第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

以下の記載事項のうち将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものである。

 

(1)経営方針・経営戦略等

ア.経営方針・経営戦略等の策定の背景となった経営環境

当社グループは、中期経営計画「2018事業計画」において、財務基盤の強化、事業規模の更なる拡大及び収益力の向上に取り組んできたが、主力の火力発電システム事業での世界的な市場縮小、その他の既存事業でも規模の伸び悩みと価格競争の激化による収益力低下という課題に直面し、また多くの事業が成熟化する中で今後の成長の軸となる新たな事業分野の開拓が必要となった。さらに、新型コロナウイルス感染症の流行による事業環境の急激な悪化に見舞われ、民間航空機関連事業や中量産品事業が特に大きな打撃を受けた。

このように、世界経済や当社グループが置かれている事業環境は「2018事業計画」策定時と比べて大きく変化したため、当社グループは、2021年度から2023年度までの中期経営計画「2021事業計画」を半年前倒しして2020年10月末に策定し、順次取組みを開始した。

 

イ.中期経営計画「2021事業計画」

「2021事業計画」では、事業規模の拡大よりも、「収益力回復・強化」及び「成長領域の開拓」に優先的に取り組み、TOP*1達成に向けた事業基盤の確立と、次の中期経営計画「2024事業計画」での飛躍のための基盤づくりを行うこととした。

「収益力回復・強化」としては、2023年度末における目標として、「事業利益率7%」、「ROE12%」及び「有利子負債0.9兆円維持」という財務指標を設定し、これらを達成するため、事業毎に具体的な施策に着手した。

また、「成長領域の開拓」としては、脱炭素社会に向けて変化する社会課題の解決を主眼とした「エナジートランジション」と、当社グループの多様な製品をデジタル技術でつなぎ、自律化・知能化することで社会のニーズに応えていく「モビリティ等の新領域」を成長分野と位置付けた。これらの分野には「2021事業計画」期間中に1,800億円を投資し、将来的には1兆円規模の事業への成長をめざすこととした。

*1 Triple One Proportion(売上収益:総資産:時価総額=1:1:1の状態)

これは、事業成長と財務健全性のバランスを取った経営により長期安定的に企業価値を向上させることを目指す上で、その達成状況を総合的に評価するための当社グループ独自の指標である。

 

(2)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

当社グループは、「2021事業計画」において、「収益力回復・強化」及び「成長領域の開拓」を2本柱に据え、新型コロナウイルス感染症の影響からの早期脱却と収益の確保並びに成長のための基盤づくりに向け、取り組んでいく。

 

ア.エナジートランジションの加速

社会的価値観の変化は新型コロナウイルス感染症の世界的流行で大幅に速まり、特に脱炭素化に向けては、日本政府が2050年までの「カーボンニュートラル*2」に整合した目標として2030年度の温室効果ガス排出量を2013年度比で46%削減することを発表し、欧州や米国も削減を加速する動きを見せている。これを受け、当社グループは、「カーボンニュートラル」社会の実現に向けて、脱炭素化技術の開発、水素エコシステムの構築等により貢献していく。

「カーボンニュートラル」のためには、その実現に至るまで各種課題を段階的に解決していく必要がある。まず、既存火力発電設備の高効率化と水素/アンモニア混焼による低炭素化に取り組む。そのため、GTCCの水素焚きへの転換に向けて、三菱パワー㈱の高砂工場では、発電まで一貫して実証試験を行う体制を構築済みであり、今後は水素製造を含め、実用化に向けた研究を引き続き推進していく。スチームパワー事業では、高度なアフターサービスを主体とする事業への変革を進めるとともに、開発中のアンモニア混焼ボイラの早期実用化をめざす。

このほか、原子力発電はカーボンフリーかつエネルギーの大規模・安定供給の観点から重要なベースロード電源として、「カーボンニュートラル」の達成に向けて将来にわたり最大限活用することが期待されている。このため、既設軽水炉プラントの再稼働、特定重大事故等対処施設の設置、燃料サイクル施設の竣工に向けた対応等に着実に取り組んでいく。加えて、2030年代半ばの実用化を目標に、革新技術を採用した世界最高水準の安全性を実現する次世代軽水炉の開発を推進していく。

更に先のステージである脱炭素化に向けた水素・アンモニアの活用及びCO2回収・利用は、市場がこれから立ち上がる段階であり、2050年に向けて急拡大していくことが見込まれる。これまでも、導入を先行する地域においてFEED*3プロジェクトに積極的に参画するとともに、スタートアップ企業への投資に着手している。引き続き、上流から下流まで幅広く社外との協業を進めるとともに、技術基盤を構築するための取組みを推進していく。

なお、当社グループは、こうした「エナジートランジション」に向けた諸施策を加速させるため、2021年10月、三菱パワー㈱を当社に統合することとする。

*2 温室効果ガスの排出量から、森林等による吸収量を差し引いた、排出実質ゼロ

*3 Front End Engineering Design(EPCの前段階として行う、設計を通じた技術的課題や概略費用等の検討)

 

イ.モビリティ等の新領域

2020年4月に設置した成長推進室を核として、組織横断の取組みを推進する。そして、多様な製品や技術について、デジタル化・AI化を進めることで新領域を開拓し、新たな価値を提供していく。

当社グループは、多様化・高度化する顧客の要望に応えるため、従来の製品提供主体のビジネスから、多様な機械システムを統合制御することで顧客の課題を解決して新たな価値を共創するソリューションビジネスへの転換を進めていく。

まずは物流事業をモデルケースとして、「自動化物流」や、「コールドチェーン」等のソリューションを提案し、顧客の課題や潜在的なニーズに対応していく。

近年の生活水準の向上やライフスタイルの変化に加え、新型コロナウイルス感染症の影響もあり、厳格な温度管理を要する輸送ニーズに対応するコールドチェーン構築が重要性を増している。従来、当社グループでは、顧客のニーズを満たすために必要となる優れた機械製品を開発すること、例えば高効率の産業用冷凍機を開発して提供するアプローチが典型であったが、今後は、製品単体の提供に留まることなく、効率的な倉庫運営を可能とするための多様な機械製品との協調や、保管・配送時の環境を常時適正化する冷凍物流エンジニアリングなども同時に提供し、顧客の課題そのものに対して直接の解決策を共創していく。

当社グループならではの様々な製品(ハードウェア)の設計・製造で積み重ねた知見とデジタルテクノロジーを融合させて、顧客価値提供の取組みを当社製品全般に広げ、多様な知能化機械システムの統合によるソリューションを提供していく。

 

ウ.収益力の回復・強化

新型コロナウイルス感染症の影響はなお予断を許さないが、これまでに受けた影響が大きかった事業のうち、航空機用エンジン事業は米国を中心とする需要回復により底打ちし、また中量産品事業は2021年度にはコロナ禍以前の水準まで回復する見通しである。航空機用エンジン事業は、コロナ禍からの回復・再成長に向け体制を整え、また中量産品事業は、固定費を適正水準に抑えた体制を維持しつつ、今後の需要拡大に向け対応していく。一方で、民間航空機のエアロストラクチャー事業は、2021年度も低迷が続く見通しであることから、損益改善のため、固定費削減と生産プロセス改革を加速する。

また、長期的な視点に立った事業ポートフォリオの組換えを引き続き推進していくとともに、人員リソースのシフトについても、「2021事業計画」を着実に遂行していく。

このほか、販売費及び一般管理費の削減として、三菱パワー㈱の当社への統合による効率化、アセットマネジメントによる費用削減等に取り組んでいく。

 

近年、SDGs(持続可能な開発目標)の採択やESG投資の拡大等、国際的な枠組みにおいて、環境問題をはじめとする各種の社会課題が重視されている。当社グループは、サステナビリティとコンプライアンスが経営の重要課題であるとの認識の下、事業を成長させ、社会の持続的発展に貢献していく。

 

2【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクには、以下の(3)に挙げるようなものがある。

当社グループでは、これら主要なリスクを含めた各種リスクに対して考えうる対応策をあらかじめ講じているが、これらを完全に回避することは困難である。当社グループは、これらのリスクに留意しながら事業計画に従い事業活動を進めるとともに、これらが顕在化した場合の影響の最小化に努めている。

主要なリスクには中長期的に事業環境や社会構造の更なる変化をもたらす可能性があるものも含まれており、当社グループは、将来を見据え、そのような動きに対応できるよう、先んじて対策を取っていかなければならないと認識している。

なお、記載事項のうち将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものである。

 

(1)主要なリスクを検討するプロセス

当社グループでは、事業遂行上のリスクを抽出・討議する経営管理プロセスを策定し、これに基づきリスクの一覧化に取り組んでいる。リスク抽出にあたっては、社外の知見も取り入れて当社グループに関連するリスクの網羅的なリストを作成し、これに基づき概ね10年以内に顕在化する可能性が懸念される具体的なリスクの洗い出しを実施している。その上で、講じている対応策の効果も踏まえて当該リスクが顕在化した場合の影響度と蓋然性の検討を行い、当社グループの事業に重要な影響を与える可能性があり、かつ定量化可能なリスクを特定し、以下のようなリスクマップに整理している。これに加えて、定量化の難しい定性的なリスクについても上述のリスクの網羅的なリストに基づき特定している。

 

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(2)当社グループにおけるリスクへの対応策

当社グループでは、各種リスクを適切に管理するため、リスクの類型に応じた管理体制を整備し、管理責任の明確化を図っている。また、リスクを定期的に評価・分析し、必要な回避策又は低減策を講じるとともに、内部監査によりその実効性と妥当性を監査し、定期的に取締役会及び監査等委員会に報告することとしている。加えて、重大リスクが顕在化した場合に備え、緊急時に迅速かつ的確な対応ができるよう速やかにトップへ情報を伝達する手段を確保し、また各事業部門に危機管理責任者を配置している。

また、当社グループでは、「事業リスクマネジメント憲章」により、リスクマネジメントの対象・要領等を明確化し、これを遵守・実践している。また、「事業リスクマネジメント委員会」において、トップマネジメントレベルでの重要リスク情報の共有や対応方針を協議することにより、体制の明確化と経営幹部・事業部門・コーポレート部門の役割明確化を図っており、事業リスク総括部を責任部門として、経営者、事業部門、コーポレート部門の三者が一体となって事業リスクマネジメントに取り組んでいる。

なお、以下「(3)主要なリスク」の①から⑦までの各項目のア.において、各項目に関して当社グループがあらかじめ講じている具体的な対応策を例示しているが、当社グループは、これらに限らず、主要リスク以外のものも含め、各種リスクの類型や性質に応じて、リスクを回避・低減するための取組みを進めるとともに、①から⑦までの各項目の「イ.経営成績等の状況に与えうる影響」等のリスクが顕在化した場合の影響の最小化に努めている。

 

(3)主要なリスク

①新型コロナウイルス感染症の感染拡大

ア.世界的な感染拡大と経済活動への影響

新型コロナウイルス感染症は、2019年末以降、世界的な感染拡大(パンデミック)に発展した。現在、経済活動は徐々に再開され、世界経済及び日本経済ともに回復の兆しを見せつつあるが、感染拡大の終息が見通せていないこと、需要が従前の水準まで回復する見通しが立たない産業分野もあるなど、新型コロナウイルス感染症の影響はなお予断を許さない状況にある。

当社グループでは、この状況を踏まえた具体的な対策として、収益力を強化すべく、市場拡大が見込まれる分野への投資、販売網の強化、サービス事業へのシフトなどに取り組むとともに、人員対策を含めた固定費の圧縮、従業員の一時帰休、工場稼働率の見直しや生産調整、外部流出費用の削減、投資計画の見直し、余剰リソースの有効活用、各国の助成制度の活用等の対策を進めている。また、経営・業務を幅広くリモートで行えるように、在宅勤務環境の整備、ツールの拡充、制度の見直しなどに取り組んでいる。

イ.経営成績等の状況に与えうる影響

当社グループは、日本のみならず世界各地で事業を展開しており、各国における新型コロナウイルス感染症の流行による影響を受けている。当社グループの売上の約3分の2を占めるインフラ関連企業及び官公庁向けの受注品事業では、海外案件を中心に既に受注した案件の進捗遅延による売上計上時期の遅れ、渡航制限やサプライチェーンの停滞、契約交渉や受注プロセスの遅延等が経営成績等の状況に影響を与えうる。また、民間航空機関連事業では、旅客便需要の大幅減少に伴う航空会社の設備投資削減等により、当社グループの生産やサービス事業が影響を受けており、今後の回復の見通しが立ちにくい状況にある。これらの影響等を確実に予想することは難しく、また、今後、悪化又は長期化するおそれがあり、当社グループの経営成績等の状況に重要な影響を与える可能性がある。

 

②事業環境の変化

ア.当社グループを取り巻く事業環境の悪化

当社グループを取り巻く事業環境は、非常に速いスピードで変化している。例えば世界経済に関しては、米国と中国の対立激化による、サプライチェーンの世界的な分断と囲い込みの進展、デジタルデバイスやデータなどの分野における越境規制による覇権争いの先鋭化といった経済環境の変化が生じている。また、我が国においては、社会構造の変化として、人口減少・少子高齢化の一層の進展による人材不足の深刻化、廃業の増加、技術・技能の断絶、製造現場の空洞化等が懸念されている。当社グループに密接に関連するものとしては、全世界的に経済発展と環境負荷低減の両立が社会的な課題となっており、様々な分野で環境規制が強化されている。特にエネルギー分野では、新興国経済の発展や電気自動車の普及等をはじめとした電化の進展により、今後、世界の電力需要はますます伸びていく一方、地球温暖化を契機とした脱炭素化の動きが加速して、化石燃料の使用規制の強化が予想されているなど、当社グループの置かれている環境は、大きく変化している。

当社グループでは、これらの事業環境の変化に対応すべく、研究開発や設備投資を通じて、性能・信頼性・価格・環境対応等に関する製品競争力の維持・強化を図ることを前提としつつ、社外の知見も取り入れて市場の動きを先取りした新たな機能やソリューションの提案に注力している。また、2020年4月に成長推進室を設置し、既存の事業部門では対処しにくい新しい領域の事業開拓や既存事業の組合せを通じた製品・サービスの開発を進めている。また、事業環境を踏まえて各種製品分野で企図するM&A・アライアンスに関しては、入口での審議やモニタリングといった活動により、円滑なPMI*1の推進に向けた取組みを実践している。

*1 Post Merger Integration

イ.経営成績等の状況に与えうる影響

米国と中国の対立による輸出管理強化等の動きが更に先鋭化し、商談への参加、サプライヤー選定等の場面で当社グループの事業活動に制約が生じた場合や、我が国における人材不足の深刻化や製造現場の空洞化等により当社グループの競争力が低下することとなった場合には、当社グループの経営成績等の状況に重要な影響を与える可能性がある。環境規制に関しては、火力発電システムや自動車向けターボチャージャ、化学プラント関連のエンジニアリングなどの事業において、環境意識の高まりによって、製品・サービスの需要が減少し、事業規模が縮小する可能性や投下資本の回収が困難となる可能性がある。また、火力発電システム事業は、化石燃料由来の電力需要の激減、競合他社との競争激化やこれに伴う競合他社によるサービス商談獲得の影響も考えられ、これらにより受注が減少するおそれがある。事業環境の変化を踏まえ、顧客が自らの判断で火力発電プラントなどの営業運転を停止することとした場合には、これに伴うサービス事業の停滞等により、当社グループの経営成績等の状況に重要な影響を与える可能性がある。事業計画策定時の想定を超えて更に各種環境規制が厳格化され、これへの対応に課題が生じた場合には、市場競争力の低下や受注機会の逸失等により、当社グループの事業計画の推進に影響を与えるおそれがある。加えて、当社グループは、各種製品事業において、他社とのM&A・アライアンスを行っているが、市場環境の変化、事業競争力の低下、他社における経営戦略の見直し、その他予期せぬ事象を理由として、これらのM&A・アライアンス対象事業が目論見どおり進捗しない場合、資産の評価見直しによって減損損失等を計上する可能性があるなど、当社グループの経営成績等の状況に重要な影響を与える可能性がある。

 

③各種の災害

ア.自然災害や戦争・テロ等の発生

地震、津波、豪雨、洪水、暴風、噴火、火災、落雷、新型コロナウイルス感染症以外の感染症の世界的流行等の自然災害の発生、その発生頻度の上昇や被害の甚大化、戦争・テロ、政情不安、反日運動、人質・誘拐等の犯罪、社会インフラの麻痺、労働争議、停電、設備の老朽化・不具合等の人為的な要因により、様々な物的・人的被害が生じ、円滑な経済活動が阻害され、さらには社会基盤が破壊されるといった事態が考えられる。なお、自然災害については、気候変動等に伴いその影響が甚大化することが想定される。

当社グループでは、これらの影響を低減するため、災害対策支援ツールの活用、連絡体制・事業継続計画(BCP)の策定・整備、工場の点検や設備の耐震化、各種訓練の定期的な実施に加え、保険の付保、各国の情勢や安全に関する情報収集やこれを踏まえた各種対応、関連省庁との連携等を進めている。

イ.経営成績等の状況に与えうる影響

当社グループは、製品・サービスを提供するための拠点を世界各地に有しているが、特に日本やタイなどに生産拠点が集中しているため、これらの国・地域において、大規模な地震・津波・洪水といった災害が発生した場合、当社グループの生産能力に重要な影響を及ぼす可能性がある。具体的には、生産設備の滅失・毀損、サプライチェーンの停滞・混乱、生産に必要な材料・部品等の不足やサービスの提供停止、生産拠点の操業低下・稼働停止等のほか、代替となる生産設備や取引先の喪失、損害保険等で補填されない損害の発生等の可能性がある。これらの影響に伴う受注や売上の減少等により、当社グループの経営成績等の状況に重要な影響を与える可能性がある。

 

④製品・サービス関連の問題

ア.製品・サービスに関連する品質・安全上の問題、コスト悪化等

当社グループは、ものづくりとエンジニアリングのグローバルリーダーとして、エナジー、プラント・インフラ、物流・冷熱・ドライブシステム、航空・防衛・宇宙の幅広い分野で高度な技術力を活かしてソリューションを提供している。当社グループは、製品の品質や信頼性の向上に常に努力を重ねているが、製品の性能・納期の問題や製品に起因する安全上の問題が生じる可能性がある。また、仕様変更や工程遅延等に起因するコスト悪化、材料・部品等の調達や工事に伴う予期しない問題の発生、納期遅延や性能未達等による顧客からの損害賠償請求や契約解除、顧客の財務状況の悪化等の問題が生じる可能性がある。サプライヤーとの間でも、製品・サービスなどに起因して、同様の問題が発生する可能性がある。また、特定の材料・部品のサプライヤーと取引不能となった場合に代替調達先の手配ができないことにより、生産活動や顧客への製品・サービスの提供等に影響が生じるおそれがある。

当社グループでは、これらのリスクに対して、各種規則の制定・運用、事業リスクマネジメント体制の整備・強化、個別案件の事前審議や受注後のモニタリング、プロジェクト遂行責任者や事業部長クラスへの教育の実施、製品安全に関する講座の継続的な開催等を行うとともに、過去に生じた大口赤字案件については、その原因や対策を総括するとともに、社内教育に反映するなど、再発防止に努めている。

イ.経営成績等の状況に与えうる影響

このような製品・サービス関連の問題発生等を理由として、追加費用の発生、顧客への損害賠償、社会的評価及び信用の失墜等に繋がる可能性がある。また、顧客・サプライヤーやその他第三者から国内外で訴訟・仲裁を提起されることがあり、当社グループは、これらに対応している。訴訟・仲裁においては、当社グループの主張が認められるように最大限の対応を取っているものの、当社グループにとって不利な判断が下される可能性は否定できない。また、当社グループが最終的に支払うべき賠償額等の負担が、各種の保険で必ずしも補填されるとは限らない。このように製品・サービス関連の問題は、当社グループの経営成績等の状況に重要な影響を与える可能性がある。

 

⑤知的財産関連の紛争

ア.当社グループの知的財産に対する侵害、当社グループによる第三者の知的財産に対する侵害等

当社グループは、研究開発の成果である知的財産を重要な経営資源の一つと位置づけ、グローバルに活用している。しかしながら、当社グループに対して、第三者から知的財産を侵害していると主張されるような事態が生じる可能性がある。

当社グループでは、知的財産を特許権等により適切に保護し、また、第三者の知的財産を尊重し、当社グループによる侵害回避に努め、必要に応じて当該第三者から技術導入を行うなど適切な対応を取っている。具体的には、製品の基本計画・設計・製造の各段階で他者が保有する知的財産を十分に調査することによる知的財産関連の紛争の未然防止、教育・人材育成を通じた知的財産部門の専門性向上等の対策を進めている。

イ.経営成績等の状況に与えうる影響

当社グループの知的財産の利用に関して競合他社等から訴訟等を提起されて敗訴した場合、損害賠償責任を負うほか、特定の技術を利用することができなくなり、当社グループの経営成績等の状況に重要な影響を与える可能性がある。また、当社グループが事業遂行のために必要とする技術の権利を第三者が保有している場合に、当該第三者からの技術導入を受けられず、当社グループの事業遂行に支障をきたすおそれがある。

 

⑥サイバーセキュリティ上の問題

ア.情報セキュリティ問題の発生等

当社グループは、事業の遂行を通じて、顧客等の機密情報及び当社グループの技術・営業他の事業に関する機密情報を保有しており、業務上も情報技術への依存度は高まっている。これに対して日々高度化・悪質化しているサイバー攻撃等が現在の想定を上回るなどして、コンピュータウイルスへの感染や不正アクセスその他の不測の事態が生じた場合には、機密情報が滅失又は社外に漏洩する可能性がある。また、サイバー攻撃等の結果、端末やサーバなどの使用に障害が出る可能性がある。

当社グループでは、これらのリスクに対して、CTO*2直轄のサイバーセキュリティ推進体制を構築し、当社グループのサイバーセキュリティ統制(基準整備・対策実装・自己点検・内部監査)やインシデント対応等の対策を進めている。

*2 CTO:Chief Technology Officer

イ.経営成績等の状況に与えうる影響

情報漏洩が生じると、当社グループの競争力の大幅な低下、社会的評価及び信用の失墜等によって当社グループの事業遂行に重大な影響が生じうる。また、当局等による調査の対象となるほか、顧客等から損害賠償請求等を受ける可能性がある。加えて、サイバー攻撃等の結果、サーバなどの使用に障害が出た場合には、業務の遂行に大きな影響が生じ、その結果生産活動や顧客への製品・サービスの提供等に影響が生じるおそれがある。このようにサイバーセキュリティ上の問題は、当社グループの経営成績等の状況に重要な影響を与える可能性がある。

 

⑦法令等の違反

ア.重大な法令等の違反

当社グループは、国内外の様々な法令・規制(租税法規、環境法規、労働・安全衛生法規、独占禁止法・下請代金支払遅延等防止法・反ダンピング法等の経済法規、贈賄関連法規、貿易・為替法規、建設業法等の事業関連法規、金融商品取引所の上場規程等をいい、これらを総称して以下「法令等」という。)を遵守し、役員及び従業員にも遵守させなければならず、決してリスクとリターンをトレードしてはならない厳守事項として周知と対策を徹底している。具体的には、当社グループの全ての役員・従業員を対象とした「三菱重工グループ グローバル行動基準」や各種規則の制定・運用を行うとともに、コンプライアンス委員会の定期的な開催、内部通報体制の整備、法令遵守の徹底に関する経営層からのメッセージの発信、コンプライアンス・情報管理・ブランド戦略等の各種社内教育の充実と継続的な実施、各部門の課題を踏まえた内部監査等を行っている。しかし、一部の役員・従業員が法令等の違反を生じさせる可能性は完全には排除できない。

イ.経営成績等の状況に与えうる影響

万一法令等の違反が生じた場合、当局等による捜査・調査の対象となるほか、当局等から過料、更正、決定、課徴金納付、営業停止、輸出禁止等の行政処分若しくはその他の措置を受け、又は当局やその他の利害関係者から損害賠償を請求されるおそれがある。さらに、法令等の違反が生じた場合には、当社グループの事業遂行が困難となるなどの影響を受ける可能性があり、また、社会的評価及び信用の失墜等に繋がるおそれがある。特に当社グループの事業の性質に鑑み、国内外の独占禁止法、贈賄関連法規、貿易・為替法規、建設業法、下請代金支払遅延等防止法等の違反に関しては、当社グループへの影響は一層重大なものとなる可能性がある。このように法令等の違反は、当社グループの経営成績等の状況に重要な影響を与える可能性がある。

 

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりである。次の記載事項のうち将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものである。

なお、当社グループは、当連結会計年度から報告セグメントの区分を変更しており、以下の前連結会計年度との比較は、前連結会計年度の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で実施している。

 

(1)財政状態の状況の概要及びこれに関する分析・検討内容

当連結会計年度における当社グループの資産は、デンマークのVestas Wind Systems A/S社 (以下、「Vestas社」という。)との合弁会社株式を同社に譲渡するとともにVestas社株式を取得したことなどによりその他の金融資産が増加したものの、株式会社日立製作所(以下、「日立製作所」という。)との和解契約に基づく同社が所有する三菱日立パワーシステムズ㈱(以下、「MHPS」という。)株式の当社への移転に伴い、南アフリカプロジェクトに係る補償資産が全額回収されて減少したことなどにより、前連結会計年度末から1,749億62百万円減少の4兆8,107億27百万円となった。

負債は、上記の日立製作所との和解契約に基づくMHPS株式の当社への移転に伴い、社債、借入金及びその他の金融負債が減少したことなどにより、前連結会計年度末から3,242億76百万円減少の3兆3,713億37百万円となった。

資本は、親会社の所有者に帰属する持分が増加したことなどにより、前連結会計年度末から1,493億14百万円増加の1兆4,393億90百万円となった。

以上により、当連結会計年度末の親会社所有者帰属持分比率は28.4%(前連結会計年度末の24.4%から+4.0ポイント)となった。

 

(2)経営成績の状況の概要及びこれに関する分析・検討内容

連結会計年度における世界経済は、新型コロナウイルス感染症の世界的流行が続く中、経済活動が徐々に再開されて回復の兆しを見せつつあった。また、我が国経済も、同調して生産活動の持ち直しが見られるなど年度後半にかけて回復基調にあったが、年度を通しては、世界経済・我が国経済とも、前連結会計年度から大きく下振れした。

このような状況の下、当連結会計年度における当社グループの受注高は、前連結会計年度を8,322億97百万円(△20.0%)下回る3兆3,363億92百万円となり、売上収益は、前連結会計年度を3,414億29百万円(△8.4%)下回る3兆6,999億46百万円となった。

事業利益は、プラント・インフラセグメント、エナジーセグメント及び物流・冷熱・ドライブシステムセグメントが減少したものの、航空・防衛・宇宙セグメントが増加したことにより、前連結会計年度から836億19百万円改善して540億81百万円となり、税引前利益も前連結会計年度から820億16百万円改善して493億55百万円となった。

一方、親会社の所有者に帰属する当期利益は、前連結会計年度を464億83百万円(△53.4%)下回る406億39百万円となった。これは前連結会計年度において過年度の損失計上分を繰延税金資産に計上したことによるものである。

 

セグメントごとの経営成績は、次のとおりである。

ア.エナジー

受注高は、前連結会計年度に大型新設案件の受注があったスチームパワーやGTCCが減少したことなどにより、前連結会計年度を4,728億87百万円(△26.7%)下回る1兆2,992億13百万円となった。

売上収益は、スチームパワーや航空機用エンジンが減少したことなどにより、前連結会計年度を442億90百万円(△2.8%)下回る1兆5,460億3百万円となった。

事業利益は、洋上風力発電システム事業関連の株式譲渡益の計上があったものの、スチームパワーにおける工事採算悪化等により、南アフリカプロジェクトに関する係争での和解による一時的な利益があった前連結会計年度を166億83百万円(△11.6%)下回る1,276億99百万円となった。

 

イ.プラント・インフラ

受注高は、新型コロナウイルス感染症の流行を受けた各国のロックダウンによる商談の停滞等に伴い、商船やエンジニアリング、製鉄機械が減少したことなどにより、前連結会計年度を1,646億88百万円(△22.3%)下回る5,752億81百万円となった。

売上収益は、エンジニアリングや製鉄機械が減少したことなどにより、前連結会計年度を1,556億67百万円(△19.6%)下回る6,372億58百万円となった。

事業損益は、売上減少の影響等により、前連結会計年度から357億57百万円悪化し、102億22百万円の損失となった。

 

ウ.物流・冷熱・ドライブシステム

受注高は、新型コロナウイルス感染症の流行による景況悪化に伴い、物流機器やターボチャージャが減少したことなどにより、前連結会計年度を1,178億67百万円(△12.0%)下回る8,680億95百万円となった。

売上収益は、物流機器やターボチャージャが減少したことなどにより、前連結会計年度を1,297億97百万円(△13.1%)下回る8,603億7百万円となった。

事業利益は、固定費削減による改善があったものの、売上減少の影響等により、前連結会計年度を137億34百万円(△46.8%)下回る156億13百万円となった。

 

エ.航空・防衛・宇宙

受注高は、新型コロナウイルス感染症の流行による航空機需要の低迷に伴い、民間航空機が減少したことなどにより、前連結会計年度を929億72百万円(△12.9%)下回る6,262億43百万円となった。

売上収益は、飛しょう体・艦艇等の防衛関連製品が増加したものの、民間航空機が減少したことなどにより、前連結会計年度を28億75百万円(△0.4%)下回る7,021億9百万円となった。

事業損益は、三菱スペースジェット関連資産の減損損失額が減少したことにより、前連結会計年度から1,139億50百万円改善し、948億41百万円の損失となった。

 

(3)キャッシュ・フローの状況の概要及びこれに関する分析・検討内容

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ362億5百万円減少し、2,454億21百万円となった。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は次のとおりである。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、949億48百万円の資金の減少となり、前連結会計年度に比べ5,475億12百万円減少した。これは、前連結会計年度において南アフリカプロジェクトに係る補償資産の回収があったことに加え、当連結会計年度において営業債権の増加及び契約負債の減少幅の拡大等で運転資金需要が増加に転じたことなどによるものである。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、1,822億49百万円の資金の減少となり、前連結会計年度に比べ573億16百万円支出が減少した。これは、事業譲受による支出があった一方、有形固定資産及び無形資産の取得による支出の減少並びに子会社の取得による支出の減少等によるものである。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、2,217億37百万円の資金の増加となり、前連結会計年度に比べ4,261億90百万円収入が増加した。これは、借入金及び社債の発行による収入の増加等によるものである。

 

(4)生産、受注及び販売の状況

① 生産の実績

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2020年4月1日

至 2021年3月31日)

金額(百万円)

前連結会計年度比(%)

エナジー

1,545,195

△2.7

プラント・インフラ

578,588

△23.2

物流・冷熱・ドライブシステム

850,291

△12.5

航空・防衛・宇宙

699,270

+0.9

調整額

13,792

合計

3,687,138

△8.5

(注)1.上記金額は、大型製品については契約金額に工事進捗度を乗じた額、その他の製品については完成数量に販売金額を乗じた額を基に算出計上している。

2.セグメント間の取引については、各セグメントの金額から消去している。

3.「調整額」の区分は、報告セグメントに含まれない生産高である。

4.上記金額には、消費税等は含まれていない。

 

② 受注の実績

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2020年4月1日

至 2021年3月31日)

受注高

(百万円)

前連結会計年度比

(%)

受注残高

(百万円)

前連結会計年度比

(%)

エナジー

1,299,213

△26.7

3,228,043

△6.0

プラント・インフラ

575,281

△22.3

988,357

△3.9

物流・冷熱・ドライブシステム

868,095

△12.0

36,576

+24.7

航空・防衛・宇宙

626,243

△12.9

892,863

△3.9

調整額

△32,442

259

合計

3,336,392

△20.0

5,146,100

△5.1

(注)1.受注高については、「エナジー」、「プラント・インフラ」、「物流・冷熱・ドライブシステム」及び「航空・防衛・宇宙」にはセグメント間の取引を含んでおり、「調整額」でセグメント間の取引を一括して消去している。また、「調整額」の区分は、報告セグメントに含まれない受注高を含んでいる。

2.受注残高については、セグメント間の取引を各セグメントの金額から消去しており、「調整額」の区分は、報告セグメントに含まれない受注残高である。

3.上記金額には、消費税等は含まれていない。

③ 販売の実績

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2020年4月1日

至 2021年3月31日)

金額(百万円)

前連結会計年度比(%)

エナジー

1,546,003

△2.8

プラント・インフラ

637,258

△19.6

物流・冷熱・ドライブシステム

860,307

△13.1

航空・防衛・宇宙

702,109

△0.4

調整額

△45,732

合計

3,699,946

△8.4

(注)1.「エナジー」、「プラント・インフラ」、「物流・冷熱・ドライブシステム」及び「航空・防衛・宇宙」にはセグメント間の取引を含んでおり、「調整額」でセグメント間の取引を一括して消去している。また、「調整額」の区分は、報告セグメントに含まれない販売金額を含んでいる。

2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりである。

相手先

前連結会計年度

(自 2019年4月1日

至 2020年3月31日)

当連結会計年度

(自 2020年4月1日

至 2021年3月31日)

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

防衛省

349,410

8.6

400,723

10.8

3.上記金額には、消費税等は含まれていない。

 

(5)資本の財源及び資金の流動性に係る情報

ア.資金需要の主な内容

当社グループの資金需要は、営業活動については、生産活動に必要な運転資金(材料・外注費及び人件費等)、受注獲得のための引合費用等の販売費、製品競争力強化・ものづくり力強化及び新規事業立上げに資するための研究開発費が主な内容である。投資活動については、事業伸長・生産性向上及び新規事業立上げを目的とした設備投資並びに事業遂行に関連した投資有価証券の取得が主な内容である。

今後、成長分野に対しては必要な設備投資や研究開発投資、投資有価証券の取得等を継続していく予定である。全体的には、将来見込まれる成長分野での資金需要も見据え、最新の市場環境や受注動向も勘案し、資産の圧縮及び投資案件の選別を行っていく予定である。

 

イ.有利子負債の内訳及び使途

2021年3月31日現在の有利子負債の内訳は下記のとおりである。

(単位:百万円)

 

 

合計

償還1年以内

償還1年超

短期借入金

50,527

50,527

コマーシャル・ペーパー

196,000

196,000

長期借入金

464,095

31,267

432,828

社債

195,000

45,000

150,000

合計

905,623

322,794

582,828

当社グループは比較的工期の長い工事案件が多く、生産設備も大型機械設備を多く所有していることもあり、一定水準の安定的な運転資金及び設備資金を確保しておく必要がある。当社グループは継続的に資産圧縮に努め、期限の到来した借入金を返済してきたものの、受注品事業において過年度に前受金を受領した工事の進捗により支出が増加局面にあることや、民間航空機事業において新型コロナウイルス感染拡大の影響により売上債権・棚卸資産等が増加したことなどにより、当連結会計年度末の有利子負債の構成は、償還期限が1年以内のものが3,227億94百万円、償還期限が1年を超えるものが5,828億28百万円となり、合計で9,056億23百万円となった。

これらの有利子負債は事業活動に必要な運転資金、投資資金に使用しており、資金需要が見込まれる火力発電システムのほか、物流機器・冷熱製品を含む中量産品等の伸長分野を中心に使用していく予定である。

 

ウ.財務政策

当社グループは、運転資金、投資資金については、まず営業キャッシュ・フローで獲得した資金を投入し、不足分について有利子負債による調達を実施している。

長期借入金、社債等による長期資金の調達については、事業計画に基づく資金需要、金利動向等の調達環境、既存借入金の償還時期等を考慮の上、調達規模、調達手段を適宜判断して実施していくこととしている。

一方で、有利子負債を圧縮するため、キャッシュマネジメントシステムにより当社グループ内での余剰資金の有効活用を図っており、また、営業債権、棚卸資産の圧縮や固定資産の稼働率向上等を通じて資産効率の改善にも取り組んでいる。

自己株式については、事業計画の推進状況、当社の業績見通し、株価動向、財政状況及び金融市場環境等を総合的に勘案して取得を検討していくこととしている。

 

(6)経営方針・経営戦略及び経営指標等に照らした経営成績等の分析・検討

「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (1)経営方針・経営戦略等」に記載のとおり、当社グループは、中期経営計画「2018事業計画」に基づき、事業成長と財務健全性のバランスを取った経営により、長期安定的に企業価値を向上させることを目指して事業を遂行してきた。

「2018事業計画」においては、最終年度にあたる当連結会計年度におけるTOPの目標を、売上収益、総資産、時価総額の比率で0.9:1:0.5としていたところ、当連結会計年度の同比率の実績は、0.8:1:0.2となった。

当連結会計年度においては、南アフリカプロジェクトに係る補償資産の全額回収等、総資産の圧縮を進めた。

一方、新型コロナウイルス感染症の世界的流行による中量産品事業・民間航空機関連事業の急激な市場縮小、スチームパワー大型案件の減少による工場稼働率の低下等により、売上収益や定常収益力が低下しており、特に資産の収益性の低さや、TOPにも表れている時価総額の低迷が今後改善すべき課題であると認識している。

また、財務健全性は、資本に関しては、親会社の所有者に帰属する持分が増加したことなどにより、自己資本比率は上昇した一方で、有利子負債については、売上収益減少に伴うキャッシュ・フローの減少や受注品事業での工事の進捗に伴う支出の増加により、前連結会計年度より増加しており、有利子負債の水準を抑制・圧縮していくことも課題であると認識している。

このような評価を踏まえ、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」に記載のとおり、「2021事業計画」では、「収益力回復・強化」及び「成長領域の開拓」に優先的に取り組み、TOP達成に向けた事業基盤の確立と、次の中期経営計画「2024事業計画」での飛躍のための基盤づくりを進めていく。

 

(7)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、IFRSに準拠して作成されている。この連結財務諸表の作成に当たり、見積りが必要となる事項については、合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っている。

詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表」の注記「2.作成の基礎 (5)見積り及び判断の利用」及び「3.重要な会計方針」に記載している。

 

なお、会計上の見積り等に関する新型コロナウイルス感染症による影響については、「第5 経理の状況 1 連

結財務諸表等 (2)その他 ③新型コロナウイルス感染症拡大の影響」における以下の記載のとおりである。

 

新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、当社グループの民間機事業や中量産品事業等で需要減少に伴う売上収益の減少、工場の生産調整等が生じている。当連結会計年度においては、資産の評価等に当該影響を織り込み、決算数値等に反映させている。本感染症は経済や企業活動に広範な影響を与える事象であり、また、今後の広がり方や収束時期等を予想することは困難なことから、当社は外部情報等を踏まえて、事業計画への影響の検討等を行い、製品特性・関連する市場環境等に即した仮定のもと、資産の評価等の会計上の見積りを行っている。

この影響がさらに長期化する場合には、新たな生産調整や、顧客への販売の減少が追加的に生じる可能性もあり、翌連結会計年度以降の当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性がある。

なお、新型コロナウイルス感染症の今後の広がり方や収束時期等を含む仮定について、前連結会計年度から重要な変更を行っていない。

 

 

4【経営上の重要な契約等】

(1) デンマークVestas Wind Systems A/S社との株式譲渡契約

当社は、2020年10月29日に、当社子会社であるMHI Holding Denmark ApS(以下、「MHD社」という。)が保有する、デンマークのVestas Wind Systems A/S(以下、「Vestas社」という。)との洋上風力発電システム事業の合弁会社MHI Vestas Offshore Wind A/S(以下、「MVOW社」という。)の株式全てをVestas社へ譲渡するとともに、MHD社が新たにVestas社の株式を約5百万株(2.5%相当)取得することを決定し、同日、当社、MHD社及びVestas社との間で株式譲渡契約を締結した。なお、当該株式譲渡契約に基づくMHD社によるMVOW株式の譲渡及びVestas社株式の取得は、2020年12月14日に完了した。

また、当社は、2021年3月22日に、MHD社の保有するVestas社株式全てを取得した。これに合わせて、当社、MHD社及びVestas社は、2020年10月29日付株式譲渡契約の変更契約を締結し、当社は、当該株式譲渡契約に基づくMHD社の権利義務を承継した。

 

(2) その他重要な契約

当社は、2019年12月18日に、株式会社日立製作所との間で締結した契約に従い、2020年9月1日に同社が保有する三菱日立パワーシステムズ㈱(同日付で三菱パワー㈱に商号を変更)の株式全てを取得した。詳細は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表」の注記「12.南アフリカプロジェクトに係る補償資産」及び「第5 経理の状況 2 財務諸表等 (1)財務諸表」の貸借対照表関係の注記「4.その他」に記載のとおりである。

これに伴い、当社と株式会社日立製作所との間の重要な契約のうち、「火力発電システムを主体とする分野での事業統合に関する統合比率、範囲、合弁会社の概要、その他諸条件に係る基本契約」は重要性が低下し、「火力発電システムを主体とする分野での事業統合に関する、合弁会社の運営等に係る契約」は終了した。

 

 

5【研究開発活動】

当社グループ(当社及び連結子会社)は、各製品の競争力強化や今後の事業拡大に繋がる研究開発を推進している。

セグメントごとの主な研究開発の状況及び費用は次のとおりであり、当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は総額で125,727百万円である。なお、この中には受託研究等の費用57,343百万円が含まれている。

 

(1) エナジー

2050年までのカーボンニュートラル社会の実現、低コストでのエナジーの安定供給といった多様化する社会課題を解決するべく、これまで培った技術を駆使して、革新的で付加価値の高い製品やサービスの開発に取り組んでいる。

当セグメントに係る研究開発費は47,260百万円であり、主な研究開発は次のとおりである。

・AI技術を活用し産業用エナジーの効率的な活用と脱炭素化を支援するソリューション「ENERGY CLOUD Service(エナジークラウドサービス)」や、社会・経済・環境の3つの側面からのエナジーインフラのあるべき姿を示した指標「QoEn(クウォン)」の開発

・脱炭素社会に向け、NEDOプロジェクトへの参画によるCO2を排出しない「水素専焼対応型ガスタービン」の開発や運搬や貯蔵に優れたアンモニアを燃料とするガスタービンコンバインドサイクルの社会実装に係る開発

・発電効率を高めることでCO2排出量を低減する、次世代空気冷却システムを採用した「空冷式1650℃級ガスタービン」の実機開発

・高い経済性と革新技術(万一の事故時に放射性物質の放出を抑制する技術等)を採用した世界最高水準の安全性を実現する次世代軽水炉や、社会の多様化するニーズに応える小型炉、高温ガス炉、高速炉等の開発

 

(2) プラント・インフラ

市場・需要の多様化に対応した製品固有の研究開発を行うとともに、IoTを含む最新かつ高度な先進技術の幅広い製品への適用に取り組んでいる。

当セグメントに係る研究開発費は10,673百万円であり、主な研究開発は次のとおりである。

・最適燃焼プロセス及び最適ストーカー構造により、ごみ焼却施設の高燃焼効率化及び長寿命化を実現する次世代ストーカー炉の開発

・物流を支える高品質段ボール箱を提供する世界トップレベルの高速製函機「EVOL(エボル)」をベースに、各国市場ニーズに合致させたグローバル展開用戦略機種の開発

 

(3) 物流・冷熱・ドライブシステム

量産技術の情報共有や共有技術の統一化により各事業に対応した製品の研究開発を行うとともに、知能化により安全・安心なサービスを実現し、エコロジーへの貢献に取り組んでいる。

当セグメントに係る研究開発費は11,744百万円であり、主な研究開発は次のとおりである。

・酵素・尿素製剤と深紫外線発光ダイオード(UV-C LED)による新型コロナウイルス除去・不活性化の実証

・脱炭素・水素化社会を見据え、CO2を排出せずクリーンな純水素を安定燃焼できる水素エンジンの開発

・倉庫保管量と荷さばき量の最大化を狙い、車体をパレット幅まで小型化し、車両の安定性向上や新たな旋回方法を備えることで高速化を実現した新コンセプトフォークリフト「SynX-Vehicle(シンクス・ビークル)」の開発

 

(4) 航空・防衛・宇宙

日本のリーディングカンパニーとして、長年にわたり航空・防衛・宇宙開発で培った技術を駆使して、最先端の製品開発に取り組んでいる。

当セグメントに係る研究開発費は42,804百万円であり、主な研究開発は次のとおりである。

・世界最高レベルの運航経済性と客室快適性を兼ね備えたリージョナルジェット旅客機「三菱スペースジェット」の開発

・低コストで高い信頼性を有する「H3ロケット」の開発

・民間航空機に用いられる製造自動化、3Dプリンタによる金属積層造形技術、高難易度部材加工技術、大面積シール塗布技術等の革新的製造技術の開発

・複数無人機の運用をAI技術でサポートする沿岸警備システムの開発

・重要インフラの制御システム向け等のサイバーセキュリティ技術の開発

・衛星データをAI技術で解析し、災害救助等に貢献する広域状況把握技術の開発

 

(5) その他・共通

当社グループ次期製品の市場競争力確保のために必要となるキー技術や、次期・次世代の製品開発に必要かつ複数製品の共通基盤となるプラットフォーム技術開発に取り組んでいる。

「その他・共通」に係る研究開発費は13,243百万円であり、主な研究開発は次のとおりである。

・脱炭素社会に向けた水素専焼・アンモニア専焼発電技術の開発

・先進AI技術を用いた社内業務プロセス効率化につながる自然言語処理活用技術の開発