文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは、「for a creative world」をビジョンとして掲げ「創造性に満ちた世界のために、私たちが提供できる技術」として「手書きだからこそ伝えられる気持ち」、「手書きでなくては磨き上げられないアイデア」を、デジタルの力でサポートしてまいりました。この理念の下で更に飛躍すべく、新たな中期経営計画「Wacom Chapter2」を策定し、「テクノロジー・リーダーシップ」、「アイランド&オーシャン」、「エクストリーム・フォーカス」という3つの全社戦略を柱とします。
①テクノロジー・リーダーシップ
当社グループではこれまで磨いてきた技術を改めて重視し、「技術を通じて市場での主導権を発揮する」ことを、「Wacom Chapter2」における最も大切な方針と位置付けています。具体的には、デジタルペンを中心としたコアの技術とコアを取り巻く新技術の取り込みに対する投資を増やし、製品開発に携わる技術者(エンジニア)だけでなく、お客様との窓口にエンジニアを再配置し、お客様との対話を充実させニーズを正確に汲み取り、最高の技術を提供することで最高の感動を届けます。
②アイランド&オーシャン
デジタルペンやデジタルインクの普及に伴い、「手書き」に対する市場の関心が高まる中、当社グループ全体の成長を導いていく戦略として「深耕と普及」を掲げます。「アイランド」は特定のお客様に最高の技術と品質で最高の感動を届ける「深耕」戦略を意味し、「オーシャン」はデジタルペン及びデジタルインクで当社グループの技術を市場全体へ拡大する「普及」戦略を意味します。二つの戦略を使い分けつつ、ブランド製品事業とテクノロジーソリューション事業が、市場へのアプローチにおいて目指すべき方向性を明らかにし、各々の事業の垣根を超えて緊密な連携を図ります。これにより新たな知見を生み出しやすくすることで、イノベーションの加速を推進します。また、2022年3月期連結売上高の1割程度を目安に新たな事業領域を開拓し、持続的な成長を達成する基盤づくりを並行して進めていきます。
③エクストリーム・フォーカス
会社の限られた経営資源を効率的、効果的に活用するため「大胆な選択と集中」を行います。お客様との対話を促す活動や技術革新への投資を積極的に行う一方で、それ以外の投資を最適化することで、安定的に利益を生み出す「利益重視の経営」を目指します。
(2)経営環境
2019年3月期において、世界経済は、各国の財政・金融政策により引き続き景気拡大が見込まれているものの、先行きとしては、米国における保護主義の台頭、英国のEU離脱交渉の不確実性、中東・アジアなどでの地政学上の緊張といった景気後退のリスクが世界経済に与える影響が懸念されます。為替の動向は、当面は対ドル、対ユーロともに不安定な展開が持続していくものと見込まれており、企業業績に与える影響に不透明感をもたらしています。一方で、IT市場は、IoT(モノのインターネット)によるデータソースの多様化、モバイル、クラウド、ビッグデータ、ソーシャルネットワークなどの技術革新に伴う情報処理の低価格化、利用の容易化がさらに進んでいくことが見込まれています。
(3)目標とする経営指標
このような状況下、前述の3つの戦略を柱に、2022年3月期において、連結営業利益率10%、連結売上高1,000億円、連結株主資本利益率15%から20%を達成することを目標とする経営指標とします。(想定為替レート:1ドル105円、1ユーロ130円)
(4)会社の対処すべき課題
①「テクノロジー・リーダーシップ」の推進
a. 最高技術責任者(CTO)による牽引
チーフテクノロジーオフィサー(CTO)のリーダーシップと戦略推進チーム(CTOオフィス)との協働により、基幹技術の開発に加えて、AI(人工知能)やVR(仮想現実)/MR(複合現実)などの先端技術との融合、新しい技術の創出といった技術の方向性(ロードマップ)を提示し、「テクノロジー・リーダーシップ」を牽引します。
b. エンジニアの増員と研究開発投資の引き上げ
エンジニアの採用を強化し増員を図るとともに、お客様の窓口となる組織へのエンジニアを再配置し、お客様の声を製品開発に反映させます。また、持続的な成長の観点から、コアとなる基礎技術の革新や先端技術との融合にも注力すべく、研究開発投資を積極的に行いイノベーションを加速させます。
c. 品質管理体制の見直しと強化
品質管理体制の強化と相互牽制体制強化のため、品質管理部門をCEOの直下に配置し、製品開発から製造工程に至る各段階において、相互に機能を高め合う体制を整備します。
また、出荷後の製品に対する品質モニタリング・システムと分析データの活用により、お客様の満足度向上と、製品設計の安定化促進や循環的な品質向上プロセスの強化を図ります。
d. デジタルインクのビッグデータへの活用
当社のデジタルペンから生み出されるデジタルインク(データ)は、「いつ、誰が、どこで、どんな状況で、どのような思いでこれを描(書)いたのか」という人間の軌跡を表すビッグデータであると認識し、インターネット技術やビッグデータとの組み合わせにより、VR/MRやAIといった最先端技術との連携を推進し、新しいデジタルペンの体験と価値を提供することを目指します。
②「アイランド&オーシャン」による緊密な連携
a. 「アイランド&オーシャン」戦略の背景
大手グローバルIT企業を中心に、パソコン、スマートフォン、タブレットなどの様々なデバイスにデジタルペンを付属させる動きが強まる中、中長期的にデジタルペンとデジタルインクを取り巻く市場への爆発的な普及期の到来に備え、プロフェッショナルユーザーを中心とするクリエイティビティ発揮のための最高品質体験を追求する深耕戦略(アイランド)と、デジタルペンとデジタルインクの技術のデファクトスタンダード化(事実上の標準化)を推し進める普及戦略(オーシャン)を使い分け、グループ全体の持続的な成長を目指します。
b. 創造性を追求するお客様へ最高のソリューションを提供(アイランド)
プロフェッショナルユーザーを対象としたクリエイティブビジネスの市場でも、3D技術の利用を含めた映画、コミックやゲームアプリケーションなどのデジタルコンテンツ製作が増加し、新興国を中心に新規参入企業が増加しています。このような潮流に対し、3Dプログラム/アプリケーション操作に対応した製品をリリースするなど、ユーザーのニーズに即した製品をいち早く市場に投入するとともに、圧倒的な品質と最高のサービスを提供することで、競争優位を維持していきます。VR向け3Dモデリングツールを開発する英国のソフトウェア会社Gravity Sketch Limited(グラビティ・スケッチ)に投資し、VR/MRなど先端技術との融合を目指していますが、今後、外部の技術を取り込むオープンイノベーションを通じた製品の共同開発も進めていきます。個々のお客様との密接な相互コミュニケーション実現のため、Wacom IDを導入し、きめ細かなカスタマーサポートを提供し、当社グループが提供するクラウドサービス(Inkspace)や電子商取引サービス(Marketplace)と共に、お客様のクリエイティブ活動を強力にサポートするワークフローを提案します。
c. デジタルペンとデジタルインクの技術の業界標準化(オーシャン)
当社グループの強みであるデジタルペンとデジタルインクの技術を活用し、パートナーとして関連市場に参入している大手グローバルIT企業と共に、当該技術の業界標準確立を目指しています。この一環として、2014年から当社のデジタルペンが他社の機器上でも作動する「ユニバーサル・ペン・フレームワーク(UPF)」を推進し、OEM各社や主要IT企業とともに互換性の確保に努めてきた結果、デジタルペン「Bamboo Ink」をコンシューマ向けの市場に導入し、Windowsデバイスにおいて初めて互換性を実現しました。今後さらに、オペレーティングシステム(OS)に左右されないデジタルペン向けカートリッジの量産体制を確立し、文具メーカーのデジタル化の動きなど他業界の新規市場の創出を支援、促進するビジネスを活性化させていきます。また、デジタル文具の普及や市場の発展推進のために設立した非営利団体「デジタルステーショナリーコソーシアム(DSC)」を通じて、OS間の垣根を超えた互換性を実現するデジタルインク技術「WILL™(Wacom Ink Layer Language)」の普及を推進しており、ビッグデータとしてのビジネス用途拡大の可能性を軸に、新しい価値の創造と普及を加速させていきます。
③「エクストリーム・フォーカス」に基づく行動の徹底
a. 利益重視の経営
お客様との対話を起点に、最高の体験を届けるために必要か否かを判断基準とし、経営資源の「大胆な選択と集中」を進めます。エンジニアの増員や研究開発に関する投資を積極的に行うと同時に、費用の最適化を通じて全体のコスト構造の改善につなげ、適切な売上成長との組み合わせにより安定的な利益を生み出す「利益重視の経営」を目指します。
b. パートナー企業との関係強化
研究開発、資材調達、生産、流通、販売・マーケティング、アフターサービス等の各オペレーションにおいて、パートナー企業との関係強化を図ります。各パートナー企業との関係構築を通じて、より広範で深い知見を共有しオペレーション品質の向上を図ります。
c. グローバルビジネスシステムプロジェクトに関する今後の方針
2016年4月に欧米の子会社での運用を開始した新基幹システムの稼働について一部の投資資産の減損処理を2017年3月期に行いました。現在、日本及びアジア地域の子会社を中心に稼働している基幹システムと欧米で稼働を始めた新基幹システムが併存した運用体制となっています。グローバル組織に対応したグローバルビジネスシステムを運用することの有効性は変わりませんが、中期経営計画においては基幹システムの変更に伴う大規模なシステム投資は想定しておらず、最適なシステムのあり方を検討し、実現可能性を追求してまいります。
なお、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針は、以下のとおりであります。
(株式会社の支配に関する基本方針)
①当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針の内容の概要
当社グループの目的である創造性にあふれる活き活きとした世界を実現し、当社の企業価値・株主共同の利益を継続的に向上させるためには、知的財産の拡大、付加価値の高い技術と製品の実現とともに、グローバルな企業文化の育成、競争力の高いグローバルな事業モデルの強化など長期的な事業成長と価値の向上への取組みが必要と考えています。また、その前提として、株主の皆様、お客様、取引先、従業員等のステークホルダーとの安定的な関係の構築が必要と考えています。
当社取締役会は、当社の企業価値・株主共同の利益の確保、向上に資さない当社株券等の大量買付行為や買付提案を行う者は、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者として適当でないと考えています。
②当社の財産の有効な活用、適切な企業集団の形成その他の基本方針の実現に資する特別な取組みの概要
当社グループは、2018年5月に新たな中期経営計画「Wacom Chapter2」を策定し、2022年3月期において、連結営業利益率10%、連結売上高1,000億円、連結株主資本利益率15%から20%を達成することを目標とする経営指標としております。
③基本方針に照らして不適切な者によって当社の財務及び事業の方針の決定が支配されることを防止するための取組みの概要(買収防衛策)
当社は、当社の企業価値・株主共同の利益を確保し、向上させることを目的として、2016年6月開催の定時株主総会において株主の皆様にご承認いただき、当社株式の大量取得行為に関する対応策(買収防衛策)(以下「本プラン」といいます。)を更新しました。
本プランは、当社株式の大量買付が行われる場合の手続を明確にし、株主の皆様が適切な判断をするために必要かつ十分な情報と時間を確保するとともに、買付者との交渉の機会を確保することにより、当社の企業価値・株主共同の利益を確保し、向上させることを目的としています。
具体的には、当社の発行済株式総数の20%以上となる株式の買付又は公開買付けを実施しようとする買付者には、必要な情報を事前に当社取締役会に提出していただきます。一方、当社取締役会は独立性の高い(ⅰ)当社社外取締役、(ⅱ)社外の有識者のいずれかに該当する委員3名以上で構成される独立委員会を設置し、独立委員会は外部専門家等の助言を独自に得た上、買付内容の検討、株主の皆様への情報開示と当社取締役会による代替案の提示、買付者との交渉等を行います。買付者が本プランの手続を遵守しない場合や、当社の企業価値・株主共同の利益を侵害する買付であると独立委員会が判断した場合は、対抗措置の発動(買付者等による権利行使は認められないとの行使条件を付した新株予約権の無償割当ての実施)を取締役会に勧告します。
④当社の財産の有効な活用、適切な企業集団の形成その他の基本方針の実現に資する特別な取組み及び本プランがいずれも基本方針に沿うものであり、当社の株主共同の利益を損なうものではなく、当社の会社役員の地位の維持を目的とするものでないことについて
当社取締役会は、前記「当社の財産の有効な活用、適切な企業集団の形成その他の基本方針の実現に資する特別な取組みの概要」についての各施策はいずれも当社の企業価値及び株主共同の利益を確保し、向上させることを目的とするものであることから、基本方針に沿うものであり、当社の株主共同の利益を損なうものではなく、当社の会社役員の地位の維持を目的とするものでないと判断しております。
また、当社取締役会は、本プランは基本方針に沿うものであり、当社の株主共同の利益を損なうものではなく、当社の会社役員の地位の維持を目的とするものでないと判断しております。その理由は以下の(イ)ないし(チ)に記載のとおりです。
(イ) 買収防衛策に関する指針の要件を完全に充足していること
本プランは、経済産業省及び法務省が2005年5月27日に発表した「企業価値・株主共同の利益の確保又は向上のための買収防衛策に関する指針」の定める三原則(企業価値・株主共同の利益の確保・向上の原則、事前開示・株主意思の原則、必要性・相当性の原則)を充足しています。
(ロ) 株主共同の利益の確保・向上の目的をもって導入されていること
本プランは、当社株券等に対する買付等がなされた際に、当該買付等に応じるべきか否かを株主の皆様が判断し、あるいは当社取締役会が代替案を提示するために必要な情報や時間を確保したり、株主の皆様のために買付者等と交渉を行うこと等を可能とすることを目的として導入されました。
(ハ) 株主意思を重視するものであること
本プランは、当社株主総会において本プランに係る委任に関する議案が承認されることにより導入されました。
また、当社取締役会は、一定の場合に本プランの発動の是非について、株主意思確認総会において、株主の皆様の意思を確認することとしています。さらに、本プランには、有効期間を約3年間とするいわゆるサンセット条項が付されており、かつ、その有効期間の満了前であっても、当社株主総会において上記の委任決議を撤回する旨の決議が行われた場合には、本プランはその時点で廃止されることになります。
(ニ)独立性の高い社外者の判断の重視と情報開示
本プランの発動に際しては、独立性の高い社外取締役から構成される独立委員会による勧告を必ず経ることとしています。さらに、独立委員会は、当社の費用で独立した第三者専門家等の助言を受けることができるものとされており、独立委員会による判断の公正さ・客観性がより強く担保される仕組みとなっております。
(ホ)当社取締役の任期は1年であること
当社は、取締役(監査等委員である取締役を除く。)の任期を1年としております。従って、毎年の取締役の選任を通じても、本プランにつき、株主の皆様のご意向を反映させることが可能となります。
(ヘ)合理的な客観的要件の設定
本プランは、合理的かつ詳細な客観的要件が充足されなければ発動されないように設定されており、当社取締役会による恣意的な発動を防止するための仕組みを確保しております。
(ト)第三者専門家の意見の取得
買付者等が出現すると、独立委員会は、当社の費用で独立した第三者(ファイナンシャル・アドバイザー、公認会計士、弁護士、コンサルタントその他の専門家を含みます。)の助言を受けることができるものとしています。
(チ)デッドハンド型やスローハンド型買収防衛策ではないこと
本プランは、当社の株券等を大量に買付けた者が指名し、株主総会で選任された取締役により、廃止することができるものとして設計されており、いわゆるデッドハンド型買収防衛策ではありません。また、当社は期差任期制を採用していないため、いわゆるスローハンド型買収防衛策でもありません。
当社グループの経営成績、株価及び財務状況等に影響を及ぼす可能性のあるリスクには以下のようなものがあります。
なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2018年6月25日)現在において、当社グループが判断したものであります。
(1)経営環境に関するリスク
①為替レートの変動
当社グループの製品の販売は、日本国内に関しては当社で、海外に関しては大半を海外子会社で、また、製品の生産は、そのほとんどを台湾及び中華人民共和国の外注製造会社にて行っております。現在、決済通貨は米ドル、ユーロ、日本円等ですが、そのうち米ドルによる決済額が最も大きくなっております。米ドルに関しては、主に中華人民共和国からの製品購入と、アメリカ及びアジア・オセアニア地域への製品販売の決済額をバランスさせることを基本としていますが、販売地域別の製品ラインの動向や為替変動などを総合的に勘案しつつ、為替リスクの回避に努めております。また、ユーロなどの米ドル以外の通貨に関しては、変動幅などを考慮しつつ、為替予約等の柔軟な運用により為替リスクの回避に努めております。しかしながら、為替に急激な変動がある場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。
(2)事業活動に関するリスク
①業績の季節的変動
当社グループの業績は、クリスマス商戦、年末商戦や国内における年度末需要などの影響により、下期に増加する傾向があります。また、製品投入の時期によって四半期の業績が変動する可能性があります。
②市場環境の変化
当社グループは、世界各国で販売活動を行っていることや、クリエイティブビジネスにおける主なユーザーがデザイン制作現場等のプロフェッショナルクリエイターであること、当社のテクノロジーソリューション事業の主要顧客がスマートフォンメーカー、PC・タブレットメーカーであること等から、世界各国の経済動向、グラフィックス業界の動向、PC市場動向等が業績に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社の製品は、Windows OSやMac OSに対応した製品を主力としており、製品構成上は、ハードウエアは共通であり、ドライバーソフトウエアのみが対応するOSによって異なっております。今後、当社製品が新規に登場又は普及するOSやCPU等の新しいプラットフォームへの対応に遅れた場合や、互換性確保に問題が起きた場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。
③海外進出及び国際的活動
当社グループは、国境・地域を越えた生産、販売等を行っているため、地政学的観点から地域紛争が発生する場合や現地の労使関係に問題が発生した場合などは、生産委託先による製品の製造や物流活動、当該地域の当社子会社の販売活動等に支障を生じる可能性があります。また、他の販売地域においても地域紛争などにより販売活動が影響を受け、業績に影響を及ぼす可能性があります。
④特定の販売先への依存
当社グループの販売先は多岐にわたっておりますが、テクノロジーソリューション事業における主要販売先であるサムスングループに対する販売実績は、総販売実績に対し、前連結会計年度で18.8%、当連結会計年度で15.4%と比較的高い水準にあります。
サムスングループへの売上高は、サムスングループ製品の需要動向の影響を間接的に受ける可能性があります。また、サムスングループの経営戦略の変更等が当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
なお、販売実績は次のとおりであります。
|
相手先 |
前連結会計年度 (自 2016年4月1日 至 2017年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2017年4月1日 至 2018年3月31日) |
||
|
金額(千円) |
割合(%) |
金額(千円) |
割合(%) |
|
|
サムスン電子グループ |
13,380,509 |
18.8 |
12,706,477 |
15.4 |
⑤他社との競争
当社グループは、グローバル市場を指向した製品開発、マーケティングを基本戦略としていますが、特定の地域に特化した競合メーカーが、地域内シェアの獲得のために極端な市場戦略をとったり、国内産業保護政策などを利用して当社グループの参入を阻害する場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。
また、技術開発については、技術動向に留意し他社技術を積極的に評価しつつ、現行のペンタブレット技術に限定されずに進めていく必要がありますが、当社技術が短期間で陳腐化したり、ペンタブレットとは全く異なる入力手段が出現し、それが急速に普及した場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑥外部企業への製造依存
当社グループは前述したように、ほとんどの製品は、主として中華人民共和国の外注製造会社に生産を委託しております。生産委託先は、大量生産能力とコスト競争力に加えて、急速な需要変動に対応する供給力を備えており、当社事業戦略上の重要な位置を占めています。しかしながら、今後、生産委託先の経営上の問題、あるいは、同社工場において自然災害等の不慮の事故が発生し、製品の継続的生産が難しくなる場合、もしくは、生産委託先の工場を変更又は追加し、工場側の習熟に時間を要する場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑦基幹部品、部材の供給と価格
今後、プラスチックケースや汎用部品のコストが上昇したり、IC、プリント基板、液晶等の汎用基幹部品が不足する場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。また、ペンスイッチ用セラミック部品やカスタムICなど当社独自の基幹部品についても、自然災害等によりセラミックメーカーやICメーカーからの継続的供給に問題が発生するなど、供給体制に問題が生じる場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、基幹部品についてのセカンドソースの早期確保や代替部品の開発に努めておりますが、汎用部品に関しては、長期需要予測による早期部品手配などによりリスクとコストの削減を図る必要があります。なお、当社グループ又は生産委託先が調達する部品に含まれる重金属・プラスチック等の素材について、各国の法規制又は当社製品の販売先の基準等により使用又は使用量の制限等に変更がある場合には、部品・設計の変更等が必要となり、製造コストや管理コストが上昇するなど、業績に影響を及ぼす可能性があります。また、かかる部品を含む製品を販売した後に、これらの規制又は基準が変更された場合にも、製品の取替えが要求されるなど、業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑧製品の欠陥又は重大な品質問題
当社グループは、品質維持に万全を期しておりますが、製造物責任賠償や大規模なリコールにつながる欠陥が明らかとなった場合は、賠償金その他による多額のコスト負担はもとより、当社グループ及び当社製品への信頼・評価に深刻な影響を与え、業績に影響を及ぼす可能性があります。
(3)法的規制及び訴訟等に関するリスク
①知的財産権への抵触・侵害
当社グループは、新製品の開発・発売に際し、他社及び個人の特許権・商標権等への抵触・侵害が発生しないよう現地特許事務所等を利用して事前調査を行い、可能性が予見できる場合には回避策をとるなど、他社及び個人の知的財産権の侵害を未然に防止できるよう、万全の注意を払っております。しかしながら、各国の法制度の違いや、データベース調査の限界によって予見できないケースや、当社製品の発売後に権利化された特許権等に抵触するなどの可能性は完全に排除することはできません。そのような場合には、他社又は個人から特許権等の知的財産権の侵害としてクレームを受けたり、提訴される可能性があります。一方、他社から侵害があった場合も、クレームや訴訟等断固たる処置をとりますが、経過によっては、業績に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループの特許権等の知的財産権の権利期間が満了したり、あるいは、特許訴訟や無効審判請求などによって特許権の権利範囲の変更や無効の判断が出された場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。
②法的規制等
当社製品が販売されている各国においては、電磁波規制や安全規制、製造物責任(PL)関連法等が定められています。当社グループは、法規制の動向に留意し、製品・サービスの迅速な対応に努めておりますが、新規規制の制定や規制変更に関して十分な対応がとれない場合、また、我が国又は当社製品の生産委託先国において、輸出規制又は輸入規制の変更があった場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。また、関税などの監督当局による法令の解釈、規制、税率の変更などにより、業績に影響を及ぼす可能性があります。
③独占禁止法適用等
世界主要地域において、当社グループのペンタブレット市場シェア(国内シェア:99%(期間:2017年1月1日~12月31日 株式会社BCN調べ)※)がさらに拡大し、各国政府より当社グループが技術の発達や自由な競争を妨げ、市場の発展や顧客利益を損なっていると判断された場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。
(※)世界シェアについては、公表されたデータがないため、記載しておりません。
④コンプライアンスリスク
当社グループは、国内外で事業活動を行っており、また、関連する法令や規則は広範囲にわたっております。国内では、会社法、税法、金融商品取引法、独占禁止法、貿易関連諸法、環境に関係する法令等を、海外でもその地域における事業活動に関連する法令や規則を遵守することが求められております。
当社グループでは、コンプライアンス リスク コミッティやWacom Speak-up Lineを設置し、コンプライアンス推進体制を確立しております。役員及び従業員に対しては、ワコムコンプライアンス・ガイドを配付しセミナーを実施するなどして、コンプライアンスの理解を深める啓蒙活動を行うなど、コンプライアンスの全社的な徹底を図っております。
しかしながら、このような施策を講じてもコンプライアンス上のリスクを完全に取り除くことは困難であり、関連する法令や規則の義務を実行できない事態が生じた場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。
(4)その他のリスク
①新株予約権(ストック・オプション)の付与
当社グループは、当社及び当社子会社の取締役及び従業員の経営参画意識を高めることを通じて業績向上を図るために、会社法第236条、第238条及び第239条の規定に基づき、ストック・オプションを発行しており、これらのストック・オプションが行使されれば新株が発行されるため、当社の1株当たりの株式価値は希薄化したり、短期的な需給バランスの変動が生じ、株価形成に影響を及ぼす可能性があります。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度(2017年4月1日から2018年3月31日まで)での当社グループを取り巻く事業環境において、モバイル、クラウド、ビッグデータ、ソーシャルメディアが社会に浸透し、IT分野の新たな産業プラットフォームを形成する動きがより活発化しました。同期間の主要通貨に対する円相場は、金融緩和が継続する日本と緩やかに金融引き締めに転じつつある欧米との間の金融政策の違いなどを反映し、前年同期に比べて、ドル、ユーロ、新興国通貨のいずれに対しても概ね円安傾向で推移しました。
このような事業環境の下、当社グループは、クリエイティブユーザー向けペンタブレット市場のグローバルリーダーとして、デジタルペンやデジタルインクの技術で市場を主導するとともに、IoT(モノのインターネット)、VR(仮想現実)/AR(拡張現実)、3D(三次元)プリンティング、AI(人工知能)、セキュリティ(安全性)などを新たな成長分野と捉えて、より付加価値の高い製品の開発やパートナーの拡大に取り組みました。また、中長期的な企業価値の向上をより確かなものにするため、製品開発力の強化や生産性の向上、コスト構造の改善といった経営課題にも取り組みました。
ブランド製品事業においては、主力のクリエイティブビジネスで、前期より順次市場投入したペンタブレット製品、ディスプレイ製品及びモバイル製品の新製品について、市場への発信に取り組むとともに、地域マーケティングの強化による顧客コミュニティへの積極的な販売活動を展開しました。コンシューマビジネスでは、Windows搭載タブレットに最適なスタイラス製品を市場投入するとともに、スマートパッド製品の拡販に努めるなどデジタル文具市場におけるハイエンドユーザー向け製品ラインアップの強化を図りました。ビジネスソリューションでは、各種用紙に手書きしたインク情報をリアルタイムにモバイル機器やネットワークへ安全に取り込める新製品を発表するなど、ビジネスワークフローの効率改善やセキュリティを強化した製品の拡販に取り組みました。このような中、当連結会計年度においては、新製品の売上貢献などから、ブランド製品事業全体としての売上は前年同期を上回る堅調な結果となりました。
テクノロジーソリューション事業においては、EMR(Electro Magnetic Resonance)方式やアクティブES(Active Electrostatic)方式のデジタルペン技術の業界標準化をOSの壁を越えて牽引し、タブレット分野でのデジタルペン技術の採用拡大を図りました。さらに、教育市場での事業機会の拡大や、多くのパートナー企業との協働を通じてデジタル文具市場の拡大に取り組みました。スマートフォン向けでもサムスン社の最新モデルGalaxy Note8向けに量産出荷を進めました。このような中、当連結会計年度においては、スマートフォン向けの売上が、サムスン社の最新モデル向けに拡大しましたが旧モデルへの需要が消失した影響などを受け、減収となりました。一方で、タブレット向けの売上が大幅に増加したことなどから、テクノロジーソリューション事業全体としての売上は前年同期を上回る好調な結果となりました。
コーポレート部門及び全社的な取り組みとしては、デジタルインクの標準として「WILL™(Wacom Ink Layer Language)」の普及を引き続き推進するとともに、「WILL™」を活用した事業・技術開発のスタートアップ企業向け支援プログラム「ワコム・イノベーション・ハブ」を5月に発表しました。さらに、「WILL™」の普及を促進するためのイベント「Connected Ink(コネクティドインク)」を6月に中国、8月にドイツ、11月に東京で前期に引き続き開催し、パートナー企業の拡大にも努めました。そして、経営課題への取り組みについては、コスト構造の改善に向けた計画を立案し、推進しました。また、経営判断の質の向上に向けて、4月に社外取締役を中心に構成する指名委員会を設置し、当社グループの役員等(代表取締役、取締役、重要な経営幹部)に対する選定基準の策定作業を進め、10月に2018年4月1日付で就任する次期代表取締役社長を選定し、発表しました。
なお、セグメント情報で「その他」に区分しているエンジニアリングソリューション事業は、12月1日付での会社分割により設立した新設会社に承継させ、当該新設会社の全株式を日東工業株式会社に譲渡しました。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(企業結合等関係)」に記載のとおりであります。
この結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は次のとおりとなりました。
a. 財政状態
当連結会計年度末における資産の残高は、50,909,513千円となり、前連結会計年度末と比べ659,930千円増加しました。主な変動は、現金及び預金が4,952,199千円増加し、商品及び製品が2,029,438千円、ソフトウエアが1,226,424千円、繰延税金資産(投資その他の資産)が1,105,425千円減少したことによります。
負債の残高は、28,241,032千円となり、前連結会計年度末に比べ651,654千円減少しました。主な変動は、未払法人税等が177,381千円、賞与引当金が100,635千円増加し、買掛金が381,177千円、その他流動負債が575,950千円、退職給付に係る負債が114,862千円減少したことによります。
純資産の残高は、22,668,481千円となり、前連結会計年度末に比べ1,311,584千円増加しました。主な変動は、親会社株主に帰属する当期純利益で2,361,885千円増加し、剰余金の配当で974,227千円減少したことによります。
この結果、自己資本比率は前連結会計年度末に比べ2.3ポイント増加し、44.5%となりました。
b. 経営成績
当連結会計年度における売上高は82,262,867千円(前年同期比15.4%増)、営業利益は3,526,717千円(前年同期は営業損失1,171,194千円)、経常利益は3,584,698千円(前年同期は経常損失870,228千円)、親会社株主に帰属する当期純利益は2,361,885千円(前年同期は親会社株主に帰属する当期純損失5,534,484千円)となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は、前連結会計年度末と比べ、4,952,199千円増加(前年同期は160,103千円減少)し、19,157,127千円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は、6,781,272千円(前年同期は121,928千円の収入)となりました。主な増加は、税金等調整前当期純利益4,178,745千円、減価償却費2,421,316千円、たな卸資産の減少額2,069,087千円であり、主な減少は、事業譲渡益697,926千円、仕入債務の減少額471,553千円、法人税等の支払額714,239千円です。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は、767,231千円(前年同期は3,479,898千円の使用)となりました。主な内訳は、工具、器具及び備品等の有形固定資産の取得による支出1,042,818千円、ソフトウエアの取得による支出251,457千円、事業譲渡による収入571,881千円です。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は、974,290千円(前年同期は3,298,702千円の収入)となりました。主な内訳は、配当金の支払額974,290千円です。
③生産、受注及び販売の実績
a. 生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2017年4月1日 至 2018年3月31日) |
前年同期比(%) |
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ブランド製品事業(千円) |
22,653,554 |
97.3 |
|
テクノロジーソリューション事業 (千円) |
23,310,248 |
140.7 |
|
報告セグメント計(千円) |
45,963,802 |
115.4 |
|
その他(千円) |
33,858 |
53.8 |
|
合計(千円) |
45,997,660 |
115.3 |
(注) 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
b. 製品仕入実績
当連結会計年度の製品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2017年4月1日 至 2018年3月31日) |
前年同期比(%) |
|
ブランド製品事業(千円) |
83,583 |
143.3 |
|
テクノロジーソリューション事業 (千円) |
- |
- |
|
報告セグメント計(千円) |
83,583 |
143.3 |
|
その他(千円) |
151,469 |
93.7 |
|
合計(千円) |
235,052 |
106.9 |
(注) 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
c. 受注実績
当社グループは見込み生産を行っているため、該当事項はありません。
d. 販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2017年4月1日 至 2018年3月31日) |
前年同期比(%) |
|
ブランド製品事業(千円) |
48,173,062 |
109.8 |
|
テクノロジーソリューション事業 (千円) |
33,647,857 |
125.8 |
|
報告セグメント計(千円) |
81,820,919 |
115.8 |
|
その他(千円) |
441,948 |
64.8 |
|
合計(千円) |
82,262,867 |
115.4 |
(注)1.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
|
相手先 |
前連結会計年度 (自 2016年4月1日 至 2017年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2017年4月1日 至 2018年3月31日) |
||
|
金額(千円) |
割合(%) |
金額(千円) |
割合(%) |
|
|
サムスン電子グループ |
13,380,509 |
18.8 |
12,706,477 |
15.4 |
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
3.サムスン電子グループには、主に、Samsung Electronics Japan Co., Ltd.、Samsung Electronics Vietnam Thai Nguyen Co., Ltd.、Samsung Electronics Co., Ltd.が含まれております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成には、経営者による会計方針の採用や、資産・負債及び収益・費用の計上及び開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者はこれらの見積りについて、過去の実績等を勘案し、合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り項目特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a. 経営成績等
当社グループのセグメントごとの業績に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。
◎ ブランド製品事業
<クリエイティブビジネス>
クリエイティブビジネスの売上は前年同期を僅かに上回りました。業界にイノベーションを起こして市場でのリーダーシップをさらに強化するために、VR(仮想現実)/AR(拡張現実)分野といった成長市場に対応した新製品や次世代デジタルペン技術の開発に引き続き取り組みました。
○ ペンタブレット製品
「Intuos Pro(インテュオス プロ)」は、前期に発表した新製品の需要が弱含みに推移した一方、「Intuos」は、先進国を中心に堅調に売上を伸ばしました。また、前期に発表した「Intuos 3D」も売上に貢献しました。新興地域向けの低価格エントリーモデル「One by Wacom(ワン バイ ワコム)」は、出荷台数が前年同期比で2割増加し、新規ユーザーを獲得しました。これらの結果、ペンタブレット製品全体の売上は小幅ながら前年同期を上回りました。
○ モバイル製品
デジタルペン搭載タブレット市場が拡大し、競争環境が大きく変化しました。プロクリエイターの制作プロセスを支える当社の高機能モデルへの需要は継続する一方、前期に発表した新製品「Wacom MobileStudio Pro(ワコム モバイルスタジオ プロ)」が製品ライフサイクルの後期に入ったことで販売が減速しました。これらの結果、モバイル製品全体の売上は前年同期を下回る結果となりました。
○ ディスプレイ製品
既存モデルが新製品への移行期に入ったことで減収となりました。一方、前年同期に発表し順次販売を開始した、次世代デジタルペン技術に対応した液晶ペンタブレット「Wacom Cintiq Pro(ワコム シンティック プロ)」の13インチサイズ と16インチサイズの両モデルが売上に貢献しました。これらの結果、ディスプレイ製品全体の売上は前年同期を上回りました。
<コンシューマビジネス>
前期に発表した「Bamboo Slate(バンブー スレート)」や「Bamboo Folio(バンブー フォリオ)」は販売が鈍化したことで減収となりました。一方、6月に発表した、マイクロソフト社との共同開発によるWindows対応タブレットに最適なスタイラス「Bamboo Ink(バンブー インク)」が北米を中心に売上を拡大しました。これらの結果、コンシューマビジネス全体の売上は前年同期から大幅に増加しました。
<ビジネスソリューション>
液晶サインタブレット製品「STU(エスティーユー)」シリーズは、特に欧州での競争関係の変化や前期にあった大型案件の反動減により減収となりました。一方、液晶ペンタブレット製品「DT(ディーティー)」シリーズは、北米の金融機関向けなどの販売が好調に推移しました。これらの結果、ビジネスソリューション全体の売上は前年同期を順調に上回りました。
この結果、売上高は48,173,062千円(前年同期比9.8%増)、セグメント利益は6,469,681千円(同13.8%増)となりました。また、セグメント資産は前連結会計年度末に比べ2,377,941千円減少の21,176,949千円となりました。
◎ テクノロジーソリューション事業
<スマートフォン向けペン・センサーシステム>
サムスン社の最新モデルGalaxy Note8向けの量産出荷が順調に推移しましたが、前モデルGalaxy Note7への需要を前期に消失した影響が当期にも及んだことから、売上は前年同期を下回りました。
<タブレット・ノートPC向けペン・センサーシステム>
アクティブES方式デジタルペン製品は、タブレットメーカー各社から高い評価を得て採用が拡大しております。特に、HP社、レノボ社、デル社、富士通社向け出荷が好調に推移し、売上を拡大しました。また、EMR方式デジタルペン製品も、グーグル社のChromebookで採用されるなど、教育市場向けで売上を拡大しました。
この結果、売上高は33,647,857千円(前年同期比25.8%増)、セグメント利益は5,677,803千円(同132.4%増)となりました。また、セグメント資産は前連結会計年度末に比べ1,189,166千円増加の9,603,110千円となりました。
◎ その他
12月1日付でエンジニアリングソリューション事業を譲渡した影響などにより、売上は前年同期を下回りました。
この結果、売上高は441,948千円(前年同期比35.2%減)、セグメント損失は65,318千円(前年同期は営業損失32,420千円)となりました。なお、セグメント資産の残高はありません(前年同期は367,258千円)。
b. 経営成績に影響を与える大きな要因
当社グループの経営成績に影響を与える大きな要因は「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。当社グループは、当連結会計年度において、為替レートの変動といった経営観環境に関する要因、市場環境の変化、取引先との依存関係、他社との競争、基幹部品・部材の供給と価格、製品の欠陥又は品質問題といった事業活動に関する要因、さらには法的規制及び訴訟等の発生可能性に留意し、これらの低減・回避等の対応に努めました。なお、当連結会計年度末現在において、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載されたリスクに関する重要な事象等は存在しておりません。
c. 資本の財源及び資金の流動性
ⅰ)資金需要
当社グループの事業活動における資金需要の主なものは、VR(仮想現実)/AR(拡張現実)分野、さらにはMR(複合現実)分野といった成長市場に対応した新製品や次世代デジタルペン技術にかかる研究開発費、量産出荷のための金型設備投資、コーポレート部門における業務効率向上のためのITシステム投資です。なお、設備もしくはシステムとして資産計上される資本的支出の規模は、毎期20億円~25億円程度を目安としております。当連結会計年度においては、金型投資の一部について新製品量産開始の遅れにより今期にずれ込んだこと等が影響し、総額約15.1億円となりました。
ⅱ)資本の財源及び資金の流動性
当社グループの資金調達、資金運用等に関する取り組み方針につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(金融商品関係)」に記載のとおりであります。なお、当連結会計年度においては、運転資金の効率的な調達を行うため、取引銀行とコミットメントライン契約(総額20億円)を新たに締結しました。
d. 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、この度、2019年3月期を初年度とする新たな中期経営計画「Wacom Chapter 2」を策定し、その最終年度である2022年3月期において以下の経営指標を達成することを目標としております。
(収益性) 連結営業利益率 10%
(事業規模) 連結売上高 1,000億円
(資本効率) 連結株主資本利益率 15~20%
なお、当連結会計年度においては、連結営業利益率4.3%(前年同期は△1.6%)、連結売上高823億円(前年同期比15.4%増)、連結株主資本利益率10.8%(前年同期は△21.2%)でした。引き続きこれらの指標について改善されるよう取り組んでまいります。
当社は、2017年9月13日開催の取締役会において、エンジニアリングソリューション事業を会社分割により新設会社に承継させることを決議し、当該新設会社の全株式を、日東工業株式会社に譲渡する旨の契約を同日に締結いたしました。
詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(企業結合等関係)」に記載のとおりであります。
当社グループは、「for a creative world」をビジョンとし、より豊かで創造的な暮らしを実現するために、自然で直感的な技術により人間のクリエイティビティを広げ、世界に貢献するグローバルリーダーを目指すことを基本方針として研究開発を推進しております。
当社グループの研究開発体制は、下図のとおりとなっており、活動の内容は、①基礎技術・要素技術の研究、②新製品の企画、商品化開発、③既存製品の改良・改善に大別されます。研究開発部門は、要素技術や製品のシステム構成を反映したグループによって構成されており、それぞれが地域を越えたグローバル組織として構成されています。ハードウエア関連の技術開発、製品開発は国内を中心に行い、クラウドサービスでのデジタルインク関連技術はブルガリア、ドライバーソフトウエアの開発は米国、デジタルサインとセキュリティ関連は英国を中心に開発しています。また、デジタルペンのOEM顧客向けカスタムデザインは台湾で行うなど、各技術の特徴・要求を考慮した組織を各地域に置き、開発活動を行っております。
新製品の企画・開発においては、製品企画、開発担当に加えて、品質、SCM、マーケティングを交えたプロジェクトチーム制を採用し、地域や組織を越えて柔軟に運用しております。これらにより、グローバルスタンダードとなりうる製品を、企画・開発から市場投入まで一貫して管理し、製品仕様の向上や品質の確保、開発期間の短縮を可能にしております。
その他の事業に含まれるエンジニアリングソリューションについては、エンジニアリングソリューション内にエンジニアリングを置き、電気設計分野におけるCADを中心としたソフトウエア製品の企画・開発から市場投入・販売まで一貫体制を取っております。なお、エンジニアリングソリューションは2017年12月に事業を譲渡しております。
当連結会計年度における各セグメント別の研究の目的、主要課題、研究成果及び研究開発費は、次のとおりであります。
なお、研究開発費については、各セグメントに配分できない基礎研究費用(361,479千円)が含まれており、当連結会計年度の研究開発費の総額は4,384,759千円となっております。
①ブランド製品事業
世界の先進ユーザーのニーズを先取りして、グローバルスタンダードとなりうる製品を継続的に市場に提供するため、新規技術・新規製品の開発に積極的に取り組むとともに、ユーザーインターフェイスの分野において知的財産権の拡大を図っております。また、急速に普及しつつあるVR(仮想現実)コンテンツや3D(三次元)制作に向けたソリューションや新たなデジタル文具市場の開拓に向けて新規ハードウエア製品やそれに連携するクラウドソリューションやデジタルインク技術の開発などに取り組んでおります。
当連結会計年度においては、クリエイティブ製品では、プロフェッショナル製品ラインの拡大と強化に取り組み、新世代のペン技術を搭載した大型ディスプレイタブレット「Wacom Cintiq Pro(ワコム シンティック プロ)24P」やVR・3D対応の高性能モジュール型PC「Cintiq Pro Engine」などを発売しました。さらに業界を大きくリードする32インチモデルの開発などに取り組んでおります。また、急速に普及しつつあるVRコンテンツのデザインに対応する当社独自のソリューションの開発などに引く続き取り組んでおります。さらにペンタブレットでは次世代「Intuos(インテュオス)」や新興国向けの低価格エントリーモデルを開発、発売しました。
コンシューマー製品では、マイクロソフト社と提携してWindows対応の標準ペン「Bamboo Ink(バンブー インク)」を市場投入しました。また、アップル社のiPadとAndroid OS対応タブレットで共通で使えるデジタルペン「Bamboo Tip(バンブー ティップ)」を新たに投入しました。特に、「Bamboo Ink」はマイクロソフト社及び多くのメーカーのタブレットに対応することで、売上の成長に大きく貢献しました。ビジネス用途向け製品では、大型液晶ペンタブレット「DTK(ディーティーケー) 2451」、「DTH(ディーティーエイチ) 2452」、クラウド対応の業務用デジタルノート端末「PHU(ピーエイチユー) 111」などを開発しました。さらに、当社のハードウエアと連携して活用できる「Wacom Cloud(ワコム クラウド)を強化する」とともに、デジタルインク技術である「WILL(Wacom Ink Layer Language)」の開発を継続、OEM顧客へのソリューション提供やデジタルステーショナリーコンソーシアム(デジタル文具協会)などを通じた幅広いライセンス提供を開始しました。
ブランド製品事業に係る研究開発費は2,384,351千円であります。
②テクノロジーソリューション事業
EMR(Electro Magnetic Resonance)方式ペン・センサー技術に関しては、スマートフォン市場に加えて文教ソリューション及びデジタル文具市場の開拓を図るべく技術開発とソリューション提供を実施しました。アクティブES(Active Electrostatic)方式デジタルペン技術とタッチ技術については、タブレットや2 in 1システムでの搭載を拡大すべく、多数のプロジェクトを市場投入しました。また、OEM顧客のシステムへ当社技術を搭載していくことに加え、ITエコシステムの中で当社ペン技術が「事実上の標準」として位置付けられるように、OS等のプラットフォームパートナーと共にペンのレベルを進化させていく共同取組みを実施しており、より付加価値の高いソリューションを顧客へご提供できるように取り組んでまいります。
テクノロジーソリューション事業に係る研究開発費は1,638,929千円であります。
③その他
エンジニアリングソリューション事業は、2017年12月1日付で会社分割により新設会社に承継させるとともに、当該新設会社の全株式を譲渡しました。