(1)業績の状況
当第3四半期連結累計期間(2017年4月1日から2017年12月31日まで)における当社グループを取り巻く事業環境は、モバイル、クラウド、ビッグデータ、ソーシャルメディアが社会に浸透し、IT分野の新たな産業プラットフォームを形成する動きがより活発化しました。主要通貨に対する円相場は、当第3四半期連結累計期間において、日本と欧米の各中央銀行による金融政策の違いなどを反映し、前年同期に比べて対米ドル、対ユーロともに円安が進みました。また、新興国通貨に対しても、円安が進行しました。
このような事業環境の下、当社グループは、クリエイティブユーザー向けペンタブレット市場のグローバルリーダーとして、デジタルペンやデジタルインクの技術で市場を主導するとともに、IoT(モノのインターネット)、VR(仮想現実)/AR(拡張現実)、3Dプリンティング、AI(人工知能)、セキュリティ(安全性)などを新たな成長分野と捉えて、より付加価値の高い製品の開発やパートナーの拡大に取り組みました。また、中期的な企業価値の向上をより確かなものにするため、製品開発力の強化や生産性の向上、コスト構造の改善といった経営課題にも取り組みました。
ブランド製品事業においては、主力のクリエイティブビジネスで、前期より順次市場投入したペンタブレット製品、ディスプレイ製品及びモバイル製品の新製品について、市場への発信に取り組むとともに、地域マーケティングの強化による顧客コミュニティへの積極的な販売活動を展開しました。コンシューマビジネスでは、Windows搭載タブレットに最適なスタイラス製品を市場投入するとともに、スマートパッド製品の拡販に努めるなどデジタル文具市場におけるハイエンドユーザー向け製品ラインアップの強化を図りました。ビジネスソリューションでは、各種用紙に手書きしたインク情報をリアルタイムにモバイル機器やネットワークへ安全に取り込める新製品を発表するなど、ビジネスワークフローの効率改善やセキュリティを強化した製品の拡販に取り組みました。このような中、当第3四半期連結累計期間においては、新製品の売上貢献などから、ブランド製品事業全体としての売上は前年同期を上回る順調な結果となりました。
テクノロジーソリューション事業においては、EMR(Electro Magnetic Resonance)方式やアクティブES(Active Electrostatic)方式のデジタルペン技術の業界標準化をOSの壁を越えて牽引し、タブレット分野でのデジタルペン技術の採用拡大を図りました。さらに、教育市場での事業機会の拡大や、多くのパートナー企業との協働を通じてデジタル文具市場の拡大に取り組みました。スマートフォン向けでもサムスン社の最新モデルGalaxy Note8向けに量産出荷を進めました。このような中、当第3四半期連結累計期間においては、スマートフォン向けの売上が、サムスン社の最新モデル向けに拡大しましたが旧モデルへの需要が消失した影響などを受け、減収となりました。一方で、タブレット向けの売上が大幅に増加したことなどから、テクノロジーソリューション事業全体としての売上は前年同期を上回る好調な結果となりました。
コーポレート部門および全社的な取り組みとしては、デジタルインクの標準として「WILL(Wacom Ink Layer Language)」の普及を引き続き推進するとともに、「WILL」を活用した事業・技術開発のスタートアップ企業向け支援プログラム「ワコム・イノベーション・ハブ」を5月に発表しました。さらに、「WILL」の普及を促進するためのイベント「Connected Ink(コネクティドインク)」を6月に中国、8月にドイツ、11月に東京で前期に引き続き開催し、パートナー企業の拡大にも努めました。そして、経営課題への取り組みについては、コスト構造の改善に向けた計画立案などを推進しました。また、経営判断の質の向上に向けて、4月に社外取締役を中心に構成する指名委員会を設置し、当社グループの役員等(代表取締役、取締役、重要な経営幹部)の選定基準の策定作業を始め、10月に2018年4月1日付で就任する次期代表取締役社長を選定し、発表しました。
なお、セグメント情報で「その他」に区分しているエンジニアリングソリューション事業は、12月1日付での会社分割により設立した新設会社に承継させ、当該新設会社の全株式を日東工業株式会社に譲渡しました。詳細は、「第4 経理の状況 1 四半期連結財務諸表 注記事項(企業結合等関係)」に記載のとおりであります。
この結果、当第3四半期連結累計期間の業績は売上高が65,272,936千円(前年同期比19.2%増)となり、営業利益は4,006,836千円(同540.4%増)、経常利益は4,202,932千円(同447.3%増)、親会社株主に帰属する四半期純利益は3,977,891千円(前年同期は親会社株主に帰属する四半期純損失98,952千円)となりました。
セグメントの業績は、次のとおりであります。
① ブランド製品事業
<クリエイティブビジネス>
クリエイティブビジネスにおいては、前期に発表した新製品が売上拡大に貢献し、売上は前年同期を上回りました。また、業界にイノベーションを起こして市場でのリーダーシップをさらに強化するために、VR/AR分野といった成長市場に対応した新製品や次世代デジタルペン技術の開発に引き続き取り組みました。
○ ペンタブレット製品
「Intuos Pro(インテュオス プロ)」は、前期に発表した新製品の需要が弱含みに推移した一方、「Intuos」は、先進国を中心に順調に売上を伸ばしました。また、前期に発表した「Intuos 3D」も売上に貢献しました。新興地域向けの低価格エントリーモデル「One by Wacom(ワン バイ ワコム)」は、出荷台数が前年同期比で3割増加し、新規ユーザーを獲得しました。これらの結果、ペンタブレット製品全体の売上は小幅ながら前年同期を上回りました。
○ モバイル製品
デジタルペン搭載タブレット市場が拡大し、競争環境が大きく変化しました。一方で、プロクリエイターの制作プロセスを支える当社の高機能モデルへの需要は継続しており、前期に発表した新製品「Wacom MobileStudio Pro(ワコム モバイルスタジオ プロ)」の販売が順調に推移し、モバイル製品全体の売上は前年同期を上回りました。
○ ディスプレイ製品
前期に発表し順次販売を開始した、次世代デジタルペン技術に対応した液晶ペンタブレット「Wacom Cintiq Pro(ワコム シンティック プロ)13インチ」と「Wacom Cintiq Pro 16インチ」の両モデルが売上に貢献しました。また、既存モデルの13インチサイズがエントリーユーザー層を獲得し、前年同期並みに推移しました。一方、大型サイズの既存モデルは、製品サイクルの移行期に入ったことで減収となりました。これらの結果、ディスプレイ製品全体の売上は前年同期を上回りました。
<コンシューマビジネス>
6月に発表した、マイクロソフト社との共同開発によるWindows対応タブレットに最適なスタイラス「Bamboo Ink(バンブー インク)」が、北米を中心に売上を好調に伸ばしました。同じく6月に発表した、iPad向け高性能スタイラスの新製品「Bamboo Sketch(バンブー スケッチ)」も売上に貢献しました。前期に発表した「Bamboo Slate(バンブー スレート)」や「Bamboo Folio(バンブー フォリオ)」も前モデルを大幅に上回る売上で推移したことで、コンシューマビジネス全体の売上は前年同期から大きく増加しました。
<ビジネスソリューション>
液晶サインタブレット製品「STU(エスティーユー)」シリーズは、特に欧州での競争関係の変化や前期にあった大型案件の反動減により減収となりました。一方、液晶ペンタブレット製品「DT(ディーティー)」シリーズは、北米の金融機関向け販売などが好調であったことから、売上の拡大に貢献しました。これらの結果、ビジネスソリューション全体の売上は前年同期を順調に上回りました。
この結果、売上高は37,444,446千円(前年同期比13.5%増)、営業利益は5,477,117千円(同5.9%増)となりました。
② テクノロジーソリューション事業
<スマートフォン向けペン・センサーシステム>
サムスン社の最新モデルGalaxy Note8向けの量産出荷が順調に推移しましたが、前モデルGalaxy Note7への需要を前期に消失した影響が当期にも及んだことから、売上は前年同期を下回りました。
<タブレット・ノートPC向けペン・センサーシステム>
アクティブES方式デジタルペン製品は、タブレットメーカー各社から高い評価を得て採用が拡大しております。特に、レノボ社、HP社、富士通社、デル社向け出荷が好調に推移したことで、売上は前年同期を大幅に上回りました。また、EMR方式デジタルペン製品も、グーグル社のChromebookで採用されるなど、教育市場向けで売上を拡大しました。
この結果、売上高は27,386,542千円(前年同期比28.9%増)、営業利益は5,268,017千円(同110.7%増)となりました。
③ その他
12月1日付でエンジニアリングソリューション事業を譲渡した影響などにより、売上は前年同期を下回りました。
この結果、売上高は441,948千円(前年同期比8.0%減)、営業損失は65,524千円(前年同期は営業損失36,869千円)となりました。
(2)キャッシュ・フローの状況
当第3四半期連結累計期間における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末と比べ、4,646,313千円増加(前年同期は2,869,923千円増加)し、当第3四半期連結会計期間末では、18,851,241千円となりました。
当第3四半期連結累計期間における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は、5,309,550千円(前年同期は1,598,402千円の収入)となりました。主な増加は、税金等調整前四半期純利益4,958,348千円、減価償却費1,850,776千円、たな卸資産の減少額1,725,933千円及び仕入債務の増加額1,646,232千円であり、主な減少は、新株予約権戻入益100,289千円、事業譲渡益697,926千円、売上債権の増加額3,071,873千円及び法人税等の支払額571,060千円です。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は、310,971千円(前年同期は2,241,436千円の使用)となりました。主な内訳は、固定資産の取得による支出890,430千円及び事業譲渡による収入571,881千円です。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は、972,301千円(前年同期は3,300,216千円の収入)となりました。内訳は、短期借入れによる収入3,000,000千円、短期借入金の返済による支出3,000,000千円及び配当金の支払額972,301千円です。
(3)経営方針・経営戦略等
当第3四半期連結累計期間において、当社グループが定めている経営方針・経営戦略等について重要な変更はありません。
(4)事業上及び財務上の対処すべき課題
当第3四半期連結累計期間において、当社グループが対処すべき課題について重要な変更はありません。
なお、当社は財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針を定めており、その内容等(会社法施行規則第118条第3号に掲げる事項)は次のとおりであります。
(株式会社の支配に関する基本方針)
① 当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針の内容の概要
当社グループの目的である創造性にあふれる活き活きとした世界を実現し、当社の企業価値・株主共同の利益を継続的に向上させるためには、知的財産の拡大、付加価値の高い技術と製品の実現とともに、グローバルな企業文化の育成、競争力の高いグローバルな事業モデルの強化など長期的な事業成長と価値の向上への取組みが必要と考えています。また、その前提として、株主の皆様、お客様、取引先、従業員等のステークホルダーとの安定的な関係の構築が必要と考えています。
当社取締役会は、当社の企業価値・株主共同の利益の確保、向上に資さない当社株券等の大量買付行為や買付提案を行う者は、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者として適当でないと考えています。
② 当社の財産の有効な活用、適切な企業集団の形成その他の基本方針の実現に資する特別な取組みの概要
当社グループは、2015年4月に「ワコム戦略経営計画 SBP-2019」(中期経営計画)を策定し、2019年3月期に連結売上高1,200億円、連結売上高営業利益率12%、連結株主資本利益率20%以上を達成することを財務目標としてまいりましたが、当社グループの2016年3月期、2017年3月期の業績は、中期経営計画を大きく下回るものとなりました。
この状況を踏まえ、当社グループは、グローバル基幹業務システムの導入計画見直し等コスト構造の改善に向けた取組みに加え、当社グループの役員候補者の選定基準を定め取締役会に提言することを目的とした指名委員会の設置等経営判断の質の向上に向けた取組みを実施してまいります。
③ 基本方針に照らして不適切な者によって当社の財務及び事業の方針の決定が支配されることを防止するための取組みの概要(買収防衛策)
当社は、当社の企業価値・株主共同の利益を確保し、向上させることを目的として、2016年6月開催の定時株主総会において株主の皆様にご承認いただき、当社株式の大量取得行為に関する対応策(買収防衛策)(以下「本プラン」といいます。)を更新しました。
本プランは、当社株式の大量買付が行われる場合の手続を明確にし、株主の皆様が適切な判断をするために必要かつ十分な情報と時間を確保するとともに、買付者との交渉の機会を確保することにより、当社の企業価値・株主共同の利益を確保し、向上させることを目的としています。
具体的には、当社の発行済株式総数の20%以上となる株式の買付又は公開買付けを実施しようとする買付者には、必要な情報を事前に当社取締役会に提出していただきます。一方、当社取締役会は独立性の高い(ⅰ)当社社外取締役、(ⅱ)社外の有識者のいずれかに該当する委員3名以上で構成される独立委員会を設置し、独立委員会は外部専門家等の助言を独自に得た上、買付内容の検討、株主の皆様への情報開示と当社取締役会による代替案の提示、買付者との交渉等を行います。買付者が本プランの手続を遵守しない場合や、当社の企業価値・株主共同の利益を侵害する買付であると独立委員会が判断した場合は、対抗措置の発動(買付者等による権利行使は認められないとの行使条件を付した新株予約権の無償割当ての実施)を取締役会に勧告します。
④ 当社の財産の有効な活用、適切な企業集団の形成その他の基本方針の実現に資する特別な取組み及び本プランがいずれも基本方針に沿うものであり、当社の株主共同の利益を損なうものではなく、当社の会社役員の地位の維持を目的とするものでないことについて
当社取締役会は、前記「当社の財産の有効な活用、適切な企業集団の形成その他の基本方針の実現に資する特別な取組みの概要」についての各施策はいずれも当社の企業価値及び株主共同の利益を確保し、向上させることを目的とするものであることから、基本方針に沿うものであり、当社の株主共同の利益を損なうものではなく、当社の会社役員の地位の維持を目的とするものでないと判断しております。
また、当社取締役会は、本プランは基本方針に沿うものであり、当社の株主共同の利益を損なうものではなく、当社の会社役員の地位の維持を目的とするものでないと判断しております。その理由は以下の(イ)ないし(チ)に記載のとおりです。
(イ) 買収防衛策に関する指針の要件を完全に充足していること
本プランは、経済産業省及び法務省が2005年5月27日に発表した「企業価値・株主共同の利益の確保又は向上のための買収防衛策に関する指針」の定める三原則(企業価値・株主共同の利益の確保・向上の原則、事前開示・株主意思の原則、必要性・相当性の原則)を充足しています。
(ロ) 株主共同の利益の確保・向上の目的をもって導入されていること
本プランは、当社株券等に対する買付等がなされた際に、当該買付等に応じるべきか否かを株主の皆様が判断し、あるいは当社取締役会が代替案を提示するために必要な情報や時間を確保したり、株主の皆様のために買付者等と交渉を行うこと等を可能とすることを目的として導入されました。
(ハ) 株主意思を重視するものであること
本プランは、当社株主総会において本プランに係る委任に関する議案が承認されることにより導入されました。
また、当社取締役会は、一定の場合に本プランの発動の是非について、株主意思確認総会において、株主の皆様の意思を確認することとしています。さらに、本プランには、有効期間を約3年間とするいわゆるサンセット条項が付されており、かつ、その有効期間の満了前であっても、当社株主総会において上記の委任決議を撤回する旨の決議が行われた場合には、本プランはその時点で廃止されることになります。
(ニ) 独立性の高い社外者の判断の重視と情報開示
本プランの発動に際しては、独立性の高い社外取締役から構成される独立委員会による勧告を必ず経ることとしています。さらに、独立委員会は、当社の費用で独立した第三者専門家等の助言を受けることができるものとされており、独立委員会による判断の公正さ・客観性がより強く担保される仕組みとなっております。
(ホ) 当社取締役の任期は1年であること
当社は、取締役(監査等委員である取締役を除く。)の任期を1年としております。従って、毎年の取締役の選任を通じても、本プランにつき、株主の皆様のご意向を反映させることが可能となります。
(ヘ) 合理的な客観的要件の設定
本プランは、合理的かつ詳細な客観的要件が充足されなければ発動されないように設定されており、当社取締役会による恣意的な発動を防止するための仕組みを確保しております。
(ト) 第三者専門家の意見の取得
買付者等が出現すると、独立委員会は、当社の費用で独立した第三者(ファイナンシャル・アドバイザー、公認会計士、弁護士、コンサルタントその他の専門家を含みます。)の助言を受けることができるものとしています。
(チ) デッドハンド型やスローハンド型買収防衛策ではないこと
本プランは、当社の株券等を大量に買付けた者が指名し、株主総会で選任された取締役により、廃止することができるものとして設計されており、いわゆるデッドハンド型買収防衛策ではありません。また、当社は期差任期制を採用していないため、いわゆるスローハンド型買収防衛策でもありません。
(5)研究開発活動
当第3四半期連結累計期間におけるグループ全体の研究開発費の総額は、3,284,998千円であります。
なお、当第3四半期連結累計期間において、当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。