第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

以下の記載事項のうち将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものである。

 

(1)経営方針・経営戦略等

ア.当連結会計年度の経営環境

当社グループを取り巻く経営環境は、海外を中心にコロナ禍からの市場回復が進む一方で、ロシアによるウクライナ侵攻や、長引く半導体不足、素材・物流費の高騰等、不透明感の強い状況が継続している。

一方で、地球温暖化対策の国際的な取組みの進展や、エネルギー供給の不安定化に伴う世界的なセキュリティ意識の高まりにより、リアリティのあるエナジートランジションのニーズが高まっており、社会の課題に技術でソリューションを提供する当社グループの役割は、より一層大きくなっている。

 

イ.中期経営計画「2021事業計画」

事業環境の急激な変化にいち早く対応するため2020年10月から開始した中期経営計画「2021事業計画」では、「収益力の回復・強化」及び「成長領域の開拓」を重点テーマとし、2024年度以降の飛躍とTOP*1達成に向け、収益性、成長性、財務健全性及び株主還元の4つの指標を定めて各種施策に取り組んでいる。

「収益力の回復・強化」としては、固定費の削減や生産性の向上に加え、サービス比率の向上、業務プロセスの改善等、事業体質の変革に取り組み、2023年度末「事業利益率7%」、「ROE12%」を目指している。

また、「成長領域の開拓」としては、エネルギー供給側で脱炭素化を目指す「エナジートランジション」とエネルギー需要側で省エネ・省人化・脱炭素化を実現する「社会インフラのスマート化(モビリティ等の新領域)」を強力に推し進めている。これらの成長分野には「2021事業計画」期間中に1,800億円を投資し、将来的には1兆円規模の事業への成長を目指す。

初年度である当連結会計年度は、グループ一丸となって取り組んだ各種施策が奏功し、収益性は概ね想定どおり、財務健全性も想定以上の改善を達成することができた。

*1 Triple One Proportion(売上収益:総資産:時価総額=1:1:1の状態)

これは、事業成長と財務健全性のバランスを取った経営により長期安定的に企業価値を向上させることを目指す上で、その達成状況を総合的に評価するための当社グループ独自の指標である。

 

ウ.カーボンニュートラル宣言

当社グループは、製品・技術による貢献のみならず、事業プロセス全体における各種活動を通じて、地球環境問題をはじめとする様々な社会課題の解決に向けて取り組んでいる。また、前連結会計年度に設定した当社グループが取り組むべき重要課題(マテリアリティ)への取組みを通じて、サステナビリティ経営を事業面でも具現化すべく推進している。加えて、地球規模の課題であるカーボンニュートラル社会の実現に向け、脱炭素分野での実績を活かして貢献していくことは当社グループの最大のミッションであると考えている。2050年の政府目標達成のためには、これに先駆けて当社グループの目標達成が必要との認識に基づき、2021年10月に「2040年カーボンニュートラル宣言」を公表した。

この宣言では、当社グループの生産活動に伴う工場等からのCO2排出量(Scope1、Scope2*2)を2030年までに2014年比50%削減し、2040年までに実質ゼロにすることを第一の目標としている。さらに、当社グループ製品の使用による顧客のCO2排出量(Scope3*2)削減に、CCUS*3による削減貢献分を加味したバリューチェーン全体からのCO2排出量を2030年までに2019年比50%削減し、2040年までに実質ゼロにすることを第二の目標としている。

これらの目標達成に向けて、当社グループは「MISSION NET ZERO」というテーマの下、世界中のパートナー、国、自治体、研究機関等と積極的に連携して取り組んでいく。

*2 Scope1は当社のCO2直接排出を、Scope2は主に電気の使用に伴うCO2間接排出を、Scope3はScope1、Scope2以外の当社グループバリューチェーン全体でのCO2間接排出を示す。算定基準は温室効果ガス(GHG)排出量の算定と報告の国際基準であるGHGプロトコルに準じる。

*3 Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage(二酸化炭素回収・利用・貯蓄)

 

 

(2)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

当社グループは、「MISSION NET ZERO」で掲げるカーボンニュートラルを達成し、サステナブルで安全・安心・快適な社会の実現に貢献していく。そのためには、「エネルギー供給側の脱炭素化」と、「エネルギー需要側の省エネ・省人化・脱炭素化」を両面で進めることが必要であり、「2021事業計画」においては、「収益力の回復・強化」によって2023年度の目標を着実に達成しつつ、これらの「成長領域の開拓」を推進するための各種取組みを引き続き展開していく。

 

ア.エネルギー供給側の脱炭素化(エナジートランジション)

「エナジートランジション」に関しては、カーボンニュートラルの必要性が世界へ浸透していくに伴って、より具体的な検討が加速する段階に入っている。これを受け、当社グループは、既存火力発電設備の脱炭素化のため、ガスタービンの水素焚きへの転換に向けた実証を「高砂水素パーク」で進める。これにより、2025年には中小型ガスタービンで、2030年には大型ガスタービンで、水素100%専焼の商用化を目指す。これと並行して、移行段階の対策として、既存火力発電設備の高効率化とアンモニア混焼による低炭素化にも取り組む。

脱炭素及びエネルギー安全保障の観点から再評価されている原子力発電については、国内での既設プラントの再稼働や燃料サイクル確立の支援に着実に取り組んでいく。加えて、安全性を向上させた次世代軽水炉につき2030年代の新設を目指して設計を進めるとともに、大量かつ安定的な水素製造を可能とする高温ガス炉の開発や、米国テラパワー社との高速炉開発に向けた協力など、リーディングカンパニーとして多様な取組みを推進していく。

カーボンニュートラルの達成には、こうした取組みによって大気中へのCO2の排出を抑えるだけではなく、CO2の回収が必須である。当社グループは、電力・化学産業等向けの大型CO2回収装置において高い世界シェアを誇っており、この分野での事業拡大を図る。また、近い将来に必要となる鉄鋼、セメント等のCO2排出削減が困難な産業でのCO2回収にも対応していくとともに、需要増大が予想される産業プラント向けの中小型回収装置の商用化を進め、大型から中小型までのラインナップ拡充を図り、更なる普及につなげていく。また、自動運転や遠隔監視といった技術の活用に加え、CaaS*4と呼ばれるCO2回収装置の設置・運営・保守や、CO2回収・輸送・貯留・利活用といったプロセスに着目した新たなサービス事業を創出し、CO2エコシステムの実現に伴う多様なニーズに応えていく。加えて、CO2の利活用を促進するため、オープンイノベーションによる技術の探索や、CO2流通量を可視化するデジタルプラットフォームの開発も進め、この分野におけるキープレーヤーを目指していく。

*4  Capture as a Service, CO2 as a Service

 

イ.エネルギー需要側の省エネ・省人化・脱炭素化(社会インフラのスマート化)

エネルギー供給側の脱炭素化である「エナジートランジション」の推進と並行して、需要側でもシステムの省エネ・省人化・脱炭素化を進め、「社会インフラのスマート化」を通じて、安全・安心・快適な暮らしの実現に貢献していく。

まず、物流の知能化の分野では、優れた物流機器、電力機器、冷熱機器を顧客のニーズに応じて組み合わせ、ワンストップのソリューションを提供するため、物流を支える各製品の競争力を着実に強化する。既に無人フォークリフトや自然冷媒冷凍機では実績を積んでいるが、今後はこれらの機器を連携させて自動化し、更なる効率化・最適化を図っていく。例えば、物流の自動化・省人化と、冷熱・電力供給を統合・協働させることで画期的な省エネと脱炭素化を実現していく。

また、省エネと脱炭素化は、デジタル社会の進化に伴いデータの通信量や処理量が顕著に増大しているデータセンターにおいても強く求められている。当社グループは、大規模データセンター向けに高効率の冷熱機器や発電システムを提供しているが、更なるエネルギー効率の最大化により運用コスト低減と信頼性向上を両立させたインフラの構築にも貢献していく。また、今後はデータの分散処理が進展して、データセンターの小型化需要が高まると予測しており、コンテナ型のマイクロデータセンターの商用化も進めていく。

以上に加え、当社グループは、高信頼、堅牢かつ高精度な製品やサービスの提供を通じて、データ解析、AI技術、シミュレーション技術等のデジタルトランスフォーメーションの技術基盤を有している。これらを活用して製品やサービスを「かしこく・つなぐ」ことにより、複合的な機械システムとしての潜在能力を更に発揮させるようなソリューションやバリューチェーンを顧客とともに創出していく。

 

 

ウ.収益力の回復・強化

海外を中心に市場回復は進む一方、新型コロナウイルス感染症の今後に対する不透明感や、半導体不足、ロシアによるウクライナ侵攻を契機とするエネルギー需給変動、物価上昇・輸送費高騰といった懸念材料は尽きない。当社グループは、こうした外部環境の変化を注視しながら、臨機応変に施策を展開して収益力を維持・拡大していく。

火力発電システム事業や製鉄機械事業では遠隔システムによる運用・保守等のデジタルサービスの提供を進め、中量産品事業では販売網やサービス網の強化・拡大を加速して伸長を図る。一方、市場低迷が長期化している民間航空機Tier1(ティア1)事業では市場回復まで固定費削減等の損益改善策を継続するほか、各事業で原材料費や輸送費等の高騰に対応して適正な価格設定を行っていく。また、世界情勢の不安定化に伴う国家安全保障の分野でも政府の方針に則り然るべく対応していく。このほか、アセットマネジメントによるキャッシュ・フローの創出、デジタルトランスフォーメーションを活用した更なるコーポレート部門の業務効率化、人員リソースのシフト、事業ポートフォリオの見直しを含む構造改革にもこれまで同様に取り組んでいく。

 

当社グループは、「MISSION NET ZERO」の活動を通じ、環境価値と経済価値を両立させながらカーボンニュートラルの実現に向けて取り組み、社会課題の解決とサステナブルな社会の実現に貢献していく。このように事業を発展し成長させていく上では、従来どおりコンプライアンスが重要課題であるとの認識の下で各種施策を進めていく。

 

2【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクには、以下の(3)に挙げるようなものがある。

当社グループでは、これら主要なリスクを含めた各種リスクに対して考えうる対応策をあらかじめ講じているが、これらを完全に回避することは困難である。当社グループは、これらのリスクに留意しながら事業計画に従い事業活動を進めるとともに、これらが顕在化した場合の影響の最小化に努めている。

主要なリスクには中長期的に事業環境や社会構造の更なる変化をもたらす可能性があるものも含まれており、当社グループは、将来を見据え、そのような動きに対応できるよう、先んじて対策を取っていかなければならないと認識している。

なお、記載事項のうち将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものである。

 

(1)主要なリスクを検討するプロセス

当社グループでは、事業遂行上のリスクを抽出・討議する経営管理プロセスを策定し、これに基づきリスクの一覧化に取り組んでいる。リスク抽出にあたっては、社外の知見も取り入れて当社グループに関連するリスクの網羅的なリストを作成し、これに基づき概ね10年以内に顕在化する可能性が懸念される具体的なリスクの洗出しを実施している。その上で、講じている対応策の効果も踏まえて当該リスクが顕在化した場合の影響度と蓋然性の検討を行い、当社グループの事業に重要な影響を与える可能性があり、かつ定量化可能なリスクを特定し、以下のようなリスクマップに整理している。これに加えて、定量化の難しい定性的なリスクについても上述のリスクの網羅的なリストに基づき特定している。

 

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(2)当社グループにおけるリスクへの対応策

当社グループでは、各種リスクを適切に管理するため、リスクの類型に応じた管理体制を整備し、管理責任の明確化を図っている。また、リスクを定期的に評価・分析し、必要な回避策又は低減策を講じるとともに、内部監査によりその実効性と妥当性を監査し、定期的に取締役会及び監査等委員会に報告することとしている。加えて、重大リスクが顕在化した場合に備え、緊急時に迅速かつ的確な対応ができるよう速やかにトップへ情報を伝達する手段を確保し、また各事業部門に危機管理責任者を配置している。

また、当社グループでは、「事業リスクマネジメント憲章」により、リスクマネジメントの対象・要領等を明確化し、これを遵守・実践している。また、「事業リスクマネジメント委員会」において、トップマネジメントレベルでの重要リスク情報の共有や対応方針を協議することにより、体制の明確化と経営幹部・事業部門・コーポレート部門の役割の明確化を図っており、事業リスク総括部を責任部門として、経営幹部・事業部門・コーポレート部門の三者が一体となって事業リスクマネジメントに取り組んでいる。

なお、以下「(3)主要なリスク」の①から⑦までの各項目のア.において、各項目に関して当社グループがあらかじめ講じている具体的な対応策を例示しているが、当社グループは、これらに限らず、主要リスク以外のものも含め、各種リスクの類型や性質に応じて、リスクを回避・低減するための取組みを進めるとともに、①から⑦までの各項目の「イ.経営成績等の状況に与えうる影響」等のリスクが顕在化した場合の影響の最小化に努めている。

 

(3)主要なリスク

①新型コロナウイルス感染症の感染拡大

ア.世界的な感染拡大と経済活動への影響

新型コロナウイルス感染症は、2019年末以降、世界的な感染拡大(パンデミック)に発展した。変異株の流行による影響は残るものの、現在、経済活動は徐々に再開され、世界経済及び日本経済ともに回復の兆しを見せつつある。しかしながら、感染拡大の終息が見通せていないこと、需要が従前の水準まで回復する見通しが立たない産業分野もあるなど、新型コロナウイルス感染症の影響はなお予断を許さない状況にある。

当社グループでは、この状況を踏まえた具体的な対策として、収益力を強化すべく、市場拡大が見込まれる分野への投資、販売網・サービス網の強化、サービス事業へのシフトなどに取り組むとともに、人員対策を含めた固定費の圧縮、従業員の一時帰休、工場稼働率の見直しや生産調整、外部流出費用の削減、投資計画の見直し、余剰リソースの有効活用、各国の助成制度の活用等の対策を進めている。また、経営・業務を幅広くリモートで行えるように、在宅勤務環境の整備、ツールの拡充、制度の見直しなどに取り組んでいる。

イ.経営成績等の状況に与えうる影響

当社グループは、日本のみならず世界各地で事業を展開しており、各国における新型コロナウイルス感染症の流行による影響を受けている。当社グループの売上の約3分の2を占めるインフラ関連企業及び官公庁向けの受注品事業では、海外案件を中心に既に受注した案件の進捗遅延による売上計上時期の遅れ、渡航制限やサプライチェーンの停滞、契約交渉や受注プロセスの遅延等が経営成績等の状況に影響を与えうる。また、民間航空機関連事業では、旅客便需要の大幅減少に伴う航空会社の設備投資削減等により、当社グループの生産やサービス事業が影響を受けており、今後の回復の見通しが立ちにくい状況が続いている。これらの影響等を確実に予想することは難しく、また、今後、悪化又は更に長期化するおそれがあり、当社グループの経営成績等の状況に重要な影響を与える可能性がある。

 

②事業環境の変化

ア.当社グループを取り巻く事業環境の悪化

当社グループを取り巻く事業環境は、非常に速いスピードで変化している。例えば世界経済に関しては、米中対立に加え、ロシアのウクライナへの侵攻に伴う世界経済の分断の進展、デジタルデバイスやデータなどの分野における越境規制による覇権争いの先鋭化、資源価格をはじめとする諸物価の高騰、為替レートの急激な変動といった経済環境の変化が生じている。また、我が国においては、社会構造の変化として、人口減少・少子高齢化の一層の進展による人材不足の深刻化、廃業の増加、技術・技能の断絶、製造現場の空洞化等が懸念されている。さらには、全世界的に経済発展と環境負荷低減の両立が社会的な課題となっており、様々な分野で環境規制が強化されている。特にエネルギー分野では、新興国経済の発展や電気自動車の普及等をはじめとした電化の進展により、今後、世界の電力需要はますます伸びていく一方、燃料価格の高騰とともに地球温暖化を契機とした脱炭素化の一層の浸透など、当社グループの置かれている環境は、大きく変化している。

当社グループでは、これらの事業環境の変化に対応すべく、研究開発や設備投資を通じて、性能・信頼性・価格・環境対応等に関する製品競争力の維持・強化を図ることを前提としつつ、社外の知見も取り入れて市場の動きを先取りした新たな機能やソリューションの提案に注力している。また、2020年4月には成長推進室を設置し、既存の事業部門では対処しにくい新しい領域の事業開拓や既存事業の組合せを通じた製品・サービスの開発を進めている。また、事業環境を踏まえて各種製品分野で企図するM&A・アライアンスに関しては、入口での審議やモニタリングといった活動により、円滑なPMI*1の推進に向けた取組みを実践している。

*1 Post Merger Integration

イ.経営成績等の状況に与えうる影響

世界経済のデカップリングの進行に伴い、商談への参加、サプライヤー選定等の場面で当社グループの事業活動に制約が生じた場合や、為替レートの急激な変動、原材料価格の高騰、あるいは我が国における人材不足の深刻化や製造現場の空洞化等により当社グループの競争力が低下することとなった場合には、当社グループの経営成績等の状況に重要な影響を与える可能性がある。環境規制に関しては、火力発電システムや自動車向けターボチャージャ、化学プラント関連のエンジニアリングなどの事業において、環境意識の高まりによって、製品・サービスの需要が減少し、事業規模が縮小する可能性や投下資本の回収が困難となる可能性がある。また、火力発電システム事業は、化石燃料由来の電力需要の激減、競合他社との競争激化やこれに伴う競合他社によるサービス商談獲得の影響も考えられ、これらにより受注が減少するおそれがある。環境規制の強化や燃料価格高騰といった事業環境の変化を踏まえ、顧客が自らの判断で火力発電プラントなどの営業運転を停止することとした場合には、これに伴うサービス事業の停滞等により、当社グループの経営成績等の状況に重要な影響を与える可能性がある。事業計画策定時の想定を超えて更に各種環境規制が厳格化され、これへの対応に課題が生じた場合には、市場競争力の低下や受注機会の逸失等により、当社グループの事業計画の推進に影響を与えるおそれがある。加えて、当社グループは、各種製品事業において、他社とのM&A・アライアンスを行っているが、市場環境の変化、事業競争力の低下、他社における経営戦略の見直し、その他予期せぬ事象を理由として、これらのM&A・アライアンス対象事業が目論見どおり進捗しない場合、資産の評価見直しによって減損損失等を計上する可能性があるなど、当社グループの経営成績等の状況に重要な影響を与える可能性がある。

 

③各種の災害

ア.自然災害や戦争・テロ等の発生

地震、津波、豪雨、洪水、暴風、噴火、火災、落雷、新型コロナウイルス感染症以外の感染症の世界的流行等の自然災害の発生、その発生頻度の上昇や被害の甚大化、戦争・テロ、政情不安、反日運動、人質・誘拐等の犯罪、社会インフラの麻痺、労働争議、停電、設備の老朽化・不具合等の人為的な要因により、様々な物的・人的被害が生じ、円滑な経済活動が阻害され、さらには社会基盤が破壊されるといった事態が考えられる。なお、自然災害については、気候変動等に伴いその影響が甚大化することが想定される。

当社グループでは、これらの影響を低減するため、災害対策支援ツールの活用、連絡体制・事業継続計画(BCP)の策定・整備、工場の点検や設備の耐震化、各種訓練の定期的な実施に加え、適切な保険を付保するとともに、各国の情勢や安全に関する情報収集やこれを踏まえた各種対応、関連省庁との連携等を進めている。

イ.経営成績等の状況に与えうる影響

当社グループは、製品・サービスを提供するための拠点を世界各地に有しているが、特に日本やタイなどに生産拠点が集中しているため、これらの国・地域において、大規模な地震・津波・洪水といった災害が発生した場合、当社グループの生産能力に重要な影響を及ぼす可能性がある。具体的には、生産設備の滅失・毀損、サプライチェーンの停滞・混乱、生産に必要な材料・部品等の不足やサービスの提供停止、生産拠点の操業低下・稼働停止等のほか、代替となる生産設備や取引先の喪失、損害保険等で補填されない損害の発生等の可能性がある。これらの影響に伴う受注や売上の減少等により、当社グループの経営成績等の状況に重要な影響を与える可能性がある。

なお、ウクライナ情勢に起因するロシアへの経済制裁を受け、当社グループが遂行するロシア向け工事で中断等の影響が生じているものの、当連結会計年度において資産の評価等財政状態及び経営成績に与える影響は軽微であるが、今後の原材料価格の高騰やサプライチェーンの混乱等によって当社グループの経営成績等の状況に影響が生じる可能性は否定できない。

 

④製品・サービス関連の問題

ア.製品・サービスに関連する品質・安全上の問題、コスト悪化等

当社グループは、ものづくりとエンジニアリングのグローバルリーダーとして、エナジー、プラント・インフラ、物流・冷熱・ドライブシステム、航空・防衛・宇宙の幅広い分野で高度な技術力を活かしてソリューションを提供している。当社グループは、製品の品質や信頼性の向上に常に努力を重ねているが、製品の性能・納期の問題や製品に起因する安全上の問題が生じる可能性がある。また、仕様変更や工程遅延等に起因するコスト悪化、材料・部品等の調達や工事に伴う予期しない問題の発生、納期遅延や性能未達等による顧客からの損害賠償請求や契約解除、顧客の財務状況の悪化等の問題が生じる可能性がある。サプライヤーとの間でも、製品・サービスなどに起因して、同様の問題が発生する可能性がある。また、特定の材料・部品のサプライヤーと取引不能となった場合に代替調達先の手配ができないことにより、生産活動や顧客への製品・サービスの提供等に影響が生じるおそれがある。

当社グループでは、これらのリスクに対して、各種規則の制定・運用、事業リスクマネジメント体制の整備・強化、個別案件の事前審議や受注後のモニタリング、プロジェクト遂行責任者や事業部長クラスへの教育の実施、製品安全に関する講座の継続的な開催等を行うとともに、過去に生じた大口赤字案件については、その原因や対策を総括するとともに、社内教育に反映するなど、再発防止に努めている。

イ.経営成績等の状況に与えうる影響

このような製品・サービス関連の問題発生等を理由として、追加費用の発生、顧客への損害賠償、社会的評価及び信用の失墜等に繋がる可能性がある。また、顧客・サプライヤーやその他第三者から国内外で訴訟・仲裁を提起されることがあり、当社グループは、これらに対応している。訴訟・仲裁においては、当社グループの主張が認められるように最大限の対応を取っているものの、当社グループにとって不利な判断が下される可能性は否定できない。また、当社グループが最終的に支払うべき賠償額等の負担が、各種の保険で必ずしも補填されるとは限らない。このように製品・サービス関連の問題は、当社グループの経営成績等の状況に重要な影響を与える可能性がある。

 

⑤知的財産関連の紛争

ア.当社グループの知的財産に対する侵害、当社グループによる第三者の知的財産に対する侵害等

当社グループは、研究開発の成果である知的財産を重要な経営資源の一つと位置づけ、グローバルに活用している。しかしながら、当社グループに対して、第三者から知的財産を侵害していると主張されるような事態が生じる可能性がある。

当社グループでは、知的財産を特許権等により適切に保護し、また、第三者の知的財産を尊重し、当社グループによる侵害回避に努め、必要に応じて当該第三者から技術導入を行うなど適切な対応を取っている。具体的には、製品の基本計画・設計・製造の各段階で他者が保有する知的財産を十分に調査することによる知的財産関連の紛争の未然防止、教育・人材育成を通じた知的財産部門の専門性向上等の対策を進めている。

イ.経営成績等の状況に与えうる影響

当社グループの知的財産の利用に関して競合他社等から訴訟等を提起されて敗訴した場合、損害賠償責任を負うほか、特定の技術を利用することができなくなり、当社グループの経営成績等の状況に重要な影響を与える可能性がある。また、当社グループが事業遂行のために必要とする技術の権利を第三者が保有している場合に、当該第三者からの技術導入を受けられず、当社グループの事業遂行に支障をきたすおそれがある。

 

⑥サイバーセキュリティ上の問題

ア.情報セキュリティ問題の発生等

当社グループは、事業の遂行を通じて、顧客等の機密情報及び当社グループの技術・営業他の事業に関する機密情報を保有しており、業務上も情報技術への依存度は高まっている。これに対して日々高度化・悪質化しているサイバー攻撃等が現在の想定を上回るなどして、コンピュータウイルスへの感染や不正アクセスその他の不測の事態が生じた場合には、機密情報が滅失又は社外に漏洩する可能性がある。また、サイバー攻撃等の結果、端末やサーバなどの使用に障害が出る可能性がある。

当社グループでは、これらのリスクに対して、CTO*2直轄のサイバーセキュリティ推進体制を構築し、当社グループのサイバーセキュリティ統制(基準整備・対策実装・自己点検・内部監査)やインシデント対応等の対策を進めている。

*2 CTO:Chief Technology Officer

イ.経営成績等の状況に与えうる影響

情報漏洩が生じると、当社グループの競争力の大幅な低下、社会的評価及び信用の失墜等によって当社グループの事業遂行に重大な影響が生じうる。また、当局等による調査の対象となるほか、顧客等から損害賠償請求等を受ける可能性がある。加えて、サイバー攻撃等の結果、サーバなどの使用に障害が出た場合には、業務の遂行に大きな影響が生じ、その結果生産活動や顧客への製品・サービスの提供等に影響が生じるおそれがある。このようにサイバーセキュリティ上の問題は、当社グループの経営成績等の状況に重要な影響を与える可能性がある。

 

⑦法令等の違反

ア.重大な法令等の違反

当社グループは、国内外の様々な法令・規制(租税法規、環境法規、労働・安全衛生法規、独占禁止法・下請代金支払遅延等防止法・反ダンピング法等の経済法規、贈賄関連法規、貿易・為替法規、建設業法等の事業関連法規、金融商品取引所の上場規程等をいい、これらを総称して以下「法令等」という。)を遵守し、役員及び従業員にも遵守させなければならず、決してリスクとリターンをトレードしてはならない厳守事項として周知と対策を徹底している。具体的には、当社グループの全ての役員・従業員を対象とした「三菱重工グループ グローバル行動基準」や各種規則の制定・運用を行うとともに、コンプライアンス委員会の定期的な開催、内部通報体制の整備、法令遵守の徹底に関する経営層からのメッセージの発信、コンプライアンス・情報管理・ブランド戦略等の各種社内教育の充実と継続的な実施、各部門の課題を踏まえた内部監査等を行っている。しかし、一部の役員・従業員が法令等の違反を生じさせる可能性は完全には排除できない。

イ.経営成績等の状況に与えうる影響

万一法令等の違反が生じた場合、当局等による捜査・調査の対象となるほか、当局等から過料、更正、決定、課徴金納付、営業停止、輸出禁止等の行政処分若しくはその他の措置を受け、又は当局やその他の利害関係者から損害賠償を請求されるおそれがある。さらに、法令等の違反が生じた場合には、当社グループの事業遂行が困難となるなどの影響を受ける可能性があり、また、社会的評価及び信用の失墜等に繋がるおそれがある。特に当社グループの事業の性質に鑑み、国内外の独占禁止法、贈賄関連法規、貿易・為替法規、建設業法、下請代金支払遅延等防止法等の違反に関しては、当社グループへの影響は一層重大なものとなる可能性がある。このように法令等の違反は、当社グループの経営成績等の状況に重要な影響を与える可能性がある。

 

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりである。次の記載事項のうち将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものである。

 

(1)財政状態の状況の概要及びこれに関する分析・検討内容

当連結会計年度における当社グループの資産は、「営業債権及びその他の債権」及び「棚卸資産」の増加等により、前連結会計年度末から3,056億13百万円増加の5兆1,163億40百万円となった。

負債は、「社債、借入金及びその他の金融負債」が減少した一方で、「契約負債」及び「営業債務及びその他の債務」の増加等により、前連結会計年度末から824億73百万円増加の3兆4,538億10百万円となった。

資本は、親会社の所有者に帰属する持分が増加したことなどにより、前連結会計年度末から2,231億39百万円増加の1兆6,625億29百万円となった。

以上により、当連結会計年度末の親会社所有者帰属持分比率は30.8%(前連結会計年度末の28.4%から+2.4ポイント)となった。

 

(2)経営成績の状況の概要及びこれに関する分析・検討内容

当連結会計年度における世界経済は、新型コロナウイルス感染症への対策と経済社会活動の正常化が進んだことにより、半導体不足の影響や物価の上昇圧力が強まる中でも成長を続けた。一方、年度末のロシアによるウクライナ侵攻により、先行きは不透明な状況となった。また、日本経済は、複数回の新型コロナウイルス感染症に関する緊急事態宣言等によって一進一退となりつつ、総じて緩やかに持ち直したが、ウクライナ情勢の緊迫化、資源価格の高騰、円安の加速等により下振れ懸念が強まった。

このような状況の下、当連結会計年度における当社グループの受注高は、中量産品が新型コロナウイルス感染症の影響から回復した物流・冷熱・ドライブシステムセグメントを含め、全てのセグメントで増加し、前連結会計年度を7,313億38百万円(+21.9%)上回る4兆677億30百万円となった。

売上収益は、航空・防衛・宇宙セグメントが減少したものの、物流・冷熱・ドライブシステムセグメント、エナジーセグメント及びプラント・インフラセグメントが増加したことにより、前連結会計年度を1,603億36百万円(+4.3%)上回る3兆8,602億83百万円となった。

事業利益は、エナジーセグメントが減少したものの、航空・防衛・宇宙セグメント、プラント・インフラセグメント及び物流・冷熱・ドライブシステムセグメントが改善・増加したことにより、前連結会計年度を1,061億58百万円(+196.3%)上回る1,602億40百万円となり、税引前利益も前連結会計年度を1,243億28百万円(+251.9%)上回る1,736億84百万円となった。

また、親会社の所有者に帰属する当期利益は、前連結会計年度を729億1百万円(+179.4%)上回る1,135億41百万円となった。

 

セグメントごとの経営成績は、次のとおりである。

ア.エナジー

世界的に脱炭素化の潮流が加速する中、エナジートランジションの重要な役割を担うGTCCやバイオマス発電設備の新設案件の受注等により、受注高は、前連結会計年度を1,451億44百万円(+11.2%)上回る1兆4,443億58百万円となった。

売上収益は、GTCCや原子力発電システムが増加したことなどにより、前連結会計年度を1,050億83百万円(+6.8%)上回る1兆6,510億86百万円となった。

事業利益は、スチームパワーや航空機用エンジンが増加したものの、洋上風力発電システム事業関連の株式譲渡益の計上があった前連結会計年度を414億30百万円(△32.4%)下回る862億68百万円となった。

 

イ.プラント・インフラ

世界的な鉄鋼需要増大を背景として受注が拡大した製鉄機械をはじめ、商船やエンジニアリングも市場環境が回復傾向にあり、受注高は、前連結会計年度を3,157億円(+54.9%)上回る8,909億82百万円となった。

売上収益は、製鉄機械や環境設備が増加したことなどにより、前連結会計年度を146億27百万円(+2.3%)上回る6,518億86百万円となった。

事業利益は、一部海外工事の追加費用はあるものの、構造改革効果等によりエンジニアリングや製鉄機械が増加し、前連結会計年度から338億23百万円改善し、236億1百万円となった。

 

 

ウ.物流・冷熱・ドライブシステム

新型コロナウイルス感染症の影響から回復した物流機器や冷熱製品が増加したことなどにより、受注高は、前連結会計年度を1,242億10百万円(+14.3%)上回る9,923億5百万円となった。

売上収益は、物流機器や冷熱製品、エンジンが増加したことなどにより、前連結会計年度を1,262億26百万円(+14.7%)上回る9,865億34百万円となった。

事業利益は、材料費・物流費の高騰や半導体不足に伴う自動車メーカーの生産調整の影響を受けたものの、全体的な増収に伴う利益の増加等により、前連結会計年度を150億68百万円(+96.5%)上回る306億82百万円となった。

 

エ.航空・防衛・宇宙

防衛航空機や飛しょう体、艦艇等の防衛関連製品が増加したことなどにより、受注高は、前連結会計年度を1,480億5百万円(+23.6%)上回る7,742億48百万円となった。

売上収益は、民間航空機や飛しょう体、宇宙機器が減少したことなどにより、前連結会計年度を968億17百万円 (△13.8%)下回る6,052億92百万円となった。

事業利益は、固定費削減等のコストダウン施策の効果や三菱スペースジェット関連費用が減少したことなどにより、前連結会計年度から1,148億92百万円改善し、200億50百万円となった。

 

(3)キャッシュ・フローの状況の概要及びこれに関する分析・検討内容

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ688億36百万円増加し、3,142億57百万円となった。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は次のとおりである。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、2,855億63百万円の資金の増加となり、前連結会計年度に比べ3,805億11百万円増加した。これは、前連結会計年度に大幅に増加した運転資金が減少したことや、「税引前利益」が増加したことなどによるものである。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、163億6百万円の資金の増加となり、前連結会計年度に比べ1,985億55百万円支出が減少した。これは、「事業の取得による支出」が減少したことに加え、「投資(持分法で会計処理される投資を含む)の売却及び償還による収入」が増加したことなどによるものである。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、2,557億74百万円の資金の減少となり、前連結会計年度に比べ4,775億11百万円収入が減少した。これは、「短期借入金の純増減額」及び「長期借入金による収入」の減少等によるものである。

 

 

(4)生産、受注及び販売の状況

① 生産の実績

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

金額(百万円)

前連結会計年度比(%)

エナジー

1,664,693

+7.7

プラント・インフラ

628,572

+8.6

物流・冷熱・ドライブシステム

1,039,286

+22.2

航空・防衛・宇宙

602,181

△13.9

全社又は消去

13,784

合計

3,948,517

+7.1

(注)1.上記金額は、大型製品については契約金額に工事進捗度を乗じた額、その他の製品については完成数量に販売金額を乗じた額を基に算出計上している。

2.セグメント間の取引については、各セグメントの金額から消去している。

3.「全社又は消去」の区分は、報告セグメントに含まれない生産高である。

4.上記金額には、消費税等は含まれていない。

 

② 受注の実績

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

受注高

(百万円)

前連結会計年度比

(%)

受注残高

(百万円)

前連結会計年度比

(%)

エナジー

1,444,358

+11.2

3,114,441

△3.5

プラント・インフラ

890,982

+54.9

1,243,418

+25.8

物流・冷熱・ドライブシステム

992,305

+14.3

43,264

+18.3

航空・防衛・宇宙

774,248

+23.6

1,087,165

+21.8

全社又は消去

△34,164

309

合計

4,067,730

+21.9

5,488,599

+6.7

(注)1.受注高については、「エナジー」、「プラント・インフラ」、「物流・冷熱・ドライブシステム」及び「航空・防衛・宇宙」にはセグメント間の取引を含んでおり、「全社又は消去」でセグメント間の取引を一括して消去している。また、「全社又は消去」の区分は、報告セグメントに含まれない受注高を含んでいる。

2.受注残高については、セグメント間の取引を各セグメントの金額から消去しており、「全社又は消去」の区分は、報告セグメントに含まれない受注残高である。

3.上記金額には、消費税等は含まれていない。

 

③ 販売の実績

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

金額(百万円)

前連結会計年度比(%)

エナジー

1,651,086

+6.8

プラント・インフラ

651,886

+2.3

物流・冷熱・ドライブシステム

986,534

+14.7

航空・防衛・宇宙

605,292

△13.8

全社又は消去

△34,516

合計

3,860,283

+4.3

(注)1.「エナジー」、「プラント・インフラ」、「物流・冷熱・ドライブシステム」及び「航空・防衛・宇宙」にはセグメント間の取引を含んでおり、「全社又は消去」でセグメント間の取引を一括して消去している。また、「全社又は消去」の区分は、報告セグメントに含まれない販売金額を含んでいる。

2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりである。

相手先

前連結会計年度

(自 2020年4月1日

至 2021年3月31日)

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

防衛省

400,723

10.8

391,057

10.1

3.上記金額には、消費税等は含まれていない。

 

(5)資本の財源及び資金の流動性に係る情報

ア.資金需要の主な内容

当社グループの資金需要は、営業活動については、生産活動に必要な運転資金(材料・外注費及び人件費等)、受注獲得のための引合費用等の販売費、製品競争力強化・ものづくり力強化及び新規事業立上げに資するための研究開発費が主な内容である。投資活動については、事業伸長・生産性向上及び新規事業立上げを目的とした設備投資並びに事業遂行に関連した投資有価証券の取得が主な内容である。

今後、成長分野を中心に必要な設備投資や研究開発投資、投資有価証券の取得等を継続していく予定である。

 

イ.有利子負債の内訳及び使途

2022年3月31日現在の有利子負債の内訳は下記のとおりである。

(単位:百万円)

 

 

合計

償還1年以内

償還1年超

短期借入金

67,324

67,324

長期借入金

462,609

90,249

372,359

社債

205,000

10,000

195,000

合計

734,933

167,574

567,359

当社グループは比較的工期の長い工事案件が多く、生産設備も大型機械設備を多く所有していることもあり、一定水準の安定的な運転資金及び設備資金を確保しておく必要がある。当連結会計年度においては、当社グループは継続的に資金創出に努め、事業拡大局面においても運転資金を抑制しつつ、期限の到来した借入金を返済してきた結果、当連結会計年度末の有利子負債の構成は、償還期限が1年以内のものが1,675億74百万円、償還期限が1年を超えるものが5,673億59百万円となり、合計で7,349億33百万円となった。

これらの有利子負債により調達した資金は、事業活動に必要な運転資金、投資資金に使用しており、具体的には火力発電システムのほか、物流機器・冷熱製品を含む中量産品等の伸長分野及び「2021事業計画」で掲げている成長分野が中心である。

 

ウ.財務政策

当社グループは、運転資金、投資資金については、まず営業キャッシュ・フローで獲得した資金を投入し、不足分について有利子負債による調達を実施している。

長期借入金、社債等による長期資金の調達については、事業計画に基づく資金需要、金利動向等の調達環境、既存借入金の償還時期等を考慮の上、調達規模、調達手段を適宜判断して実施していくこととしている。

一方で、有利子負債を圧縮するため、キャッシュマネジメントシステムにより当社グループ内での余剰資金の有効活用を図っており、また、営業債権、棚卸資産の圧縮や固定資産の稼働率向上等を通じて資産効率の改善にも取り組んでいる。

自己株式については、事業計画の推進状況、当社の業績見通し、株価動向、財政状況及び金融市場環境等を総合的に勘案して取得を検討していくこととしている。

 

(6)経営方針・経営戦略及び経営指標等に照らした経営成績等の分析・検討

「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (1)経営方針・経営戦略等」に記載のとおり、当社グループは、中期経営計画「2021事業計画」において、「収益力の回復・強化」及び「成長領域の開拓」を優先的に取り組み、長期安定的に企業価値を向上させることを目指して事業を遂行している。

「2021事業計画」においては、2023年度末の目標として、「事業利益率7%」、「ROE12%」及び「有利子負債0.9兆円維持」を設定しているところ、初年度にあたる当連結会計年度における各財務指標の実績は「事業利益率4.2%」、「ROE7.7%」及び「有利子負債7,349億円」となった。初年度経過時点における進捗としては、収益性は概ね想定どおり、財務健全性は想定以上の改善であった。

収益性については、材料費・輸送費の高騰、半導体不足の影響を受けたものの、各種対策と収益力回復に向けた施策の実行により利益が増加し、前連結会計年度に対し事業利益率、ROEとも向上した。

財務健全性については、営業キャッシュ・フローの回復や投資有価証券・不動産の売却による収入等により、前連結会計年度に対し有利子負債が大幅に減少した。

一方で、TOPの実績は、0.8:1:0.3となった。資産効率性の改善に向けて、投資有価証券の売却等の資産圧縮を進めたものの、新型コロナウイルス感染症の影響からの回復による収益獲得機会の増加に伴う売上債権・棚卸資産の増加や、円安影響による外貨建て営業債権及び在外営業活動体の資産の増加により、総資産は前連結会計年度末よりも増加した。これによりTOPは前連結会計年度に比べ概ね横ばいとなった。資産収益性の更なる改善や、時価総額の向上が今後の課題である。

このような評価を踏まえ、2024年度以降の飛躍とTOP達成に向けた基盤づくりに取り組んでいく。

 

(7)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、IFRSに準拠して作成されている。この連結財務諸表の作成に当たり、見積りが必要となる事項については、合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っている。

詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表」の注記「2.作成の基礎 (5)見積り及び判断の利用」及び「3.重要な会計方針」に記載している。

 

なお、会計上の見積り等に関する新型コロナウイルス感染症による影響については、「第5 経理の状況 1 連

結財務諸表等 (2)その他 ③新型コロナウイルス感染症拡大の影響」における以下の記載のとおりである。

 

新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、当社グループの民間機事業や中量産品事業等で需要減少に伴う売上収益の減少、工場の生産調整等が生じている。当連結会計年度においては、資産の評価等に当該影響を織り込み、決算数値等に反映させている。本感染症は経済や企業活動に広範な影響を与える事象であり、また、今後の広がり方や収束時期等を予想することは困難なことから、当社は外部情報等を踏まえて、事業計画への影響の検討等を行い、製品特性・関連する市場環境等に即した仮定のもと、資産の評価等の会計上の見積りを行っている。

この影響がさらに長期化する場合には、新たな生産調整や、顧客への販売の減少が追加的に生じる可能性もあり、翌連結会計年度以降の当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性がある。

なお、新型コロナウイルス感染症の今後の広がり方や収束時期等を含む仮定について、前連結会計年度から重要な変更を行っていない。

 

また、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (2)その他 ④ウクライナをめぐる国際情勢の影響」のとおり、ウクライナ情勢に起因するロシアへの経済制裁を受け、当社グループが遂行するロシア向け工事で中断等の影響が出ているが、当社は外部情報等を踏まえて、事業計画への影響の検討等を行い、資産の評価等の会計上の見積りを行っている。

 

4【経営上の重要な契約等】

当社は、2021年5月10日開催の取締役会において、連結子会社である三菱パワー㈱が営む火力発電システム事業等を吸収分割の方法により承継する方針を決定し、同年7月30日、三菱パワー㈱との間で吸収分割契約を締結した。

本吸収分割の概要は以下のとおりである。

 

(1) 本吸収分割の目的

2021年10月1日付で連結子会社である三菱パワー㈱の火力発電システム事業等を承継することで、三菱パワー㈱が推進する火力発電システムの脱炭素化、及び当社が推進する水素エコシステムやCO2エコシステムの構築を同時並行でスピーディに進めるなど、両社のリソースをダイナミックに一体運営することを可能とし、当社グループの成長エンジンであるエナジートランジションを一層加速させる。

 

(2) 本吸収分割の日程

2021年5月10日  吸収分割の基本方針に係る取締役会決議

2021年7月30日  吸収分割契約の締結

2021年10月1日  効力発生日

 

(注)本吸収分割は、当社においては会社法第796条第2項に定める簡易分割の要件を満たし、三菱パワー㈱においては会社法第784条第1項に定める略式分割の要件を満たすため、いずれも株主総会の承認を得ることなく行う。

 

(3) 本吸収分割の方法及び割当ての内容

当社を吸収分割承継会社とし、三菱パワー㈱を吸収分割会社とする吸収分割である。

三菱パワー㈱は、当社の完全子会社であるため、株式、金銭その他の財産の割当ては行わない。

 

(4) 本吸収分割に係る割当ての内容の算定根拠等

該当事項なし。

 

(5) 承継会社が承継する権利義務

①本吸収分割の効力発生日の直前時において三菱パワー㈱が運営する一切の事業に関する、資産及び負債その他一切の権利義務(ただし、遂行中の海外顧客との契約、海外事務所、一部の海外で出願・登録済の知的財産及び一部の海外グループ会社株式等、吸収分割契約において承継しないと定めるものを除く。)を承継する。

②本吸収分割による三菱パワー㈱から当社に対する債務その他の義務の承継は、全て重畳的債務引受の方法による。

 

(6) 承継会社が承継する資産・負債の状況

当社が承継した資産の額は8,845億円、負債の額は3,990億円である。

 

(7) 本吸収分割後の承継会社の概要(2021年10月1日現在)

商号

三菱重工業株式会社

本店の所在地

東京都千代田区丸の内三丁目2番3号

代表者の氏名

取締役社長 泉澤 清次

資本金の額

 2,656億円

純資産の額

10,106億円

総資産の額

32,266億円

事業の内容

船舶・海洋、原動機、機械・鉄構、航空・宇宙、汎用機・特殊車両、その他事業における
設計、製造、販売、サービス及び据付等

 

 

5【研究開発活動】

当社グループ(当社及び連結子会社)は、各製品の競争力強化や今後の事業拡大に繋がる研究開発を推進している。

各セグメント等の主な研究開発の状況及び費用は次のとおりであり、当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は総額で113,675百万円である。なお、この中には受託研究等の費用41,608百万円が含まれている。

 

(1) エナジー

2050年までのカーボンニュートラル社会の実現、低コストでのエネルギーの安定供給といった多様化する社会課題を解決するべく、これまで培った技術を駆使して、革新的で付加価値の高い製品やサービスの開発に取り組んでいる。

当セグメントに係る研究開発費は44,243百万円であり、主な研究開発は次のとおりである。

・脱炭素社会に向けた、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のプロジェクトへの参画によるCO2を排出しない水素ガスタービン、運搬や貯蔵に優れたアンモニアを燃料とするアンモニアガスタービンの開発

・水の電気分解やメタンガスの熱分解等、次世代水素製造技術の開発と、それらの技術を用いた水素製造から水素ガスタービンによる発電までの実証

・低炭素・脱炭素社会に向けた、グリーンイノベーション基金事業への参画によるアンモニア専焼バーナの開発、ボイラでのアンモニア高混焼の社会実装に係る開発

・持続可能な代替航空燃料のサプライチェーン構築に向けた、NEDOプロジェクトへの参画による木質系バイオマスから液体燃料を合成するためのガス化技術の商用化に向けた開発

・地震・津波・テロへの高い耐性と革新技術の採用による世界最高水準の安全性を有し、出力調整機能を強化して系統安定化にも対応する革新型軽水炉と、社会の多様化するニーズを見据えた高温ガス炉、高速炉及びマイクロ炉の開発

 

(2) プラント・インフラ

市場・需要の多様化に対応した製品固有の研究開発を行うとともに、IoTを含む最新かつ高度な先進技術の幅広い製品への適用に取り組んでいる。

当セグメントに係る研究開発費は8,648百万円であり、主な研究開発は次のとおりである。

・最適燃焼プロセス及び最適ストーカー構造により、ごみ焼却施設の高燃焼効率化及び長寿命化を実現する次世代ストーカー炉の開発

・顧客である飲料メーカーでのランニングコストと工場設置面積を低減して、生産効率を上げる新型無菌充填機(プリフォーム殺菌)の開発

 

(3) 物流・冷熱・ドライブシステム

量産技術の情報共有と製品共通技術の統一により製品間でのシナジーを創出し、省エネ・省人化・脱炭素化等市場のニーズに対応した付加価値の高い製品開発に取り組んでいる。

当セグメントに係る研究開発費は11,441百万円であり、主な研究開発は次のとおりである。

・低炭素・脱炭素社会に向けた、水素の燃焼研究及びCO2を排出しない水素専焼エンジンの開発と、都市ガスに水素を混合した水素混焼エンジンの開発

・未利用エネルギーである地中熱を有効活用して地球環境保護と省エネルギー性に貢献する帯水層蓄熱システムの開発

・優れた環境性能と低燃費を両立するとともに業界トップクラスの作業性能を実現し、高い安全性をも確保した小型エンジン式フォークリフト統合モデルの開発

 

(4) 航空・防衛・宇宙

日本のリーディングカンパニーとして、長年にわたり航空・防衛・宇宙開発で培った技術を駆使して、最先端の製品開発に取り組んでいる。

当セグメントに係る研究開発費は32,606百万円であり、主な研究開発は次のとおりである。

・「三菱スペースジェット」に関する、型式証明文書作成プロセスの継続及び事業環境の整備に向けた活動

・低コストで高い信頼性を有する「H3ロケット」の開発

・軽量機体の普及による航空輸送のCO2削減に貢献する、次世代民間機への複合材構造の適用拡大を目指した軽量化・生産高レート化・複雑形状化技術の開発

・無人機及びAI技術を活用した監視システムの開発

・重要インフラの制御システム向け等のサイバーセキュリティ技術の開発

・衛星データをAI技術で解析して災害救助等に貢献する広域状況把握技術の開発

 

(5) その他・共通

当社グループ次期製品の市場競争力確保のために必要となるキー技術や、次期・次世代の製品開発に必要かつ複数製品の共通基盤となるプラットフォーム技術の開発に取り組んでいる。

「その他・共通」に係る研究開発費は16,734百万円であり、主な研究開発は次のとおりである。

・脱炭素社会に向けた水素専焼・アンモニア専焼発電技術の開発

・物流の知能化に向けた大規模最適化に関する高速計算技術の開発