第2【事業の状況】

1【業績等の概要】

(1)業績

当連結会計年度(2016年4月1日から2017年3月31日まで)における当社グループを取り巻く事業環境は、IT分野において、モバイル、クラウド、ソーシャルネットワークが社会に浸透する中で、IoT(モノのインターネット)やVR(仮想現実)などといった新たな分野が立ち上がるなど急激な変化を見せました。主要通貨に対する円相場は、英国のEU離脱の選択に端を発した世界的なリスク回避志向により、対米ドル、対ユーロともに円高が第2四半期連結累計期間において急速に進み、中国元など新興国通貨に対しては対米ドル以上の円高が進行しました。しかし、11月以降は一転して、米ドル全面高につられる形で主要通貨に対する円安が進みました。

 

このように急速に変化する事業環境の下、当社は、クリエイティブユーザー向けペンタブレット市場のグローバルリーダーとして、より付加価値の高い製品群を提供するために、次世代デジタルペン技術の開発や製品ラインの強化、将来の成長基盤構築のための投資の強化に取り組みました。

 

ブランド製品事業においては、プロフェッショナル市場におけるユーザーニーズの変化を先取りし、市場でのリーダーシップを強化すべく、次世代デジタルペン技術を搭載し、3D機能、カラーマネジメント機能などを強化した次世代製品ラインの開発を進め、市場投入しました。また、デジタル文具における新たな市場の開拓に向けて、クラウドを活用した製品ラインを拡充しました。さらに、セキュリティー(安全性)に関わるビジネスの強化を目指し、デジタルペンとソフトウエアを組み合わせたソリューションの充実を図りました。このような中、当連結会計年度で見ると、円高の影響、競争関係の変化、製品サイクルの移行期の影響による需要の減少及び一部新製品の市場投入遅れなどにより、すべての製品ラインの売上が前年同期を下回る結果となりました。

 

テクノロジーソリューション事業においては、サムスン社のGalaxy Note7が品質問題により10月に生産中止となったことが事業活動に大きな影響を与えました。一方、アクティブES(Active Electrostatic)方式デジタルペンの量産を進めるとともに、新規顧客の獲得に取り組みました。さらに、マイクロソフト社のWindows10搭載のタブレット端末向けや、グーグル社のChrome(クローム)対応のノートPC向けにそれぞれ共通で使用できる標準デジタルペンの開発を進めるとともに、デジタルペンの小型インクカートリッジ化と自動生産に取り組みました。このような中、当連結会計年度で見ると、スマートフォン向けでの販売の減少及び円高の影響を受けたことなどから、売上は前年同期を下回りました。

 

コーポレート部門においては、事業領域拡大に向けて、OSの違いを越えたデジタルインクの新たな標準である「WILL(Wacom Ink Layer Language)」を提唱し、パートナー企業の拡大に努め、その普及を促進するためのイベント「Connected Ink(コネクティドインク)」を世界4カ国で開催しました。さらに、「デジタルステーショナリーコンソーシアム」を9月に設立して「WILL」の普及促進とデジタル文具市場の発展に取り組みました。また、デジタルペン技術の領域では、2016年3月にマイクロソフト社とのWindows対応のデジタルペン技術に関するライセンス供与について合意するなど、パートナー企業との協調を前提とするオープンパートナーシップ戦略により、ペンとインクの両方のデジタル化を推進しました。

 

なお、当社グループでは、2015年4月に「ワコム戦略経営計画 SBP-2019」(中期経営計画)を策定し、新たなグローバル事業組織の下で、新規市場の開拓と既存事業の強化に取り組みつつ、それを支える社内のグローバルIT基盤を確立するために大型設備投資を実行してまいりました。しかし、そのグローバル基幹業務システムについては、導入開始当初において前提としていた売上成長規模を見込めなくなったことから、現在の成長規模に見合うよう当連結会計年度において導入規模・範囲の見直しを行い、これらの投資に係る無形固定資産について減損損失(4,223,720千円)を計上しました。

 

この結果、当連結会計年度の業績は、売上高が71,313,987千円(前年同期比8.1%減となり、営業損失は1,171,194千円(前年同期は営業利益3,664,362千円)、経常損失は870,228千円(前年同期は経常利益3,776,509千円)、親会社株主に帰属する当期純損失は5,534,484千円(前年同期は親会社株主に帰属する当期純利益2,309,514千円)となりました。

 

セグメントの業績は、次のとおりであります。

 

① ブランド製品事業

 

<クリエイティブビジネス>

クリエイティブビジネスにおいては、業界にイノベーションを起こして市場でのリーダーシップをさらに強化するために、次世代デジタルペン技術の開発と市場投入に取り組みました。製品ミックスの変化や新モデルへの移行時期の遅れにより、売上は前年同期から7%程度下回ったものの、新興国の急成長などが貢献し、出荷台数ベースでは5%程度成長しました。

 

○ ペンタブレット製品

「Intuos Pro(インテュオス プロ)」は、第4四半期に次世代デジタルペン技術を搭載した新モデルを投入するなど製品競争力の強化を図りました。通期では、売上は前年同期から低調に推移した一方で、特にアジア圏の好調に支えられ、出荷台数ベースでは前年同期を僅かに上回りました。「Intuos」は、部品供給の停滞や円高の影響などにより売上は低調に推移したものの、9月に発表した「Intuos 3D」の販売が売上に貢献しました。さらに、新興地域向けの低価格エントリーモデル「One by Wacom(ワン バイ ワコム)」の出荷台数が前年同期から4割程度増加しており、新規ユーザーの獲得に貢献しました。

 

○ モバイル製品

高機能クリエイティブタブレット製品「Cintiq Companion(シンティック コンパニオン)2」は、競争環境の変化に加え、製品サイクルの移行期に入り苦戦しました。一方で、10月に発表した「Wacom MobileStudio Pro(ワコム モバイルスタジオ プロ)」は、次世代デジタルペン技術、3D対応、カラーマネジメント機能などを強化したことにより、市場から高い評価を受け、販売回復に貢献しました。これらの結果、モバイル製品全体では、売上は前年同期を僅かに下回る結果となったものの、出荷台数は堅調に推移しました。

 

○ ディスプレイ製品

プロフェッショナル向け液晶ペンタブレット製品「Cintiq(シンティック) 13HD」、「Cintiq 22HD」及び「Cintiq 22HD touch」の米州での販売が振るわなかったことや円高の影響により、売上は、前年同期から低調に推移しました。12月に販売を開始した、次世代デジタルペン技術に対応した液晶ペンタブレット「Wacom Cintiq Pro 13インチ」が順調な滑り出しを見せ、特にアジアや欧州での販売が順調に推移した一方で、「Wacom Cintiq Pro 16インチ」の販売開始が2017年4月にずれ込んだこともあり、ディスプレイ製品全体の出荷台数は、前年同期から小幅の増加にとどまりました。

 

<コンシューマビジネス>

旧製品の「Bamboo Spark(バンブー スパーク)」やiPad向けスタイラスペン製品全体の不振により、コンシューマビジネス全体の売上、出荷台数ともに前年同期を大きく下回りました。一方で、9月には、次世代デジタル文具「Bamboo Slate(バンブー スレート)」と「Bamboo Folio(バンブー フォリオ)」、1月には、「Bamboo Folio small(バンブー フォリオ スモール)」と第3世代のスタイラスペン「Bamboo Fineline(バンブー ファインライン)」をそれぞれ発表し、特にアジアを中心に販売回復の兆しを見せました。

 

<ビジネスソリューション>

液晶サインタブレット製品「STU(エスティーユー)」シリーズは、デジタルサインやセキュリティ分野での利用が進み、新興地域において前年同期から大幅に売上を伸ばしたものの、特に欧州での競争関係の変化や案件長期化に円高の影響が加わり、全体では売上、出荷台数ともに低調に推移しました。また、液晶ペンタブレット製品「DT(ディーティー)」シリーズは、円高の影響などにより売上、出荷台数ともに前年同期を大きく下回りました。この結果、ビジネスソリューション全体の売上は、前年同期を大きく下回りました。

 

この結果、売上高は43,873,985千円(前年同期比10.3%減)、営業利益は5,684,510千円(同29.3%減)となりました。

② テクノロジーソリューション事業

 

<スマートフォン向けペン・センサーシステム>

Galaxy Note7の品質問題による生産中止の影響を大きく受けました。また、円高の影響もあり、売上は、前年同期を大きく下回りました。

 

<タブレット向けペン・センサーシステム>

アクティブES方式デジタルペン技術は、タブレットメーカー各社から高い評価を得て採用が拡大しております。特に、レノボ社、ヒューレット・パッカード社、東芝社、デル社向け出荷が好調に推移したことで、売上は、前年同期を大きく上回りました。また、EMR方式(電磁誘導方式)ペン製品も、グーグル社のChrome対応製品向けに採用されるなど新規分野への広がりを見せました。

 

<ノートPC向けペン・センサーシステム>

キーボード着脱型タブレットの増加によりデジタルペンの需要がノートPCからタブレットにシフトしたことで、売上は前年同期から大幅に減少しました。

 

この結果、売上高は26,757,642千円(前年同期比4.3%減)、営業利益は2,443,353千円(同21.9%減)となりました。

 

③ その他

 

エンジニアリングソリューションにおいて、9月に「ECAD(イーキャド) DCX 2017」を発表しました。売上は前年同期から若干の増加となりました。また、同時期に製品ライフサイクルを見直したことで売上原価が増加しました。

 

この結果、売上高は682,360千円(前年同期比3.0%増)、営業損失は32,420千円(前年同期は営業利益35,767千円)となりました。

 

(2)キャッシュ・フロー

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は、前連結会計年度末と比べ、160,103千円減少(前年同期は2,321,588千円減少)し、14,204,928千円となりました。

 

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果得られた資金は、121,928千円(前年同期は2,009,164千円の収入)となりました。主な増加は、減価償却費2,572,795千円、減損損失4,223,720千円、仕入債務の増加額1,494,252千円及びその他1,002,444千円であり、主な減少は、税金等調整前当期純損失5,690,859千円、売上債権の増加額1,471,111千円及びたな卸資産の増加額1,790,974千円です。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果使用した資金は、3,479,898千円(前年同期は4,878,124千円の使用)となりました。主な内訳は、工具、器具及び備品等の有形固定資産の取得による支出1,400,125千円、グローバルITインフラ等のソフトウエアの取得による支出2,567,092千円です。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果得られた資金は、3,298,702千円(前年同期は1,209,282千円の収入)となりました。主な内訳は、短期借入金の返済による支出1,000,000千円、長期借入れによる収入8,000,000千円、自己株式の取得による支出753,330千円及び配当金の支払額2,958,250千円です。

 

2【生産、受注及び販売の状況】

(1)生産実績

当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2016年4月1日

至 2017年3月31日)

前年同期比(%)

ブランド製品事業(千円)

23,284,682

93.5

テクノロジーソリューション事業

(千円)

16,561,833

92.8

報告セグメント計(千円)

39,846,515

93.2

その他(千円)

62,910

106.6

合計(千円)

39,909,425

93.3

(注) 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

(2)製品仕入実績

当連結会計年度の製品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2016年4月1日

至 2017年3月31日)

前年同期比(%)

ブランド製品事業(千円)

58,329

46.4

テクノロジーソリューション事業

(千円)

報告セグメント計(千円)

58,329

46.4

その他(千円)

161,615

170.9

合計(千円)

219,944

99.8

(注) 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

(3)受注状況

当社グループは見込み生産を行っているため、該当事項はありません。

 

(4)販売実績

当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2016年4月1日

至 2017年3月31日)

前年同期比(%)

ブランド製品事業(千円)

43,873,985

89.7

テクノロジーソリューション事業

(千円)

26,757,642

95.7

報告セグメント計(千円)

70,631,627

91.8

その他(千円)

682,360

103.0

合計(千円)

71,313,987

91.9

 

(注)1.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自  2015年4月1日

至  2016年3月31日)

当連結会計年度

(自  2016年4月1日

至  2017年3月31日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

サムスン電子グループ

16,771,052

21.6

13,380,509

18.8

2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

3.サムスン電子グループには、主に、Samsung Electronics Co., Ltd.、Samsung Electronics Japan Co., Ltd.、Samsung Electronics Vietnam Co., Ltd.が含まれております。

 

3【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)会社の経営の基本方針

当社グループは、「a world alive with creativity」(創造性にあふれる活き活きとした世界)をビジョンとし、より豊かで創造的な暮らしを実現したいと願っております。そのために、自然で直感的な技術により人間のクリエイティビティを広げ、世界に貢献するグローバルリーダーを目指しております。

当社グループは、今後のユーザーインターフェイス技術の世界的な進化と拡大を見据えて、更なる技術力・開発力の強化、優秀な人材の確保とともに、今日までに築き上げたグローバルな事業組織、企業文化やブランド、そしてオープンパートナーシップポリシーの下、幅広い顧客との関係に基づいた競争力の高いグローバルな事業モデルの更なる強化により、長期的かつ安定的な事業成長と企業価値の向上を図れるものと考えております。

また、グローバルに事業を展開するに際して、企業の果たすべき社会的責任を真摯に受け止め、コンプライアンスの徹底とコーポレート・ガバナンスの継続的な強化に努めてまいります。

 

(2)目標とする経営指標

当社グループは、2015年4月に「ワコム戦略経営計画 SBP-2019」(中期経営計画)を策定し、市場と経営環境の著しい変化に当社の事業モデルを柔軟に対応させた成長戦略を定めて新たな経営目標を設定しましたが、2016年3月期、2017年3月期の業績は中期経営計画で想定した売上、利益の成長ラインを大きく下回り、2019年3月期の経営目標達成が困難な状況となりました。このような状況下、利益重視の経営に転換するとともに経営判断の質の向上に向けた取り組みを推進すべく、2018年3月期の終了をもって経営トップの世代交代を予定しております。新たな経営目標を含む中期経営計画については、後任代表取締役候補が中心となって検討を進め、新経営チームの発足を目途に公表する予定です。

 

(3)経営環境

世界経済の緩やかな成長が期待される一方、米国の保護主義的な貿易政策、不透明な中東・アジア情勢の影響なども懸念されます。為替動向も、これらを反映して不安定な展開が続くと見込まれています。IT市場では、クラウド、ビッグデータ、AI(人工知能)、ソーシャルメディアがさらに社会へ浸透し、新たな産業基盤になることが見込まれます。

 

(4)中長期的な会社の経営戦略及び会社の対処すべき課題

当社グループは、以下の課題認識と対処方針に関して、経営資源の制約を踏まえて戦略事案の優先順位の見直しを進めるとともに、中期的な売上成長に見合った最適なコスト構造を確立し、利益重視の経営に転換することを可能とする新たな成長戦略を中期経営計画としてまとめ直す予定です。

 

(対処すべき課題)

① ビジネスモデルのモバイル、クラウドへの進化

② 新グローバル事業体制による統合強化と成長加速

③ 中期的な売上成長に見合った最適なコスト構造の確立

④ 経営判断の質の向上

⑤ モバイル製品ラインの強化、3D市場の拡大、新興市場への投資によるクリエイティブビジネスの加速

⑥ デジタル文具とクラウド統合による新たなコンシューマーユーザーの獲得

⑦ アクティブES技術と「WILL(Wacom Ink Layer Language)」によるテクノロジーソリューション事業の拡大

⑧ 「WILL」とデジタルサインソリューションによるワークフローとセキュリティビジネスの強化

グローバルビジネスシステムの活用による効率とスピードと収益性の向上

 

(具体的な対処方針等)

当社の成長戦略は、近年のビジネスプラットフォームの急速な変化に対応するとともに、ブランド製品事業とテクノロジーソリューション事業の両事業の成長を加速させることを軸としています。そのために事業組織体制を従来の地域別から顧客カテゴリー別のグローバル組織に組み換え、さらにITインフラのグローバルベースでの活用の最適化を図ることにより両事業の成長を支えてまいります。

 

① ビジネスモデルのモバイル、クラウドへの進化

普及が進んでいるスマートフォン、タブレット等のモバイル情報機器とクラウドコンピューティングによる新しいITプラットフォームに対応するため、当社製品ラインを従来のPC向けからモバイル情報機器分野及びクラウドをベースとしたアプリケーションとサービスを統合したエコシステムへと拡大してまいります。

 

② 新グローバル事業体制による統合強化と成長加速

グローバルな事業統合による成長を実現するため、2015年4月に、従来の地域販社を中心とする販売体制から顧客カテゴリー別のグローバルビジネスユニット(事業部)への再編を行いました。各事業単位で地域に関わりなく顧客カテゴリーごとの戦略をグローバルに推進することで、IT関連ビジネスのグローバル化の動きに対応するとともに、グローバルビジネスシステムの導入によって生産から販売・顧客サポートに至る業務工程を透明化、強化し、法人向け、個人向けや地域別のお客様ニーズに対するサービスの向上や情報発信の強化といったきめ細かな業務品質の向上につなげて顧客満足の水準を引き上げ、事業成長を加速させてまいります。

 

③ 中期的な売上成長に見合った最適なコスト構造の確立

生産性の向上と将来の成長を支えるため、2014年3月期よりグローバル基幹業務システム等の導入に取り組んでまいりましたが、これらの投資は中期経営計画で策定した成長を前提として、その収益で投資リターンを回収する計画でありました。しかしながら、前提としていた中期的な売上成長を見込めなくなったことから、導入規模・範囲を見直し、一部投資資産の減損処理を行いました。さらにグローバル組織体制における人員の最適配置を含めた継続的な業務効率の改善を通じて、中期的な売上成長に見合った最適なコスト構造の確立を目指します。

 

④ 経営判断の質の向上

継続的な事業成長を確実なものとすることが経営の重要課題と認識しており、取締役会における議論がより建設的に行われるようにし、健全な世代交代が進められるようにするなど、経営判断の質を向上させる各種取組みを推進してまいります。

 

⑤ モバイル製品ラインの強化、3D市場の拡大、新興市場への投資によるクリエイティブビジネスの加速

従来のPC向けが中心であった当社の製品ラインに加えて、2014年3月期より発売を開始したモバイル製品ラインは、今後も高い成長が見込まれることから競合環境が激化する中、デジタルデザインの最先端で進化と拡大が進む3Dモデリングや3Dデザイン、3Dプリンティングに対応する機能をいち早く取り込み、当社が競争優位性を有するプロフェッショナルユーザー向けの新製品を2017年3月期に開発・投入し、更なる市場の拡大を見込んでいます。また、さらに、中国、インド、南米といった新興地域においてもデザイン産業の拡大が見込まれております。当社はユーザーのニーズに応える新製品を投入し、グローバルな市場における事業基盤を強化していくことで、クリエイティブビジネスの積極的な拡大を図ってまいります。

 

⑥ デジタル文具とクラウド統合による新たなコンシューマーユーザーの獲得

近年のモバイル情報機器とソーシャルネットワークの急速な普及と発展によって、コンシューマーのオリジナリティと発信力が大きく拡大しつつあります。また、スマートフォンやタブレットに加えて、アイデアを従来の紙とペンと同様に直感的に書きとめて共有できる新たなデジタル文具へのニーズも高まってきています。当社は、2016年9月にデジタル文具の事業展開をグローバルに推進するためのコンソーシアムを設立し、引き続き多くのパートナー企業とともに、クラウドとの統合による機能強化も含めて、新たなコンシューマー市場の創出に関わってまいります。また、グローバルなWebコミュニケーションの活用により、コンシューマーとモバイルユーザーに対するブランド認知を高め、ユーザーコミュニティーの形成を行ってまいります。

 

⑦ アクティブES技術と「WILL(Wacom Ink Layer Language)」によるテクノロジーソリューション事業の拡大

テクノロジーソリューション事業においては、2015年4月に量産を開始したアクティブES方式のデジタルペンに顧客の注目が集まっており、採用機種が大幅に増加しています。従来からのEMR方式のデジタルペンに加えて技術の複線化を図ることで、顧客にデジタルペン採用の選択肢を増やし、市場の創出・拡大を図ってまいります。また、当社が開発した「WILL」は、デジタルインクデータを標準化し、OSの違いを越えた交換や共有を可能とするもので、これによりデジタルインクの利用拡大とデジタルペンの更なる普及を促進し、テクノロジーソリューション事業の拡大に寄与することを目指しています。

 

「WILL」とデジタルサインソリューションによるワークフローとセキュリティビジネスの強化

ビジネスソリューション分野では、デジタルサインの利用によるワークフローの効率向上と高いセキュリティーが注目され、今後の拡大が見込まれる一方で、デジタルサイン以外の多様な認証技術の発達やモバイル化を背景に競合も激化しつつあります。これらの市場に対して、当社は、液晶サインタブレット製品だけでなく、当社の強みである「WILL」やサイン認証等のセキュリティ技術を活かしたサインソリューションの魅力を高めて、より迅速で効率的かつ安全な業務フローソリューションを提供してまいります。また、金融・流通分野において、ハードウエア、ソフトウエアが統合したソリューションへの関心が高まっており、事業拡大につなげてまいります。

グローバルビジネスシステムの活用による効率とスピードと収益性の向上

2016年4月より欧米でグローバルビジネスシステムの中心となる新基幹業務システムを稼働させましたが、当初想定したレベルで「効率とスピードと収益性を向上させるシステム運用」という目標を実現させるまでには至っていません。しかし、グローバル組織のもとで当初の目標を実現できるグローバルビジネスシステムを運用することの有効性は不変と考えており、引き続き、最適なシステムのあり方を検討し、実現の可能性を追求してまいります。

 

上記戦略の実行に注力する一方で、テクノロジーソリューション事業においては、市場環境と顧客動向の変化が激しいため不確実性が高く、業績が不安定に推移すると予想されます。そのため、ユーザー層の更なる拡大を図り、今後の事業の安定性向上に取り組んでまいります。

 

なお、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針は、以下のとおりであります。

(株式会社の支配に関する基本方針)

① 当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針の内容の概要

当社グループの目的である創造性にあふれる活き活きとした世界を実現し、当社の企業価値・株主共同の利益を継続的に向上させるためには、知的財産の拡大、付加価値の高い技術と製品の実現とともに、グローバルな企業文化の育成、競争力の高いグローバルな事業モデルの強化など長期的な事業成長と価値の向上への取組みが必要と考えています。また、その前提として、株主の皆様、お客様、取引先、従業員等のステークホルダーとの安定的な関係の構築が必要と考えています。

当社取締役会は、当社の企業価値・株主共同の利益の確保、向上に資さない当社株券等の大量買付行為や買付提案を行う者は、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者として適当でないと考えています。

 

② 当社の財産の有効な活用、適切な企業集団の形成その他の基本方針の実現に資する特別な取組みの概要

当社グループは、2015年4月に「ワコム戦略経営計画 SBP-2019」(中期経営計画)を策定し、2019年3月期に連結売上高1,200億円、連結売上高営業利益率12%、連結株主資本利益率20%以上を達成することを財務目標としてまいりましたが、当社グループの2016年3月期、2017年3月期の業績は、中期経営計画を大きく下回るものとなりました。

この状況を踏まえ、当社グループは、グローバル基幹業務システムの導入計画見直し等コスト構造の改善に向けた取組みに加え、当社グループの役員候補者の選定基準を定め取締役会に提言することを目的とした指名委員会の設置等経営判断の質の向上に向けた取組みを実施してまいります。

 

③ 基本方針に照らして不適切な者によって当社の財務及び事業の方針の決定が支配されることを防止するための取組みの概要(買収防衛策)

当社は、当社の企業価値・株主共同の利益を確保し、向上させることを目的として、2016年6月開催の定時株主総会において株主の皆様にご承認いただき、当社株式の大量取得行為に関する対応策(買収防衛策)(以下「本プラン」といいます。)を更新しました。

本プランは、当社株式の大量買付が行われる場合の手続を明確にし、株主の皆様が適切な判断をするために必要かつ十分な情報と時間を確保するとともに、買付者との交渉の機会を確保することにより、当社の企業価値・株主共同の利益を確保し、向上させることを目的としています。

具体的には、当社の発行済株式総数の20%以上となる株式の買付又は公開買付けを実施しようとする買付者には、必要な情報を事前に当社取締役会に提出していただきます。一方、当社取締役会は独立性の高い(ⅰ)当社社外取締役、(ⅱ)社外の有識者のいずれかに該当する委員3名以上で構成される独立委員会を設置し、独立委員会は外部専門家等の助言を独自に得た上、買付内容の検討、株主の皆様への情報開示と当社取締役会による代替案の提示、買付者との交渉等を行います。買付者が本プランの手続を遵守しない場合や、当社の企業価値・株主共同の利益を侵害する買付であると独立委員会が判断した場合は、対抗措置の発動(買付者等による権利行使は認められないとの行使条件を付した新株予約権の無償割当ての実施)を取締役会に勧告します。

 

④ 当社の財産の有効な活用、適切な企業集団の形成その他の基本方針の実現に資する特別な取組み及び本プランがいずれも基本方針に沿うものであり、当社の株主共同の利益を損なうものではなく、当社の会社役員の地位の維持を目的とするものでないことについて

当社取締役会は、前記「当社の財産の有効な活用、適切な企業集団の形成その他の基本方針の実現に資する特別な取組みの概要」についての各施策はいずれも当社の企業価値及び株主共同の利益を確保し、向上させることを目的とするものであることから、基本方針に沿うものであり、当社の株主共同の利益を損なうものではなく、当社の会社役員の地位の維持を目的とするものでないと判断しております。

また、当社取締役会は、本プランは基本方針に沿うものであり、当社の株主共同の利益を損なうものではなく、当社の会社役員の地位の維持を目的とするものでないと判断しております。その理由は以下の(イ)ないし(チ)に記載のとおりです。

(イ) 買収防衛策に関する指針の要件を完全に充足していること

本プランは、経済産業省及び法務省が2005年5月27日に発表した「企業価値・株主共同の利益の確保又は向上のための買収防衛策に関する指針」の定める三原則(企業価値・株主共同の利益の確保・向上の原則、事前開示・株主意思の原則、必要性・相当性の原則)を充足しています。

(ロ) 株主共同の利益の確保・向上の目的をもって導入されていること

本プランは、当社株券等に対する買付等がなされた際に、当該買付等に応じるべきか否かを株主の皆様が判断し、あるいは当社取締役会が代替案を提示するために必要な情報や時間を確保したり、株主の皆様のために買付者等と交渉を行うこと等を可能とすることを目的として導入されました。

(ハ) 株主意思を重視するものであること

本プランは、当社株主総会において本プランに係る委任に関する議案が承認されることにより導入されました。

また、当社取締役会は、一定の場合に本プランの発動の是非について、株主意思確認総会において、株主の皆様の意思を確認することとしています。さらに、本プランには、有効期間を約3年間とするいわゆるサンセット条項が付されており、かつ、その有効期間の満了前であっても、当社株主総会において上記の委任決議を撤回する旨の決議が行われた場合には、本プランはその時点で廃止されることになります。

(ニ)独立性の高い社外者の判断の重視と情報開示

本プランの発動に際しては、独立性の高い社外取締役から構成される独立委員会による勧告を必ず経ることとしています。さらに、独立委員会は、当社の費用で独立した第三者専門家等の助言を受けることができるものとされており、独立委員会による判断の公正さ・客観性がより強く担保される仕組みとなっております。

(ホ)当社取締役の任期は1年であること

当社は、取締役(監査等委員である取締役を除く。)の任期を1年としております。従って、毎年の取締役の選任を通じても、本プランにつき、株主の皆様のご意向を反映させることが可能となります。

(ヘ)合理的な客観的要件の設定

本プランは、合理的かつ詳細な客観的要件が充足されなければ発動されないように設定されており、当社取締役会による恣意的な発動を防止するための仕組みを確保しております。

(ト)第三者専門家の意見の取得

買付者等が出現すると、独立委員会は、当社の費用で独立した第三者(ファイナンシャル・アドバイザー、公認会計士、弁護士、コンサルタントその他の専門家を含みます。)の助言を受けることができるものとしています。

(チ)デッドハンド型やスローハンド型買収防衛策ではないこと

本プランは、当社の株券等を大量に買付けた者が指名し、株主総会で選任された取締役により、廃止することができるものとして設計されており、いわゆるデッドハンド型買収防衛策ではありません。また、当社は期差任期制を採用していないため、いわゆるスローハンド型買収防衛策でもありません。

 

 

4【事業等のリスク】

当社グループの経営成績、株価及び財務状況等に影響を及ぼす可能性のあるリスクには以下のようなものがあります。

なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2017年6月26日)現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営環境に関するリスク

① 為替レートの変動

当社グループの製品の販売は、日本国内に関しては当社で、海外に関しては大半を海外子会社で、また、製品の生産は、そのほとんどを台湾及び中華人民共和国の外注製造会社にて行っております。現在、決済通貨は米ドル、ユーロ、日本円等ですが、そのうち米ドルによる決済額が最も大きくなっております。米ドルに関しては、主に中華人民共和国からの製品購入と、アメリカ及びアジア・オセアニア地域への製品販売の決済額をバランスさせることを基本としていますが、販売地域別の製品ラインの動向や為替変動などを総合的に勘案しつつ、為替リスクの回避に努めております。また、ユーロなどの米ドル以外の通貨に関しては、変動幅などを考慮しつつ、為替予約等の柔軟な運用により為替リスクの回避に努めております。しかしながら、為替に急激な変動がある場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)事業活動に関するリスク

① 業績の季節的変動

当社グループの業績は、クリスマス商戦、年末商戦や国内における年度末需要などの影響により、下期に増加する傾向があります。また、製品投入の時期によって四半期の業績が変動する可能性があります。

 

② 市場環境の変化

当社グループは、世界各国で販売活動を行っていることや、クリエイティブビジネスにおける主なユーザーがデザイン制作現場等のプロフェッショナルクリエイターであること、当社のテクノロジーソリューション事業の主要顧客がスマートフォンメーカー、PC・タブレットメーカーであること等から、世界各国の経済動向、グラフィックス業界の動向、PC市場動向等が業績に影響を及ぼす可能性があります。

また、当社の製品は、Windows OSやMac OSに対応した製品を主力としており、製品構成上は、ハードウエアは共通であり、ドライバーソフトウエアのみが対応するOSによって異なっております。今後、当社製品が新規に登場又は普及するOSやCPU等の新しいプラットフォームへの対応に遅れた場合や、互換性確保に問題が起きた場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 海外進出及び国際的活動

当社グループは、国境・地域を越えた生産、販売等を行っているため、地政学的観点から地域紛争が発生する場合や現地の労使関係に問題が発生した場合などは、生産委託先による製品の製造や物流活動、当該地域の当社子会社の販売活動等に支障を生じる可能性があります。また、他の販売地域においても地域紛争などにより販売活動が影響を受け、業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

④ 特定の販売先への依存

当社グループの販売先は多岐にわたっておりますが、テクノロジーソリューション事業における主要販売先であるサムスングループに対する販売実績は、総販売実績に対し、前連結会計年度で21.6%、当連結会計年度で18.8%と比較的高い水準にあります。

サムスングループへの売上高は、サムスングループ製品の需要動向の影響を間接的に受ける可能性があります。また、サムスングループの経営戦略の変更等が当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

なお、販売実績は次のとおりであります。

 

相手先

前連結会計年度

(自  2015年4月1日

至  2016年3月31日)

当連結会計年度

(自  2016年4月1日

至  2017年3月31日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

サムスン電子グループ

16,771,052

21.6

13,380,509

18.8

 

⑤ 他社との競争

当社グループは、グローバル市場を指向した製品開発、マーケティングを基本戦略としていますが、特定の地域に特化した競合メーカーが、地域内シェアの獲得のために極端な市場戦略をとったり、国内産業保護政策などを利用して当社グループの参入を阻害する場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。

また、技術開発については、技術動向に留意し他社技術を積極的に評価しつつ、現行のペンタブレット技術に限定されずに進めていく必要がありますが、当社技術が短期間で陳腐化したり、ペンタブレットとは全く異なる入力手段が出現し、それが急速に普及した場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥ 外部企業への製造依存

当社グループは前述したように、ほとんどの製品は、主として中華人民共和国の外注製造会社に生産を委託しております。生産委託先は、大量生産能力とコスト競争力に加えて、急速な需要変動に対応する供給力を備えており、当社事業戦略上の重要な位置を占めています。しかしながら、今後、生産委託先の経営上の問題、あるいは、同社工場において自然災害等の不慮の事故が発生し、製品の継続的生産が難しくなる場合、もしくは、生産委託先の工場を変更又は追加し、工場側の習熟に時間を要する場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑦ 基幹部品、部材の供給と価格

今後、プラスチックケースや汎用部品のコストが上昇したり、IC、プリント基板、液晶等の汎用基幹部品が不足する場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。また、ペンスイッチ用セラミック部品やカスタムICなど当社独自の基幹部品についても、自然災害等によりセラミックメーカーやICメーカーからの継続的供給に問題が発生するなど、供給体制に問題が生じる場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、基幹部品についてのセカンドソースの早期確保や代替部品の開発に努めておりますが、汎用部品に関しては、長期需要予測による早期部品手配などによりリスクとコストの削減を図る必要があります。なお、当社グループ又は生産委託先が調達する部品に含まれる重金属・プラスチック等の素材について、各国の法規制又は当社製品の販売先の基準等により使用又は使用量の制限等に変更がある場合には、部品・設計の変更等が必要となり、製造コストや管理コストが上昇するなど、業績に影響を及ぼす可能性があります。また、かかる部品を含む製品を販売した後に、これらの規制又は基準が変更された場合にも、製品の取替えが要求されるなど、業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑧ 製品の欠陥又は重大な品質問題

当社グループは、品質維持に万全を期しておりますが、製造物責任賠償や大規模なリコールにつながる欠陥が明らかとなった場合は、賠償金その他による多額のコスト負担はもとより、当社グループ及び当社製品への信頼・評価に深刻な影響を与え、業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)法的規制及び訴訟等に関するリスク

① 知的財産権への抵触・侵害

当社グループは、新製品の開発・発売に際し、他社及び個人の特許権・商標権等への抵触・侵害が発生しないよう現地特許事務所等を利用して事前調査を行い、可能性が予見できる場合には回避策をとるなど、他社及び個人の知的財産権の侵害を未然に防止できるよう、万全の注意を払っております。しかしながら、各国の法制度の違いや、データベース調査の限界によって予見できないケースや、当社製品の発売後に権利化された特許権等に抵触するなどの可能性は完全に排除することはできません。そのような場合には、他社又は個人から特許権等の知的財産権の侵害としてクレームを受けたり、提訴される可能性があります。一方、他社から侵害があった場合も、クレームや訴訟等断固たる処置をとりますが、経過によっては、業績に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループの特許権等の知的財産権の権利期間が満了したり、あるいは、特許訴訟や無効審判請求などによって特許権の権利範囲の変更や無効の判断が出された場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 法的規制等

当社製品が販売されている各国においては、電磁波規制や安全規制、製造物責任(PL)関連法等が定められています。当社グループは、法規制の動向に留意し、製品・サービスの迅速な対応に努めておりますが、新規規制の制定や規制変更に関して十分な対応がとれない場合、また、我が国又は当社製品の生産委託先国において、輸出規制又は輸入規制の変更があった場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。また、関税などの監督当局による法令の解釈、規制、税率の変更などにより、業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

③ 独占禁止法適用等

世界主要地域において、当社グループのペンタブレット市場シェア(国内シェア:99%(期間:2016年1月1日~12月31日 株式会社BCN調べ)※)がさらに拡大し、各国政府より当社グループが技術の発達や自由な競争を妨げ、市場の発展や顧客利益を損なっていると判断された場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(※)世界シェアについては、公表されたデータがないため、記載しておりません。

 

④ コンプライアンスリスク

当社グループは、国内外で事業活動を行っており、また、関連する法令や規則は広範囲にわたっております。国内では、会社法、税法、金融商品取引法、独占禁止法、貿易関連諸法、環境に関係する法令等を、海外でもその地域における事業活動に関連する法令や規則を遵守することが求められております。

当社グループでは、コンプライアンス リスク コミッティやWacom Speak-up Lineを設置し、コンプライアンス推進体制を確立しております。役員及び従業員に対しては、ワコムコンプライアンス・ガイドを配付しセミナーを実施するなどして、コンプライアンスの理解を深める啓蒙活動を行うなど、コンプライアンスの全社的な徹底を図っております。

しかしながら、このような施策を講じてもコンプライアンス上のリスクを完全に取り除くことは困難であり、関連する法令や規則の義務を実行できない事態が生じた場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)その他のリスク

① 新株予約権(ストック・オプション)の付与

当社グループは、当社及び当社子会社の取締役及び従業員の経営参画意識を高めることを通じて業績向上を図るために、会社法第236条、第238条及び第239条の規定に基づき、ストック・オプションを発行しており、これらのストック・オプションが行使されれば新株が発行されるため、当社の1株当たりの株式価値は希薄化したり、短期的な需給バランスの変動が生じ、株価形成に影響を及ぼす可能性があります。

 

5【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

当社グループは、「a world alive with creativity」(創造性にあふれる活き活きとした世界)をビジョンとし、より豊かで創造的な暮らしを実現するために、自然で直感的な技術により人間のクリエイティビティを広げ、世界に貢献するグローバルリーダーを目指すことを基本方針として研究開発を推進しております。

現在の研究開発体制は、下図のとおりとなっており、活動の内容は、①基礎技術・要素技術の研究、②新製品の企画、商品化開発、③既存製品の改良・改善に大別されます。研究開発部門は、要素技術や製品のシステム構成を反映したグループによって構成されており、それぞれが地域を越えたグローバル組織として構成されています。ハードウエア関連の技術開発、製品開発は国内を中心に行い、クラウドサービスでのデジタルインク関連技術はブルガリア、ドライバーソフトウエアの開発は米国、デジタルサインとセキュリティ関連は英国を中心に開発しています。また、デジタルペンのOEM顧客向けカスタムデザインは台湾で行うなど、各技術の特徴・要求を考慮した組織を各地域に置き、開発活動を行っております。

新製品の企画・開発においては、製品企画、開発担当に加えて、品質、SCM、マーケティングを交えたプロジェクトチーム制を採用し、地域や組織を越えて柔軟に運用しております。これらにより、グローバルスタンダードとなりうる製品を、企画・開発から市場投入まで一貫して管理し、製品仕様の向上や開発期間の短縮を可能にしております。

その他の事業に含まれるエンジニアリングソリューションについては、エンジニアリングソリューション内にエンジニアリングを置き、電気設計分野におけるCADを中心としたソフトウエア製品の企画・開発から市場投入・販売まで一貫体制を取っております。

 

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当連結会計年度における各セグメント別の研究の目的、主要課題、研究成果及び研究開発費は、次のとおりであります。

なお、研究開発費については、各セグメントに配分できない基礎研究費用(398,491千円)が含まれており、当連結会計年度の研究開発費の総額は4,396,747千円となっております。

 

① ブランド製品事業

世界の先進ユーザーのニーズを先取りして、グローバルスタンダードとなりうる製品を継続的に市場に提供するため、新規技術・新規製品の開発に積極的に取り組むとともに、ユーザーインターフェイスの分野において知的財産権の拡大を図っております。また、新たなデジタル文具市場の開拓に向けて新規ハードウア製品の開発やそれに連携するクラウドソリューションやデジタルインク技術の開発などに取り組んでいます。

当連結会計年度においては、クリエイティブ製品では、ペンタブレット最高級モデル「Wacom Intuos Pro(ワコム インテュオス プロ)」の新シリーズやWindows OS搭載タブレット「Wacom MobileStudio Pro(ワコム モバイルステュディオ プロ)」、「Wacom Cintiq Pro(ワコム シンティック プロ)」などを業界最高レベルのペン性能とともに市場投入しました。また、次世代ペン技術の開発や3D機能の拡張、次期投入予定の新製品の開発にも取り組みました。コンシューマー製品では、新たなデジタル文具「Bamboo Slate (バンブー スレート)」や「Bamboo Folio (バンブー フォリオ)」を市場に投入し、また「Bamboo Fineline(バンブー ファインライン)」シリーズの新製品も市場投入しました。ビジネス用途向け製品では、液晶ペンタブレット「DTK(ディーティーケー) 1651」、サインタブレット「STU(エスティーユー) 540」「STU 300B」を市場投入しました。さらに、当社のハードウアと連携して活用できる「Wacom Cloud(ワコム クラウド)」などを立ち上げるとともに、デジタルインク技術である「WILL(Wacom Ink Layer Language)」を開発し、幅広いライセンス提供を開始しました。

ブランド製品事業に係る研究開発費は2,428,522千円であります。

 

② テクノロジーソリューション事業

EMR方式(電磁誘導方式)ペン・センサー技術に関しては、スマートフォン市場に加えて文教ソリューション及びデジタル文具市場の開拓を図るべく技術開発とソリューション提供を実施しました。アクティブES方式デジタルペン技術とタッチ技術については、タブレットや2 in 1システムでの搭載を拡大すべく、多数のプロジェクトを市場投入しました。また、OEM顧客のシステムへ当社技術を搭載していくことに加え、ITエコシステムの中で当社ペン技術が「事実上の標準」として位置付けられるように、OS等のプラットフォームパートナーと共にペンのレベルを進化させていく共同取組みを実施しており、より付加価値の高いソリューションを顧客へご提供できるように取り組んで参ります。

テクノロジーソリューション事業に係る研究開発費は1,569,712千円であります。

 

③ その他

製造業全般における製品設計及び設備設計の制御設計分野における開発生産性向上を実現するための、電気制御設計とハーネス設計用CADソフトウア製品と関連ソリューションの研究開発を続けております。

当連結会計年度においては、次世代型CADと位置付けているDCXシリーズの最新版「ECAD(イーキャド) DCX 2017」を、Premium、Professional、Standardの機能別3ラインナップで市場投入しました。

今後も市場のニーズを製品開発に活かすことで顧客満足度を高め、業務効率の向上に貢献できる製品及びソリューションの開発を進めてまいります。

その他の事業に係る研究開発費は22千円であります。

 

7【財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)財政状態の分析

当連結会計年度末における資産の残高は、50,249,583千円となり、前連結会計年度末と比べ1,317,049千円減少しました。主な変動は、商品及び製品が1,421,526千円、繰延税金資産(投資その他の資産)が1,235,678千円、ソフトウエアが899,228千円増加し、無形固定資産のその他が4,717,804千円減少したことによります。

負債の残高は、28,892,686千円となり、前連結会計年度末に比べ8,422,450千円増加しました。主な変動は、長期借入金が8,000,000千円、買掛金が1,379,060千円増加し、短期借入金が1,000,000千円減少したことによります。

純資産の残高は、21,356,897千円となり、前連結会計年度末に比べ9,739,499千円減少しました。主な変動は、親会社株主に帰属する当期純損失で5,534,484千円、剰余金の配当で2,960,611千円、自己株式の消却及び処分に伴い資本剰余金が1,414,455千円減少したことによります。この結果、自己資本比率は前連結会計年度末に比べ17.8ポイント減少し、42.2%となりました。

 

(2)キャッシュ・フローの分析

キャッシュ・フローの分析は、「第2 事業の状況 1 業績等の概要 (2) キャッシュ・フロー」をご参照ください。

 

(3)経営成績の分析

① 売上高及び営業損益の状況

当連結会計年度における売上高は71,313,987千円(前年同期比8.1%減)、営業損失は1,171,194千円(前年同期は営業利益3,664,362千円)となりました。

なお、当連結会計年度における売上高営業利益率は△1.6%(前年同期は4.7%)となり、前年同期を6.3ポイント下回る結果となりました。また、売上原価は、売上の減少に伴い43,748,217千円(前年同期比6.6%減)となりました。また、売上高に対する売上原価の比率は61.3%(前年同期は60.4%)となり、前年同期を0.9ポイント上回る結果となりました。

詳細につきましては、「第2 事業の状況 1 業績等の概要 (1) 業績」をご参照ください。

 

② 営業外損益及び経常損益の状況

営業外損益は、前連結会計年度の112,147千円の収益(純額)から、300,966千円の収益(純額)となり、経常損失は870,228千円(前年同期は経常利益3,776,509千円)となりました。主な要因としては、為替差益が161,321千円(前年同期は為替差損52,340千円)であったことがあげられます。

 

③ 特別損益及び親会社株主に帰属する当期純損益の状況

特別損益は、前連結会計年度の179,020千円の損失(純額)から、4,820,631千円の損失(純額)となり、親会社株主に帰属する当期純損失は、5,534,484千円(前年同期は親会社株主に帰属する当期純利益2,309,514千円)となりました。主な要因としては、減損損失が4,223,720千円(前年同期は47,933千円)、事業構造改善費用234,648千円(前年同期は119,739千円)であったことがあげられます。

また、1株当たり当期純損失金額は33.93円となりました。