第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題は次のとおりであります。

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)会社の経営理念、経営方針

当社グループは、「源流」「創価」「革新」を経営理念としております。

「常に、源流に立って考え、意欲して創造し、価値を創り、新しい時へ、自ら変革し対応しよう」という基本理念に従い、長期経営ビジョンを「革新的技術を用いた最適価値の電子デバイスを世界に発信し、人々のくらしと生活環境の向上に貢献する」とし、このビジョンを実現するために2026年度を最終年度とした「中期経営計画R2026」を策定し、「顧客の満足と信頼の獲得」「独創的発想による価値の創造」「構造改革による収益力とキャッシュ創造力の強化」「持続可能な経営基盤の確立・強化」という4つの中期経営方針を掲げ、グループ一体となってその実践に努めております。

(2)経営環境、中長期的な会社の経営戦略

当連結会計年度の業績は、前中期経営計画「R2024」において掲げた重要経営指標である連結売上高・連結営業利益(率)・ROICに対し、大きく目標を下回りました。当社の主力市場であるスマートフォン向けや無線通信向け、PC関連等の民生機器向けの在庫調整の長期化から需要が低迷したほか、それに伴い市場間競争も激しさを増していることが主たる要因と考えております。先行きに関しては在庫調整は一巡するも中国経済が力強さを欠いているほか、地政学的リスクの高まりもあり、世界経済は不安定な状況が続くものと思われます。

前中期経営計画で掲げた当社グループを取り巻く世界的潮流(メガトレンド)に大きな変化はなく、中長期的にはICT社会の進展により、当社グループが属する電子部品業界は着実に成長していくことが予想され、当社グループは「すべての人とモノがつながる社会」の進展に貢献する最先端の電子部品を世界に届け、社会とともに持続的に成長し、企業価値向上の実現を目指します。

 

基本方針1「顧客の満足と信頼の獲得」

当社グループの強みを活かせる成長市場に経営資源を集中し、企業価値向上を目指します。

注力市場をモビリティ・医療ヘルスケア・IoT無線通信・航空宇宙/次世代デジタルインフラ市場とし製品ポートフォリオの最適化を図り、持続的な成長を目指します。

航空宇宙/次世代デジタルインフラ市場においては高速・大容量・低遅延・多数同時接続・低消費電力・セキュアな通信技術が期待されており、タイミングデバイスにおいてもこれまで以上に高周波・高精度・低消費電力といった要求仕様が高まっております。当社が新たに開発したKoTカットOPAW水晶デバイスはこれまでにない高周波・低位相ジッターを実現しており、この分野での事業展開が期待されます。また、モビリティ市場はこれまで市場の参入障壁が高い市場でありましたが、事業環境の変化や当社の強み等を鑑み、本格的な市場参入を図ります。

 

基本方針2「独創的発想による価値の創造」

独創的発想をもって革新的技術でイノベーションを創出し、新しい価値を創造します。

KoTカットOPAW水晶デバイスについては市場の要求仕様に応えるべく更なる開発を続ける一方、需要予測に基づくマーケティング活動によりタイムリーかつ安定供給ができる体制を構築していきます。また、音叉型・ATカット水晶デバイスについても、開発ポートフォリオを最適化し、小型・低消費電力化など、市場のニーズに柔軟に対応し、企業価値の最大化を図ります。

 

基本方針3「構造改革による収益力とキャッシュ創造力の強化」

事業構造の改革を推進し、収益力とキャッシュ・フロー創出力を高め、企業価値向上を果たします。

ROICをツリー展開させた施策を推進し、事業成長と投下資本効率の改善を目指します。当連結会計年度においては収益力の大幅な低下のほか、将来の成長に向けた先行投資の影響もあり、投下資本効率も前期を下回る結果となりました。中期経営計画においては成長のための積極投資と事業構造改革によるキャッシュ創出の両輪を回すことで企業価値向上を目指します。

 

 

基本方針4「持続可能な経営基盤の確立・強化」

公正かつ透明性の高いガバナンス体制を構築し、社会的課題に取り組み企業価値向上を果たします。

リバーグループはステークホルダーのサステナビリティに対する考え方や当社グループの事業環境の変化等を鑑み、2024年度において5つの新たなCSR・サステナビリティ目標を特定しました。

①ICT社会を進化させる製品の提供

②品質保証・安全安心への取り組み

③コーポレートガバナンスの強化

④リスクマネジメントの強化

⑤コンプライアンスの徹底

 

これらのマテリアリティについては、グループ全体で方針展開を図ることにより、持続可能な経営基盤の確立・強化を図り、中長期的な企業価値向上を目指します。また、現状では気候変動などマテリアリティとして特定していない社会的課題についてもステークホルダーの要請や期待に応じて積極的に対応していきます。

 

創出されたキャッシュについては中期経営戦略に従い、持続的な成長と企業価値向上を可能にする長期的視点の投資を優先的に行うほか、株主還元や財務の健全性向上を目的とした債務の圧縮を進めていきます。株主還元については配当性向20%を目安とした安定的な配当の実施、フリーキャッシュ・フローや株価推移を勘案した自己株式の取得を検討していきます。なお、株主還元に関する基本方針については改定も含め今後の検討課題といたします。

 

(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループは、成長性を測る指標として、連結売上高及び連結売上高営業利益(率)を、企業価値向上を測る指標としてROIC(投下資本営業利益率)を重要な経営指標と位置づけております。当期においては、すべての指標において大幅な未達となりました。

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループは経営理念のもと、常に企業の社会的責任と使命を認識して事業活動を行う体制を整えており、長期経営ビジョン「革新的技術を用いた最適価値の電子デバイスを世界に発信し、人々のくらしと生活環境の向上に貢献する」ことを目指した4つの中期経営方針を通じて未来へチャレンジしていくことこそサステナビリティ(持続可能な経済活動)への貢献につながると考え、社会的課題解決に向けて積極的に取り組みを進めていきます。

 

(1)ガバナンス

 当社グループは、取締役会で定めた「CSR・サステナビリティ方針」に基づき、経営レベルで当社グループの持続的な成長と社会的課題の解決を推進することを目的にCSR・サステナビリティ委員会を2023年度に立ち上げました。CSR・サステナビリティ委員会は、委員長を当社代表取締役社長とし、7つの全社的委員会と連携してCSR・サステナビリティ活動を推進し、当社グループ全体で方針展開を図ることにより、CSR・サステナビリティに取り組む体制を構築しています。

 2024年度のマテリアリティ(重要課題)においてはCSR・サステナビリティ委員会において当社グループを取り巻く社会的課題を抽出し、リスクと機会の検討等を踏まえ、自社にとっての重要性と社会にとっての重要性を軸に検討、策定されたマテリアリティ案を取締役会が検討・議論した後に決議され、グループ方針説明会で当社グループ全体に周知、方針展開を行っております。今後は方針の進捗を定期的に取締役会に報告を行い、取締役会はCSR・サステナビリティ活動全体の監督とマネジメントレビューを行うこととします。

 

 CSR・サステナビリティ体制を図によって示すと次のとおりです。

0102010_001.png

 

 

(2)戦略

 当社グループは中期経営計画「R2026」において長期経営ビジョン「革新的技術を用いた最適価値の電子デバイスを世界に発信し、人々のくらしと生活環境の向上に貢献する」ことを掲げており、4つの基本戦略「顧客の満足と信頼の獲得」「独創的発想による価値の創造」「構造改革による収益力とキャッシュ創造力の強化」「持続可能な経営基盤の確立・強化」に基づき、事業活動を展開していくなかで、社会的課題の解決に向けてリスクの低減や機会の創出への対応を進め、サステナブルな社会の実現に貢献してまいります。

 

マテリアリティ

リスク

機会

主な取り組み

事業を通じた社会課題の解決

ICT社会を進化させる製品の提供

・新技術の台頭に伴う事業戦略の陳腐化

・開発遅延等による競争力の低下

・新市場の創出や、革新性のある製品の提供による企業価値向上

・KoTカット発振器の販売拡大

・音叉製品の販売拡大

・無線通信分野の販売拡大

品質保証・安心安全への取り組み

・クレーム・訴訟などの費用発生

・信用力低下によるビジネスチャンスの逸失

・顧客のエンゲージメント向上によるビジネスチャンスの拡大

・品質マネジメントシステムの確立・維持

・3つの品質(開発・製造・サービス)を高め、顧客とともに企業価値向上を図る

持続可能な経営基盤の強化

コーポレートガバナンスの強化

・コーポレートガバナンスの機能不全に伴う事業継続リスク

・環境変化に対する意思決定の適切、迅速化

・意思決定の透明性の向上

・取締役会の実効性向上

・内部統制の実効性向上

リスクマネジメントの強化

・不測の事故が起こった際の損害

・社会的信用の低下

・リスクマネジメントの継続的な改善による発生リスクの低下と管理コストの削減

・リスクマネジメント体制の見直し・強化

・BCPの再構築・強化

コンプライアンスの徹底

・コンプライアンス違反による社会的信用の低下

・社員の意識醸成による事業活動への悪影響の低減

・取引先選定基準に即していることによる取引の獲得・維持

・グループ行動規範の見直し・周知啓発

・コンプライアンス意識調査の実施

・外部の内部通報窓口の設置

 

(人的資本)

 当社グループは「欧米及び中国市場の販売拡大」「時流に合った製品開発による新たな事業価値の創出」等を重要戦略としており、有能な人材の確保と育成、企業のグローバルダイバーシティ化の浸透が不可欠となります。また、長期経営ビジョンの実現に向けた社員の基本姿勢として「一人一人が感度良く、確度の高い情報を収集し、現状を分析して的確に認識し、すべてのステークホルダーの満足のために今自分がなすべきことを考え、実行する。」「世界的・包括的な視野で物事を捉え、新たな価値ある市場を創造する。」「前向きな危機感をもって、すべての活動において変化を恐れず、変化に対応し、スピード感を持って取り組む。」「社会・世界に与える影響を常に考え、社会に貢献できる事業活動に取り組む。」ことを求めており、多様な人材の確保、グローバル人材育成制度の整備を推進し、多様な個性や能力が十分に発揮できる環境の構築に取り組んでいきます。

 

(3)リスク管理

 当社グループでは、「当社グループの事業に重大な影響を及ぼす危機発生の可能性があるリスクを抽出し、必要に応じ、適切な処置を施し危機発生の危険を回避するようにするとともに、当社グループに与えられた社会的責任の評価及びステークホルダーとの良好な関係を向上させ、社員の安全及び健康並びに経営資源の保全を図る」というリスクマネジメント方針のもと、リスク管理委員会にて当社グループの経営方針、事業目的等の達成を阻害する全てのリスクの把握を行うとともに、リスクの低減、移転、回避等のための実施、監視及び改善等の活動を行っております。

 全社的リスク管理は、リスク管理委員会が「リスク管理規定」に基づき、各部門が識別・評価したリスクについて管理しており、リスク管理責任者が定期的に経営層へ報告をしております。なお、脱炭素化の推進等、環境に関するリスクに関しては環境管理委員会が、CSR・サステナビリティに関するリスクに関してはCSR・サステナビリティ委員会がリスク管理委員会と情報を共有しながら、事業リスクとして統合・管理し、重要リスクについては定期的に経営層に報告しております。

 詳細につきましては「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」を参照ください。

 

(4)指標及び目標

 当社グループは2030年までの「あるべき姿」の実現に向け、中期経営計画R2026において当社グループとして取り組むべきことを明確にし、単年度において方針展開を図ることで社会的課題の解決に向け施策を実行しております。提出日現在において、「あるべき姿」については定量的な目標値を設定しておりませんが、今後定量的な目標設定についても検討してまいります。

マテリアリティ

あるべき姿

事業を通じた社会的課題の解決

ICT社会を進化させる製品の提供

独創的発想で新しい価値を創造し、持続可能な社会の発展に貢献している

 

品質保証・安心安全への取り組み

製品の設計から、製造、販売、アフターサービスに至るすべてのプロセスにおいて、製品の安全性と高品質確保のための品質マネジメントシステムを確立し、顧客エンゲージメントの向上を図り、顧客とともに企業価値向上を図る

持続可能な経営基盤の強化

コーポレートガバナンスの強化

健全な組織運営を通して持続的な価値創造を推進するガバナンス体制が構築されている

リスクマネジメントの強化

持続的な成長にインパクトを与えるリスクを特定し、リスクの顕在化を未然に防ぐPDCAが運用されている

コンプライアンスの徹底

リバーグループ行動規範が定着し、健全で誠実な行動を行うことで、ステークホルダーからの信頼に応える企業になっている

 

 また、当社グループは(2)戦略において記載した多様な人材の確保、グローバル人材育成制度の整備に取り組んでおりますが定量的な目標を設定しておりません。当社グループの事業活動を通じたCSR・サステナビリティを推進していく中で人的資本に関する重要な指標については今後の検討課題といたします。

 

3【事業等のリスク】

 当社グループでは、「当社グループの事業に重大な影響を及ぼす危機発生の可能性があるリスクを抽出し、必要に応じ、適切な処置を施し危機発生の危険を回避するとともに、当社グループに与えられた社会的責任の評価及びステークホルダーとの良好な関係を向上させ、社員の安全及び健康並びに経営資源の保全を図る」というリスクマネジメント方針のもと、リスク管理委員会にて当社グループの経営方針、事業目的等の達成を阻害する全てのリスクの把握を行うとともに、リスクの低減、移転、回避等のための実施、監視及び改善等の活動を行っております。

 当社グループの事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性がある事項は、次のようなものがあります。なお、文中に関する事項は、有価証券報告書提出日(2024年6月27日)現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)リスク管理体制

当社は、代表取締役社長を頂点とし、総務本部長をリスク管理責任者とするリスク管理委員会を設置しており、リスク管理事務局において当社グループ全体の管理体制の整備を行っております。各部門は半期ごとに「事業機会に関するリスク」と「事業活動の遂行に関するリスク」について潜在するリスクを抽出し、「発生の可能性」「発見の可能性」「金額的重大性」「質的な重大性」及び「会社の信用」の5つの観点から評価し、リスクへの対応及びリスク登録の有無を事務局に報告しており、リスク管理責任者はそれを受けて経営層への報告、見直し改善を指示しております。また、脱炭素化の推進等、環境に関するリスクに関しては環境管理委員会と、CSR・サステナビリティに関するリスクに関してはCSR・サステナビリティ委員会と情報を共有しながら、事業リスクとして統合・管理しております。

 

(2)主要なリスク

 《事業機会に関するリスク》

  ①新規事業分野進出・事業拡大に係るリスク

 当社グループでは、持続的な成長に向けて新規事業及び事業拡大への取り組みを随時検討しておりますが、新規事業は不確定要素が多く、目論見通りに進まない可能性があります。新規事業及び事業拡大への取り組みが計画通り達成できなかった場合は、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

  ②資金調達戦略に係るリスク

 当社グループは、営業活動で獲得した資金を運転資金及び投資資金に充当することを第一とし、不足分を金融機関からの借入やリースによる資金調達で賄っております。資金の調達については、事業計画に基づくキャッシュ・フローや金利動向、有利子負債の状況等を考慮のうえ、調達手段や調達規模等を適宜判断して実施しております。他方、有利子負債の圧縮のため財務規律を維持し、積極的な投資と財務の健全性の改善を両立させるべく取り組んでおりますが、事業環境の悪化に伴う当社信用格付けの低下や金融市場の混乱等の要因により、資金調達が制約を受け、必要資金を調達できない、また、調達コストが増加する等の可能性があります。これらの事態が生じた場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

  ③設備投資戦略に係るリスク

 当社グループは中期経営計画や回収可能性等に基づいた設備投資を実施しておりますが、事業環境の急変等により事前の様々な検討にもかかわらず目論見通りの展開にならなかった場合には、収益性の低下や時価の下落等に伴い資産価値が低下し、減損損失の発生や売却時での売却損の発生により、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

  ④販売戦略に係るリスク

 当期における水晶製品事業の連結売上高の割合は約99%であります。また、主力市場がスマートフォン関連向けであり、大手メーカーと取引関係にあることから売上高構成が偏重する傾向にあります。こうした状況に対し、IoT無線通信、モビリティ、医療ヘルスケア、航空宇宙・次世代デジタルインフラといった将来的に成長が期待される市場に対し、拡販及び新規開拓活動を実施することで、偏重リスクを軽減していくことを戦略の1つとして位置付けております。

 今後もICT社会の到来に向けた製品の開発、注力市場への販売拡大に注力していきますが目論見通りに進まない可能性があります。また、水晶製品における技術革新や製造技術の変化、水晶製品に代わる代替製品の台頭、景気後退時における企業間競争の激化とそれに伴う販売価格の下落等により、当社グループ製品の競争力が低下した場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

 《事業活動の遂行に関するリスク》

  ⑤コンプライアンスに関するリスク

 当社グループは、わが国をはじめとし、諸外国での事業の遂行にあたり、それぞれの国での各種法令、行政による許認可や規制等の遵守に努めておりますが、これらの法令・規制を遵守できなかった場合、法令による罰則や訴訟の提起を受ける可能性があります。また、当社グループでは顧客を始めとする利害関係者からの信頼性や企業価値向上のため、「リバーグループ行動規範」を定め、周知徹底し、教育を実施していますが、従業員の法令違反や社会規範からの逸脱行為があった場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

  ⑥商品品質に関するリスク

 当社グループは、調達原材料等の品質不良の発生防止を含め、製品の品質確保に努めています。また、当社グループの製品は、品質や安全に関するさまざまな法的規制による制約を受けているため、これらの規制の遵守に努めるとともに、製造物責任賠償保険に加入する等の対策を講じています。しかし、大規模な事故やクレームの発生及び製造物責任賠償につながるような製品の欠陥は、多額のコストに加えて当社グループの社会的評価に重大な影響を及ぼすことが考えられ、これによって当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

  ⑦情報システムに関するリスク

 当社グループが事業活動を行う上で、情報システム及び情報ネットワークは欠くことのできない基盤であり、構築・運用に当たっては十分なセキュリティの確保に努めているものの、不正侵入、情報の改ざん・盗用・破壊、システムの利用妨害などにより業務の停滞や信用の低下が生じた場合、高度化を続けるサイバー攻撃によって事業運営の停止が余儀なくされた場合、あるいは故意・過失を問わず機密情報が社外に流出した場合等には、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

  ⑧環境に関するハザード・リスク

 当社グループは、国内において製造子会社1社、海外において販売子会社2社と製造及び販売子会社の合計4社が事業展開を行っております。これらの地域において台風や地震等の自然災害や新型コロナウイルス感染症等の疫病の発生、また、政情の不安定化等によるカントリーリスクや政治的、軍事的な要因による地政学的リスクが顕在化した場合、事業活動の縮小や停止、役員及び社員の生命・身体等の人権への侵害が懸念されます。BCP(事業継続計画)の定期的、継続的な見直しや海外出向者に対する海外旅行傷害保険の加入徹底やカントリーリスクに関する情報の収集等に努めてはいますが、これらのリスクが顕在化した場合は当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

  ⑨人材に関するリスク

 当社グループは、中期経営方針に「顧客の満足と信頼の獲得」「独創的発想による価値の創造」「構造改革による収益力とキャッシュ創造力の強化」「持続可能な経営基盤の確立・強化」を掲げ、「欧米及び中国市場の販売拡大」「時流に合った製品開発による新たな事業価値の創出」等を重要戦略にしており、これらの戦略を実現するためには有能な人材の確保と育成及び企業のグローバルダイバーシティ化を浸透させる啓蒙が不可欠になります。

 したがって、有能な人材を確保又は育成できなかった場合やグローバルダイバーシティ化が浸透しなかった場合には、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

  ⑩脱炭素化の推進等、環境に関するリスク

 当社グループは、「持続可能な社会への貢献のため、環境マネジメントシステムを継続的に改善し、事業活動及び製品のライフサイクル全体を通して環境負荷の低減を図るとともに、環境パフォーマンスの向上に努める。」という環境方針のもと、環境活動を展開しております。しかし、事業活動の拡大に伴うエネルギー使用量や天然資源の利用量の増加、環境対応のための投資や費用の増加が生じた場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①財政状態及び経営成績の概要

 当連結会計年度における世界経済は、緩やかな回復基調で推移しましたが、各国の金融引き締めによる影響や中国経済の先行き懸念が漂うなか、地政学リスクの高まりがさらなる物価上昇や景気後退を招く恐れもあり、依然として先行き不透明な状況が続いています。当社グループが属する電子部品業界におきましては、無線通信や自動車向け市場の回復の兆しは見られますが、在庫調整の長期化などの影響により、市場の需要は不均一な状態で推移しています。

 そのような中、連結会計年度の売上高は、スマートフォン向けが増加したものの、無線モジュール向けやPC・PC関連機器向けなどで減少したほか、在庫調整の影響により海外商社を中心に需要が減少しました。

 これらの結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。

 

a.財政状態

 当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ53,287千円増加し、10,179,001千円となりました。

 当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ410,322千円増加し、5,730,923千円となりました。

 当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ357,035千円減少し、4,448,078千円となりました。

 

b.経営成績

 当連結会計年度の業績は、売上高は5,454,341千円(前期比20.4%減)となりました。利益面におきましては、エネルギーコストの増加や市場の在庫調整に伴う生産高低下による単位当たりの固定費負担の増加などから、営業利益は8,973千円(前期比99.2%減)、経常利益は56,890千円(前期比95.3%減)となりました。また、経営資源の最適配分化や資本効率化を図ることを目的に、マレーシアの連結子会社であるRiver Electronics (Ipoh) Sdn. Bhd.の清算、青森リバーテクノ株式会社の車力工場の閉鎖に伴う特別損失を計上したほか、繰延税金資産の回収可能性を慎重に検討した結果、繰延税金資産の一部を取り崩し、法人税等調整額を計上したことにより親会社株主に帰属する当期純損失は133,266千円(前期は893,965千円の親会社株主に帰属する当期純利益)となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、法人税等の支払い、有形固定資産の取得による支出、長期借入金の返済による支出等の要因により一部相殺されたものの、減価償却費、売上債権の減少、長期借入れによる収入等により前連結会計年度に比べ185,965千円増加し、当連結会計年度末には2,012,328千円となりました。

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動によるキャッシュ・フローにつきましては、973,521千円の収入(前連結会計年度は1,253,943千円の収入)となりました。これは主として、減価償却費574,659千円、売上債権の減少額230,790千円、法人税等の支払額102,806千円によるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動によるキャッシュ・フローにつきましては、705,484千円の支出(前連結会計年度は1,033,112千円の支出)となりました。これは主として、定期預金の預入による支出1,354,238千円、定期預金の払戻による収入1,318,431千円、有形固定資産の取得による支出613,575千円によるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動によるキャッシュ・フローにつきましては、160,495千円の支出(前連結会計年度は219,031千円の収入)となりました。これは主として、短期借入金の減少額348,441千円、長期借入れによる収入1,600,000千円、長期借入金の返済による支出1,031,034千円、自己株式の取得による支出247,644千円によるものであります。

 

③生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

生産高(千円)

前年同期比(%)

水晶製品

5,601,867

81.7

その他の電子部品

54,677

133.4

5,656,544

82.0

 (注)1.金額は販売価格によっております。

b.受注実績

当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(千円)

前年同期比(%)

受注残高(千円)

前年同期比(%)

水晶製品

5,399,749

99.0

1,374,067

102.6

その他の電子部品

58,252

163.9

-

-

5,458,001

99.4

1,374,067

102.4

 

c.販売実績

当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

販売高(千円)

前年同期比(%)

水晶製品

5,393,902

79.1

その他の電子部品

60,439

155.5

5,454,341

79.6

 (注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。

    2.主な相手先の販売実績及び総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。

 相手先

 前連結会計年度

 当連結会計年度

 金額(千円)

 割合(%)

 金額(千円)

 割合(%)

台湾晶技股份有限公司

2,484,531

36.2

2,576,217

47.2

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において、当社グループが判断したものです。

 

①当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.損益の状況

 リバーグループは、「革新的技術を用いた最適価値の電子デバイスを世界に発信し、人々のくらしと生活環境の向上に貢献する」企業を目指しています。中期経営計画「R2024」の2年目となる2024年3月期は、最終年度の目標である売上高100億円、営業利益25億円を目指し、厳しい経済環境の中でも様々な挑戦を続けてきました。特に強みを持つ1610サイズのkHz音叉型水晶振動子や1210サイズMHz帯ATカット水晶振動子の販売強化に注力しました。しかしながら当社の主力市場であるスマートフォン、無線モジュール、PC等の民生機器向けの在庫調整が想定よりも長引いているほか、需要低迷に伴う市場間競争も激しさを増しており、実績値と目標値との間には大きな差異が生じ、「売上高」「営業利益」「営業利益率」「ROIC(投下資本営業利益率)」のすべてにおいて目標未達に終わりました。

 当連結会計年度の売上高は、水晶製品事業においては、音叉型水晶振動子はスマートフォン向け及び医療・ヘルスケア向けの売上高は増加したものの、無線モジュール向けが大幅な減少となりました。ATカット水晶振動子は在庫調整等による受注減少により無線モジュール向け、医療・ヘルスケア向け及びPC・PC関連機器向けの売上高が減少しました。その他の電子部品事業においては2023年9月にマレーシアの製造子会社であるRiver Electronics (Ipoh) Sdn. Bhd.の解散が決定し、同社の生産終了に伴う抵抗器の駆け込み需要もあり、売上高は前期を上回りました。

 収益面においては、為替レートが円安に推移したことによる利益押上げ効果はありましたが、受注減少に伴う工場稼働率の低下による固定費負担の増加やエネルギーコストの上昇などから前期と比べ大幅な減少となりました。

 これらの結果、当連結会計年度の売上高は5,454,341千円(前期比20.4%減)となりました。利益面におきましては、営業利益は8,973千円(前期比99.2%減)、経常利益は56,890千円(前期比95.3%減)となりました。また、経営資源の最適配分化と経営の効率化を図るため、連結子会社であるRiver Electronics (Ipoh) Sdn. Bhd.の清算、青森リバーテクノ株式会社の車力工場の閉鎖に伴う特別損失を計上したほか、繰延税金資産の回収可能性を検討した結果、前期末における繰延税金資産を取り崩したことにより親会社株主に帰属する当期純損失は133,266千円(前期は893,965千円の親会社株主に帰属する当期純利益)となりました。

b.財政状態

 当連結会計年度末の資産合計は、現金及び預金、商品及び製品、仕掛品、建物及び構築物の増加等により前連結会計年度に比べ53,287千円増加し、10,179,001千円となりました。商品及び製品の増加138,696千円及び仕掛品の増加117,638千円は、主として水晶製品事業におけるものであります。

 負債は、短期借入金、未払法人税等の減少等があったものの、1年内返済予定の長期借入金、長期借入金の増加等により前連結会計年度に比べ410,322千円増加し、5,730,923千円となりました。借入金は事業計画に基づく資金需要や金利動向等を考慮の上、調達手段や調達規模等を判断、実施しており、当連結会計年度は220,524千円増加しました。

 純資産は、利益剰余金243,456千円の減少、自己株式の増加241,001千円等により、前連結会計年度に比べ357,035千円減少し、4,448,078千円となりました。利益剰余金の243,456千円の減少は主に親会社株主に帰属する当期純損失133,266千円によるものです。また、自己資本比率は前連結会計年度の47.5%に対し43.7%になりました。

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 当社グループは、資本運用効率を重視しながら、適正な資本構成の構築を図り、財務の健全性改善を基本方針としております。また、当社グループ内における資金管理については、グループ内資金を当社が一元管理することで、効率的・横断的に資金を活用する体制を整えております。

 主なキャッシュ・フローの状況は、以下のとおりです。なお、詳細については、「第2 事業の状況 4経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載しております。

 

前連結会計年度

(千円)

当連結会計年度

(千円)

増減額

(千円)

 営業活動によるキャッシュ・フロー

1,253,943

973,521

△280,422

 投資活動によるキャッシュ・フロー

△1,033,112

△705,484

327,628

 財務活動によるキャッシュ・フロー

219,031

△160,495

△379,526

 現金及び現金同等物の期末残高

1,826,363

2,012,328

185,965

 

a.運転資金と投資資金

 当社グループの資金需要は、事業活動に必要な運転資金及び研究開発・設備投資に係る投資資金が主たる内容であります。運転資金需要の主たるものは、製品を製造するための材料仕入、製造経費、営業経費を含む販売費及び一般管理費によるものであります。一方、投資資金需要の主たるものは、研究開発に携わる従業員の人件費を中心とした研究開発投資及び事業拡大・生産性向上を目的とした設備投資によるものであります。

 また、その他借入金等有利子負債の返済及び利息の支払いに資金の充当を行っております。

 なお、当連結会計年度における設備投資の概要については、「第3 設備の状況 1設備投資等の概要」、重要な設備投資計画については、「第3 設備の状況 3設備の新設、除却等の計画」にそれぞれ記載しております。

 

b.資金調達と有利子負債

 当社グループは、まず営業活動で獲得した資金を運転資金及び投資資金に充当することを基本とし、不足分は借入金等による資金調達を活用しております。

 長期資金の調達については、事業計画に基づくキャッシュ・フローや金利動向、有利子負債の状況等を考慮のうえ、調達手段や調達規模等を適宜判断して実施しております。他方、有利子負債の圧縮のため財務規律を維持し、積極的な投資と財務の健全性の改善を両立させるべく取り組んでおります。

 当連結会計年度においては金融機関からの借入により1,600,000千円を調達しております。

 当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、2,012,328千円であり、流動比率は201.3%と前連結会計年度から悪化しましたが、金融機関とは幅広く好関係を維持しており、資金需要に必要な流動性を十分に確保していると考えております。

 なお、当連結会計年度末現在の有利子負債の状況は、以下のとおりです。

 

 1年以内

(千円)

1年超

2年以内

(千円)

2年超

3年以内

(千円)

3年超

4年以内

(千円)

4年超

5年以内

(千円)

5年超

(千円)

 短期借入金

457,662

-

-

-

-

-

 長期借入金

1,237,827

934,626

632,130

483,887

149,651

-

 リース債務

23,523

20,254

18,320

16,133

14,037

23,792

合計

1,719,013

954,880

650,450

500,020

163,688

23,792

 

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、第5 経理の状況 1 連結財務諸表 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。

 

5【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。

6【研究開発活動】

 当社グループは、当社が材料の設計から製品開発並びに生産技術の開発に至る全てのプロセスにおいて研究開発活動を行っており、「常に新技術の確立・向上に力を入れ、時流にあった新製品を業界に提示していく」ことを基本方針に活動しております。
 水晶製品セグメントの主な研究開発活動は次のとおりであります。なお、当連結会計年度における研究開発費は、総額243,659千円であります。

水晶製品

(1)KoTカット水晶振動子

当社は、革新的な『KoTカット』『OPAW』(直交板弾性波:Orthogonal Plate Acoustic Waves)技術を用いた『KCR-04』を商品化し、これまで対応不可能であった高精度かつ低位相雑音の要求に応えるハイエンドクロック源を提供してきました。この特許技術に基づく製品は、既に台湾、米国、英国、および日本で特許登録を完了し、中国においても登録が見込まれています。本年度は適用市場および周波数の幅広い拡大に成功し、半導体開発メーカーにもその効果が評価され、ICリファレンス登録活動も始まりました。

当社は、お客様からの様々な周波数に関する開発依頼に応え、海外市場におけるニーズに対応する製品の提供を続けています。このような継続的な技術革新と市場拡大により、お客様に新たな価値を提供し続けることに注力してまいります。

 

(2)KoTカット水晶発振器

高周波低位相ジッターの顧客価値を提供するための画期的な製品、「KCRO-04」を2024年6月10日に発表しました。この製品は、KoTカット関連製品の第3弾として開発され、1GHzまでの周波数を基本波出力するために特別に開発設計された専用ICを搭載しています。3.2mm×2.5mmのセラミックパッケージに収められたこの製品は、LVDSおよびLVPECLの出力に対応し、これまでにない高周波低位相ジッターのソリューションを市場に提供します。

超高周波かつ超低位相ジッターの専用ICの開発は、当社の技術力を結集した象徴であり、高品質かつ高性能な信号クロックの生成を可能にすることで、現在主流のPLL高周波発振器とは一線を画す新しい時代を切り開く製品となります。この技術的飛躍により、適用市場および周波数の拡大、さらに高い周波数への対応が可能となり、サンプル出荷を通じて高品質の信号クロックとしての認知度が大きく向上しています。

さらに、当社は「KCRO-1409」を通じて、既存の低ジッター水晶発振器と比較して約一桁低いRMS位相ジッターを実現し、高品質の信号源が必要な市場での需要を喚起し、よりハイエンド向けの商品としてのポジショニングを強化し、受注に至っています。当社はこれらの成果を基に、今後も顧客の要求に応える製品開発を進め、市場の期待に応えてまいります。