第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

(1) 会社の経営の基本方針

当社は、テクノロジーの可能性を追求し、顧客に新たな価値を認めていただける製品を他社に先駆けて創造、提案し、顧客の満足を得ることを経営の基本方針としております。このため、当社は映像技術を核とした市場や顧客のニーズに応じた最適な映像環境ソリューションを提案する「Visual Technology Company」として、世界トップレベルの高品質かつ信頼性の高い映像製品の提供、システムソリューションの提案を行っております。

 

(2) 経営戦略

2024年度を初年度とする第8次中期経営計画では、「Visual Technology Evolution ~EIZOにしかできない映像価値を~」の方針の下、ハードウェアとソフトウェアの両面からEIZOにしかできない「映像」の価値をさらに高め、引き続き持続可能な社会の実現に向けた取組みをさらに推進するとともに、事業領域の拡大を目指してまいります。

 

(3) 経営環境

当社の属する電子機器業界は、絶え間ない技術の進化、液晶パネルに代表される電子デバイス業界の変容等、激しく変化しております。その環境下で、ソリューションビジネスが拡大するとともに、新たな価値創造に向けた取組みが進展しております。

そうした中、当社はB&P(Business & Plus)で培った要素技術・品質・ノウハウを核に、ヘルスケア等の特定市場に深く根差した製品を開発し、相互にシナジーを生む事業を展開し、強いビジネスモデルを構築してきました。また、ビジネスモデルのさらなる進化に向けて「撮影、記録、配信、表示」のすべてをカバーできる当社独自のシステム事業である「EIZO Visual Systems」(EVS)の強化に取り組んできました。このビジネスモデルのもと、事業拡大のための地域戦略として欧州・米国・中国に続き、成長著しいインドや中東での事業拡大に取り組んでおります。

当社が認識する各市場の経営環境は次のとおりです。

 

B&P(Business & Plus)

ビジネス用途ではパフォーマンス及び作業効率の向上を図るための表示画面の大型化、高精細化及び高解像度化が進んでおります。また、サステナビリティへの意識の高まりにより、環境に配慮した企業の取組みと製品への需要が高まると見込んでおります。さらには、フリーアドレスやテレワークなど、近年働き方の多様化が進む中、USB Type-C接続によるノートPCとの親和性等、機能の高度化や利便性に対するニーズが高まっております。

 

ヘルスケア

診断用途については、欧州・米国・日本といった先進国ではモダリティ機器の進化に伴い、読影環境の改善を目的とした高解像度モニターの需要が高まることに加え、中国やインド、中東などの新興国においても医療の高度化により需要が高まる見込みです。また、欧米において導入が進んでいる遠隔診断は、その他地域にも拡がることが見込まれます。内視鏡及び手術室用途については、低侵襲手術などの先端医療への需要が高まっており、近年ではロボット手術の導入も進んでいます。これらの状況下、高解像度手術用モニターや術野カメラ、映像記録・配信システムなどの映像関連機器の需要が高まる見込みです。

 

クリエイティブワーク

写真、印刷等の静止画分野では、色の再現性が重要な写真や印刷用途での底堅い需要が存在します。映像制作向けについては、4K・HDR制作環境が浸透しており、特に映画制作や動画ストリーミング配信サービス分野における需要が米国、欧州、日本に加え、インド等で高まっています。また、ゲーム制作分野においてもCG技術の高度化に伴い、4K・HDRの需要が高まることが見込まれます。

 

V&S(Vertical & Specific)

多種多様な業種・分野を対象としており、幅広い需要を見込んでおります。工作機械をはじめとした、各種機器・装置に搭載するタッチモニターの需要は引き続き旺盛であり一層の需要を見込んでおります。航空管制用途向けについては、全世界における市場シェアNo.1のポジションを維持しております。米国を始めとした全世界の更新需要に加え、中国やインドなどの新興国での空港新設による需要や付加価値の高い高解像度モニターの需要についても高まることが見込まれます。監視用途向けでは、全世界でセキュリティ意識の高まりを背景に、市場が拡大することが見込まれます。船舶用途向けについては、操舵室の電子化・システム化に伴い船級規格を備えたモニターの堅調な需要が見込まれる他、船内外の監視ニーズ、自動航行システム実現に向けた実証実験等、市場は多様化の動きを見せております。

ディフェンス向けについては、地政学リスクの高まりを受け、高い信頼性や耐久性を備えたモニターやグラフィックスボードの需要が高まるものと見込まれます。

 

アミューズメント

当市場は引き続き遊技人口の減少により厳しい環境となりますが、魅力ある商品の提供及び安定供給により、市場でのトップメーカーの地位を維持してまいります。

 

(4) 優先的に対処すべき事業上の課題

① ビジネスモデルの進化と新たな価値の創造

自社開発したモニター、カメラ、ネットワークエンコーダ等のハードウェアと当社固有のアルゴリズムやAI等を要素とするソフトウェアを融合させ、「撮影、記録、配信、表示」のImaging Chainを構築し、当社独自のシステム事業である「EIZO Visual Systems」(EVS)を展開しております。このシステム事業と当社の強みを活かした製品づくりにより、さらに便利で簡単に利活用できる新たな映像価値をグローバルに提供し、様々な社会課題の解決に貢献します。これらを通じて、当社の事業領域を拡大させ、当社独自のビジネスモデルの進化と強化に努めてまいります。

 

② 安定した資材調達と製品供給

当社は、取引先との間で相互繁栄を基本とした信頼関係を構築し、互いが長期に発展できるパートナーシップを築くことを方針としております。取引先とは、当社の資材調達方針に加え、当社のサステナビリティに関する取組みを共有し、パートナーシップを強化しております。また、自然災害の発生、感染症の流行、国際紛争や市場の変化により資材調達が困難な時においても顧客への安定的な製品供給を実現するため、当社製造拠点及び資材調達におけるBCPを強化するとともに十分な材料在庫の保有を戦略的に行っております。これらの取組みにより、安定供給を継続、維持してまいります。

 

③ 事業成長のための生産性向上と競争力強化

ハードウェアとソフトウェア両面の進化を通じた事業成長のため、戦略的なグループ開発体制・生産体制・販売体制の構築と事業基盤を支えるITインフラの刷新を行うなど業務効率化と生産性向上を進めてまいります。その一環として、新興市場であるインド、中東での販売拡大に向けた戦略投資を積極的に行います。また、当社独自のビジネスモデルを進化させ、当社固有の技術と強いシナジーを発揮するノウハウ、技術等を取得するため、今後も必要に応じ機動的なM&Aを実施いたします。

 

④ 持続可能な社会の実現に向けた価値創造の推進

当社は、「映像を通じて豊かな未来社会を実現する」という企業理念のもと、エルゴノミクスや環境に配慮した高品質な製品づくりや、誰もが生き生きと活躍できる職場環境の構築など、製品づくりと事業活動を通じて社会課題の解決に取組んでおります。社会課題と当社経営戦略の観点から重要性の高い事項をマテリアリティ(重要課題)として特定し、全社目標マネジメントシステムとリンクさせることで持続可能な社会の実現に向けた取組みを一層強化し、中長期的な企業価値の向上に努めてまいります。

 

⑤ 気候変動・自然資本への取組み

マテリアリティの一つとして「気候変動への対応」を特定し、気候変動対策を推進しております。2023年5月には、2040年にNet Zeroを達成するための具体的な施策・計画「低炭素移行計画-Transition to Net Zero-」を策定し、当計画に従い、国内外の事業活動全体における温室効果ガスの排出削減に積極的に取組んでおります。また、2024年10月には自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)に賛同し、そのフレームワークに沿って自然資本への依存・影響・リスク・機会についての分析を行い、2025年4月にTNFDレポートを開示しました。今後も生物多様性及び生態系の保護を含む環境保全、汚染予防、環境リスクの低減により一層努めてまいります。

 

⑥ 自由闊達で創造的に活躍できる企業文化の醸成

当社はマテリアリティの一つである「自由闊達で創造的に活躍できる企業文化」こそ、従業員と会社が成長するために最も重要な要素と考えております。「モノづくりの高度化・複雑化が進む中で、次のビジネスモデルを『創る』『支える』ことができる多様な人材の獲得と育成」を最優先課題として捉えております。高い倫理観とグローバルマインドを持ちつつ、映像分野のトップランナーとして「世界で一番いいものをつくり、世界中のお客様にお届けする」という「EIZOマインド」のさらなる醸成と共有を推し進め、VUCAの時代に対応する柔軟な思考力・実践力を持った人材を確保・育成することを目指します。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

(1)サステナビリティの基本方針

当社は「テクノロジーの可能性を追求し 映像を通じて 豊かな未来社会を実現する」という企業理念のもと、事業を通じて社会のサステナビリティに貢献することを目標に掲げています。これに基づき当社が守るべき指針として定めた「EIZOグループ行動指針」を、当社のサステナビリティの基本方針としています。

 

サステナビリティの基本方針:EIZOグループ行動指針

1.独自の技術・発想による新たな価値の創造と提案を通して、お客様に愛される高品質の製品・システム・サービスによるソリューションを提供します。

2.製品と事業活動を通じて、最先端の環境対応に取組みます。

3.自由闊達な企業風土のもと、グローバルな視野とマインドを持って業務に取組みます。

4.オープンでフェアな事業活動を行います。

5.ステークホルダー(取引先・社員・株主・地域)との信頼関係の構築と維持に努めます。

6.人権と多様性を尊重し、健全な職場環境づくりを推進します。

7.経営資源である会社資産および情報の保全と保護に努めます。

8.法とその精神を遵守し、高い倫理観を持って行動します。

 

(2)サステナビリティに関するガバナンス

サステナビリティの取組みに係る推進体制として、取締役会の直下に「サステナビリティ委員会」を設置しています。サステナビリティ統括責任者である代表取締役社長 COOを委員長とし、全執行役員および国内グループ会社の社長により委員を構成しています。同委員会にてサステナビリティの方針や中期目標の策定、これに基づく各部門におけるサステナビリティ推進活動の進捗の把握・評価・検証などを行い、取締役会の監督のもと経営トップ自らが関与し、グループ全社にてサステナビリティ推進に取組んでいます。

また、中長期的な企業価値の向上と持続可能な社会の実現に向けた取組みをより強化し、ステークホルダーとの一層の価値共有を図ることを目的に、2026年3月期より取締役(監査等委員である取締役を除く)を対象とした役員報酬制度を一部見直し、ESG評価指標を導入しました。

導入後の役員報酬制度の詳細については、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (4)役員の報酬等」を参照ください。また、気候変動に関するガバナンスにつきましては、「(5)重要なサステナビリティ項目 ②気候変動に関するガバナンス、リスク管理、戦略並びに指標及び目標」をご確認ください。

 

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サステナビリティ・マネジメント体制

名称

役割

構成

開催頻度

(/年)

取締役会

‐サステナビリティに関する事項について、サステナビリティ委員会より報告を受け、定期的に進捗状況を監督

取締役全員

4回以上

サステナビリティ

委員会

‐サステナビリティ方針の策定

‐マテリアリティの特定

‐サステナビリティ中期目標の策定

‐サステナビリティ推進活動の進捗状況の把握・評価・検証

‐サステナビリティ推進活動に課題・問題があればその指摘や提言

‐当社グループの事業活動にかかる気候変動に関わる戦略の策定、及び進捗管理とその情報開示

委員長:サステナビリティ統括責任者が兼ねる

 

委員:全執行役員及び国内グループ会社の社長

4回以上

 

サステナビリティ・マネジメント分科会

‐サステナビリティに関する情報の収集

‐マテリアリティの分析・評価

‐サステナビリティ目標・施策の立案及び進捗の確認

‐上記に関するサステナビリティ委員会への報告

各部門及び国内外グループ会社メンバーの中からサステナビリティ委員会事務局が選出し、サステナビリティ委員会が指名する

4回以上

 

気候変動対策分科会

‐TCFD/TNFDに沿った情報の収集及び情報開示

‐自然資本を含む、環境に関連するリスク及び機会の評価/再評価、事業戦略への影響の分析、対応計画の立案

‐上記に関するサステナビリティ委員会への報告

同上

4回以上

 

人権分科会

‐人権に関する国際規範等の情報収集

‐バリューチェーン全体での人権リスクの防止・軽減に向けた人権デューディリジェンスの推進

‐上記に関するサステナビリティ委員会への報告

同上

4回以上

リスクマネジメント

委員会

‐全社的リスクマネジメントにより洗い出されたリスクの中から重要リスクの選定・確認・検証

‐全社的リスクマネジメント推進に関する年次活動計画の立案

‐重要リスクに対するリスク対応策の確認・検証

委員長:リスクマネジメント統括責任者(社長 COO又は社長 COOが任命する者)が兼ねる

 

委員:全執行役員及び国内グループ会社の社長

2回以上

 

 

(3)サステナビリティに関するリスク管理

当社は、当社グループをとりまくリスクを適切に管理することが経営目標の達成や事業戦略の実行のために不可欠であると捉え、統合的・一元的にリスクを管理する全社的リスクマネジメント体制を構築・運用しています。サステナビリティにかかるリスクと機会に関しても、全社的リスクマネジメントと連携し、リスクの抽出を行うとともに、サステナビリティ委員会において分析・評価を行い、同委員会の指示のもと、各責任部門において対策を実施しています。対策実施の成果について、サステナビリティ委員会に報告し、評価を行うことで、サステナビリティに関するPDCAをマネジメントしています。

 

(4)戦略:EIZOのマテリアリティ

サステナビリティの観点から、当社に関わりの深い社会課題を抽出し、これらを「ステークホルダーにとっての重要度」と「EIZOグループにとっての重要度」の2つの指標で評価した上で、サステナビリティ委員会にて、EIZOが取組むべきマテリアリティ(重要課題)として特定しました。この各マテリアリティに対し、指標(KPI)と目標を設定し、その達成に向けた取組みを進めています。

 

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(5)重要なサステナビリティ項目

①人的資本に関する戦略並びに指標及び目標

 

<人材に関する考え方及び戦略>

当社は、「Visual Technology Company」として、顧客の期待を超える製品・システム・ソリューションの提案を行ってまいりました。それを確固たるものにするために、最も重要な資本は「人材」だと考えており、次に掲げる5つの要素を人的資本に係るマテリアリティとして特定しています。

・異なる文化・価値観の尊重

・人材価値の最大化

・エンゲージメントの向上

・健康経営の推進

・安心・安全に働ける環境の構築・維持

人材を維持・強化するためには、この5つのマテリアリティへの投資と取組みが不可欠であり、当社では以下に定める人材育成方針や社内環境整備方針に基づき、各種人事・社内制度を整備することで、社員が生き生きと働き、やりがいを感じながら自己成長できる環境と組織の実現を目指しています。なお、各マテリアリティに対しては、指標(KPI)及び目標を定め、継続的な改善活動とモニタリングを実施することで、計画的・戦略的に人的資本への投資を進めております。

また、第8次中期経営計画においては、人事戦略を、当社ビジネスモデルを支え、深化させるための重要課題と位置づけることで、経営戦略との関連を明確にしています。今後も経営戦略と人事戦略を連動させながら、企業価値を高めるとともに、映像を通じた豊かな未来社会の実現へ向け、映像技術のトップランナーとして人的資本への投資と取組みを加速してまいります。

 

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a.人材の確保と育成方針

「モノづくりの高度化・複雑化が進む中で、次のビジネスモデルを‘創る’‘支える’ことができる多様な人材の獲得と育成」を最優先課題として捉えており、EIZOマインドとともに、VUCA(※)の時代に対応する柔軟な思考力・実践力を持った人材を確保・育成することを目指します。

EIZOマインドとは、「自由闊達で創造的に活躍できる企業文化」の下、高い倫理観とグローバルマインドを持ちつつ、映像技術のトップランナーとして「世界で一番いいものをつくり、世界中のお客様にお届けする」という自信・プライドを表しています。脈々と受け継がれるこの「EIZOマインド」の更なる醸成と共有を推し進め、今後、当社ビジネスをさらに大きく発展させることができる人材の育成を進めます。

※VUCA:不確実性が高く将来の予測が困難な状況を指す。Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字。

 

(具体的な取組み)

イ. 積極的な採用活動

EIZOグループの次世代を担う多様な人材を確保するため、積極的に採用活動を行っています。国内グループ会社では、幅広い職種で短期~長期のインターンシップを実施し、就業体験を通して学生に業務内容や社風を深く理解してもらい、人材の確保・入社後のミスマッチ防止につなげています。また、キャリア観に合わせた専門エンジニア職採用、退職した社員を再雇用するカムバック採用、外国籍社員の採用など、多様性を意識した採用活動を行っています。海外グループ会社においても、インターンの受入れやジョブフェアへの出展などで、積極的に人材確保に努めています。

 

ロ. 充実した教育制度

国内グループ会社においては、すべての社員に対して社内の教育・訓練ニーズを把握しながら、以下の階層別・職能別研修やグローバル人材の育成、自己啓発の援助など、多様な研修・教育を計画しています。さらに、海外グループ会社各社においても、開発会社・販売会社それぞれの業務に求められるスキルに合わせた全体及び個人別の研修プランを設け、OJTや外部研修なども利用しながら、スキルアップを図っています。

 

教育体系図

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ハ. グローバルマインドの醸成

グループ会社を世界各国に構える強みを生かし、以下のような取組みによりEIZOマインドの根幹をなす「グローバルマインド」を醸成しています。

 

(イ)海外トレイニーの相互受け入れ

若手・中堅社員を中心に、海外拠点へのトレイニーを派遣しており、海外市場のニーズ把握や、設計・開発ノウハウの共有等を積極的に行っています。また、海外グループ会社からも適宜トレイニー受入を行い、相互人材交流を活発化しています。

 

(ロ)EIZO Unitedの開催

海外グループ会社及び販売代理店から約100名が参加する「EIZO United」を年に一度、本社にて開催しています。ここでは、社内技術展示会や大小の会議を通じて事業の方向性や自社技術・製品への理解を深め、想いを共有し、一体感を高めています。さらに、さまざまな部門の社員に自社技術・製品、生産活動に加えて所属部門の取組み等を説明する機会を設けることで、グローバルなEIZOグループの一員としての意識向上を図っています。

 

b.社内環境整備方針

当社は行動指針の一つである「自由闊達で創造的に活躍できる企業文化」こそ、社員と会社が成長するために最も重要な要素と考えております。この企業文化を醸成・浸透させるために、以下の様々な取組みを行っております。

 

(具体的な取組み)

イ.ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンの推進

人権尊重は、企業にとって重要な社会的責任であると認識し、EIZOグループ人権方針に基づき、各国・地域における法令、文化、宗教、価値観などを正しく理解・認識することに努め、安心・安全で豊かな持続可能社会の実現を目指します。

 

(イ)国籍の多様性

EIZOグループは世界18社から構成され、世界中で多様な人材が活躍しています。さらに2023年からは当社役員層においても外国籍の役員を加えることで、経営層レベルでの多様性を確保しております。当社グループはこれからも社員が一人ひとりの人権を尊重し、多様で異なる国の文化を理解しあいながら、グループ全体が一体感を持って、事業の発展に努めてまいります。

 

(ロ)女性活躍推進

研究・開発職人員を含む女性総合職を増加させるために、採用活動に女性社員を積極的に参画させることでキャリアビジョンの広報を強化しています。同時に、女性の割合が比較的高い技能・事務職社員から総合職への転換も適宜実施しています。

また、国内グループ各社において、「女性活躍推進のための行動計画」を策定し、女性社員が指導的立場で活躍できる就業環境整備に努めており、管理職・中堅社員向けの選抜型研修を行うことで意識醸成を高めています。このような取り組みを通じ、2024年10月には初めて開発部門において2名の女性管理職が就任するなど、女性活躍は着実に進んでいます。男女を問わず公平に人事評価/処遇をすることで、透明性のある女性管理職比率の向上を目指しています。

 

(ハ)障害者雇用

国内外グループ各社において、各国の法律を考慮しながら、公平な採用、合理的配慮に基づく障害者が働きやすい環境整備などに取組んでおり、障害を有する方も製造部門や開発部門、コーポレート部門など多様な職場で活躍しています。また、国内グループ会社では障害者向け合同企業説明会への参加やインターンシップ受け入れなど、積極的な採用活動を行っており、引き続き、職場環境の整備や業務拡大に伴う雇用機会の創出を進めていきます。

 

(ニ)シニア社員雇用

国内グループ会社においては2024年4月に定年を60歳から65歳に引き上げました。60歳以降も能力・活力ある社員がより一層活躍できる環境を整備し、シニア社員が培った豊富な経験値を次の世代に計画的に継承することで、シニア社員のモチベーションの維持・向上と、組織・事業の継続安定化を図っています。

 

ロ.ワークライフバランス

ワークライフバランスを実現するため、以下のような取組みを通して、社員一人一人の個人の自由時間を確保し、仕事だけでなく、プライベートの時間も充実できるよう取組んでいます。

 

(イ)プライベート時間との両立

継続的な業務効率化や多残業社員へのメンタルヘルス対応、週1回「ノー残業デー」の設定により残業時間削減を目指しています。また、2025年4月からは一般社員全員に対しての年次有給休暇付与日数を従来より2日増加し、最大22日を付与しています。さらにシフト勤務社員については時間単位での有給休暇取得も可能とすることで、より柔軟なワークスタイルを実現しています。

 

(ロ)育児との両立

各種育休制度や時短勤務制度の整備や充実化と並行し、制度の認知や取得促進活動により、制度を利用しやすい雰囲気づくりにも力を入れています。2024年度の育休取得率は国内グループ全体で女性100%、男性68%でした。これからも社員一人ひとりが自分らしく働けるよう、ワークライフバランスのとれた職場環境づくりを目指します。

 

ハ.多様で柔軟な働き方

効率的な業務遂行のため、多くの部門でフレックスタイム制度を導入しています。また、副業・兼業を許可することで社員の自律的なキャリア形成や自己実現を支援し、社員一人一人が個性を発揮しながら、生き生きと働くことのできる環境づくりに力を入れています。

 

ニ.風通しの良い労使関係

国内グループ会社では、労使協議の場として「V-work協議会」を設けており、協議員からの意見をもとに社員がより働きやすい職場となるよう、労働環境を整備しています。各国グループ会社においても、それぞれの国の法令や社会環境に応じて、社内に労使協議会や労働委員会を設置し、これを活用することで、良好な労使関係を構築しています。

また、週1回、役員が集まる「EIZO Top Meeting」を開催しており、その中では各部門での施策や提案、中長期的な課題について担当社員が直接役員と協議する場としても活用されています。活発に意見を交わせる環境を整備することで、社員一人一人が責任感を持って経営にコミットし、全社一丸となって事業を推進しております。これらの取組みにより、EIZOグループでは高い定着率を維持しており、中長期的な人材育成と事業活動への貢献が可能となっています。

 

ホ.安全で健康的に働くことのできる職場環境

「EIZOグループ健康宣言」を掲げ、事業活動を通じて社会の健康課題の解決に貢献するとともに、自由闊達な企業風土の醸成や業務効率化による労働時間の削減・有給休暇取得の促進など社員の心身の健康維持・増進と快適な職場づくりに取組んでいます。2023年度は、健康経営戦略マップを策定し、私傷病休職者率の改善、ワークエンゲージメントスコアの向上、生活習慣病ハイリスク者の低減、運動習慣者比率の向上、ストレスチェック結果の総合健康リスクの高い職場比率の低減の数値目標を定め、保健指導、健康セミナー、運動促進の各種イベント、職場環境改善等の様々な活動を行いました。これらの活動が認められ、国内グループ会社全体で「健康経営優良法人2024(大規模法人部門)」の認定を受けました。さらに、労働安全衛生に関する活動を継続的に維持・向上していくため、ISO45001に基づく労働安全衛生マネジメントシステムを制定・運用しています。

 

<人的資本に関する指標と目標>

上記の様々な取組みを積極的に推進することで以下の各KPIの達成を目指します。

 

項目

2024年度実績 ※国内連結

2025年度目標 ※同左

2026年度目標

※同左

備考

人材の確保・定着

管理職に占める女性労働者の割合

3.9

5.0

7.0%

 

リーダー職に占める女性労働者の割合

6.4

8.0

10.0%

※管理職層を含む

新卒離職率

6.6

5.0%以下

5.0%以下

※総合職系、直近3年度平均

障害者雇用率

2.2

2.5

2.7%

 

私傷病による休職者率

0.9

0.6

0.4%

※メンタルヘルス不調による1か月以上の休職

従業員の
スキルアップ

1人当たりの研修受講数

7.8

12.0

15件

※社内研修含む

人材育成投資額

36,600

50,000

80,000円

※社内研修含む

研修参加時間

28時間

40時間

60時間

※社内研修含む

働きがいのある
職場環境実現

エンゲージメントスコア

2.4/4.0点中

2.7点/4.0点中

3.0点/4.0点中

※仕事の「活力」「誇り」に関する調査結果より

年次有給休暇取得率

84.3

90.0

95.0%

 

女性の育児休業取得率

100.0

100.0

100.0%

 

男性の育児休業取得率

68.1

90.0

100.0%

 

 

 

②気候変動に関するガバナンス、リスク管理、戦略並びに指標及び目標

当社はEIZOブランドの立上げ以来一貫して最先端の環境対応に取組んでおり、製品の省エネ性能を追求するとともに、事業活動全体におけるGHG(Greenhouse Gas、温室効果ガス)排出削減目標を策定するなど、バリューチェーン全体において積極的な気候変動対策に取組んでいます。2021年5月にはTCFDに賛同を表明し、世界的な気候変動が当社事業にもたらすリスク・機会を分析し、関連情報の開示と必要な対策を着実に進めています。また、パリ協定が定める気候変動に関する目標に科学的に整合するGHGの排出削減目標「Science Based Targets(以下「SBT」という)」 に対しても、2030年のGHG排出削減目標を設定し、認定を受けております。また2025年4月には「TNFDレポート」を開示し、今後は自然資本を含む気候変動・生物多様性への取組にも注力してまいります。

 

<気候変動に関するガバナンス>

気候変動に関するリスクと機会の評価と対応については、サステナビリティ委員会の下部に気候変動対策分科会を設置し、専門的観点から検討を行っております。当社取締役会は、気候変動関連事項に対処するための目標と取組み に関して、サステナビリティ委員会/気候変動対策分科会によるGHG排出削減やシナリオ分析に基づく機会実現のための戦略の策定、および年4回の業務執行状況の報告により、その進捗状況をモニタリングし監督しています。

 

<気候変動に関するリスク管理>

気候変動に関連するリスクと機会は、全社的リスクマネジメントと連携し、TCFDが示す長期的かつ専門的なリスクと機会への対応を包含するために、サステナビリティ委員会/気候変動対策分科会にて分析・評価し、対策を検討しています。

 

<気候変動に関する戦略>

「循環型社会への対応」「気候変動への対応」は当社のマテリアリティ(重要課題)です。そのため、気候変動についてどのようなビジネス上の課題が顕在しうるか、IPCC(※)第6次評価報告書において示された2℃シナリオ/4℃シナリオのそれぞれにおいて、TCFDが提言するシナリオ分析を行い、当社を取り巻く気候変動関連のリスクと機会を特定しました。また2℃シナリオの分析においては、1.5℃シナリオを示すIEA NZE2050も参照しました。

※IPCC:Intergovernmental Panel on Climate Change、気候変動に関する政府間パネル

 

・2℃/4℃シナリオに基づく気候関連リスク・機会

リスク

/

機会

区分

気候変動関連項目

期間

対応策

影響度

該当シナリオ

GHG排出価格上昇(炭素税導入)による税負担(公租公課)の増加

中期

長期

・SBT水準における長期的なCO2削減目標の設定と、削減活動の実行

2℃/4℃

調達コストの高騰による製造原価の上昇

短期

中期

・仕入先とのパートナーシップの強化

・製品における原材料構成の見直し

(再生プラスチックの利用率向上、脱プラ等梱包材見直し、バイオプラスチックの利用検討等)

2℃/4℃

再エネ導入費、省エネ対応設備投資費の上昇

短期

中期

2℃

GHG排出抑制のためのモーダルシフトによる輸送コスト上昇(モーダルシフトに限らず、現状の輸送手段における低炭素化に伴うコスト増)

中期

長期

2℃/4℃

災害対策に関する規制が強化され、従業員の安全や、事業継続に関する対策が義務化される可能性がある

中期

長期

・労働安全衛生マネジメントシステムにおける運用

・労働安全衛生目標の設定とモニタリング

4℃

製品の省エネ、低炭素化における目標達成の未達

中期

長期

・製品の省エネ、低炭素化目標達成に向けたKPIの設定とモニタリング

2℃

低炭素化の目標達成に向けた研究開発投資の増加

中期

長期

・低炭素化の目標達成に向けた研究開発投資の継続

2℃/4℃

再エネ比率の高まり、石油価格高騰によるエネルギーコストの上昇

中期

長期

・建物及び生産設備のエネルギー効率向上

・業界No.1の低消費電力を実現する製品の開発

・SBT水準における長期的なCO2削減目標の設定と、削減活動の実行

2℃/4℃

[B&P、ヘルスケア、クリエイティブワーク、V&S]

環境性能の高い製品ニーズ増加による販売拡大

短期

中期

・業界No.1の環境性能を追求する製品の開発

2℃/4℃

[ヘルスケア]

気候変動に伴う健康リスクの増大により健康と福祉を重視する価値観が醸成され、市場が拡大

中期

長期

・ヘルスケア事業の継続強化

・EVS(EIZO Visual Systems)を中核としたシステム事業の拡大

2℃/4℃

[V&S]

気候変動による自然災害が激甚化する中でレジリエントな社会ニーズに適応する製品およびシステムニーズの拡大

中期

長期

・V&S製品のラインナップ拡充

・EVS(EIZO Visual Systems)を中核としたシステム事業の拡大

2℃/4℃

 

これらシナリオ分析によって、2030年時点で具体的にどの程度の財務インパクトが生じるのかを分析しました。

2℃シナリオの場合、カーボンプライシング政策が強化されることによって、事業運営コストの上昇による財務影響が大きいと想定しています。また4℃シナリオの場合は、気候変動による物理的な影響から、バリューチェーンにおける物流の寸断や、調達コストへの影響も連動して負担となることを予測しています。

一方で、顧客の製品選択基準も変化し、より省エネ性能、GHG低排出製品のニーズが高まり、当社の高効率製品は低炭素社会への移行に伴って、ますますビジネス機会が生まれる可能性が高まることを想定しています。これらビジネス機会を確実に捉え事業計画へと反映するため、当社は2023年5月に既存の取組みや今後の計画を整理した「低炭素移行計画-Transition to Net Zero-」を策定し、開示しました。今後も当移行計画に沿ってバリューチェーン全体でGHG排出削減に取組んでまいります。

 

<気候変動に関する指標と目標>

・EIZOグループのGHG排出削減目標

2030年度

Scope(※)1、2のGHG排出量を70%削減 (2019年度比)

Scope3のGHG排出量を27.5%削減 (2019年度比)

2040年度

Scope1、2のGHG排出量をNet Zeroにする

Scope3のGHG排出量をステークホルダーと連携しNet Zeroを目指す

 

※Scope:スコープ。Scope1は事業者自らによる温室効果ガスの直接排出、Scope2は他者から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出、Scope3はその他の排出(製品の部品調達・物流・使用・廃棄、従業員の出張・通勤、投資等)を指す。GHGプロトコルのScope3基準ではScope3をさらに15のカテゴリーに分類する。

 

・当社GHG排出の概況

当社の2023年度 Scope1~3におけるGHG排出量の内訳はScope1:781t-CO2e、Scope2:2,685t-CO2e、Scope3:314,995t-CO2eであり、Scope3が全体の98.9%を占めています。したがって、Scope3削減を一層推進することでGHG排出全体の削減に繋げていきます。

 

GHG(温室効果ガス)排出量実績(単位:t-CO2e)

区分

2019年度実績

(基準年)

2020年度実績

2021年度実績

2022年度実績

2023年度実績

Scope1

915

805

782

782

781

Scope2

5,531

4,270

3,120

3,394

2,685

Scope3

443,716

403,005

431,834

411,207

314,995

合計(Scope1+2+3)

450,162

408,080

435,736

415,383

318,461

 

Scope別GHG排出量(2023年度)

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・GHG排出削減に向けた取組み内容

Scope

カテゴリー

取組み内容

Scope3

Category1

(購入した製品・サービス)

目標値:2030年度までに製品本体へのリサイクルプラスチック使用率70%

・サプライヤーエンゲージメントによるGHG排出量調査実施と削減の依頼

・サプライヤーでの毎年のGHG削減結果を反映したCategory1の算出

・低環境負荷材料(グリーンマテリアル)の採用

Category11

(販売した製品の使用)

目標値:2030年度までに製品の消費電力を▲30%

・表示システムや独自省電力機能開発による、消費電力の更なる削減

Category4

(上流の輸送、配送)

目標値:2030年度までに輸送による排出▲25%

・軽量化・小型化(グリーンデザイン)の進化

・製品積載効率の向上

・遠地への輸送は鉄道への切替えなどモーダルシフトを推進

Category12

(販売した製品の廃棄)

・低環境負荷材料(グリーンマテリアル)の採用

-

・カーボンフットプリント(CFP)の算定と公開

・主要展示会における取組み

Scope1+2

-

・国内および海外グループ会社での太陽光発電導入

・本社および国内主要工場、拠点の再生可能エネルギー電力化

・国内社有車のEVへの転換 等

 

3【事業等のリスク】

 

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項を記載しています。但し、以下は当社グループに関するすべてのリスクを網羅したものではなく、記載されたリスク以外のリスクも存在します。当社グループではこうしたリスクを認識した上で、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要 ③企業統治に関するその他の事項」に記載のリスク管理体制に基づき、全社的リスクマネジメント体制を整備しております。

なお、本項においては、将来に関する事項が含まれていますが、当該事項は当連結会計年度末現在において判断したものです。

 

<市場および事業活動に関するリスク>

(1) 急激な市場の変化

当社グループは、先進性のある技術を積極的に開発し、多様化する市場ニーズを満たし、常に他社の一歩先を見据えた製品づくり、システム・サービスの提供を行っております。これにより製品、システムの付加価値を高め、市場における圧倒的な差別化を図っております。しかしながら、競争力のある他社製品の出現や新規企業の参入による競争の激化等により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 欧州における市場変動

当社グループの連結売上高に占める欧州向けの売上割合は、当連結会計年度は39.8%(前期は39.7%)となっております。そのため、欧州の景気が低迷する場合、新たな関税やその他の輸出障壁が生じた場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 外国為替の変動

当社グループは欧州、米国、中国等の主要販売地域での取引においては現地通貨建てでの販売を行っており、売上割合が高い欧州の通貨、特にユーロ建ての売上の比重が高くなっております。一方、米ドルにつきましては、米国その他の地域における米ドル建の販売より部品調達において支払う米ドルの金額が大きくなっております。したがいまして、売上高・各段階利益につきまして、円に対してユーロ高は正、ドル高は負の影響を受けることとなります。為替変動リスクについては為替予約や米ドル建の販売拡大等の直接的・間接的なリスクの軽減又は回避に努めておりますが、為替変動により取引価格や売上高等が影響を受け、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) 使用部品の調達

当社グループは、製品を構成する液晶パネル・半導体や機構材等すべての部品を外部供給者から調達しており、採用する部品の選定や仕入先の決定は、安定供給能力や事業継続計画の有無等の総合的な評価により行っております。また、仕入先との長期的な信頼関係の構築、顧客への安定的な製品供給を実現するための戦略的な在庫の積み増し、部品選定における複数購買先の確保、複数工場・材料あるいは代替品の事前認定等、部品の調達問題に起因する影響を最小限に抑える管理体制を構築しております。しかしながら、世界的な需給の逼迫や原材料の高騰、特定資源の供給制約による調達困難、仕入先の事業統合や売却等による業界再編や生産撤退または地政学的リスクの高まり、事故や自然災害、サイバー攻撃、感染症等の影響により使用部品の供給が逼迫した場合、一定期間において当社グループにおける生産の停止、販売の遅延等が生じ、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5) 品質問題

当社グループは、品質に問題のある製品の市場流出を確実に防止するため、統一された品質基本方針に基づき、国際標準化機構(ISO)による各種品質マネジメント規格の認証の下、企画・開発から製造・販売・アフターサービスに至るすべてのプロセスにおいて当社独自の一貫した品質マネジメントシステムを構築し、全社で一貫した品質保証活動及び継続的なプロセスの改善を推進しております。また、万が一、安全や品質に関わる問題が発生した際は、迅速かつ的確な対応を実施し、問題の多発拡大を防止する体制を整えています。しかしながら、当社グループの製品に重大な品質問題が発生した場合には、ブランドの毀損、信頼の失墜、損害賠償の発生、市場の喪失、製品販売の減少等により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6) 人材の確保・育成

当社グループが将来にわたって継続的に企業価値の向上を図るために最も重要な資本は人材だと考えています。この人材を維持・強化するために、社員が生き生きと働き、やりがいを感じながら自己成長が図れるよう各種社内環境を整備するとともに自由闊達な企業文化の醸成に力を入れております。しかしながら、常に優秀な人材を安定的に採用・確保できる保証はなく、優れた人材が多数離職した場合や育成が計画通りに進まない場合には、当社グループの事業展開に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7) アミューズメント市場向けモニター固有のリスク

当社のアミューズメント市場向けモニターは、遊技機に組み込まれて使用されます。遊技機業界は、遊技人口の減少に伴うパチンコホール数の減少が継続しています。今後、更なる市場規模の縮小や、遊技機に関する法令等の改正、当社の販売先である遊技機メーカーの三洋物産グループの事業動向等によっては、販売数量が減少し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

<公的規制・コンプライアンス、税務に関するリスク>

(1) カントリーリスク

当社グループは、海外においても開発、製造及び販売拠点を有し、グローバルに事業の拡大を進めております。これらの国又は地域での事業活動に当たっては、政治的・社会的な混乱、国際紛争やテロ等の地政学的リスク、経済不安等のカントリーリスクが常に内在しております。当社グループは、当該国又は地域におけるリスクの特性を十分に把握した上で適切な拠点を選択し、有事の際の損害を最小限に抑えるべくリスクマネジメントの強化に努めております。しかしながら、上記リスクの程度によっては当社グループの事業活動が中止又は制限される可能性があり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 環境規制

当社グループは、従来から環境への影響が懸念される化学物質の製品への使用を削減し、リサイクル性や分解容易性に優れた機構・デザインの採用や環境負荷の少ない材料の採用、製品使用における消費電力削減に取組む等、一貫して環境に配慮した製品づくりを経営方針としております。また、環境に関する社会動向についても、関連する業界団体に積極的に参画し、情報の収集に努めております。しかしながら、今後新しい環境規制等が施行されることにより、規制に対応する追加コストが発生する場合や適合製品の開発又は市場投入が遅れる場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) コンプライアンス

当社グループは、事業を遂行するに当たって世界各国において様々な法令、規則を遵守するため、EIZOグループ行動指針、人権方針及び贈収賄・腐敗行為防止方針などの基本方針をグループ内に周知するとともに、社内規程によるコンプライアンス体制の整備等、法令遵守には細心の注意を払い、内部統制や全社的リスクマネジメント体制の充実・強化を図っております。人権に関しましては、人権の尊重に関する推進体制を構築し、人権デューディリジェンスの実施及び苦情処理メカニズムの整備を進めております。また、仕入先に対しても「EIZOサプライヤー行動規範」を定め、仕入先とともに責任ある鉱物調達等の人権尊重の取組みを推進しております。しかしながら、法規制が複雑化、グローバル化する中、万一法令違反行為が発生した場合や、新たな法規制の制定や改廃に対応できない事態が生じた場合、当社グループの事業活動の制限、社会的信頼の毀損、罰金・課徴金の賦課により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) 情報セキュリティ

当社グループは、事業活動を通して収集した情報資産を様々な情報セキュリティ上の脅威から保護し、適切に管理することを社会的責務と認識しており、国際規格であるISO/IEC 27001認証を取得し、これに基づく情報セキュリティマネジメントシステムを運用し、多様な対策を講じ管理を徹底するとともに、継続的なプロセスの改善を推進しています。また、PSIRT(Product Security Incident Response Team)を発足し、製品・サービスのセキュリティ向上、インシデント対応に取り組んでいます。しかしながら、コンピュータウイルスへの感染、不正アクセスや新たな情報セキュリティ上の脅威などにより、システムの停止、情報の消失、漏洩、改ざんなどの事態が発生した場合には、事業活動に支障をきたし、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5) 知的財産権

当社グループが属する映像機器関連業界は、技術革新が著しく、同業他社も含め、各社が特許権、実用新案権、商標権、意匠権等を積極的に出願しております。

当社グループは、独自の技術等について積極的に出願を行うとともに、不用意に他社の特許等を侵害しないよう情報収集を図り、業界標準に対しては適切なライセンス契約を締結するなど、知的財産権の管理を強化しております。また、当社グループの特許権や商標権等の知的財産権に対する他社の侵害状況についても監視や警告体制を強化しております。しかしながら、予期しない特許侵害警告、訴訟、損害賠償請求、ライセンス契約等に伴う多額の弁護士費用等の負担、和解費用、ライセンス費用の支払いが発生した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6) 税務

当社グループを構成する各法人においては、各国の税法に準拠して税額計算し、適正な形で納税を行っております。なお、適用される各国の移転価格税制などの国際税務リスクについて細心の注意を払っておりますが、税務当局との見解の相違により、結果として追加課税が発生する可能性があります。

 

<気候変動・自然資本、自然災害、感染症に係るリスク>

(1) 気候変動・自然資本

当社は、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)に賛同表明し、TCFDの開示フレームワークに沿って気候変動による当社グループへの財務影響を分析しております。また、分析結果に基づく対応策については「低炭素移行計画-Transition to Net Zero-」として設定し、GHG排出量削減に向けた取組みを推進しております。また、当社は、自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)に賛同表明し、TNFDで推奨されているLEAPアプローチを用いた自然資本への依存・影響・リスク・機会の分析、及び分析結果に基づく対応策を設定し推進しております。しかしながら、当社グループは開発、資材調達、生産、販売等においてグローバルに事業を展開しており、各国における気候変動・自然資本に対する政策及び法規制等が強化された場合や気候変動・自然資本が事業環境の変化をもたらす場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 自然災害

当社グループは、国内外に製造工場や研究開発施設を有しております。そのため、地震や台風、洪水等の自然災害について防災対策を進め、それらに伴う影響を最小限に抑えるべく、事業継続計画(BCP)を策定し、体制の整備に努めております。しかしながら、不測の大規模な自然災害が発生した場合には、当社グループの開発や生産、資材調達、物流等事業に重大な影響を及ぼす可能性があり、一定期間の操業の中断、被害を被った設備の修理や交換等の損失が発生し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 感染症

新たな感染症が広範囲に流行した場合、サプライチェーンが機能不全に陥り部品調達難による生産調整を強いられ、また販売面においては、当社製品の販売時期の延期、顧客訪問の制約に伴う新規顧客や案件の開拓の遅れが生じる等、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

a.財政状態

当連結会計年度末における資産、負債及び純資産の状況については、資産の部は新技術棟の建設により建設仮勘定が増加した一方、在庫の適正化により棚卸資産が減少したことに加え、一部投資有価証券の売却や保有株式の時価減少等により、前連結会計年度末から7,060百万円減少し157,759百万円となりました。負債の部は繰延税金負債及び未払法人税等の減少等により1,991百万円減少し33,403百万円、純資産の部は剰余金の配当及びその他有価証券評価差額金の減少により5,068百万円減少し124,355百万円となりました。

 

b.経営成績

当連結会計年度における世界経済は、欧米における高い金利水準の継続やエネルギー価格の情勢に加えて米国の関税政策などにより極めて変化が激しく先行きが不透明な状況が続いております。特に当社の主要市場である欧州では製造業の低迷が長期化しており、中国においても景気は弱含んでおります。

 

当連結会計年度における業績につきましては、売上高は前期と同等の80,493百万円(前期比0.0%増)となりました。V&S(Vertical & Specific)市場向けは航空管制用途やディフェンス用途向け等で販売が増加した結果、V&Sの売上高は過去最高となりました。B&P(Business & Plus)市場向けは、当社の主要市場である欧州においてIT投資の先送りの影響により低調な販売が継続しております。ヘルスケア市場向けは、設備導入の先送りや市場における在庫調整の影響が継続しており、販売は減少しました。アミューズメント市場向けは、人気機種の販売があった前期を下回る売上高となりました。

 

利益面では、V&S市場向けなど高付加価値製品の販売の増加や為替影響により、売上総利益は26,199百万円(前期比3.1%増)、売上総利益率は32.5%(同1.0ポイント上昇)となりました。また、販売費及び一般管理費は賃上げ等による人件費の増加、研究開発活動の強化等により増加し、22,493百万円(同4.6%増)となりました。その結果、営業利益は3,706百万円(同5.2%減)となりました。経常利益は円高ユーロ安により保有するユーロ建て債権の評価替えにおいて為替差損(前期は為替差益)を計上したこと等により、前期比で減少し4,555百万円(同28.0%減)となりました。特別利益につきましては投資有価証券売却益1,100百万円(前期は2,345百万円)を計上し、親会社株主に帰属する当期純利益は4,148百万円(同23.9%減)となりました。

 

市場別の売上高の分析は、次のとおりです。

 

[B&P(Business & Plus)]

売上高は15,785百万円(前期比2.0%増)となりました。主要市場である欧州ではIT投資の先送りの影響が継続している一方、30インチ以上の大型モニターの販売が伸びました。

 

[ヘルスケア]

売上高は34,117百万円(前期比7.0%減)となりました。北米や欧州では設備導入の先送りや在庫調整の状況が上期から続いていることに加え、中国では景気弱含みの影響を受け販売は低調に推移しました。日本では診断用途や手術室用途では堅調な販売となった一方でモダリティ用途や内視鏡用途での販売が減少し、前期を下回りました。

 

[クリエイティブワーク]

売上高は5,523百万円(前期比6.1%減)となりました。米ハリウッドのストライキ終結以降、全世界の映像制作市場において一部投資回復の兆しが見られるものの、販売は低調に推移しました。

 

[V&S(Vertical & Specific)]

売上高は12,608百万円(前期比25.5%増)となりました。航空管制用途向けはコロナ禍の影響で後ろ倒しとなっていた需要が回復し販売が伸張しました。船舶用途向けは新規造船需要を受け販売は好調に推移しました。監視用途向けでは欧州を中心に堅調な販売となりました。ディフェンス用途向けは北米でグラフィックスボードや当社の強みを活かしたモニターのクロスセル販売が増加しました。その他産業用途向けは、需要の回復とともに欧州、日本で販売が増加しました。

[アミューズメント]

売上高は6,058百万円(前期比9.4%減)となりました。人気機種の販売があった前期を下回る売上高となりました。当業界を取り巻く市場環境は、遊技人口の減少と店舗数の減少等により業界全体の規模縮小が進んでおり、厳しい状況が継続しております。

 

[その他]

売上高は6,399百万円(前期比12.2%増)となりました。アミューズメント用ソフトウェア受託開発の売上高が増加したことによるものです。

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度に比べ4,640百万円増加し、21,058百万円となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりです。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動で獲得した資金は、11,543百万円(前連結会計年度は7,914百万円の獲得)となりました。主に収入として税金等調整前当期純利益5,655百万円、棚卸資産の減少6,735百万円、減価償却費2,936百万円等、また支出として法人税等の支払い2,211百万円等があったことによるものです。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動で使用した資金は、2,140百万円(前連結会計年度は1,057百万円の使用)となりました。これは主に収入として投資有価証券の売却1,858百万円があった一方で、支出として本社地区にて2025年4月に竣工の新技術棟や新製品を生産する設備への投資を含む有形固定資産の取得3,549百万円等があったことによります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動で使用した資金は、4,711百万円(前連結会計年度は533百万円の使用)となりました。主に、配当金の支払い4,218百万円があったことによります。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

当社グループは、映像機器及びその関連製品の開発・生産・販売が主であり、実質的に単一セグメントであるため、セグメント情報の記載を行っておりません。以下は、品目別の状況を記載しております。

 

a.生産実績

当連結会計年度の生産実績を市場別に示すと、次のとおりです。

市場

金額(百万円)

前期比(%)

映像機器(アミューズメント除く)

59,178

103.4

アミューズメント

5,816

91.3

合計

64,994

102.2

(注)金額は販売価格によっております。

 

b.受注実績

当連結会計年度の受注実績及び受注残高は、次のとおりです。なお、映像機器及びその他の一部製品は見込生産を行っております。

品目

受注高(百万円)

前期比(%)

受注残高(百万円)

前期比(%)

アミューズメント

6,098

90.8

246

119.9

(注)金額は販売価格によっております。

 

c.販売実績

当連結会計年度の販売実績を市場別に示すと、次のとおりです。

市場

金額(百万円)

前期比(%)

B&P (Business & Plus)

15,785

102.0

ヘルスケア

34,117

93.0

クリエイティブワーク

5,523

93.9

V&S (Vertical & Specific)

12,608

125.5

アミューズメント

6,058

90.6

その他

6,399

112.2

合計

80,493

100.0

 (注)1.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は、次のとおりです。

相手先

前連結会計年度

(自 2023年4月 1日

至 2024年3月31日)

当連結会計年度

(自 2024年4月 1日

至 2025年3月31日)

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

株式会社ジェイ・ティ

9,802

12.2

9,469

11.8

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。

 

① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

当社グループの当連結会計年度の経営成績等について

当連結会計年度の売上高は、前期と同等の80,493百万円(前期比0.0%増)、営業利益は同5.2%減の3,706百万円、経常利益は同28.0%減の4,555百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は同23.9%減の4,148百万円となりました。

 

経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等について

第8次中期経営計画で掲げた業績目標(最終年度となる2026年度に連結売上高100,000百万円、営業利益12,000百万円、営業利益率12%、ROE8%の達成)を実現すべく取り組んでおります。

当社グループならではの映像技術で映像ハードウェアを強化するとともに、EVS(EIZO Visual Systems)の展開を加速することで、重点市場であるヘルスケア及びV&S市場を中心に事業を成長させてまいります。また、地域戦略では、成長著しいインド・中東市場での事業を拡大してまいります。

これらにより当社グループのビジネスモデルを更に進化、強化させて利益成長を図っております。

 

詳細は「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況 b.経営成績」に記載のとおりです。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

財務戦略の基本方針

当社グループは、変化の激しい電子機器業界において強固な財務基盤を堅持し、企業価値向上のために戦略的かつ機動的に経営資源を配分することを財務戦略の基本方針としております。

 

経営資源の配分に関する考え方

当社グループは、財務健全性の維持、ビジネスモデル強化のための投資、株主還元の充実の3つのバランスのとれた財務戦略を進めてまいります。財務健全性の維持では、イベントリスクへの十分な備えを持ちつつ、長期にわたり持続的な成長を図るため、必要な資金を確保することが重要と考えております。

ビジネスモデル強化の投資を含めた具体的な資金需要は、次のとおりです。

(事業の成長・競争力向上)

・開発創造型企業として、新たな価値を絶えず追求するための研究開発資金

・100%自社生産による優位性をさらに高めるべく、生産性の向上や生産能力の増強に係る設備投資資金

・世界100か国以上にて、タイムリーな供給を維持するための製品や材料の在庫資金

・欧州・米国・中国に続き、成長著しいインド・中東市場での販売や現地生産体制の強化等の事業を拡大するための資金

・ビジネスモデルをより強くするための戦略的なM&Aを実施する資金

(事業の安定)

・部品の調達リスクを吸収し、顧客への長期安定供給を実現するための資材調達・在庫資金

・経済環境の急激な変化や自然災害等により一時的な操業停止を余儀なくされるような場合の運転資金

(長期的な成長を支える経営基盤)

・持続可能な社会に貢献するためのサステナビリティに関連する投資

・映像技術のトップランナーとして人的確保・育成のための人的投資

以上の手許資金を確保し将来の見通しを立てた上で株主還元を行います。株主還元強化を継続し、還元率の目標水準を連結当期純利益の70%+αとしております。年間配当金は、長期的な株主価値の向上に資するため、当社の財務基盤と成長資金の確保状況に鑑み、1株当たり105.00円(当連結会計年度実績、2024年10月1日付株式分割後)を下限といたします。また、当社業績、株価の水準や株式市場の状況などを総合的に勘案して、機動的に自己株式の取得の実施を検討いたします。

 

資金調達の方法

当社グループは、資金需要の大きさや時期、為替相場や金利の状況等に応じて、営業活動で生み出された内部資金、有利子負債あるいは当社が保有する投資有価証券の売却による資金調達を実施いたします。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たりましては、連結決算日における資産・負債の決算数値及び偶発債務の開示、並びに会計期間における収益・費用の決算数値に影響を与える見積りを、過去の実績や状況に応じ合理的と考えられる様々な要因に基づいて行っております。このため、会計上の見積りはその性質上不確実であり、実際の結果と異なる場合があります。

当社グループの経営成績等に対して重要な影響を及ぼす会計上の見積り及び判断が必要となる項目は次のとおりです。

 

売上債権の貸倒引当金

当社グループは、売上債権の貸倒損失に備え回収不能となる可能性のある金額を合理的に見積り、その額を貸倒引当金として計上しております。将来、販売先の財務状況が悪化し支払能力が低下した場合には、引当金の追加計上又は貸倒損失が発生する可能性があります。

 

棚卸資産の評価

当社グループは、棚卸資産の市場需要に基づく将来の販売見込み及び正味売却価額から、棚卸資産が将来に獲得可能なキャッシュ・フローを見積り、必要な評価減を計上しております。実際の市場における需要又は正味売却価額が当社の見積りより悪化した場合には、追加の評価減が必要となる可能性があります。

 

有形固定資産の減損

当社グループは減損会計を適用しております。当社グループでは、固定資産の種類別、所在地別又は目的別に、物理的及び経済的な価値並びに耐用年数を見積り、償却手続きを実施するとともに、必要に応じて有姿除却等の措置をとっております。しかしながら、固定資産の価値、耐用年数の見積り、その評価又は除却に係る算定等で使用した前提条件と大きく異なる状況が生じた場合には、償却や損失の追加が必要となる可能性があります。

また、固定資産のうち減損の兆候がある資産グループについて、当該資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上いたします。減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定に当たっては慎重に検討しておりますが、事業計画や市場環境の変化により、見積りの前提条件や仮定に変更が生じた場合、減損損失を計上する可能性があります。

 

投資有価証券の減損

当社グループは、取引金融機関、販売又は仕入に係る取引先等の株式を保有しております。これらの株式のうち、上場株式では株式市場の価格変動リスクを負っているため、連結決算日の時価が取得価額から50%以上下落した場合には減損損失を認識いたします。また、連結決算日の時価が取得価額から30%以上50%未満下落した場合には、回復可能性の判定を合理的な基準に基づき行い、回復する見込みがあると判断したものを除き、減損損失を認識いたします。非上場株式では投資先の純資産額における当社持分額が取得価額より50%以上下落した場合には、減損損失を認識いたします。そのため、保有株式の時価評価額が下落した場合は、投資有価証券評価損を計上する可能性があります。

 

繰延税金資産の回収可能性

当社グループは、繰延税金資産の回収可能性の評価に際し、将来の課税所得を合理的に見積っております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積額が減少する場合は繰延税金資産が減額され税金費用が計上される可能性があります。

また、繰延税金資産は当連結会計年度末における法定実効税率に基づき計上しておりますが、将来において税制改正により税率が変更された場合には繰延税金資産の残高が減少し、それに伴い税金費用が計上される可能性があります。

 

5【重要な契約等】

 

該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

 

開発体制としましては、日本、ドイツ、米国及び中国に有する開発拠点各々が企画・製造・販売部門と連携しており、市場ニーズに合致した製品をタイムリーに投入できる体制を構築しております。

当連結会計年度の研究開発活動に要した費用は、前連結会計年度と比べ403百万円増加し、6,717百万円となりました。

 

当連結会計年度の主な研究開発活動は、次のとおりです。

 

[B&P(Business & Plus)]

当社は30年以上前から環境に配慮した製品づくりを追求しております。当社史上最も環境配慮を具現化するフラッグシップモデルとして、薄型・軽量モニター「FlexScan FLT」を開発しました。「FlexScan FLT」は、部品・材料調達から製造、輸送、ユーザーでの使用、廃棄においても、製品ライフサイクルのあらゆる段階で資源の効率的・循環的な利用を図ることで、環境負荷を低減します。さまざまな省電力技術を開発・採用し、モニターにおいて世界トップクラスの省電力である標準消費電力6Wを実現し、消費者向けにエネルギー消費効率を示す「欧州エネルギーラベル(法令番号(EU)2019/2013)」の最高ランク、Class Aを世界で初めて(24型クラスのデスクトップモニターにおいて、2024年11月当社調べ)取得しました。また、製品外装に再生プラスチックを95%含有する材料を使用、梱包体積の縮小により輸送時の温室効果ガス排出量を最大で42%削減、製品梱包材料にバージンプラスチックを一切使用しないなど、これまで以上に環境負荷低減のための技術開発を強化しました。

2024年12月にはIT機器の国際サステナビリティ認証「TCO Certified, Generation 10」が発効しました。最新となる「TCO Certified, Generation 10」では、環境配慮をはじめとした持続可能な社会への取組みに対する要求の強化に加え、サプライヤーと共に課題解決を図ることについても要求が強まっております。当社内の製品づくりのみならず製品ライフサイクルやサプライチェーンを通じた環境負荷の低減に取り組んだ結果、FlexScan 9機種においてTCO Certified, Generation 10の認証を発効と同時に取得しました。

 

[ヘルスケア]

診断用途においては、30型ワイド6メガピクセル医用モニター「RadiForce RX670」を開発しました。USB Type-C端子を搭載し、パソコンやUSB接続機器との接続を一層容易にするとともに、筐体背面に間接照明を内蔵することで疲れ目を緩和し画像観察を快適にする機能を追加しました。

また、国内において画像診断用モニターを、表示性能などの適正な維持管理が義務付けられる「特定保守管理医療機器」に指定する旨が厚生労働省より告示されました。100%自社開発・自社生産の強み、モニター表示性能を確認・維持管理するためのソフトウェアの提案、さらに保守・運用に関するサポートも行っている実績と経験を活かし、国内初となる「特定保守管理医療機器」に該当する画像診断用モニターの製品化を実現しました。その後も順次対応する製品開発を進めています。

 

[クリエイティブワーク]

30.5型・DCI 4K(4096×2160)解像度の4K HDRリファレンスモニター「ColorEdge PROMINENCE CG1」を開発しました。「ColorEdge PROMINENCE CG3146」の後継機種として表示性能や映像制作者の使いやすさに配慮した基本性能はそのままに、放送業界最新の映像伝送規格であるSMPTE ST 2110に対応し、さらにHDMIの伝送モードFRL(Fixed Rate Link)に対応することで、HDMI接続時、4K解像度かつ12-bit表示といった、高解像度でより滑らかな階調の映像を表示することを可能としました。

 

[V&S(Vertical & Specific)]

オプティカルボンディング加工で高い視認性を実現した船舶搭載用モニター「DuraVision MDF2701W」を開発しました。電子海図表示システム(ECDIS)やレーダー情報を表示する際、光の反射による画面の映り込みが抑制され、太陽光の影響を受ける日中の操舵室でも高い視認性を実現しています。

タッチパネルモニターにおいては、設置柔軟性を向上させた10.4型「DuraVision FDX1004T」、表面ガラスにAF(アンチフィンガープリント)加工を施し視認性を向上させた17型「DuraVision FDS1783T」、専用スタイラスペンを付属し、滑らかな書き心地を実現した21.5型「DuraVision FDF2182WT-AS」を開発し、製品ラインナップを拡充しました。

また、産業市場向けの新しいソフトウェアブランド「VisionCore」の製品として、当社独自の画像鮮明化技術を用い、見やすく加工したファイルを生成できる画像鮮明化ソフトウェア「VisionCore FCS」と、視聴・編集ソフトウェア「VisionCore FCS Viewer」を開発しました。「VisionCore FCS」と「VisionCore FCS Viewer」が連携することで、画像の視聴・編集をワンストップで行うことができ、ユーザーの利便性が大きく向上します。

公益財団法人 日本財団が推進する無人運航船プロジェクトMEGURI2040において、「無人運航船の社会実装に向けた技術開発助成プログラム」の第2ステージとなるDesigning the Future of Fully Autonomous Ships Plusコンソーシアム(DFFAS+)のメンバーとして引き続き開発を行っています。当社の撮影・伝送・記録・表示を担う製品群によって構成される「Imaging Chain」から、DFFAS+参加各社との共創活動を通じて、自律運航システムを実現する技術開発を推進し、社会実装に向けた実用化・製品化を目指します。