第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)経営方針

 この度、より良き製品、より良きサービス、より良き会社、より良き社会を追求してきた当社グループが、成長の糧とする存在意義を示すものとして、パーパス「Better being」を制定いたしました。創業以来、ずっと追求してきた「Better」を、これからも追求し続けてまいります。

 パーパス「Better being」を企業価値創造の中心におき、グループの社員一人ひとりが自らの心に問い、自分なりに考え、自発的な行動に繋げていくことで自ら成長し、グループに新しい変革と進化をもたらし、より良き製品・サービス・ソリューションによる社会課題の解決と、より良い地球環境への貢献を目指すと共に、当社グループとしてこれからも持続的に成長してまいります。

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(2)経営環境、経営戦略及び対処すべき課題

①経営環境

 世界経済は、欧米を中心とした各国の金融引き締めの継続や中国における不動産部門の不振等による成長ペースの鈍化、さらにウクライナ情勢の長期化や米中対立など地政学リスクの高まりに伴い、想定を超えた経営環境の変化が懸念されます。また、わが国経済は、個人消費の持ち直しや半導体・電子部品の投資再開見込みを含む設備投資の増加など、景気は内需を中心に引き続き改善に向かっていくことが期待されますが、一方で、物価上昇の継続、特に急速な為替変動リスクといった課題も依然として続いており、事業環境を見通すことは困難な状況となっております。

 当社グループの事業領域である「パソコン及びデジタル機器関連製品」は、パソコン関連、スマートフォン・タブレット関連、TV・AV関連を中心に最終製品の市場で成熟化が進んでいることに加え、グローバル新興メーカーの台頭により、一層の競争環境の激化が見込まれる状況です。またEC市場においては、更なる市場拡大が見込まれるものの、お客様ニーズの高度化や多様化が進んでおります。

 

②中期経営計画

<ありたい姿>

 当社グループは、上記経営環境を踏まえて、2024年4月から2027年3月までの3ヵ年を中心に取り組む中期経営計画を策定しました。

 当社グループはこれまで、変化の速い情報周辺機器市場において、お客様の声を聴き、高速で開発し、効率の良いオペレーションでお客様にお届けするビジネスモデルを深化させることで事業成長を実現させてまいりました。今後は、この成長の源泉となるスピードを引き続き重視しながらも、国内・海外のお客様に真正面から向き合い、ニーズを理解し、更なる満足を得られる商品やサービスを企画、設計、構築、提案し、更なる高付加価値ビジネスモデルの構築や、グローバル展開によるスケールメリットの最大化を目指してまいります。

 本中期経営計画では、パーパス「Better being」を根底として、あるべき姿を「“お客様に愛される日本発・唯一無二のグローバルブランド”を創る」と定め、「お客様の満足度を高める商品と販売の新たな価値創造」と「持続可能な成長を実現するための人材育成と強い事業基盤構築」を重点戦略に、長期的・持続的成長を実現してまいります。

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<重点戦略>

(ⅰ)価値創造

(a)国内BtoC

・グローバル競合に対する対抗策を商品・サービス・売り方に至るまで徹底

・当社の強みを活かせる商品カテゴリーの強化・拡大(新規グループ化したテスコム商品の強化と新規M&Aを含めた他戦略商品の拡大)

(b)国内BtoB

・既存販売店ビジネスの更なる拡大

・高付加価値ビジネスモデル構築(ソリューション×エンドユーザー販売、保守・サブスクリプション)

(c)海外

・北米市場とアジア市場を中心にグローバル事業の立上げと成長の礎を構築

 

(ⅱ)事業基盤構築

(a)開発力

・日本と中国(深圳開発センター)の二極開発体制の構築による高速開発の強化

(b)SCM

・事業拡大・BCP観点での物流機能の深化

・カントリーリスクを踏まえた調達バランスの最適化

(c)人材育成・確保

・高付加価値ビジネスモデル構築・グローバル展開に必要な人材の確保と育成

・CX(顧客体験)価値戦略の強化のためのAI・DX人材の強化

 

 これらの重点戦略を推進するにあたり、当社の強みの一つであるキャッシュ創出力・安定した財務基盤を活かし、成長分野や事業基盤強化への投資を積極的に行います。

・新製品カテゴリーの追加・開発力強化への投資(M&Aも含む)

・北米を中心とする海外展開への事業投資(広告宣伝・プラットフォーム・製品開発費用等)

・新高付加価値事業分野、CX価値戦略の強化のための人材投資

・更なるコスト体質強化に向けた投資(物流自動化、グローバルSCM体制構築など) 等

 

(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

本中期経営計画における数値計画

・営業利益伸長率 年平均10%以上

・ROE        13%以上

本中期経営計画における株主還元方針

・累進的配当(配当維持もしくは増配)の実施

・配当性向30%以上の維持

・機動的な自己株式の取得

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2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 文中には、当社グループが有価証券報告書提出日に入手している情報のほか、それに基づき当社グループで判断した将来に関する予測・計画などの不確実な要素を含んでおります。したがって、今後の各種要因により、将来の事業活動の結果や将来に発生する事象が、文中に記載する予測・計画などとは異なる可能性があります。

 

 当社グループは、創業時から「社会との共生」を当然のことと考え、2021年よりサステナビリティ経営にも取り組み、より良き製品、より良きサービス、より良き会社、より良き社会を追求してきました。

 より良き製品・サービス・ソリューションによる社会課題の解決、より良き地球環境への貢献、そして当社グループとしての成長、これを当社グループのサステナビリティと考え、その実現を目指しています。

 

(1)サステナビリティに関する考え方及び取組

 

①ガバナンス

 当社グループでは、グループ全体に効果的なサステナビリティ活動を推進するために、サステナビリティ委員会を設置しております。エレコム代表取締役社長を委員長として、社内取締役、社外取締役、外部有識者、および各社役員やサステナビリティの取り組みに関係の深い事業部門の代表者で構成しています。サステナビリティ委員会は月1回程度開催され、マテリアリティの進捗確認、およびグループと社会の長期成長に向けて、事業機会・リスクの両面で経営および社会課題をより具体的に捉え、優先順位をつけ施策の立案・決定を行なっております。この提案・決定内容を受け、各社事業組織は目標に向かって具体的に取り組みます。また、サステナビリティ委員会の主要活動については、取締役会へ年2回の定期報告のほか適宜、報告・相談し、トップダウンだけではなくボトムアップでも状況を理解し、経営判断ができるよう連携しております。

 また、2022年4月には専任部署としてサステナビリティ推進課を設置し、サステナビリティ観点でのグループ全体に係る施策立案や情報提供を行っています。2024年4月からは、経営企画の機能を擁する財務企画部内で財務・非財務で連携を密にし、企業価値向上に資する取り組み推進に努めてまいります。

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2023年度のサステナビリティ委員会開催実績と討議内容

実施回数

討議内容

11回

・マテリアリティKPI進捗報告・課題共有

(経営体制強化、人財・組織育成、お客様の満足、気候変動対応、製品における環境対応、社会貢献活動)

・外部評価からみる当社状況

・CSR調達課題と仕入先との取り組み

・人権に関する要求事項と推進

・ISSBサステナビリティ開示基準動向

 

②戦略

 事業の継続的成長や社会課題解決への取り組みを熟慮した結果、当社グループのマテリアリティを大きく以下の3本柱に定めております。

(ⅰ)事業の継続性(経営体制の強化、人財・組織の育成)

(ⅱ)お客様の安全・満足

(ⅲ)環境対応

 今後サステナビリティ経営を深化させていくため、この3本柱に基礎マテリアリティを紐づけることで、まず我々が強化すべき、企業規模の変化に応じた土壌づくりに努めております。

 

(ⅰ)事業の継続性

(a)経営体制の強化

 プライム市場上場企業として成長し、当社グループは現在、多くのステークホルダーの方々に支えられています。当社グループがより成長するためには、リスクを検討し責務を果たす必要があります。適切な検討事項の欠落はリスクとなる一方、サステナビリティの取り組みでは、着目すべきテーマとポイントを知ることができる機会と考えています。当社グループとして安定した土壌づくりや長期成長を考え、我々の強みをより活かしながら、取り組みの強化を図ります。

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(b)人財・組織の育成

 強固な経営体制やそのもとで活躍する人財・組織力を高めることは、企業成長の要だと考えています。日本社会における労働人口減少を見据え、多種多様な方々が活躍でき、魅力ある人財を獲得できる労働環境の構築、資本である人財が育つ環境、そして効率的な組織運営を作ることでリスク対策を図り、成長への機会を創出します。

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(ⅱ)お客様の安全・満足

 当社グループは、技術革新の早い世界においても、私たちが成長の糧とする「Better being」を追求し、お客様に安全と満足をお届けできるよう、新技術の開発とサービス向上に取り組み続けます。マーケットの変化や社会からの期待を捉え、必要とされる企業であり続けなければ生き残ることができない危機意識を、常に忘れずに取り組みます。また、製品やサービスを通して社会課題解決に寄与できることはビジネスチャンスでもあることを踏まえ、皆様のお声に耳を傾け、事業の長期的成長を狙うとともに社会へ貢献していきます。

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(ⅲ)環境対応

 メーカーとして事業活動の中で環境負荷低減に努めること、当社グループの技術をもって環境問題に寄与することはもちろんのこと、自然が本来持つ力を回復することにも取り組み、「社会との共生」が不可欠だと考えています。気候変動の将来リスクを意識して、またその社会課題に生まれるビジネスチャンスを見極めて、サプライチェーンでの取り組みも含めて真摯に向き合っていきます。

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③リスク管理

 当社グループは、「リスクの低減」と「事業機会の創出」をESG/CSR取り組みの2大視点として、当社グループやステークホルダーの皆様にとって重要かつ関心の高い課題をマテリアリティとして特定し、取り組みを推進しております。マテリアリティは、事業および社会環境の変化や社内外のステークホルダーからの評価やニーズを分析し、サステナビリティ委員会で事業組織とともにマテリアリティとKPIの見直しを行なっております。見直し評価結果や優先度などをまとめ、取締役会への報告を経て確定し、マテリアリティ毎に担当執行役員を責任者として定め、確実な課題解決を図っております。見直し頻度については、従来は年に一度行っておりましたが、今後は年に一度見直しの必要性を確認しながら中期経営計画の見直しと連携してまいります。なお、具体的に想定されるリスクについては、その重要性に応じて当該リスクを軽減する物理的な予防措置を講じるほか、当該リスクの発生に係る損害保険契約を締結する等、リスク発生時の経営に及ぼす影響を最小限に留める措置を講じております。加えて、サステナビリティ委員会での評価など、新たに想定されるリスクが発生した場合は、直ちにそのリスク管理について取締役会において協議し、必要な措置を講じてまいります。

 

④指標及び目標

(ⅰ)事業の継続性

 (a)経営体制の強化

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 (b)人財・組織の育成

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(ⅱ)お客様の安全・満足

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(ⅲ)環境対応

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(2)気候変動に対する情報開示

 当社グループは2022年4月に、TCFD提言への賛同を表明致しました。気候変動が当社グループの持続的成長に大きな影響を及ぼす重要課題のひとつであると位置づけ、気候変動が事業に与えるリスク・機会を分析し、経営戦略やリスクマネジメントに反映することにより、脱炭素社会とともに持続的成長を目指して参ります。また、当社グループは2023年に「2030年度にCO排出量(Scope1+Scope2)を2020年度対比50%削減する」及び「サプライチェーンでのCO削減に取り組むとともに事業活動を通じて、世界が目標とする2050年カーボンニュートラルの実現を目指す」の目標を掲げ、脱炭素社会の実現に向け取り組んでおります。

 

①ガバナンス

 気候変動に関するガバナンスは、サステナビリティ課題全般のガバナンスに組み込まれております。詳細については、「サステナビリティに関する考え方及び取組(1)ガバナンス」を参照ください。

 

②リスク管理

 気候変動に伴うリスクには政策や規制の強化に伴う事業活動の制限やコストの増加、ステークホルダーの意識の変化、技術の進展などに起因するものと、気象災害の激甚化や気温上昇などにみられる異常気象の慢性化など気候変動に起因するものが考えられます。

 当社グループでは、気候変動に伴うさまざまなリスク要因についての情報を、部門を横断して収集し、対策へとつなげております。具体的には、サステナビリティ委員会の環境対策WGが関連部門と議論のうえ、重要な気候変動関連リスクを特定し、それぞれの影響度を大・中・小の3段階で評価します。そして、それらが現れる時期を短期・中期・長期の視点で分析したうえで、取り組み方針や対応策を検討しております。取締役会は、半期に1回もしくは随時、サステナビリティ委員会より、課題提示や報告を受け、適宜議論し、グループ全体の経営リスクの1つとして執行状況を監督しております。

 

③戦略

 当社グループは製造設備を持たないため、自社におけるCO排出は限定的です。その一方で、製造委託先や輸送時の排出が大きくなる傾向があり、気候変動関連課題がグループの中長期的な事業リスク・機会に与える影響は決して少なくないと認識しております。「環境方針」のもと気候変動関連課題への取り組みを進める中、2022年に公表されたIPCC第6次報告書、またIEAネットゼロシナリオをもとにシナリオを想定し、重要リスク・機会を特定し、その対応策について検討致しました。

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 当社グループの強みは、市場の需要やトレンドに対して迅速に対応する製品開発力と調達能力、またその製品をタイムリーにお客様のもとに届ける営業機動力と物流能力を持った強固なサプライチェーンだといえます。シナリオ分析の結果、気候変動ならびにそれに対する規制強化対応は、永年培ったこれらの強みを損なう可能性があることがわかりました。一方、気候変動に対して積極的に緩和・適応することは、お客様の脱炭素化を支援する製品やソリューションの提供や、グループのコスト削減の機会を生み出すこともわかりました。

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④指標・目標

 当社グループは、世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃以下に抑える目標の達成に向け、管理指標として2023年3月期に中長期的なCO排出量削減目標を設定致しました。

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 今年度におきましては、電力使用量が多く、かつ自社所有である事業施設について優先的に再生可能エネルギーへの切り替えを進めました。該当する事業施設における電力使用量は国内グループ会社全体の約25%におよび、削減効果も大きいことから、前年度末から電力事業者と準備を進め、4月より使用電力を再生可能エネルギーへ変更しました。結果として、兵庫物流センターのLED化と人感センサーの導入効果も相まって18.4%(2020年比)のScope1・2のCO排出量を削減する事ができました。

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 今年度におきましては、異常気象の影響から11月まで気温の高い状況が続き、各施設において空調設備の利用が多く、例年と比較して電力の使用が多い月も見られましたが、再生可能エネルギーの導入や省エネ効果により、CO排出量は前年度に対し629t-CO減少し、2030年目標に対しての進捗は36%になりました。一方、事業拠点単位でみますと、移転・人員増などによる延床面積の増加および新たな機材や機器の導入に伴い、電力使用量が増加している事業拠点も見られることから、拠点毎に最適なCO排出量削減方法を検討し、引き続き取り組んで参ります。

 また、今年度は当社における2021年~2023年度のScope3について算定を実施致しました。算定によりScope3が事業全体のCO排出量の約99%を占め、Scope3の中ではカテゴリ1がScope3の約92%におよぶことが分かりました。今後、Scope3削減に取り組まなければ、2050年のカーボンニュートラルの目標は達成できません。当社グループは事業が及ぼすサプライチェーンにおける環境負荷を考慮し、サプライヤーや委託業者とのCO削減に向けた協働、製品の環境負荷軽減を進めて参ります。

 

(3)人的資本に関する戦略・指標及び目標

 当社グループは、新たに掲げたパーパスである「Better being」に基づき、社員一人ひとりが進取の心を持ち、自ら考え、自発的に行動することで、より良い価値を創造して、個人の成長とともに会社が成長し続けることを目指します。そのために社員一人ひとりが、より働きやすさややりがいを感じられるよう、環境の整備や仕組みの構築に取り組みます。

 

①人材育成方針

 当社グループは、社員の成果・実績を最大限評価し、昇級・昇格につなげる制度を導入しており、人財育成については、「計画的人財育成」「能力開発(支援)」「キャリア開発」という3つの領域で捉え、それぞれに「研修制度」「職場での指導(OJT)」「計画的なキャリアパス」「人事諸制度の整備」の視点を持って、包括的な人財育成を推進しております。

 2023年度は、多様な人財が働きやすくチャレンジができる環境、および職務に応じた教育機会により知識とアイディアを蓄積できる環境を構築し、人財・組織の育成に努めました。具体的な施策としては、100名以上が個室宿泊可能な大規模研修所として2022年に開設した湘南研修所を活用し、長期間業務から離れて効率的且つ集中した合宿型の研修を実施することで、チームビルディング能力を構築してまいりました。特に、入社5年目までの社員に対する研修や、営業・開発部門の能力開発研修、管理職者を対象としたマネージャー研修などを重点的に実施し、イノベーションの創出に貢献する人財の育成等を目指し、社員一人ひとりの成長を支援してまいりました。

 2024年度は一部評価制度を見直し、成果・実績だけでなく、目標達成に向けて取り組んだ業務内容やプロセスも評価する制度に変更することで、働きがいのある職場作りに繋げていきます。

 

 [当社グループ(※)における研修費用]                      (単位:千円)

 

2022年3月期

2023年3月期

2024年3月期

年間研修費用

59,638

112,451

163,417

※国内連結グループ会社の合計(2024年3月期から㈱テスコム、テスコム電機㈱、groxi㈱を含む)

 

②社内環境整備方針

 当社グループは、多様な価値観を持つ社員が融合していく「多様な個を活かす働き方の実現」を通して、社員一人ひとりが能力を最大限発揮できるよう、働き方改革を進めております。

 具体的には、ドレスコードフリーの推進、大阪本社のスマートオフィス化、テレワーク制度の整備、シフト勤務の柔軟化、育児・介護・病気等への支援、副業の一部解禁などの前年度以前からの施策は引き続き継続した上で、さらに2023年度においては、全社共通のコミュニケーションツール(MS365)や、ペーパーレスなどをコンセプトとした経理システムの導入により、働く場所を限らずとも連携できる環境を作り、社員のワークライフバランスの実現をサポートしてきました。また、従業員のスキルアップやモチベーションアップ、業務の効率化や生産性の向上などを目的とした資格取得支援制度の導入、従業員の子育て支援を目的とした出産祝金の増額を行いました。

 

③ダイバーシティに関する方針

 企業の成長の為には多様な視点を持つ多様な従業員の活躍が不可欠であると認識したうえで、特に女性活躍推進にターゲットを置き、エレコム単体にて2028年3月期までに、女性管理職(※1)比率10%、女性監督職(※2)比率20%の目標を掲げております。

 以下のとおり、女性管理職比率はまだ道半ばの状態ですが、管理職候補である女性監督職の比率については、目標達成を視野に入れた登用が進んでおり、2024年3月期には16.1%まで増加しました。今後も女性を含む多様な人財が活躍できる環境を作り、2026年3月期には女性監督職比率20%を達成するように取り組み、女性管理職比率向上に繋げてまいります。

 上記のテレワーク制度やシフト勤務に加え、特に育児については、最長3歳年度末までの育児休業延長制度や、最長小学校6年生を修了するまでの育児の為の時間短縮勤務制度など、柔軟な働き方を可能にする支援策を講じることで、多様な社員一人ひとりが能力を最大限に発揮できる組織づくりに取り組んでおります。

※1:非営業部門においては課長以上、営業部門においては支店長以上で年俸制を導入している従業員

※2:非営業部門においてはチームリーダー、営業部門においては営業課長

 

[提出会社における管理職の男女別推移]

性別

2020年3月期

2021年3月期

2022年3月期

2023年3月期

2024年3月期

男性

72

75

79

87

97

女性

0

0

0

2

2

合計

72

75

79

89

99

女性管理職

比率

0.0%

0.0%

0.0%

2.2%

2.0%

 

[提出会社における監督職の男女別推移]

性別

2020年3月期

2021年3月期

2022年3月期

2022年3月期

2024年3月期

男性

107

109

104

101

99

女性

4

5

7

13

19

合計

111

114

111

114

118

女性監督職比率

3.6%

4.4%

6.3%

11.4%

16.1%

 

[当社グループにおける育児制度利用状況]

 

性別

2020年3月期

2021年3月期

2022年3月期

2023年3月期

2024年3月期

育児休業制度

利用開始者数(名)

男性

4

2

3

12

16

女性

18

28

26

30

28

育児短時間勤務制度利用者数(名)

男性

0

0

1

1

1

女性

21

33

39

57

67

育児休業からの

復職率

男性

100.0%

100.0%

100.0%

100.0%

100.0%

女性

94.7%

88.2%

100.0%

93.9%

95.0%

育児休業からの

定着率

男性

-

100.0%

100.0%

100.0%

90.9%

女性

87.5%

100.0%

100.0%

94.4%

85.7%

※1 復職率=当連結会計年度の育児休業からの復職者数÷当連結会計年度の育児休業からの復職予定者数×100

※2 定着率=前連結会計年度の育児休業からの復職者のうち、当連結会計年度3月末時点で在籍している社員数÷前連結会計年度の育児休業からの復職者数×100

 

④従業員エンゲージメント向上に向けた取り組み

 当社グループは、従業員エンゲージメントの向上が企業の成長に繋がると考えており、2022年度より、第三者機関によるエンゲージメントサーベイを実施しております。同サーベイは、当社が抱える課題の洗い出しや、課題に対して講じた施策の効果測定を目的としております。

 2024年3月期の同サーベイ結果においては、全21項目のうち14項目に前年度より改善傾向が見られ、具体的には、「評価の納得性」、「心理的安全性」などの項目で改善が見られました。「評価の納得性」については、2023年度から側面評価(※1)を実施したことや、人事評価の最終結果を被評価者が確認できるように方針変更したことが主な要因と考えられます。「心理的安全性」は、「評価の納得性」に対する上記施策を講じたことや、出社する社員が増加したことにより社員間の対面でのコミュニケーションが活性化されたことが要因であると考えております。

 今後更なるエンゲージメント向上に向け、評価が低位である項目や前年度比悪化した項目に注目するなど、必要な施策を講じていきます。

※1 側面評価:人事評価の際に、被評価者の業務にかかわった直属上長以外の上長(前上長や、被評価者が参加したプロジェクトのリーダーなど)も評価に参加する仕組み

 

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 なお、文中における将来に関する事項は、当社グループが有価証券報告書提出日現在において入手した情報に基づいて、記載が適当であると判断したものであります。

(1)市場動向について

 当社グループは主にパソコン及びデジタル関連製品の市場を主要な事業活動の領域としているため、当該市場の動向が当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2)仕入形態等について

 当社グループは、子会社の一部を除き自社で製造設備を保有しないファブレスメーカーであり、仕入先の選定に当たっては、仕入コスト、品質及び供給体制等を総合的に勘案して選定しておりますが、現状これら仕入品については多品種・少ロットの生産形態をとっております。当社グループは、品質管理の専門部署が当社で定めた品質管理基準に基づいた品質管理を行っており、安全かつ安心頂ける製品の供給に努めておりますが、生産委託先の受入れ環境によって自社製造設備では想定しがたい品質不良や時間的ロスが発生し、その後の再検査等で市場に製品をタイムリーに供給できない場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また、当社としては仕入先の多様化に努めておりますが、特定の商品の売上動向によっては、一部の製品または製品部材等について、特定の仕入先に依存する結果となることがあり、これらの仕入先が何らかの要因で当社グループへの供給量を制限または停止した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3)カントリーリスク、国際情勢に関わるリスクについて

 当社グループ製品の原材料仕入先及び生産委託先は中国、台湾などのアジア諸国等に所在しております。その為、これら各国における政治・経済情勢の変動、テロ・紛争などにおける治安状態の悪化や社会的混乱、法制度・租税制度の変動などにより、当社グループ製品の生産等に何らかの支障をきたし、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。なおこれらの対策として、個々の製品部材の生産地の把握やストック対策、生産国の分散化などの対策を進めております。

(4)為替相場変動について

 当社グループが取扱う製品は、中国、台湾などのアジア諸国等から完成品等を仕入れる割合が多く、大半が米ドル決済となっており、日本円と米ドル間の為替相場が円安傾向となった場合、円換算した仕入価格が上昇することになります。当社グループは為替相場の変動によるリスクをヘッジする目的で、為替予約を行っておりますが、当該リスクヘッジにより為替相場の変動の影響を緩和することは可能であっても、間接的な影響も含め、すべての影響を排除することは不可能です。このため当社グループの想定以上に円安が進んだ場合、パソコン及びデジタル機器関連製品市場等の環境いかんでは、かかる仕入価格の上昇分を適正に製品の販売価格に転嫁することが出来ず、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また、中国からの完成品仕入に関し、米ドル決済としておりますが、人民元が切上げられた場合、仕入価格が上昇する可能性があります。当該上昇分を適正に製品の販売価格に転嫁出来ない場合は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(5)保有在庫の陳腐化及び製品投入のスピードについて

 当社グループが事業活動の領域とするパソコン及びデジタル機器関連製品市場は、技術革新が急速であるため製品のライフサイクルを短いものとしており、特に大きな技術革新は最終消費者の需要動向を大きく変化させ、その時点で保有する在庫品の陳腐化を招く可能性があります。当社グループは経験則と実勢をもとに、毎月廃棄処分及び四半期毎に所定の評価減を行うことでこのリスクに備えておりますが、想定以上に在庫品の陳腐化が進んだ場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループは、生産委託先等の関係各社の協力のもと、エンドユーザーが実際に使用する最終製品を開発しておりますが、外部環境の変化等により、市場の変化に対応した新商品の投入ができなくなった場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(6)市場における価格競争等について

 当社グループが取扱う製品は、競合他社との間で日常的に厳しい価格競争が行われております。したがって、当社グループの思惑とは別に販売価格の引下げを余儀なくされる可能性があります。また、原材料価格の高騰等により仕入価格が上昇した場合等であっても、かかる仕入価格の上昇分を適正に販売価格に転嫁することが出来ない可能性があります。当社グループは、収益確保のため部材の調達コスト及び製造コスト等の削減に継続して取組んでおりますが、当社グループの想定以上に価格競争が厳しくなった場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(7)法的規制について

 当社グループが取扱う製品は、製造物責任法の適用はもちろんのこと、一部の製品は、電波法や電気用品安全法の規制を受けております。また同製品の一部は、輸出する際にワッセナー・アレンジメント(※1)の規制を受ける可能性があり、その場合は経済産業省の許可が必要になります。また、当社グループは子会社または代理店を通じて欧州及びアジアを中心とした海外で製品を販売しておりますが、欧州においてはRoHS指令(※2)、中国においては中国版RoHS指令(※3)等の規制を受けております。当社グループはこれらの法令を遵守するための法令に適合した品質管理基準に基づいた品質管理を実施し、事業活動を行っておりますが、予測できない事態によりこれらの規制を遵守できなかった場合や、今後法的規則等が改正され、その対応のための費用負担などが増大したり、あるいはこれらの法改正等に充分に対応出来ない場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(※1)通常兵器及び機微な関連汎用品・技術の供給能力を有し、かつ不拡散のために努力する意志を有する参加国により1996年に発足。我が国においては、外国為替及び外国貿易法、輸出貿易管理令、外国為替管理令等に基づき、輸出管理を実施。

(※2)電子・電気機器における特定有害物質の使用制限についての欧州連合(EU)による指令。

(※3)中国における特定条件を満たす電器電子製品への有害物質の使用(含有)を制限する法律。

 

(8)取引先との取引条件について

 当社グループは、当社グループが取扱う製品を家電量販店や法人代理店等(以下「取引先」という。)と継続的取引契約を締結し、当該取引先を通じて最終消費者に販売しております。これら取引先との取引契約が解消されることは、現状では想定しがたいものと認識しておりますが、今後不測の要因により主要な取引先との取引契約が解消された場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また、主要な取引先との取引に当たっては、業界の商慣習や取引高等に応じて交渉の上その条件を決定しておりますが、これらの取引条件が不測の理由によって悪化した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(9)在庫補償について

 当社グループの属するパソコン及びデジタル機器関連製品業界の商慣習として、既に出荷し取引先の在庫となっている製品に対して同製品の価格改定(値下げ)を実施した場合、当該値下げ金額に取引先在庫数量を乗じた金額を取引先に対して補填する「在庫補償」というものがあります。当社グループは取引先ごとに先方の在庫内容を常時把握するとともに、価格改定を実施する場合、流通在庫量の調整を行うなどの対策を打ち、「在庫補償」の金額が少なくなるよう努めておりますが、当社グループの施策が奏効しない場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(10)個人情報漏洩について

 当社グループではEコマースサイトにおける製品の販売や、取引先からの依頼により当社製品を顧客へ直送する際など、様々な業務において個人情報を取得しており、「個人情報の保護に関する法律」(個人情報保護法)に定める個人情報取扱事業者に該当しております。当社グループでは、法令に従い個人情報保護方針(プライバシーポリシー)を制定し、社内外へ周知するとともに、社内においては個人情報の取扱い及び管理に関する規程を整備し、個人情報保護に努めております。しかしながら、これらの個人情報が、不測の事態により外部へ漏洩した場合、当社グループの信用低下や損害賠償請求等により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(11)知的財産権について

 当社グループでは多数の品種の製品を取り扱っており、これら製品に係る多数の知的財産権を取得し、所有しております。当社グループが所有する知的財産権が、無断で使用された場合、当社グループ及び当社グループが取扱う製品のブランドが損なわれることにより、係争へ発展した場合を含め損害が発生する可能性があります。

 また、当社グループの製品のなかには、第三者からのライセンスを受けて第三者の特許その他の知的財産権を使用しているものがありますが、将来当該ライセンスが取り消されたり、当社グループにとって不利な条件に変更されたりする可能性があります。さらに当社が現在ライセンスの必要がないと判断している製品についても、第三者により新たにライセンスが必要と主張される可能性があります。これらの場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは知的財産権管理専門の担当者を置き、グループ内で企画・考案された製品が第三者に対する知的財産権を侵害することがないように留意するとともに、必要に応じて特許事務所に調査を依頼して他社の知的財産権に抵触しないよう努めておりますが、万が一当社グループの認識の範囲外で第三者による係争に巻き込まれた場合や特許侵害に係る警告を受けた場合には、その解決に係る時間及び費用、更には当社グループの信用低下や損害賠償請求及びライセンス料の支払い等により当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(12)製品の不具合発生について

 当社グループにおいて開発・製造された製品については、品質管理の専門部署が当社で定めた品質管理基準に基づいた品質管理を行っており、安全かつ安心頂ける製品の供給に努めておりますが、欠陥が生じる可能性は否定できません。万が一、自主回収を要するような製品の不具合が生じた場合や当該不具合により第三者に損害を与えた場合は、当社グループの信用低下や当社及び製品のブランドの低下、または損害賠償請求等により当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(13)自然災害等外的要因(自然災害、感染症の流行を含む。)について

 地震、津波及び台風等の自然災害、大規模停電、新型コロナウイルス感染症などを含む感染症の流行等の外的要因により、社会インフラに重大な障害が発生し、または当社グループの事業拠点や物流拠点、販売先拠点、生産委託先及び仕入先等が被災すること等により、当社グループの業務の一部または全部が停止せざるをえない可能性があります。当社グループでは、事業拠点を全国に設置し、物流拠点を分散させ、データセンターをセキュリティ及び耐震強度の高い施設に設置するなど、対策は講じておりますが、万が一、自然災害等の重大な外的要因が生じた場合は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(14)海外の事業展開強化について

 当社グループは、企業として一層の成長を図るため、当社単独または現地法人と合弁で子会社等を設立する等して、当社グループ製品の販売拡大に取組む方針であります。しかし、何らかの要因で当社グループの方針が奏功せず、子会社等の業績が悪化することがあった場合は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(15)M&A及び資本・業務提携について

 当社グループは、成長戦略の一環として、自社による新しい製品分野への進出及び新しい販売チャネルの開拓等のほか、M&A及び資本・業務提携等により、当社グループの事業規模を拡大しております。これらの実施にあたりましては、当社グループにおける既存事業との間で、マーケティング、商品開発、製品購買、販売チャネル、物流インフラ及びITインフラ等の既に当社グループが有する機能のうち、複数の機能で関連性を持たせることができ、その事業の将来性等を勘案して、慎重に検討することを基本方針としております。しかしながら、M&A及び資本・業務提携の後に、何らかの理由により当社グループの想定通りの成果が得られない可能性があります。

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

①財政状態及び経営成績の状況

a.経営成績

 当連結会計年度における世界経済は、ウクライナ情勢、イスラエル・パレスチナ情勢などの地政学リスクや、各国でインフレ鎮静化のための金融引き締めが続く中、米国経済は堅調な一方で欧州経済は失速するなど、地域間で強弱はありましたが、全体として、景気に緩やかな減速が見られました。わが国経済は、底堅い設備投資需要やインバウンド需要の回復、雇用情勢の改善など、緩やかな景気の回復基調が見られましたが、一方で、個人消費の伸び悩みや半導体需要の減速、また、特に米ドル建ての仕入取引が多い当社のような企業にとって急速な為替変動が引き続き懸念材料となるなど、先行き不透明な状況が続きました。

 このような環境の中、当社グループは、パソコン関連製品、スマートフォン・タブレット関連製品等の分野で競合に対抗可能な製品開発を強化し、リアル店舗及び伸長するEコマースのそれぞれのチャネルに即した戦略的な商品投入を推し進めました。また、監視カメラ・クラウド・周辺機器・ソフトウエア・ネットワーク工事などを融合したセキュリティ関連事業のように、グループ会社各々の強みを活かし、他社協業も進めながらソリューションをパッケージ化するなど、市場規模も大きく成長性の見込めるBtoB領域への積極展開を図りました。加えて、M&Aでは、2023年6月30日に当社の求めるネットワークの設計・構築・保守・運用といった機能を一社完結で出来るgroxi㈱(以下、groxi社)を子会社化し、2023年7月6日には、当社グループの家電事業の成長を加速させることを目的とし、ヘアドライヤーをはじめとした美容家電製品の主要プレーヤーとしての市場での認知を確立しているテスコム電機グループを子会社化し、各社が持つ成長ポテンシャルと当社グループの強みを掛け合わせる取り組みを進めました。

 これらの結果、売上高は110,169百万円(前連結会計年度比6.2%増)、売上総利益は42,572百万円(前連結会計年度比11.0%増)、営業利益は12,380百万円(前連結会計年度比9.5%増)、経常利益は13,360百万円(前連結会計年度比17.4%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は9,985百万円(前連結会計年度比22.8%増)となりました。

 売上高は、周辺機器やTV・AV関連製品を中心に厳しい競争環境や需要低迷の影響を受けましたが、モバイルバッテリーや高速充電に対応したAC充電器が新商品の投入など戦略的な拡販により大きく伸長し、またiPhone新機種関連商品の販売も好調に推移しました。加えて、監視カメラを中心としたセキュリティ関連事業の立ち上がり効果と、M&Aの新規連結効果により、売上高全体は増収となりました。

 売上総利益は、海外から製品を米ドルで仕入れする当社にとっては、円安の進行が円換算額の原価上昇に影響を与えましたが、前年度から取り組んでいる値上げ等の価格改定やリベートの管理徹底などの利益重視の取り組み、及び増収効果により、増益となりました。結果として売上総利益率も改善しました。

 営業利益は、テスコム電機グループ及びgroxi社の新規連結による人件費や管理費の増加に加え、人への投資強化の一環として給与のベースアップ等により人件費が上昇したこと、またM&A費用の発生や、コロナ禍からの経済活動の正常化に伴う旅費交通費等の管理費増加などにより、販売費及び一般管理費が増加しましたが、売上総利益の良化により、全体では増益となりました。

 経常利益は、営業利益段階での増益に加え、受取利息の増加及び前連結会計年度の急激な円安進行で生じた為替差損が当連結会計年度では為替差益に転じたことにより、全体では増益となりました。

 親会社株主に帰属する当期純利益は、上記に加え、関係会社株式の売却による一時的な法人税等の減少などがあったことから、増益となりました。

 

 品目別の概況は、次のとおりであります。なお、当社グループはパソコン及びデジタル機器関連製品の開発・製造・販売の単一セグメントであるため、商品区分である品目別で概況を記載しております。

 

(パソコン関連)

 パソコン本体の需要が低調に推移したこともあり、PCケーブル類やUSBハブ等の販売は落ち込みましたが、ゲーミングキーボードなど、EC販路でキーボードが好調に推移し、またマウスも特徴のある新商品投入により伸長、加えて法人向けPCフィルターの案件増加もありました。

 これらの結果、パソコン関連に係る当連結会計年度の売上高は、30,364百万円(前連結会計年度比2.1%増)となりました。

 

(スマートフォン・タブレット関連)

 モバイルバッテリーが量販店を中心に、また高速充電に対応したAC充電器がEC販路を中心に、新商品の投入など戦略的な拡販により大きく伸長しました。加えて、新型iPhoneの発売により、Type-Cケーブルやスマートフォンのケースやフィルムを中心としたアクセサリ類の販売が好調に推移しました。

 これらの結果、スマートフォン・タブレット関連に係る当連結会計年度の売上高は、22,060百万円(前連結会計年度比12.4%増)となりました。

 

(TV・AV関連)

 グループ会社DXアンテナ㈱の販売が首都圏の新築物件を中心とした電気通信工事により伸長しましたが、ヘッドセットマイクやAVケーブル関連の需要が落ち込み、TV・AV関連に係る当連結会計年度の売上高は、16,887百万円(前連結会計年度比3.1%減)となりました。

 

(周辺機器)

 ネットワーク機器、ストレージ機器ともに厳しい競争環境により減販となりましたが、ストレージ機器における競争環境は改善してきており、ネットワーク機器も今後、改善が見込まれます。メモリ関連は、半導体関連の需要減速により産業機器向けを中心に大きく販売が落ち込みましたが、価格改定の取り組みやSSDの伸長などにより利益は改善しております。また、セキュリティ関連事業は大きく拡大しました。

 これらの結果、周辺機器に係る当連結会計年度の売上高は、27,477百万円(前連結会計年度比6.1%減)となりました。

 

(その他)

 法人向けカスタムPCの販売は落ち込みましたが、テスコム電機グループとgroxi社の新規連結効果により販売が大きく伸長し、その他に係る当連結会計年度の売上高は、13,380百万円(前連結会計年度比74.8%増)となりました。

 

b.財政状態

 当連結会計年度末の総資産は、以下の要因により前連結会計年度末に比べ10,521百万円増加し、117,368百万円となりました。

<増加要因>

 受取手形及び売掛金:M&A(テスコム電機グループ及びgroxi社の子会社化)、及び販売回復により増加しました。

 商品及び製品:M&A、及び需要動向を踏まえた仕入により増加しました。

 為替予約:円安の進行により増加しました。

 固定資産:M&Aにより増加しました。

<減少要因>

 有価証券:債券の一部売却により減少しました。

 

 負債は5,277百万円増加し、30,919百万円となりました。これは主にM&A及び仕入に伴う買掛金の増加によるものです。

 純資産は5,244百万円増加し、86,449百万円となりました。これは主に、自己株式の取得による株主資本の減少影響はありましたが、利益剰余金の増加に加え、円安の進行によるその他の包括利益累計額の増加によるものです。

 以上により、自己資本比率は前連結会計年度末の75.8%から微減の73.6%となりましたが、引き続き強固な財務基盤が維持されています。

 当連結会計年度末の現金及び現金同等物は41,484百万円を保有しており、高い手元流動性を確保しております。不透明な事業環境下においても、事業の継続性を第一義とし、引き続きM&Aなど当社の成長に繋がる投資を行ってまいります。

 

②キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物の期末残高(以下「資金」という)は、営業活動の結果増加した資金が9,669百万円、投資活動の結果減少した資金が2,428百万円、財務活動の結果減少した資金が8,169百万円あったこと等により、前連結会計年度末に比べ230百万円増加し41,484百万円となりました。

 当連結会計年度中における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果増加した資金は9,669百万円(前連結会計年度は9,161百万円の資金の増加)となりました。主な要因は、法人税等の支払額3,762百万円、売上債権の増加額1,964百万円、棚卸資産の増加額643百万円、未払金の減少額1,348百万円といった資金減少項目があった一方で、税金等調整前当期純利益13,500百万円、減価償却費2,950百万円、仕入債務の増加額1,715百万円といった資金増加項目があったことによるものです。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果減少した資金は2,428百万円(前連結会計年度は7,110百万円の資金の減少)となりました。主な要因は、有価証券の売却による収入6,877百万円と、有形固定資産の売却による収入1,316百万円があった一方で、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出5,161百万円と、有価証券の取得による支出2,651百万円、及び有形固定資産の取得による支出2,352百万円があったことによるものです。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果減少した資金は8,169百万円(前連結会計年度は3,255百万円の資金の減少)となりました。主な要因は、配当金の支払3,522百万円と、自己株式の取得による支出5,005百万円といった資金減少項目によるものです。

 

③生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当連結会計年度の生産実績を品目別に示すと、次のとおりであります。

品目の名称

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

前期比増減率(%)

パソコン関連         (百万円)

1,237

65.5

スマートフォン・タブレット関連(百万円)

756

△30.9

TV・AV関連            (百万円)

2,106

△24.6

周辺機器           (百万円)

7,645

△7.8

その他            (百万円)

2,935

△20.0

合 計            (百万円)

14,682

△11.5

 

b.製品・商品仕入実績

 当連結会計年度の製品・商品仕入実績を品目別に示すと、次のとおりであります。

品目の名称

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

前期比増減率(%)

パソコン関連         (百万円)

24,010

51.2

スマートフォン・タブレット関連(百万円)

8,415

△23.6

TV・AV関連            (百万円)

5,871

△15.1

周辺機器           (百万円)

11,978

△6.0

その他            (百万円)

4,364

142.5

合 計            (百万円)

54,640

13.0

 

c.受注実績

 当社グループは、見込生産・仕入を主体としており、総販売高に占める受注生産・仕入の割合は極めて僅少のため、受注実績の記載を省略しております。

 

d.販売実績

 当連結会計年度の販売実績を品目別に示すと、次のとおりであります。

品目の名称

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

前期比増減率(%)

パソコン関連         (百万円)

30,364

2.1

スマートフォン・タブレット関連(百万円)

22,060

12.4

TV・AV関連            (百万円)

16,887

△3.1

周辺機器           (百万円)

27,477

△6.1

その他            (百万円)

13,380

74.8

合 計            (百万円)

110,169

6.2

(注)主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、当該割合が10%以上の相手先がないため、記載を省略しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

①経営成績等の状況に関する認識及び検討内容

 当社グループはパソコン及びデジタル機器関連製品を事業領域としておりますが、これら製品に関わる分野は技術革新の進歩が早く、商品サイクルが非常に短い傾向にあります。また、競合他社との競争環境も厳しく、原材料価格の高騰等により仕入価格が上昇した場合であっても、販売価格に転嫁することが困難な可能性があります。当社グループは継続的な新製品開発と調達コストの削減に取組んでおりますが、関連分野製品の新製品開発の遅れ、為替相場の変動、原油価格や原材料価格の動向等による売上原価の上昇が、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。さらに、欧米を中心とした各国の金融引き締めの継続や中国における不動産部門の不振等による成長ペースの鈍化、加えて地政学リスク、物価上昇の継続、特に急速な為替変動リスクといった課題も依然として続いており、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。そのため、パーパス「Better being」を根底として、中期経営計画の重点戦略である、お客様満足度を高める商品・サービスによる新たな価値創造と、持続可能な成長を実現するための人材育成と強い事業基盤構築の取り組みを推進し、長期的・持続的成長を実現してまいります。

 

②重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。連結財務諸表の作成にあたっては、会計上の見積りを行う必要があり、特に以下の事項は、経営者の会計上の見積りの判断が財政状態及び経営成績に重要な影響を及ぼすと考えております。

(棚卸資産評価損)

 棚卸資産評価損については「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

(返金負債に含まれる売上値引見込相当額)

 主要な販売先である家電量販店や代理店に対して支払うリベートや値引等について、期末時点において支払が確定していないものについて、顧客に返金すると見込んでいる対価を収益から控除して返金負債として計上しております。当該返金負債の見積りにあたっては、契約条件や過去の実績に基づく最頻値法を用いております。

 

③経営成績の分析

(売上高)

 当連結会計年度の売上高は、前連結会計年度比6.2%増の110,169百万円となりました。これは主に「周辺機器」や「TV・AV関連」の販売は減少しましたが、「スマートフォン・タブレット関連」や「パソコン関連」、またM&Aの新規連結効果により「その他」の販売が伸長したことによるものです。

(売上原価)

 当連結会計年度の売上原価は、前連結会計年度比3.4%増の67,597百万円となりました。これは主に売上高の増加と原価を意識した販売手法の浸透に基づく粗利率の改善によるものです。

(販売費及び一般管理費)

 当連結会計年度の販売費及び一般管理費は、前連結会計年度比11.7%増の30,192百万円となりました。これは主に人件費や管理費の増加によるものです。

(営業外収益)

 当連結会計年度の営業外収益は、前連結会計年度比97.7%増の1,031百万円となりました。これは主に受取利息の440百万円増加によるものです。

(営業外費用)

 当連結会計年度の営業外費用は、前連結会計年度比88.6%減の51百万円となりました。これは主に前連結会計年度に計上していた為替差損419百万円が、当連結会計年度は発生しなかったことによるものです。

(特別利益)

 当連結会計年度の特別利益は、前連結会計年度比77.1%増の233百万円となりました。これは主に前連結会計年度に計上していた退職給付制度終了益91百万円が当連結会計年度は発生しなかった一方で、新株予約権戻入益101百万円や関係会社株式売却益65百万円などを計上したことによるものです。

(特別損失)

 当連結会計年度の特別損失は、前連結会計年度比48.9%増の92百万円となりました。これは主に固定資産除却損などの増加によるものです。

(親会社株主に帰属する当期純利益)

 前述の結果、及び関係会社株式の売却による一時的な法人税等の減少などにより、当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度比22.8%増の9,985百万円となりました。

④ 財政状態の分析

 財政状態の分析に関する情報については、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況 b.財政状態」に記載のとおりです。

⑤ キャッシュ・フローの状況の分析

 キャッシュ・フローの状況の分析に関する情報については、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。

⑥ 資本の財源及び資金の流動性

 当社グループの事業活動における運転資金の主なものはパソコン及びデジタル機器関連製品に関わる仕入代金及び販売費及び一般管理費があります。また、設備投資需要としては新製品の金型投資や情報処理のための無形固定資産投資等があります。

 当社グループはそれらの資金需要に対応するため、内部留保を蓄積することで流動性を確保することとしております。また、重要な資本的支出やM&A等により多額の資金需要が生じた場合の財源としては、金融機関からの借入や新株及び社債の発行等により資金の調達を行うこととしております。

 

5【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。

6【研究開発活動】

 当社グループでは、人々の暮らしをより楽しく快適にするための製品の開発、及びデザイン性の高い製品の開発に注力しております。

 潜在的なニーズをウォンツに変えるためのマーケティング技術を駆使して調査し、その課題を研究開発テーマとして発掘、実現のためのデザイン性の追求及び製品開発に取組んでおります。

 当社グループの研究開発機能の中核は横浜技術開発センターが担っておりますが、2022年4月に、解析や検証、技術研究に用いる設備増強やエンジニアの人員増加に向けた採用力強化を目的として、従来の拠点よりもアクセスが良く専有面積が倍以上となるオフィスへ移転をいたしました。また、2024年4月には開発対応件数の増加及び業務効率化、技術トレンドの情報収集力強化を目的として、中国ベンダーが密集する深圳に深圳技術開発センターを起ち上げました。これらの取り組みにより、さらなる製品開発の効率化を図り、より高品質で高機能な製品開発に向けた取り組みに尽力してまいります。

 当連結会計年度の各品目における研究開発活動は、以下のとおりであります。なお、当社グループはパソコン及びデジタル機器関連製品の開発・製造・販売の単一セグメントであるため、商品区分である品目別で内容を記載しております。

 なお、弊社ではiF product design award 2024にて4シリーズ、2023年度グッドデザイン賞を15シリーズが受賞いたしました。

 

(1)パソコン関連

 当品目では、eスポーツ向けのキーボードや、使い勝手を追求したマウスなどに注力致しました。

(2)スマートフォン・タブレット関連

 当品目では、高速充電対応のAC充電器やモバイルバッテリー、Type-Cケーブルなどに注力致しました。

(3)TV・AV関連

 当品目では、BtoB向けセキュリティカメラ、ワイヤレスイヤホンなどに注力致しました。

(4)周辺機器

 当品目では、Wi-Fi7製品やセキュリティ機器の開発などに注力致しました。

(5)その他

 当品目では、調理家電や理美容家電、BtoB向けアルコールチェッカーなどのヘルスケア関連の製品に注力致しました。

 

以上の結果、当連結会計年度の研究開発費の総額は3,816百万円となっております。