第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

以下の記載事項のうち将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものである。

 

(1) 経営方針・経営戦略等

①経営方針・経営戦略等策定の背景となった経営環境

当社グループは、中期経営計画「2015事業計画」において、財務基盤の強化を図るとともに、事業構造の改革を推し進めながら、将来の事業規模拡大と収益力向上につながる各種施策を強力に推進した。

財務基盤の強化については、キャッシュ・フロー経営の徹底とアセットマネジメントの強化により、当初の計画を大きく上回る成果を上げ、中長期的な成長戦略を担う伸長分野や新規事業に対して、積極的に投資をする上での自由度を高めることができた。

一方で、事業規模拡大と収益力向上には課題が残った。具体的には、物流機器、ターボチャージャ、冷熱製品等の中量産品事業が順調に事業規模と収益を拡大させたものの、当社グループの主力事業である火力発電システム事業が世界的な市場低迷に直面したことに加え、成長事業として重点的にリソースを配分してきた三菱スペースジェット(当時MRJ)事業が開発遅れと開発費増加により全体の収益を押し下げる結果となった。

また、AIやIoTなどの技術革新、世界的な脱炭素化や再生可能エネルギーへの転換など、当社を取り巻く事業環境は非常に速いスピードで変化しており、中長期の成長に向けた取組みが急務である。

 

②中期経営計画「2018事業計画」

当社グループは、このような経営環境を踏まえ、2018年度を初年度とする3年間の中期経営計画「2018事業計画」を策定し、事業成長と財務健全性のバランスを取った経営により、長期安定的な企業価値の向上を目指すこととした。「2018事業計画」では、「グローバル水準の持続性と成長力を有する企業体格の実現」、「事業構造改革の定着」、「長期ビジョンに基づく成長戦略の推進」の基本方針に基づき、各種施策を強力に推進している。

 

ア.グローバル水準の持続性と成長力を有する企業体格の実現

当社グループは、各ステークホルダーと社会のニーズに持続的かつ調和的に応えるため、売上:総資産:時価総額=1:1:1とするTriple One Proportion(以下、「TOP」という。)という独自の経営指標を設定した。これは、効率的で質の高い事業活動を行うことで財務健全性の維持と成長のための投資を中長期的にバランスさせる経営を目指すことを意図したものであり、このような経営を通じて長期安定的な企業価値の向上を目指していく。

「2018事業計画」においては、最終年度に当たる2020年度において達成すべきTOPの目標を、売上収益、総資産、時価総額の比率で0.9:1:0.5としている。

 

イ.事業構造改革の定着

当社グループは、ドメイン制を維持しながら、グローバル・グループ経営の基本方針として「安定性と成長性の両立」、「事業部門の自律経営とグループシナジー」、「柔軟性とスピードのある経営」の3つを掲げ、引き続き事業ポートフォリオの組替えを行いながら、経営体制の最適化に取り組んでいく。

具体的には、各事業の将来性を見極めた戦略的なリソース配分、各事業の特性や方向性に応じた経営体制の構築、機動性確保のための組織のフラット化、グループシナジー実現に向けた共通プラットフォームの整備、経営人材の育成や社員エンゲージメントの向上などに取り組んでいく。

 

ウ.長期ビジョンに基づく成長戦略の推進

当社グループは、現在及び近未来の社会が直面する複雑・困難な課題を解決し、さらにその先の未来で社会に求められる存在であり続けるため、社会とともに変化・進化していく活動として「MHI FUTURE STREAM」を立ち上げた。2020年4月に新設した成長推進室を中心に、脱炭素・電化・知能化を軸として、既存事業の「深化」と、中長期トレンドを見据えた新事業の「探索」に取り組んでいく。

 

(2) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

米中貿易摩擦や新型コロナウイルス感染症の世界的流行により、「2018事業計画」策定時と比べて世界経済や当社グループの置かれている環境は急激に悪化している。そのため、特に影響が大きい事業から緊急対策に着手するとともに、三菱スペースジェット事業の開発スケジュールについても、この影響を加味した検討を進めていく。また、世界的な脱炭素化の加速を受け、エネルギー事業の構造転換への取組みをより一層強化していく。さらに、新型コロナウイルス感染症の影響長期化や、今後の事業環境の更なる変化を想定し、次期事業計画の策定を前倒しで進めていく。

 

ア.新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた緊急対策

2020年の年明け以降、新型コロナウイルス感染症の急速な世界的流行により、多くの国で地域封鎖や外出制限といった厳格な公衆衛生上の措置が取られるようになった上に、各国間の人及びモノの移動も非常に限定され、国内外の経済活動が大きく制限され、我が国を含む世界経済は深刻な打撃を受けている。

製品・サービスの需要の落ち込みの影響を特に大きく受けている民間航空機関連事業及び中量産品事業では、既に着手している緊急対策に加え、かつてないほど厳しい事態を念頭に、最悪のケースも想定して、人員対策を含めた固定費の圧縮、外部流出費用の削減、投資計画の見直しなどあらゆる対策を講じていく。

また、当社グループの売上の約3分の2を占めるインフラ関連企業及び官公庁向けの受注品事業でも、海外を中心に、既に受注した案件の進捗遅延による売上計上時期の遅れや新規受注の減少、サプライチェーンの停滞といった影響が生じており、これらが長期化する可能性がある。当社グループが一丸となり、影響を最小限にとどめるための施策を積極的に実行していく。

一方、在宅勤務によるテレワーク拡大等を業務改革の好機と捉え、コーポレート関連の業務プロセスの抜本的な見直しにも着手している。働き方改革やIT化の加速により、グローバル本社を中心に業務効率化及び生産性向上を図り、間接費の大幅な削減と人員リソースの有効活用につなげる。

 

イ.三菱スペースジェット事業での対応

三菱スペースジェット事業に関しては、型式証明取得の遅れにより全体スケジュールを精査する必要性が生じていたところ、その後の新型コロナウイルスの感染拡大に伴って、最新の試験用機体である10号機の米国へのフェリーフライトや、米国での飛行試験の実施にも影響が出ているほか、顧客である航空業界も深刻な打撃を受けて危機的な経営状況にある。このような状況の下、引き続き開発スケジュールの精査を行うとともに、予算についても適正な規模で推進していく。

 

ウ.エネルギー事業の構造転換

新興国経済の発展や電気自動車の普及をはじめとする電化の進展により、今後、世界の電力需要は伸長していくものと予想されるが、エネルギー業界は、地球温暖化を契機とする最近の世界的な脱炭素化の流れの中で、構造転換によるクリーンエネルギーへのシフトが進展しており、市場での競争は厳しさを増している。しかしながら、当社グループはむしろこれを商機と捉え、グループの総力を挙げて最適なエネルギーソリューションの提案を積極的に進めていく。まず、当社の完全子会社となる予定の三菱日立パワーシステムズ株式会社は、「三菱パワー株式会社」に社名を一新し、競争力の強化を図るとともに、世界をリードする発電技術で脱炭素社会の実現に引き続き貢献していく。また、同社をエネルギー事業の中核に据え、当社グループが保有するCCS*1やCCU*2、バイオマス、ごみ焼却発電、再生可能エネルギー等の技術を活用し、グループ内の関連事業とのシナジー実現に向けた取組みを加速していく。

*1 CCS:Carbon dioxide Capture and Storage(二酸化炭素の回収・貯留)

*2 CCU:Carbon dioxide Capture and Utilization(二酸化炭素の回収・利用)

 

エ.「2021事業計画」策定の早期着手

新型コロナウイルス感染症の流行終息後の社会トレンドに対応し、いち早く要求に応えていくため、緊急対策の推進にとどまらず、次の中期経営計画「2021事業計画」の策定に前倒しで着手する。「2021事業計画」では、市場・顧客・社会のニーズの変化を捉えつつ、事業ポートフォリオマネジメントの強化と事業運営体制のスリム化に取り組むとともに、成長戦略の推進を加速していく。

当社グループは、事業ポートフォリオマネジメントについて、2012年以降「戦略的事業評価制度」に基づき継続して見直してきたが、今般の事業環境の急激な変化を踏まえ、収益性や成長戦略との適合性などの判断軸に基づき、事業の更なる改革を進めていく。

さらに、事業運営体制のスリム化のため、事業の選択と集中に加え、グループ会社や国内拠点の再編によるバランスシート全体の圧縮や、業務効率化、人材流動化等の生産性向上の促進により、販売費及び一般管理費の低減を図る。

加えて、成長戦略の推進を加速するため、既存事業の規模拡大によって収益性を維持・強化しつつ、エネルギー・環境等を中心とする成長分野への投資を行い、新たな事業の創出に取り組む。ここでは、エネルギーやモビリティ分野の革新を支える自律・知能化技術、環境対応技術、電化技術など、当社グループが今まで培ってきた様々な技術の高度化と組合せにより、当社グループを挙げて安全・安心な生活を支える社会基盤の構築やサービスの提供を追求していく。

 

当社グループは、コンプライアンスやCSRは経営の重要課題であるとの認識の下で、リスク管理を徹底しながら、以上の諸施策の実行を通じて社会の持続的発展に貢献していく。

 

2【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクには、以下のようなものがある。これらの主要なリスクは、10年以内に顕在化する可能性があり、特に「(1)新型コロナウイルス感染症の感染拡大」及び「(2)三菱スペースジェットの開発遅延」は、既に顕在化し、当社グループへの影響が大きいリスクである。また、これらの主要なリスクの中には、より中長期的な観点で、当社グループを取り巻く事業環境や社会構造の更なる変化をもたらす可能性があるものも含まれており、当社グループは、先々を見据え、そのような動きに対応できるよう、先んじて対策を取っていかなければならないと認識している。

なお、記載事項のうち将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものである。

 

(1) 新型コロナウイルス感染症の感染拡大

ア.世界的な感染拡大と経済の失速

新型コロナウイルス感染症は、2019年末以降、中国国内での感染を発端として、イタリア、イラン、韓国等での感染者の爆発的増加が報じられた上に、欧州や米国でも急拡大するなど、世界的な感染拡大(パンデミック)に発展している。新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、地域封鎖や移動制限といった厳しい公衆衛生上の措置が実施されるなど、各国で経済活動が大きく制限されたことから、世界経済は急激に失速し、また、日本経済も、世界経済と同様に大幅に下押しされる状況となり、いずれの先行きも非常に見通しが悪い状況にある。

イ.経営成績等の状況に与えうる影響

当社グループは、日本のみならず世界各地で事業を展開しており、このような新型コロナウイルス感染症の感染拡大による影響を受けている。当社グループの売上の約3分の2を占めるインフラ関連企業及び官公庁向けの受注品事業では、海外案件を中心に既に受注した案件の進捗遅延による売上計上時期の遅れ、渡航制限やサプライチェーンの停滞、契約交渉や受注プロセスの遅延等の影響が出始めている。また、民間航空機関連事業では、旅客便需要の大幅減少に伴う航空会社の設備投資削減等を受け、当社グループの生産やサービス事業に関して影響を受けている。さらに、自動車関連の中量産品事業では、複数の国・地域で操業停止や生産調整を行っている。その他の中量産品事業でも、サプライチェーンの停滞や操業度の低下といった影響が顕在化してきている。これらの影響を確実に予想することは難しく、かつ、悪化又は長期化するおそれがあり、当社グループの経営成績等の状況に重要な影響を与える可能性がある。

ウ.リスクへの対応策

当社グループは、これらの影響を低減するため、人員対策を含めた固定費の圧縮、従業員の一時帰休、工場稼働率の見直しや生産調整、外部流出費用の削減、投資計画の見直し、余剰リソースの有効活用、各国の助成制度の活用等の対策を進めている。

 

(2) 三菱スペースジェットの開発遅延

ア.開発遅延と市場の不透明性

三菱スペースジェットの開発は、型式証明取得の遅れにより、全体スケジュールを精査する必要性が生じていたところ、その後の新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴って、最新かつ型式証明可能な機体である飛行試験機10号機の米国へのフェリーフライトの遅れや、米国での飛行試験の実施にも影響が生じたほか、顧客である航空業界各社も深刻な打撃を受けて危機的な経営状況にある。

イ.経営成績等の状況に与えうる影響

三菱スペースジェットの開発については、上記のような事業環境の激変等により、更なるスケジュールの遅延、費用の増加や、事業計画の見直しなどの可能性も否定はできない。これらにより、既に受注した機体の販売契約に関する売上計上時期の遅れや顧客からの契約解除、顧客やパートナー企業その他の関係者からの損害賠償の請求等、当社グループの経営成績等の状況に重要な影響を与える可能性がある。

ウ.リスクへの対応策

当社グループは、これらの影響を低減するため、今後の市場動向を注視しながら関係者との情報共有・関係維持に努めつつ、引き続き開発スケジュールの精査を行うとともに、予算についても適正な規模で推進するなどの対策を進めている。

(3) 各種の災害

ア.自然災害や戦争・テロ等の発生

地震、津波、豪雨、洪水、暴風、噴火、火災、落雷、感染症の世界的流行(パンデミック)等の自然災害の発生や、戦争・テロ、政情不安、反日運動、人質・誘拐等の犯罪、社会インフラの麻痺、労働争議、停電、設備の老朽化・不具合等の人為的な要因により、様々な物的・人的被害が生じ、円滑な経済活動が阻害され、さらには社会基盤が破壊されるといった事態が考えられる。

イ.経営成績等の状況に与えうる影響

当社グループは、製品・サービスを提供するための拠点を世界各地に有しているが、特に日本やタイなどに生産拠点が集中しているため、これらの国・地域において、大規模な地震・津波・洪水といった災害が発生した場合、当社グループの生産能力に重要な影響を及ぼす可能性がある。具体的には、生産設備の毀損・滅失、サプライチェーンの停滞・混乱、生産に必要な材料・部品等の不足やサービスの提供停止、生産拠点の操業低下・稼働停止等のほか、代替となる生産設備や取引先の喪失、損害保険等で補填されない損害の発生等の可能性がある。また、テロや感染症の世界的流行等の突発的な事象の発生は、旅客数の減少といった製品・サービスの需要縮減を招き、民間航空機事業やその他関連事業の損益を大幅に悪化させる可能性がある。これらの影響に伴う受注や売上の減少、生産能力の低下等により、当社グループの経営成績等の状況に重要な影響を与える可能性がある。

ウ.リスクへの対応策

当社グループは、これらの影響を低減するため、災害対策支援ツールの活用、連絡体制・事業継続計画(BCP)の策定・整備、工場の点検や各種訓練の定期的な実施に加え、各国の情勢や安全に関する情報収集等の対策を進めている。

 

(4) 事業環境の変化

ア.当社グループを取り巻く事業環境の悪化

当社グループを取り巻く事業環境は、非常に速いスピードで変化している。例えば世界経済に関しては、米中貿易摩擦の激化や保護主義的な貿易政策の推進といった経済環境の変化が生じている。また、我が国においては、社会構造の変化として、人口減少・少子高齢化の一層の進展による人材不足の深刻化、廃業の増加、技術・技能の断絶、製造現場の空洞化等が懸念されている。当社グループに密接に関連するものとしては、全世界的に経済発展と環境負荷低減の両立が社会的な課題となっており、様々な分野で環境規制が強化されている。特にエネルギー分野では、新興国経済の発展や電気自動車の普及等をはじめとした電化の進展により、今後、世界の電力需要はますます伸びていく一方、地球温暖化を契機とした低炭素化・脱炭素化の動きが加速していくことが予想されているなど、当社グループの置かれている環境は、大きく変化している。

イ.経営成績等の状況に与えうる影響

火力発電システム、化学プラント、製鉄機械、コンプレッサなどの事業において、環境意識の高まりによって、製品・サービスの需要が減少し、事業規模が縮小する可能性や投下資本の回収が困難となる可能性がある。特に火力発電システム事業は、化石燃料由来の電力需要の低下や競合他社との競争激化の影響も考えられ、これらにより建設工事やアフターサービスなどの受注が減少するおそれがある。さらに、当社グループは、各種製品事業において、他社とのM&A・アライアンスを行っているが、市場環境の変化、事業競争力の低下、他社における経営戦略の見直し、その他予期せぬ事象を理由として、これらのM&A・アライアンスが目論見どおり実現できない場合、資産の評価見直しなどによって、減損損失等を計上する可能性がある。このような事業環境の変化は、当社グループの経営成績等の状況に重要な影響を与える可能性がある。

ウ.リスクへの対応策

当社グループは、これらの影響を低減するため、性能・信頼性・価格面の競争力を向上させるべく、研究開発や設備投資を通じた製品競争力の維持・強化を図っている。また、社外の知見も取り入れて市場の動きを先取りした新たな機能やソリューションの提案に注力している。さらに、2020年4月に成長推進室を設置し、既存の事業部門では対処しにくい新しい領域の事業開拓や既存事業の組合せを通じた事業開発等の対策を進めている。

 (5) 製品関連の問題

ア.製品・サービスに関連する品質・安全上の問題、コスト悪化等

当社グループは、ものづくりとエンジニアリングのグローバルリーダーとして、造船をはじめ、交通・輸送システム、民間航空機、発電システムなどのインフラ、宇宙システムなど、幅広い分野で高度な技術力を活かしてソリューションを提供している。当社グループは、製品の品質や信頼性の向上に常に努力を払っているが、製品の性能・納期の問題や製品に起因する安全上の問題が生じる可能性がある。また、製品の仕様変更や工程遅延等に起因するコスト悪化、材料・部品等の調達や工事に伴う予期しない問題の発生、納期遅延や性能未達による契約相手方からの損害賠償請求等、契約相手方の財務状況の悪化等の問題が生じる可能性がある。また、サプライヤーとの間でも、製品・サービスなどに起因して、これらと同様の問題が発生する可能性がある。

イ.経営成績等の状況に与えうる影響

このような製品関連の問題発生等を理由として、韓国における蒸気タービン発電設備の事故に関する顧客との仲裁のように、契約相手方やその他第三者からの国内外での損害賠償請求等を契機に訴訟等を提起されることがあり、当社グループは、これらの訴訟等に対応している。訴訟等においては、当社グループの主張が認められるように最大限の対応を取っているものの、当社グループにとって不利な判断が下される可能性は否定できない。また、当社グループが最終的に支払うべき賠償額等の負担が、各種の保険で必ずしも補填されるとは限らない。このように製品関連の問題は、当社グループの経営成績等の状況に重要な影響を与える可能性がある。

ウ.リスクへの対応策

当社グループは、これらの影響を低減するため、適切な品質の管理及び安全性の確保に取り組むとともに、事業リスクグローバルポリシーや各種規則の制定・運用、事業リスクマネジメント体制の整備・強化、個別案件の事前審議や受注後のモニタリング、事業部長クラスへの教育の実施、製品安全に関する講座の継続的な開催等の対策を進めている。

 

 (6) 知的財産関連の紛争

ア.当社グループの知的財産に対する侵害、当社グループによる第三者の知的財産に対する侵害等

当社グループは、研究開発の成果である知的財産を重要な経営資源の一つと位置づけ、この経営資源を特許権等により適切に保護し、グローバルに活用している。また、第三者の知的財産は、これを尊重し、当社グループによる侵害回避に努め、当該第三者から技術導入を行うなどの適切な対応を取っている。しかしながら、当社グループの取組みに反して、第三者から知的財産を侵害していると主張されるような事態が生じる可能性がある。また、第三者が権利を有する技術を必ず当社グループが利用できるという保証はない。

イ.経営成績等の状況に与えうる影響

当社グループの知的財産の利用に関して競合他社等から訴訟等を提起されて敗訴した場合、損害賠償責任を負うほか、特定の技術を利用することができなくなり、当社グループの経営成績等の状況に重要な影響を与える可能性がある。また、当社グループが事業遂行のために必要とする技術の権利を第三者が保有している場合に、当該第三者からの技術導入を受けられず、当社グループの事業遂行に支障をきたすおそれがある。

ウ.リスクへの対応策

当社グループは、これらの影響を低減するため、製品の基本計画・設計・製造の各段階で他者が保有する知的財産を十分に調査することによる知的財産関連の紛争の未然防止、教育・人材育成を通じた知的財産部門の専門性向上等の対策を進めている。

 (7) 法令等の違反や情報漏洩

ア.重大な法令等の違反、情報セキュリティ問題の発生等

当社グループは、国内外の様々な法令・規制(租税法規、環境法規、労働・安全衛生法規、独占禁止法・下請代金支払遅延等防止法・反ダンピング法等の経済法規、贈賄関連法規、貿易・為替法規、建設業法等の事業関連法規、金融商品取引所の上場規程等をいい、これらを総称して以下「法令等」という。)を遵守し、役員及び従業員にも遵守させなければならず、決してリスクとリターンをトレードしてはならない厳守事項として周知と対策を徹底している。しかし、一部の役員あるいは従業員が法令等の違反を生じさせる可能性は完全には排除できない。また、当社グループは、事業の遂行を通じて、顧客等の機密情報及び当社グループの技術・営業・その他の事業に関する機密情報を保有しており、コンピュータウイルスへの感染や不正アクセスその他の不測の事態により、機密情報が滅失又は社外に漏洩する可能性がある。

イ.経営成績等の状況に与えうる影響

法令等の違反が生じた場合、当局等による捜査・調査の対象となるほか、当局等から過料、更正、決定、課徴金納付、営業停止、輸出禁止等の行政処分若しくはその他の措置を受け、又は当局やその他の利害関係者から損害賠償を請求されるおそれがある。さらに、当社グループの事業遂行が困難となるなどの影響を受ける可能性がある。特に当社グループの事業の性質に鑑み、国内外の独占禁止法、贈賄関連法規、貿易・為替法規、建設業法、下請代金支払遅延等防止法等の違反に関しては、当社グループへの影響にとどまらず、一層重大なものとなる可能性がある。また、情報漏洩が生じると、当社グループの競争力の大幅な低下、社会的評価及び信用の失墜等によって当社グループの事業遂行に重大な影響が生じうる。また、顧客等から損害賠償請求等を受ける可能性がある。このように法令等の違反や情報漏洩は、当社グループの経営成績等の状況に重要な影響を与える可能性がある。

ウ.リスクへの対応策

当社グループは、法令等の違反によるリスクを減らすため、コンプライアンス・情報管理・ブランド戦略等の各種社内教育の充実と継続的な実施、グローバルポリシーや各種規則の制定・運用を行っている。また、サイバー攻撃によるリスクを最小化するため、CTO*直轄のサイバーセキュリティ推進体制を構築し、当社グループのサイバーセキュリティ統制(基準整備・対策実装・自己点検・内部監査)やインシデント対応等の対策を進めている。

* CTO:Chief Technology Officer

 

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりである。次の記載事項のうち将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものである。

なお、当社グループは、当連結会計年度からIFRS(国際財務報告基準)第16号「リース」を適用しており、前連結会計年度の財務数値は、当該会計基準の遡及適用後の数値に組み替えて表示・比較している。

 

(1) 財政状態の状況の概要及びこれに関する分析・検討内容

当連結会計年度における当社グループの資産は、株式会社日立製作所(以下、「日立製作所」という。)からの和解金の受取りなどによる南アフリカプロジェクトに係る補償資産の減少等により、前連結会計年度末から2,546億63百万円減少の4兆9,856億90百万円となった。

負債は、日立製作所が所有する三菱日立パワーシステムズ株式会社の株式全てを当社へ引き渡す旨の合意を受けてその他の金融負債が増加したことなどにより、前連結会計年度末から1,839億53百万円増加の3兆6,956億14百万円となった。

資本は、上記合意により非支配持分が減少したことなどにより、前連結会計年度末から4,386億16百万円減少の1兆2,900億76百万円となった。

以上により、当連結会計年度末の親会社所有者帰属持分比率は24.4%(前連結会計年度末の26.9%から△2.5ポイント)となった。

 

(2) 経営成績の状況の概要及びこれに関する分析・検討内容

連結会計年度における世界経済は、米中貿易摩擦、英国のEU離脱問題など懸念材料がありつつも緩やかな回復傾向にあったが、年明け以降、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行により急激に失速した。我が国経済も、厳しい輸出環境の中で全体的には回復基調にあったが、世界経済と同様に、年度末にかけて大幅に下押しされる状況となった。

このような状況の下、当連結会計年度における当社グループの受注高は、インダストリー&社会基盤セグメントが減少したものの、パワーセグメントと航空・防衛・宇宙セグメントが増加したことにより、前連結会計年度を3,152億63百万円(+8.2%)上回る4兆1,686億89百万円となった。

売上収益は、パワーセグメントと航空・防衛・宇宙セグメントが増加したものの、インダストリー&社会基盤セグメントが減少したことにより、前連結会計年度を369億67百万円(△0.9%)下回る4兆413億76百万円となった。

事業損益は、パワーセグメントが増加したものの、航空・防衛・宇宙セグメントで三菱スペースジェット関連資産の減損損失を計上したことなどにより、前連結会計年度から2,301億8百万円悪化し295億38百万円の損失、税引前損益は前連結会計年度から2,277億20百万円悪化し326億60百万円の損失となった。

また、親会社の所有者に帰属する当期利益は、繰延税金資産の計上があったものの、前連結会計年度231億48百万円(△21.0%)下回る871億23百万円となった。

 

セグメントごとの経営成績は、次のとおりである。

ア.パワー

受注高は、北米市場で水素混焼型を含む新型GTCC発電設備を連続して受注したことなどにより、前連結会計年度を3,455億97百万円(+24.2%)上回る1兆7,721億1百万円となった。

売上収益は、原子力機器、航空機用エンジンやコンプレッサが増加したことなどにより、前連結会計年度を651億85百万円(+4.3%)上回る1兆5,902億93百万円となった。

事業利益は、工事費の高騰等の下振れ要因があったものの、南アフリカ共和国のボイラ建設プロジェクトに関する係争について日立製作所との和解に伴う利益を計上したことなどにより、前連結会計年度を111億86百万円(+8.4%)上回る1,443億83百万円となった。

 

イ.インダストリー&社会基盤

受注高は、米中貿易摩擦に端を発した自動車産業の需要の落ち込みを受け、ターボチャージャや工作機械が減少したことなどにより、前連結会計年度を1,282億79百万円(△6.9%)下回る1兆7,237億79百万円となった。

売上収益は、受注の減少したターボチャージャに加え、交通システムや化学プラントなどのエンジニアリング事業や商船も減少したことなどにより、前連結会計年度を1,297億76百万円(△6.8%)下回る1兆7,780億95百万円となった。

事業利益は、商船や製鉄機械で改善があったものの、ターボチャージャの売上減少の影響等により、前連結会計年度を158億70百万円(△22.4%)下回る548億83百万円となった。

 

ウ.航空・防衛・宇宙

受注高は、F-15戦闘機の能力向上事業等の受注があった防衛関連製品や宇宙機器が増加したことなどにより、前連結会計年度を1,085億66百万円(+17.8%)上回る7,192億32百万円となった。

売上収益は、宇宙機器等の一部の製品を除いていずれも増加したため、前連結会計年度を274億8百万円
(+4.0%)上回る7,049億85百万円となった。

事業損益は、三菱スペースジェット関連資産の減損損失を計上したことなどにより、前連結会計年度から1,805億61百万円悪化し、2,087億92百万円の損失となった。

 

エ.その他

受注高は前連結会計年度を31億38百万円(△4.3%)下回る701億85百万円、売上収益は前連結会計年度を35億29百万円(+4.9%)上回る751億90百万円、事業利益は前連結会計年度を325億90百万円(△83.2%)下回る65億65百万円となった。

 

(3) キャッシュ・フローの状況の概要及びこれに関する分析・検討内容

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ16億8百万円減少し、2,816億26百万円となった。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は次のとおりである。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、4,525億64百万円の資金の増加となり、前連結会計年度に比べ322億15百万円増加した。これは、税引前利益が減少した一方、日立製作所からの和解金の受取り等により南アフリカプロジェクトに係る補償資産が減少したことなどによるものである。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、2,395億66百万円の資金の減少となり、前連結会計年度に比べ776億97百万円支出が増加した。これは、有形固定資産及び無形資産の取得による支出の増加並びに子会社の取得による支出の増加などによるものである。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、2,044億52百万円の資金の減少となり、前連結会計年度に比べ665億49百万円支出が減少した。これは、長期借入れによる収入の増加などによるものである。

 

(4) 生産、受注及び販売の状況

① 生産の実績

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2019年4月1日

至 2020年3月31日)

金額(百万円)

前連結会計年度比(%)

パワー

1,587,722

+4.7

インダストリー&社会基盤

1,725,918

△8.2

航空・防衛・宇宙

693,334

+6.2

その他

22,968

+19.6

合計

4,029,944

△0.9

(注)1.上記金額は、大型製品については契約金額に工事進捗度を乗じて算出計上し、その他の製品については完成数量に販売金額を乗じて算出計上している。

2.セグメント間の取引については、各セグメントの金額から消去している。

3.上記金額には、消費税等は含まれていない。

 

② 受注の実績

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2019年4月1日

至 2020年3月31日)

受注高(百万円)

前連結会計年度比(%)

受注残高(百万円)

前連結会計年度比(%)

パワー

1,772,101

+24.2

3,432,686

+4.1

インダストリー&社会基盤

1,723,779

△6.9

1,057,981

△10.5

航空・防衛・宇宙

719,232

+17.8

929,109

+1.6

その他

70,185

△4.3

694

+123.2

調整額

△116,608

合計

4,168,689

+8.2

5,420,471

+0.5

(注)1.受注高については、「パワー」、「インダストリー&社会基盤」、「航空・防衛・宇宙」及び「その他」にはセグメント間の取引を含んでおり、「調整額」でセグメント間の取引を一括して消去している。

2.受注残高については、セグメント間の取引を各セグメントの金額から消去している。

3.上記金額には、消費税等は含まれていない。

③ 販売の実績

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2019年4月1日

至 2020年3月31日)

金額(百万円)

前連結会計年度比(%)

パワー

1,590,293

+4.3

インダストリー&社会基盤

1,778,095

△6.8

航空・防衛・宇宙

704,985

+4.0

その他

75,190

+4.9

調整額

△107,189

合計

4,041,376

△0.9

(注)1.「パワー」、「インダストリー&社会基盤」、「航空・防衛・宇宙」及び「その他」にはセグメント間の取引を含んでおり、「調整額」でセグメント間の取引を一括して消去している。

2.上記金額には、消費税等は含まれていない。

 

(5) 資本の財源及び資金の流動性に係る情報

ア.資金需要の主な内容

当社グループの資金需要は、営業活動については、生産活動に必要な運転資金(材料・外注費及び人件費等)、受注獲得のための引合費用等の販売費、製品競争力強化・ものづくり力強化及び新規事業立上げに資するための研究開発費が主な内容である。投資活動については、事業伸長・生産性向上及び新規事業立上げを目的とした設備投資並びに事業遂行に関連した投資有価証券の取得が主な内容である。

今後、成長分野に対しては必要な設備投資や研究開発投資、投資有価証券の取得等を継続していく予定である。全体的には、将来見込まれる成長分野での資金需要も見据え、最新の市場環境や受注動向も勘案し、資産の圧縮及び投資案件の選別を行っていく予定である。

 

イ.有利子負債の内訳及び使途

2020年3月31日現在の有利子負債の内訳は下記のとおりである。

(単位:百万円)

 

 

合計

償還1年以内

償還1年超

短期借入金

64,744

64,744

コマーシャル・ペーパー

85,000

85,000

長期借入金

308,553

58,036

250,517

社債

140,000

10,000

130,000

合計

598,298

217,780

380,517

当社グループは比較的工期の長い工事案件が多く、生産設備も大型機械設備を多く所有していることもあり、一定水準の安定的な運転資金及び設備資金を確保しておく必要がある。近年の事業規模拡大により、これら必要資金は増加する傾向にあるが、その一方で、引き続き資産圧縮に努め、期限の到来した借入金を返済してきた結果、当連結会計年度末の有利子負債の構成は、償還期限が1年以内のものが2,177億80百万円、償還期限が1年を超えるものが3,805億17百万円となり、合計で5,982億98百万円となった。

これらの有利子負債は事業活動に必要な運転資金、投資資金に使用しており、資金需要が見込まれる火力発電システム、物流機器・冷熱製品等の中量産品、民間航空機等の伸長分野を中心に使用していく予定である。

 

ウ.財務政策

当社グループは、運転資金、投資資金についてはまず営業キャッシュ・フローで獲得した資金を投入し、不足分について有利子負債による調達を実施している。

長期借入金、社債等による長期資金の調達については、事業計画に基づく資金需要、金利動向等の調達環境、既存借入金の償還時期等を考慮の上、調達規模、調達手段を適宜判断して実施していくこととしている。

一方で、有利子負債を圧縮するため、キャッシュマネジメントシステムにより当社グループ内での余剰資金の有効活用を図っており、また、営業債権、棚卸資産の圧縮や固定資産の稼働率向上等を通じて資産効率の改善にも取り組んでいる。

自己株式については、事業計画の推進状況、当社の業績見通し、株価動向、財政状況及び金融市場環境の改善等を総合的に勘案して取得を検討していくこととしている。

 

(6) 経営方針・経営戦略及び経営指標等に照らした経営成績等の分析・検討

「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (1) 経営方針・経営戦略等」に記載のとおり、当社グループは、中期経営計画「2018事業計画」に基づき、事業成長と財務健全性のバランスを取った経営により、長期安定的に企業価値を向上させることを目指して事業を遂行している。

「2018事業計画」においては、最終年度に当たる2020年度のTOPの目標を、売上収益、総資産、時価総額の比率で0.9:1:0.5としているところ、当連結会計年度の同比率の実績は、0.8:1:0.2となった。

当連結会計年度においては、主にパワーセグメントの売上債権回収・生産効率化等による運転資金の更なる削減に加え、日立製作所からの和解金獲得による南アフリカプロジェクトに係る補償資産の回収など、総資産の圧縮を進めた。総資産の圧縮を進める中でも、売上収益は一定程度の規模を維持しており、資産の効率性については目標とする水準に近い位置にあると考えている。

一方、三菱スペースジェットの開発スケジュールの遅延に加えて、米中貿易摩擦、新型コロナウイルス感染症の世界的流行による中量産品事業・民間航空機関連事業の急激な市場縮小、スチームパワー大型案件の減少による工場稼働率の低下などにより、定常収益力が低下しており、資産の収益性の低さや、TOPにも表れている時価総額の低迷が今後改善すべき課題であると認識している。

財務健全性について、有利子負債は当連結会計年度においても更なる削減を進め、過去最低水準となった。資本に関しては、南アフリカプロジェクトに係る和解や三菱スペースジェット関連資産の減損等の過去のリスク資産の整理により減少はあったものの、一定の自己資本比率を維持している。このことから、三菱スペースジェットの開発等への投資及び配当金増加による株主還元の拡大を進めながらも、財務健全性は維持できていると評価している。

このような評価を踏まえ、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」に記載のとおり、喫緊の課題である新型コロナウイルス感染症による影響の最小化に取り組むとともに、収益力の維持・強化につながる施策を推進していく。

 

(7) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、IFRSに準拠して作成されている。この連結財務諸表の作成に当たり、見積りが必要となる事項については、合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っている。

詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(連結財務諸表注記 2.作成の基礎 (5) 見積り及び判断の利用、及び3.重要な会計方針)」に記載している。

 

なお、会計上の見積り等に関する新型コロナウイルス感染症による影響については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (2)その他 ③新型コロナウイルス感染症拡大の影響」における以下の記載のとおりである。

 

新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、当社グループの民間機事業や中量産品事業等で需要減少に伴う売上収益の減少、工場の生産調整等が生じている。当連結会計年度においては、資産の評価等に当該影響を織り込み、決算数値等に反映させている。

本感染症は経済や企業活動に広範な影響を与える事象であり、また、今後の広がり方や収束時期等を予想することは困難なことから、当社は外部情報等を踏まえて、事業計画への影響の検討等を行い、製品特性・関連する市場環境等に即した仮定のもと、資産の評価等の会計上の見積りを行っている。

この影響が長期化した場合には、新たな生産調整や、顧客への販売の更なる減少が生じる可能性もあり、翌連結会計年度以降の当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性がある。

 

 

4【経営上の重要な契約等】

(1) カナダBombardier社とのCRJ事業譲渡契約

当社は、2019年6月25日開催の取締役会において、カナダBombardier社(以下、「BA社」という。)との間で、商業航空機事業の一部を譲り受ける事業譲渡契約を締結することについて決議し、同日付で当該事業譲渡契約を締結した。その概要は以下のとおりである。(詳細は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表注記事項(連結財務諸表注記 37.重要な後発事象)」を参照)

ア. 内容

BA社の商業航空機事業部門のうち、CRJシリーズ事業(ただし、製造機能を除く)に係る譲渡契約

イ. 相手先

Bombardier Inc.

ウ. 日程

取締役会決議日   2019年6月25日

契約締結日     2019年6月25日

譲渡(取得)完了日 2020年6月1日

 

(2) その他重要な契約

当社は、2019年12月18日、株式会社日立製作所との間で、以下に掲げる契約の内容を変更することなどを目的とする契約を締結した。詳細は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表注記 12.南アフリカプロジェクトに係る補償資産)」及び「第5 経理の状況 2 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項(貸借対照表関係 4.その他)」に記載のとおりである。

 

契約会社名

相手方

内容

契約日付

摘要

名称

国籍

三菱重工業㈱

(当社)

㈱日立製作所

日本

火力発電システムを主体とする分野での事業統合に関する統合比率、範囲、合弁会社の概要、その他諸条件に係る基本契約

2013年6月11日

(注)

火力発電システムを主体とする分野での事業統合に関する、合弁会社の運営等に係る契約

(注)当該契約に係る事業は、三菱日立パワーシステムズ㈱で行っている。

 

なお、当社の連結子会社である三菱日立製鉄機械㈱が、Siemens Aktiengesellschaft(以下、「Siemens社」という。)の保有するPrimetals Technologies, Limitedの全株式を2020年1月31日に取得して同社を完全子会社化したことに伴い、従来記載していた当社、三菱日立製鉄機械㈱及びSiemens社との間の契約のうち、製鉄機械事業の統合手続に係る契約は終了し、また、製鉄機械事業の統合に向けた各社の権利義務、諸条件及び合弁会社の概要等に係る契約は重要性判断の結果、記載を省略した。

 

5【研究開発活動】

当社グループ(当社及び連結子会社)は、各製品の競争力強化や今後の事業拡大につながる研究開発を推進している。

セグメントごとの主な研究開発の状況及び費用は次のとおりであり、当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は総額で146,864百万円である。なお、この中には受託研究等の費用73,197百万円が含まれている。

 

(1) パワー

エネルギー供給や環境対応に係る市場ニーズに対応した付加価値の高い製品とソリューションビジネスの拡大に対応した技術の研究開発に取り組んでいる。

当セグメントに係る研究開発費は39,604百万円であり、主な研究開発は次のとおりである。

・AI・IoT技術を活用し顧客や地域のエネルギー利用の最適化を支援するソリューション「ENERGY CLOUD Service(エナジークラウドサービス)」や、社会・経済・環境の3つの側面からの質の高いエネルギーインフラのあるべき姿を定量的に示した指標「QoEnTM(クウォン)」の開発

・水素社会の実現に向け、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のプロジェクトへの参画による「水素専焼対応DLN(Dry Low NOx)ガスタービン」の開発や、アンモニア利用ガスタービンコンバインドサイクルの開発

・発電効率を高めることでCO2排出量を低減する、次世代空気冷却システムを採用した「空冷式1650℃級ガスタービン」の実機開発

・原子力の安全性向上に資する技術、将来炉(高速炉、小型炉、高温ガス炉ほか)、経済産業省公募プロジェクトへの参画による東京電力福島第一原子力発電所等の事故対応技術等の開発

 

(2) インダストリー&社会基盤

各産業向けの基礎設備及び社会インフラ等を提供するために、市場・需要の多様化に対応した製品固有の研究開発を行うとともに、共通性のある、最新かつ高度な先進技術の幅広い製品適用に取り組んでいる。

当セグメントに係る研究開発費は23,283百万円であり、主な研究開発は次のとおりである。

・エンジン発電装置に再生可能エネルギーと蓄電池を組合せ、環境に優しい安定した電力を供給するトリプルハイブリッド自立給電システム「EBLOX(イブロックス)」の開発

・機能性とデザイン性を両立し、安全で快適なオペレーションを実現する多機能集中制御システム「SiCOS(サイコス)」を搭載した、カウンターバランスタイプのバッテリーフォークリフト「ALESIS(アレシス)」の開発

・業界トップクラスの高効率化とR32冷媒採用による大幅な環境負荷低減を実現した空冷ヒートポンプチラー「MSV2」の開発

・独自の2軸/4軸ディスク方式の採用により、高粘度下水汚泥や各種産業排水汚泥に幅広く適合し詰まりにくい構造と優れた省エネ性を実現した「高粘度汚泥対応乾燥機」の開発

 

(3) 航空・防衛・宇宙

日本のリーディングカンパニーとして、長年にわたり航空・防衛・宇宙開発で培った技術を駆使して、最先端の製品開発に取り組んでいる。

当セグメントに係る研究開発費は73,006百万円であり、主な研究開発は次のとおりである。

・世界最高レベルの運航経済性と客室快適性を兼ね備えたリージョナルジェット旅客機「三菱スペースジェット」の開発

・低コストで高い信頼性を有する「H3ロケット」の開発

・民間航空機に用いられる製造自動化、3Dプリンタによる金属積層造形技術、レーザ超音波浸透探傷検査技術等の革新的製造技術の開発

・複数無人機の運用をAI技術でサポートする沿岸警備システムの開発

・重要インフラの制御システム等に向けたサイバーセキュリティ技術の開発

・衛星データをAI技術で解析し、災害救助等に貢献する広域状況把握技術の開発

 

(4) その他・共通

当社グループ次期製品の市場競争力確保のために必要となるキー技術や、次期・次世代の製品開発に必要かつ複数製品の共通基盤となるプラットフォーム技術開発に取り組んでいる。

「その他・共通」に係る研究開発費は10,969百万円であり、主な研究開発は次のとおりである。

・再生可能エネルギーの調整力・予備力向上に向けた蓄エネ技術の開発

先進AI技術を用いたリスク要因検出支援技術及び業務プロセス全般への自然言語処理活用技術の開発