第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営方針

事業再生計画に一定の目途が付けられる状況に至りましたが、一方で、当社を取り巻く事業環境が大きく変化したことを踏まえ、当社グループは、「2023年度中期経営計画(以下、「23中計」)」を一年前倒しし、22年度からスタートします。23中計では、持続可能社会への急速な移行、環境変化や当社自体の変革を踏まえ、グループの企業理念・ビジョン・経営姿勢を再定義いたしました。

■企業理念

エンジニアリングとサービスを通じて、人に信頼され、社会に貢献する。

■ビジョン

2030年までに、マリンの領域を軸に、脱炭素社会の実現と、人口縮小社会の課題解決を目指す。

■経営姿勢
新しい価値の創造を顧客と共に実現
健全な財務体質と堅実な利益を追求
健康で安全に働ける環境整備を推進

 

また、当社は2023年4月に純粋持株会社体制を解消し、事業持株会社体制への移行に伴い、社名を見直し「E&S」に込める意味を、今後の当社の目指していく姿勢や事業ドメインに沿って再定義しました。

■新社名 株式会社三井E&S

「E&S」には、「Engineering & Services for Evolution & Sustainability」の意味合いがあり、当社が社会の進化と持続を目指しエンジニアリングとサービスに注力することで、当社グループの企業価値の持続的向上を図る企業姿勢を込めております。

 

(2)経営戦略等

2019年度にスタートした「三井E&Sグループ 事業再生計画」では、「財務・収益体質の強化」、「事業構造の変革」という2つの戦略を掲げ、総額約1,200億円規模の事業・資産売却を完了いたしました。

また、「2020年度中期経営計画」においては、施策であるパワーメカトロニクス製品のデジタル化推進・クリーンエネルギー転換といった成長機会に対応するため、アンモニア焚き舶用エンジンや港湾クレーン自動化技術等に関する設備投資・研究開発を積極的に展開し、当社グループの成長戦略推進を図っております。

しかし、事業再生計画には一定の目途がついた一方、持続可能社会への急速な移行等、当社を取り巻く事業環境が大きく変化しているため、次期中計を1年前倒しで取り組むこととし、「23中計」を2022年5月に公表しました。

「23中計」のビジョンは「2030年までに、マリンの領域を軸に、脱炭素社会の実現と、人口縮小社会の課題解決」を目指す姿として、当社グループの中核事業である舶用推進事業、港湾物流事業の強みを更に強化し、サービスやソリューション提供へと収益モデルの変革を進めます。

 

(3)経営環境等

当社グループを取り巻く事業環境は、ウクライナ情勢の変化等による原材料・エネルギー価格の高騰、為替や資源相場のボラティリティの増大に加え、引き続き新型コロナウイルスの感染状況の変化といった世界経済の先行き不透明感が一層増す中、新造船市場の低迷、中国・韓国の競合企業の攻勢による価格競争の激化、持続可能社会への急速な移行等、既存のビジネスモデルからの変革が求められる環境となっております。一方、新型コロナウイルスのワクチン接種や各国の政策対応が回復に重要な役割を果たし、抑制されていた経済活動が徐々に回復しており、新興国を中心としたエネルギー需要の増加や環境・省エネ志向の高まり、さらには国内のインフラ更新需要の増大等、事業拡大の機会も再び大きくなるものと想定されます。

なお、新型コロナウイルス感染症による主な事業等への影響については、「2 事業等のリスク」又は「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 b. 経営成績」に記載のとおりです。

 

(4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

「23中計」では、2025年度に、連結売上高:2,800億円、連結営業利益率:6.0%、自己資本比率:26%、及びNET有利子負債EBITDA倍率:5倍、を経営数値目標として掲げ、その達成に全力を注いでまいります。

また、当社グループは、サステナビリティ課題に対し、以下のマテリアリティ及び2030年度目標を設定しました。各社会課題の解決及び人材育成・多様性の確保に注力してまいります。

マテリアリティ

2030年度目標

脱炭素社会の実現

・環境対応製品市場投入によるCO2削減貢献量

従来比66%削減(2019年度比)

・グループの生産活動によるCO2削減量

従来比17%削減(2019年度比)

人口縮小社会の課題解決

・自動化製品(トランステーナ) 市場投入:

自動化製品率40%(年間売上高比)

多様化確保への取り組み

・管理職   女性比率: 5%、外国人比率: 3%

・従業員全体) 〃  :10%、 〃   : 5%

・技術職新卒) 〃  :10%、 〃   :20%

 

前中計期間である2021年度の達成・進捗状況は、「20中計」との対比として「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ④経営計画の達成・進捗状況」に記載のとおりです。

 

(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

当社グループは、エンジニアリング事業の海外大型EPCプロジェクトの損失により、財務基盤が大きく毀損したことから、この回復を最優先課題として進めて参りました。また、造船事業やエンジニアリング事業など、不採算事業からの撤退や新たな収益の柱となる成長事業の育成を進めています。このような状況のもと、当社グループは、ステークホルダーの皆様の信頼回復に向け「三井E&Sグループ 事業再生計画」に加え、「23中計」を1年前倒しスタートさせ、22年度は事業再生計画の仕上げと、成長戦略の遂行に向けた土台固めに取り組んでまいります。具体的には以下のとおりです。

 

(財務体質及び収益体質の強化)

事業再生計画に基づく、事業や資産売却の実行に加え、財務体質の健全化及び成長資金確保のため、2022年3月31日付で、合計約170億円の資金対策を行うことを公表いたしました。更に、「23中計」では、「事業再生計画の仕上げ」、「成長戦略」、「機能戦略」を基本方針とした戦略を掲げ、成長戦略による売上規模拡大と収益安定化を図り、財務体質の更なる改善に努めます。

 

(成長戦略の推進)

「23中計」では、「マリン領域を軸に、当社グループの中核事業である舶用推進事業、港湾物流事業を「グリーン」と「デジタル」の切り口で発展させる」ことを成長戦略の柱としております。具体的な施策は 次のとおりです。

 

①コア事業の強化

コア事業を「舶用推進」「港湾物流」「保守・探査」と明確にし、コア事業を軸に収益力強化を進めてまいります。この一環として、2022年3月31日付で、「株式会社IHI 原動機の舶用大型エンジン事業承継に関する基本合意書の締結」を公表し、コア事業である「舶用推進」の、舶用大型機関の開発・生産・アフターサービス強化を進めてまいります。

 

②収益モデルの変革

コア事業である「舶用推進」「港湾物流」の各事業を、「グリーン戦略」と「デジタル戦略」により、更なる強化を進めてまいります。

グリーン戦略では、当社環境対応製品のエンジニアリングに注力し、脱炭素関連製品提供を進めてまいります。また、デジタル戦略では、当社サービス網とデジタル技術の掛け合わせによるサービス開発により、海上輸送と港湾荷役の連携など強みを持つ分野で、デジタル技術を活用したサービスを提供してまいります。

 

(サステナビリティ課題の取組み)

気候変動や人口縮小社会の到来は、当社事業にも重要な経営課題と認識し、当社事業へのリスクと機会を踏まえ、マテリアリティを、「脱炭素社会の実現」と「人口縮小社会の課題解決」と設定いたしました。このマテリアリティに向け、中長期の目標を掲げ、取り組みを推進してまいります。

 

2【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりです。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

<特に重要なリスク>

(1)新型コロナウイルス感染症・大規模災害のリスク

2020年初頭より世界中にまん延し始めた新型コロナウイルス感染症の拡大により、国内外の多くの産業における経済活動が多大な影響を受けました。現在も終息する見通しは立っておらず先行きは不透明な状況です。

新型コロナウイルス感染症や新型インフルエンザなどの感染症が大流行となった場合、経済の混乱や、政府の感染拡大防止策としての外出自粛、渡航禁止の要請等により商談機会の減少や、顧客の投資意思決定が遅れることが考えられます。これらが受注の遅れにつながった場合には、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

また、従業員への感染が拡大した場合には各拠点における製造・販売活動など当社グループの事業活動が停滞する可能性があります。当社グループでは、従業員とその家族及び関係者の健康と安全を最優先に確保すべく、当社内に「新型コロナウイルス対応検討委員会」を設置し、衛生管理の徹底、在宅勤務や時差通勤など柔軟な勤務形態の推進、出張や来客の制限、オンライン会議の活用、工場での密度管理などの十分な感染防止策を通じて、従業員の健康と安全・安心の確保に努めております。

また、本感染症をはじめとしたパンデミックに限らず、地震や風水害などの各種災害が発生した場合には、物的・人的被害の発生や物流機能の麻痺等により、当社グループの生産活動を中心とした事業活動に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、パンデミックに加え、地震、風水害など各種災害に対して発生時の損失を最小限に抑えるため、設備の点検・訓練の実施、緊急連絡体制の整備など、事業継続計画(BCP)を策定しております。また、損害保険の利用等を通じて負担限度額のコントロールに努めております。

 

(2)エンジニアリング事業における工事原価総額の見積りに関するリスク

 当社グループのエンジニアリング部門では、火力発電土木事業に係るプロジェクトにおいて過年度に多額の損失を計上しています。これは工事の進捗に伴って想定外の厳しい海象条件や施工方法の難度等が判明し、見積工事原価総額が、当初想定を大幅に上回ることが見込まれたため、工事原価総額を見直して必要な引当金を計上したことによるものです。現在は当社社長直下にエンジニアリング事業管理室を設け、損失の拡大防止に努めており引当金の範囲内で推移しています。

 当該プロジェクトのように、長期間に亘る大型プロジェクトは工事原価総額に関する見積りの難度が高く、工事の進捗に伴って工事原価総額が変更となる可能性があります。

 ただし、同事業については既に新規受注を停止しており、既受注工事完工後の撤退を予定しているため、今後同事業におけるリスクは低減する見込みです。

 

(3)海洋開発事業におけるプロジェクトの大型化に伴うリスク

 当社の持分法適用関連会社である三井海洋開発株式会社が行うFPSO等の建造事業は、プロジェクトの大型化が進み、納期の長期化とともに受注額が1件につき1千億円を超える大規模なものとなっております。そのため、見積工事原価総額の見直し等による損益の変動幅が近年では大きくなる傾向にあります。同社の売上収益や営業損益は、当社グループの売上高、営業損益には影響しないものの、同社の「親会社の所有者に帰属する当期利益」の当社持分相当額が持分法投資損益として経常損益以下の各段階損益に認識されます。

 同社の業績が当社グループに与える影響は相対的に大きくなっており、同社の損益が大幅に変動することにより、当社グループの経常損益以下の各段階損益及び財政状態に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

 

<その他の重要なリスク>

(4)当社グループの事業の特性によるリスク

 当社グループの事業は、個別受注生産が中心であり、製品の特性によっては契約から引渡しまで長期間に亘る工事もあります。その間の社会情勢等の変化により、契約を締結した時点の見積原価と実際の原価との間に差異が生じる可能性があります。当社グループでは対策として、慎重な見積り、多様な調達先の確保、代金の早期回収、海外事業においては貿易保険の利用等リスクの回避に努めております。

 また、納めた製品の性能、品質、納期の遅れに起因するクレーム等が発生した場合や、生産活動の過程で、不測の事態により有害物質が外部へ漏洩する等環境汚染が発生した場合には、社会的評価の低下を招くとともに損害賠償等による費用が発生する可能性があります。そのような事態を回避すべく、当社グループでは、品質や安全、環境保全に関する法令等を遵守し、製品の品質及び信頼性の追求と環境汚染防止に努めております。

 

(5)法的規制及びカントリーリスク

 国内外での事業の遂行にあたっては、それぞれの国の各種法令、行政による許認可や規制等を遵守しております。しかしながら、法令の改廃や新たな法的規制が設けられる等の場合や、工事を行う国や地域によっては、政情不安(戦争、テロ)、国家間対立による経済制裁、経済情勢の急変に伴う工事従事者の動員及び資機材調達の遅れ、現地の労使関係等のリスク、商習慣に関する障害、資金移動の制約、特別な税金及び関税等により当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。これを回避するため、貿易保険の付保、現地の法律や会計コンサルタント等からの情報収集及び顧客や取引先との間で最適な責任分担を図ることにより、リスクの低減に努めております。

 

(6)情報セキュリティに関するリスク

 事業活動の過程では取引先の機密情報や個人情報、当社グループの技術・事務管理に関する機密情報や個人情報を取り扱う場合があります。パソコン、サーバー及びネットワーク機器の障害や紛失・盗難、外部からの攻撃やコンピュータウイルスの感染等によりこれらの情報が流出あるいは消失した場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。これら情報セキュリティ上のリスクについては、全社情報セキュリティ統括責任者の指示のもと経営企画部情報セキュリティ室を中心に、セキュリティポリシーの策定、外部機関連携による最新情報の入手、ネットワークやIT機器の監視、外部からの攻撃に対する対策、及び教育や訓練等の具体的施策を推進しております。

 

(7)市場変動によるリスク

 当社グループは、海外子会社の受注、売上も含めると海外向け受注高、売上高は年次によりばらつきはあるものの概ね全体の50%以上という高い割合を占めており、為替レートの大幅な変動がある場合には、受注・売上及び損益に影響を受ける可能性があります。為替レートの変動による影響を軽減する対策として為替予約の活用や海外調達により外貨建コストの比率を高めるなど、リスク量を適正な水準に調整しております。また、海外子会社においては、大部分のコストは自国通貨建てのため、損益への為替の影響は軽微であります。

 

(8)会計処理に関するリスク

 当社グループが保有する固定資産について、経営環境の変化等により収益性が低下した場合、また、遊休資産について時価等が下落し、回収可能価額が低下した場合には、減損損失を計上する可能性があります。

 また、保有する株式についても同様に、経営環境の変化等により収益性が低下した場合や時価等が著しく下落し、回収可能価額が低下した場合には、減損損失を計上する可能性があります。

 税効果会計及び退職給付会計においては、将来の予想・前提に基づいて、その資産・債務等の算定を行っております。そのため、予想・前提となる数値に変更がある場合もしくはこれらの算定を行うための会計基準の変更がある場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

<重要事象等>

 当社グループは、海外大型EPCプロジェクトの損失等により当連結会計年度まで5期連続の営業損失を計上しており、十分な自己資本の回復には至っておりません。

 一方、当社グループは「三井E&Sグループ 事業再生計画」を策定し、不採算事業の整理・撤退並びに資産売却や固定費の圧縮等、財務体質の改善及び収益体質の強化を進めております。

 今後も海外大型EPCプロジェクトの工事進捗に伴いマイナスの営業キャッシュ・フローが見込まれ、継続企業の前提に関する重要な疑義が生じていることを認識しております。しかしながら、資産売却によって資金を獲得できているほか、メインバンクをはじめとした取引金融機関からは事業再生計画の実施状況や、中期経営計画を評価頂いており、コミットメントライン契約や融資の継続など、引き続き支援が得られていることから継続企業の前提に関する重要な不確実性は認められないと判断しております。

 

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

① 財政状態及び経営成績等の状況

当連結会計年度の世界経済は、新型コロナウイルス感染症の拡大がピークアウトしつつあり経済活動が本格再開する中、ウクライナ危機の発生により、市況価格の更なる高騰等、先行き不透明な状況にあります。米国では経済活動の再開に伴う需要の高まりによる供給不足でインフレが継続し、欧州でも各国政府が行動制限の緩和を進めているものの、ウクライナ情勢の緊迫化により景況感に悪化の兆しが見え始めております。中国では環境保全や不動産投資に対する政府の規制強化と感染拡大阻止に向けた厳しい行動制限等を背景に経済活動は減速傾向にあります。

一方、国内経済においても、新型コロナウイルス感染症に対するワクチン接種の進展により、経済活動に回復の兆しが見られましたが、原材料価格や原油価格の高騰、急激な為替変動など、依然として先行きが不透明な状況が続いております。

このような状況のなか、持分法適用関連会社である三井海洋開発株式会社がコロナ禍に端を発する各種工程の遅延等により業績を大幅に悪化させた影響を受けて、多額の持分法による投資損失を計上いたしましたが、当社グループは引き続き、現在進めている「三井E&Sグループ 事業再生計画」(2019年5月に策定、2019年11月に一部見直し、以下、事業再生計画)の早期完遂、財務体質・収益体質の健全化及び、「2020年度中期経営計画」(2020年8月に策定、以下、「20中計」)に示す成長戦略の推進を最優先に取り組んでおります。

事業再生計画においては、2021年10月1日付で、「三井E&S造船株式会社の艦艇事業等(同日付で三菱重工マリタイムシステムズ株式会社に商号変更)の譲渡」及び、「三井E&S造船株式会社の商船事業の一部株式譲渡」、2022年1月11日付で「四国ドック株式会社の株式持分全ての譲渡」、また2022年4月1日付で「株式会社MESファシリティーズ(同日付で株式会社NHファシリティーズに商号変更)の株式譲渡」がそれぞれ完了いたしました。また、財務体質の健全化及び成長投資のための資本対策として、2022年3月31日付で、「第三者割当によるA種優先株式の発行、第三者割当による第1回行使価額修正条項付新株予約権の発行」により合計約170億円の資金調達を行うことを公表し、2022年4月18日付で、「第1回行使価額修正条項付新株予約権」の発行価額の全額の払込が完了いたしました。

さらに、当社グループは、今後の成長と収益力向上のために事業と経営との距離を縮め、一体となり戦略立案・実行スピードを上げることを目的として、2023年4月1日を目処に純粋持株会社体制を解消し、株式会社三井E&Sマシナリー及び株式会社三井E&Sビジネスサービスと、2022年3月31日付で吸収合併契約を締結いたしました。また、本吸収合併後の当社は、2022年6月28日開催の定時株主総会で定款の一部変更が承認されることを条件として、2023年4月1日付で商号を「株式会社三井E&S」に変更する予定です(2022年3月31日公表)。

このように、当社グループは事業再生計画に一定の目途が付けられる状況に至りましたが、一方で、当社を取り巻く事業環境が大きく変化したことを踏まえ、「2023年度中期経営計画」を1年前倒しし、2022年度からスタートすることを公表いたしました。この成長戦略の一環として、中核事業である舶用推進エンジン事業の開発・生産・アフターサービス強化のため、2022年3月31日付で、「株式会社IHI原動機の舶用大型エンジン及びその付随事業の承継に関する基本合意書の締結」を公表いたしました。

当社グループでは、2022年度を事業再生計画の仕上げと、成長戦略の遂行に向けた土台固めと位置づけ、各施策の確実な遂行と、更なる成長戦略を実行・加速させることで、新生三井E&Sグループの企業価値向上に取り組んでまいります。

 

当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。

 

a. 財政状態

当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末と比べて3,498億78百万円減少の4,091億50百万円となりました。

当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末と比べて3,243億47百万円減少の3,462億円となりました。

当連結会計年度末の純資産は、前連結会計年度末と比べて255億31百万円減少の629億49百万円となりました。

 

b. 経営成績

当連結会計年度の経営成績は、受注高は5,110億89百万円(前期比△11.4%)、売上高は5,793億63百万円(前期比△10.1%)、営業損失は100億29百万円(前期は122億43百万円の営業損失)、経常損失は257億42百万円(前期は82億23百万円の経常損失)、親会社株主に帰属する当期純損失は218億25百万円(前期は1億34百万円の親会社株主に帰属する当期純利益)となりました。

 

なお、会計方針の変更として、当社の持分法適用関連会社である三井海洋開発株式会社の連結財務諸表において、従来は日本基準を適用しておりましたが、当連結会計年度より国際財務報告基準(IFRS)を適用しております。当該会計方針の変更は遡及適用しているため、遡及適用後の数値で前連結会計年度との比較・分析を行っております。また、会計方針の変更として、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を当連結会計年度の期首から適用しております。詳細は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(会計方針の変更)」に記載のとおりです。

 

〔経営成績の推移:連結ベース〕

 

 

 

 

 

受注高

(百万円)

売上高

(百万円)

営業損失(△)

(百万円)

経常損失(△)

(百万円)

親会社株主に帰属する当期純利益又は親会社株主に帰属する当期純損失(△)

(百万円)

1株当たり当期純利益又は1株当たり当期純損失

(△)

(円)

2022年3月期

511,089

579,363

△10,029

△25,742

△21,825

△269.94

2021年3月期

576,668

644,686

△12,243

△8,223

134

1.67

2020年3月期

996,848

786,477

△62,079

△60,457

△86,210

△1,066.47

 

 セグメントごとの経営成績は次のとおりとなりました。なお、当連結会計年度より報告セグメントの区分を変更しており、前連結会計年度との比較は変更後の報告セグメントの区分に基づき記載しております。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(セグメント情報等)」に記載のとおりであります。

 

(船舶)

受注高は195億21百万円(前期比△48.4%)、売上高は280億88百万円(前期比△53.3%)、営業損失は4億38百万円(前期は19億16百万円の損失)となりました。

 

(海洋開発)

受注高は2,706億97百万円(前期比△15.6%)、売上高は3,233億22百万円(前期比+11.2%)、営業損失は80億86百万円(前期は217億83百万円の損失)となりました。なお、FPSO(浮体式海洋石油・ガス生産貯蔵積出設備)等の事業を担う三井海洋開発株式会社及びその連結子会社は、持分の減少に伴い、第3四半期連結会計期間末より持分法適用関連会社に変更となっております。そのため、受注高、売上高、営業損益の認識は連結子会社であった第3四半期連結累計期間までとなり、第4四半期連結会計期間の損益は持分法投資損益として連結数値に反映しております。

 

(機械)

受注高は1,487億69百万円(前期比+18.7%)、売上高は1,537億36百万円(前期比△3.3%)、営業利益は81億56百万円(前期比△16.9%)となりました。

 

(エンジニアリング)

受注高は16億52百万円(前期比△92.6%)、売上高は76億29百万円(前期比△80.0%)、営業損失は108億10百万円(前期は4億74百万円の利益)となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、営業活動によるキャッシュ・フローは202億65百万円の支出、投資活動によるキャッシュ・フローは709億23百万円の支出、財務活動によるキャッシュ・フローは8億6百万円の収入となったことなどにより、前連結会計年度末に比べて846億64百万円減少(△62.5%)して508億18百万円となりました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における営業活動による資金の支出は、202億65百万円(前連結会計年度は74億78百万円の収入)となりました。これは主として、棚卸資産の減少及び仕入債務の増加などによる収入があった一方、税金等調整前当期純損失の計上及び売上債権の増加などによる支出があったことによるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における投資活動による資金の支出は、709億23百万円(前連結会計年度は211億15百万円の収入)となりました。これは主として、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の売却による支出及び貸付けによる支出などがあったことによるものであります。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結キャッシュ・フロー計算書関係)」に記載のとおりです。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における財務活動による資金の収入は、8億6百万円(前連結会計年度は68億13百万円の支出)となりました。これは主として、長期借入金の返済及び社債の償還による支出などがあった一方、短期借入金の純増加及び長期借入れによる収入などがあったことによるものであります。

 

〔財政状態の推移:連結ベース〕

 

総資産

(百万円)

純資産

(百万円)

自己資本比率

(%)

営業活動によるキャッシュ・

フロー

(百万円)

投資活動によるキャッシュ・

フロー

(百万円)

財務活動によるキャッシュ・

フロー

(百万円)

有利子
負債残高

(百万円)

2022年3月期

409,150

62,949

14.0

△20,265

△70,923

806

150,679

2021年3月期

759,029

88,480

8.5

7,478

21,115

△6,813

174,936

2020年3月期

840,380

105,355

7.7

△37,213

84,125

△26,825

187,117

 

③ 生産、受注及び販売の実績

a. 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

生産高(百万円)

前期比(%)

船舶

27,324

△53.8

海洋開発

319,811

4.1

機械

155,178

0.0

エンジニアリング

8,466

△82.7

その他

67,058

△30.5

合計

577,840

△13.3

 (注)1.セグメント間取引については、相殺消去しております。

2.金額は、販売価格によっております。

3.当連結会計年度より、報告セグメントの区分を変更しており、前期比較については、前期の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較しております。

 

 

b. 受注実績

当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高

(百万円)

前期比(%)

受注残高

(百万円)

前期比(%)

船舶

19,521

△48.4

7,991

△82.5

海洋開発

270,697

△15.6

△100.0

機械

148,769

18.7

90,443

△3.3

エンジニアリング

1,652

△92.6

20,844

△63.5

その他

70,449

0.3

129,354

2.8

合計

511,089

△11.4

248,634

△84.2

 (注)1.セグメント間取引については、相殺消去しております。

2.当連結会計年度において、受注残高に著しい変動がありました。これは主に、海洋開発セグメントにおいて、連結子会社であった三井海洋開発株式会社の株式を一部売却し、連結の範囲から除外したことによるものであります。

3.当連結会計年度より、報告セグメントの区分を変更しており、前期比較については、前期の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較しております。

 

c. 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

販売高(百万円)

前期比(%)

船舶

28,088

△53.3

海洋開発

323,322

11.2

機械

153,736

△3.3

エンジニアリング

7,629

△80.0

その他

66,586

△31.0

合計

579,363

△10.1

 (注)1.セグメント間取引については、相殺消去しております。

2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自  2020年4月1日

至  2021年3月31日)

当連結会計年度

(自  2021年4月1日

至  2022年3月31日)

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

Equinor Brasil Energia Ltda.

698

0.1

86,234

14.9

3.当連結会計年度より、報告セグメントの区分を変更しており、前期比較については、前期の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較しております。

 

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しており、主な内容は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項 4.会計方針に関する事項」に記載しております。また、連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

なお、新型コロナウイルス感染症の今後の広がり方や収束時期等を含む仮定に関する情報は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 (追加情報)」に記載しております。

 

② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a. 財政状態

当連結会計年度末における資産、負債及び純資産の増減状況は、主に連結子会社であった三井海洋開発株式会社の株式を一部売却し、新たに持分法適用関連会社としたことで、連結の範囲から除外となったことによる影響が含まれております。

当連結会計年度末の資産は、前連結会計年度末と比べ3,498億78百万円減少の4,091億50百万円となりました。これは、現金及び預金が858億85百万円、受取手形、売掛金及び契約資産(前連結会計年度は受取手形及び売掛金)が1,553億91百万円、長期貸付金が378億33百万円それぞれ減少したことなどによります。

負債は、前連結会計年度末と比べ3,243億47百万円減少の3,462億円となりました。これは、支払手形及び買掛金が1,665億2百万円、前受金及び契約負債(前連結会計年度は前受金)が631億15百万円それぞれ減少したことなどによります。

純資産は、親会社株主に帰属する当期純損失を計上したことなどにより、前連結会計年度末と比べ255億31百万円減少の629億49百万円となりました。

 

b. 経営成績

当連結会計年度の受注高は、連結子会社の株式売却に伴い連結範囲から外れたことにより、前連結会計年度と比べて655億79百万円減少(△11.4%)の5,110億89百万円となりました。

売上高は、船舶部門において新造船工事の減少及び、エンジニアリング部門において連結子会社の売却等により653億23百万円減少(△10.1%)の5,793億63百万円となりました。

営業損失は、エンジニアリング部門において期末の為替相場の影響により引当済みの外貨建て費用が一時的に増加したことなどにより、100億29百万円(前期は122億43百万円の営業損失)となりました。

経常損失は、営業損失の計上及び持分法による投資損失を計上したことなどにより、257億42百万円(前期は82億23百万円の経常損失)となりました。

親会社株主に帰属する当期純損失は、経常損失の計上及び法人税等調整額(借方)の計上により、218億25百万円(前期は1億34百万円の親会社株主に帰属する当期純利益)となりました。

 

なお、会計方針の変更として、当社の持分法適用関連会社である三井海洋開発株式会社の連結財務諸表において、従来は日本基準を適用しておりましたが、当連結会計年度より国際財務報告基準(IFRS)を適用しております。当該会計方針の変更は遡及適用しているため、遡及適用後の数値で前連結会計年度との比較・分析を行っております。また、会計方針の変更として、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を当連結会計年度の期首から適用しております。詳細は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(会計方針の変更)」に記載のとおりです。

 

 

セグメントごとの経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、当連結会計年度より報告セグメントの区分を変更しており、前連結会計年度との比較は変更後の報告セグメントの区分に基づき記載しております。詳細は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(セグメント情報等)」に記載のとおりです。

 

(船舶)

一般商船分野においては、コンテナ船並びにバルクキャリアの用船マーケットは引き続き高値を維持しておりますが、昨年後半からの資機材価格の上昇並びにロシアによるウクライナ侵攻から景気の不透明感が生まれ、船主、造船所双方の様子見姿勢が顕著になってきております。一方、環境負荷低減の動きは停滞しておらず、船主、造船所から新燃料搭載船舶検討の要望が寄せられております。

自律船関連の分野では、内航海運での船員不足及び船員高齢化が、日本の海上輸送の根幹を揺るがす重大な課題となっております。また海難事故の7割以上はヒューマンエラーと言われており、海上輸送の安全確保にはヒューマンエラーの最小化が不可欠であります。さらに国土交通省からの自動運航船の設計ガイドラインの発表や、国際海事機関(IMO)での自律・自動操船の規則に関する議論も活発になり、自律・自動船の社会実装に向けた社会制度の整備が進んでいるため、近い将来の需要拡大が期待されております。

このような状況下、当社グループは一般商船分野においては、これまで培ってきたエンジニアリング能力を活用し、国内外のパートナー企業と連携を取りながら当社設計のライセンス供与、環境対応船の開発、設計受託業務などの営業活動を中心に進めており、国内外を問わずエネルギーエンジニアリング分野において収益向上及び社会貢献につながるよう取り組みを進めております。またパートナー企業以外の他造船所とも船舶仲介、ライセンス供与(船型開発)の案件の協議を行っており、顧客の船型開発・設計要望に貢献できるよう受注活動を展開しております。

自律船分野においては、モニタリング装置、操船装置、操船支援装置を中心に海運会社に向けた営業活動を展開しております。また、現状の受注額としては少額ですが、船舶向けのDX技術を応用した船舶運航や保守の支援サービスについても営業活動を開始しており、「安全向上・省人化による船舶運航の改善」という海事産業の重要課題解決のため自律操船装置の製品化に向けて先駆的取り組みを行い、先行者の利を最大限得るべく積極的な活動を展開しております。

受注高は、新造船の受注が低調であったことなどにより、前期と比べて182億83百万円減少(△48.4%)の195億21百万円となりました。売上高は、新造船工事の減少などにより、前期と比べて319億94百万円減少(△53.3%)の280億88百万円となり、営業損失は、不採算工事の減少などにより、前期と比べて14億77百万円改善の4億38百万円となりました。

 

(海洋開発)

原油価格は、その時々の情勢により上下しつつも、新型コロナウイルス感染症ワクチン接種の進展により経済活動が徐々に正常化に向かい、需要回復期待が強まったことなどから、2022年初めには1バレル80米ドルまで回復してきましたが、2月にロシアがウクライナに侵攻して以降、100米ドルを超える水準にまで上昇しております。

一方、取り巻く事業環境は、脱炭素化、再生可能エネルギーの更なる普及、デジタル技術の進化など大きく変化しています。こうした事業環境の変化を確実に捉え、既存事業で確実に収益を確保しつつ、浮体式洋上風力発電、海底資源開発、デジタルソリューション事業など、将来の収益源の育成を着実に進めてまいります。

FPSO等の事業を担う三井海洋開発株式会社及びその連結子会社は、持分の減少に伴い、第3四半期連結会計期間末より持分法適用関連会社に変更となっております。そのため、受注高、売上高、営業損益の認識は連結子会社であった第3四半期連結累計期間までとなり、第4四半期連結会計期間の損益は持分法投資損益として連結数値に反映しております。

受注高、売上高及び営業損失の9ヵ月実績は、それぞれ、前期と比べて501億13百万円減少(△15.6%)の2,706億97百万円、325億21百万円増加(+11.2%)の3,233億22百万円、136億96百万円改善の80億86百万円の損失となりました。同社グループに係る持分法投資損益は、新型コロナウイルス感染拡大による建造工事の収益率の低下や、進捗の遅れ等による追加費用が生じたこと、チャーターサービスを提供するFPSOの操業停止及び修繕費の発生などにより、166億86百万円の損失となりました。

 

 

(機械)

舶用ディーゼル機関については、新型コロナウイルス感染症の影響、資機材価格高騰などにより厳しい事業環境が続く中、120基/274万馬力と低水準の引渡しとなりました。来期は137基/288万馬力を計画しており、回復の兆しが見られます。今後は、ゼロエミッション化の流れを受け、LNG、メタノール、アンモニアなど多様な燃料に対応すべく積極的な研究開発、受注活動に努めます。

運搬機については、前年度新型コロナウイルス感染症の影響による受注低迷から操業不足が懸念されましたが、第2四半期連結累計期間以降に大型案件の受注が続き、海外向け受注高は前期と比べて大幅増加となりました。国内市場においても、新設、増設に加え、既設の老朽化更新など、新型コロナウイルス感染症の影響は少なく、新たに販売を開始したコンテナヤードクレーンの脱炭素化を目指したニアゼロエミッショントランステーナの需要も堅調です。

産業機械については、脱炭素化の流れから石油精製向けの投資抑制の影響により、往復動圧縮機、軸流圧縮機などの受注環境は非常に厳しい状況にありますが、プロセス機器については老朽化による国内中小規模の更新案件などにより堅調に推移しました。今後は製造からアフターサービスまでの一貫した体制を構築すると共に、水素関連市場への取組みを強化し、成長に繋げていきます。

ソリューション事業については、定期点検要領の改訂により、道路・トンネル・橋梁の点検における「人手」による検査の代替として「次世代点検技術」(機械化)による検査が可能となり、今後、当社トンネル探査車等レーダ事業の需要拡大が期待できます。また、ロボティクス事業に加え、大型造波装置などの水理実験施設や大型可動構造物、素粒子物理学実験設備などを対象とする設備機械事業にも注力し、事業拡大を図ります。

アフターサービスを中心としたLSS事業(製品ライフサイクル対応型事業及び顧客問題解決型事業)については、ディーゼル部品が堅調だった一方、産業機械関係は投資抑制や高炉の一部停止などの影響で厳しい状況が続きます。クレーン関係は新型コロナウイルス感染症の影響により海外案件が低迷しましたが、国内は既設クレーンの更新工事などにより堅調に推移しました。

受注高は、各事業において新型コロナウイルス感染症拡大に伴う投資抑制が解消されつつあることを受け、前期と比べて234億49百万円増加(+18.7%)の1,487億69百万円となりました。売上高は、主に舶用ディーゼル機関の前期の受注高減少に伴う出荷台数減少などにより、前期と比べて53億12百万円減少(△3.3%)の1,537億36百万円となり、営業利益は、売上高の減少などにより前期と比べて16億63百万円減少(△16.9%)の81億56百万円となりました。

 

(エンジニアリング)

環境分野においては、2021年4月1日付で当社が保有する別海バイオガス発電株式会社及び西胆振環境株式会社の全株式を連結子会社である三井E&S環境エンジニアリング株式会社(以下、MKE)に会社分割(吸収分割)により承継させた上で、当社が保有するMKEの全株式について、JFEエンジニアリング株式会社へ譲渡いたしました。

海外インフラ分野については、現在、インドネシア向け火力発電所土木建築工事2件について確実な工事遂行に注力しております。本工事完了後は、同事業から撤退し、そのリソースを当社グループの成長の見込める事業に再配置いたします。

受注高は、前期に環境関連事業の子会社を譲渡した影響などにより、前期と比べて208億24百万円減少(△92.6%)の16億52百万円となりました。売上高は、新規受注を控えた影響に加え連結子会社の減少により前期と比べて305億70百万円減少(△80.0%)の76億29百万円となり、営業損失は、上記に加え、引当済みの外貨建て費用が期末の為替相場により一時的に増加したことなどにより、112億84百万円悪化の108億10百万円となりました。

 

c. キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

 

③ 資本の財源及び資金の流動性についての分析

a. 資金需要

当社グループは個々の契約金額が大きな製品を受注生産しており、運転資金は工事にかかる材料費、請負工事費、及び人件費が占めておりますが、個々の工事の契約による支払い条件、工事の進捗により、一時的な運転資金が大きくなりやすい傾向があります。加えて、海外大型EPCプロジェクトの支出も想定しております。

投資資金の主なものは、製造工場を維持・増強するための設備資金となっており、足元では非中核事業等の売却を行って、運転資金、投資資金へも充当しております。

また、中核事業のグリーン戦略・デジタル戦略を推進するために必要な成長投資資金は、優先株の発行、及び新株予約権の行使により得られる資金を中心に充当いたします。

なお、現在当社グループは財務体質の強化が課題となっていることから、設備投資、投融資などの長期的な資金は、主力事業とする機械事業分野に集中させ、またリース取引を活用することで、一時的な多額の支出を抑制していく方針としています。

 

b. 資金調達

当社グループの運転資金、投資資金は主に営業活動による収入を財源とすることを基本とし、日々の資金の動きで不足が生じた場合は、金融機関からの借入で調達しております。また、海外大型EPCプロジェクトの遂行資金は、これまでは非中核事業や不稼働資産の売却により確保してきましたが、22年度からは主要取引金融機関からの借入により調達する予定です。これらの借入金を適時調達できる状態を維持するため、主要取引金融機関とは長年にわたる良好な取引関係を維持しており、一部の金融機関とはコミットメントラインを設定し、緊急の資金需要にも備えています。また、上場子会社を除いた連結子会社との間でCMS(キャッシュ・マネージメント・システム)を導入して、グループ全体での資金効率を高め、安定的に資金の流動性を確保できる体制を構築しております。

 

なお、当連結会計年度末の有利子負債の内訳は次のとおりであります。

(単位:百万円)

 

合計

返済・償還

1年以内

返済・償還

1年超

短期借入金

94,615

94,615

長期借入金

27,759

8,101

19,657

社債

20,000

15,000

5,000

リース債務

8,305

1,808

6,496

合計

150,679

119,524

31,154

 

 

④ 経営計画の達成・進捗状況

当社グループは、エンジニアリング事業における過年度の大規模な損失により、財政基盤が著しく毀損し、自己資本の回復と資金の確保が急務となっており、2019年度から2022年度までを事業再生計画期間とする「三井E&Sグループ 事業再生計画」を2019年5月に策定し、財務体質及び収益体質の強化、並びに事業構造の変革を推し進めております。また、当該期間中に発生した追加損失を受けて、2019年11月に計画の一部見直しを行い、「資産及び事業の売却案件の追加と実行の加速」、「事業構造の改革及び協働事業に関する他社との協業の促進」を対策に加えて推進しております。

さらに、当社グループは、2020年8月に「20中計」を策定し、事業の集中と協業を明確にし、アライアンスによる市場創出を進め、「全ての機械にデジタル価値を付加する企業」を目指して施策を推進してまいりました。

「20中計」では、有利子負債の削減や資産の有効活用を重視し、売上至上主義から脱却し、利益追求を重視する観点から、経営指標として売上高経常利益率、総資産回転率及びNET有利子負債EBITDA倍率を選定し、最終年度である2022年度において、売上高経常利益率:4.0%以上、総資産回転率:0.80倍以上及びNET有利子負債EBITDA倍率:5倍未満を達成することを目標として設定しました。

当連結会計年度においては、三井海洋開発株式会社が第3四半期連結会計期間末より持分法適用関連会社に変更となったことにより売上高が目標値と乖離し、また、同社においてコロナ禍に端を発する各種工程の遅延等を背景に大幅に悪化したことから持分法投資損失を認識したため経常損失となりましたが、環境関連事業の譲渡や艦艇事業の譲渡、商船事業の資本提携や子会社株式の譲渡等、「資産売却と協業の推進」を加速させた結果、総資産及び有利子負債は減少しております。また、過年度も含め総額約1,200億円規模の事業・資産売却が完了し、事業再生計画に一定の目途をつけることができました。

一方、持続可能社会への急速な移行等、当社を取り巻く事業環境が大きく変化しているため、当社グループは次期中計を1年前倒しで取り組むこととし、「23中計」を2022年5月に公表しております。現在は「23中計」で定める数値目標の達成に向けて取り組んでおり、その各施策については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」に記載しております。

 

<20中計の進捗>

指標

2022年度目標

2021年度実績

目標との差異

売上高

7,700億円

5,793億円

△1,906億円

売上高経常利益率

4.0%以上

△4.4%

△8.4%

総資産回転率

0.80倍以上

0.99倍

+0.19倍

NET有利子負債EBITDA倍率(※1)

5倍未満

-(※2)

※1. NET有利子負債EBITDA倍率=(有利子負債残高-現金及び預金)÷(営業利益+減価償却費+持分法による投資損益)

※2. 2021年度 NET有利子負債EBITDA倍率の実績については、営業損失及び持分法による投資損失の合計額が減価償却費を上回ったことから「-」としております。

 

 

4【経営上の重要な契約等】

(1) 技術導入

会社名

相手方

提携品目

契約期間

契約内容(対価の支払方法)

国籍

名称

㈱三井E&Sマシナリー

ドイツ

MAN Energy Solutions SE

MAN B&Wディーゼル機関

1971.11

2031.12

(1)ロイヤリティ

(2)技術資料代

(3)技術指導料

オランダ

Howden Thomassen Compressors B.V.

往復動コンプレッサ装置

2012.1

1年毎

自動延長

(1)ロイヤリティ

(2)技術サービス料

 

(注)当連結会計年度に関する開示に当たり、経営上の重要性の観点から、本欄に記載すべき契約を再検討して表示しております。

 

(2) 技術供与

会社名

相手方

供与品目

契約期間

契約内容(対価の受取方法)

国籍

名称

㈱三井E&Sマシナリー

中国

Shenyang Blower Works Co.,Ltd.

軸流圧縮機

2004.11

2024.6

(以後5年毎自動延長)

(1)ロイヤリティ

(2)技術サービス料

Shenyang Turbo Machinery Corporation

炉頂圧回収タービン

2016.6

2026.6

(以後5年毎自動延長)

ロイヤリティ

日本

MDエンジニアリング㈱

MD-Gシリーズガスエンジン

2011.12

1年毎

自動延長

(1)ロイヤリティ

(2)技術資料代

 

(3) 連結子会社の株式の一部譲渡

 当社と常石造船株式会社は、2020年7月31日付で、当社の連結子会社である三井E&S造船株式会社(以下、「MES-S」)の艦艇事業を除いた商船事業及び一部の子会社を有するMES-Sの株式の一部の譲渡に向けた協議を開始することに関する基本合意書を締結いたしました。その後、詳細について協議・交渉を進め、2021年4月23日付で株式譲渡契約を締結いたしました。

 詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(企業結合等関係)」に記載のとおりであります。

 

(4) 連結子会社の株式譲渡

 当社は、2021年11月25日開催の取締役会において、当社の連結子会社である四国ドック株式会社の株式持分の全てを譲渡することを決議し、同日付で株式譲渡契約を締結しております。

 詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(企業結合等関係)」に記載のとおりであります。

 

(5) 連結子会社の株式譲渡

 当社は、2021年12月23日開催の取締役会において、当社の連結子会社である株式会社MESファシリティーズ(以下、「MESF」)に対して、当社が有している自動車教習所運営事業に関する権利義務を会社分割(吸収分割)の方法でMESFへ承継させた上で、MESFの発行済株式の全てを、日本ハウズイング株式会社に譲渡することを決議し、同日付で株式譲渡契約を締結しております。

 詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な後発事象)」に記載のとおりであります。

 

(6) 第三者割当による優先株式及び新株予約権の発行、ファシリティ契約の締結、定款の一部変更並びに資本金及び資本準備金の額の減少

 当社は、2022年3月31日開催の取締役会において、以下の事項について決議いたしました。

 

①株式会社SMBCキャピタル・パートナーズが出資するファンドであるSMBCCP投資事業有限責任組合1号との間で、投資契約を締結し、2022年6月28日開催の当社定時株主総会においてA種優先株式第三者割当に係る議案の承認が得られること及び本定款変更(下記②に定義します。)に係る議案の承認が得られることを条件として、総額9,000百万円のA種優先株式を、本A種優先株式割当予定先に対して、第三者割当の方法により発行すること

②本株主総会において必要な承認が得られることを条件として、A種優先株式に関する規定の新設等に係る当社定款の一部変更を実施すること

③A種優先株式第三者割当に係る払込みが行われることを条件とし、2022年6月30日を効力発生日として、資本金及び資本準備金の額を減少すること

④本株主総会において、(ⅰ)A種優先株式第三者割当(A種優先株式の有利発行に係る特別決議を含みます。)、()本定款変更、(ⅲ)本資本金等の額の減少を付議すること

⑤SMBC日興証券株式会社を割当予定先として第三者割当により新株予約権を発行すること

⑥本新株予約権割当予定先との間で、金融商品取引法に基づく本新株予約権に関する届出の効力発生後に本新株予約権の買取に関する契約及びファシリティ契約を締結すること

 

 詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(追加情報)」に記載のとおりであります。

 

(7) 株式会社IHI原動機の舶用大型エンジン及びその付随事業の承継に関する協議開始

 当社は、2022年3月31日付で、株式会社IHI(以下、「IHI」)との間で、当社が株式会社IHI原動機(以下、「IPS」)の舶用大型エンジン及びその付随事業(以下、「対象事業」)を承継すること(以下、「本取引」)の協議及び検討を開始することについて、基本合意書を締結いたしました。

 

①本取引の目的及び背景

 造船会社の国際的な再編や脱炭素化に向けた世界的な燃料転換の動きなど、対象事業を取り巻く環境は大きく変化しており、舶用エンジンメーカーは、リソースを集中させて、国際競争力を高めていく必要に迫られております。

 このような市場環境下において、当社とIHIは、対象事業に関する経営及び資本の効率化、収益性の向上、並びに企業基盤の充実及び競争力の強化を通じた各当事者及び対象事業の継続的発展のため、本取引の実現に向けて、協議及び検討を開始することを合意し、相互に確認いたしました。

 対象事業の具体的な内容及び範囲並びに本取引の方法等の詳細については、当社、IHI及びIPS間において引き続き協議のうえ、決定する予定であります。

 

②承継の日程

(ⅰ)基本合意書締結   2022年3月31日

(ⅱ)最終契約書締結   2022年9月(予定)

(ⅲ)本取引実行     2023年4月(予定)

 

(8) 連結子会社の株式の一部譲渡

 当社と常石造船株式会社(以下、「常石造船」)は、2022年5月27日付で、当社の連結子会社である三井E&S造船株式会社の株式のうち17%を、2022年10月3日付で常石造船に譲渡することで合意に達し、株式追加譲渡に関する合意書を締結いたしました。

 詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な後発事象)」に記載のとおりであります。

 

5【研究開発活動】

当社グループは、4事業分野に対応した研究開発セグメントを設定し、それぞれの事業分野の中核技術を基軸として、製品競争力強化と事業拡大につながる研究開発を積極的に推進しております。

当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は、2,100百万円であります。なお、各事業部門における主な研究開発は以下のとおりであります。

 

(1)船舶

・省エネ船を得意とする当社グループの強みを維持・向上させるため、新船型や省エネ技術の開発を継続的に進めております。当社グループの環境対応船“neoシリーズ”の新ルール対応を進め、中国における合弁会社江蘇揚子三井造船有限公司(YAMIC)においてneo66BCを受注しました。引き続き、市場ニーズにマッチした船型開発を精力的に進め、neoシリーズの更なる受注拡大とラインナップ拡充を図ってまいります。また、商船エンジニアリング事業の受注に繋がる技術開発にも注力します。

・自動船位保持装置(DPS)や統合操船システムMMSをはじめとした操船システムの開発を継続的に続けております。製品化を目指して開発を進めている自律操船システムについては、「無人運航船プロジェクトMEGURI2040」において、公益財団法人日本財団の助成を受けて、大型カーフェリー、749GT型コンテナ船、小型旅客船を用いて、ハンズオフによる自動航海の実証実験を2021年夏から2022年2月にかけ実施しました。

・2021年10月1日付で艦艇事業等を三菱重工業株式会社に譲渡したことに伴い、当該事業に関する研究開発も併せて譲渡しております。

当事業に係る研究開発費は、234百万円であります。

 

(2)海洋開発

・海洋開発では、新規事業分野での既存技術活用による開発、及びFPSO運用上の課題を解決するための開発を行っております。

・新規事業分野としては、洋上風力発電事業を新たな事業分野とするべく、当社グループの浮体設備や係留技術の強みを生かした独自の浮体・係留システムの開発を進めております。この他、これまでに蓄積した技術を応用し、日本近海の海底海洋鉱物資源であるメタンハイドレートの回収に関する研究開発を推進しております。

・FPSO運用上の課題解決としては、経年劣化した船体構造に対し、炭素繊維の適用により、火気工事を伴わず少人数・短期間で安全に施工可能な新しい補修法を開発しABS船級協会の認証を得て、実用化の段階に進んでおります。

当事業に係る研究開発費は、335百万円であります。

 

(3)機械

・舶用ディーゼルエンジン関連では、ゼロエミッション船実現のため、燃焼時にCO2を排出しないアンモニア・水素燃料が注目されており、当社グループにおいては、アンモニア燃料船向けに、主機関及び燃料供給装置などの関連機器の開発を進めております。燃料供給装置など一部の製品開発は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のグリーンイノベーション基金の補助事業として採択されています。また、水素燃料船の開発についても、ダイハツディーゼル株式会社と共同で国土交通省の海事産業集約連携促進技術開発支援事業に採択され、水素を燃料とするエンジン開発に着手しております。

従来燃料にも利用できる温室効果ガス(GHG)削減技術としては、エンジンの排ガスを有効活用し、エネルギー効率を改善する自社開発製品である次世代型油圧式廃熱回収システム Turbo Hydraulic System type2(THS2)やCII(Carbon Intensity Index)規制対応技術として着目されているEPL(Engine Power Limitation)関連製品を開発し、市場投入しております。

デジタルトランスフォーメーション(DX)関連技術開発としては、陸上試運転の自動計測システムを導入し、陸上試運転期間の短縮とCO2削減に取り組んでおります。また、現在主流である電子制御機関の制御関連の不具合防止を目的とし、電子制御エンジンのリアルタイムシミュレータを新たに導入しました。試運転の一部検証が本シミュレータ上で実施できるようになり、陸上試運転期間の短縮が可能となりました。

今後も顧客ニーズに沿った環境対応・GHG削減技術及びDX関連技術開発を優先的に進めてまいります。

・産業機械関連では、従来、石油精製、石油化学市場向けを中心に事業展開してきましたが、近年の産業界の急速な脱炭素化への流れに対応し、当社の連結子会社である株式会社加地テックと協同で水素関連市場向け往復動圧縮機の開発に着手しました。これまで同関連市場のパイロット設備に多くの小容量圧縮機を供給してきた株式会社加地テックと連携することで同社が保有する高圧技術やノウハウを活用し、将来の高圧・大容量化の市場要求に応えるため、新型圧縮機フレームの開発も行い、商品ラインナップの拡充を進め、市場・顧客ニーズに適合した商品を継続的に提供してまいります。

・運搬機システム関連では、CO2やディーゼル排気有害物質の排出を当社グループ従来のハイブリッド型よりも更に低減した新しいNZE(Near Zero Emission)トランステーナ(トランスファークレーン)を開発し、販売を開始しました。また、将来の水素供給インフラ普及を見据え、水素燃料電池搭載トランステーナの開発にも着手しました。この開発はNEDOの事業に採択されており、2022年に大分工場での実証試験を、2024年からは米国ロサンゼルス港での実使用環境下での運用を行う計画です。

 

また、コンテナターミナルの労働環境改善や安全性向上へのニーズに応え、遠隔操作が可能なトランステーナの開発を完了し、大分工場内に整備したテスト用トランステーナとヤード荷役テストエリアを活用して、システム検証や更なる荷役効率向上を進めております。ポーテーナ(岸壁クレーン)の遠隔自働運転についても各要素技術の開発を進めており、クレーン下の作業者等との安全性確保の検討を行っております。

これらハード面の開発と並行して、自動化ターミナル設備の運用・管理を行うシステムACCS (Automated Container terminal Control System)、コンテナ管理及び荷役作業の指示を効率的に行うシステムCTMS (Container Terminal Management System)などのソフトウェア製品とも連携させ、自動化コンテナターミナルを構成する全ての要素に一括して対応できるトータルソリューションパッケージ製品群を構築しております。

・アフターサービス関連では、国土交通省港湾局が進めている荷役機械の予防保全的維持管理手法の高度化に合わせて、ビッグデータを活用するクラウド型遠隔監視システムCARMS (Crane Advanced Remote Monitoring System) を三井E&Sシステム技研株式会社と共同で製品化し、顧客の要望に応じて機能向上を実施し、より良いサービスを提供することを目指しております。本システムは、プラットフォームとしての機能を有しており、荷役機械の完全DX化を目指し、AIを用いた高度予防保全などの開発も進めております。

また、従来目視で行っていた点検作業をドローンに置き換えるシステムを株式会社ゼンリンデータコムと共同で開発しております。本システムは、3Dモデル上での設定による自動飛行と撮影に加えて、遠隔地からリアルタイムでの飛行映像の確認及び遠隔地からの自動飛行を実現しており、更にAIによる錆の自動検出や人による評価のばらつきをなくすためにAIによる定量評価システムを構築し、CARMSと連携させて経年変化観察も実現するべく開発を進めております。

・ロボティクス関連では、2019年に開設した遠隔システムデモルームにおいて、遠隔操作の高度化技術及び予兆検知技術の開発、センサレス技術の研究開発など、実機を用いた遠隔操作検証を実施しております。2021年には新たに高耐放射線性ロボットTELBOTを本デモルームに追加し、操作体験・運転訓練・保守訓練サービスの更なる拡充を図っております。

・レーダ関連では、株式会社野村総合研究所と開発したAI・クラウドを利用した非破壊検査データの自動解析技術を、当社グループの道路探査・トンネル探査・計測業務での総合的なサービスに展開してまいります。また、国土交通省総合政策局が進めている設計データの3D化に合わせ、当社グループ独自のマルチパスレーダ装置で取得した三次元データを3D CAD用データに変換する技術を開発・製品化するなど、顧客ニーズに適合したデジタル化による総合サービス提供に向け開発を進めております。

当事業に係る研究開発費は、1,223百万円であります。

 

(4)エンジニアリング

該当事項はありません。

 

(5)その他

・三井E&Sシステム技研株式会社の主力製品である勤怠管理システム「TIME-3X」の機能強化を継続的に進めております。また、三次元自動計測分野では、これまでの自動車業界向け車体三次元計測システムの機能強化に加え、新たな取組みとしてX線CT装置と三次元解析ソフトウェアを用い、アルミ鋳造品の欠陥を非破壊で検査するシステムの開発に向けて、自動車部品を対象としPoC(Proof of Concept)を実施しました。

当事業に係る研究開発費は、306百万円であります