当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営の基本方針
当社グループでは、下記の4項目を経営ビジョンとして掲げ、経営の基本方針としております。
① 独自技術を保有し、自社ブランド製品を世界に供給する「開発型企業」を目指します。
② 顧客に満足いただける製品を素早く提供する小回りの利いた会社を目指します。
③ 市場に常に「新しさと違い」を提供するイノベーターを目指します。
④ 各人が持っている個性・能力を力一杯発揮できる企業風土を目指します。
(2)中長期的な経営方針及び経営指標
当社グループでは、2025年5月に、2030年3月期を最終年度とする5か年の新中長期成長戦略「Mimaki Innovation 30」を策定いたしました。
①「Mimaki Innovation 30」基本方針と業績目標
安定的な収益性で売上高成長の追求を継続し、資源の積極的な活用により新たな領域にチャレンジすることで、2030年3月期(FY2029)に売上高 1,500億円 を目指す。
1.安定的な収益性の維持・強化
・コア事業の成長と粗利率改善の追求を継続
・売上高成長率(CAGR)10%以上を継続し、2030年3月期に売上高1,500億円、営業利益率8%以上を目指す
・イノベーションに適切な新製品を継続的に市場へ投入し、新製品売上高比率 年30%の達成
2.新たな領域へのチャレンジでInnovationの創出
・塗料・工業用機能材料などの 高粘度領域 にチャレンジ。IP市場向けの飛躍的な拡大を目指し、Digital Paint領域へ
・フレキシブル有機ELシートにチャレンジ
・セカンドブランド「ミマキ ラメカニカ」を立ち上げ、プリンタ・カッティングの周辺機器へ進出
・3Dプリンタ事業の進化を推進、事業拡大で3Dをコア事業の新たな柱とすべく育成
・Mimaki Innovation 30 (2026年3月期~2030年3月期)の5年間は既存の開発投資とは別枠で、新たな領域への投資に売上高の 1~2% を充当
3.技術開発マネジメント体制の確立と人的資本の拡大
・新製品の開発スピードを向上し、競争力のある開発体制を構築
・AIの活用による業務効率化、DXによるプロセス改革、ノーコード化とユーザーインターフェイスの最適化を推進し、経営管理体制の高度化を図る
・技術開発から営業力強化に至るまで、全社的な専門教育の深化で新しさと違いを提供するイノベーターの創出
(3) 中長期成長戦略「Mimaki Innovation 30」重点施策
①新しいMimakiに向けてインクジェット技術と印刷技術の蓄積とノウハウの応用・発展により高粘度領域やフレキシブル有機ELシートなど新しい領域へチャレンジ
②周辺機器への取組みとしてセカンドブランドの立ち上げ
③製品戦略は、定期的かつ革新的な新製品を上市やラインナップの充実を図る
SG(サイングラフィックス)市場
・UVプリンタと環境負荷を低減した最新のUV硬化型サステナブルインクで競争優位性を強化
・多様な顧客ニーズを的確に捉えたハイエンドからエントリーモデルまでのラインナップ戦略で顧客体験価値の向上を図る
・ハイエンド〜エントリーモデル領域に未参入レンジを追加し、ラインナップの充実でさらなる市場シェアの拡大を図る
・UVーDTF モデルで高付加価値の印刷ビジネスを創出、リテール・DIY向けの製品展開でターゲット市場を開拓、新たな顧客層を獲得
・高画質の実現と優れた操作性に加え、収益性を維持したエントリーモデルの展開で差別化し市場シェアNo.1を奪取
IP(インダストリアルプロダクツ)市場
・小型FB(フラットベッド)市場:自動化・省人化で生産効率を重視し、産業用印刷のデジタル化を推進。No.1シェアを独走し続ける
・大判・ミドル市場:生産性を重視した高付加価値のプロダクトモデルをラインナップ戦略で販売強化し、No.1シェアを維持
・高粘度領域・Digital Paintで新たな分野を開拓
・付加価値の高いサステナブルなUVインクを強みに差別化を推進
TA(テキスタイル・アパレル)市場
・デジタル化の潜在的拡大市場であると捉え、注力市場と位置付け
・昇華転写市場のエントリー・ミドル・フラッグシップモデルのラインナップの拡充と販売チャネルの活用でシェアNo.1を目指す
・デジタル化推進に欠かせない、DTFモデルにさらなる付加価値を加えた製品を展開し圧倒的な差別化を図る
・サステナブル領域への追求・・・環境や印刷作業者に配慮した安心・安全な製品とインク開発の追求を継続
3Dプリンティング事業
・インクジェットプリンタ(IJP)の開発で培った技術を応用し、様々なマルチマテリアルで特性の異なる材料を複合化
・3Dプリンタ技術のプラットフォーム化を推進し、将来的に3Dを次の柱へと成長を図る
・高生産性に注力し色彩表現に優れた高品質の強みとインクコストを抑えた製品開発
・アライアンスパートナーの検討など、販売チャネルマーケティングの強化でユーザーメリットのある商品企画を推進
FA事業
・FA装置事業 自動車関連事業を強化
・半導体事業 未成熟市場であるAI処理に特化した半導体チップの“AIチップ”に注力し対応装置の販売でシェア拡大を図る
ダイボンダ(CIS,LPH)市場に注力
・基板実装機器事業 後工程の挿入・塗布工程装置を提供可能な強みを活かし、販売強化で自動車部品メーカーをターゲットとする
・基板検査事業 大型化需要を捉え高性能を追求した装置の開発で台湾・日本の販売強化のほか中国を強化し重点エリアを拡大
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループでは、「Mimaki Innovation 30」の達成に向けて対処すべき課題は以下のとおりと認識して、取り組んでまいります。
① デジタルオンデマンド・プリントソリューションの提供
当社が開発型企業として持続的な成長を実現するためには、SDGsで定められた持続可能な開発目標への貢献という社会的な要請はもちろん、個々のお客様の困りごとやニーズに的確に対応する必要があります。また、技術革新のスピードや市場環境の変化が加速に伴い市場のニーズや顧客の志向は急激に変化しています。加えて、eコマースの浸透に伴い、消費者はよりパーソナライズされた志向と過剰在庫問題などの環境負荷低減への意識の高まりにより益々「オンデマンド」供給への要求が強まり、多様なニーズに対応できるビジネスモデルの構築が求められています。このような環境変化に的確に対応し、持続的な成長を果たすためには、当社グループが所有する競争優位性の高い独自技術を基盤とした製品、ソフトウエア、サービスの提供に加え、今後ますます進展するデジタルトランスフォーメーション(バリューチェーンを含めて新たな付加価値につながるデジタル化)を、中期的な観点から成長ドライバとして取り込んだうえで、産業用印刷市場におけるデジタルオンデマンド・プリントソリューションの提供を進めてまいります。具体的には、当社グループは、産業用印刷市場で必要とされる「プリントだけでなくその前・後工程の処理装置も含めた幅広い製品ラインナップ」と「充実した機能性インク」のほか、当市場を開拓する過程で蓄積してきた「問題解決のノウハウ提供力」を保有しています。とりわけ、当社のFA(ファクトリーオートメーション)事業では、プリント対象物の前処理/前加工や、プリント作業後の後処理/後加工に適した製品の開発・生産能力を有しています。このFA事業を自ら保有する優位性を最大限発揮するとともに、蓄積した有形・無形の資産を源泉とし、プリントに必要となる製品、ソフトウエア、ノウハウ等のご提供を通じて、お客様が制作する成果物の品質までをサポートする取り組みを進めています。また、プリント工程の自動化による省人化・無人化等のノウハウを安定して提供し、お客様の制作プロセスの変革支援につなげる提案を、積極的に行ってまいります。このように、産業印刷における前工程・プリント・後工程までの一貫システムによる、デジタルオンデマンド・プリントのトータルソリューションを提供するソリューションプロバイダーとしての役割を果たし、市場のニーズに的確に対応すべく、特に以下の2領域にフォーカスして取り組んでまいります。
a.デジタルプリントのIoT
5G(第5世代移動通信システム)の商用サービスが開始され、当社が手掛けているSG(サイングラフィックス)市場、IP(インダストリアルプロダクツ)市場、TA(テキスタイル・アパレル)市場等の産業用インクジェットプリンタ事業の可能性が、大きく広がります。これらの市場に向け、当社が保有するデジタルプリントの前処理装置、プリンタ、インク、カッティングプロッタ、後処理装置、ワークフローソフトまでを含めた幅広い製品ラインナップと、プリント成果物制作プロセスの構築ノウハウを基盤に、プリント工程の自動化による省人化・無人化といった、デジタルプリントのIoTを推進してまいります。
また、SG市場やIP市場で使用される機能性インクは、従来主流であった有機溶剤系インクから、環境負荷が低く生産性が高いUV硬化型インクへの転換が始まっており、同インクは向こう数年間で市場規模が大幅に増加すると見込まれています。当社は、UV硬化型インクの開発とそれを使用するインクジェットプリンタの開発にいち早く取り組むとともに、当社が保有するUVプリンタ特許技術の活用など、業界での競争優位性を確保しています。
今後は、これらの優位性を生かし、産業用印刷市場に対してデジタルプリントのIoTとUV硬化型インクを含めた高い生産性を実現するトータルソリューションを提供し、マーケットリーダーとしての地位を確実なものとしてまいります。
b.3Dプリント事業
IP領域における3Dプリントビジネスにおいては、2017年に発売したUV硬化インクジェット方式で1,000万色のフルカラー造形を世界で初めて実現した3DUJ-553を皮切りに、2021年にはその小型化を実現したエントリーモデル3DUJ-2207を発売する等、着実に製品ラインナップの拡大を進めてまいりました。今後も、お客様の多様なニーズにお応えする製品ラインナップのさらなる拡充に取り組むとともに、新たにマルチマテリアルで特性の異なる材料の複合化等に注力してまいります。さらに材料開発においてはアライアンスの検討や有力な3Dソフトウエアメーカー等の幅広いパートナーシップの構築を進め3D造形の市場成長を加速させるなど、多様な用途やアプリケーションの提案等に取り組み、3Dプリントを当社の次の事業の柱として育成してまいります。
② インクの収益性改善
当社グループにおいて、機能性インクは競争力の源泉であります。ストック性の高いインクの収益性を高めるため、揮発性有機化合物を削減したインクの開発など印刷作業者や環境に配慮した安心・安全なインクの開発に取り組みつつ、さらなる品質改善やインクのスケールメリットによるコストダウンなどに取り組むことで、収益性の改善を図ることで競争力強化を図ってまいります。また、市場での品質問題発生時の情報早期フィードバックや見える化により、迅速な対応を実現してまいります。加えて、これらの取り組みの前提として、不具合が発生した際の要因をより正確かつ迅速に把握し、的確な対策が実施できるよう、原材料の受け入れ段階、生産、出荷までの各時点での膨大な検査データを収集・蓄積し、適切に分析したうえで、生産工程から検査工程までの各段階での工程を改善するプロセスを、一層強化してまいります。以上の取り組みにより、インク品質のさらなる向上による競争力強化を図ってまいります。
③ 内部統制・コンプライアンスの徹底
企業の社会的責任として、内部統制及びコンプライアンスに徹底して取り組んでまいります。関係法令・規則の遵守はもとより、お客様の情報管理等に対するセキュリティーポリシーを確立し、役職員一人ひとりの高い倫理観の醸成、社会的良識を持った責任ある行動を目指して社内教育を行ってまいります。当社は、内部統制システムの整備・運用を推進し、独立した内部監査部門による定期的な内部監査により、業務監査及び財務報告の適正性を確保しています。また、各本部・部門単位で必要とされるコンプライアンス教育を、所属員を対象に年2回以上実施し、法令遵守に関する意識向上を図っています。さらに、1,000億企業としての新たなワークフロー、規程、マニュアルなどの作成をグローバルの推進に努め、本社及び全ての製造・販売子会社を対象として、内部統制・コンプライアンスの仕組み作りを進めてまいります。具体的には、グローバルでの貿易ルールの見直しに向けたHSコード(輸出入統計品目番号)の確認・運用や、購買発注ワークフローの見直し改定などに取り組み、複雑化する法規制に適切に対応するための仕組みや業務フローを整備してまいります。また、反社会的勢力との関係に対しては、断固とした対応で臨むことにより一切の関係を遮断し、コンプライアンスに則った経営を行ってまいります。
④ 生産・物流体制の改善
当社グループにおいて、グローバルなお客様が求める商品・サービスを最適なタイミングで効率的にご提供するとともに、地政学的リスクの顕在化等の影響による船舶及び陸上での輸送リードタイムの長期化や、物流コストの上昇への適切な対応により、売上、利益、キャッシュ・フローの最大化を図ることは重要な経営課題です。そのため、グローバルでの需要変動に柔軟に対応できるよう、販売、物流、生産・調達などの各機能を密接に連携させ、週次での生産管理を実現する体制整備に加え、製品ごとに最適な生産地で生産して効率的かつ機動的な物流・在庫マネジメントを実現する体制の構築を進めてまいります。また、グローバルでの在庫マネジメント再構築への取り組みとして、エリア在庫の効率化を目的としたNRI(Non-Resident Inventory)倉庫の設置も進めており、既に稼働しているオランダに続き2022年9月にはマレーシアにも設置して機動的な在庫マネジメントの確立につなげ、機会損失の最小化とコスト競争力の確保及び適正在庫の実現に取り組んでまいります。さらに、2022年4月に長野県上田市に新たに設置した丸子工場に加え、生産・開発スペース不足の解消を目的に、2024年5月に取得した本社・加沢工場の隣接地に新社屋の建設を開始しております。(2026年4月稼働予定)これらを活用し、本社・加沢工場におけるエントリーモデルからハイエンドモデルまでの多岐にわたる生産能力を増強し、今後の事業拡大に対応してまいります。
⑤ 研究・開発体制の強化
当社グループは、コロナ禍を経て顕在化した市場ニーズや顧客志向の変化を見据え、製品開発でイノベーションを起こし、新規市場・新規アプリケーションの開拓に取り組んでまいります。具体的には、今までの開発計画を全面的に見直し、新しい市場向けのプライオリティを上げる取り組みとして、新製品売上高比率年30%を目的とすることや、効率的な研究・開発体制のもとで優れた製品をタイムリーに市場投入するため、要求機能に対し、あらかじめ準備された製品・ユニット・部品・技術情報より適切なものを選び、組合せにより新しい製品を開発するモジュール開発により売上高の拡大と同時にSKU=在庫の削減につなげること等に取り組んでいます。また、基盤となる製品プラットフォームを横展開して、短期間で効率的に新製品を投入する開発プロセスを確立し、開発サイクルの短縮化を進めています。これらの活動の結果、2024年3月期から2025年3月期までの2年間で合計16機種の新製品を発表し市場投入を実現しております。今後もこの取り組みの一層の強化・充実を図ることにより、「新しさと違い」を出せる製品の市場投入を進めてまいります。
⑥ CX(コーポレート・トランスフォーメーション)
当社グループは会社の構造変革に取り組んでまいります。固定費の圧縮と事業体質の筋肉質化に向け、固定費の投入を押さえつつ、生成AIやローコードツール等を導入して業務の棚卸と自動化・AI化を進めてまいります。また、資金効率を向上させ財務体質を強化するとともに、フリーキャッシュ・フローの最大化を目的としたCCCの短縮活動にも取り組んでまいります。具体的には、全社在庫管理プロジェクト活動により、サプライチェーン全体の在庫適正化を進め、特に滞留在庫・不動在庫の一掃を図るとともに、リードタイムを考慮した適正在庫水準の管理する在庫マネジメントを確立し、CCCの短縮を進めてまいります。さらには、グローバルマネジメント体制の強化が重要課題であると認識し、子会社管理の強化、基幹システムや会計システム、人事制度等のグローバルな見直しとともに、業務の標準化やルールの明確化等を含めた管理強化に取り組んでまいります。加えて、為替リスクの低減に向けた施策にも取り組んでまいります。
⑦ 営業体制の変革
当社グループはグローバルなお客様の多様なニーズにお応えするため、国内営業拠点及び海外販売子会社において、個々の地域特性に合致した販売戦略のもとで、新規ユーザーの開拓、製品の用途提案、製品導入後のアフターフォローや迅速な保守サービスの提供等、地域密着型の営業活動を推進し、顧客満足度の向上に努めてまいります。また、実際に製品を体験できる機会として当社独自に開催するミニ展示会によるチャネル・顧客との商談を効果的に行う営業活動を継続して実施してまいります。加えて、インサイドセールス機能の強化を通じ、SFAやCRMを活用した営業分析により既存・見込客への営業活動状況を記録・管理して顧客接点を拡大するとともに、顧客からの引き合いプロセスの管理により着実に成約に繋げる活動など、ITの進化を活用した営業活動のオンライン化にも、積極的に取り組んでまいります。また、顧客へ向けての販売チャネルにつきましても、従来のSG市場向け主体のチャネルの強化・拡大による№1シェアの獲得・維持に加え、新規のチャネルとしてIP市場、3D市場、プロダクション機、エントリーモデル、カッティングプロッタにおいて、それぞれの領域での販売拡大に適したチャネルの開拓・構築を進めるとともに、自動化・省人化ソリューションの提供に向けたパートナーシップ構築により、産業用印刷のデジタル化提案を一層強化してまいります。
⑧ リスクマネジメントへの取組み
近年の事業環境下では、想定を上回る規模の自然災害や感染症の発生等に加え、ロシア・ウクライナ問題や米中対立に代表される地政学的なリスクの顕在化により、事業継続計画(BCP)の重要性が増しています。大規模な自然災害が発生した場合でも、被害を最小限に留めるべく、復旧までの時間を最小限におさえて業務を継続できるよう、業務インフラ、緊急時連絡体制、本社屋をはじめとする各設備の防災対策等の体制強化を行ってまいります。また、感染症等によるパンデミックの発生に際しては社会全体での取り組みが必要となりますが、当社グループとしても、役職員を始め地域やステークホルダーの皆様の安全確保と感染症拡大抑止を最優先に、適切な対策を検討・実施してまいります。さらに、地政学的なリスクの顕在化に伴う需要の低迷や部品・原材料等の調達難とコスト上昇、生産の遅延や輸送の混乱によるリードタイムの長期化とコスト上昇等のサプライチェーン全体に係る諸課題に対しても、適切なリスク評価に基づき最適な対策を検討・実施してまいります。
⑨ 知的財産戦略の強化
自社ブランド製品を開発・製造・販売する開発型企業である当社にとって、知的財産戦略は競争力を確保し、独自性を守り、持続的な成長を実現するために重要かつ欠くことのできない要素です。とりわけ、自社の知的財産を適切に保護するために、特許、商標等の権利の適切な登録・保護手続きを行い、他社による模倣や侵害から自社製品やブランドを守る必要があります。当社では、技術本部に知的財産部を置いて知的財産権の登録・保護活動を進めておりますが、今後当社の市場での競争力を一段と強化するために、製品の企画・開発から量産に至る各段階において多くの権利を出願・登録できるように知的財産権権利化プロセスを変革し、持続的な成長の実現に取り組んでまいります。
⑩ SDGsへの取組み
2015年9月に「国連持続可能な開発サミット」において、人間及び地球の繁栄のための行動計画として「持続可能な開発目標:SDGs(Sustainable Development Goals)」が掲げられました。当社グループもこの目標に賛同し、さまざまな社会問題に真摯に向き合うとともに、事業を通じて社会や環境に良い影響をもたらすことで、持続可能な社会づくりに貢献してまいります。
特に、気候変動などの地球環境問題への対応も重要な経営課題として捉え、とりわけ産業印刷市場においては環境や資源への負荷の高い従来のアナログ印刷主体の産業構造から、デジタル化によるオンデマンドプリントに転換させることにより環境負荷を大幅に低減できることから、今後の製品開発を含む事業活動において環境に配慮した製品展開を推進するなど、積極的に取り組んでまいります。
当社の重要な販売市場であるテキスタイル・アパレル市場では、従来からのアナログ方式による素材や商品の生産・捺染に始まり、輸送、在庫、販売、利用、廃棄・焼却という長いサプライチェーンの過程から大量のCO2が排出され、また素材生地の生産・捺染工程においては大量の水資源が使用されています。さらに、使用された商品だけでなく未使用の商品も含め、全生産量の70%以上が廃棄・焼却処分され、リサイクル・リユース率は合わせても僅か15%程度とも言われています。このように、同市場は地球環境への負荷が最も高い産業の一つとされており、世界的に対処すべき重要な問題と認識されています。当社ではこの問題に対処するため、インクジェット技術でのデジタルオンデマンド捺染による「サステナブル・プリントソリューション」を提供しています。かつ従来のデジタル捺染プリント方式と比べ排水の約90%を削減し、環境にも人にも経済的にも優しい次世代捺染システム「TRAPIS(トラピス)」に加えて、最新の印刷脱色技術「ネオクロマト・プロセス」による循環型のサステナブル・アクションへの貢献など、今後もサステナブル・プリントソリューションを世界的に普及させることで、サステナブルなテキスタイル・アパレル産業の実現を目指して取り組んでまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)サステナビリティに関する考え方
① サステナビリティ方針、マテリアリティーの概要
当社グループはこれまで、経営方針に則り持続可能な社会への貢献を目指してまいりました。その取組をさらに効果的・効率的に推進すべく、マテリアリティー、すなわち重要課題の特定を行いました。その結果、当社グループの持続的な成長および長期的な価値提供において重要な課題を下記の5つに絞り込んだうえで、「社会的価値を提供するためのマテリアリティー(以下、価値提供マテリアリティー)」と「企業価値を向上するためのマテリアリティー(以下、価値向上マテリアリティー)」に大別いたしました。
◆ 価値提供マテリアリティー
A. 既存・新規事業を通じた産業印刷のデジタル化
B. イノベーションを通じたサステナビリティへの貢献
◆ 価値向上マテリアリティー
C. グループ人財の活躍と地域社会の活性化
D. 責任あるサプライチェーンの実現
E. 企業成長に応じたガバナンスの徹底
価値提供マテリアリティーはすなわち、当社グループがビジネスを通じて産業印刷業界ならびに社会のサステナビリティ向上に取り組むことを意味します。価値向上マテリアリティーとは、換言すれば社会的価値の提供を将来も持続するため、そして当社グループが長期的に成長するためのマテリアリティーです。具体的にはサステナビリティ・リスクを予防・低減し、ステークホルダーへ良いインパクトを与えることで、産業印刷業界、社会、当社グループのサステナビリティ向上につながることとなります。
これらのマテリアリティーをふまえ、当社グループが事業活動を通じてサステナビリティにどのように取り組むべきかを改めて検討した結果、サステナビリティ方針を次のとおり策定いたしました。
◆当社グループのサステナビリティ方針
1. 産業印刷のデジタル・オンデマンド化を推進し、持続可能な社会の実現に貢献する
・インクジェット技術を用いたデジタル・オンデマンド印刷なら、必要な時に必要な分だけ生産することで、製品の在庫レス・廃棄ゼロに貢献し、過剰在庫の管理費用をも抑制
・多品種・小ロットを短納期で生産可能、多様な素材に適用できるこの手法を、既存市場でさらに普及・浸透させつつ、新たな市場でも産業印刷のデジタル化を推進していく
・大量生産・大量廃棄社会から脱却し、高品質を保ちつつ、ものづくりを迅速・柔軟に行うためのソリューション提供を通じて、社会のサステナビリティ向上に貢献する
2. 安心して成長・挑戦できる職場環境を提供し、地域社会の維持・発展に尽力する
・互いに助け合いながら成長できる組織、働きやすく、挑戦を尊重する企業風土を実現し、従業員の自己実現によって持続可能な社会への歩みとグループの進化を支える
・創業以来、ともに歩み続けてきた地域社会が将来も活気あるまちとして持続できるよう、リーダーシップを持ってその活性化に向けた役割を果たす
上記の方針に則って、サステナビリティの向上に努めるにあたり具体的に取り組む重要課題が、上記A~Eのマテリアリティーです。
今後も産業印刷業界に新しさと違いを提供することで、社会全体のサステナビリティ向上にイノベーターとして貢献し、その活動を支える従業員の活躍と地域社会の発展に尽力しながら、サステナビリティ・リスクの予防と軽減に努め、ステークホルダーに対する責任を果たしてまいります。
(2)サステナビリティに関する取組
① 戦略
サステナビリティ向上のための取組を加速させるにあたり、今一度その範囲と優先順位を見直し、マテリアリティーを特定いたしました。今後はこのマテリアリティーに優先的に取り組むとともに、変化する外部情勢に柔軟に対応することで、サステナビリティ方針の実現を目指してまいります。
マテリアリティーの詳細(財務的リスク・機会ならびに正負のインパクト)
ここでは、リスク・機会を「直面する財務的なリスク」 「享受する財務的な機会」、インパクトについては「(他者へ)及ぼす正または負の影響」と定義いたします。当社グループのサステナビリティに関する取組は、産業印刷業界と当社グループの財務的な機会に繋がり、そして業界・社会・当社グループに正のインパクトをもたらすと言えます。同時に、当社グループの財務的リスク、ならびにステークホルダーへの負のインパクトの予防・低減も目指しております。マテリアリティー特定にあたっては、事業を取り巻く状況やその特性をふまえ、どのような機会・リスク・正負のインパクトが顕在化しているか、あるいは潜在的に存在するかを短期・中期・長期の時間軸で広く抽出したうえで、その重要性を数値で評価いたしました。また欧州に現地法人を有することから、欧州の開示規制で指定されている欧州サステナビリティ報告基準(ESRS)を参考に特定を実施いたしました。
1. 評価バリューチェーン、ステークホルダー、時間軸の整理、評価トピックの決定
2. インパクト・リスク・機会(以下、IRO)特定、閾値の整理
3. 閾値に基づいたIROの評価
4. IROに関するステークホルダーエンゲージメントの実施(一部項目では未実施)
5. 重要なIROの決定、Mimaki Innovation 30に整合したマテリアリティーへの集約、サステナビリティ方針の策定
1~5においては、SDGs推進室が主導して各本部の意見を集約いたしました。最終的なマテリアリティー案とサステナビリティ方針案は、SDGs推進会議において各本部長と経営層による協議を経て社内の合意を形成の上、取締役会で社外取締役へ報告し、最終化としております。
上記の手順を経て特定した、特に重要な5つの項目の詳細は次の通りです。

A. 既存・新規事業を通じた産業用印刷のデジタル化 →機会・正のインパクトの増大
当社グループは産業用印刷機器等を市場に提供し、SG・IP・TA市場のデジタル化に貢献しております。既にノウハウを蓄積しているこのビジネスにおいて、既存の製品群の改善や高度化を続け、業界の課題解決と、当社グループのさらなる成長を目指します。加えて、Mimaki Innovation 30に基づきイノベーションとそれを起こす人的資本への投資を積極的に行い、新たな市場を開拓いたします。これはデジタル化による課題解決を、より多様な分野に展開していくためであります。業界・社会に正のインパクトをもたらすこれらの戦略は、中長期的な収益源の維持・確保、すなわち財務的な機会としても重要であります。
B. イノベーションを通じたサステナビリティへの貢献 →機会・正のインパクトの増大、負のインパクトの低減
気候変動や水質汚染、人手不足など、社会が抱える問題に対し、当社グループはイノベーターとして、技術力でソリューションを提案していきたいと考えております。デジタル・オンデマンド印刷を可能にする当社の製品史には、世界初の機能を誇る発明がいくつもあります。このイノベーションの歴史を、複雑化する社会課題の解決に役立てるべく、マテリアリティーとして今後も取り組んでまいります。具体的には、印刷工程で水を使わず、しかも簡単に多様な繊維素材へ顔料転写ができるシステム「TRAPIS」や、ポリエステル製広告アイテムから染料を脱色し、アップサイクルを可能にする「ネオクロマト・プロセス」(開発中)など、独自性のあるソリューションを展開しております。またMimaki Innovation 30においては、当社グループのコア技術の応用・発展により高粘度領域に進出し、Digital Paintの実現を目指しております。これらは当社グループの技術力がより広範な正のインパクトを社会に創出することを意味し、同時に当社グループの新たな収益源となる可能性を秘めております。
C. グループ人財の活躍と地域社会の活性化 →正のインパクトの増大、リスクの予防・低減
それぞれのマテリアリティーに取り組むうえで、長期的な成長および継続的な価値の提供のため、グループ従業員のさらなる成長・活躍と、地域社会の維持・発展を推進することが重要になると考えております。Mimaki Innovation 30の達成に向けては、オープンイノベーションを含めた多様な連携を展開し、技術開発から営業力強化に至るまで、全社的な専門教育の深化を通じて、新しさと違いを提供するイノベーターを創出してまいります。同時に、地域との連携を強化し、その活性化においてリーダーシップを発揮していく必要があります。雇用の創出による貢献という面では、借上社宅制度や帰省手当等の支給、地域の暮らし情報発信等により、勤務地域外に生活の本拠地がある社員にも働きやすい環境の整備に取り組んでおります。また、地域のスポーツクラブや美術館等の事業による文化振興、観光資源でもある季節の催事等への支援や参加を通じて、地元企業として微力ながら、活気あるまちづくりへの貢献を目指しております。こうした取組を通じて、当社グループ内外のステークホルダーに正のインパクトを提供してまいります。人的資本への投資が採用競争力を高め、人財の定着に繋がり、そして競争力の源となるイノベーションを促進する点、それから当社グループの人財獲得や地域支援が直接的・間接的に地域の都市機能の維持に貢献するという点では、これらの分野に取り組まないことが財務的なリスクになり得ると考えております。
D. 責任あるサプライチェーンの実現 →リスク・負のインパクトの予防・低減
事業の継続と成長に伴い、グローバルにビジネスを行う当社グループのサプライチェーンは今後も拡大が予想されます。このサプライチェーンにおいて人権侵害、森林破壊等、当社グループのステークホルダーに対する脅威となりうる事項の把握、予防、低減に努めることは、企業としての責任であります。同時に世界規模の課題である気候変動等に対しても、対応の緊急性をグループ全体で認識し、GHG排出量の削減や再生可能エネルギーの導入等の取組を積極的に行う必要があります。これらの対応も含めて、安定した製品供給とそのレジリエンスを確保するための事業継続計画の重要性の高まりを認識し、平時の準備を進めてまいります。こうした負のインパクトの予防・低減に適切に対処できない場合には、当社グループの事業に対する財務的なリスクが発生する可能性があります。
E. 企業成長に応じたガバナンスの徹底 →リスク・負のインパクトの予防・低減
当社グループにおいては、2020年に策定した中長期成長戦略「Mimaki V10」における、営業利益率10%の目標を1年前倒しで達成するなど、コロナ禍を経て成長を続けております。今後、新・中長期成長戦略「Mimaki Innovation 30」で定めた目標に向かうためには、ガバナンスの実効力をさらに高め、経営管理体制を強化することで、いわゆるVUCAの時代に生じる財務的なリスクを低減することが重要です。リスク予防・低減を適切に実施できない場合、具体的には法令違反や経営管理上の過誤等により、当社グループならびにそのステークホルダーへ負のインパクトが及ぶ可能性があります。そうした事態を防ぐべく、AIをはじめとするテクノロジーを最大限に活用し、従業員一人ひとりの業務効率・品質の向上や、DXによる内部統制の強化など、当社グループの成長速度と時代の流れに則したガバナンス体制・経営管理体制を維持できるよう、アップデートを継続してまいります。
戦略の実践として、当期に取り組んだサステナビリティ関連施策の一部を抜粋して記載いたします。
既存・新規事業を通じた産業用印刷のデジタル化
IP市場向け製品ラインナップへの「ちょうどいいサイズ-Just In Size」のJFX200-1213EX追加や、各地のTA市場で好評を博したDTFプリンタの、生産性を大幅に向上させた1600mm幅モデルの追加、同じくTA市場において「無水」のオンデマンド捺染を牽引するTx330-1800/1800Bの発表など、顧客のニーズを捉え、新しさと違いを提供する新製品を当期も多数投入いたしました。詳しくは、
イノベーションを通じたサステナビリティへの貢献
印刷済の生地から染料を脱色し、その再利用を可能とする「ネオクロマト・プロセス」の実用化に向け、株式会社ロフトの「ロフト グリーンプロジェクト」に全面協力いたしました。株式会社BP Labの運営する繊維循環プラットフォーム「BIOLOGIC LOOP」の協力のもと、ロフトの各店頭で使用された装飾用タペストリーの循環利用トライアルを行うことで、ポリエステル製広告表示物の廃棄削減の普及に向けた新たな歩みを進めました。また当期末には、日華化学株式会社・エレファンテック株式会社および当社の3社合同にて、「ネオクロマト加工」の開発と実用の展開で2024年度繊研合繊賞・サステイナブル部門賞を受賞いたしました。一方、当期に発表したSG市場向けのCJV200シリーズに搭載される新エコソルベントインク「SS22」は近年、世界的に使用規制が強化されているGBLという有機溶剤を含有せず、これまで以上に作業者の安全に配慮した製品であります。グループ会社においては、アルファーデザイン株式会社が半導体後工程自動化・標準化技術研究組合(SATAS)への加盟を発表いたしました。同社のコア技術であるフリップチップ搭載技術により、半導体製造の後工程の自動化・標準化への貢献を目指します。
グループ人財の活躍と地域社会の活性化に資する取組
国内外のグループ会社においても、各社が拠点を構える地域のイベント・事業の支援や、教育振興、多様な雇用の創出に貢献いたしました。各地域でのイベントが行われる際には、当社製品の貸し出しや、当社製品で出力した印刷物の提供を行いました。また、日本や欧米におけるインターン生の受入、オーストラリア等での学生の見学受入・就業体験の実施等を通じて、次世代の人財育成や当社グループ事業への理解促進に努めております。またトルコでは、これまで従業員やその家族へ提供していたホリデーギフトの一部を、慈善団体への寄付に変更いたしました。当社においては人事部内にオフィスサービスグループを新設し、障がいのある従業員が適性に応じた業務を行えるよう環境を整備し、積極的な雇用に取り組みました。
グループ人財に対しては、福利厚生制度の拡充、労働環境の改善、教育の実施などを行い、安心して成長・挑戦できる職場環境の整備に取り組みました。制度面では不妊治療に対する助成金の創設と特別休暇制度の拡充、人間ドック受診費用の補助や、全社的な年収水準の底上げ等、各社・各地の情勢等を鑑みて、安心して働ける環境の醸成に努めました。また製品入出荷時の従業員負担を軽減すべく省力化設備を導入したり、事務所の改装を行ったりと、安全な職場づくりに注力いたしました。教育面では、イノベーションの創出に向けて従業員の積極的な挑戦を促すべく、信州大学リスキリング教育短期プログラムによる専門教育を継続したほか、ブラジルやインドネシア、台湾をはじめとする子会社においても、社内教育を実施しました。さらに、ドイツや中国で従業員向けのイベントや満足度向上のためのワークショップを開く等、チームとしての成長や団結に資する施策も行っております。
責任あるサプライチェーンの実現に向けた取組
温室効果ガス排出量の削減に向けた第一歩である省エネ施策として、ガソリンの使用量を減らすべく、ブラジルでは社有車におけるバイオアルコール燃料の使用率を上昇させました。国内においては、社有車の一部を電気自動車に切り替え、その充電にはCO2フリー電力を用いることで、CO2排出量のさらなる削減に努めております。また海外子会社においては、保守パーツの管理方法改善を通じて環境負荷の高い輸送方法の使用低減や、ペットボトル使用量の削減を目指し、ウォーターサーバーの導入や個人の水筒等の使用推進を行っております。一方、森林の保全につながる新たなアプローチとして、適切な森林管理と温室効果ガスの吸収量増加につながる事業を応援すべく、「J-クレジット預金」への預入も実施いたしました。さらに、プラスチック使用量の低減によるCO2排出量の削減を特長とし、国内で先行販売していた紙製インクカートリッジを、当期より全世界に向け出荷開始いたしました。同製品は、2023 日本パッケージングコンテスト「工業包装部門賞」の受賞に続き、当期では、イギリスで開催されたthe Sign Industry Awards 2025において、当社販売代理店のHybrid Servicesを通じて”the Sustainable Product award”を受賞いたしました。
企業成長に応じたガバナンスの徹底
当期より、ガバナンス機能の補強を目的にグローバル管理プロジェクトを新設したこともあり、ワールドワイドで社内規程の見直しや強化が進められ、内部統制システムの実効性のさらなる向上を目指しました。また既存あるいは新たに策定した規程が適切に運用されるよう、社内教育を通じた落とし込みと運用開始後のチェックについても、確実な実施のための仕組み化を進めております。また、グループ各社内の各種申請手続きの電子化を引き続き進め、業務効率・品質の向上と相互牽制の両立にも取り組んでおります。
② リスク・機会・インパクトの管理
様々なリスク・機会・インパクトを取り扱うにあたり、当社グループにおいては、必要なアクションを迅速に認識・実行することを目的として、対応を行う各部門より経営陣と各責任者へ定期的に報告を行っております。これにより情報を遅滞なく浸透させ、重要度に応じて取締役会も含めた的確な判断を行える体制を敷いております。
まず当社グループの全般的なリスク管理は、コーポレート統括本部が統括し、その体制を含めて社長の直轄部署である監査室が内部監査を行っております。
サステナビリティ関連リスク・機会・インパクトは、主に製品開発や生産他、業務執行における課題の解決が、当社グループの事業の持続可能性にも資するという観点で各部門が個々に抽出してきました。それらを業務計画に織り込んで対応し、包括的な識別・評価・管理プロセスは、前期よりSDGs推進会議が担っております。新たに特定したマテリアリティーは、これまでの取組と現在・将来の外部動向をふまえたものであります。今後はマテリアリティーを中心として課題の解決に取り組みます。
気候変動関連のリスク、インパクトは、SDGs推進室及びグローバル人財総務本部内の総務部を中心に対応を行い、月次のSDGs推進会議を通じて進捗管理を行います。機会については、営業本部内のグローバル・マーケティング部が捕捉し、ビジネスに繋げる活動を行います。中長期的な財務的リスク・機会に関しては、2023年度のTCFDプロジェクト活動において、識別・評価を行いました。また、ESRSを参考にしたマテリアリティー特定プロセスにおいても、最新の動向をふまえてこの気候変動関連リスク・機会を考慮いたしました。
人的資本関連リスク・インパクトは、グローバル人財総務本部内の人事部を中心に対応を行い、月次のSDGs推進会議を通じて進捗管理を行っております。採用計画、人事制度や研修プログラム等、全社に係わる案件を含むことから、経営会議や取締役会においても報告を行っております。詳細は、
SDGs推進会議では、期初に設定した目標値に向けて、関連部署との定期的な情報共有・更新を兼ねて取組の進捗と課題を報告し、適宜方向修正を行います。
また当期より、今後の企業成長に備えてグローバル管理プロジェクトを新設いたしました。リスクの予防とさらなる管理体制の強化の一環で、過去に整備した規程やフローが適切に運用されているか、チェックする役割を担います。
③ 指標・目標
マテリアリティー別の中長期的な目標の具体例は、次のとおりです。これらの内容は、今後の進捗や変化する外部動向に応じて適宜、見直しを行います。マテリアリティーの目標に対する進捗を測る指標の一部は、今後策定・公開を予定しております。
A. 既存・新規事業を通じた産業印刷のデジタル化
中長期成長戦略Mimaki Innovation 30の基本方針を基に、次のKPI達成を目指してまいります。
※基本方針:安定的な収益性で売上高成長の追求を継続し、資源の積極的な活用により新たな領域にチャレンジすることで、2030年3月期に売上高 1,500億円を目指す
a. 2030年3月期に売上高1,500億円、営業利益率8%以上
b. 新製品売上高比率(NPVI)年30%の達成
B. イノベーションを通じたサステナビリティへの貢献
a. ネオクロマト・プロセスの完成・普及による資源循環への貢献
b. IP市場向け製品の販売促進による省力化・労働生産性の向上
C. グループ人財の活躍と地域社会の活性化
人的資本関連施策と指標・目標の詳細は、
a. 階層別教育の充実、専門教育の深化によるイノベーションの促進と人財の高度化
b. 職場環境の改善による採用競争力の強化と人財の定着
c. 地域事業への参画、支援を通じた社会との関係構築・強化
D. 責任あるサプライチェーンの実現(主に環境/人権リスク)
a. 温室効果ガス(以下、GHG)排出量の削減をはじめとする気候変動対策
目標および削減計画については、(3)③をご参照ください。
b. 人権侵害・環境破壊・汚職等のリスク予防・低減
c. 調達におけるBCPを策定・運用し、製品の安定供給を維持
E. 企業成長に応じたガバナンスの徹底
a. 法令違反の予防、業務実態に応じた社内規程の定期的な見直しと適切な運用
b. グループ全体における管理会計の浸透やルール等の統一による業務品質・効率の向上
c. テクノロジーによる業務品質・効率の改善
④ ガバナンス
ここでは、当社グループのサステナビリティ関連のリスクや機会、インパクトに対して、どのようなガバナンス体制を敷き、経営陣や会議体がどのように関与しているかを説明いたします。当社グループ全体の事業活動を対象とした企業統治の詳細については、
サステナビリティ関連のリスクや機会、インパクトに関する取組においては、SDGs推進室が主幹として各本部の対応を統括し、毎月SDGs推進会議を開催しております。
この会議にはSDGs推進室のほか、代表取締役社長、専務取締役、常務取締役ならびに、一部の取締役・執行役員を含む全本部の責任者が出席し、全社的な推進体制を敷いております。取組の本格化のため、2022年4月のSDGs推進室設置と同時に発足させました。
これまで各部門が別個・独自に推し進めてきた活動の全容を統括し、部門横断的な課題にも柔軟なアプローチを行う、あるいはESG領域以外の課題との優先順位を整理するなど、効率的な取組推進を見据えた議論、タイムリーな報告、迅速な判断を行う場としての役割を担います。毎月の会議においては、各本部のESG業務計画の進捗報告のほか、当社グループとして認識・開示するESG領域の課題や目標等、審議事項についての議論・合意形成も行われます。また、本部長自らが参加することで、当社グループにおけるESG課題の重要性の認識、意識の向上にも貢献しております。
その他の会議体に関しては、四半期に一度、全社の責任者が出席するQレビュー会議にてSDGs推進室が全体的な取組状況を報告し、財務・経営に大きな影響のある事案については適宜、経営会議でもSDGs推進室や人事部・総務部など当該案件を取り扱う部門より報告・議論を行い、取締役会でも管掌役員より報告を行います。
また、そのような事案は監査等委員会の議論にも上がり、必要に応じて取締役会への意見提起も行われました。あわせて当期は、SDGs推進室より監査等委員会へ、Mimaki Europe B.V.のCSRD対応の準備状況を報告いたしました。
(3)気候変動への対応(TCFD提言への取組)
① 戦略
全社横断体制で気候変動に関する議論を深める必要性から、2023年度には全本部より選出したメンバーによる「TCFDプロジェクト」を実施いたしました。全社的な視点で気候変動関連課題の分析、財務的影響の算定等を実施し、多角的に当社グループの状況を把握したことで、中・長期的に取り組むべき課題が明確になりました。当期は当社グループ全体のマテリアリティー特定作業を行うにあたり、このTCFDプロジェクトの結論と最新の動向をふまえ、各本部の意見を反映いたしました。
具体的には下記の手順で、事業に影響を及ぼす可能性のあるリスク・機会特定と財務的影響の算定、インパクトの特定、対応策の検討を行いました。引き続き、特定した内容への対応を継続し、新たなリスク・機会・インパクトに関する対応策の検討を行ってまいります。
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1 |
前提条件の設定 |
分析対象範囲(地域、事業)、時間軸の設定 |
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2 |
リスク・機会の特定 事業インパクト評価 |
TCFD提言で挙げられている、低炭素経済への移行に伴う4分野のリスクと、気候変動の物理的影響に関連した2分野のリスク、そして気候変動への適応・緩和策に関する5分野の機会から事業継続において想定される影響を特定。「影響を受ける可能性」と「影響の大きさ」を点数化し、事業インパクトの大きいリスク・機会を抽出し、重要度を評価 |
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3 |
シナリオ分析 |
2で特定したリスク・機会のうち、影響度が高いと推定されるものについて 2℃以下・2℃以上の各シナリオにおける当社グループ事業への財務的影響を算定 |
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4 |
対応策の検討 |
3の結果、事業インパクトの大きいリスク・機会について対応策や方針を検討 |
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5 |
インパクトもふまえた再検討 |
(当期の追加対応事項) 気候変動を含むサステナビリティ関連リスク・機会ならびに当社グループが及ぼす正負のインパクトを検討。重要度を評価し、重要と判断したIROをマテリアリティーに位置づけ、サステナビリティ領域において高い優先順位で取り組むことを決定 |
A. 採用シナリオ
TCFDプロジェクトにおける分析には、移行リスクの面で国際エネルギー機関(IEA)によるSTEPSならびにSDSシナリオ、物理リスクの面で気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によるRCP8.5及び2.6シナリオ*1を採用いたしました。
*1 RCP8.5及び2.6シナリオ:IPCC 第5次報告書の気候モデル予測で用いられる、温室効果ガスの代表的な濃度の仮定(シナリオ)
*2 GHG:温室効果ガス

出典:環境省「IPCC第5次評価報告書の概要 -第1作作業部会(自然科学的根拠)- (2014年12月版)」
IPCC「第5次評価報告書」のRCP8.5シナリオ、RCP2.6シナリオ
IEA「世界エネルギー見通し2021年版(WEO-2021)」のSDSシナリオ、STEPSシナリオ
B. シナリオ分析結果と、対応するマテリアリティー
a.気候変動関連対応に関する特筆すべき当期の取組
当期においては、欧州の企業サステナビリティ報告指令(以下、CSRD)の対象に当社の欧州子会社であるMimaki Europe B.V.が該当する見込みであると考え、全本部からメンバーを選出した「CSRDプロジェクト」を組織し、同指令に即したサステナビリティ開示の準備・対応を進めました。同指令が網羅するトピックのひとつである気候変動は、当社グループの事業活動に影響を与える課題であり、同指令に則った適切な気候変動関連開示をできない場合、法令遵守の不履行やレピュテーション低下の恐れがあると考えます。そのためCSRDプロジェクトにおいては、気候変動を含めたサステナビリティ・トピックにおけるリスク・機会・インパクトについて各本部メンバーで協議・評価を行いました。最終的には当社グループのマテリアリティーの1つに気候変動対策を包含し、今後も取組を強化することを結論付けました。
なお当期末時点で、欧州議会ではCSRD対応による企業の負担軽減を目的としたオムニバス法案が提出され、サステナビリティ報告の義務化については適用時期の延期が見込まれております。また開示義務の適用対象縮小に関する法案が議会を通過した場合には、Mimaki Europe B.V.は同指令の適用対象外となる可能性があります。対象外となった場合でも、マテリアリティーへの対応を通じてサステナビリティ向上の努力を続け、それに伴って開示情報も一層の充実を図ります。
b. レジリエンスの向上
シナリオ分析を通じて認識している、今後の大きな気候変動関連リスクとしてコストの上昇(レピュテーション低下による人財不足対応を含む)、異常気象による調達難、そして機会としてはデジタル・オンデマンド印刷需要の増加があります。
具体的には、炭素税の導入やそれに伴う材料・エネルギーの価格高騰など、製品コストにかかわるリスクの発生が予想されます。対策として、製品自体の原価率低減のほか製品の容器・梱包等におけるコスト削減及び資源利用量の削減を継続しております。また気候変動の影響に限らず、昨今のコスト上昇に対応すべく販売価格を適切に見直すなど、取り得る選択肢を柔軟に検討してコスト上昇リスクに対処しております。
加えて、調達難を含む想定外の事態の影響を、最小限に留めるために備えております。管理部門においては、緊急時の基本的対応に用いる安否確認システムの導入徹底や、地政学リスクへの対応も考慮して、各工場間における生産品目の移管等も適宜行っております。
ESG課題に対する当社グループの取組をさらに効率的・効果的に進めるため、マテリアリティーを特定し、サステナビリティ方針を策定いたしました。これにより、社内におけるサステナビリティ施策の重要性が明確になっただけでなく、社内外にむけて当社グループがなぜ、どのようにサステナビリティに取り組んでいるかをより明確に発信できるようになりました。2025年度からは従業員に対するサステナビリティ教育も開始しており、今後も社内外に当社グループのサステナビリティ対応への姿勢を発信していきます。
最後に、気候変動対応の緊急性が叫ばれる今、当社グループの強みであるインクジェットプリンタと関連技術がもたらす価値は向上し続けると推測しております。多品種生産のニーズに応えるこの製品・技術は、大量生産による過剰在庫や廃棄物の削減に資するものであります。この技術・製品の普及により、当社グループはお客様先のビジネスの支援と同時に、環境負荷の削減、管理面の負担軽減をもサポートしております。お客様の持続可能なデジタル・プリンティングビジネスを支え、各本部によるリスクの低減・緩和、機会の最大化を通じて統合的なサステナビリティ向上を目指すことが、全社的なレジリエンス強化に繋がると考えております。
② リスク・機会・インパクトの管理
当社グループでは当期、全本部より選出されたメンバーからなるプロジェクトチームにおいて、気候変動関連を含むサステナビリティに関するリスク・機会・インパクトを識別・評価いたしました。当該内容は、代表取締役社長をはじめとする社内取締役・一部執行役員と各本部責任者で組織するSDGs推進会議へ報告いたしました。以降もリスクの発生時には関係部門にて認識のうえ、全社的な影響の大きい場合は適宜、SDGs推進会議のほか、Qレビュー会議ならびに取締役会への報告により管理し、内容によっては監査等委員会においても議論の対象となりました。
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リスクの抽出 |
評価・分析 |
対策・管理 |
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TCFDプロジェクトのアウトプットやESRS基準ほか各機関の提言・発表等を参考に、連結のサステナビリティ関連リスク・機会・インパクトを抽出。 |
抽出したリスク・機会・インパクトによる影響を点数評価し、重要度が高いと推定される項目を特定。 |
重要なリスク・機会・インパクトを集約してマテリアリティーを特定し、それに対応するサステナビリティ方針を策定。SDGs推進会議ならびに取締役会へ適宜報告。引き続き、各マテリアリティーへの対応を各部門の業務において進める。指標・目標と達成計画の策定後、経営計画に反映し毎月のSDGs推進会議でPDCAサイクルを回す。 |
③ 指標・目標
A. Scope 1, 2 連結ベース(2016~2023年度)
2021年度以降、国内外の拠点において、CO₂フリー電力や再生可能エネルギーの導入を進め、Scope 2削減に尽力しております。今後も、CO₂フリー電力導入拠点の増加に取り組んでまいります。
*排出量の数値は、算定範囲や算定に使用するCO2排出係数等により、後に変更となる可能性があります。
B. Scope 1~3 単体ベース(2023年度)
当期に集計を完了した2023年度のCO₂排出量は次の表のとおりであります。なおScope 3排出量は独自のシナリオに基づいて算定しており、前提条件の変更等により数値が変動する可能性があります。Scope 3については、カテゴリ1の排出量が最も多いことから、製品の容器や梱包材において、排出係数が比較的小さな素材への切替を積極的に進め、売上伸長と排出量削減の両立を目指します。
連結ベースのScope 3は、2026年度以降の集計・開示を目指しております。
*Scope 3 試算困難との表記について
合理的な根拠数値の算出と、それによる精緻な排出量の算定が困難なカテゴリは、今回の算定結果より除外しております。
C. CO₂排出削減目標
Scope1, 2排出量について、直近の年度で最大の排出量であった2019年度と比較し、2026年度に60%、2030年度に61%の削減目標を設定し、削減に取り組んでおります。なお、この目標は国内外にほぼ毎年、拠点1箇所ずつを新設する想定の元に設定しており、企業成長を続けながらも排出量の抑制・削減に努める意向であります。目標と前提条件、削減施策は次のとおりです。
[目標]
2019年度比 2026年度▲60%
2030年度▲61% *2019年度排出量は記録のある2016年以降で最大
[前提]
・2023年度よりほぼ毎年、国内外に各1箇所の拠点新設を想定
・売上高が伸長を継続する想定
→ 拠点増加、売上伸長等の企業成長を実現しつつCO₂排出量の増加抑制・削減に努める
[排出量削減に向けた主な施策(実績)]
・省エネの徹底(省エネ空調やLED照明、ハイブリッド車の導入、デマンドコントロール、電力会社要請に応じた節電)
・再エネ由来電力導入拠点の増加
・創エネシステムの導入(加沢工場)
④ ガバナンス
ガバナンスについては、
(4)人的資本関連の取組
(基本的な考え方)
経営ビジョンに「開発型企業」「イノベーター」をありたい姿として掲げる当社にとって、多様な価値観を有する「人財」こそ最大の経営資源です。当期に策定したサステナビリティ方針に則り、産業印刷のデジタル・オンデマンド化を引き続き推進すべく、特に製品開発を行う人財とグローバル適応のできる人財の確保を積極的に推進しています。
併せて、ダイバーシティの推進、特に女性活躍推進やジェンダーギャップの解消、働き方改革の推進や働きやすい環境づくり、管理職を含めた意識改革などを進めています。また、教育体系の充実を図り、各人の能力を最大限発揮できる企業風土の醸成に取り組んでいます。
① ガバナンス
人的資本の諸課題に対応するため、2024年度からグローバル人財総務本部を設置しており、月次の経営会議等で採用計画や人員計画の進捗状況の確認を行うとともに、人的資本経営に関する重要事項については、担当役員から取締役会へ適宜報告を行い、必要情報の共有を行っています。
また、こうした企業風土の醸成には、社員と経営との情報共有や意見交換等の対話が不可欠であり、社員代表と経営層で構成される「社員経営者協議会」を毎月開催して、社員の要望や意見の確認、施策の状況説明等を継続しています。
今後もマテリアリティーのひとつである「企業成長に応じたガバナンスの徹底」を図りつつ、Mimaki Innovation 30の実現に不可欠な人財戦略を着実に遂行していきます。
② 戦略
(中核人財の確保)
「開発型企業」「イノベーター」を目指すために、中核となる人財の育成・確保は重要な経営課題です。経営層も候補人財へのアプローチや選考に深く関わることで採用態勢が強化され、必要人財の確保を進めています。
・職種に応じた適材適所の考え方を基本に、人財の多様性を考慮しつつ、採用活動を積極的に進めています。具体的には、キャリア採用は製品開発力の強化、営業戦力の強化、管理態勢の強化に向けた「即戦力」を、新卒採用は中長期的視点から開発・営業の中核を担える「将来戦力」を確保します。
・処遇や評価の納得性を高め、組織の活性化を図るために、人事制度の見直しを進めております。現行の役割等級制度にジョブ型要素を加えて各人が取り組むべき課題や職責を明確にするとともに、メンバー相互が連携して、組織として計画達成に邁進する風土を築きます。また、持続的な賃上げに取組み、成果に応じた処遇、やりがいのある職場環境をつくります。また、外部教育機関との提携による専門教育の充実、職場環境の改善に取り組み、中核人財の確保・定着を進めます。
(多様性の確保)
多様な人財が活躍できる環境を整え、「各人が持っている個性・能力を力一杯発揮できる企業風土」の実現を目指して取り組みます。
・女性活躍推進:女性管理職比率は、会社組織の拡大もあり2020年度の3.1%から低下しておりましたが、2024年度は4.2%に改善しました。採用活動の強化や人材育成の成果と認識していますが、女性管理職を展望できる人財の採用促進、育成・動機づけ、ダイバーシティ研修(管理職対象)等を通じた社員の意識改革を行い、引続き女性管理職比率の適正な向上を目指します。また、女性社員比率は製造業では相応の水準にはあるものの、上記と同様の理由により2021年度の24.0%から低下傾向にありましたが、2024年度は21.4%に改善しております。有給休暇の取得促進等や働きやすい職場環境づくりに取り組みます。
・障がい者雇用:関係法令の趣旨を踏まえ、積極的に取り組む課題と認識しています。2023年度には障がい者が活躍できる部門としてオフィスサービスGを新設して、社員用の弁当提供サービス(2024年4月開始)や外部委託をしていた清掃業務の内製化、福利厚生施設である本社カフェの運営担当などに業務を拡大しております。2023年度以降は9名採用しております。
[女性管理職比率・女性社員比率]
・男女の賃金格差:2024年度で男性100%に対して女性74.8%となりました。当社は、役割等級制度を導入しており、賃金体系上は男女間の賃金差を設けていませんが、管理職の男性比率が高いこと、給与の高い階層における男性比率が高いこと等が要因であると考えています。2024年度は前年度比+2.2%改善しましたが、引続き女性管理職比率や女性社員比率の改善に取り組んでいきます。
※1 年度は年度末時点です
※2 従業員数は単体+国内子会社出向の正規雇用・非正規雇用社員の合計です
※3 女性管理職比率は管理職全体に占める女性管理職の比率、女性社員比率は全従業員(※2)に占める女性社員の比率です
(教育体系の充実・人財育成の強化)
サステナビリティ方針で掲げる、「安心して成長・挑戦できる職場環境の提供」のため、人財確保と併せて、教育体系の充実を図り、人財育成の強化に取り組みます。
・専門教育の強化(人事部・各本部主管)…各本部で選定したテーマに基づき、計画的に専門教育を実施しています。技術部門では、2023年度からスタートした信州大学「リスキリング教育短期プログラム」契約の基づき、2024年度も技術教育講座3講座を行い、延べ121名(前年度比-22名)が受講しました。2025年度には他教育機関でも技術教育講座を開設する予定です。営業部門では、今年度、国内営業を対象に営業パフォーマンス向上トレーニングを行います。社内講師を据えた個別指導型の研修として、個々人の営業力強化に取り組みます。受講人数の増加と並び、新規の専門研修の導入を積極的に行います。また、教育関連投資額の着実な増加に取り組みます。また、社内リソースだけでは対応が難しい専門教育については、引続き、外部教育機関との連携を図っていきます。
・階層別教育の充実(人事部主管)…新任管理職研修、中堅社員研修、部長研修等の階層別教育を人財育成のベースと位置づけ、国内グループ会社社員も参加して実施しています。2024年度は234名(前年度比+81名)が受講しました。
・有益な資格取得に関わる取得費用や報奨金を支給する資格取得報奨制度の運営により、社員個々人の成長を継続的に支援します。2024年度は26名(前年度比+3名)が対象となりました。
(職場環境の改善・福利厚生制度の充実)
ワークライフバランスに配慮した職場環境、福利厚生制度の充実に加え、事故防止等安全安心にも配慮した職場環境の実現に取り組みます。
・有給休暇の取得促進…2023年度から1週間連続して有給休暇が取得可能な「リフレッシュ休暇」制度を導入し、一人平均有給休暇取得日数は2024年度実績で14.2日(前年度比-0.5日)となりました。引続き、リフレッシュ休暇の定着に努め、有給休暇を取得しやすい環境づくりに取り組みます。
・時間外労働の縮減…必要人員の確保や業務の効率化に取り組むとともに、一定期間における一人平均時間外労働が多い部門は、改善計画の策定を行う等の対策を行い、引続き、時間外労働の縮減を進めます。
・男性育児休業の取得率向上…人事部に相談窓口を設置し、職場・本人への制度周知や休暇取得の促進に取り組み、2024年度の取得率は95.8%(当社独自の休暇制度利用を含む)となりました。男性育児に対する意識の変革、育児との両立、男性女性問わず働きやすい環境づくりを引続き進めていきます。
[育児休業取得率]
※1 年度は年度末時点です
・両立支援の取組みの拡充…2025年2月に不妊治療両立支援制度を導入しました。不妊治療に伴う特別休暇(上限10日/年)ならびに不妊治療費の補助(最大100万円)を内容とするものです。ライフステージにおける充実やサポートを強化するために、両立支援制度の拡充に引続き取り組んでいきます。
・事故防止・安全衛生活動の推進…安全衛生委員会を中心に横断的な活動を行い、定期的なリスクアセスメントの実施や事故防止に取り組んでいます。特に、交通事故や労災事故は、職場における安全安心確保の点から、発生時の原因分析と再発防止を徹底していきます。また、各本部・部門単位で独自にテーマ選定を行い、幅広く職場の課題解決を行う5S活動を展開していきます。
③ リスク管理
「人財」こそ最大の経営資源であり、採用力が低下して必要人財の確保が進まないこと、職場環境の改善が進まず社員の離職により必要人財が不足することが大きなリスクと考えています。雇用の流動性が高まる中で、処遇の改善や教育の充実、職場環境の改善を通して多様な人財が活躍できる環境を整備することで、リスク低減に努めていきます。
④ 目標及び指標
2024年度に掲げた重点項目の達成状況ならびに2025年度に取り組む指標ならびに目標は以下のとおりです。人材育成・教育の充実として一人当り教育関連投資の増加、職場環境の改善として有給休暇の取得促進に引続き取り組んでいきます。
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カテゴリー |
KPI |
2024年目標 |
2024年実績 |
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多様性の確保 |
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3.5% |
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福利厚生制度の充実 |
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15.0日 |
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※1 目標数値は各事業年度末時点です
※2 従業員数は単体+国内子会社出向の正規雇用・非正規雇用社員の合計です
※3 女性管理職比率は管理職全体に占める女性管理職の比率です
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カテゴリー |
KPI |
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人材育成・教育の充実 |
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職場環境の改善 |
1人平均有給休暇取得日数の増加 |
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※1 目標数値は各事業年度末時点です
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性がある認識しているリスクは、以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)製品の欠陥について
当社グループは、自社開発の製品を主な商材としておりますが、製品の不具合が発生した場合には、その修理や補償に係るコストに加えて製品開発計画に遅れが生じ、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。品質問題がやむなく発生してしまった場合の対応策としては、誠実かつ的確な顧客対応を行うとともに、発生の原因究明と対策を速やかに実施することと併せて、再発防止策を策定し実行いたします。なお、当社では製造物責任賠償保険に加入しております。品質問題を発生させないための対応策としては、設計・製造・サービスの各部門の課題を明確にして取り組むとともに、品質改善を経営の最優先事項としてプロジェクト体制で推進し、より実効性のある対策を展開して品質コストの低減を進めてまいります。
(2)コスト競争力について
①原材料の調達について
当社グループの製品は、プリントヘッド、電装部品、機構部品、インク染料等の原材料から構成されております。原材料の調達にあたって何らかの理由で現仕入先からの調達が困難になる可能性や、市況動向等の影響による価格上昇の可能性があります。過年度においては、新型コロナウイルス感染症の感染拡大やロシアによるウクライナ侵攻等の影響により、一部原材料の調達が困難な状況が発生するとともに、原油を含む各種燃料価格や素材・原料価格上昇に伴う歴史的なインフレの影響等により、当社での原材料調達価格も全般に上昇・高止まりしております。これらの要因は、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクへの対応策として、サプライチェーンの見直しに向けてプロジェクト体制による調達力の強化に取り組み、地政学的リスクも勘案した調達先の見直しや複数の調達先確保等によるリスク分散を進めてまいります。また、設計段階における部品の共通化・点数削減、作業の効率化等による原価の抑制にも、継続して取り組んでまいります。
②生産計画について
当社グループは、主に見込み生産の形態をとり、需要予測の変動に追従して生産計画の見直しを行っております。需要予測の変動が正確に生産計画に反映されない場合や、販売実績が需要予測を大きく下回る場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクへの対応策として、発注・受入・組立・出荷・着荷の連動性を高めることで需要変動に柔軟に対応できる生産システムの構築に取り組んでまいります。
(3)製品開発について
当社グループは、新製品の開発を成長の源泉としている一方、新製品開発に際しては、試作部材、労務等の研究開発費が先行的に発生いたします。新製品開発が計画どおりに進捗せず、研究開発費が増加した場合や、開発遅延により売上高の減少等が生じた場合等には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクへの対応策としては、先進的で効率的な開発手法を常に取り入れるとともに、開発技術のノウハウを内部蓄積させることにも取り組んでまいります。加えて、新たな技術開発へのチャレンジやプラットフォーム設計の推進等により、効率的な新製品開発に取り組んでまいります。
(4)海外における事業展開について
①海外情勢の影響について
当社グループは、売上高の約7割を海外市場が占めており、今後も海外での販売強化により売上高成長を目指す方針としております。また、生産についても既にアジア(中国、台湾)と欧州(オランダ、イタリア、リトアニア)の工場で産業用インクジェットプリンタ及びインクを製造しており、今後も海外適地での生産体制を維持する方針としております。そのため、主要な海外市場における経済情勢の悪化、進出国の諸法令・規制・税制等の変更、ロシア・ウクライナ問題や米中対立に代表される地政学的なリスク等が発生した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当連結会計年度においては、中東情勢の緊迫化に端を発した紅海の治安悪化に伴うスエズ運河の運航回避により、当社製品の輸送、販売等のサプライチェーンへの影響が顕在化するとともに、迂回運航に伴う海上輸送運賃の上昇により利益へのマイナス影響が発生する等、地政学的リスクへの対応が急務となっております。当該リスクへの対応策として、グローバルでの情報収集や管理体制、リスクマネジメント体制の強化に加え、サプライチェーンの見直しに向けたプロジェクト体制での取り組みを進めてまいります。
②為替変動リスクについて
当社グループは、海外生産に比して海外販売の比率が高い状況にあります。そのため、想定を超えて急激に為替が変動した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクへの対応策として、為替管理の専門部署を設けてデリバティブ等により短期的な為替リスクのヘッジに努めるほか、外貨建て売掛金の早期回収により外貨建て債権を減らす取り組みや、インク等消耗品の消費地生産を推進して中期的な外貨ポジションの改善に努めてまいります。
(5)競合等について
当社グループの主力製品である産業用インクジェットプリンタは、既存市場において大手企業や新興国企業等の市場参入が増加しております。現時点では、当社グループの製品に技術面、品質面等の優位性があると認識しておりますが、競争環境が激化して価格低下圧力に晒された場合や市場シェアが低下した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクへの対応策として、地域密着型の営業活動を徹底して顧客ニーズを汲み取るとともに、革新的な新製品を継続的に上市できるように取り組んでまいります。
(6)人財の確保について
当社グループは、開発型企業及びグローバル企業としての成長を志向するため、製品開発を行う人財とグローバル適応のできる人財の持続的な確保・育成が必須と認識しております。これらの人財が大きく不足する場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクへの対応策として、人的資本に係る戦略に基づき、中核人財の確保を積極的に推進しています。また、多様性を確保するためのダイバーシティの推進、特に女性活躍推進やジェンダーギャップの解消等に加え、ワークライフバランスに配慮した働きやすい職場環境づくりなども進めています。さらに、人財の育成を目的とした教育体系の充実を図り、各人の能力を最大限発揮できる企業風土の醸成に取り組んでまいります。
(7)金利変動リスクについて
当社グループは、主に金融機関からの借入金等によって設備資金及び運転資金の一部を調達しており、有利子負債依存度は当連結会計年度末で37.6%となっております。そのため、急激に金利変動等が生じた場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクへの対応策として、経理部門が主導して多様な資金調達方法の検討に努めるとともに、在庫適正化活動の推進による運転資金の効率化に努めてまいります。
(8)知的財産権について
当社グループは、知的財産権に関連して①第三者が当社グループの知的財産権を使用し類似製品を製造することを防止できない可能性、②当社グループの取り扱う製品が第三者の知的財産権に抵触する可能性、③当社グループが認識しない特許権等の成立で第三者より損害賠償等の訴訟を起こされる可能性、等のリスクが想定できます。これらが発生した場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクへの対応策として、知的財産権の専門部門を設け、自社が保有する技術について特許権等の取得による保護を図るほか、他社の権利に抵触しないよう取り組んでまいります。
(9)法的規制等による影響について
当社グループは、国内において製造物責任法、輸出貿易管理令等の規制を受けているほか、事業展開する各国においては、CEマーキング、電気電子機器の特定有害物質使用規制等に加え、関税や移転価格税制等の様々な法令や規制の適用を受けております。これらの規制を遵守できずに当社グループの活動が制限された場合、または規制改正や新たな規制適用による対応のため当社グループのコストが増加した場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクへの対応策として、製造業に関連するグローバルベースの各種法的規制等の調査・管理ワークフローの見直しをプロジェクト体制で行い、これらを遵守するよう取り組んでまいります。
(10)重要な訴訟について
当社グループは、事業活動を展開する中で、ステークホルダーとの係争案件が発生する可能性がありますが、特に重要な訴訟等が発生した場合は、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクへの対応策として、専門部門である法務部が主導して弁護士等を交え、円滑な解決に向けて取り組んでまいります。
(11)情報セキュリティに係るリスクについて
当社グループにおいて、情報セキュリティの脆弱性やサイバー攻撃により、機密情報の漏洩による信頼性低下や信用の失墜、サービスやシステムが停止することによる業務停止や顧客サービスの低下、外部からの攻撃や強迫による金銭的損害や企業イメージの失墜等により、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクへの対応策として、専門部門である経営情報システム部が主導して、セキュリティポリシーの策定とそれに基づく徹底した情報管理及び社員教育の実施や、システムのバックアップ及びセキュリティ強化による防御力の向上と、脆弱性の監視・対策等に取り組んでまいります。
(12)投資等に係るリスクについて
当社グループは、単独または他社と共同で新会社の設立や既存会社の買収等を行っております。これら投資等の価値が低下した場合、あるいは追加資金拠出が必要となった場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクへの対応策として、既存の投資事業に関しては客観的な事業性と成長性の評価とともに、新規の投資事業に際してはリスクとリターンの検証を十分に行ってまいります。
(13)自然災害等の緊急事態について
当社グループは、長野県東御市に本社・研究開発施設・工場を有しており、この地域に大規模な自然災害が発生した場合、当社グループの事業活動が停滞することにより、業績に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクへの対応策として、大規模な自然災害が発生した場合も被害を最小限にとどめ、可及的速やかな業務再開を可能にするための事業継続計画(BCP)策定に努めてまいります。
(14)疫病・感染症の拡大について
当社グループは、各種ウイルス等の疫病・感染症が拡大した場合、役職員の出社が困難になったり、世界経済全体が低迷する等により、当社グループの事業活動が停滞して業績に影響を及ぼす可能性があります。特に、先般の新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大により、当社グループにおいても、世界経済の低迷による顧客でのプリント需要の急速な減少に加え、事業展開している国や地域における各種規制への対応に伴い、開発・生産・物流・営業等の事業活動に支障が生じた結果、過年度において業績への影響が表れており、今後もこのような状況が発生する可能性があります。当該リスクへの対応策として、日頃からの安全・衛生活動により社員の啓蒙と予防に努める等、適切な管理体制を構築し、顧客や取引先並びに従業員の安全確保を最優先とした取り組みを進めております。加えて、事業活動の正常化に向けた対応を迅速かつ的確に進めるとともに、需要変動への適切な対応を図る等により、業績への影響を最小限にとどめる取り組みを、社会情勢を見極めながら適切に実施してまいります。
(1)経営成績等の状況の概要
①経営成績の状況
当連結会計年度(以下、当期)における世界経済は、依然として高水準のインフレや各国中央銀行の金融引き締め政策の影響が続くなか、中東情勢の緊迫化や米中対立の激化など、地政学的リスクのさらなる高まりもあり、引き続き不透明な状況が継続しております。北米では、旺盛な個人消費を背景に景気は底堅く推移しましたが、物価高の長期化等により先行きへの警戒感は強まっております。欧州では、ウクライナ情勢の長期化に加え、エネルギー価格の高止まりもあり、経済活動は停滞傾向を示しております。わが国においては、円安の進行による輸出環境の改善に加え、観光やサービス業を中心としたインバウンド需要の回復が追い風となり、個人消費や設備投資にも持ち直しの基調はあるものの、世界経済の需要動向など先行不確実な状況が続いております。
このような環境のなか、当社グループでは2020年12月に策定した中長期成長戦略「Mimaki V10」で定めた重点施策に基づき、新製品の市場投入と販売拡大、市場環境や顧客ニーズの急激な変化を見据えた事業展開、収益性向上に向けた基盤構築を継続してまいりました。当期は、第4四半期連結会計期間において、TA(テキスタイル・アパレル)市場向けでは、オンデマンド捺染は「無水」の時代と題し、高画質・多用途テキスタイルプリンタ「Tx330-1800/1800B」を発表しました。また、ポリエステルの脱色・アップサイクル技術「ネオクロマト加工」について3社合同での開発と実用の展開を発表し、繊研新聞社/繊研合繊賞・サステイナブル部門賞を受賞いたしました。
当期の売上高は、製品市場別では、SG(サイングラフィックス)市場向けのUVインク搭載モデルが牽引し本体、インクともに大幅に伸長しました。IP(インダストリアルプロダクツ)市場向けは、小型FB(フラットベッド)モデルを中心に販売が好調に推移し、今期市場投入した建築用材等にダイレクトプリントが可能な大判モデル「JFX600-2531/2513」の立ち上がりも順調であったことから、本体・インクともに大幅に増加しました。またTA市場向けでは、稼働台数の増加に伴い、ストック性の高いインクの販売が大幅に伸長しましたが、本体では、上期においてはDTF(Direct to Film)モデルのバックオーダーの効果があったものの、北米の特定販売代理店への出荷調整の影響や下期に同モデルの初期需要が落ち着いたこと等もあり本体の販売は減少しました。全体では通期で増収となりました。地域別では、アジア・オセアニアで中国を中心に販売が大幅に伸長し、日本においてもSG、IP、TA市場向けの全ての市場で大きく伸長しました。また、欧州も景気が低迷した前期に対しSG及びTA市場向けが大きく伸長し、IP市場向けも好調に推移しました。北米は、TA市場向けの影響等があったもののSG市場向けが牽引し増収となりました。また、中南米はSG市場向けが大幅に増加し、IP市場向けも堅調に推移しました。利益面では、コロナ期に調達した半導体等の高コスト部材を使用した製品の販売が期中においてほぼ終結したことに加え、インクの品質改善をはじめとする原価低減に向けた施策等の効果が寄与し、売上原価率が改善しました。販管費は、今後の新技術・新製品開発に向けた研究開発費や積極的な営業活動に伴う費用が増加しましたが、通期において2桁増収を確保したことから売上高比率では前年並みとなりました。なお、第4四半期におきまして業績連動及び決算賞与による人件費の増加や原材料の廃棄費用等の一時的な費用が発生しましたが、売上成長による増収の効果と為替のプラス影響もあり大幅な増益となりました。
以上の結果、当期における当社グループの売上高は839億63百万円(前期比11.0%増)、営業利益は91億11百万円(同66.2%増)、経常利益は84億41百万円(同72.9%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は61億56百万円(同66.0%増)となりました。なお、売上高及び営業利益以下の各段階利益ともに過去最高を更新し、2026年3月期を最終年度とする中長期成長戦略「Mimaki V10」のKPI営業利益率10%は、1年前倒しの当連結会計年度において達成することができました。
当期における主要な為替レートは、1米ドル=152.57円(前期 144.62円)、1ユーロ=163.74円(前期 156.79円)で推移しました。
セグメントの業績は次のとおりであります。なお、セグメントの利益につきましては、セグメント間取引消去の影響により連結損益計算書の営業利益から乖離してしまうため、記載を省略しております。
(日本・アジア・オセアニア)
売上高は379億91百万円(前期比11.8%増)となりました。日本では、本体はSG市場向けUVフラグシップモデルが大幅に伸長しました。TA市場向けはDTFモデルを中心に大幅に伸長しました。IP市場向けでは小型FBモデルが堅調に推移しました。インクはSG市場向けが前年並みであった一方で、IP及びTA市場向けの販売が大幅に増加しました。FA(ファクトリーオートメーション)事業は自動車関連のFA装置及び基板実装装置が大幅に増加しました。半導体製造装置は新規開拓に努めたものの前年並みとなり、全体では、好調に推移し増収となりました。アジア・オセアニアでは、中国を中心にフィリピン、タイ等の各エリアにおいてIP市場向けの小型FBモデルが好調であったことから大幅増収となりました。SG市場向けでは、UVフラッグシップモデルが大幅に伸長し、TA市場向けでは、DTFモデルの初期需要が落ち着いたこと等により本体の販売は減少しました。インクの販売はIP及びTA市場向けは大幅に伸長し、SG市場向けも好調に推移しました。以上の結果、全体では大幅な増収となりました。
(北・中南米)
売上高は240億80百万円(同12.0%増)となりました。SG市場向けはUVフラグシップモデルの販売が大幅に伸長しました。IP市場向けは小型FBモデルの販売が好調に推移しました。またTA市場向けではDTFモデルの初期需要が落ち着いたことから、本体の販売は大幅に減少しました。国別ではブラジルやメキシコ等で販売が増加しました。またインクの販売は、SG及びTA市場向けが大幅に伸長し、IP市場向けも好調に推移しました。以上に加え、為替のプラス影響もあり、大幅増収となりました。
(欧州・中東・アフリカ)
売上高は218億91百万円(同8.7%増)となりました。本体は、SG市場向けではUVフラグシップモデルが大幅に伸長しました。IP市場向けは小型FBモデルに加えて、建築用材などで使用される大判FBモデルも大幅に伸長しました。TA市場向けでは昇華転写プリンタが好調であったものの、DTFモデルの販売が減少したことから本体の販売は微減となりました。インクの販売は、TA市場向けは大幅に伸長し、SG及びIP市場向けも好調に推移しました。国別では、ドイツを始め英国、スペイン、ポルトガル、アラブ首長国連邦等が好調に推移し、イタリア、トルコでは前年並みとなりました。以上に加え、為替のプラス影響もあり、欧州全体では増収となりました。
[市場別売上高]
|
|
売上高(百万円) |
構成比率(%) |
対前年増減率(%) |
|
S G 市 場 向 け |
33,994 |
40.5 |
14.9 |
|
I P 市 場 向 け |
22,084 |
26.3 |
10.2 |
|
T A 市 場 向 け |
10,324 |
12.3 |
9.0 |
|
F A 事 業 |
5,053 |
6.0 |
11.5 |
|
そ の 他 |
12,506 |
14.9 |
4.1 |
|
合 計 |
83,963 |
100.0 |
11.0 |
(SG市場向け)
売上高は339億94百万円(前期比14.9%増)となりました。本体は、UVインクモデル等のフラグシップモデルの販売が大幅に増加したほか、同じくUVインク搭載のエントリーモデルでも好調に推移したことから、販売が大幅に伸長し、日本をはじめ全てのエリアで2桁増収となりました。加えて、インクの販売も大幅に伸長し、大幅増収となりました。
(IP市場向け)
売上高は220億84百万円(同10.2%増)となりました。本体は、小型FBモデルの販売が大幅に伸長したことに加えて、JFX200シリーズにラインナップを追加した新製品「JFX200-1213EX」が順調であったことから大幅増収となりました。またインクの販売も好調に推移し、為替のプラス影響もあり大幅増収となりました。
(TA市場向け)
売上高は103億24百万円(同9.0%増)となりました。本体は、新製品のダイレクト昇華と昇華転写のハイブリットプリンタ及び既存製品である昇華転写プリンタの販売が好調であったものの、DTFモデルの初期需要が落ち着いたことから、販売は減少しました。インクの販売においては、同市場の稼働台数が増加したことから大幅に伸長し、全体では増収となりました。
(FA事業)
売上高は50億53百万円(同11.5%増)となりました。FA装置や基板実装装置において自動車関連の受注が好調であったことから安定的な受注を確保し大幅な増収となりました。
②財政状態の状況
(資産)
当連結会計年度における資産の残高は、761億74百万円(前連結会計年度末757億18百万円)となり4億55百万円増加しました。流動資産の残高は、576億3百万円(同587億66百万円)となり11億63百万円減少しました。これは、主に現金及び預金の減少等によるものです。また、固定資産は185億70百万円(同169億51百万円)となり16億18百万円増加しました。これは、主に使用権資産の増加等によるものです。
(負債)
当連結会計年度における負債の残高は、438億円(同483億27百万円)となり45億27百万円減少しました。流動負債の残高は、372億91百万円(同415億13百万円)となり42億21百万円減少しました。これは、主に短期借入金の減少等によるものです。固定負債の残高は、65億8百万円(同68億14百万円)となり3億5百万円減少しました。これは、主に長期借入金の減少等によるものです。
(純資産)
当連結会計年度における純資産の残高は、323億73百万円(同273億90百万円)となり49億83百万円増加しました。これは、主に利益剰余金の増加等によるものです。
③キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物残高(以下「資金」という)は、税金等調整前当期純利益の増加や減価償却等があったものの、短期借入金の減少や長期借入金の返済による支出等により前連結会計年度末に比べ23億42百万円減少し、当連結会計年度末には、118億75百万円となりました。なお、営業活動、投資活動、財務活動別の詳細につきましては、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果獲得した資金は78億61百万円(前連結会計年度比17億2百万円減)となりました。これは、主に税金等調整前当期純利益82億94百万円、売上債権の増加11億24百万円等があったことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は24億37百万円(同1億58百万円減)となりました。これは、主に有形固定資産の取得による支出20億48百万円、定期預金の預入による支出4億53百万円等があったことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は75億42百万円(同61億2百万円増)となりました。これは主に短期借入金の減少41億61百万円、長期借入金の返済による支出30億98百万円等があったことによるものです。
④生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
対前年増減率(%) |
|
日本・アジア・オセアニア(千円) |
35,247,846 |
20.0 |
|
欧州・中東・アフリカ(千円) |
3,463,036 |
△10.8 |
|
合 計(千円) |
38,710,882 |
16.4 |
(注)金額は標準原価によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。
また、当連結会計年度の生産実績を市場別に示すと、次のとおりであります。
|
市 場 別 |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
対前年増減率(%) |
|
S G 市 場 向 け(千円) |
14,451,233 |
24.4 |
|
I P 市 場 向 け(千円) |
8,629,344 |
24.6 |
|
T A 市 場 向 け(千円) |
5,556,687 |
0.7 |
|
F A 事 業(千円) |
4,389,585 |
0.1 |
|
そ の 他 (千円) |
5,684,030 |
18.1 |
|
合 計 (千円) |
38,710,882 |
16.4 |
b.受注実績
当社グループ(当社及び連結子会社)は見込み生産を行っているため、該当事項はありません。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
対前年増減率(%) |
|
日本・アジア・オセアニア(千円) |
37,991,330 |
11.8 |
|
北・中南米(千円) |
24,080,504 |
12.0 |
|
欧州・中東・アフリカ(千円) |
21,891,859 |
8.7 |
|
合 計(千円) |
83,963,694 |
11.0 |
(注)セグメント間の取引については相殺消去しております。
また、当連結会計年度の販売実績を市場別に示すと、次のとおりであります。
|
市 場 別 |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
対前年増減率(%) |
|
S G 市 場 向 け(千円) |
33,994,440 |
14.9 |
|
I P 市 場 向 け(千円) |
22,084,196 |
10.2 |
|
T A 市 場 向 け(千円) |
10,324,457 |
9.0 |
|
F A 事 業(千円) |
5,053,685 |
11.5 |
|
そ の 他 (千円) |
12,506,915 |
4.1 |
|
合 計(千円) |
83,963,694 |
11.0 |
当連結会計年度の販売実績を品目別に示すと、次のとおりであります。
|
品 目 |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
対前年増減率(%) |
|
製 品 本 体(千円) |
34,427,613 |
12.9 |
|
イ ン ク(千円) |
31,598,989 |
12.9 |
|
保 守 部 品(千円) |
6,907,145 |
11.7 |
|
そ の 他(千円) |
11,029,946 |
0.7 |
|
合 計(千円) |
83,963,694 |
11.0 |
(注)主要な販売先については、相手先別の販売実績の総販売実績に対する割合が100分の10未満であるため、記載を省略しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
財政状態につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②財政状態の状況」に記載のとおりであります。
なお、運転資本(流動資産から流動負債を差し引いた金額)は、前連結会計年度末に対して30億58百万円増加し、203億12百万円となりました。今後も厳しい経営環境が続くものと想定されますが、当社の財政状態は健全性を保っていることに加え、資金についても十分な手当てができております。
経営成績につきましては、売上高は839億63百万円(前連結会計年度比11.0%増)、営業利益は91億11百万円(同66.2%増)となりました。詳細につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ①経営成績の状況」記載のとおりであります。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
キャッシュ・フローの状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性につきましては、当連結会計年度のフリーキャッシュ・フローは54億23百万円となりました。その要因は、中長期成長戦略「Mimaki V10」で定めた目標達成に向けた、研究開発用設備投資や新製品量産に向けた金型投資に加え、ソフトウエアへの投資を積極的に行ったこと等により、投資キャッシュ・フローはマイナスとなりましたが、税金等調整前当期純利益が大幅に増加したことによるものです。当期以降も、売上高成長を追求するだけでなく、高い収益を継続的に生み出すとともに、棚卸資産の適正化に向けた諸施策を実施して営業キャッシュ・フローの最大化を図りつつ、将来成長のために必要な投資も積極的に行い、財政状態の健全性維持と持続的な成長の実現を両立させるべく、内部資金・直接金融・間接金融のバランスを図りつつ、計画的に資本の財源を確保してまいります。
③経営方針・経営戦略等又は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおり、中長期成長戦略「Mimaki Innovation 30」において、2030年3月期に売上高1,500億円目標に掲げ、この実現に向けて従来のように売上高成長を追求するだけでなく、高い収益を継続的に生み出すとともに、財務基盤を強化して、持続可能な成長に向けた強靭な企業基盤の構築に取り組んでまいります。
④重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
該当事項はありません。
当社グループは、常に市場に「新しさと違い」を提供するイノベーターであり続けるため、国内従業員の約4割にあたる約500名が開発部門に属し、研究開発活動を積極的に進めております。なお、当社グループにおける研究開発活動は日本国内で行っております。
当社では、市場ニーズを捉えて素早く製品化するため、製品を成り立たせる根幹となる要素技術の開発を製品開発に先行して進めております。製品開発に直結する開発体制としては、機構設計技術(メカ)、制御設計技術(ハード)、機器組み込みソフトウエア技術(ファームウエア)、アプリケーションソフトウエア技術及びインク技術の5分野からなる技術を結集して、技術本部内のプロジェクトチームが製品化を進めております。要素技術を各プロジェクトが共有し、積極的に共通化・標準化設計を展開することにより、開発期間の短縮を図るとともに高品質かつコストパフォーマンスの高い製品開発を行っております。また、マーケティング部門と技術本部とのコミュニケーションを密にすることで、ユーザーのニーズや技術動向を常に注視し、マーケットインの製品開発を中長期的視点から行える体制を構築しており、製品本体、アプリケーションソフトウエア、インク、メディア等のトータルソリューションを最適化し、「美しく・速い」プリント及びカットをユーザーに提供することを目指しております。
当連結会計年度における研究開発活動等の主な成果は次のとおりであります。
(ハードウエア)
(1)SG市場向けで、2024年9月に発表し10月より全世界で「CJV200シリーズ」を販売。当社のフラグシッププリンタに搭載される「330エンジン」プリントヘッドをシングル搭載し、操作経験が少ないオペレーターでも美しく・速く・簡単にプリント成果物を制作することができるプリント&カット対応のエコソルベントインクジェットプリンタです。また、新たにCJV200シリーズで新興国向けの低ランニングコストを実現するエコ溶剤インクボトル「CS250」を搭載可能な「CJV200-160B」と「JV200-160B」の2機種を追加しました。
(2)IP市場向けの「JFX200-1213EX」は、世界中で好評いただいている高画質・高付加価値・高生産プリントが可能な「JFX200-2513EX」のプリントサイズを約半分にしたミドルサイズのフラットベッドUVプリンタで、デスクトップUVプリンタからのアップグレードやデジタルプリントのエントリー機としての導入に最適な製品です。
(3)TA市場向けで、「Tx330-1800」「Tx330-1800B」を発表。両機種ともにWaterless(ウォーターレス)の捺染インクを搭載したダイレクト捺染プリンタです。当社のフラグシップモデル・スタンダードの「330エンジン」を搭載し、高濃度・高精細を実現しました。これらのインクジェットプリンタによるデジタル方式の無水捺染への転換を推進することで、従来の染料インクにおける大量に水を使う煩雑な捺染工程から、サステナブルなテキスタイル・アパレル生産の実現に貢献してまいります。また、「TS330-3200DS」は、最大3.2m幅の布地へのダイレクトプリントと昇華転写紙のプリントの両方に対応したハイブリッドプリンタで、大型施設はもちろん、展示会のブース、店舗及び事業所など小型施設のソフトサインとインテリアファブリックのプリントによるトータル空間の創造を1台で可能とし、これまでソフトサイン製作が主であったお客様の提案の幅を広げます。「TxF300-1600」は、DTF(Direct To Film)プリントの転写シート作成に用いる、最大印刷幅160cmのDTFプリンタで、従来機「TxF150-75」と同様の安心・安定稼働のための機能を搭載しながらも最大約4倍の生産性を実現した製品です。
(インク・その他)
(4)米・Avery Dennison社(本社/Mentor, OH USA)が提供する交通サインプリントシステムの新モデル「TrafficJet Xpress」プリントシステムに、当社製のUV硬化型インクジェットプリンタが採用されました。また、ポリエステルの脱色・アップサイクル技術「ネオクロマト加工」の開発と実用の展開が2024年度繊研合繊賞・サステナブル部門賞を日華化学株式会社・エレファンテック株式会社及び当社の3社合同で受賞しました。
これらの研究開発活動を行った結果、当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発活動に係る費用の総額は5,720百万円であります。なお、当該金額には既存製品の改良、応用等に関する費用が含まれており、「研究開発費等に係る会計基準」(企業会計審議会)に規定する「研究開発費」は