当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題は次のとおりであります。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営理念、経営方針
当社グループは、「源流」「創価」「革新」を経営理念としております。
「常に、源流に立って考え、意欲して創造し、価値を創り、新しい時へ、自ら変革し対応しよう」という基本理念に従い、長期経営ビジョンを「革新的技術を用いた最適価値の電子デバイスを世界に発信し、人々のくらしと生活環境の向上に貢献する」とし、このビジョンを実現するために2027年度を最終年度とした「中期経営計画R2027」を策定し、「顧客の満足と信頼の獲得」「独創的発想による価値の創造」「構造改革による収益力とキャッシュ創造力の強化」「持続可能な経営基盤の確立・強化」という4つの中期経営方針を掲げ、グループ一体となってその実践に努めております。
(2)経営環境、中長期的な会社の経営戦略
当連結会計年度の業績は、前中期経営計画「R2026」で掲げた連結売上高、連結営業利益(率)、およびROICの定量目標に対し、すべて未達となりました。この主な要因は、スマートフォン向け需要の伸び悩みによる売上高成長率の鈍化、車載向け新規ラインの立ち上げ遅延や安定稼働までの遅れに伴うコスト増大、および資産効率の低下であると考えております。今後の世界経済は緩やかな回復基調が期待されるものの、米国の関税政策や地政学リスク、金融市場の動向など、依然として不透明な状況が続くと予想されます。
このような経営環境のもと、当社グループは、「革新的技術を用いた最適価値の電子デバイスを世界に発信し、人々のくらしと生活環境の向上に貢献する」という長期経営ビジョンを掲げています。このビジョンを実現するため、4つの中期経営方針に沿った以下の取り組みを推進し、ICT社会の進展に貢献する、時代に即した高品質、高信頼性の最先端電子部品を世界に提供することで、更なる企業価値向上を目指してまいります。
基本方針1「顧客の満足と信頼の獲得」
顧客の視点に立った企業活動を推進し、顧客が満足する価値を提供し、顧客に信頼されるパートナーとなることを目指します。また、当社グループの強み、市場成長性、社会的課題への対応などにフォーカスした製品ポートフォリオの最適化を図り、企業価値向上を目指します。
注力市場をモビリティ、医療・ヘルスケア、IoT無線通信、次世代デジタルインフラ市場とし、製品ポートフォリオの最適化を図ります。これにより、市場の変化に適応する柔軟なマーケティング戦略を実行し、持続的な成長を目指します。
モビリティ市場においては、当期から取り組んでいる新規(車載)生産ラインの安定稼働と稼働率の向上、およびIATF16949の取得を目指すとともに、音叉型水晶振動子による車載市場の販売拡大に注力いたします。
次世代デジタルインフラ市場では、データ量の爆発的な増加に伴う通信速度の向上により、高周波・高精度・低位相雑音のハイエンドクロック源が求められています。当社が開発したKoTカット水晶デバイスは、これまでにない高周波・低位相ジッターを実現しており、現在ICメーカ等にサンプル出荷を行っておりますが、今後はデザイン・イン活動を強化していきます。
基本方針2「独創的発想による価値の創造」
独創的発想をもって革新的技術でイノベーションを創出し、新しい価値を創造します。
KoTカット水晶デバイスについては、市場の要求仕様に応えるべく更なる開発を継続します。同時に、需要予測に基づくマーケティング活動により、タイムリーかつ安定供給が可能な体制を構築していきます。また、音叉型・ATカット水晶デバイスについても、開発ポートフォリオを最適化し、小型・低消費電力化など、市場のニーズに柔軟に対応することで、企業価値の最大化を図ります。
基本方針3「構造改革による収益力とキャッシュ創造力の強化」
事業構造の改革を推進し、収益力とキャッシュ・フロー創出力を高め、企業価値向上を果たします。
ROICをツリー展開させた施策を推進し、事業成長と投下資本効率の改善を目指します。当連結会計年度においては、収益力の大幅な低下のほか、将来の成長に向けた先行投資の影響もあり、投下資本効率も前期を下回る結果となりました。中期経営計画においては、成長のための積極投資と事業構造改革によるキャッシュ創出の両輪を回すことで、企業価値向上を目指します。
基本方針4「持続可能な経営基盤の確立・強化」
公正かつ透明性の高いガバナンス体制を構築し、社会的課題に取り組み、企業価値向上を果たします。
当社グループは、ステークホルダーのサステナビリティに対する考え方や事業環境の変化等を鑑み、2025年度において8つの新たなCSR・サステナビリティ目標を特定しました。
事業を通じた社会課題の解決
①ICT社会を進化させる製品の提供
②品質保証・安全安心への取り組み
③サプライチェーンマネジメントの強化
④顧客エンゲージメントの向上
持続可能な経営基盤の強化
⑤ガーボンニュートラル社会への貢献、脱炭素化の推進
⑥汚染防止推進と化学物質管理の徹底
⑦コーポレートガバナンスの強化、機能の発揮
⑧プライバシーの保護
これらのマテリアリティについては、グループ全体で方針展開を図ることにより、持続可能な経営基盤の確立・強化を図り、中長期的な企業価値向上を目指します。また、現状ではマテリアリティとして特定していない社会的課題についてもステークホルダーの要請や期待に応じて積極的に対応していきます。
創出されたキャッシュについては中期経営戦略に従い、持続的な成長を支えるオーガニック成長を中心とした投資を行うほか、有利子負債の圧縮等、財務健全性を優先的に進めてまいります。株主還元については、配当性向20%を目安とした安定的な配当の実現を目指しますが、他方、持続的な利益成長と資本効率の向上をベースにしたDOE(株主資本配当率)の導入を検討いたします。なお、自己株式の取得につきましては財務の健全性を優先させながらフリーキャッシュ・フローの状況や株価推移を勘案し、機動的な取得を検討いたします。
(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、成長性を測る指標として、連結売上高及び連結売上高営業利益(率)を、企業価値向上を測る指標としてROIC(投下資本営業利益率)を重要な経営指標と位置づけております。当期においては、すべての指標において未達となりました。
当社グループは経営理念「源流」「創価」「革新」のもと、常に企業の社会的責任と使命を認識した事業活動を行ない、長期経営ビジョン「革新的技術を用いた最適価値の電子デバイスを世界に発信し、人々のくらしと生活環境の向上に貢献する」ことを目指し、未来へチャレンジしていくことがサステナビリティ(持続可能な経済活動)への貢献につながると考え、社会的課題解決に向けて積極的に取り組みを進めていきます。
1.サステナビリティ全般
(1)ガバナンス
当社グループは、CSR・サステナビリティに関する取り組みや重要事項の決定等は当社代表取締役社長を委員長とするCSR・サステナビリティ委員会において審議、検討し、取締役会で決定する体制を整えております。CSR・サステナビリティ委員会は、「CSR・サステナビリティ方針」に基づき、7つの全社的委員会と連携してCSR・サステナビリティ活動を推進し、グループ全体で方針展開を図ることにより、社会的課題に取り組む体制を構築しています。
マテリアリティ(重要課題)においてはCSR・サステナビリティ委員会において当社グループを取り巻く社会的課題を抽出し、リスクと機会の検討等を踏まえ、自社にとっての重要性と社会にとっての重要性を軸に検討、策定されたマテリアリティ案を取締役会が検討・議論した後に決議し、当社グループ全体に方針展開を行ないます。また、年に1度、取締役会においてマネジメントレビューを行うこととしております。
CSR・サステナビリティ体制を図によって示すと次のとおりです。
(2)戦略
当社グループは中期経営計画「R2027」において長期経営ビジョンを掲げており、4つの基本戦略「顧客の満足と信頼の獲得」「独創的発想による価値の創造」「構造改革による収益力とキャッシュ創造力の強化」「持続可能な経営基盤の確立・強化」に基づき、事業活動を展開していくなかで、社会的課題の解決に向けてリスクの低減や機会の創出への対応を進め、サステナブルな社会の実現に貢献してまいります。
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マテリアリティ |
リスク |
機会 |
主な取り組み |
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事業を通じた社会課題の解決 |
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ICT社会を進化させる製品の提供 |
新技術の台頭に伴う事業戦略の陳腐化 / 開発遅延等による競争力の低下 |
新市場の創出や革新性のある製品の提供による企業価値向上 |
・KoTカット発振器の販売拡大 ・音叉製品の販売拡大 ・無線通信分野の販売拡大 |
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品質保証・安心安全への取り組み |
クレーム・訴訟などの費用発生 / 信用力低下によるビジネスチャンスの逸失 |
顧客のエンゲージメント向上によるビジネスチャンスの拡大 |
・ISO9001(品質マネジメントシステム)の確立・維持等 |
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サプライチェーンマネージメントの強化 |
社会的、環境的不祥事の発生によるオペレーションの停滞 / 地政学リスクの高まりによるサプライチェーンの分断・停滞 |
取引先選定基準に即していることによる取引の獲得・維持 |
・RBA SAQを用いてグループの状況を調査、分析し、対応を検討・実施する。 |
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顧客エンゲージメントの向上 |
向上施策が顧客の期待にそぐなわない場合の信頼度の低下 / 費用対効果 |
収益性向上 / 顧客との共創関係の構築 |
・3つの品質(開発・製造・サービス)を高め、顧客とともに企業価値向上を図る ・顧客とのコミュニケーション強化 |
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持続可能な経営基盤の強化 |
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カーボンニュートラル社会への貢献、脱炭素化の推進 |
自然災害の頻発化・激甚化 環境税、エコ電力使用等によるコスト増 / 気候変動、天然資源の枯渇、生態系の破壊 |
生産設備の環境に対する能力向上等に伴う生産コストの削減 / 社会的信用の増大 |
・ISO14001の推進、再生可能エネルギーの導入、エネルギー効率の向上、製造プロセスの脱炭素化などの検討 |
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汚染防止推進と化学物質管理の徹底 |
有害物質の漏洩等による大気汚染、土壌汚染等による環境への負荷増大 / 健康被害等による損害賠償、汚染除去費用の発生 |
有害物質の漏洩防止等による生態系の保全 / 生産設備の環境に対する能力向上 |
・ISO14001の推進、廃棄物の適切な処理、化学物質の適切な管理等 |
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コーポレートガバナンスの強化 |
コーポレートガバナンスの機能不全に伴う事業継続リスク |
環境変化に対する意思決定の適切、迅速化 / 意思決定の透明性の向上 |
・取締役会の実効性向上 ・内部統制の実効性向上 ・迅速、正確かつ公平な情報開示 |
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プライバシーの保護 |
法的・訴訟リスク増大 / 企業レピュテーション低下 |
信頼関係の構築 / 健全な組織文化の醸成 / リスク管理の強化 |
・アクセス制御等、技術的対策や個人情報保護に関する教育と啓発など |
(3)リスク管理
当社グループでは、「当社グループの事業に重大な影響を及ぼす危機発生の可能性があるリスクを抽出し、必要に応じ、適切な処置を施し危機発生の危険を回避するようにするとともに、当社グループに与えられた社会的責任の評価及びステークホルダーとの良好な関係を向上させ、社員の安全及び健康並びに経営資源の保全を図る」というリスクマネジメント方針のもと、リスク管理委員会にて当社グループの経営方針、事業目的等の達成を阻害する全てのリスクの把握を行うとともに、リスクの低減、移転、回避等のための実施、監視及び改善等の活動を行っております。
全社的リスク管理は、リスク管理委員会が「リスク管理規定」に基づき、各部門が識別・評価したリスクについて管理しており、リスク管理責任者が定期的に経営層へ報告をしております。なお、脱炭素化の推進等、環境に関するリスクに関しては環境管理委員会が、CSR・サステナビリティに関するリスクに関してはCSR・サステナビリティ委員会がリスク管理委員会と情報を共有しながら、事業リスクとして統合・管理し、重要リスクについては定期的に経営層に報告しております。
詳細につきましては「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」を参照ください。
(4)指標及び目標
当社グループは2030年までの「あるべき姿」の実現に向け、中期経営計画R2027において当社グループとして取り組むべきことを明確にし、単年度において方針展開を図ることで社会的課題の解決に向け施策を実行しております。
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マテリアリティ |
あるべき姿 |
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ICT社会を進化させる製品の提供 |
独創的発想で新しい価値を創造し、持続可能なデジタル社会の発展に貢献する |
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品質保証・安心安全への取り組み |
製品の設計から、製造、販売、アフターサービスに至るすべてのプロセスにおいて、製品の安全性と高品質確保のための品質マネジメントシステムを確立し、社会に有益な製品を提供する |
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サプライチェーンマネージメントの強化 |
サプライチェーンにおけるCSRの推進とQCDの確保を実現している |
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顧客エンゲージメントの向上 |
顧客が求める安全・高品質の商品・サービスを提供することで信頼性を高め、顧客とともに企業価値向上を図る |
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カーボンニュートラル社会への貢献、脱炭素化の推進 |
地球規模の課題である気候変動問題の解決に向けて、2015年にパリ協定が採択され、設定された世界共通の長期目標に向け、当社にて対応可能な範囲で温室効果ガスの排出削減に向けた取り組みにより脱炭素社会の実現を目指す |
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汚染防止推進と化学物質管理の徹底 |
安全安心な商品の提供のため、当社の製品に含まれる化学物質を管理すると共に、環境影響に配慮した設計開発を推進する |
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コーポレートガバナンスの強化 |
健全な組織運営を通して持続的な価値創造を推進するガバナンス体制が構築されている |
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プライバシーの保護 |
データ・セキュリティと機密情報の厳格な保護を通じて、ステークホルダーからの信頼に応える企業になっている |
2.気候変動への取り組み
環境に対する基本的な考え方
社会全体で持続可能性への関心が高まるなか、企業は環境及び社会に対する責任を果たし、持続可能な社会の実現に向けた積極的な取り組みが求められています。このような背景を踏まえ、当社は持続可能な社会の実現に向けた取り組みをグループ全体で強化することを目的とし、より広範な視点から環境方針を2023年4月より改定しております。引き続き、社会や環境問題をはじめとする諸課題を整理し、環境負荷低減への取組みを一層強化してまいります。
環境方針
リバーグループは、持続可能な社会への貢献のため、環境マネジメントシステムを継続的に改善し、事業活動及び製品のライフサイクル全体を通して環境負荷の低減を図るとともに、環境パフォーマンスの向上に努める。
1.脱炭素化の推進
2.資源循環の推進
3.環境に配慮した製品・設備開発、製造に関する技術の創出を推進
4.汚染防止推進と化学物質管理の徹底
5.環境法規制、条例及び同意した要求事項の順守
(1)ガバナンス
当社及び製造子会社においてISO14001を認証取得しており、要求事項に適合した環境マネジメントシステムを構築し、維持管理をするとともに継続的な改善活動を行っております。リバーグループは環境方針に基づき、グループ全体で環境の保全に取り組み、社会へ貢献することを目指しており、省資源、省エネルギー等を推進するため、環境マネジメントシステムを国内3拠点で運営管理しております。また、環境管理委員会の下に4つの推進委員会を設置し、マネジメントシステム運用の計画・監視や具体的な環境活動を推進しています。
(2)戦略
省資源製品の設計や省エネ・省資源設備の設計、仕損じ率低減といった環境に配慮した製品・設備開発、製造に関する技術の創出を通じて社会的課題の解決を志向しております。
(3)指標と目標
当社グループは電気、灯油などの削減を目標とする環境推進目標の設定や工場内のLED化、省エネ工作機械の導入などを行っております。政府目標である2050年のカーボンニュートラルに向けて、当社グループにおける温室効果ガス排出量を2030年までに70%削減(2013年比)する目標を掲げ、環境活動を推進していきます。
3.人的資本に関する取り組み
(1)戦略
当社グループは長期経営ビジョンの実現が果たせる有能な人材の確保を重要戦略としており、今後の事業戦略から目指す姿と現状の人材ギャップを把握し、獲得及び必要とすべき人材を毎年洗い出し、新規およびキャリア採用・育成・人員配置を計画的かつ柔軟に実施しています。また、長期経営ビジョンの実現に向け、社員に「一人一人が感度良く、確度の高い情報を収集し、現状を分析して的確に認識し、すべてのステークホルダーの満足のために今自分がなすべきことを考え、実行する。」「世界的・包括的な視野で物事を捉え、新たな価値ある市場を創造する。」「前向きな危機感をもって、すべての活動において変化を恐れず、変化に対応し、スピード感を持って取り組む。」「社会・世界に与える影響を常に考え、社会に貢献できる事業活動に取り組む。」ことを求めており、多様な人材の確保を推進していくのと同時に、互いの能力が最大限発揮できるようなイノベーションを引き起こす組織づくりに取り組んでいきます。
(2)指標及び目標
当社グループは多様な人材の確保、イノベーションを引き起こす組織の整備に取り組んでおりますが、測定可能な目標を設定するには至っておりません。現時点においては、社員が当社の企業理念に共感し、心身ともに充実し、自発的に企業の業績向上のために貢献してくれる会社になれるよう従業員エンゲージメントを目標にした定量目標を検討しております。
当社グループでは、「当社グループの事業に重大な影響を及ぼす危機発生の可能性があるリスクを抽出し、必要に応じ、適切な処置を施し危機発生の危険を回避するとともに、当社グループに与えられた社会的責任の評価及びステークホルダーとの良好な関係を向上させ、社員の安全及び健康並びに経営資源の保全を図る」というリスクマネジメント方針のもと、リスク管理委員会にて当社グループの経営方針、事業目的等の達成を阻害する全てのリスクの把握を行うとともに、リスクの低減、移転、回避等のための実施、監視及び改善等の活動を行っております。
当社グループの事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性がある事項は、次のようなものがあります。なお、文中に関する事項は、有価証券報告書提出日(2025年6月26日)現在において当社グループが判断したものであります。
(1)リスク管理体制
当社は、代表取締役社長を頂点とし、総務本部長をリスク管理責任者とするリスク管理委員会を設置しており、リスク管理事務局において当社グループ全体の管理体制の整備を行っております。各部門は半期ごとに「事業機会に関するリスク」と「事業活動の遂行に関するリスク」について潜在するリスクを抽出し、「発生の可能性」「発見の可能性」「金額的重大性」「質的な重大性」及び「会社の信用」の5つの観点から評価し、リスクへの対応及びリスク登録の有無を事務局に報告しており、リスク管理責任者はそれを受けて経営層への報告、見直し改善を指示しております。また、脱炭素化の推進等、環境に関するリスクに関しては環境管理委員会と、CSR・サステナビリティに関するリスクに関してはCSR・サステナビリティ委員会と情報を共有しながら、事業リスクとして統合・管理しております。
(2)主要なリスク
《事業機会に関するリスク》
①新規事業分野進出・事業拡大に係るリスク
当社グループでは、持続的な成長に向けて新規事業及び事業拡大への取り組みを随時検討しておりますが、新規事業は不確定要素が多く、目論見通りに進まない可能性があります。新規事業及び事業拡大への取り組みが計画通り達成できなかった場合は、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
②資金調達戦略に係るリスク
当社グループは、営業活動で獲得した資金を運転資金及び投資資金に充当することを第一とし、不足分を金融機関からの借入やリースによる資金調達で賄っております。資金の調達については、事業計画に基づくキャッシュ・フローや金利動向、有利子負債の状況等を考慮のうえ、調達手段や調達規模等を適宜判断して実施しております。他方、有利子負債の圧縮のため財務規律を維持し、積極的な投資と財務の健全性の改善を両立させるべく取り組んでおりますが、事業環境の悪化に伴う当社信用格付けの低下や金融市場の混乱等の要因により、資金調達が制約を受け、必要資金を調達できない、また、調達コストが増加する等の可能性があります。これらの事態が生じた場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
③設備投資戦略に係るリスク
当社グループは中期経営計画や回収可能性等に基づいた設備投資を実施しておりますが、事業環境の急変等により事前の様々な検討にもかかわらず目論見通りの展開にならなかった場合には、収益性の低下や時価の下落等に伴い資産価値が低下し、減損損失の発生や売却時での売却損の発生により、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
④販売戦略に係るリスク
当期における水晶製品事業の連結売上高の割合は99%超であります。また、主力市場がスマートフォン関連向けであり、大手メーカーと取引関係にあることから売上高構成が偏重する傾向にあります。こうした状況に対し、IoT無線通信、モビリティ、医療ヘルスケア、次世代デジタルインフラといった将来的に成長が期待される市場に対し、拡販及び新規開拓活動を実施することで、偏重リスクを軽減していくことを戦略の1つとして位置付けております。
今後もICT社会の到来に向けた製品の開発、注力市場への販売拡大に注力していきますが目論見通りに進まない可能性があります。また、水晶製品における技術革新や製造技術の変化、水晶製品に代わる代替製品の台頭、景気後退時における企業間競争の激化とそれに伴う販売価格の下落等により、当社グループ製品の競争力が低下した場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
《事業活動の遂行に関するリスク》
⑤コンプライアンスに関するリスク
当社グループは、わが国をはじめとし、諸外国での事業の遂行にあたり、それぞれの国での各種法令、行政による許認可や規制等の遵守に努めておりますが、これらの法令・規制を遵守できなかった場合、法令による罰則や訴訟の提起を受ける可能性があります。また、顧客を始めとする利害関係者からの信頼性や企業価値向上のため、「リバーグループ行動規範」を2025年4月に見直し、当社グループ全体に周知徹底し、教育を実施していますが、従業員の法令違反や社会規範からの逸脱行為があった場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
⑥商品品質に関するリスク
当社グループは、調達原材料等の品質不良の発生防止を含め、製品の品質確保に努めています。また、当社グループの製品は、品質や安全に関するさまざまな法的規制による制約を受けているため、これらの規制の遵守に努めるとともに、製造物責任賠償保険に加入する等の対策を講じています。しかし、大規模な事故やクレームの発生及び製造物責任賠償につながるような製品の欠陥は、多額のコストに加えて当社グループの社会的評価に重大な影響を及ぼすことが考えられ、これによって当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
⑦情報システムに関するリスク
当社グループが事業活動を行う上で、情報システム及び情報ネットワークは欠くことのできない基盤であり、構築・運用に当たっては十分なセキュリティの確保に努めているものの、不正侵入、情報の改ざん・盗用・破壊、システムの利用妨害などにより業務の停滞や信用の低下が生じた場合、高度化を続けるサイバー攻撃によって事業運営の停止が余儀なくされた場合、あるいは故意・過失を問わず機密情報が社外に流出した場合等には、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
⑧環境に関するハザード・リスク
当社グループは、国内において製造子会社1社、海外において販売子会社2社と製造及び販売子会社の合計4社が事業展開を行っております。これらの地域において台風や地震等の自然災害や新型コロナウイルス感染症等の疫病の発生、また、政情の不安定化等によるカントリーリスクや政治的、軍事的な要因による地政学的リスクが顕在化した場合、事業活動の縮小や停止、役員及び社員の生命・身体等の人権への侵害が懸念されます。BCP(事業継続計画)の定期的、継続的な見直しや海外出向者に対する海外旅行傷害保険の加入徹底やカントリーリスクに関する情報の収集等に努めてはいますが、これらのリスクが顕在化した場合は当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
⑨人材に関するリスク
当社グループは、中期経営方針に「顧客の満足と信頼の獲得」「独創的発想による価値の創造」「構造改革による収益力とキャッシュ創造力の強化」「持続可能な経営基盤の確立・強化」を掲げ、「欧米及び中国市場の販売拡大」「時流に合った製品開発による新たな事業価値の創出」等を重要戦略にしており、これらの戦略を実現するためには有能な人材の確保と育成及び企業のグローバルダイバーシティ化を浸透させる啓蒙が不可欠になります。
したがって、有能な人材を確保又は育成できなかった場合やグローバルダイバーシティ化が浸透しなかった場合には、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
⑩脱炭素化の推進等、環境に関するリスク
当社グループは、「持続可能な社会への貢献のため、環境マネジメントシステムを継続的に改善し、事業活動及び製品のライフサイクル全体を通して環境負荷の低減を図るとともに、環境パフォーマンスの向上に努める。」という環境方針のもと、環境活動を展開しております。しかし、事業活動の拡大に伴うエネルギー使用量や天然資源の利用量の増加、環境対応のための投資や費用の増加が生じた場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の概要
当連結会計年度における世界経済は、緩やかな回復の兆しが見られたものの、地政学的な緊張の高まり、エネルギー価格の高騰、そして各国中央銀行の金融引き締めといった要因が複合的に影響し、変動の大きい一年となりました。当社グループの属する電子部品業界は、AI関連需要の増加といった明るい兆しが見られた一方で、中国経済の回復の遅れや一部市場における需要の低迷など、まだら模様の状況が続いております。
そのような中、連結会計年度の売上高は、スマートフォン向けの売上高は前期を下回りましたが、医療・ヘルスケア向けや車載向けが好調に推移し、前期比4.5%の増収となりました。
これらの結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。
a.財政状態
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ610,623千円増加し、10,789,625千円となりました。
当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ561,045千円増加し、6,291,968千円となりました。
当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ49,578千円増加し、4,497,657千円となりました。
b.経営成績
当連結会計年度の業績は、売上高は5,698,619千円(前期比4.5%増)となりました。利益面におきましては、新規ライン立ち上げに係る費用や専用ICに係る研究開発費の増加の影響から、営業利益は75,720千円の損失(前期は8,973千円の営業利益)、経常利益は60,461千円の損失(前期56,890千円の経常利益)となりました。また、親会社株主に帰属する当期純損失は79,487千円(前期は133,266千円の親会社株主に帰属する当期純損失)となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、売上債権の増加、有形固定資産の取得による支出、長期借入金の返済による支出等の要因により一部相殺されたものの、減価償却費、長期借入れによる収入等により前連結会計年度に比べ182,697千円増加し、当連結会計年度末には2,195,026千円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローにつきましては、186,044千円の収入(前連結会計年度は973,521千円の収入)となりました。これは主として、減価償却費630,253千円、売上債権の増加額353,135千円によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローにつきましては、859,311千円の支出(前連結会計年度は705,484千円の支出)となりました。これは主として、定期預金の預入による支出1,335,116千円、定期預金の払戻による収入1,465,277千円、有形固定資産の取得による支出992,187千円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローにつきましては、722,971千円の収入(前連結会計年度は160,495千円の支出)となりました。これは主として、長期借入れによる収入2,300,000千円、長期借入金の返済による支出1,408,237千円によるものであります。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社グループは、水晶製品事業の単一セグメントであり、当連結会計年度の生産実績は、次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
生産高(千円) |
前年同期比(%) |
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水晶製品 |
5,676,106 |
100.3 |
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計 |
5,676,106 |
100.3 |
(注)1.金額は販売価格によっております。
b.受注実績
当社グループは、水晶製品事業の単一セグメントであり、当連結会計年度の受注実績は、次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
受注高(千円) |
前年同期比(%) |
受注残高(千円) |
前年同期比(%) |
|
水晶製品 |
6,182,571 |
113.3 |
1,893,513 |
137.8 |
|
計 |
6,182,571 |
113.3 |
1,893,513 |
137.8 |
c.販売実績
当社グループは、水晶製品事業の単一セグメントであり、当連結会計年度の販売実績は、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
販売高(千円) |
前年同期比(%) |
|
水晶製品 |
5,698,619 |
104.5 |
|
計 |
5,698,619 |
104.5 |
(注)
1.主な相手先の販売実績及び総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
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相手先 |
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
||
|
金額(千円) |
割合(%) |
金額(千円) |
割合(%) |
|
|
台湾晶技股份有限公司 |
2,576,217 |
47.2 |
2,773,180 |
48.7 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において、当社グループが判断したものです。
①当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.損益の状況
リバーグループは、「革新的技術を用いた最適価値の電子デバイスを世界に発信し、人々のくらしと生活環境の向上に貢献する」企業を目指しています。中期経営計画R2026で策定した3か年の計画に基づき、「顧客の満足と信頼の獲得」「独創的発想による価値の創造」「構造改革による収益力とキャッシュ創造力の強化」「持続可能な経営基盤の確立・強化」を柱として、ありたい姿の実現に向けて取り組んでまいりました。営業面においては次世代の成長ドライバー製品と期待する超小型(1.2㎜×1.0㎜)のATカット水晶振動子および音叉型水晶振動子の拡販に注力いたしました。また、注力市場に掲げているモビリティ市場や医療・ヘルスケア市場向けの拡販に努めたほか、データーセンターなどの次世代インフラ市場向けに高周波水晶デバイスであるKoTカット水晶製品の市場開拓を推し進めました。当社独自の「KoTカット」技術を基盤とするKoTカット水晶デバイスは「高精度」で「低位相雑音」のハイエンドクロック源を提供することができ、未来の情報通信社会に欠かせないキーデバイスであり、当連結会計年度に開発された専用ICを搭載することでより多彩なニーズに応えるべく開発を進めております。製造面においては車載向けの新規ラインを立ち上げ、安定稼働に向けた取組を推進するほか、2023年度省エネ大賞に選ばれた熱交換システムをさらに進化させ、CO₂低減に取り組むなど、社会的な課題にも取り組んでまいりました。
これらの結果、当連結会計年度の売上高は、主力の音叉型水晶振動子はスマートフォン向けが伸び悩みましたが、固相拡散接合による超小型の音叉型水晶振動子が医療・ヘルスケア向けを中心に好調に推移し微増となったほか、ATカット水晶振動子において医療・ヘルスケア向けや車載向け製品の受注が拡大したことから5,698,619千円(前期比4.5%増)となりました。収益面においては、車載関連の新規生産ラインの立ち上げの遅延や新製品開発による研究開発費など、先行コスト増加の影響から、営業損失は75,720千円(前期は8,973千円の営業利益)、経常損失は60,461千円(前期56,890千円の経常利益)となりました。また、前期に計上したRiver Electronics (Ipoh) Sdn.Bhd.の清算および青森リバーテクノ株式会社の車力工場の閉鎖に伴う特別損失等がなかったことから親会社株主に帰属する当期純損失は79,487千円(前期は133,266千円の親会社株主に帰属する当期純損失)となりました。
b.財政状態
当連結会計年度末の資産合計は、受取手形及び売掛金、建設仮勘定の増加等により前連結会計年度に比べ610,623千円増加し、10,789,625千円となりました。建設仮勘定の増加166,313千円は、車載向け事業に関連する設備投資によるものであります。
負債は、設備関係電子記録債務の減少等があったものの、1年内返済予定の長期借入金、長期借入金の増加等により前連結会計年度に比べ561,045千円増加し、6,291,968千円となりました。借入金は事業計画に基づく資金需要や金利動向等を考慮の上、調達手段や調達規模等を判断、実施しており、当連結会計年度は835,043千円増加しました。
純資産は、利益剰余金161,787千円の減少、為替換算調整勘定の増加184,489千円等により、前連結会計年度に比べ49,578千円増加し、4,497,657千円となりました。利益剰余金の161,787千円の減少は主に親会社株主に帰属する当期純損失79,487千円によるものです。また、自己資本比率は前連結会計年度の43.7%に対し41.7%になりました。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループは、資本運用効率を重視しながら、適正な資本構成の構築を図り、財務の健全性改善を基本方針としております。また、当社グループ内における資金管理については、グループ内資金を当社が一元管理することで、効率的・横断的に資金を活用する体制を整えております。
主なキャッシュ・フローの状況は、以下のとおりです。なお、詳細については、「第2 事業の状況 4経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
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前連結会計年度 (千円) |
当連結会計年度 (千円) |
増減額 (千円) |
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営業活動によるキャッシュ・フロー |
973,521 |
186,044 |
△787,476 |
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投資活動によるキャッシュ・フロー |
△705,484 |
△859,311 |
△153,827 |
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財務活動によるキャッシュ・フロー |
△160,495 |
722,971 |
883,467 |
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現金及び現金同等物の期末残高 |
2,012,328 |
2,195,026 |
182,697 |
a.運転資金と投資資金
当社グループの資金需要は、事業活動に必要な運転資金及び研究開発・設備投資に係る投資資金が主たる内容であります。運転資金需要の主たるものは、製品を製造するための材料仕入、製造経費、営業経費を含む販売費及び一般管理費によるものであります。一方、投資資金需要の主たるものは、研究開発に携わる従業員の人件費を中心とした研究開発投資及び事業拡大・生産性向上を目的とした設備投資によるものであります。
また、その他借入金等有利子負債の返済及び利息の支払いに資金の充当を行っております。
なお、当連結会計年度における設備投資の概要については、「第3 設備の状況 1設備投資等の概要」、重要な設備投資計画については、「第3 設備の状況 3設備の新設、除却等の計画」にそれぞれ記載しております。
b.資金調達と有利子負債
当社グループは、まず営業活動で獲得した資金を運転資金及び投資資金に充当することを基本とし、不足分は借入金等による資金調達を活用しております。
長期資金の調達については、事業計画に基づくキャッシュ・フローや金利動向、有利子負債の状況等を考慮のうえ、調達手段や調達規模等を適宜判断して実施しております。他方、有利子負債の圧縮のため財務規律を維持し、積極的な投資と財務の健全性の改善を両立させるべく取り組んでおります。
当連結会計年度においては金融機関からの借入により2,300,000千円を調達しております。
当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、2,195,026千円であり、流動比率は226.6%と前連結会計年度から改善し、また金融機関とは幅広く好関係を維持しており、資金需要に必要な流動性を十分に確保していると考えております。
なお、当連結会計年度末現在の有利子負債の状況は、以下のとおりです。
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1年以内 (千円) |
1年超 2年以内 (千円) |
2年超 3年以内 (千円) |
3年超 4年以内 (千円) |
4年超 5年以内 (千円) |
5年超 (千円) |
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短期借入金 |
400,943 |
- |
- |
- |
- |
- |
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長期借入金 |
1,401,750 |
1,099,254 |
951,011 |
581,182 |
296,687 |
- |
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リース債務 |
24,999 |
22,346 |
16,893 |
14,836 |
14,525 |
11,024 |
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合計 |
1,827,692 |
1,121,600 |
967,904 |
596,018 |
311,212 |
11,024 |
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、第5 経理の状況 1 連結財務諸表 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。
該当事項はありません。
当社グループは、水晶製品における革新的な研究開発を推進し、ユーザーの高度化する要求に応えるため、以下の取り組みを継続・拡充しています。本年度は特に、1GHz対応のサンプル出荷開始や新たな受賞実績など、複数の分野で新たな進展がありました。今後も、先端技術を活かした製品ラインアップの強化を図り、市場のニーズに対応するとともに、新市場開拓やイノベーション創出に寄与してまいります。
主な研究開発活動は次のとおりです。なお、当連結会計年度における研究開発費は、総額
水晶製品
(1)KoTカット水晶振動子 「KCR-04」
当社独自の「KoTカット」技術を基盤とするKCR-04は、高精度と低位相雑音を両立させ、水晶振動子市場に大きな革新をもたらしています。こうした革新的な技術とその成果がもたらすイノベーションが高く評価され、令和6年度の文部科学省ARIM(マテリアル先端リサーチインフラ)が主催する「秀でた利用成果」において最優秀賞を受賞しました。その評価をさらに高めるべく、現在は様々な顧客向けにサンプルを提出しており、実際の使用環境での検証が進められています。すでに台湾・米国・英国・日本で特許を取得しており、中国でも登録が見込まれることから、グローバル展開がいっそう期待されています。
(2)KoTカット水晶発振器 「KCRO-04」
KCR-04の技術を発展させたKCRO-04は、最大1GHzの基本波発振を実現しつつ、極めて低い位相ジッターを提供する水晶発振器として、ハイエンド通信や大規模コンピューティングの分野で注目を集めています。特に、次世代の高速通信規格として期待される1.6Tクラスの光トランシーバー用途に向け、他技術では実現が難しい625MHzの水晶基本波発振を提供できる点が大きな差別化要素となっています。専用ICを搭載し、従来品とは異なる革新的なアプローチでLVDSやLVPECL出力にも対応するなど、多彩なニーズに応えるべく開発を進めています。これらの用途向けに既にサンプル提出を行っており、顧客において具体的な評価が進んでいます。
(3)低電圧0.9Vから駆動する水晶発振器 「FCXO-07F」
低電圧0.9Vから駆動するFCXO-07Fは、進化を続ける微細プロセス技術の半導体に対応する水晶発振器として、高度な省電力設計を実現しています。近年、半導体の微細パターン化に伴い、受信側のICでは従来より低電圧化が進みつつあり、これにマッチした周波数ソースのニーズが高まっています。本製品は低電圧駆動専用に開発された回路構成となっており、低電圧領域において安定した発振精度を提供できるため、モバイル機器やIoTノードといったバッテリー駆動が中心の分野で特に優れた効果が期待されます。すでに複数の顧客へサンプル提供が行われ、接続試験や長期信頼性評価を通じて、さらなる低消費電力化と小型化が求められる市場への導入が進められています。
(4)クリスタルケースを用いた超小型ATカット水晶振動子
当社のウェハレベル真空パッケージ封止技術(MDS)と「クリスタルケース®」構造によって、従来のサイズを大幅に縮小し、世界最小のATカット水晶振動子を製品化しました。従来品『FCX-08』が1.2mm×1.0mm×0.3mmであるのに対し、この新たな超小型品では0.8mm×0.6mm×0.3mmという極小サイズを実現しています。体積や重量を大幅に削減しながらも高い信頼性を確保しているため、ウェアラブル端末や医療機器など省スペース化が求められる分野での活用が期待されています。
(5)200℃まで使用温度範囲を広げた水晶発振器 「GTXO-04」
オイル掘削などの極限環境下で用いるために開発されたGTXO-04は、200℃までの使用温度範囲をカバーできる点が最大の特長です。従来の水晶発振器では困難とされてきた高温下でも優れた安定動作を実現し、さらなる研究・実装が期待されています。すでに本製品は想定される使用環境での評価が終了しており、次のステージに進む段階です。
これらの製品はいずれも、サンプル段階から顧客評価が進んでおり、それぞれの特長を活かした応用の可能性が大きく広がっています。今後も当社は、高周波・高耐環境・超小型化など多彩な要素技術を結集し、新市場の開拓と顧客ニーズへの迅速な対応を進めることで、水晶分野におけるリーディングカンパニーとして輝きを増してまいります。