第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

(1)経営方針

 当社グループは「不への挑戦」を経営理念にかかげ、長年の経験により培われてきた金型技術をベースに、徹底的な精度追求と高い技術力に基づく製品を提供しております。グローバル競争力が求められる電子部品業界において、常に最先端に位置づけられる技術構築と多角的なアプローチによる独自の技術融合に加え、部品量産技術に革新的な価値を注入することで、お客様により深い満足を提供することを目指してまいります。当社グループの経営理念および経営方針は次のとおりです。

経営理念

「不への挑戦」

・まず実践ありき        ・技術を実践する

・品質を実践する        ・顧客に行動する

・社会に行動する        ・社員に豊かさを

経営方針

・顧客第一主義に徹し最高の品質を提供する

・独創的な先進技術を追求し社会に貢献する

・社員の豊かさを尊重し活力のある企業文化を創造する

(2)中長期的な経営戦略

 当社グループは、永続的な成長、発展を目指して企業体質の強化に取り組んでおります。今日まで進化させてきた当社独自の技術をさらに発展させるとともに、新領域への事業拡大を図るための研究開発を積極的に推進してまいります。あわせて経営改革活動の取組みによるコスト低減と強固な経営体質の確立に取り組んでまいります。その概要は次のとおりです。

①「独自の技術融合」と「革新的な生産合理化の提案」により成長するR&D企業を目指す。

②最先端技術の追求、新製品の事業化に向けた活動に重点的に取り組む。

③市況影響の少ない事業への参入により安定かつ高収益を追求する。

④経営効率、生産効率の改善活動を通じて企業価値を向上させ株主重視の経営を目指す。

⑤業界情報や顧客情報を十分に収集することで顧客ニーズおよび事業の将来性を把握し、最適な事業基盤を構築する。

⑥当社の企業活動と環境及び生物多様性保全との共存の実現に向け、SDGs目標の達成を目指す。

 また、具体的な事業成長戦略として、

 a.自動車部品事業の拡大(電池関連部品、安全・快適機能関連部品、等)

 b.医療組立事業の拡大(自動化促進による収益拡大)

 c.自動機器事業の拡大(自動車関連、医療関連、等)

 を重点に取り組んでまいります。

(3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 世界経済は、米国関税政策による下押し圧力が強まることへの懸念や、急激なインフレと金融引き締め、ウクライナ及び中東地域の紛争長期化などの地政学的リスクにより、先行き不透明感は続いています。

 電子部品業界におきましては、自動車のEV化や自動運転技術の高度化、工場の自動化に伴う高性能なFA機器や産業用ロボットの需要増大などが、電子部品需要の牽引役として期待されています。またIoT、高速移動通信、AI(人工知能)など進展があらゆる産業分野での技術革新を促進させ、新たな用途を生み出しています。

 当社グループはこれまで培った精密金型技術や独自の部品生産技術、合理化設備などの総合力を活かして利益追求に注力してまいります。また今後の成長領域と考える自動車部品事業への戦略的投資を継続し、安定した収益の確保と着実に成長できる経営体質へ強化してまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループは以下の、「サステナビリティ基本方針」を制定し、日々の企業活動に活かしております。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

《サステナビリティ基本方針》

 100年先へ-未来へつなぐ新たな「不への挑戦」

 当社グループは、「不への挑戦」を理念としてこれまで課題解決型の技術力を磨いてきました。この精神をサステナビリティの視点から捉え直し、環境・社会における「負(ふ)」の軽減と「富(ふ)」の創造を目指しています。

サステナビリティを実現する上で多様な人材の力が不可欠です。そのため、多様な人材が活躍できる環境づくり(DEI推進)や、次世代育成、技術継承に注力しています。

また、当社の強みである一貫生産体制は、サステナビリティにおける「循環」という重要な概念と深く関連しています。地球環境や社会との「共存・調和」を目指し、環境負荷の低減や多様な人材育成などを推進するため、強靭なガバナンス体制を構築していきます。

 私たちは、地域社会や地球環境との「つながり」を重視し、透明性の高いコミュニケーションを通じてステークホルダーとの信頼関係を構築し、持続可能な未来へと続く連鎖を創造していきます。

 

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(1)ガバナンス

 当社グループは、サステナビリティ経営の推進にあたり、社長が統括するサステナビリティ推進室を設置し、コンプライアンス委員会、環境管理委員会等を当社グループ横断的に設けることでサステナビリティに関するガバナンス体制を構築し、取締役会がこれを統治しています。各委員会では定期的な活動報告、課題への対応検討を行っており、経営会議では、各委員会での活動状況について共有し、必要に応じ取締役会へ報告を行っております。

 

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(2)リスク管理

 当社グループでは、サステナビリティ推進室を設置し、当社グループの経営理念、経営目標、経営戦略の達成を阻害する様々な危険に対して部門横断的に適切な処置に努め、安定的発展を確保しております。サステナビリティ推進室は各委員会と連携して目標、課題、実施状況の情報共有を行い、サステナビリティ経営の推進に対応しております。

 

(3)主なサステナビリティ項目

①環境に関する事項

 当社グループは、サステナビリティ基本方針及び環境方針を行動指針として、省エネルギーや再生可能エネルギーの導入拡大、廃棄物の削減とリサイクルの推進など事業活動を通じて環境問題の解決に取り組んでいます。

 また、環境関連の法規制を順守するとともに、サプライチェーン全体での環境配慮に努め、従業員への環境教育も積極的に実施しております。これらの取り組みを通じて、地域社会や環境との共生に努めています。

 

[環境方針]

 地球環境の保全が人類共通の最重要課題の一つであることを認識し、当社グループの企業活動と環境および生物多様性保全との共存に向けた環境活動を推進する。環境活動を通じてSDGs(持続可能な開発目標)の達成に向け、積極的に貢献する。

 

a)ガバナンス

 当社グループは、サステナビリティ基本方針及び環境方針を行動指針として、環境管理委員会で策定した目標に向けた活動計画に沿って評価・検討を行っております。経営上のリスクに関わる事項については、経営会議に報告され、重要な事項については取締役会で付議または報告されることとしております。

 

b)戦略

 当社グループは、カーボンニュートラル社会の実現に向けて取り組んでおり、地球温暖化の進行により発生する自然災害によって想定される物的損害および人的被害、顧客・サプライヤーとの流通機能遮断、法規制や災害対策に対する投資コスト増加を中長期的な重要リスクと捉えております。また地球温暖化の原因となる温室効果ガス(CO2,メタンなど)の排出量の約8割は、企業活動から排出されていることを認識しております。当社グループは地球温暖化による気候変動が事業活動に与えるリスクを回避・軽減することを重要課題と捉え、2025年度には温室効果ガスの原単位を50%削減(2019年度比)することを目標として取り組んでまいりました。具体的な施策として、従業員に対する環境教育(年4回のeラーニング)により意識啓蒙を図る活動を行い、工場設備では、日滝原工場と医療組立工場に太陽光パネルを設置、日滝原工場に風力発電機を設置、各工場で省エネ機器への更新(照明、変圧器、空調機、熱源機、ルーフファン、等)により、使用電力量の削減を行なっております。またEV/HV関連部品の売上拡大および廃棄物の分別による再資源化や、ペーパーレス活動による廃棄物削減に取組んでまいりました。

c)指標及び目標

 当社グループは、カーボンニュートラル社会の実現に向けて取組んでおり、温室効果ガス排出量の原単位、およびEV/HV関連部品の売上高拡大を目標として推進しております。

 

・温室効果ガス排出量の原単位

⇒2019年6月期の原単位に対して、2025年6月期に50%削減を目標としておりました。

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※原単位=CO2排出量/売上高

 

 

基準年

目標

前期実績

当期実績

2019年6月期

2025年6月期

2024年6月期

2025年6月期

温室効果ガスの原単位

0.565

0.283

0.367

0.281

削減率

(2019年6月期比)

△50%

△35%

△50%

 

・EV/HV関連部品の売上高

⇒2021年6月期の売上高に対して、2025年6月期は230%増加することを目標としておりました。

 

基準年

目標

前期実績

当期実績

2021年6月期

2025年6月期

2024年6月期

2025年6月期

EV.HV関連製品の売上高

833百万円

2,756百万円

2,276百万円

3,127百万円

増加率

(2021年6月期比)

230%

173%

275%

EV=Electric Vehicle(電気自動車)、HV=Hybrid Vehicle(ハイブリッド自動車 プラグインHV含む)

 

②人的資本に関する事項

 当社グループは、経営理念「不への挑戦」を掲げ、経営方針を実行するとともに、深刻化する社会問題への対応と社会全体の持続性を重視して、人的資本の向上に向けて取組んでおります。また、多様な人材が互いを尊重し、安心して能力を発揮できる環境づくり(DEI)を推進するとともに、次世代を担う人材の育成や、匠の技術・知見の継承に力を注いでいます。人を育てることは、企業の持続可能性と社会全体の未来を支える根幹であると私たちは考え、各種戦略により活力ある企業文化の創造に努めております。

 

a)ガバナンスおよびリスク管理

 当社グループは、(1)「ガバナンス」に記載のガバナンス体制に基づき、人的資本に関するリスクマネジメントの機能を果たしております。人的資本に関わる課題やリスクがある場合は対応を検討し、特に重要な事項については取締役会で報告または付議されることがあります。

b)戦略

 当社グループは、社会構造の変化への対応と人的資本経営の核となる従業員の成長の促進が経営基盤の強化に繋がると考えております。具体的には、「多様な人材の活躍」、「多様な働き方」、「人材育成」、「安全で働きやすい環境」を戦略とし、人的資本の向上に取組んでおります。

 

1)多様な人材の活躍

 性別、年齢、国籍、障がいの有無にとらわれず、多様な人材が活躍できる職場環境の整備に努めております。特に、従業員のスキルを最大限活用できる適材適所への配置、育児休業制度や短時間勤務制度などを積極的に活用することにより、女性社員の管理職への登用を推進しております。採用活動においては、組織の活性化のための通年採用を強化しているほか、採用者に占める女性比率の目標を定め、女性社員の積極的な採用活動を実践しております。また、障がい者採用については、障がいの理解を深める研修の実施や、トライアル勤務を実施するなど、障がいの特性や職種への適合に配慮した配属を実施しております。

 

2)多様な働き方

 仕事と家庭の両立が生産性向上に繋がるとの認識から、ワークライフバランスの実現に向けた規定の整備を進め、従業員のそれぞれの事情に応じた柔軟な働き方ができるよう努めております。多様な勤務体制整備、育児・介護休業制度、育児・介護短時間勤務制度など、育児・介護による離職者を発生させないため、仕事と家庭の両立ができる各種制度を整備しております。また、介護等による自己都合退職者についても再雇用が行える制度を設けており、各制度の利用対象者には個別に制度の周知を実施するなど、取得率の向上に努めております。

 

3)人材育成

 目まぐるしく変化する経営環境に対応するためには社員個々の能力を最大限に発揮されることが重要であり、個々のスキルアップをするための人材育成の推進と社員教育の実践をしております。具体的には、経営理念を浸透させるための活動、技能伝承のためのOJT教育、スペシャリスト、ゼネラリストを育成するための部門をまたいだ人事異動なども活用し、人材育成を推進しております。また、新入社員、若手、リーダー、管理職などの階層別研修を行い、体系的、自律的に自身のキャリアを形成できるよう研修制度を整備して社員教育を実践しております。

 

4)安全で働きやすい環境

 休業災害ゼロを目標とし、安全で働きやすい職場環境の整備に努めております。安全衛生に関しては、安全衛生委員会を中心とし、法令を遵守した安全衛生の推進、定期的な安全パトロールによる危険作業の撲滅、ヒヤリハット事例の展開等、安全意識の向上による労働災害防止活動を実践しております。また、身体への負荷が大きい作業を見直し、女性や非力な従業員も安全に働ける環境を構築しております。健康に関しては、健康診断の確実な実施と特定保健指導の推進を図るとともに、各事業所にはトレーニングルームを完備し、従業員の健康増進を促進しております。

 

c)指標および目標

項目

目標

2025年6月期実績

正社員採用に占める女性比率

2030年6月期までに30%以上

23.8

女性管理職比率

2030年6月期までに7%以上

5.8

男性育児休暇取得率

2030年6月期までに50%以上

93.7

(注)目標及び実績は当連結会計年度末における国内グループ会社合算の数値を記載しております。

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある主な事項には、以下のようなものがあります。

 なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在(2025年9月25日)において当社グループが判断したものであります。

①電子部品業界について

 当社グループの属する電子部品業界は、市況の影響を受けて好不況の変動が大きい業界と言われております。かつての半導体不況などのような想定外の変動や、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行のように、経済活動を急激に悪化させるような事象が発生した場合は、当社グループの業績および今後の事業展開に影響を及ぼす可能性があります

 当社グループは業界の動向に細心の注意を払うと共に、今後の成長領域へ事業拡大を図りリスク軽減を図っております。

②知的財産権

 2025年9月25日現在において、当社グループは知的財産権に関する訴訟等を起こされてはおりません。また、当社グループが開発を行っている新製品につきまして、第三者の知的財産権を侵害しないよう特許調査を慎重に行っておりますが、調査範囲が十分かつ妥当であるとは保証できません。今後当社グループが第三者の知的財産権を侵害した場合には、訴えを提起される可能性がないとは言えず、当社グループの事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。

③技術者等の人材の確保育成について

 当社グループの事業継続および拡大のためには、優秀な技術者をはじめとする人材を確保、育成する必要があります。しかしながらこれらが計画どおり進まない場合には、当社グループの事業運営に悪影響を及ぼす可能性があります。

④原材料価格および調達について

 部品事業の主な原材料である伸銅製品の価格は銅の国際市況に連動しており、原材料価格の上昇により利益率が低下する可能性があります。また原材料及び仕入部材は市場環境・需給状況などによっては調達不足が生じ、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは最新の市況情報を取引先や仕入先と共有化して課題の早期対応に努めております。

⑤製品の欠陥について

 当社グループでは所定の品質管理基準に従って製造を行い、製品の品質確保に努めておりますが、将来にわたって全ての製品に欠陥がなく、製造物賠償責任請求に伴う費用が発生しないという保証はありません。

 また、当社グループは製造物賠償責任保険に加入しておりますが、最終的に負担する賠償額全てを賄えるという保証はなく、製造物賠償責任につながるような製品の欠陥が発生した場合には、当社グループの財政状態および経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

⑥災害等のリスク

 当社グループの主な生産拠点は長野県須坂市に集中しているため、当該地域において大規模災害が発生した場合には、当社グループの生産設備に深刻な被害が生じ、そのことが当社グループの業績および事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは重要な事業を継続あるいは早期復旧を果たし影響を最小限にするためにBCP(事業継続計画)を策定し、継続的な見直しおよび改善を実施しております。

 また、深刻な感染性疫病の流行等が発生した場合は、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。その場合には従業員の安全と健康を最優先に考え、感染防止策の徹底に努めてまいります。

⑦競合等について

 当社グループの金型事業および部品事業が属する電子部品業界は、国内外の競合他社との価格競争、販売先における内製化の拡大や生産及び調達の海外シフト等により厳しい事業環境にあります。また、自動機器等の市場においても、技術面、価格面において競合他社との激しい競争にさらされております。

 当社グループは、コスト競争力の維持強化に向けて、効率的かつ合理的な物造り体制の推進に積極的に取り組んでおりますが、上記の競争の激化等による製品価格の低下が当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

⑧海外活動に伴うリスク

 当社グループは、中国、インドネシアにおいて合弁で事業を行っておりますが、今後、予期しない法令または規則の変更、政治および社会情勢の変化、テロ・紛争等による社会的混乱などが発生した場合、当社グループの業績および財政状態に影響を与える可能性があります。

 

⑨特定の販売先への依存について

 当社グループの売上高の多くは電子部品業界に依存しております。当社グループ製品の販売先は広範囲にわたっておりますが、このうち、2025年6月期における住友電装株式会社に対する売上高は、総売上高の26.47%を占め、その依存度は高い状況にあります。

 当社グループは引き続き、その他の既存販売先との取引拡大、新規販売先の開拓に努める方針でありますが、今後、住友電装株式会社において、取り扱う部品構成の変更や購買方針の変更等により、当社グループの部品供給が大きく減少した場合には、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

⑩為替変動に伴うリスク

 当社グループの事業は、国内および中国とインドネシアの生産拠点で一部外貨取引をしております。今後、著しい為替変動が生じた場合は、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また外貨建て債務の時価評価における差損益により、同様の影響を受ける可能性があります。

⑪サステナビリティ課題に伴うリスク

 世界的に脱炭素社会の実現が共通認識となっておりますが、環境リスクに対する対応が遅れることで、原材料不足や法規制対応によるコスト増加、顧客のサプライヤー選別や企業イメージ低下などにより、グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、すでに実行している環境基本方針に基づいたSDGs目標に向けた対応や、人的資本経営へ取り組み強化してまいります。

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フロー(以下経営成績等という)の状況の概要は次のとおりであります。

①経営成績および財政状態の状況

 当連結会計年度におけるわが国経済は、雇用・所得環境の改善やインバウンド需要の増加により緩やかな回復基調にあるものの、原材料及びエネルギー価格の高騰や円安基調での推移も影響し、物価上昇の継続による消費者マインドの改善に足踏みもみられました。

 また、米国関税政策の動向、ウクライナ及び中東地域をめぐる情勢や金利水準の変動等の金融政策の影響などにより、依然として先行き不透明な状況が続いております。

 当社グループにおいては、部品セグメントの主力であるスマートフォン関連部品は堅調で、半導体関連部品や産機向けは緩やかに回復基調となり、自動車電装部品も概ね計画通り推移しました。機械器具セグメントでは自動機器及び医療組立共に堅調に推移しました。

 この結果、当連結会計年度の財政状態および経営成績は以下のとおりとなりました。

a.経営成績

 当連結会計年度の経営成績は、売上高333億2千2百万円(前年同期比20.2%増)、営業利益は42億9千2百万円(前年同期比27.4%増)、経常利益は42億6百万円(前年同期比14.7%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は27億6千万円(前年同期比21.7%増)となりました。

 セグメントの業績は次のとおりであります。

<金型>

 電子機器向け、自動車電装向け金型を主軸として販売してまいりました。電子機器向け、自動車電装向け共に前期と比較して受注が軟調に推移し、前年同期と比較して減収減益となりました。

 その結果、売上高は12億5千1百万円(前年同期比19.8%減)、セグメント利益は2億5千4百万円(前年同期比58.5%減)となりました。

<部品>

 電子機器向け部品、自動車電装向け部品を主軸として販売してまいりました。電子機器向け部品はスマートフォン関連部品及び車載向けは堅調に推移し、半導体関連部品や産機向けも復調してきました。また、自動車電装部品も概ね計画通り推移し、全体では前年同期と比較して増収増益となりました。

 その結果、売上高は256億2千3百万円(前年同期比25.4%増)、セグメント利益は47億2百万円(前年同期比45.0%増)となりました。

<機械器具>

 各種自動機器、医療器具を主軸として販売してまいりました。自動機器、医療器具共に需要が計画を上回り堅調に推移した結果、前年同期と比較して増収増益となりました。

 その結果、売上高は64億3千9百万円(前年同期比12.4%増)、セグメント利益は7億4千1百万円(前年同期比10.3%増)となりました。

<賃貸>

 賃貸事業、売電事業を行っております。

 売上高は7百万円(前年同期比3.6%増)、セグメント利益は1億1百万円(前年同期比22.2%増)となりました。

b.財政状態

 当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ27億8百万円増加し、397億7千2百万円となりました。

 当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度に比べ8億7千1百万円増加し、118億7千万円となりました。

 当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度に比べ18億3千7百万円増加し、279億1百万円となりました。

②キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度末に比べ4億3千3百万円増加し、61億5千7百万円となりました。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果得られた資金は、55億円(前年同期比1.0%増)となりました。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果使用した資金は、30億8千7百万円(前年同期比24.6%増)となりました。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果使用した資金は、19億2千5百万円(前年同期比44.0%増)となりました。

③生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年7月1日

至 2025年6月30日)

前年同期比(%)

金型(千円)

1,850,564

100.8

部品(千円)

26,713,988

127.1

機械器具(千円)

7,334,532

131.9

賃貸(千円)

5,862

104.8

合計(千円)

35,904,947

126.4

(注)金額は販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。

b.受注実績

 当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年7月1日

至 2025年6月30日)

受注高(千円)

前年同期比(%)

受注残高(千円)

前年同期比(%)

金型

1,767,648

113.7

475,027

145.8

部品

23,372,296

116.2

1,421,137

68.1

機械器具

6,883,093

135.5

1,787,015

130.7

賃貸

7,662

103.6

合計

32,030,701

119.7

3,683,180

97.5

(注)金額は販売価格によっております。

c.販売実績

 当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年7月1日

至 2025年6月30日)

前年同期比(%)

金型(千円)

1,251,885

80.2

部品(千円)

25,623,491

125.4

機械器具(千円)

6,439,725

112.4

賃貸(千円)

7,662

103.6

合計(千円)

33,322,765

120.2

(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。

2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自 2023年7月1日

  至 2024年6月30日)

当連結会計年度

(自 2024年7月1日

  至 2025年6月30日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

住友電装㈱

7,838,586

28.27

8,820,767

26.47

DDK(THAILAND)Ltd.

3,222,772

11.62

4,420,999

13.27

テルモ㈱

2,904,089

10.47

2,794,529

8.39

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析

 経営者の視点による当社グループの経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

①重要な会計方針および見積り

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。

②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容

 a.経営成績等

 1)経営成績

 <売上高>

 当連結会計年度における売上高は、前連結会計年度に比べ20.2%増加し、333億2千2百万円となりました。これは主に部品セグメントの売上高が、前連結会計年度に比べ25.4%増加したことによります。

 <売上総利益、営業利益>

 売上総利益は69億2千5百万円(前年同期比22.6%増)となりました。これは主に売上高が増加したことによります。

 販売費及び一般管理費は、前連結会計年度に比べ15.4%増加し、26億3千2百万円となりました。この結果、営業利益は42億9千2百万円(前年同期比27.4%増)となりました。

 <営業外損益、経常利益>

 営業外損益は、前連結会計年度に比べ利益が3億8千5百万円減少しました。これは主に為替差損が前連結会計年度に比べ1億1千万円増加したことによります。この結果、経常利益は42億6百万円(前年同期比14.7%増)となりました。

 <特別損益、税金等調整前当期純利益>

 特別損益は、前連結会計年度に比べ利益が3千5百万円減少しました。これは主に補助金収入が前連結会計年度に比べ5千9百万円減少したことによります。この結果、税金等調整前当期純利益は42億5千8百万円(前年同期比13.4%増)となりました。

 <法人税等、親会社株主に帰属する当期純利益>

 法人税等は、前連結会計年度に比べ1千1百万円増加し10億8千5百万円となりました。この結果、親会社株主に帰属する当期純利益は27億6千万円(前年同期比21.7%増)となりました。

 2)財政状態

 当連結会計年度末における流動資産は194億6千3百万円となり、前連結会計年度末に比べ23億5千8百万円増加しました。これは主に現金及び預金が7億9千5百万円、売掛金が7億8千7百万円、仕掛品が4億3百万円増加したことによるものであります。固定資産は203億8百万円となり、前連結会計年度末に比べ3億5千万円増加しました。これは主に投資有価証券が4億3千7百万円増加したことによるものであります。

 当連結会計年度末における流動負債は98億円となり、前連結会計年度末に比べ13億2千8百万円増加しました。これは主に買掛金が13億1千3百万円増加したことによるものであります。固定負債は20億7千万円となり、前連結会計年度末に比べ4億5千6百万円減少しました。これは主に繰延税金負債が1億3千万円増加したことと、長期借入金が6億1百万円減少したことによるものであります。

 当連結会計年度末における純資産合計は279億1百万円となり、前連結会計年度末に比べ18億3千7百万円増加しました。これは主に利益剰余金が15億2千6百万円、その他有価証券評価差額金が2億9千4百万円、非支配株主持分が1億3千1百万円増加したことによるものであります。

 この結果、自己資本比率は67.7%(前連結会計年度末は68.0%)となりました。

 

 3)キャッシュ・フローの状況

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果得られた資金は、55億円(前年同期比1.0%増)となりました。主な要因は、税金等調整前当期純利益42億5千8百万円、減価償却費27億1千4百万円、仕入債務の増減額13億2千7百万円による資金の増加と、法人税等の支払額9億8千2百万円による資金の減少であります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果使用した資金は、30億8千7百万円(前年同期比24.6%増)となりました。主な要因は、有形固定資産の取得による支出27億8千6百万円による資金の減少であります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果使用した資金は、19億2千5百万円(前年同期比44.0%増)となりました。主な要因は、配当金の支払額12億円による資金の減少、長期借入金の返済による支出6億1百万円であります。

 b.経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容

 当社グループの当連結会計年度の経営成績について、売上高は前連結会計年度に比べ55億9千6百万円増加し333億2千2百万円(20.2%増)、営業利益は前連結会計年度に比べ9億2千3百万円増加し42億9千2百万円(27.4%増)、経常利益は前連結会計年度に比べ5億3千7百万円増加し42億6百万円(14.7%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度に比べ4億9千2百万円増加し27億6千万円(21.7%増)となりました。

 当連結会計年度における経営成績の前連結会計年度との比較分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ①経営成績および財政状態の状況」に記載のとおりであります。

 また、当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 c.資本の財源および資金の流動性

 当社グループの資金需要の主なものは、原材料購入等の製造費用、販売費及び一般管理費等の運転資金、および設備投資によるものであります。

 これらに必要な資金については自己資金をもって充当することを基本とし、必要に応じて銀行借入等を行うこととしています。

 また、当連結会計年度末における借入等の有利子負債の残高は24億5千4百万円で、現金及び現金同等物の残高は61億5千7百万円となっております。

 

5【重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

 当社グループでは、今後のビジネス基盤の強化および事業拡大を目的として、これまで培ってきた独自技術をさらに発展させ、実用化するための研究開発に取り組んでまいりました。

 機械器具では、ディスペンサー装置VEタイプやロボットの開発を行ってまいりました。その結果、機械器具に関わる研究開発費は73,526千円となりました。

 金型では、高機能絞り部品や微細ピン部品の金型技術開発を行ってまいりました。その結果、金型に係る研究開発費は80,157千円となりました。

 部品では、高耐熱・高耐久・耐腐食性に優れためっき加工の技術開発を行ってまいりました。その結果、部品に係る研究開発費は149,494千円となりました。

 これらの活動の結果、当連結会計年度の研究開発費は、303,178千円となっております。