第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経営方針及び経営環境

当社グループは、「モノづくりを通してお客様に最高の製品とサービスを提供し社員と社会に幸福を」という経営理念の下、企業価値の向上と持続的成長を実現する体制の構築を進めております。

当社グループを取り巻く環境は、世界経済の動向、地政学リスクの高まり、関税導入等によるサプライチェーンの見直し、生産財・エネルギー価格の高騰等、不確実性と不透明感が増す中、エレクトロニクスの進化が社会に大きな変化をもたらしています。こうした環境の下、地球温暖化防止への取組やデジタル技術活用を加速するため、最先端の電子回路基板を大量かつ安定的に供給することが期待されております。

(2) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

このような経営環境の中、当社グループは「エレクトロニクスの進化に挑戦し発展して社会に貢献する」をパーパスとして掲げ、2027年3月期を最終年度とする中期経営計画を策定しております。

課題への対処として基板事業においては貫通多層基板、放熱基板、ビルドアップ基板、半導体パッケージ基板、モジュール基板及びフレキシブル基板を製品ラインアップとして取り揃え、様々なお客様の電子回路基板需要にお応えする生産体制の強化を進めてまいります。新規事業の半導体パッケージ基板を生産する石巻第2工場及びベトナム第3工場は、半導体市況の悪化で当初計画に対して遅延が生じたものの、認定・試作が順調に進んでおり、市況の回復に合わせた工場黒字化に取り組んでまいります。車載向け基板の強化を目的とした天童工場は、顧客認定が進んでおり量産を開始しております。また、更なる需要拡大に合わせベトナム第4工場及びホアビン工場立ち上げに尽力してまいります。電子機器事業においては、車載関連案件に加え、受託開発事業を強化しグローバルのワンストップサービスを展開することで、お客様の様々なご要望にお応えしております。

損益面では、工場、製造工程のスマート化、自動化を推進し、生産性向上や歩留まりの改善を進め、収益性の向上を追求し、持続的競争力維持に努めております。また、環境面においては、脱炭素社会実現に貢献するため、省エネ活動や太陽光発電設備増設を行うとともに、廃棄物削減のためのリサイクルを引き続き推進してまいります。

(3) 中長期的な会社の経営戦略

当社グループは、市場の変化に生産体制を機動的かつ柔軟に対応させつつ、顧客のニーズにあった製品開発を積極的に推進するとともに、社内リソースを最大限活用した、弛まぬ生産性改善を全社一体となって推進し、経営基盤をより強固なものとし、成長し続ける企業として事業に邁進してまいります。

また、当社グループは、ESG(Environment:環境、Social:社会、Governance:企業統治)に配慮した事業活動を通じて、社会への貢献、事業を展開するコミュニティへの貢献活動などに積極的に取り組んでまいります。ESGへの取組については、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」に記載のとおりであります。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) ガバナンス

当社グループでは、持続可能性の観点から企業価値を向上させるため、サステナビリティ体制を強化しており、代表取締役社長 名屋佑一郎がサステナビリティ課題に関する経営判断の最終責任を有しております。

当社グループは、サステナビリティをめぐる課題対応を経営戦略の重要な要素と認識し2021年10月25日の取締役会において「サステナビリティ基本方針」を策定いたしました。それに伴いサステナビリティ推進会議を発足させ、代表取締役社長直轄の機関として担当取締役執行役員を議長としサステナビリティに関連する方針の決定や目標の進捗管理・施策の審議等を行っております。具体的には、環境負荷低減の取組としての気候変動への対応や廃棄物の削減、人的資本の強化等について関連部署と連携し施策の落とし込みを行っております。この機関により具体的達成内容の評価報告を取締役会に適宜行うとともに、取組内容については対外的開示も行ってまいります。

(2) リスク管理

当社グループにおいて、全社的なリスク管理は、リスク・コンプライアンス委員会において行っておりますが、サステナビリティに関わるリスクの識別、優先的に対応すべきリスクの絞り込みについて、サステナビリティ推進会議の中でより詳細な検討を行い、共有しております。優先的に対応すべきリスクの絞り込みについては、当社グループに与える影響、当社グループの活動が環境・社会に与える影響、発生可能性を踏まえ行われます。これらリスクへの対応として、「(4) 指標及び目標」に記載しております中期目標を設定し、達成状況は取締役会へ報告、監督されるとともに、ホームページにおいて開示しております。

 

(3) 戦略

<気候変動>

気候変動関連のリスクと機会を正しく認識するため、事業戦略に及ぼす影響を評価し、事業戦略策定に活用していくためシナリオ分析を実施し、気候変動に伴う事業環境の変化とその影響から、重要性の高い事業リスク及び機会を認識し、中長期的に対応を進めてまいります。具体的には、カーボンオフセットに伴うコストの発生、化石燃料の転換によるコストの増加、省エネ性能を高めるR&D投資の増加、気候変動対策の遅れによる企業価値の低下や受注減少等のリスクを機会としてとらえ、環境負荷低減の新工法技術の確立、環境負荷の低い製品の開発、EV対応製品の拡大、成長市場への対応、グローバル調達網の体制整備を行っております

◆リスクと機会の洗い出し

脱炭素社会へ向かう1.5℃シナリオでは主に移行リスクが、また温暖化が進み気温が上昇する4℃シナリオでは物理的リスクがより問われています。しかし2024年の世界平均気温は産業革命前と比べて初めて1.5℃を上回る見通しで世界気象機関(WMO)は2024年から2028年度までの5年間で1.1℃から1.5℃高くなると予想しており、5年以内に1.5℃以上高くなる確率は80%と発表しています。これは1.5℃シナリオのような脱炭素社会に向けて進行したとしても中期的には4℃シナリオレベルでの物理的リスクが発生する可能性があると考えられます。移行リスク・機会の分析においてはIEA NZEシナリオ、物理的リスク・機会の分析においてはRCP8.5シナリオを使用し、1.5℃シナリオレベルで脱炭素社会を目指すビジネス環境の中4℃シナリオレベルでの物理的リスクに備えた対応も検討しております。

 

 

低炭素経済への「移行」に関するリスクと機会

 

種類
側面

リスク

事業への影響

顕在化までの期間

評価

機会及び対応

政策・法規制

1)CO2オフセットに伴うコスト発生リスク

中長期

1)省エネ対策、廃棄物の削減を進める。

2)自家発電事業により再生可能エネルギーをできる限り調達しコストを低減する。

3)自家発電にて不足分はオフサイトPPAやCO2フリー電力の購入等によりCO2を目標値まで削減する。

※CO2削減を計画的に推進する。

4)各国の法規制・施策のモニタリング

2)廃棄物への規制が各国で導入され対応コストが発生

短期

3)化石燃料の転換によるコストの増加

中長期

4)海外割合が高いため、社会主義国による急な法規制の増加

中長期

技術

1)省エネ対策の必要性が高まり、省エネ性能の競争が激化し、結果としてR&D等の投資コストの負担増や既存製品の低炭素技術への入れ替えが発生

中長期

1)省エネ対策、省エネ製品開発が高まり低炭素技術の需要が増加しビジネス機会が拡大(環境負荷低減の新工法技術の確立)

2)歩留まり向上によるロスの低減を図る。

2)脱炭素、低排出技術・製品等に関わる知見、技術、技術者、製造設備等の獲得競争の激化

短期

市場

1)自動車及びあらゆる製品の電装化・デジタル化の進行による、半導体使用基板の供給量不足

中長期

1)CO2削減を計画的に推進する。

2)環境負荷の低い製品の開発と提供

3)EV対応製品の拡大及び成長市場への対応

4)データ通信量増大に伴う通信高速化によるビジネス機会の拡大及び半導体PKGの需要増大への対応

5)グローバル調達網の体制の整備

6)積載率向上による物流エネルギーの低減

2)異業種メーカーの市場参入による既存取引メーカーの受注減

中長期

3)環境負荷の高い資材の価格高騰によるコストの増加

中期

4)環境対応力の不足による受注減(需要減)

短期

評判・レピュテーション

1)低炭素・環境配慮型の事業の投資への要件化

中長期

1)CO2削減計画の進捗状況を適切に開示する。

2)気候変動対策の劣勢による企業価値の低下、受注減少及び経営・人財採用への影響の深刻化

中長期

気候変動による「物理的」リスクと機会

 

種類
側面

リスク

事業への影響

顕在化までの期間

評価

機会及び対応

急性

1)災害の激甚化(風水害の増加)に伴う、工場稼働停止・資産の損害及び従業員の通勤困難等のリスクの増加

中長期

1)災害の激甚化に対するBCPを強化し事業継続性(サプライチェーンの維持、エネルギーの安定供給等)の安定化を図る。

2)省エネ計画の推進

3)防災システム関連事業の強化

2)風水害の増加に伴うサプライチェーンの寸断

中長期

慢性

1)温度上昇による、エネルギーコスト及び資材管理コストの上昇

中長期

 

(注)  「顕在化までの期間」は、短期(3年未満)、中期(3年以上~6年未満)、長期(6年以上)の3段階で記載しております。「評価」は、当社の戦略的・財務的な影響度を発生頻度(3段階)・重要度(5段階)の2軸で評価し数値化した結果を5段階に分類し、5段階のうち上位のクラス4とクラス5を重大なリスク・機会として認識し、「大」と表示しております。

 

◆2030年度に想定される財務影響

リスク

財務影響
(上限額)

算出方法

対策

炭素税の
導入

65億円

炭素価格の影響を評価するためIEA WEO2023を基に日本、中国、ベトナムそれぞれで想定されるNZEシナリオでの価格にて算定しました。CO2排出量(Scope1,2)は成り行きでの2030年度想定値を使用しています。(当社2024年度下期基準1ドル=145円にて換算)

生産性改善や高効率機器への更新等の省エネ施策を推進しエネルギーの使用量を削減するとともに再生可能エネルギーの導入を促進し、炭素税の対策となるCO2の削減を推進していきます。

洪水・台風
被害

27億円

国内外生産9拠点について、公開ハザード情報やこれまでの地域の情報等に基づき評価を実施しました。評価の結果6拠点は非常に低い確率ながら操業に影響が出る可能性があり稼働停止による収益への影響を算定しています。

拠点ごとにリスクに対して床の底上げや設備の設置場所の変更等予防措置は既に行っており、さらに財務的な影響が発生するような事態に対しては事業継続計画(BCP)を整えてスムーズな代替生産体制の構築を推進し影響額を最小化するような対策をしています。

 

 

<人的資本>

当社グループにおける人財の多様性の確保を含む人財の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針は、「企業の最大の財産は人」との考え方のもと、全ての社員にとって安全・安心・清潔で、多様性を尊重する、そして社員が成長できる「働きがいのある職場づくり」を推進しており、人種・信条・宗教・国籍・障がいなどで差別することなく、多様な人財が能力を発揮できるよう、努めております。

当社グループにおきましては、外国人が88.4%を占めており、海外工場人財育成のため、外国人研修制度・技能実習制度を活用した中国及びベトナム工場社員の受入を2003年度から実施しております。修了生は300名を超え、帰国後現在は現地法人社長はじめ工場幹部として活躍しております。2013年度からは、企業内転勤制度を活用した海外現地法人の営業職及び技術職の日本勤務を行っており、国内新工場の立ち上げにも携わっております。また、長期的にグローバルに活躍できる人財の育成のために、新卒採用における国内の大学を卒業した留学生の採用や対象者を選抜した英語教育の実施、海外法人への積極的な派遣を行っております。グローバルでの人事機能の強化として、本社と海外現地法人の人事がより一層連携し、制度面での整備や人財の把握を進め、グローバルでの人財活用の最大化を行ってまいります。

また、中途採用につきましては、国内では事業規模の拡大に対応し、新商品・新技術の開発、グローバル化への適応を目的として、即戦力として活躍できる人財を業界内外から積極的に獲得しております。海外におきましても、中国・ベトナム等海外事業の拡大と効率的なマネジメントシステムの確立のため、特に幹部候補生の確保に重点を置き、中途採用を行っております。

多様な人財を育成・登用するために、女性社員を含め管理職候補の社員を対象とした今後のキャリアプランに関する面談の実施を予定しております。加えて、管理職候補者に対する教育に力を入れるとともに、教育を受けた候補者に対する登用試験を公正に行い、管理職登用における多様性の確保に努めてまいります。

加えて人財定着のための環境づくりとしては、人財育成面では、階層別教育に加え、選抜型の教育や自己啓発学習の支援を行い、社員の長期的な成長を促しております。

報酬・福利厚生面では、株式給付制度により会社の中長期的な成長に貢献した社員に報いるとともに、奨学金返還支援制度により、若手社員の負担を軽減することで、定着を図っております。

社員の健康づくり面では、健康経営の一環としてウォーキングやエクササイズ等に取り組み、会社としては経済産業省が推進する「健康経営優良法人2025」の認定を受けております。

 

(4) 指標及び目標

当社グループのサステナビリティに関わる指標と目標につきましては、次のとおりであります。

<気候変動>

環境への
取組

取組内容・目標

 

基準年

2024年度

目標値

地球
温暖化
防止

<全社目標>

・2050年度カーボンニュートラル

・省エネの推進

(原単位:電力▲2.5%/年、燃料▲2.0%/年)

・自家消費型太陽光発電の導入

 

<国内>

・2030年度国内CO2排出量原単位50%削減

(2021年度比)

Scope1

総量

41,171t-CO2

△13%

原単位

0.27
(/百万円)

△36%

2030年度
国内原単位
50%削減

Scope2

総量

467,942t-CO2

△16%

原単位

3.09
(/百万円)

△38%

2030年度
国内原単位
50%削減

水資源の
活用

・再利用の推進

2030年度水使用原単位10%削減

(2021年度比)

取水量

総量

11,065
百万リットル

△3%

原単位

0.073
(/百万円)

△29%

2030年度
原単位
10%削減

 

 

<人的資本>

人的資本への取組

 

2023年度

2024年度

  目標値 ※

・経営戦略に沿った

 人的資本施策の強化

 

 

・人財定着のための

 環境づくり

女性比率

単体

26.3%

25.4%

2026年度までに2023年度の実績以上を目標とする。

連結

46.0%

44.6%

 

女性管理職
比率

単体

1.0%

1.2%

2026年度までに2023年度の実績の2倍以上を目標とする。

連結

15.5%

16.5%

 

女性役員比率

単体

14.3%

16.7%

2026年度までに2023年度の実績の2倍以上を目標とする。

連結

10.5%

11.8%

 

外国籍比率

単体

4.2%

4.9%

2026年度までに2023年度の実績以上を目標とする。

連結

89.5%

88.4%

 

外国籍管理職
比率

単体

3.6%

3.9%

具体的な目標値は定めないものの、新卒・中途ともに国籍を限定せず人財の採用を行っており、長期的な上昇を見込む。

連結

49.9%

50.8%

 

中途採用比率

単体

69.1%

67.7%

具体的な目標値は定めないものの、経営目標の達成のために必要な人財を、新卒と中途を組み合わせて今後も採用していく。

連結

95.0%

95.5%

 

管理職中途採用
比率

単体

74.6%

76.6%

具体的な目標値は定めないものの、経営目標の達成のために必要な人財を、新卒と中途を組み合わせて今後も採用していく。

連結

85.0%

83.3%

 

 

※ 連結に関しては各国法人の状況が異なるため、一律の目標値を定めていない。

 

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
  なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 事業環境に関するリスク

① 主要顧客とその業界動向等に関するリスク

当社グループは、車載、スマートフォン、情報通信・モジュール基板、アミューズメント、スマート家電、産業機器等のセットメーカー等を主要な顧客とし、最終製品の中核機能を構成する部品として位置付けられる電子回路基板の製造及び販売を主要な事業としております。更に、半導体パッケージ基板電子機器事業を新たな柱として強化・推進し、影響の分散を図っておりますが、景気の動向・自然災害等により主要顧客又は顧客の属する業界の状況が悪化した場合、業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。当社グループが実施する顧客とその業界の動向モニタリング及び影響の分散施策等によって、当該リスクを完全に排除できる性格のものではないことから、市況の急変等の場合においては、顕在化の時期・規模に応じた影響度をもって顕在化する可能性があると認識しております。

② 原材料の市況変動に関するリスク

当社グループは、コモディティデリバティブ等によるリスクの低減に努めておりますが、原油・銅・金等、素材価格の不測の高騰が原材料仕入価格に影響を与え取引先との価格に反映されなかった場合、また、仕入材料の調達に支障をきたしビジネスチャンスを逸した場合等には、業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクは、上記リスク低減施策のみをもって軽減・排除できるものではなく、実際に顕在化した場合には、一定程度の影響を蒙ることは不可避であると認識しております。

③ 技術開発及び価格競争に関するリスク

自動車の電装化の進展、電気自動車の普及、高速通信をベースとしたコネクテッドカーの登場、IoTの世界的普及などにより、様々なものがつながる時代が到来します。電子回路基板の需要は拡大していくものと考えておりますが、中国又は東南アジア等からの低価格攻勢等もあり、世界的な競合が激化していることから、技術的に差別化していく必要があります。当社グループは、配線の細線化、放熱、穴径の極小化などの要素技術をはじめ、コスト低減技術など様々な技術の開発を進めておりますが、新技術が市場ニーズと乖離して受け入れられず、価格競争に巻き込まれる事態となった場合や、歩留まりが悪化した場合等、業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、顧客ニーズ・他社の技術及び価格の動向等を緊密にモニタリングしておりますが、このようなリスクは、事業運営に内在するリスクであり、完全な排除は困難であることから、事業運営の過程で日常的に顕在化する可能性があります。顕在化した場合の影響度は、顕在化の時期、その態様により変動するため確定的な見積りを行うことは困難であると認識しております。

④ 設備投資の時期等に関するリスク

当社グループは、需要動向に応じた生産能力の適正化や製品の競争力維持のために適切な設備投資を行っております。設備投資については、市場動向やセットメーカーの動向等を勘案しながら慎重に決定しておりますが、景気後退等により当社グループの設備投資が過大となった場合や、セットメーカーが戦略を変更した場合又は新規設備の稼働が想定より遅れた場合には、減価償却費の負担等により、業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。また、資産価値が下落した場合や事業の収益性が悪化した場合には、減損損失が発生し、業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。当社グループの個別の設備投資に起因する減損損失のリスク顕在化の可能性は高くないと判断しておりますが、業界市況の急変・自然災害・感染症等の外部要因を起因とするリスクについては、当社グループのリスク管理のみをもって軽減・排除できる性格のものではないことから、かかる事態が発生した場合には、顕在化の時期・規模に応じた影響を蒙る可能性があります。

⑤ 故障及び事故に関するリスク

当社グループの各生産拠点では、生産設備の定期的な点検や保守作業やIoT技術を活用した工場監視を実施し、ラインの稼働停止にいたる設備の故障、火災等の事故の発生を極力抑えるべく努力を行っておりますが、これらを完全に防止又は軽減できる保証はありません。これらの要因で、生産及び出荷が長期にわたって停止した場合には、業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクは当社グループ独自のリスク管理施策のみをもって軽減・回避できるものではなく、顕在化した場合には、リスク顕在の頻度、顕在リスクの規模等に応じた影響を蒙る可能性がありますが、当該リスクの態様に照らし、その影響度について確定的な見積りを行うことは困難であると認識しております。

⑥ 製品の欠陥に関するリスク

電子回路基板は、電子部品が実装された後に最終製品に組み込まれております。当社グループは、世界標準の品質管理基準に従って製造しており、また、セットメーカーにおいては、受入検査及び最終製品検査などを実施する等、製品の欠陥の発生を未然に防止する仕組みが確保されております。しかしながら、大規模なリコール及び製造物責任賠償等が発生する事態となった場合には、付保額でカバーできない多額のコスト負担が発生し、企業ブランドが低下するなどして、業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクの顕在化の可能性は高くないと判断しておりますが、かかるリスクは当社グループ独自のリスク管理施策のみをもって軽減・排除できるものではなく、顕在化した場合には、一定程度の影響を蒙ることは不可避であると認識しております。

(2) 自然災害等に関するリスク

① 自然災害に関するリスク

当社グループは、地震・津波・洪水・暴風・豪雨等の自然災害があった場合、設備の一部又は全部の稼動が停止し、生産及び出荷が遅延する可能性があります。当社グループは、過去の経験からリスク管理体制の見直しを適時に行い、従業員の安全確保と設備への対策の強化に努めておりますが、今後もこのような災害があった場合、設備復旧のための費用及び売上高の減少などにより、業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクは当社グループ独自のリスク管理施策のみをもって軽減・回避できるものではなく、顕在化した場合には、リスク顕在の頻度・顕在リスクの規模等に応じた影響を蒙る可能性がありますが、当該リスクの態様に照らし、その影響度について確定的な見積りを行うことは困難であると認識しております。

② 感染症に関するリスク

当社グループは、感染症に対して、お客様・取引先及び社員の安全第一を考え、また更なる感染拡大を防ぐために、各国保健行政の指針に従った感染防止策を継続的に実施しております。しかしながら、感染の長期化、パンデミックにあたる状況の継続や新たな感染症の蔓延により、当社グループ工場の操業停止、国内・世界全体の景気悪化及び経済活動の低迷が、業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクは当社グループ独自のリスク管理施策のみをもって軽減・回避できるものではなく、顕在化した場合には、リスク顕在の頻度・顕在リスクの規模等に応じた影響を蒙る可能性がありますが、当該リスクの態様に照らし、その影響度について確定的な見積りを行うことは困難であると認識しております。

(3) コンプライアンスに関するリスク

当社グループは、国内外の拠点で事業を展開していることから、関連する法令・規制は多岐にわたっております。日本においては、会社法・金融商品取引法・独占禁止法・税法・労働法・環境法等を遵守する必要があり、同時に海外では、それぞれの国や地域の法令・規制に従う必要があります。当社グループは、リスク・コンプライアンス委員会を設け、法令・規制遵守を監督するとともに、固有のコンプライアンス施策の立案・実施により、コンプライアンス意識を高める努力を行っております。しかしながら、このような施策によってもコンプライアンスのリスクは完全に回避できない可能性があり、関連法令・規制上の義務を実行できない場合には、業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、コンプライアンス等に起因するリスクの顕在化の可能性は高くないと認識しておりますが、その顕在化の内容・時期等を当社グループが制御できるものではないことから、その影響度を事前に見積もることは困難であると認識しております。

(4) 財務等に関するリスク

① 財務リスク

当社グループは、車載基板やスマートフォン向け基板等に対する需要の増加及び技術革新による新製品への対応等に備え、設備投資を積極的に行っており、2025年3月期末現在の借入金の総資産に占める割合は33.8%になっております。今後、事業戦略上必要な設備投資の新規借入や既往借入金の借り換えの実行が、金融環境の変化や取引銀行の事情により困難になった場合、資金調達に影響を及ぼす可能性があります。加えて、借入金の金利上昇が業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。金融環境や取引銀行の固有の事情については、当社グループ独自の対策によって軽減・排除が難しいことから、顕在化した場合には、その時期・規模・態様等に応じて影響を受けるものと判断しておりますが、顕在化の影響を確定的な見積りを行うことは困難であると認識しております。

② 信用リスク

当社グループは、営業取引を通じて、売掛金・前渡金などの取引与信の形態で取引先に対する信用供与を実施しており、取引先の信用悪化や経営破綻等による損失発生の信用リスクを負っております。当社グループでは、当該リスク管理のために、取引先ごとに与信限度額を定めた社内規程等に基づき、与信先の信用状態に応じた対応を行っておりますが、債権が回収不能となった場合には、業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクについては、与信先のモニタリングとリスク分散を図っており、顕在化の頻度・影響度は通常の業績変動の範囲内にとどまり、その影響は限定的であると判断しております。予期せぬ大口与信先に対する当該リスクが突発的に顕在化する可能性は皆無ではないものの、その蓋然性は低いと認識しております。

③ 為替変動に関するリスク

中国・ベトナムにおける工場の操業に際して、米ドル等の外貨建資産を保有する必要が生じるため、当社グループは、米ドル・人民元・円等の為替変動の影響を受けており、当該為替変動の影響により損失が生じることがあります。当社グループでは、通貨マリーや為替ヘッジ等による一定のリスク低減に努めておりますが、不測の為替変動が発生した場合には、業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクは、為替変動に左右されるため、当社グループ独自で軽減・排除できる性格のものではないことから、顕在化の時期・影響度について確定的な予測を行うことは困難であると認識しております。

④ M&A・合弁・提携に関するリスク

当社グループは、事業の成長に必要な技術・製品・販売網・顧客基盤・人財を有する他社との資本提携や合弁事業を実施しております。しかしながら、市場環境や競争環境の著しい変化があった場合には、事業が計画通りに展開できず、当初想定した効果が得られない可能性又は追加的費用・減損損失が発生する可能性があります。そのような場合、予想通りの収益があがらず、業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。かかるリスクは当社グループ独自のリスク管理施策のみをもって軽減・排除できるものではなく、実際に顕在化した場合には、一定程度の影響を蒙ることは不可避であると認識しております。

(5) その他のリスク

① 中国、ベトナムにおける工場操業に関するリスク

当社グループは、生産能力の拡大と生産コストの引き下げを目的として、中国の香港・広州・武漢及びベトナムに現地法人を設立し、生産販売活動を行っております。これらの国においては、伝染病等の衛生問題の発生、環境規制・各種法令及び税制の変更もしくは導入、電力・水及び輸送等のインフラ障害発生、政情不安及び治安の問題発生、反日デモ及び労働争議の発生、資産の収用、戦争・紛争による設備の破壊及び資金移動に対する制限(送金制限)等の困難に直面する可能性があります。これらの政治又は法環境の変化・経済状況の変化・環境規制の変化など、予期せぬ事象が発生した場合、生産設備の管理やその他の事業の遂行に問題が生じることや、環境保全やその他の規制の遵守に伴う多額の債務・義務が発生することにより、業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクは当社グループ独自のリスク管理施策のみをもって軽減・回避できるものではなく、顕在化した場合には、リスク顕在の頻度・顕在リスクの規模等に応じた影響を蒙る可能性がありますが、当該リスクの態様に照らし、その影響度について確定的な見積りを行うことは困難であると認識しております。

② 情報セキュリティに関するリスク

当社グループは、事業活動において顧客情報等を入手することがあり、技術・営業・個人及び経営全般に関する機密情報を保有しており、サイバー攻撃及び人為的ミス等に起因した不正アクセス・改ざん・破壊・漏洩及び滅失等を防ぐために管理体制を構築して、合理的な技術的対策を実施するなどの適切な安全措置を講じるとともに、サイバーセキュリティリスクに備えた訓練を実施しております。しかしながら、漏洩・滅失等が起きた場合には、業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、情報の機密保持管理体制の適切な運用に努めており、かかるリスクが顕在化する蓋然性は低いと認識しております。

③ 知的財産権に関するリスク

当社グループにとって知的財産は、重要な経営資源であると認識しており、知的財産の保護を目的として、独自に開発した技術等について、特許等の知的財産権取得のための出願を行っております。しかしながら、出願案件全てについて権利が認められるとは限らず、また第三者からの異議申し立て等により取得した権利が無効になる可能性があります。なお、取得した知的財産については、主管部門において管理を行い、外部からの侵害にも注意を払っておりますが、不正に使用される等の事態が起こった場合には、本来得られるべき利益が失われる可能性があります。一方、当社グループが第三者の知的財産権を侵害したとして訴訟を提起された場合には、製造差し止めによる顧客への補償や損害賠償金の発生、また製造を開始するための特許使用に関わるライセンス料等の支払いが、業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクが突発的に顕在化する可能性は皆無ではないものの、その蓋然性は極めて低いと認識しております。

④ 人材に関するリスク

当社グループは、持続的に成長するためには優秀な人材を確保し、定着させ、育成することが不可欠であります。処遇・福利厚生面では、株式給付制度並びに奨学金返還支援制度の導入、保育所の提供を行っております。人材育成面では、階層別教育・基幹人材教育に加え、グローバル成長を見据えた人材教育プログラムの拡充を図っております。さらには、自己啓発学習の支援、コンプライアンス、ハラスメント等の教育を実施しております。こうした、人材確保や既存人材の流出防止の施策を継続的に強化し、従業員意識調査、離職要因分析を定期的に実施し、課題を迅速に改善するサイクルを確立するとともに柔軟な働き方を含む制度・環境整備の適時見直しを行っております。しかしながら、少子高齢化の進行や人材の流動化、働き方・価値観の多様化により、人材採用の競争は一層激化しており、このような環境下で、人材確保や既存人材の流出防止が進まない場合には、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクは、当社独自の管理施策のみをもって軽減・回避できるものではなく、顕在化した場合には、リスク顕在の頻度・顕在リスクの規模等に応じた影響を蒙る可能性がありますが、当該リスクの態様に照らし、その影響度について確定的な見積りを行うことは困難であると認識しております。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

① 財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度における電子部品業界は、自動車市場において需要が低迷する一方で、AIサーバーやゲーム機などの分野では需要が拡大基調で推移しました。期後半では米国新政権発足に伴う大規模な関税の引き上げ方針をめぐり、先行きに対する不透明感が増大しました。

このような環境の下、当社グループでは、車載向け基板は需要低迷の影響を受けました。スマートフォン向け基板は製品構成の変化により前年を割り込みました。情報通信向け基板は衛星通信を中心に大きく増加しました。モジュール基板はSSD、通信モジュールともに好調に推移しました。電子機器事業も大きく増加しました。利益面では、付加価値が高いビルドアップ基板が大幅に増加したことや工場稼働率の向上、生産性の改善と併せ、コスト削減効果等により好調に推移しました。これらより売上高・利益ともに過去最高を更新しました。

以上の結果、当連結会計年度の経営成績は、売上高206,806百万円(前期比15.2%増)となり、営業利益19,083百万円(前期比63.7%増)、経常利益18,763百万円(前期比31.5%増)、親会社株主に帰属する当期純利益14,924百万円(前期比32.0%増)となりました。

また、財政状態につきましては、当連結会計年度末の資産合計は256,366百万円となり、前連結会計年度末に比べ26,406百万円増加しました。当連結会計年度末の負債合計は140,760百万円となり、前連結会計年度末に比べ16,259百万円増加しました。当連結会計年度末の純資産合計は115,605百万円となり、前連結会計年度末に比べ10,147百万円増加しました。

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、22,913百万円となり、前連結会計年度に比べ1,549百万円増加しました。

なお、上記金額のうち、非連結子会社でありましたMeiko Electronics Hoa Binh Co., Ltd.を連結の範囲に含めたことにより増加した資金は、453百万円であります。
  当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

  営業活動の結果得られた資金は、21,655百万円で、前連結会計年度に比べ1,701百万円減少しました。増加の主な内訳は、税金等調整前当期純利益18,544百万円、減価償却費12,541百万円、仕入債務の増加2,861百万円であり、減少の主な内訳は、売上債権の増加7,770百万円、棚卸資産の増加3,336百万円、法人税等の支払額3,442百万円であります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

  投資活動の結果使用した資金は、24,327百万円で、前連結会計年度に比べ2,741百万円支出が増加しました。支出の主な内訳は、有形固定資産の取得による支出24,398百万円であります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

  財務活動の結果得られた資金は、4,141百万円で、前連結会計年度に比べ3,460百万円増加しました。収入の主な内訳は、短期借入金の純増額8,314百万円、長期借入れによる収入31,416百万円であり、支出の主な内訳は、長期借入金の返済による支出32,374百万円、配当金の支払額2,420百万円、連結の範囲の変更を伴わない子会社株式の取得による支出500百万円であります。

 

なお、当社グループのキャッシュ・フロー指標のトレンドは、以下のとおりであります。

 

2023年3月

2024年3月

2025年3月

自己資本比率(%)

38.2

42.7

42.2

時価ベースの自己資本比率(%)

37.0

60.4

68.5

キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年)

4.9

3.4

4.1

インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)

14.5

21.5

16.5

 

 

自己資本比率:自己資本/総資産

時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産

キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー

インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い

※  各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により算出しております。

※  株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しており、普通株式を対象としております。

※  営業キャッシュ・フローは、連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。また、利払いにつきましては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

当社グループの事業は、電子回路基板等の設計、製造販売及びこれらの付随業務の電子関連事業を主としております。

a. 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

生産高(百万円)

前年同期比(%)

電子関連事業

208,948

17.7

合計

208,948

17.7

 

(注)  生産実績は、販売価格によっております。

 

b. 受注実績

当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前年同期比(%)

受注残高(百万円)

前年同期比(%)

電子関連事業

214,709

18.9

42,290

23.4

合計

214,709

18.9

42,290

23.4

 

 

c. 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

販売高(百万円)

前年同期比(%)

電子関連事業

206,677

15.3

その他

128

△6.2

合計

206,806

15.2

 

(注) 1  「その他」区分は、報告セグメントに含まれない事業セグメントであり、売電事業であります。

2  主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

黒田電気株式会社

21,149

11.8

22,384

10.8

Samsung Electronics Co., Ltd.

17,938

10.0

 

3  販売高には、当該顧客と同一の企業集団に属する顧客に対する販売高を含めております。

4  主な相手先別の販売実績のうち、当該販売実績の総販売実績に対する割合が10%未満の相手先につきましては記載を省略しております。

 

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

経営成績の分析

(売上高)

当社グループが属する電子部品業界は、自動車市場において需要が低迷する一方で、AIサーバーやゲーム機などの分野では需要が拡大基調で推移しました。車載向け基板は需要低迷の影響を受けましたが、情報通信向け基板の販売は衛星通信を中心に大きく増加したことなどから、当連結会計年度の売上高は、前連結会計年度に比べ27,347百万円増加し、206,806百万円(前期比15.2%増)となりました。

(売上総利益)

売上原価は、原材料費、労務費及び減価償却費等が増加したものの、生産面では工場稼働率の向上、生産性の改善と併せ、コスト削減等の原価低減を推進したことから18,120百万円増加し、167,030百万円(前期比12.2%増)となりました。当連結会計年度の売上総利益は、付加価値が高いビルドアップ基板が好調に推移したことにより前連結会計年度に比べ9,227百万円増加し、39,775百万円(前期比30.2%増)となりました。また、売上総利益率は前連結会計年度に比べ2.2ポイント上昇し、19.2%となりました。

(営業利益)

販売費及び一般管理費は、研究開発費の増加のほか、販売手数料及び人件費の増加等により1,804百万円増加し、20,692百万円(前期比9.6%増)となり、当連結会計年度の営業利益は、前連結会計年度に比べ7,422百万円増加し、19,083百万円(前期比63.7%増)となりました。また、営業利益率は前連結会計年度に比べ2.7ポイント上昇し、9.2%となりました。

(経常利益)

営業外収益は、為替差益の減少、受取利息及び助成金収入の増加等により2,027百万円減少し、1,890百万円となりました。営業外費用は、シンジケートローン手数料及び支払利息の増加等により899百万円増加し、2,210百万円となりました。その結果、当連結会計年度の経常利益は、前連結会計年度に比べ4,495百万円増加し、18,763百万円(前期比31.5%増)となりました。

(親会社株主に帰属する当期純利益)

当連結会計年度において、特別利益は、固定資産売却益93百万円、投資有価証券売却益79百万円を計上したことにより、172百万円となりました。特別損失は、固定資産除売却損277百万円、投資有価証券売却損64百万円、投資有価証券評価損49百万円を計上したことにより、391百万円となりました。法人税、住民税及び事業税と法人税等調整額の合計額は990百万円増加し3,448百万円、非支配株主に帰属する当期純利益は171百万円となりました。以上の結果、親会社株主に帰属する当期純利益は、14,924百万円(前期比32.0%増)となりました。

 

財政状態の分析

(資産)

当連結会計年度末の資産は、256,366百万円となり、前連結会計年度末に比べ26,406百万円増加しました。流動資産において、現金及び預金が1,549百万円増加、売掛金が6,349百万円増加、棚卸資産が2,895百万円増加、固定資産において、有形固定資産が17,504百万円増加、投資有価証券が841百万円減少が主な要因であります。

(負債)

当連結会計年度末の負債は、140,760百万円となり、前連結会計年度末に比べ16,259百万円増加しました。流動負債において、支払手形及び買掛金が2,566百万円増加、短期借入金が8,153百万円増加、1年内返済予定の長期借入金が2,175百万円増加、流動負債のその他が5,473百万円増加、固定負債において、長期借入金が2,549百万円減少が主な要因であります。

(純資産)

当連結会計年度末の純資産は、115,605百万円となり、前連結会計年度末に比べ10,147百万円増加しました。資本剰余金が421百万円減少、利益剰余金が12,502百万円増加、為替換算調整勘定が2,145百万円減少が主な要因であります。

 

経営成績に重要な影響を与える要因

当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因については、「3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループは、資本を効率的に活用して収益性を高める観点から、売上高営業利益率、自己資本利益率(ROE)を重要な指標と位置付けております。当連結会計年度における売上高営業利益率は9.2%(前期比2.7ポイント増)、自己資本利益率(ROE)は14.5%(前期比1.6ポイント増)となりました。引き続きこれらの指標について、改善できるよう取り組んでまいります。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

キャッシュ・フローの状況の分析

当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

資本の財源及び資金の流動性

(資金需要)

当社グループの運転資金需要の主なものは、製品製造のための原材料等の購入のほか、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。設備資金需要の主なものは、生産能力の適正化や製品の競争力維持のための生産設備等の取得であります。

(財務政策)

当社グループの運転資金につきましては、自己資金又は金融機関からの借入により資金調達を行うこととしております。国内外の生産設備取得等の投融資資金及び設備資金につきましては、金融機関からの長期の借入により資金調達を行う方針であります。調達時期、条件については、最も有利なものを選択するべく検討することとしております。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。経営者は、この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

5 【重要な契約等】

その他の重要な契約

当社は、財務上の特約が付された金銭消費貸借契約を締結いたしました。

契約に関する内容等は、以下のとおりであります。

1 コミット型シンジケートローン契約

(1) 契約締結日

2025年3月24日

(2) 金銭消費貸借契約の相手方の属性

都市銀行、信託銀行

(3) 金銭消費貸借契約に係る債務の期末残高及び弁済期限並びに当該債務に付された担保の内容

期末残高   22,000百万円

弁済期限   2030年9月30日

担保の有無  無担保・無保証

(4) 財務上の特約の内容

当該契約の財務上の特約の内容等は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(連結貸借対照表関係)」に記載しているため、記載を省略しております。

 

 

2 コミットメントライン契約

(1) 契約締結日

2025年3月24日

(2) 金銭消費貸借契約の相手方の属性

都市銀行、信託銀行

(3) 金銭消費貸借契約に係る債務の期末残高及び弁済期限並びに当該債務に付された担保の内容

期末残高   28,400百万円

弁済期限   2028年9月29日(1年延長オプションが2回付与されております)

担保の有無  無担保・無保証

(4) 財務上の特約の内容

当該契約の財務上の特約の内容等は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(連結貸借対照表関係)」に記載しているため、記載を省略しております。

 

6 【研究開発活動】

当社グループでは、電子回路基板の高速伝送化、高放熱化、大電流化、更なる小型化、低背化、高密度化及び高機能化など多様化する市場ニーズに応えるため、幅広い分野において要素技術開発、構造開発、材料メーカーとの共同開発を行い、新商品の提案や事業化に向けた研究開発活動に取り組んでおります。2025年度より大学研究機関とも共同開発をスタートし次世代製品に向けた研究開発を積極的に推進しております。

当連結会計年度の研究開発活動としては、自動車の自動運転など次世代車載基板の要求に向けた高精度ビルドアップ基板、高速伝送化に対応する5G通信機器に向けた高周波基板・ミリ波レーダ基板の開発をはじめ、電動化技術開発として高電圧・大電流化により高耐圧、高耐熱の要求に対応するメタルベース基板・銅インレイ基板・メガスルホール基板・厚銅基板、高機能化・小型化に対応する部品内蔵基板・フレキシブル基板・M-VIA Flex基板、AI関連として高速伝送特性対応高多層基板、AI向けの電源製品としてIC内蔵パワーサブストレート、受動部品内蔵パワーモジュールなどの研究開発を推進しております。

新規分野のモジュール、パッケージ製品については、極薄コアレス構造やMSAP、SAP工法によるCSP基板、FCBGA基板などロジック、メモリなどをターゲットとした商品開発を推進しております。

これらの市場への提案につきましては、展示会への出展及び以下の対外発表を行っております。

2024年6月 2024マイクロエレクトロニクスショー 最先端実装シンポジウム

「車載プリント配線板の高密度、高放熱、高速伝送に向けた基板開発の取り組み」

2024年6月 エレクトロニクス実装学会 部品内蔵技術委員会 2024年度第1回公開研究会

「部品内蔵技術による基板小型化の実現と電源品質評価」

2024年6月 JPCAプリント配線板技術ロードマップ特別編セミナー

<ガラス・サブストレートと半導体パッケージ基板将来予測>

「スマートフォンおよび車載分野の技術動向~有機樹脂サブストレート分析結果~」

2025年1月 NEPCON JAPAN 2025 第26回プリント配線板EXPO 専門セミナー

「EVおよびスマホ向け、半導体パッケージ基板とメインボードの分析および技術開発」

2025年3月 エレクトロニクス実装学会 第39回春季講演大会 論文発表

「Niフリー無電解Auめっきによる高周波特性の効果検証」

2025年3月 エレクトロニクス実装学会 第39回春季講演大会 論文発表

「半導体チップ放熱における放熱樹脂基板の効果検証」

2025年3月 エレクトロニクス実装学会 第39回春季講演大会 論文発表

「半導体チップ放熱における放熱樹脂を用いた部品内蔵基板の効果検証」

なお、当連結会計年度における研究開発費の総額は、グループ全体で6,262百万円であります。