当中間連結会計期間において、新たな事業等のリスクの発生、又は、前事業年度の有価証券報告書に記載した事業等のリスクについての重要な変更はありません。
(1)財政状態及び経営成績の状況
当中間連結会計期間(2024年4月1日から2024年9月30日まで)における当社グループを取り巻く事業環境において、世界経済はロシア・ウクライナ情勢に加えて中東地域に起因した地政学的緊張が続くなか、インフレ率の鈍化と日本を除く主要国の中央銀行による金融緩和策も示されたことなどから、着実な経済成長が見られました。このような情勢下、IT市場では、モバイル、クラウド、AI、ブロックチェーンなどに関連した技術革新や利便性向上などが見られました。なお、同期間の主要通貨に対する円相場は、各国の景気や金融・貿易政策等に対する見方を反映し、前年同期の平均レートと比較すると対米ドル、対ユーロ及び対中国元で小幅に円安となりました。
このような事業環境の下、当社グループは、2021年5月12日に発表した2025年3月期を最終年度とする中期経営方針『Wacom Chapter3』及び2023年5月11日に発表したその「アップデート・レポート」における施策に則って、ペンやインクのデジタル技術で常に市場の主導権を握り、「意味深い成長(財務的な成長だけではなく、私たちのお客様が製品・サービスのユーザー体験を通じて感じる成長であり、私たちが日々の暮らしを営む社会やコミュニティ全体が新たな学びを積み重ねていくことであり、一人一人の自己実現を通じた成長で構成される多面的な意味を持つ成長)」を目指して事業運営にあたりました。当中間連結会計期間では、XR(クロスリアリティ)、AI(人工知能)、セキュリティ(安全性)、教育などといった成長分野において、事業モデルを一段と進化させるための戦略を協業パートナーと推し進めるとともに、生産性やコスト構造の改善にも努め、経営判断の質の向上を通して経営課題に取り組みました。
ブランド製品事業については、創造性発揮のための最高体験をお客様にお届けするため、技術革新に取り組むとともに、顧客サービスの向上に努めました。当中間連結会計期間では、主力のクリエイティブソリューションにおいて、ディスプレイ製品、ペンタブレット製品ともに売上高が前年同期を下回ったことから、ブランド製品事業全体としての売上高は、前年同期を下回りました。
テクノロジーソリューション事業については、デジタルペン技術(アクティブES:Active Electrostatic、EMR:Electro Magnetic Resonance)の事実上の標準化に取り組むとともに、タブレット・ノートPC市場での利用拡大や教育市場での事業機会の拡大に努めました。当中間連結会計期間では、AESテクノロジーソリューションの売上高が前年同期を下回りましたが、EMRテクノロジーソリューションの売上高が前年同期を上回ったことから、テクノロジーソリューション事業全体としての売上高は、前年同期を上回りました。
中期経営方針の戦略軸に沿った全社的な取り組みとしては、当社グループの事業を取り巻く環境が大きく変化し、事業構造を変革させる必要が生じているとの認識の下で、当連結会計年度を中期経営方針『Wacom Chapter3』の「事業構造変革期間(2024年3月期から2025年3月期まで)」の最終年度と位置付けました。ブランド製品事業においては、商品ポートフォリオの刷新を含む構造改革に取り組み、新しいユースケース「ポータブル クリエイティブ」を確立すべく、2024年4月に「Wacom Movink(ワコム ムービンク) 13」を発表しました。また、企業価値の中長期的な向上を目指す観点からは、当社グループが持つデジタルペンの技術価値や各要素を「ペンとインクの統合体験」として市場実装すべく、次世代の成長エンジンとなる技術開発を推進しております。サステナビリティの取り組みについても、当社グループは、気候変動問題を環境経営における重要な課題として捉え、温室効果ガスの削減に向けて、気候変動が事業環境に及ぼすリスクや機会を踏まえた事業活動を行っております。その一環として、ステークホルダーに対してより信頼性、透明性の高いデータを開示するため、2024年8月には、2024年3月期の温室効果ガス排出量データ(Scope 1,2,3)について、国際基準に準拠した第三者検証による第三者保証報告書を取得しております。
これらの結果、当中間連結会計期間の財政状態及び経営成績は次のとおりとなりました。
① 財政状態
当中間連結会計期間末における資産の残高は、77,466,468千円となり、前連結会計年度末に比べ2,153,189千円減少しました。これは、商品及び製品が2,055,462千円増加し、現金及び預金が4,458,713千円減少したことなどによるものであります。
負債の残高は、44,035,636千円となり、前連結会計年度末に比べ384,202千円増加しました。これは、買掛金が4,076,651千円、未払法人税等が1,187,933千円増加し、賞与引当金が640,148千円、流動負債のその他が3,379,931千円減少したことなどによるものであります。
純資産の残高は、33,430,832千円となり、前連結会計年度末に比べ2,537,391千円減少しました。これは、親会社株主に帰属する中間純利益3,469,899千円により増加し、剰余金の配当2,904,876千円、自己株式の取得2,999,975千円により減少したことなどによるものであります。これらの結果、自己資本比率は前連結会計年度末に比べ2.0ポイント減少し、43.2%となりました。
② 経営成績
当中間連結会計期間の業績は、売上高が57,315,152千円(前年同期比3.1%増)、営業利益は5,475,354千円(同122.9%増)、また、営業外損益において為替差損710,976千円(前年同期は為替差益2,549,590千円)を計上したことなどが影響し、経常利益は4,785,198千円(同4.1%減)、親会社株主に帰属する中間純利益は3,469,899千円(同8.8%減)となりました。
セグメントの業績は、次のとおりであります。
a. ブランド製品事業
<クリエイティブソリューション>
クリエイティブソリューションは、市場環境の変化による影響を受けるなか、ディスプレイ製品、ペンタブレット製品ともに販売が減少し、前年同期の売上高を下回りました。
○ ディスプレイ製品
プロ向けモデルは、2023年10月にラインアップを拡充し2024年4月には新商品を投入したことで需要が増加したことなどから前年同期の売上高を上回りました。プロ向けモデル以外では、中価格帯モデルが需要の減少などにより前年同期の売上高を下回ったほか、低価格帯モデルが2023年8月にはラインアップを拡充したものの需要の減少などにより前年同期の売上高を大幅に下回りました。これらの結果、ディスプレイ製品全体の売上高は、前年同期を下回りました。
○ ペンタブレット製品
プロ向けモデルは、経年に加えて需要の減少などにより前年同期の売上高を僅かに下回りました。プロ向けモデル以外では、低価格帯モデルが低価格帯への需要シフト加速などにより前年同期の売上高を大幅に上回った一方で、中価格帯モデルが2023年8月にラインアップを拡充したものの前年同期の売上高を大幅に下回りました。これらの結果、ペンタブレット製品全体の売上高は、前年同期を下回りました。
<ビジネスソリューション>
流動的な市況や案件進捗の動向の影響があるなか、ビジネスソリューション全体の売上高は、前年同期を僅かに下回りました。
これらの結果、ブランド製品事業の売上高は14,823,653千円(前年同期比13.2%減)、セグメント損失は1,106,280千円(前年同期はセグメント損失2,016,566千円)となりました。
b. テクノロジーソリューション事業
<AESテクノロジーソリューション>
市場環境の変化による影響を受けるなか、AESテクノロジーソリューション全体の売上高は、前年同期を僅かに下回りました。
<EMRテクノロジーソリューション>
OEM提供先の需要が増加したことから、EMRテクノロジーソリューション全体の売上高は、前年同期を上回りました。
これらの結果、テクノロジーソリューション事業の売上高は42,491,499千円(前年同期比10.3%増)、セグメント利益は9,324,845千円(同34.8%増)となりました。
(2)キャッシュ・フローの状況
当中間連結会計期間末における現金及び現金同等物の残高は、27,202,028千円となり、前連結会計年度末に比べ4,458,713千円減少しました。
当中間連結会計期間における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、3,217,620千円の収入(前年同期は5,952,405千円の収入)となりました。これは、税金等調整前中間純利益4,650,576千円、減価償却費1,070,019千円、棚卸資産の増加額2,880,201千円、仕入債務の増加額4,209,440千円及びその他の流動負債の減少額3,573,209千円などによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、412,491千円の支出(前年同期は1,066,838千円の支出)となりました。これは、有形固定資産の取得による支出329,511千円及び無形固定資産の取得による支出86,039千円などによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、6,323,439千円の支出(前年同期は488,333千円の収入)となりました。これは、自己株式の取得による支出3,005,974千円及び配当金の支払額2,895,741千円などによるものであります。
(3)経営方針・経営戦略等
当中間連結会計期間において、当社グループが定めている経営方針・経営戦略等について重要な変更はありません。
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当中間連結会計期間において、当社グループが優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題について重要な変更はありません。
(5)研究開発活動
当中間連結会計期間におけるグループ全体の研究開発費の総額は、3,791,834千円であります。
なお、当中間連結会計期間において、当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。
当中間連結会計期間において、経営上の重要な契約等の決定又は締結等はありません。