第2【事業の状況】

1【事業等のリスク】

当第3四半期連結累計期間において、新たな事業等のリスクの発生、または、前事業年度の有価証券報告書に記載した事業等のリスクについての重要な変更はありません。

なお、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行は、今後の経過によっては、当社グループの財政状態、経営成績等に影響を及ぼす可能性があり、引き続き今後の状況の変化を注視してまいります。

 

2【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)財政状態及び経営成績の状況

当第3四半期連結累計期間(2021年4月1日から2021年12月31日まで)における当社グループを取り巻く事業環境において、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行下、世界経済は各国でのワクチン接種の進捗や政策支援の有効性の違いなどにより回復の格差が見られました。そして、米国など幾つかの先進国での景気回復が急速に進んだ一方で、インフレ圧力の上昇と財政支援の縮小、さらにウイルスの変異株台頭による感染再拡大も見られたことから経済成長の減速リスクを伴った不透明な状況が続きました。このような情勢下、IT市場では、世界各地での移動や渡航制限によりモバイル、クラウド、ビッグデータ、ソーシャルネットワークの重要性が高まり、それらに関連した技術革新や利便性向上などが見られました。また、インターネット上の仮想空間で実社会に近い活動が行われるメタバースとその親和性が高いブロックチェーン技術を用いて、デジタル作品を流通させる新たな仕組みなどの開発も進みました。なお、同期間の主要通貨に対する円相場は、各国の景気や金融・貿易政策等に対する見方を反映し、前年同期の平均レートと比較すると対ドル及び対ユーロでは小幅に円安、対中国元でも円安となりました(為替変動による連結業績への影響は、売上高を約44億円押し上げ、営業利益を約13億円押し上げたと試算)。

 

このような事業環境の下、当社グループは、2021年5月12日に発表した2025年3月期を最終年度とする中期経営方針「Wacom Chapter3」に則って、引き続きペンやインクのデジタル技術で常に市場の主導権を握り、「意味深い成長(財務的な成長だけではなく、私たちのお客様が製品・サービスのユーザー体験を通じて感じる成長であり、私たちが日々の暮らしを営む社会やコミュニティ全体が新たな学びを積み重ねていくことであり、一人一人の自己実現を通じた成長で構成される多面的な意味を持つ成長)」を目指して事業運営にあたりました。当第3四半期連結累計期間では、VR(仮想現実)/MR(複合現実)、AI(人工知能)、セキュリティ(安全性)、教育といった成長分野において、事業モデルを一段と進化させるための戦略を協業パートナーとともに推し進めるとともに、生産性やコスト構造の改善にも全社的に努め、経営判断の質の向上を通して経営課題に取り組みました。

 

ブランド製品事業については、創造性発揮のための最高体験をお客様にお届けするため、技術革新に取り組むとともに、顧客サービスの向上に努めました。当第3四半期連結累計期間では、主力のクリエイティブソリューションにおいてプロ向けディスプレイ製品を中心に販売を伸ばしましたが、ペンタブレット製品の中価格帯モデルの販売が減少したことなどから、ブランド製品事業全体としての売上高は、前年同期を下回りました。

 

テクノロジーソリューション事業については、デジタルペン技術(アクティブES:Active Electrostatic、EMR:Electro Magnetic Resonance)の事実上の標準化に取り組むとともに、タブレット・ノートPC市場での利用拡大や教育市場での事業機会の拡大に努めました。当第3四半期連結累計期間では、AESテクノロジーソリューションの売上高が前年同期を上回りましたが、EMRテクノロジーソリューション他の売上高がOEM(相手先ブランド製造)提供先の製品ポートフォリオの変化などにより前年同期を下回ったことから、テクノロジーソリューション事業全体としての売上高は、前年同期を下回りました。

 

中期経営方針の戦略軸に沿った全社的な取り組みとしては、成長の促進を図るため、投資効率を意識しつつ、新たなコア技術やビジネスモデルの開発への積極的な投資を行いました。そして、2021年11月には、人間の創造性の源に思いを馳せ、アート、教育、テクノロジーなど多様な領域のパートナーと共創する「創造的混沌」をテーマとしたコミュニティイベント「Connected Ink(コネクテッド・インク)2021」を開催し、最新のデジタルトランスフォーメーション及びインク・テクノロジーを駆使した多様なパートナーとの取り組みを発表しました。また、新たに社外女性取締役が2021年6月に着任し、多様で専門的な視点を有する取締役会による本質的な議論をさらに活発化させ、経営の質を高めることに努めました。

当社は、2020年3月期からブランド製品事業の一部製品ラインの主要生産工程を中国以外に移管するなどの対応を行い、一部対米輸出モデルにおいて米国税関国境取締局から、対中追加関税措置を適用されないことが認められました。その措置に基づき、関税対応を見直し売上原価に与える影響を低減(売上原価を約9億円押し下げ)させるに至りました。

(注)新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行下での当社グループの事業活動への影響等については、「第2 事業の状況 2 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)財政状態及び経営成績の状況 <新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行下における事業活動への影響及び取り組み>」をご覧ください。

 

これらの結果、当第3四半期連結累計期間の財政状態及び経営成績は次のとおりとなりました。

① 財政状態

当第3四半期連結会計期間末における資産の残高は、71,786,297千円となり、前連結会計年度末に比べ604,963千円増加しました。これは主に、売掛金が5,362,131千円、商品及び製品が4,013,427千円、原材料及び貯蔵品が3,066,760千円増加し、現金及び預金が14,316,506千円減少したことによります。

負債の残高は、30,186,358千円となり、前連結会計年度末に比べ3,306,159千円減少しました。これは主に、買掛金が5,115,345千円及び流動負債のその他が1,866,308千円増加し、1年内返済予定の長期借入金が4,000,000千円、賞与引当金が3,314,934千円及び未払法人税等が3,074,541千円減少したことによります。

純資産の残高は、41,599,939千円となり、前連結会計年度末に比べ3,911,122千円増加しました。これは主に、親会社株主に帰属する四半期純利益で9,632,637千円増加し、剰余金の配当で3,086,536千円、自己株式の増加により2,980,796千円減少したことによります。これらの結果、自己資本比率は前連結会計年度末に比べ5.0ポイント増加し、57.9%となりました。

 

② 経営成績

当第3四半期連結累計期間における売上高は81,179,173千円(前年同期比4.7%減)となり、営業利益は12,340,208千円(同3.4%減)となりました。また、営業外収益において為替差益417,232千円(前年同期は営業外費用において為替差損225,626千円)を計上したことなどが影響し、経常利益は12,773,331千円(同1.6%増)、親会社株主に帰属する四半期純利益は9,632,637千円(同2.4%増)となりました。

 

セグメントの業績は、次のとおりであります。

 

a. ブランド製品事業

 

<クリエイティブソリューション>

クリエイティブソリューションは、プロ向けのディスプレイ製品を中心に販売を伸ばしましたが、ペンタブレット製品の販売が減少したことなどから、小幅に減収となりました。また、2021年3月期より引き続き、一部製品において、アンドロイドOSやクロームOSへの対応を進めました。

 

○ ディスプレイ製品

「Wacom Cintiq Pro(ワコム シンティック プロ)」は、営業活動を活発に行い、前年同期の売上高を大幅に上回りました。2021年10月には、クリエイターのために使いやすさを追求した新しい「Wacom Cintiq Pro 16」を発表しました。「Wacom Cintiq(ワコム シンティック)」については、前年同期の売上高を小幅に下回りました。2020年3月期に発表した「Wacom One(ワコム ワン)液晶ペンタブレット13」は、前年同期の売上高を下回りました。これらの結果、ディスプレイ製品全体の売上高は、前年同期を僅かに上回りました。

 

○ ペンタブレット製品

「Wacom Intuos Pro(ワコム インテュオス プロ)」は、経年等の影響がある中、営業活動を活発に行い、前年同期の売上高を小幅に上回りました。「Wacom Intuos(ワコム インテュオス)」は、経年に加え、需要に落ち着きが見られたこと等の影響により、前年同期の売上高を大幅に下回りました。「One by Wacom(ワン バイ ワコム)」は、前年同期の売上高を僅かに下回りました。これらの結果、ペンタブレット製品全体の売上高は、前年同期を下回りました。

 

○ モバイル製品他

デジタルペン搭載タブレット市場が拡大し競争環境が大きく変化するなか、Windows 10搭載クリエイティブタブレット「Wacom MobileStudio Pro(ワコム モバイルスタジオ プロ)」の寄与により、モバイル製品の売上高は、前年同期を上回りました。また、モバイル製品以外のスタイラスペン製品を中心とした売上高は、前年同期を下回りました。これらの結果、モバイル製品他全体の売上高は、前年同期を僅かに下回りました。

 

<ビジネスソリューション>

液晶ペンタブレットの売上高は、営業活動を活発に行い、前年同期を大幅に上回りました。この結果、ビジネスソリューション全体の売上高は、前年同期を上回りました。

 

これらの結果、ブランド製品事業の売上高は42,042,161千円(前年同期比5.5%減)、セグメント利益は8,870,984千円(同6.0%増)となりました。

 

b. テクノロジーソリューション事業

 

<AESテクノロジーソリューション>

生産サプライチェーンオペレーションの制限があった中、AESテクノロジーソリューション全体の売上高は、前年同期を上回りました。アクティブES方式デジタルペン製品については、OEM提供先のメーカー各社から引き続き高い評価を得ております。

 

<EMRテクノロジーソリューション他>

OEM提供先の製品ポートフォリオの変化や生産サプライチェーンオペレーションの制限を受け、OEM提供先のメーカー向けの売上高は減少しました。この結果、EMRテクノロジーソリューション他全体の売上高は、前年同期を下回りました。

 

これらの結果、テクノロジーソリューション事業の売上高は39,137,012千円(前年同期比3.9%減)、セグメント利益は6,699,941千円(同15.2%減)となりました。

 

<新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行下における事業活動への影響及び取り組み>

当第3四半期連結累計期間での当社グループの事業活動への影響及び取り組みについては、下記のとおりであります。

ブランド製品事業では、当第3四半期連結累計期間において、各国間で状況に差はあるものの概ね経済活動が再開されたことに伴い営業活動を活発に行いました。その結果、主にクリエイティブソリューションのプロ向けのディスプレイ製品及びペンタブレット製品、ビジネスソリューションの販売に回復が見られました。一方で、前年同期と比べて落ち着きが見られた需要が、クリエイティブソリューションのペンタブレット製品の中価格帯モデルの販売に影響を及ぼしました。

テクノロジーソリューション事業では、当第3四半期連結累計期間において、東南アジアでの感染再拡大や中国でのゼロコロナ政策の徹底、世界的な半導体不足を受けて、生産サプライチェーンオペレーションが制限されたことなどから、AESテクノロジーソリューション及びEMRテクノロジーソリューション他の業績に影響を及ぼしました。

全社的な取り組みとしては、全世界的に、テレワークの実施等柔軟な勤務体制を継続することで、コロナ禍後の新しい働き方の在り方を検討するとともに、従業員の安全確保、感染拡大防止に向けた社会的責任の遂行を図りました。

 

(2)キャッシュ・フローの状況

当第3四半期連結累計期間における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ、14,316,506千円減少(前年同期は5,483,798千円増加)し、当第3四半期連結会計期間末には17,726,097千円となりました。

 

当第3四半期連結累計期間における各キャッシュ・フローの状況とそれらの内訳は、次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果使用した資金は、3,387,740千円(前年同期は13,877,433千円の収入)となりました。これは、当第3四半期連結累計期間において棚卸資産の増加額7,141,524千円、法人税等の支払額7,110,884千円及び売上債権の増加額5,202,263千円などの支出要因が、税金等調整前四半期純利益12,752,404千円及び仕入債務の増加額4,887,381千円などの収入要因を上回ったことによります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果使用した資金は、1,245,565千円(前年同期は4,221,323千円の使用)となりました。主な内訳は、有形固定資産の取得による支出969,771千円及び無形固定資産の取得による支出141,871千円であります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果使用した資金は、10,402,063千円(前年同期は3,945,030千円の使用)となりました。主な内訳は、長期借入金の返済による支出4,000,000千円、配当金の支払額3,078,638千円及び自己株式の取得による支出3,005,964千円であります。

 

(3)経営方針・経営戦略等

当第3四半期連結累計期間において、当社グループが定めている経営方針・経営戦略等について重要な変更はありません。

 

(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

当第3四半期連結累計期間において、当社グループが優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題について重要な変更はありません。

 

(5)研究開発活動

当第3四半期連結累計期間におけるグループ全体の研究開発費の総額は、3,505,298千円であります。

なお、当第3四半期連結累計期間において、当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。

 

3【経営上の重要な契約等】

当第3四半期連結会計期間において、経営上の重要な契約等の決定又は締結等はありません。