当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営の基本方針
当社グループでは、下記の4項目を経営ビジョンとして掲げ、経営の基本方針としております。
①独自技術を保有し、自社ブランド製品を世界に供給する「開発型企業」を目指します。
②顧客に満足いただける製品を素早く提供する小回りの利いた会社を目指します。
③市場に常に「新しさと違い」を提供するイノベーターを目指します。
④各人が持っている個性・能力を力一杯発揮できる企業風土を目指します。
(2)中長期的な経営方針及び経営指標
当社グループでは、今般の新型コロナウイルス感染症禍に伴う市場ニーズや顧客志向の変化を踏まえ、2020年12月に、2025年度をゴールとした新たな中長期成長戦略「Mimaki V10」を策定し、実行することといたしました。
①「Mimaki V10」基本ステートメント
ミマキならではの前工程・プリント/カット/コート・後工程の一貫システムや製品によるソリューション提供で、産業印刷のデジタルオンデマンド化をけん引する。
②「Mimaki V10」経営方針
売上高成長を追求するだけでなく、高い収益を継続的に生み出すとともに、財務基盤を強化して、持続可能な成長に向けた強靭な企業基盤を構築したうえで、2025年度までに営業利益率10%を達成する。
a. 収益性を重視し、2025年度までに営業利益率10%、経常利益率8%を達成する
b. 2020~2025年度の売上高平均成長率(CAGR)は、10%を目安とする
c. 環境変化への対応力を確保するために、キャッシュ・コンバージョン・サイクルの改善を通じて財務基盤を強化する
d. 製品開発でInnovationを起こし、顧客にとって価値のあるソリューションを提供し続ける
e. 「Mimaki V10」の達成に向け、ミマキグループが一丸となって取り組む組織風土を創り上げる
(3) 中長期成長戦略「Mimaki V10」重点施策
①製品戦略
a. FA事業を保有する優位性を最大活用し、SG、IP、TA市場におけるプリント工程の自動化を実現する、デジタルオンデマンド・プリントソリューションを提供する
b. SG(サイングラフィックス)市場
・従来主流の有機溶剤系インクから、環境負荷が低いUV硬化型インクへの転換が加速する機を捉え、競争優位を確保しているUV硬化型インクを生かした製品やソリューションの開発・販売活動を積極的に展開
・エントリー領域でのシェア拡大と、ミドル・プロダクション領域での収益確保
・UVプリンタ特許技術の活用による競争優位性強化
c. IP(インダストリアルプロダクツ)市場
・拡大するスマートファクトリーの流れを捉え、プリント/カット/コート工程の自動化による省人化・無人化を実現する製品やソリューションを提供
・グッズ・ノベルティプリント市場で大きなポジションを占めるパッド印刷を、インクジェットによるデジタル化で新たな成長市場として開拓
・UVプリンタ特許技術の活用による競争優位性強化
d. TA(テキスタイル・アパレル)市場
・コロナ禍により市場が店頭販売からEコマースにシフトし、生産者の需要が高速機から高付加価値機に変化する機会を捉えたソリューションの提供
・高速機は「Tiger600-1800TS」でポジションを維持しつつ、中・低速機のラインナップを強化し、デジタルオンデマンド需要に対応
e. 3Dプリンティング事業
・2017年に発売した1,000万色フルカラー「3DUJ-553」を皮切りに、2021年度より1,000万色フルカラーエントリーモデルを投入して需要を拡大
・3Dによる造形を容易にするためのソリューションの提供
②市場環境や顧客ニーズの急激な変化を見据えた事業展開
a. グローバル×デジタル
・デジタルプリントのIoTによるデジタルオンデマンド・プリントの推進と、中国市場の攻略
b. Eコマース×サブスクリプション
・新たなビジネスモデルで収益性を上げるとともに、Eコマースによる販売を展開
c. Innovationを起こし、新規市場・新規アプリケーションを開拓
・今までの開発計画を全面的に見直し、新しい市場向けのプライオリティを上げる
・開発サイクルの見直し(期間短縮)により、販売している製品の25%以上が3年以内に開発した製品とする
③ 収益性向上に向けた基盤構築
a. インクの品質改善
・インクの品質改善により、稼働するプリンタのダウンタイムを無くし、顧客の生産性向上に寄与するとともに、インク品質が起因の製品補修費を削減する具体的な取り組みとして、受入不良率の改善、工程内不良の削減、市場トラブルの早期対策を推進する
b. CX(コーポレート・トランスフォーメーション)
・2025年度営業利益率10%を目標とする
・2020年度は構造改革により固定費を圧縮し、事業体質を筋肉質化する
・これにより、2021年度は2019年度売上高の80%で利益が出る体制にする
・この基本的な固定費構造を維持しつつ、2025年度に向けて平均成長率(CAGR)10%を目安に売上高を伸ばし、営業利益率10%を達成する
・貸借対照表を重視した経営を進める
・デジタル化、省人化に取り組む
c. 生産体制の改革
・需要変動に応じた生産体制
・中国製と戦えるコスト力実現
・在庫管理を強化する
d. 営業体制の変革
・SFA(セールス・フォース・オートメーション)/CRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)を利用した営業分析を行い、ミニ展戦略につなげる
・バーチャルミニ展戦略を展開し、あらゆる地域の顧客を開拓
・新規顧客へ向けての販売チャネルを構築
・販売支援部隊の立ち上げ
・営業在庫のコントロール
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループでは、「Mimaki V10」の達成に向けて対処すべき課題は以下のとおりと認識して、取り組んでまいります。
①デジタルオンデマンド・プリントソリューションの提供
当社が開発型企業として持続的な成長を実現するためには、SDGsで定められた持続可能な開発目標への貢献という社会的な要請はもちろん、個々のお客様の困りごとやニーズに的確に対応する必要があります。また、コロナ禍を経て、市場のニーズや顧客の志向は急激に変化しています。加えて、Eコマースの浸透に伴い、消費者は好きなものを、好きな時に、好きなだけ利用する「オンデマンド」供給への要求が益々強まり、多様なニーズに対応できるビジネスモデルの構築が求められています。このような環境変化に的確に対応し、持続的な成長を果たすためには、当社グループが所有する競争優位性の高い独自技術を基盤とした製品、ソフトウエア、サービスの提供に加え、今後ますます進展するデジタルトランスフォーメーション(バリューチェーンを含めて新たな付加価値につながるデジタル化)を、中期的な観点から成長ドライバとして取り込んだうえで、産業用印刷市場におけるデジタルオンデマンド・プリントソリューションの提供を進めてまいります。具体的には、当社グループは、産業用印刷市場で必要とされる「プリントだけでなくその前・後工程の処理装置も含めた幅広い製品ラインナップ」と「充実した機能性インク」のほか、当市場を開拓する過程で蓄積してきた「問題解決のノウハウ提供力」を保有しています。とりわけ、当社のFA(ファクトリーオートメーション)事業では、プリント対象物の前処理/前加工や、プリント作業後の後処理/後加工に適した製品の開発・生産能力を有しています。このFA事業を自ら保有する優位性を最大限発揮するとともに、蓄積した有形・無形の資産を源泉とし、プリントに必要となる製品、ソフトウエア、ノウハウ等のご提供を通じて、お客様が制作する成果物の品質までをサポートする取り組みを進めています。また、プリント工程の自動化による省人化・無人化等のノウハウを安定して提供し、お客様の制作プロセスの変革支援につなげる提案を、積極的に行ってまいります。このように、産業印刷における前工程・プリント・後工程までの一貫システムによる、デジタルオンデマンド・プリントのトータルソリューションを提供するソリューションプロバイダーとしての役割を果たし、市場のニーズに的確に対応すべく、特に以下の2領域にフォーカスして取り組んでまいります。
a.デジタルプリントのIoT
5G(第5世代移動通信システム)の商用サービスが開始され、当社が手掛けているSG(サイングラフィックス)市場、IP(インダストリアルプロダクツ)市場、TA(テキスタイル・アパレル)市場等の産業用インクジェットプリンタ事業の可能性が、大きく広がります。これらの市場に向け、当社が保有するデジタルプリントの前処理装置、プリンタ、インク、カッティングプロッタ、後処理装置、ワークフローソフトまでを含めた幅広い製品ラインナップと、プリント成果物制作プロセスの構築ノウハウを基盤に、プリント工程の自動化による省人化・無人化といった、デジタルプリントのIoTを推進してまいります。
また、SG市場やIP市場で使用される機能性インクは、従来主流であった有機溶剤系インクから、環境負荷が低く生産性が高いUV硬化型インクへの転換が始まっており、同インクは向こう数年間で市場規模が大幅に増加すると見込まれています。当社は、UV硬化型インクの開発とそれを使用するインクジェットプリンタの開発にいち早く取り組むとともに、当社が保有するUVプリンタ特許技術の活用など、業界での競争優位性を確保しています。
今後は、これらの優位性を生かし、産業用印刷市場に対してデジタルプリントのIoTとUV硬化型インクを含めた高い生産性を実現するトータルソリューションを提供し、マーケットリーダーとしての地位を確実なものとしてまいります。
b.3Dプリント事業
IP領域における3Dプリントビジネスにおいては、2017年に発売したUV硬化インクジェット方式で1,000万色のフルカラー造形を世界で初めて実現した3DUJ-553を皮切りに、2021年にはその小型化を実現したエントリーモデル3DUJ-2207を発売する等、着実に製品ラインナップの拡大を進めてまいりました。今後も、お客様の多様なニーズにお応えする製品ラインナップのさらなる拡充に取り組むとともに、有力な3Dソフトウエアメーカー等を含めた幅広いパートナーシップ構築を進めフルカラーによる3D造形の市場成長を加速させるなど、多様な用途やアプリケーションの提案等に取り組み、3Dプリントを当社の次の事業の柱として育成してまいります。
②インク品質のさらなる向上
当社グループにおいて、競争力の源泉である機能性インクの品質安定・向上は最重要課題であります。そのため、機能性インクの開発・生産・検査工程の見直しに取り組んでまいります。具体的には、設計評価・サービス評価・営業評価における基準を明確化して評価項目を見直すとともに、製造現場においてもインクの材料単位での品質チェック強化などにより、製品品質を高めてまいります。また、市場での品質問題発生時の情報早期フィードバックや見える化により、迅速な対応を実現してまいります。加えて、これらの取り組みの前提として、不具合が発生した際の要因をより正確かつ迅速に把握し、的確な対策が実施できるよう、原材料の受け入れ段階、生産、出荷までの各時点での膨大な検査データを収集・蓄積し、適切に分析したうえで、生産工程から検査工程までの各段階での工程を改善するプロセスを、一層強化してまいります。以上の取り組みにより、インク品質のさらなる向上による競争力強化を図ってまいります。
③内部統制・コンプライアンスの徹底
企業の社会的責任として、内部統制及びコンプライアンスに徹底して取り組んでまいります。関係法令・規則の遵守はもとより、お客様の情報管理等に対するセキュリティーポリシーを確立し、役職員一人ひとりの高い倫理観の醸成、社会的良識を持った責任ある行動を目指して社内教育を行ってまいります。当社は、内部統制システムの整備・運用を推進し、独立した内部監査部門による定期的な内部監査により、業務監査及び財務報告の適正性を確保しています。また、各本部・部門単位で必要とされるコンプライアンス教育を、所属員を対象に年2回以上実施し、法令遵守に関する意識向上を図っています。さらに、1,000億企業としての新たなワークフロー、規定、マニュアルなどの作成をグローバルに推進することを目的に、2024年4月1日付でグローバル管理プロジェクトを設置し、本社及び全ての製造・販売子会社を対象として、内部統制・コンプライアンスの仕組み作りを進めてまいります。具体的には、グローバルでの貿易ルールの見直しに向けたHSコード(輸出入統計品目番号)の確認・運用や、購買発注ワークフローの見直し改定などに取り組み、複雑化する法規制に適切に対応するための仕組みや業務フローを整備してまいります。また、反社会的勢力との関係に対しては、断固とした対応で臨むことにより一切の関係を遮断し、コンプライアンスに則った経営を行ってまいります。
④生産・物流体制の改善
当社グループにおいて、グローバルなお客様が求める商品・サービスを最適なタイミングで効率的にご提供するとともに、地政学的リスクの顕在化等の影響による船舶及び陸上での輸送リードタイムの長期化や、物流コストの上昇への適切な対応により、売上、利益、キャッシュ・フローの最大化を図ることは重要な経営課題です。そのために、グローバルでの需要変動に柔軟に対応できるよう、販売、物流、生産・調達などの各機能を密接に連携させ、週次での生産管理を実現する体制整備に加え、製品ごとに最適な生産地で生産して効率的かつ機動的な物流・在庫マネジメントを実現する体制の構築を進めてまいります。また、グローバルでの在庫マネジメント再構築への取り組みとして、エリア在庫の効率化を目的としたNRI(Non-Resident Inventory)倉庫の設置も進めており、既に稼働しているオランダに続き2022年9月にはマレーシアにも設置して機動的な在庫マネジメントの確立につなげ、機会損失の最小化とコスト競争力の確保及び適正在庫の実現に取り組んでまいります。さらに、2022年4月に長野県上田市に新たに設置した丸子工場に加え、2024年5月には主力の本社・加沢工場に隣接する土地を取得しました。これらを活用し、本社・加沢工場における産業用インクジェットプリンタ本体の生産スペース不足を解消し、エントリーモデルからハイエンドモデルまでの多岐に渡る生産能力を増強し、今後の事業拡大に対応してまいります。
⑤研究・開発体制の強化
当社グループは、コロナ禍を経て顕在化した市場ニーズや顧客志向の変化を見据え、製品開発でイノベーションを起こし、新規市場・新規アプリケーションの開拓に取り組んでまいります。具体的には、今までの開発計画を全面的に見直し、新しい市場向けのプライオリティを上げる取り組みとして、販売している製品の25%以上が3年以内に開発した製品とすることや、効率的な研究・開発体制のもとで優れた製品をタイムリーに市場投入するため、要求機能に対し、あらかじめ準備された製品・ユニット・部品・技術情報より適切なものを選び、組合せにより新しい製品を開発するモジュール開発により売上高の拡大と同時にSKU=在庫の削減につなげること等に取り組んでいます。また、基盤となる製品プラットフォームを横展開して、短期間で効率的に新製品を投入する開発プロセスを確立し、開発サイクルの短縮化を進めています。これらの活動の結果、2022年3月期から2024年3月期にかけての二年間で合計19機種の新製品を発表し市場投入するなど、既に具体的な成果に繋がっていますので、今後もこの取り組みの一層の強化・充実を図ることにより、「新しさと違い」を出せる製品の市場投入を進めてまいります。
⑥CX(コーポレート・トランスフォーメーション)
当社グループは「Mimaki V10」で定めた目標を達成するために、会社の構造そのものの変革に取り組んでまいります。具体的には、固定費の圧縮と事業体質の筋肉質化に向け、固定費の投入を押さえつつ、生成AIやローコードツール等を導入して仕事の棚卸と自動化・AI化を進めてまいります。また、資金効率を向上させ財務体質を強化するとともに、フリーキャッシュ・フローの最大化を目的としたCCCの短縮活動にも取り組んでまいります。具体的には、全社在庫管理プロジェクト活動により、サプライチェーン全体の在庫適正化を進め、特に滞留在庫・不動在庫の一掃を図るとともに、リードタイムを考慮した適正在庫水準のルール作りと、適正水準を維持する在庫マネジメントを確立し、CCCの短縮を進めてまいります。さらには、グローバルマネジメント体制の強化が重要課題であると認識し、子会社管理の強化、基幹システムや会計システム、人事制度等のグローバルな見直しとともに、業務の標準化やルールの明確化等を含めた管理強化に取り組んでまいります。加えて、為替リスクの低減に向けた施策にも取り組んでまいります。
⑦営業体制の変革
当社グループはグローバルなお客様の多様なニーズにお応えするため、国内営業拠点及び海外販売子会社において、個々の地域特性に合致した販売戦略のもとで、新規ユーザーの開拓、製品の用途提案、製品導入後のアフターフォローや迅速な保守サービスの提供等、地域密着型の営業活動を推進し、顧客満足度の向上に努めてまいります。また、従来取り組んできたリアルな場でのミニ展示会によるチャネル・顧客との商談に加え、顧客接点の変化に対応するために取り組んだWebを通じたバーチャルミニ展の展開により、お客様へのご提案や商談などを効率的・効果的に行う営業活動を継続して実施してまいります。加えて、インサイドセールス機能の強化を通じ、SFAやCRMを活用した営業分析により既存・見込客への営業活動状況を記録・管理して顧客接点を拡大するとともに、顧客からの引き合いプロセスの管理により着実に成約に繋げる活動など、ITの進化を活用した営業活動のオンライン化にも、積極的に取り組んでまいります。また、顧客へ向けての販売チャネルにつきましても、従来のSG市場向け主体のチャネルの強化・拡大による№1シェアの獲得・維持に加え、新規のチャネルとしてIP市場、3D市場、プロダクション機、エントリーモデル、カッティングプロッタにおいて、それぞれの領域での販売拡大に適したチャネルの開拓・構築を進めるとともに、自動化・省人化ソリューションの提供に向けたパートナーシップ構築により、産業用印刷のデジタル化提案を一層強化してまいります。なお、2023年6月にはベトナムに販売子会社を設立し、近年急速な経済成長を遂げている同国での販売ネットワーク強化やユーザーサポートを充実させ、当社製品の販売拡大と顧客満足度の向上を図ってまいります。国内でも、2023年7月に沖縄営業所を全国17番目の営業所として開設し、北海道から沖縄までに渡る地域密着の顧客サポート体制を構築しました。
⑧リスクマネジメントへの取組み
近年の事業環境下では、想定を上回る規模の自然災害や新型コロナウイルスに代表される感染症の発生等に加え、ロシア・ウクライナ問題や米中対立に代表される地政学的なリスクの顕在化により、事業継続計画(BCP)の重要性が増しています。大規模な自然災害が発生した場合でも、被害を最小限にとどめ、復旧までの時間を最小限におさえて業務を継続できるよう、業務インフラ、緊急時連絡体制、本社屋をはじめとする各設備の防災対策等について見直し・強化を行ってまいります。また、新型コロナウイルス感染症のようなパンデミックの発生に際しては社会全体での取り組みが必要となりますが、当社グループとしても、役職員を始め地域やステークホルダーの皆様の安全確保と感染症拡大抑止を最優先に、適切な対策を検討・実施してまいります。さらに、地政学的なリスクの顕在化に伴う需要の低迷や部品・原材料等の調達難とコスト上昇、生産の遅延や輸送の混乱によるリードタイムの長期化とコスト上昇等のサプライチェーン全体に係る諸課題に対しても、適切なリスク評価に基づき最適な対策を検討・実施してまいります。
⑨知的財産戦略の強化
自社ブランド製品を開発・製造・販売する開発型企業である当社にとって、知的財産戦略は競争力を確保し、独自性を守り、持続的な成長を実現するために重要かつ欠くことのできない要素です。とりわけ、自社の知的財産を適切に保護するために、特許、商標等の権利の適切な登録・保護手続きを行い、他社による模倣や侵害から自社製品やブランドを守る必要があります。当社では、技術本部に知的財産部を置いて知的財産権の登録・保護活動を進めておりますが、今後当社の市場での競争力を一段と強化するために、製品の企画・開発から量産に至る各段階において多くの権利を出願・登録できるように知的財産権権利化プロセスを変革し、持続的な成長の実現に取り組んでまいります。
⑩SDGsへの取組み
2015年9月に「国連持続可能な開発サミット」において、人間及び地球の繁栄のための行動計画として「持続可能な開発目標:SDGs(Sustainable Development Goals)」が掲げられました。当社グループもこの目標に賛同し、さまざまな社会問題に真摯に向き合うとともに、事業を通じて社会や環境に良い影響をもたらすことで、持続可能な社会づくりに貢献してまいります。
特に、気候変動などの地球環境問題への対応も重要な経営課題として捉え、とりわけ産業印刷市場においては環境や資源への負荷の高い従来のアナログ印刷主体の産業構造から、デジタル化によるオンデマンドプリントに転換させることにより環境負荷を大幅に低減できることから、今後の製品開発を含む事業活動において環境に配慮した製品展開を推進するなど、積極的に取り組んでまいります。
とりわけ、当社の重要な販売市場であるテキスタイル・アパレル市場では、従来からのアナログ方式による素材や商品の生産・捺染に始まり、輸送、在庫、販売、利用、廃棄・焼却という長いサプライチェーンの過程から大量のCO2が排出され、また素材生地の生産・捺染工程においては大量の水資源が使用されています。さらに、使用された商品だけでなく未使用の商品も含め、全生産量の70%以上が廃棄・焼却処分され、リサイクル・リユース率は合わせても僅か15%程度とも言われています。このように、同市場は地球環境への負荷が最も高い産業の一つとされており、世界的に対処すべき重要な問題と認識されています。当社ではこの問題に対処するため、インクジェット技術でのデジタルオンデマンド捺染による「サステナブル・プリントソリューション」を提供しています。これにより、現在のアナログ捺染の問題点をデジタル捺染で解決し、サステナブルな社会の実現に向けた取り組みを加速してまいります。具体的には、テキスタイル・アパレル市場において一番普及しているポリエステル生地だけでなく、綿や麻、絹、羊毛などの様々な種類の生地にデジタルプリントと転写だけで完了するシンプルな捺染工程を実現し、専門技術や知識が無くても簡単にオペレーションが可能で、かつ従来のデジタル捺染プリント方式と比べても排水の約90%を削減し、安いコストで導入が可能な、環境にも人にも経済的にも優しい次世代捺染システム「TRAPIS(トラピス)」を、2024年3月に発表しました。当社では、今後このソリューションを世界的に普及させることにより、サステナブルなテキスタイル・アパレル産業の実現を目指して取り組んでまいります。
社会課題の面においては、地元・長野県の障がい者福祉や雇用創出への貢献に積極的に取り組みました。また、印刷工程の自動化・省人化による人手不足へのソリューション提案等、当社ならではの価値を提供しています。CO2排出量削減については、2050年カーボンニュートラルという政府指針も踏まえ、国内の当社グループ主要事業所に続き、一部の欧州拠点においても、CO2フリー電力を導入しました。今後もバリューチェーンを意識した省エネ・省資源の徹底や、地域社会や従業員を含むステークホルダーへの貢献等を通じて、持続可能な社会の実現に向けて取り組んでまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)サステナビリティに関する考え方
当社グループにおいては、経営方針に則り、持続可能な社会への貢献を目指しております。これにあたり、主に①環境負荷の削減、②ステークホルダーへの還元、③実効性の高いガバナンスの観点で、サステナビリティに関する取組を実施しております。これらの取組の多くは、製品やサービスの提供を通じて「第2 事業の状況 1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載した(1)経営の基本方針を実践することを意味します。また、それ以外の多くの取組は、活動の足場となる企業風土を形成・強化するものであります。この風土があってこそ、地域社会やサプライヤーの協力のもと、役職員による経営方針の実現、すなわち事業活動を長く存続することができると考えております。サステナビリティ取組を通じた経営方針の実現サイクルを通じて当社グループが成長することで、すべてのステークホルダーに対する還元が可能になります。
① 環境負荷の削減
本領域においては「無駄を減らす技術・運営・ものづくり」がキーワードであります。
技術面では、サステナブルな特長を持つ主力製品の普及と、資源節約・循環に資する新技術の提案を通じて、お客様へ価値を提供しております。主力製品のインクジェットプリンタで行うデジタル・オンデマンドプリントでは、印刷工程のリードタイムを短縮できます。つまり必要な時(ジャストインタイム)に必要な分だけを印刷・生産でき、過剰在庫や廃棄物の削減に貢献します。また印刷箇所にのみインクを吐出するため、インクや水の大量消費も回避できる等、従来のアナログ印刷と比べてサステナブルな特長を有していると言えます。加えて、当期に発表した2つの新技術(後述)は、環境負荷の大きなTA産業に問題解決の糸口を与えるものであります。売上の多くを占めるインクジェットプリンタと、経営ビジョンのとおり「新しさと違いを提供する」新技術・製品を世に送り出す行為こそ、メーカーとしてミマキが注力する「技術力による環境負荷削減への貢献」であります。
そのような技術の開発や普及促進に加え、国内拠点への省資源設備導入、国内外の拠点におけるCO2フリー電力(再生エネルギー由来の電力)導入により、CO2排出量を削減し、一般管理の面でも環境負荷削減を推進しております。
同時に製品包装等に使われる資源についても、対応可能な製品から順次、その使用量の削減や、CO2排出量が比較的少なく安価な素材への変更に取り組んでおります。後述の気候変動対応にあたり分析を行うなかで、中・長期的に製品コストに直接関係するリスクの発生が予想されました。運営における省エネ促進に加え、設計・調達・生産・出荷過程で無駄を極力減らすことで、環境対応を通じたリスクヘッジを目指します。
開発型企業として、独自性の高い取組でお客様先の環境負荷削減に貢献し、またメーカーとして、世界に向けたものづくりから流通・納品までの過程における環境への影響を顧みて、無駄を排除する改善活動に活かしております。その他、環境負荷の削減と事業活動の継続・良化を両立できる取組を積極的に採用し、足元の省エネ・省資源の徹底と再エネ利用を推進してまいります。
<当期に発表した2つの新技術:「ネオクロマトプロセス」と「TRAPIS」>
「ネオクロマトプロセス」は、ポリエステル製の布地から昇華染料インクを脱色する技術であります。使い捨てになりがちな布製の宣伝物(のぼり旗や横断幕)や廃棄割合の高い衣料品について、繰り返しの使用を可能にすべく開発を行っております。この技術を通じて、ポリエステルの再生利用ではなく、脱色した生地に新たな図柄を印刷して何度でも使うことができる、アップサイクル(創造的再利用)の実現を目指しております。現在進めている、工程自動化に向けた開発が完了して広く普及すれば、原料となる石油資源の使用量及び工業廃水の削減に貢献できると考えております。
次に、捺染顔料転写システム「TRAPIS」も、これまでの常識を覆すサステナブルな印刷システムであります。大量の水を消費し、大規模設備が必要で、工程が多く難しいというアナログ捺染の課題解決に貢献します。その上、1種類のインクで様々な布地に簡単に捺染ができる、環境と人にやさしい技術であります。つまり水をほとんど使わず、大規模なスペースも要らず、印刷と転写の2工程で布地へプリントができます。さらに、TRAPIS用の捺染顔料インクはZDHC MRSL Lv.3*に適合しており、作業者と消費者の安全性及び環境に配慮された製品であります(*オランダに本部を置くZDHCは、繊維・皮革産業において有害物質の排出をゼロにする活動を行う非営利団体。MRSL、すなわち「製造時制限物質リスト」を設定しており、適合レベル1~3のうち、Level 3が最高レベル)。
これらは、当社グループが重要視する「新しさと違い」という付加価値を体現する技術であります。イノベーターとして、このような独自性の高い技術・製品の開発により、サステナビリティ領域における当社グループの価値を発揮したいと考えております。
② 人的資本関連取組を含むステークホルダーへの還元
創業以来、長野県に本社を構える地元企業として、また2,000名を超える人員を擁し、グローバルビジネスを展開する企業の責任として、ステークホルダーへの価値提供に注力しております。
具体的には、地域社会の存続・発展や、社会課題の解決に、継続的に貢献してまいります。周辺地域を事業基盤の一部として捉え、連携を深めて関係を構築・維持いたします。また、地域事業や次世代人財育成を支援し、雇用の創出にも努めております。同時に、自社製品の活用方法として印刷工程の省人化を可能にするシステムの販売なども手がけております。当社グループが事業を展開している産業領域における人手不足という社会課題に対し、印刷のみならずその前後工程まで含めた改善提案を通じて、解決策を提示しております。
社内の取組としては、管理本部主導による各種施策を通じて従業員エンゲージメントの向上を目指し、研修やリスキリングプログラム等を通じた従業員のスキルアップ、業務スキル習得を支援しております。また、社員代表による「厚生委員会」の活動支援を通じて、会社と従業員、従業員同士の関係構築促進や、ワークライフバランスの充実を図ります。
一方で社外のステークホルダーに対しては、主に当社グループの事業や戦略についての支持を得られるよう尽力しております。産業用製品に主軸を置く当社グループのビジネスモデルや製品の優位性を、投資家の皆様にわかりやすく直接説明する機会を設けております。また、業績の成長に見合った成果を安定的かつ継続的に株主の皆様に還元することを、経営の重要政策と位置付けております。
③ 適正な事業活動の実施・維持を可能にするガバナンス
当社グループでは、世界約150カ国へ製品やサービスを届け、ステークホルダーとの良好な関係を構築・維持するため、法令を遵守し、各国の法規制動向を注視した事業活動を行っております。当期は、既存の運営体制や各種契約におけるリスク管理の再徹底を含めたコンプライアンス遵守や、適正な業務フローの実行とその運用チェックなど、管理体制の抜本的な見直しを行いました。
不安定で変化の激しい昨今の情勢下、より一層、事業の持続可能性が重要視されております。実効性の高いガバナンスは、ステークホルダーへの価値提供の継続において不可欠であるとの意識のもと、今後も一層の体制強化を図ってまいります。
(2)サステナビリティに関する取組
① ガバナンス
ここでは、当社グループのサステナビリティ関連のリスクや機会に対して、どのようなガバナンス体制を敷き、経営陣や会議体がどのように関与しているかを説明いたします。当社グループ全体の事業活動を対象とした企業統治の詳細については、
サステナビリティ関連のリスクや機会に応じた取組においては、SDGs推進室が主幹として各本部の対応を統括し、毎月SDGs推進会議を開催しております。
この会議にはSDGs推進室のほか、代表取締役社長、専務取締役、常務取締役ならびに、一部の取締役・執行役員を含む全本部の責任者が出席し、全社的な推進体制を敷いております。取組の本格化のため、2022年4月のSDGs推進室設置と同時に発足させました。
これまで各部門が別個・独自に推し進めてきた活動の全容を統括し、部門横断的な課題にも柔軟なアプローチを行う、あるいはESG領域以外の課題との優先順位を整理するなど、効率的な取組推進を見据えた議論、タイムリーな報告、迅速な判断を行う場としての役割を担います。毎月の会議においては、各本部のESG業務計画の進捗報告のほか、当社グループとして認識・開示するESG領域の課題や目標等、審議事項についての議論・合意形成も行われます。また、本部長自らが参加することで、当社グループにおけるESG課題の重要性の認識、意識の向上にも貢献しております。
その他の会議体に関しては、四半期に一度、全社の責任者が出席するQレビュー会議にてSDGs推進室が全体的な取組状況を報告し、財務・経営に大きな影響のある事案については適宜、経営会議でもSDGs推進室や人事部・総務部など当該案件を取り扱う部門より報告・議論を行い、取締役会でも管掌役員より報告を行います。
また、そのような事案は監査等委員会の議論にも上がり、必要に応じて取締役会への意見提起も行われました。あわせて当期は、SDGs推進室より監査等委員会へ、当社グループのESG領域取組状況を報告いたしました。
② 戦略
前述の(1)サステナビリティに関する考え方にあるとおり、環境負荷の削減、ステークホルダーへの還元、実効性の高いガバナンスの3項目に基づき対応を行うことで、全社的なサステナビリティの向上を図り、取組を通じた経営方針の実現を目指します。取組の内容につきましては、次のとおりであります。
a. 当期の取組一覧
当社グループにおいては、領域により濃淡はあるものの、網羅すべきサステナビリティ領域に広く意識を向けて活動や制度を導入・継続しております。ここでは当期、新たに着手または実施した取組を抜粋して記載いたします。なお、これまでの取組全般に関しては、当社ウェブサイトの「サステナビリティ」ページ(https://ir.mimaki.com/about/sustainability/)で開示している、
b. 当期の取組の優先順位と今後の展望
当社グループの経営方針におけるサステナビリティの位置づけの明確化と、経営におけるサステナビリティ分野のマテリアリティー特定が必要である一方、足元の状況としては、さらなる企業成長に備えてガバナンス体制の強化と、当社グループに影響し得る規制等の対応準備を優先すべきとの判断の元、当期の取組を推進してまいりました。当社グループの欧州子会社であるMimaki Europe B.V.は、EUの企業サステナビリティ報告指令(以下CSRD)に則ったサステナビリティ開示義務の対象となる見込みであり、対応の本格化を見据えて準備を進めております。
今後は特に、全社的なマテリアリティー特定と方針の決定を通じて、統合的なサステナビリティ向上の継続・加速と、規制対応を漏れなく行うことを目指しております。
③ リスク管理
様々なリスクに対処するにあたり、当社グループにおいては、必要なアクションを迅速に認識・実行することを目的として、対応を行う各部門より経営陣と各責任者へ定期的に報告を行っております。これにより情報を遅滞なく浸透させ、重要度に応じて取締役会も含めた的確な判断を行える体制を敷いております。
まず当社グループの全般的なリスク管理は、管理本部が統括し、その体制を含めて社長の直轄部署である監査室が内部監査を行っております。
サステナビリティ関連リスクは、主に製品開発や生産他、業務執行における課題の解決が、当社グループの事業の持続可能性にも資するという観点で各部門が個々に抽出します。それらを業務計画に織り込んで対応し、包括的な識別・評価・管理プロセスは、前期よりSDGs推進会議が担っております。
気候関連リスクは、管理本部内の総務部及びSDGs推進室を中心に対応を行い、月次のSDGs推進会議を通じて進捗管理を行います。また中長期的な財務的リスク・機会に関しては、前下期のTCFDプロジェクト活動において、識別・評価を行いました。当期のTCFD関連取組については、(3)で詳述いたします。
人的資本関連リスクは、管理本部内の人事部を中心に対応を行い、月次のSDGs推進会議を通じて進捗管理を行っております。採用計画、人事制度や研修プログラム等、全社に係わる案件を含むことから、経営会議や取締役会においても報告を行っております。詳細は、
SDGs推進会議では、期初に設定した目標値に向けて、関連部署との定期的な情報共有・更新を兼ねて取組の進捗と課題を報告し、適宜方向修正を行います。
同時に、推進会議から独立した取組として、当期は各本部におけるガバナンス体制の強化、リスク管理手続の再整備を行いました。具体的には各種の規程、契約内容、業務フローの見直しに加えて、業務フローの運用もチェックいたしました。また今後の企業成長に備え、リスクの予防とさらなる管理体制の整備が肝要と考え、その対応を行うためのプロジェクトの新設準備を行いました。(2024年4月1日付で発令・正式に活動を開始)
以下は、上記のリスク管理についてまとめた表であります。
④ 指標及び目標
当社グループ全体としてのマテリアリティー特定は今後実施する予定であり、したがって当社グループにとって重要なサステナビリティ領域の指標も、マテリアリティーの観点での選定はこれから行うものであります。現在のESG取組計画内でKPIとして用いる指標は、現時点の各部門の業務において、「製品品質の維持・向上」や「コストの維持・削減」、あるいは「本来の業務の継続・改善」と両立できる「前述の3つの観点に沿ったサステナビリティ取組」の進度を測るため、という視点で選定しております。
現在、気候変動関連分野において開示可能な指標と目標は、CO2排出量であります。
人的資本関連の指標と目標については、
それ以外の指標と目標については、マテリアリティー特定後に選定・設定の上、開示いたします。
a. Scope 1・2 連結ベース(2016~2022年度)
2021年度より国内主要拠点において、CO2フリー電力への切替えを実施し、Scope 2の大幅な削減に成功いたしました。一部の賃借物件では未実現であります。
当下期中より、欧州4拠点(MIMAKI EUROPE B.V., Mimaki La Meccanica S.R.L., Mimaki Lithuania, UAB, MIMAKI EURASIA DIJITAL BASKI TEKNOLOJILERI PAZARLAMA VE TICARET LIMITED SIRKETI)においてもCO2フリー電力の導入を開始いたしました。
上記以外の海外拠点についても、再生エネルギー由来の電力メニューが提供されている地域においては、今後の切替えを検討いたします。
*「CO2排出量 / 連結」グラフには、次の連結子会社の数値が含まれておりません:㈱楽日、㈱マイクロテック
今後、データを収集し条件を揃えて算定を検討いたします。
*排出量の数値は、算定範囲や算定に使用するCO2排出係数等により、後に変更となる可能性があります。
b. Scope 1~3 単体ベース(2022年度)
当期に集計を完了した2022年度のCO2排出量と、主なScope 3排出削減施策は次の表のとおりであります。
なおScope 3排出量は独自のシナリオに基づいて算定しており、前提条件の変更等により数値が変動する可能性があります。
連結ベースのScope 3は、2024年度以降の集計・開示を目指しております。
*Scope 3 試算困難との表記について
合理的な根拠数値の算出と、それによる精緻な排出量の算定が困難なカテゴリは、今回の算定結果より除外しております。
c. CO2排出削減目標
Scope 1, 2排出量について、直近の年度で最大の排出量であった2019年度と比較し、2026年度に60%、2030年度に61%の削減目標を設定いたしました。なお、この目標は当期より国内外に毎年営業拠点1箇所ずつを新設する想定の元に設定しており、企業成長を続けながらも排出量の抑制・削減に努める意向であります。
次の表に、目標と前提条件、主な削減施策をまとめました。
(3)気候変動への対応(TCFD提言への取組)
当社グループは、気候変動問題が事業にもたらす影響を重要視し、TCFD -気候関連財務情報開示タスクフォース-の提言に基づく情報開示を進めてまいります。
① ガバナンス
② 戦略
全社横断体制で気候変動に関する議論を深める必要性から、前下期は全本部より選出したメンバーによる「TCFDプロジェクト」を実施いたしました。全社的な視点で気候変動関連課題の分析、財務的影響の算定等を実施し、多角的に当社グループの状況を把握したことで、中・長期的に取り組むべき課題が明確になりました。
具体的には下記の手順で、事業に影響を及ぼす可能性のあるリスク・機会特定と財務的影響の算定、対応策の検討を行いました。引き続き2で特定した内容への対応を継続し、新たなリスク・機会に関する対応策の検討を行ってまいります。
■手順
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1 |
前提条件の設定 |
分析対象範囲(地域、事業)、時間軸の設定 |
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2 |
リスク・機会の特定 |
TCFD提言で挙げられている、低炭素経済への移行に伴う4分野のリスクと、気候変動の物理的影響に関連した2分野のリスク、そして気候変動への適応・緩和策に関する5分野の機会から事業継続において想定される影響を特定。「影響を受ける可能性」と「影響の大きさ」を点数化し、事業インパクトの大きいリスク・機会を抽出し、重要度を評価 |
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3 |
シナリオ分析 |
2で特定したリスク・機会のうち、影響度が高いと推定されるものについて 2℃以下・2℃以上の各シナリオにおける当社グループ事業への財務的影響を算定 |
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4 |
対応策の検討 |
3の結果、事業インパクトの大きいリスク・機会について対応策や方針を検討 |
■移行リスク・物理リスク、機会
*出典:TCFD「最終報告書 気候関連財務情報開示タスクフォースによる提言(2017年6月)」
■採用シナリオ
分析には、移行リスクの面で国際エネルギー機関(IEA)によるSTEPSならびにSDSシナリオ、物理リスクの面で気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によるRCP8.5及び2.6シナリオ*1を採用いたしました。

*1 RCP8.5及び2.6シナリオ:IPCC 第5次報告書の気候モデル予測で用いられる、温室効果ガスの代表的な濃度の仮定(シナリオ)
*2 GHG:温室効果ガス
出典:環境省「IPCC第5次評価報告書の概要 -第1作作業部会(自然科学的根拠)- (2014年12月版)」
IPCC「第5次評価報告書」のRCP8.5シナリオ、RCP2.6シナリオ
IEA「世界エネルギー見通し2021年版(WEO-2021)」のSDSシナリオ、STEPSシナリオ
■シナリオ分析の結果
■気候変動関連リスクと機会に関する特筆すべき当期の取組
上記の表のうち、移行リスクに関して、新たに「CSRDへの対応」に関連するリスクを認識しております。また、機会である「低炭素製品・サービスの開発・拡大」に向けた活動を活発化させました。
a. CSRDについて
同指令の対象に当社グループの欧州子会社であるMimaki Europe B.V.が該当する見込みであるため、今後は同指令に即したサステナビリティ開示の準備・対応を行います。同指令は広範なトピックを網羅しており、そのひとつである気候変動は当社グループの事業活動に影響を与えると考えております。また、将来的には連結単位でCSRD対応が求められる見込みであることもふまえ、当社グループが気候変動関連開示を含む適切なCSRD開示対応を取れない場合には、法令遵守の不履行やレピュテーション低下の恐れがあると考えます。
これらのリスクの低減につながる、CSRD対応に伴う財務的影響は小~中程度と見込んでおり、時間軸については現状、短期の案件となることを想定しております。当期はそのため、情報収集と社内体制の整備を開始いたしました。対応の本格化を見据え、引き続き準備を進めてまいります。
b. 低炭素製品・サービスの開発・拡大について
当期は特に、ネオクロマトプロセス及びTRAPISという、TA市場に革新をもたらしうる新技術を発表し、国内外の展示会等で訴求を行いました。同技術の概要については、(2)サステナビリティに関する考え方①環境負荷の削減をご参照ください。今後も、脱炭素や水資源の保護等、気候変動対応分野において、メーカーである当社の製品が果たせる役割をアピールしてまいります。
■レジリエンスの向上
シナリオ分析の結果、今後の大きな気候変動関連リスクとしてコストの上昇(レピュテーション低下による人財不足対応を含む)、異常気象による調達難、そして機会としてはデジタル・オンデマンド印刷需要の増加が挙がりました。
具体的には、炭素税の導入やそれに伴う材料・エネルギーの価格高騰など、製品コストにかかわるリスクの発生が予想されました。対策として、製品梱包等におけるコスト削減及び資源利用量の削減を、以前より継続しております。あわせて、気候変動の影響に限らず昨今のコスト上昇に対応すべく、販売価格を適切に見直しております。今後も、取り得る選択肢を柔軟に検討してコスト上昇リスクに対処してまいります。
加えて、調達難を含む想定外の事態の影響を、最小限に留めるために備えていきます。当期は主に、総務部の取組の一環として、緊急時の基本的対応に用いる安否確認システムの導入徹底を行ってきました。また、各工場間における生産品目の移管等も適宜行っております。
レピュテーションリスク低減のためにも、ESG課題に対して当社グループの技術や取組がもたらす具体的な効果等の情報開示の充足が必要です。ポスト・コロナと呼べる当期、展示会やイベントの機会も増え、露出を増やせるようになりました。今後も、社内外に当社グループの気候変動対応への姿勢を発信していきます。
最後に、気候変動対応の緊急性が叫ばれる今、当社グループの強みであるインクジェットプリンタと関連技術がもたらす価値は向上し続けると推測しております。少量多品種生産のニーズに応えるこの製品・技術は、大量生産による過剰在庫や廃棄物の削減に資するものであります。この技術・製品の普及により、当社グループはお客様先のビジネスの支援と同時に、環境負荷の削減、管理面の負担軽減をもサポートしております。
お客様の持続可能なデジタル・プリンティングビジネスを支え、各本部によるリスクの低減・緩和、機会の最大化を通じて統合的なサステナビリティ向上を目指すことが、全社的なレジリエンス強化に繋がると考えております。
■CO2排出量の削減計画
当該項目については、
③ リスク管理
当社グループでは前下期、全本部より選出されたメンバーからなるプロジェクトチームにおいて、気候関連のリスク・機会を識別・評価いたしました。当該内容は、代表取締役社長をはじめとする社内取締役・一部執行役員と各本部責任者で組織するSDGs推進会議へ報告いたしました。以降もリスクの発生時には関係部門にて認識の上、全社的な影響の大きい場合は適宜、SDGs推進会議のほかQレビュー会議ならびに取締役会への報告により管理し、内容によっては監査等委員会においても議論の対象となりました。
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リスクの抽出 |
評価・分析 |
対策・管理 |
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TCFD最終提言ほか各機関の提言・発表等を参考に、マシン本体を取り扱う国内拠点を対象として気候変動関連リスクを抽出。 |
抽出したリスク・機会がもたらしうる事業への影響を点数評価しシナリオ毎に想定されるインパクトを分析。 そのなかで、影響度が大きいと推定される項目の財務的影響を算定。 |
財務的影響を算定した項目におけるリスク軽減ならびに機会増大のための対応策を検討。 SDGs推進会議ならびに取締役会へ適宜報告し、対応策の承認を得て実際のリスクマネジメントやBCP策定に活用する。目標と達成計画の策定後、経営計画に反映し毎月のSDGs推進会議でPDCAサイクルを回す。 |
④ 指標及び目標
CO2排出量については
(4)人的資本関連の取組
(基本的な考え方)
経営ビジョンに「開発型企業」「イノベーター」をありたい姿として掲げる当社にとって、多様な価値観を有する「人財」こそ最大の経営資源であり、製品開発・製造・販売の根幹であると認識し、中核人財の確保を積極的に推進しています。併せて、ダイバーシティの推進、特に女性活躍推進やジェンダーギャップの解消、働き方改革の推進や働きやすい環境づくり、管理職を含めた意識改革などを進めています。また、教育体系の充実を図り、各人の能力を最大限発揮できる企業風土の醸成に取り組んでいます。
① ガバナンス
人的資本の諸課題に対応するため、本社組織の再編成を行い、2024年度からグローバル人財総務本部を設置しています。月次の経営会議等で、採用計画や人員計画の進捗状況の確認を行うとともに、人的資本経営に関する重要事項については、担当役員から取締役会へ適宜報告を行い、必要情報の共有を行っています。
また、こうした企業風土の醸成には、社員と経営との情報共有や意見交換等の対話が不可欠であり、社員代表と経営層で構成される「社員経営者協議会」を毎月開催して、社員の要望や意見の確認、施策の状況説明等を継続しています。
② 戦略
(中核人財の確保)
「開発型企業」「イノベーター」を目指すために、中核となる人財の育成・確保は重要な経営課題です。経営層も候補人財へのアプローチや選考に深く関わることで採用態勢が強化され、必要人財の確保は進んでいます。
・職種に応じた適材適所の考え方を基本に、人財の多様性を考慮しつつ、採用活動を積極的に進めています。具体的には、キャリア採用は製品開発力の強化、営業戦力の強化、管理態勢の強化に向けた「即戦力」を、新卒採用は中長期的視点から開発・営業の中核を担える「将来戦力」を確保します。
・処遇や評価の納得性を高め、組織の活性化を図るために、人事制度の見直しを進めるとともに、持続的な賃上げに取り組み、成果に応じた処遇、やりがいのある職場環境をつくります。また、外部教育機関との提携による専門教育の充実、職場環境の改善に取り組み、中核人財の確保・定着を進めます。
(多様性の確保)
多様な人財が活躍できる環境を整え、「各人が持っている個性・能力を力一杯発揮できる企業風土」の実現を目指して取り組みます。
・女性活躍推進:女性管理職比率は、会社組織の拡大もあり2019年度4.1%から2022年度2.3%へ低下していましたが、2023年度は2.8%に改善しました。女性管理職を展望できる人財の採用促進、育成・動機づけ、ダイバーシティ研修(管理職対象)等を通じた社員の意識改革を行い、引き続き女性管理職比率の適正な向上を目指します。また、女性社員比率は製造業では相応の水準にはあるものの、上記と同様の理由から2021年度24.0%から低下傾向にあり、2023年度は21.0%となっています。採用活動においては女性活躍の様子を含めた情報発信を行い、職場環境面では、女性が働きやすい制度・仕組み(休暇制度・短時間勤務制度等)の充実や女性社員の声を反映できる取組みを進めています。
・障がい者雇用:関係法令の趣旨を踏まえ、積極的に取り組む課題と認識しています。2023年度は社員用の弁当提供サービス(2024年4月開始)や外部委託をしていた清掃業務の内製化といった業務整備を行い、6名の新規雇用を進めました。
・男女の賃金格差:2023年度で男性100%に対して女性72.6%となっています。当社は、役割等級制度を導入しており、賃金体系上は男女間の賃金差を設けていませんが、管理職の男性比率が高いこと、給与の高い階層における男性比率が高いこと等が要因であると考えています。2023年度は前年度比+0.7%改善しましたが、格差縮小に向けて、引続き女性管理職比率や女性社員比率の改善を進めていきます。
※1 年度は年度末時点です
※2 従業員数は単体+国内子会社出向の正規雇用・非正規雇用社員の合計です
※3 女性管理職比率は管理職全体に占める女性管理職の比率、女性社員比率は全従業員(※2)に占める女性社員の比率です
(教育体系の充実・人財育成の強化)
人財確保と併せて、教育体系の充実を図り、人財育成の強化に取り組みます。
・階層別教育の充実…新任管理職研修、中堅社員研修、サブリーダー研修等を人財育成の中核と位置づけ、国内グループ会社社員も参加して実施しました。
・専門教育の拡充…各本部で選定したテーマ(営業本部:営業担当向け引合管理研修等)に基づき、計画的に専門教育を実施しています。また、社内リソースだけでは対応が難しい専門教育については、外部教育機関との連携をしていきます。2022年度に信州大学と「リスキリング教育短期プログラム」契約に基づき、2023年度(初年度)は技術教育講座3講座を行い、延べ143人が受講しました。2024年度も技術教育講座は新規講座を加えて継続していきます。
・有益な資格取得に関わる取得費用や報奨金を支給する資格取得報奨制度の運営により、社員個々人の成長を継続的に支援します。2023年度は23人(前年度比+7人)が対象となりました。
(職場環境の改善)
ワークライフバランスに配慮した働きやすい職場環境づくり、事故防止等安全安心にも配慮した職場環境の実現に取り組みます。
・有給休暇の取得促進…2023年度から1週間連続して有給休暇が取得可能な「リフレッシュ休暇」制度を導入し、一人平均有給休暇取得日数も2023年度実績で14.7日(前年度比+1.8日)まで伸びました。引続き、リフレッシュ休暇の定着に努め、有給休暇のさらなる取得日数増加及び有給休暇を取得しやすい環境づくりに取り組みます。
・時間外労働…一定期間における一人平均時間外労働が多い部門は、改善計画の策定を行う等の対策を行い、引き続き、時間外労働の縮減を進めます。
・男性育児休業の取得率向上…人事部に相談窓口を設置し、職場・本人への制度周知や休暇取得の促進に取り組み、2023年度の取得率は95.7%(当社独自の休暇制度利用を含む)に改善しました。男性育児に対する意識の変革、育児との両立、男性女性問わず働きやすい環境作りを引続き進めていきます。
・事故防止・安全衛生の推進…安全衛生委員会を中心に横断的な活動を行い、定期的なリスクアセスメントの実施や事故防止に取り組んでいます。特に、交通事故や労災事故は社員の職場の安全安心確保の点から再発防止を徹底していきます。また、各本部・部門単位で独自にテーマ選定を行い、幅広く職場の課題解決を行う5S活動を展開していきます。
※1 年度は年度末時点です
③ リスク管理
・「人財」こそ最大の経営資源であり、採用力が低下して必要人財の確保が進まないこと、職場環境の改善が進まず社員の離職により必要人財が不足することが大きなリスクと考えています。雇用の流動性が高まる中で、処遇の改善や教育の充実、職場環境の改善を通して多様な人財が活躍できる環境を整備することで、リスク低減に努めていきます。
④ 目標及び指標
・2023年度に掲げた重点項目の達成状況ならびに2024年度に取り組む指標ならびに目標は以下のとおりです。女性管理職比率の改善ならびに福利厚生制度の充実に軸足を置いた取り組みを行います。
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カテゴリー |
KPI |
2023年目標 |
2023年実績 |
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多様性の確保 |
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3.0% |
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福利厚生制度の充実 |
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80.0% |
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カテゴリー |
KPI |
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多様性の確保 |
女性管理職比率の増加 |
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福利厚生制度の充実 |
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※1 目標数値は各事業年度末時点です
※2 従業員数は単体+国内子会社出向の正規雇用・非正規雇用社員の合計です
※3 女性管理職比率は管理職全体に占める女性管理職の比率です
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性がある認識しているリスクは、以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)製品の欠陥について
当社グループは、自社開発の製品を主な商材としておりますが、製品の不具合が発生した場合には、その修理や補償に係るコストに加えて製品開発計画に遅れが生じ、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。品質問題がやむなく発生してしまった場合の対応策としては、誠実かつ的確な顧客対応を行うとともに、発生の原因究明と対策を速やかに実施することと併せて、再発防止策を策定し実行いたします。なお、当社では製造物責任賠償保険に加入しております。品質問題を発生させないための対応策としては、設計・製造・サービスの各部門の課題を明確にして取り組むとともに、品質改善を経営の最優先事項としてプロジェクト体制で推進し、より実効性のある対策を展開して品質コストの低減を進めてまいります。
(2)コスト競争力について
①原材料の調達について
当社グループの製品は、プリントヘッド、電装部品、機構部品、インク染料等の原材料から構成されております。原材料の調達にあたって何らかの理由で現仕入先からの調達が困難になる可能性や、市況動向等の影響による価格上昇の可能性があります。過年度においては、新型コロナウイルス感染症の感染拡大やロシアによるウクライナ侵攻等の影響により、一部原材料の調達が困難な状況が発生するとともに、原油を含む各種燃料価格や素材・原料価格上昇に伴う歴史的なインフレの影響等により、当社での原材料調達価格も全般に上昇・高止まりしております。これらの要因は、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクへの対応策として、サプライチェーンの見直しに向けてプロジェクト体制による調達力の強化に取り組み、地政学的リスクも勘案した調達先の見直しや複数の調達先確保等によるリスク分散を進めてまいります。また、設計段階における部品の共通化・点数削減、作業の効率化等による原価の抑制にも、継続して取り組んでまいります。
②生産計画について
当社グループは、主に見込み生産の形態をとり、需要予測の変動に追従して生産計画の見直しを行っております。需要予測の変動が正確に生産計画に反映されない場合や、販売実績が需要予測を大きく下回る場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクへの対応策として、発注・受入・組立・出荷・着荷の連動性を高めることで需要変動に柔軟に対応できる生産システムの構築に取り組んでまいります。
(3)製品開発について
当社グループは、新製品の開発を成長の源泉としている一方、新製品開発に際しては、試作部材、労務等の研究開発費が先行的に発生いたします。新製品開発が計画どおりに進捗せず、研究開発費が増加した場合や、開発遅延により売上高の減少等が生じた場合等には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクへの対応策としては、先進的で効率的な開発手法を常に取り入れるとともに、開発技術のノウハウを内部蓄積させることにも取り組んでまいります。加えて、新たな技術開発へのチャレンジやプラットフォーム設計の推進等により、効率的な新製品開発に取り組んでまいります。
(4)海外における事業展開について
①海外情勢の影響について
当社グループは、売上高の約7割を海外市場が占めており、今後も海外での販売強化により売上高成長を目指す方針としております。また、生産についても既にアジア(中国、台湾)と欧州(オランダ、イタリア、リトアニア)の工場で産業用インクジェットプリンタ及びインクを製造しており、今後も海外適地での生産体制を維持する方針としております。そのため、主要な海外市場における経済情勢の悪化、進出国の諸法令・規制・税制等の変更、ロシア・ウクライナ問題や米中対立に代表される地政学的なリスク等が発生した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当連結会計年度においては、中東情勢の緊迫化に端を発した紅海の治安悪化に伴うスエズ運河の運航回避により、当社製品の輸送、販売等のサプライチェーンへの影響が顕在化するとともに、迂回運航に伴う海上輸送運賃の上昇により利益へのマイナス影響が発生する等、地政学的リスクへの対応が急務となっております。当該リスクへの対応策として、グローバルでの情報収集や管理体制、リスクマネジメント体制の強化に加え、サプライチェーンの見直しに向けたプロジェクト体制での取り組みを進めてまいります。
②為替変動リスクについて
当社グループは、海外生産に比して海外販売の比率が高い状況にあります。そのため、想定を超えて急激に為替が変動した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクへの対応策として、為替管理の専門部署を設けてデリバティブ等により短期的な為替リスクのヘッジに努めるほか、外貨建て売掛金の早期回収により外貨建て債権を減らす取り組みや、インク等消耗品の消費地生産を推進して中期的な外貨ポジションの改善に努めてまいります。
(5)競合等について
当社グループの主力製品である産業用インクジェットプリンタは、既存市場において大手企業や新興国企業等の市場参入が増加しております。現時点では、当社グループの製品に技術面、品質面等の優位性があると認識しておりますが、競争環境が激化して価格低下圧力に晒された場合や市場シェアが低下した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクへの対応策として、地域密着型の営業活動を徹底して顧客ニーズを汲み取るとともに、革新的な新製品を継続的に上市できるように取り組んでまいります。
(6)人財の確保について
当社グループは、開発型企業及びグローバル企業としての成長を志向するため、製品開発を行う人財とグローバル適応のできる人財の持続的な確保・育成が必須と認識しております。これらの人財が大きく不足する場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクへの対応策として、人的資本に係る戦略に基づき、中核人財の確保を積極的に推進しています。また、多様性を確保するためのダイバーシティの推進、特に女性活躍推進やジェンダーギャップの解消等に加え、ワークライフバランスに配慮した働きやすい職場環境づくりなども進めています。さらに、人財の育成を目的とした教育体系の充実を図り、各人の能力を最大限発揮できる企業風土の醸成に取り組んでまいります。
(7)金利変動リスクについて
当社グループは、主に金融機関からの借入金等によって設備資金及び運転資金の一部を調達しており、有利子負債依存度は当連結会計年度末で37.6%となっております。そのため、急激に金利変動等が生じた場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクへの対応策として、経理部門が主導して多様な資金調達方法の検討に努めるとともに、在庫適正化活動の推進による運転資金の効率化に努めてまいります。
(8)知的財産権について
当社グループは、知的財産権に関連して①第三者が当社グループの知的財産権を使用し類似製品を製造することを防止できない可能性、②当社グループの取り扱う製品が第三者の知的財産権に抵触する可能性、③当社グループが認識しない特許権等の成立で第三者より損害賠償等の訴訟を起こされる可能性、等のリスクが想定できます。これらが発生した場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクへの対応策として、知的財産権の専門部門を設け、自社が保有する技術について特許権等の取得による保護を図るほか、他社の権利に抵触しないよう取り組んでまいります。
(9)法的規制等による影響について
当社グループは、国内において製造物責任法、輸出貿易管理令等の規制を受けているほか、事業展開する各国においては、CEマーキング、電気電子機器の特定有害物質使用規制等に加え、関税や移転価格税制等の様々な法令や規制の適用を受けております。これらの規制を遵守できずに当社グループの活動が制限された場合、または規制改正や新たな規制適用による対応のため当社グループのコストが増加した場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクへの対応策として、製造業に関連するグローバルベースの各種法的規制等の調査・管理ワークフローの見直しをプロジェクト体制で行い、これらを遵守するよう取り組んでまいります。
(10)重要な訴訟について
当社グループは、事業活動を展開する中で、ステークホルダーとの係争案件が発生する可能性がありますが、特に重要な訴訟等が発生した場合は、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクへの対応策として、専門部門である法務部が主導して弁護士等を交え、円滑な解決に向けて取り組んでまいります。
(11)情報セキュリティに係るリスクについて
当社グループにおいて、情報セキュリティの脆弱性やサイバー攻撃により、機密情報の漏洩による信頼性低下や信用の失墜、サービスやシステムが停止することによる業務停止や顧客サービスの低下、外部からの攻撃や強迫による金銭的損害や企業イメージの失墜等により、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクへの対応策として、専門部門である経営情報システム部が主導して、セキュリティポリシーの策定とそれに基づく徹底した情報管理及び社員教育の実施や、システムのバックアップ及びセキュリティ強化による防御力の向上と、脆弱性の監視・対策等に取り組んでまいります。
(12)投資等に係るリスクについて
当社グループは、単独または他社と共同で新会社の設立や既存会社の買収等を行っております。これら投資等の価値が低下した場合、あるいは追加資金拠出が必要となった場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクへの対応策として、既存の投資事業に関しては客観的な事業性と成長性の評価とともに、新規の投資事業に際してはリスクとリターンの検証を十分に行ってまいります。
(13)自然災害等の緊急事態について
当社グループは、長野県東御市に本社・研究開発施設・工場を有しており、この地域に大規模な自然災害が発生した場合、当社グループの事業活動が停滞することにより、業績に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクへの対応策として、大規模な自然災害が発生した場合も被害を最小限にとどめ、可及的速やかな業務再開を可能にするための事業継続計画(BCP)策定に努めてまいります。
(14)新型コロナウイルス感染症(COVID-19)等、疫病・感染症の拡大について
当社グループは、新型コロナウイルスやインフルエンザ等の各種ウイルス等の疫病・感染症が拡大した場合、役職員の出社が困難になったり、世界経済全体が低迷する等により、当社グループの事業活動が停滞して業績に影響を及ぼす可能性があります。特に、先般の新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大により、当社グループにおいても、世界経済の低迷による顧客でのプリント需要の急速な減少に加え、事業展開している国や地域における各種規制への対応に伴い、開発・生産・物流・営業等の事業活動に支障が生じた結果、過年度において業績への影響が表れており、今後もこのような状況が発生する可能性があります。当該リスクへの対応策として、日頃からの安全・衛生活動により社員の啓蒙と予防に努める等、適切な管理体制を構築し、顧客や取引先並びに従業員の安全確保を最優先とした取り組みを進めております。加えて、事業活動の正常化に向けた対応を迅速かつ的確に進めるとともに、需要変動への適切な対応を図る等により、業績への影響を最小限にとどめる取り組みを、社会情勢を見極めながら適切に実施してまいります。
(1)経営成績等の状況の概要
①経営成績の状況
当連結会計年度(以下、当期)における世界経済は、高水準のインフレの継続や、各国中央銀行や政府による金融政策などの影響が続くなかで、地政学的リスクの高まりなどを含め、全般的に不透明な状況が継続しました。北米では、個人消費を中心に景気が堅調に推移しました。また欧州では、ウクライナ侵攻の長期化を背景に景気の停滞が継続しました。わが国においては、輸出需要の増加などが追い風となり、脱コロナ禍に伴い個人消費や設備投資が戻ったことに加え、インバウンド需要の回復などにより、経済の持続的な回復が期待されております。
このような環境のなか、当社グループでは2020年12月に制定した中長期成長戦略「Mimaki V10」で定めた重点施策に基づき、新製品の市場投入と販売拡大、市場環境や顧客ニーズの急激な変化を見据えた事業展開、収益性向上に向けた基盤構築を継続してまいりました。当期は、第4四半期連結会計期間において、IP(インダストリアルプロダクツ)市場向けでは、高速・高画質のフラットベッドUVプリンタJFX600の大型2.5メートル×3.1メートルサイズ機「JFX600-2531」をラインナップに追加しました。また、円柱プリントの常識を刷新する生産性が最大3倍の傾斜形状にも対応した360度プリントオプション「Kebab HS」の販売を開始しました。さらに、TA(テキスタイル・アパレル)市場向けでは、ポリエステルだけでなく様々な種類の生地にプリントと転写で完了するシンプルな捺染工程を実現し、専門技術や知識が無くても簡単にオペレーションが可能で、かつ従来の捺染プリント方式と比べ廃水の約90%を削減する、環境と人に優しい次世代捺染システム「TRAPIS(トラピス)」を発表しました。
当期の売上高は、期を通じて為替の円安によるプラス影響も加わり、増収となりました。製品市場別では、TA市場向けにおいて今期市場投入したDTF(Direct to Film)機TxF150が、先進国を中心に好調な販売が継続しました。また、前下期ではバックオーダー解消に伴う販売が拡大したSG(サイングラフィックス)市場向けや、同じく前期に新製品が好調に推移したIP市場向けでは、プリンタ本体の販売が減少したものの、インクの販売は堅調に推移しました。エリア別では、欧州の販売が景気停滞の影響を受け前期を若干下回りました。一方で、日本はIPやTAを中心に好調な販売が持続し、アジア・オセアニアでは前期がコロナ禍の影響により低調だった中国での販売が大幅に伸長しました。北米も、景気拡大の動きを受けて特にTAが牽引し堅調に推移しました。利益面では、前期に調達した半導体等の高コスト部材を使用した製品の販売が継続したものの、輸送コストの減少に加え、全般的なコスト上昇に対応するための販売価格見直しを適切に進めた効果もあり、売上原価率が改善しました。販売管理費は、各国でのインフレ進行に見合った人件費の増加に加え、今後の新技術・新製品開発に向けた研究開発費や、グローバルでの展示会への積極的な出展等の営業活動の活発化に伴う費用が増加しましたが、売上高比率の増加は最小限に抑制しました。これらに加え、為替のプラス効果もあり、大幅な増益となりました。なお、当社の欧州子会社であるMimaki Europe B.V.(オランダ)において、ロシア及びベラルーシ向けの制裁措置に違反の懸念があり、当該取引について引当額を合理的に見積り、2023年3月期第3四半期に制裁措置関連損失引当金として計上しました。その後、2023年12月にオランダ税務当局による調査が行われましたが罰金等の指摘はなく、今後も罰金等の発生が想定されないことから、引当金を取り崩し制裁措置関連損失引当金戻入額として、当期の第3四半期において特別利益に計上しております。
以上の結果、当期における当社グループの売上高は756億31百万円(前期比7.1%増)、営業利益は54億80百万円(同29.2%増)、経常利益は48億82百万円(同28.8%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は37億7百万円(同32.1%増)となりました。なお、売上高及び営業利益以下の各段階利益は、過去最高を更新しました。
当期における主要な為替レートは、1米ドル=144.62円(前期 135.48円)、1ユーロ=156.79円(前期 140.97円)で推移しました。
セグメントの業績は次のとおりであります。なお、セグメントの利益につきましては、セグメント間取引消去の影響により連結損益計算書の営業利益から乖離してしまうため、記載を省略しております。
(日本・アジア・オセアニア)
売上高は339億94百万円(前期比7.4%増)となりました。日本では、本体はSG市場向けでフラグシップモデルが、IP市場向けで小型FB(フラットベッド)モデルが、TA市場向けで新製品を中心に、順調に販売が伸長しました。インクはSG市場向けが伸び悩んだ一方で、IP及びTA市場向けの販売が好調に推移しました。FA事業では基板実装装置や半導体製造装置が販売を伸ばしました。以上により増収となりました。アジア・オセアニアでは、オーストラリアやタイ等で販売が減少したものの、中国での販売が大幅に伸長しました。またインド、インドネシア、フィリピン等でも販売が好調だった結果、SG、IP、TAの各市場向けの販売が伸長しました。前期の販売が好調だったFA事業の台湾向け販売は減少したものの、全体では増収となりました。
(北・中南米)
売上高は214億93百万円(同13.3%増)となりました。北米では、個人消費を中心に堅調な景気拡大が続くなか、TA市場向けの販売が新製品やフラグシップモデルが好調で大幅に伸長しました。SG及びIP市場向けでは、本体の販売が伸び悩んだものの、インクの販売は好調に推移しました。以上に加え為替のプラス影響もあり、増収となりました。中南米では、ブラジルやメキシコを中心に販売が増加し、大幅な増収となりました。
(欧州・中東・アフリカ)
売上高は201億42百万円(同0.8%増)となりました。欧州では、為替のプラス影響はあったものの、若干の減収となりました。TA市場向けで新製品を中心に大幅に販売が増加した一方で、SG及びIP市場向けの販売が減少しました。国別では、ポルトガル、フランス、ポーランド等で好調だったものの、イタリア、英国、トルコなどで販売が減少しました。
[市場別売上高]
|
|
売上高(百万円) |
構成比率(%) |
対前年増減率(%) |
|
S G 市 場 向 け |
29,581 |
39.1 |
4.0 |
|
I P 市 場 向 け |
20,036 |
26.5 |
△0.5 |
|
T A 市 場 向 け |
9,471 |
12.5 |
43.2 |
|
F A 事 業 |
4,533 |
6.0 |
△2.5 |
|
そ の 他 |
12,009 |
15.9 |
11.6 |
|
合 計 |
75,631 |
100.0 |
7.1 |
(SG市場向け)
売上高は295億81百万円(前期比4.0%増)となりました。本体は、UVインクモデルやフラグシップモデルの販売が増加したものの、前下期にバックオーダー解消に伴い販売が拡大した欧州や北米では、既存モデルを中心に販売が減少しました。一方で、インクの販売は堅調に推移し、為替のプラス影響もあり増収となりました。
(IP市場向け)
売上高は200億36百万円(同0.5%減)となりました。本体は、新製品の販売が大きく伸長した前期との比較では減少したものの、インクの販売が好調に推移し、為替のプラス影響もあり前期並となりました。
(TA市場向け)
売上高は94億71百万円(同43.2%増)となりました。本体は、先進国を中心に当期から投入したDTF機の販売が好調に推移しました。また、同じく当期から販売開始した高速昇華転写モデルも着実に立ち上がり、加えてインクの販売も堅調に推移し、大幅な増収となりました。
(FA事業)
売上高は45億33百万円(同2.5%減)となりました。基板実装装置や半導体製造装置の販売は増加したものの、台湾特定顧客向けの販売が減少した基板検査装置に加え、FA装置、金属加工の販売が減少し、減収となりました。
②財政状態の状況
(資産)
当連結会計年度における資産の残高は、757億18百万円(前連結会計年度末697億89百万円)となり59億28百万円増加しました。流動資産の残高は、587億66百万円(同536億92百万円)となり50億74百万円増加しました。これは、主に現金及び預金の増加等によるものです。また、固定資産は169億51百万円(同160億97百万円)となり8億54百万円増加しました。これは、主に建物及び構築物の増加等によるものです。
(負債)
当連結会計年度における負債の残高は、483億27百万円(同477億33百万円)となり5億93百万円増加しました。流動負債の残高は、415億13百万円(同401億44百万円)となり13億68百万円増加しました。これは、主に電子記録債務の増加等によるものです。固定負債の残高は、68億14百万円(同75億89百万円)となり7億74百万円減少しました。これは、主に長期借入金の減少等によるものです。
(純資産)
当連結会計年度における純資産の残高は、273億90百万円(同220億56百万円)となり53億34百万円増加しました。これは、主に利益剰余金の増加等によるものです。
③キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物残高(以下「資金」という)は、長期借入金の返済による支出や有形固定資産の取得による支出等があったものの、税金等調整前当期純利益の増加や棚卸資産の減少等により前連結会計年度末に比べ60億16百万円増加し、当連結会計年度末には、142億18百万円となりました。なお、営業活動、投資活動、財務活動別の詳細につきましては、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果獲得した資金は95億63百万円(前連結会計年度比90億73百万円増)となりました。これは、主に税金等調整前当期純利益の増加48億91百万円、棚卸資産の減少40億9百万円等があったことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は25億96百万円(同9億3百万円減)となりました。これは、主に有形固定資産の取得による支出16億50百万円、定期預金の預入による支出8億24百万円等があったことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は14億40百万円(前連結会計年度は35億19百万円の獲得)となりました。これは主に長期借入れによる収入31億21百万円等があったものの、長期借入金の返済による支出38億87百万円等があったことによるものです。
④生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
対前年増減率(%) |
|
日本・アジア・オセアニア(千円) |
29,368,878 |
△4.1 |
|
欧州・中東・アフリカ(千円) |
3,882,597 |
0.5 |
|
合 計(千円) |
33,251,475 |
△3.6 |
(注)金額は標準原価によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。
また、当連結会計年度の生産実績を市場別に示すと、次のとおりであります。
|
市 場 別 |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
対前年増減率(%) |
|
S G 市 場 向 け(千円) |
11,612,237 |
△14.8 |
|
I P 市 場 向 け(千円) |
6,925,795 |
△4.5 |
|
T A 市 場 向 け(千円) |
5,515,537 |
38.7 |
|
F A 事 業(千円) |
4,386,677 |
4.1 |
|
そ の 他 (千円) |
4,811,227 |
△11.5 |
|
合 計 (千円) |
33,251,475 |
△3.6 |
b.受注実績
当社グループ(当社及び連結子会社)は見込み生産を行っているため、該当事項はありません。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
対前年増減率(%) |
|
日本・アジア・オセアニア(千円) |
33,994,773 |
7.4 |
|
北・中南米(千円) |
21,493,484 |
13.3 |
|
欧州・中東・アフリカ(千円) |
20,142,888 |
0.8 |
|
合 計(千円) |
75,631,146 |
7.1 |
(注)セグメント間の取引については相殺消去しております。
また、当連結会計年度の販売実績を市場別に示すと、次のとおりであります。
|
市 場 別 |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
対前年増減率(%) |
|
S G 市 場 向 け(千円) |
29,581,106 |
4.0 |
|
I P 市 場 向 け(千円) |
20,036,006 |
△0.5 |
|
T A 市 場 向 け(千円) |
9,471,177 |
43.2 |
|
F A 事 業(千円) |
4,533,686 |
△2.5 |
|
そ の 他 (千円) |
12,009,169 |
11.6 |
|
合 計(千円) |
75,631,146 |
7.1 |
当連結会計年度の販売実績を品目別に示すと、次のとおりであります。
|
品 目 |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
対前年増減率(%) |
|
製 品 本 体(千円) |
30,490,975 |
3.4 |
|
イ ン ク(千円) |
27,998,747 |
10.9 |
|
保 守 部 品(千円) |
6,183,309 |
7.5 |
|
そ の 他(千円) |
10,958,114 |
8.4 |
|
合 計(千円) |
75,631,146 |
7.1 |
(注)主要な販売先については、相手先別の販売実績の総販売実績に対する割合が100分の10未満であるため、記載を省略しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
財政状態につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②財政状態の状況」に記載のとおりであります。
なお、運転資本(流動資産から流動負債を差し引いた金額)は、前連結会計年度末に対して37億5百万円増加し、172億53百万円となりました。今後も厳しい経営環境が続くものと想定されますが、当社の財政状態は健全性を保っていることに加え、資金についても十分な手当てができております。
経営成績につきましては、売上高は756億31百万円(前連結会計年度比7.1%増)、営業利益は54億80百万円(同29.2%増)となりました。詳細につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ①経営成績の状況」記載のとおりであります。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
キャッシュ・フローの状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性につきましては、当連結会計年度のフリーキャッシュ・フローは69億67百万円となりました。その要因は、中長期成長戦略「Mimaki V10」で定めた目標達成に向けた、研究開発用設備投資や新製品量産に向けた金型投資に加え、ソフトウエアへの投資を積極的に行ったこと等により、投資キャッシュ・フローはマイナスとなりましたが、税金等調整前当期純利益が大幅に増加したことに加え、棚卸資産が大幅に減少したこと等により、営業キャッシュ・フローが大幅に増加したことによるものです。当期以降も、売上高成長を追求するだけでなく、高い収益を継続的に生み出すとともに、棚卸資産の削減に向けた諸施策を実施して営業キャッシュ・フローの最大化を図りつつ、将来成長のために必要な投資も積極的に行い、財政状態の健全性維持と持続的な成長の実現を両立させるべく、内部資金・直接金融・間接金融のバランスを図りつつ、計画的に資本の財源を確保してまいります。
③経営方針・経営戦略等又は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおり、中長期成長戦略「Mimaki V10」において、2025年度までに営業利益率10%達成を目標に掲げ、この実現に向けて従来のように売上高成長を追求するだけでなく、高い収益を継続的に生み出すとともに、財務基盤を強化して、持続可能な成長に向けた強靭な企業基盤の構築に取り組んでまいります。
④重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
該当事項はありません。
当社グループは、常に市場に「新しさと違い」を提供するイノベーターであり続けるため、国内従業員の約4割にあたる約470名が開発部門に属し、研究開発活動を積極的に進めております。なお、当社グループにおける研究開発活動は日本国内で行っております。
当社では、市場ニーズを捉えて素早く製品化するため、製品を成り立たせる根幹となる要素技術の開発を製品開発に先行して進めております。製品開発に直結する開発体制としては、機構設計技術(メカ)、制御設計技術(ハード)、機器組み込みソフトウエア技術(ファームウエア)、アプリケーションソフトウエア技術及びインク技術の5分野からなる技術を結集して、技術本部内のプロジェクトチームが製品化を進めております。要素技術を各プロジェクトが共有し、積極的に共通化・標準化設計を展開することにより、開発期間の短縮を図るとともに高品質かつコストパフォーマンスの高い製品開発を行っております。また、マーケティング部門と技術本部とのコミュニケーションを密にすることで、ユーザーのニーズや技術動向を常に注視し、マーケットインの製品開発を中長期的視点から行える体制を構築しており、製品本体、アプリケーションソフトウエア、インク、メディア等のトータルソリューションを最適化し、「美しく・速い」プリント及びカットをユーザーに提供することを目指しております。
当連結会計年度における研究開発活動等の主な成果は次のとおりであります。
(ハードウエア)
(1)SG市場向けで、これまで同市場をリードしてきた当社が、美しい画質と高い生産性に加え、省作業をアシストする高い付加価値機能を備えたフラグシップモデルの「JV/CJV330シリーズ」をベースに、プリントとカットの両機能を併せ持ち、UV硬化インクで高いコストパフォーマンスを実現した「UCJV330」を発売。また、市場のエコソルベントプリンタやラテックスプリンタと比較し消費電力を約20%以下に抑えられ、従来機の基本機能を持たせたままさらに3つの機能をプラスし、お客様の仕事の幅の拡大、ランニングコスト低減、作業効率向上を実現した「UJV100-160Plus」を発売。
(2)IP市場向けで、当社製UVプリンタ製品と連動したアームロボにより自動的に印刷媒体(メディア)を配置・回収しオーダーグッズや工業製品のプリント工程を自動化するパッケージシステム「M2COA」を発表。また、従来機のプリントエンジンをそのままに、プリント領域を約2.4倍に拡大し、標準サイズ3メートルの建築用材(ガラス・パーティション・合板)へのダイレクトプリントが可能な、フラットベッドUV-LED方式インクジェットプリンタ「JFX600-2531」を発売。
(3)TA市場向けで、新たに採用した高速駆動のプリントヘッドと当社独自の画質技術により、最大印刷速度550㎡/h(従来機比143%)に向上した昇華転写インクジェットプリンタ「Tiger600-1800TS」を発売。また、ポリエステルだけでなく様々な種類の生地にプリントと転写で完了するシンプルな捺染工程を実現し、専門技術や知識がなくても簡単にオペレーションが可能で、かつ従来の捺染プリント方式と比べ廃水の約90%を削減する、環境と人に優しい次世代捺染システム「TRAPIS(トラピス)」を発表。さらに、捺染ポリエステル生地から昇華転写インクを脱色し生地を再利用する技術「ネオクロマトプロセス」を、2023年6月に開催されたITMA(開催地/イタリア・ミラノ)で技術出展し、世界初の循環型テキスタイル技術の紹介によりテキスタイル産業の持続可能性を提案。
(インク)
(4)当社製プリンタ330シリーズ、JV100-160及びUJV100-160Plus(従来機UJV100-160含む)に対応した計3種の純正インクが3M(スリーエム)社のパフォーマンスギャランティ(以下、PG)に認証されました。最終グラフィックスを作成するにあたって、原反性能を保証するプログラムです。印刷性能、接着性能等を様々な試験により評価を行い、高い適合性が得られるプリンタ・インク・フィルムの組み合わせを保証するものです。
これらの研究開発活動を行った結果、当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発活動に係る費用の総額は