(前期比5.4%増)となり、当連結会計年度の売上総利益は、前連結会計年度に比べ4,532百万円増加し、30,548百万円(前期比17.4%増)となりました。また、売上総利益率は前連結会計年度に比べ1.4ポイント上昇し、17.0%となりました。
(営業利益)
販売費及び一般管理費は、研究開発費の増加のほか、人件費、減価償却費及びのれん償却額の増加等により2,447百万円増加し、18,887百万円(前期比14.9%増)となり、当連結会計年度の営業利益は、前連結会計年度に比べ2,084百万円増加し、11,660百万円(前期比21.8%増)となりました。また、営業利益率は前連結会計年度に比べ0.8ポイント上昇し、6.5%となりました。
(経常利益)
営業外収益は、為替差益及び受取利息の増加、受取補償金の減少等により649百万円増加し、3,917百万円となりました。営業外費用は、株式交付費の減少等により320百万円減少し、1,310百万円となりました。その結果、当連結会計年度の経常利益は、前連結会計年度に比べ3,054百万円増加し、14,267百万円(前期比27.2%増)となりました。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
当連結会計年度において、特別利益は、国庫補助金400百万円を計上したことなどにより、542百万円となりました。特別損失は、固定資産除売却損344百万円、固定資産圧縮損394百万円、投資有価証券評価損179百万円を計上したことなどにより、936百万円となりました。法人税、住民税及び事業税と法人税等調整額の合計額は570百万円増加し2,458百万円、非支配株主に帰属する当期純利益は105百万円となりました。以上の結果、親会社株主に帰属する当期純利益は、11,310百万円(前期比27.8%増)となりました。
(資産)
当連結会計年度末の資産は、229,960百万円となり、前連結会計年度末に比べ27,565百万円増加しました。流動資産において、現金及び預金が4,018百万円増加、売掛金が1,654百万円増加、棚卸資産が2,963百万円増加、流動資産のその他が1,566百万円増加、固定資産において、有形固定資産が16,528百万円増加が主な要因であります。
(負債)
当連結会計年度末の負債は、124,501百万円となり、前連結会計年度末に比べ6,581百万円増加しました。流動負債において、支払手形及び買掛金が4,237百万円増加、短期借入金が2,549百万円増加、1年内返済予定の長期借入金が2,324百万円増加、流動負債のその他が1,184百万円減少、固定負債において、長期借入金が1,216百万円減少が主な要因であります。
(純資産)
当連結会計年度末の純資産は、105,458百万円となり、前連結会計年度末に比べ20,983百万円増加しました。利益剰余金が9,578百万円増加、為替換算調整勘定が11,041百万円増加が主な要因であります。
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因については、「3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
当社グループは、資本を効率的に活用して収益性を高める観点から、売上高営業利益率、自己資本利益率(ROE)を重要な指標と位置付けております。当連結会計年度における売上高営業利益率は6.5%(前期比0.8ポイント増)、自己資本利益率(ROE)は12.9%(前期比0.1ポイント減)となりました。引き続きこれらの指標について、改善できるよう取り組んでまいります。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
資本の財源及び資金の流動性
(資金需要)
当社グループの運転資金需要の主なものは、製品製造のための原材料等の購入のほか、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。設備資金需要の主なものは、生産能力の適正化や製品の競争力維持のための生産設備等の取得であります。
(財務政策)
当社グループの運転資金につきましては、自己資金又は金融機関からの借入により資金調達を行うこととしております。国内外の生産設備取得等の投融資資金及び設備資金につきましては、金融機関からの長期の借入により資金調達を行う方針であります。調達時期、条件については、最も有利なものを選択するべく検討することとしております。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。経営者は、この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
① 提出会社は、取引銀行11行との間でコミット型シンジケートローン契約を締結しております。
② 提出会社は、取引銀行4行との間でコミットメントライン契約を締結しております。
当社グループでは、電子回路基板の高速伝送化、高放熱化、大電流化、更なる小型化、高密度化及び高機能化など多様化する市場ニーズに応えるため、幅広い分野において要素技術開発、プロセス開発を行い、新商品の提案や事業化に向けた研究開発活動を積極的に進めております。
当連結会計年度の研究開発活動としては、自動車の自動運転など次世代車載基板の要求に向けた高精度ビルドアップ基板、高速伝送化に対応する5G通信機器向け高周波基板・ミリ波レーダ基板、高放熱化、大電流化に対応するメタルベース基板・銅インレイ基板・メガスルホール基板・厚銅基板、高機能化、小型化に対応する部品内蔵基板・フレキシブル基板・M-VIA Flex基板や、AI関連として高速伝送特性対応高多層基板に対応するなどの研究開発を推進しております。また、新たな事業として立ち上げられたモジュール及びパッケージ製品については、極薄コアレス構造やMSAP、SAP工法によるCSP基板・FCBGA基板をターゲットとした商品開発を推進しております。
これらの市場への提案につきましては、展示会への出展及び以下の対外発表を行っております。
2023年5月 電子機器2023トータルソリューション展 2023年度版プリント配線板技術ロードマップセミナー
「多層プリント配線板ロードマップ」
2023年7月 第55回よこはま高度実装技術コンソーシアム(YJC)実装技術セミナー
「プリント配線板の技術動向と高速伝送に向けた取り組み」
2023年11月 エレクトロニクス実装学会 学会誌11月号
「耐熱性を有するSn-Sb系高融点はんだ部品内蔵基板の実用化検討」
2024年1月 NEPCON JAPAN 2024 第25回プリント配線板EXPO 専門セミナー
「車載プリント配線板の高密度、高放熱、高速伝送に向けた基板開発の取り組み」
2024年3月 エレクトロニクス実装学会 第38回春季講演大会 論文発表
「はんだ部品内蔵基板による基板小型化の設計検討と電源インピーダンス評価」
なお、当連結会計年度における研究開発費の総額は、グループ全体で