第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

以下の記載事項のうち将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものである。

 

(1)経営方針・経営戦略等

ア.当連結会計年度の経営環境

当社グループを取り巻く経営環境は、世界経済においてコロナ禍からの社会経済活動の正常化が進んで堅調な成長を続け、日本経済においても、ウィズコロナの下で個人消費と設備投資を中心に緩やかに持ち直した。

一方、資源価格上昇を受けたインフレ圧力の強まりや、欧米での急速な金融引締め、ロシアによるウクライナ侵略、米中の対立をはじめとする国際情勢の緊張など、今後の先行きにはなお懸念が残る状況となっている。

かかる経営環境下においても、当社グループは長い歴史の中で培われた技術に最先端の知見を取り入れ、変化する社会課題の解決に挑み、サステナブルで安全・安心・快適な社会と人々の豊かな暮らしの実現に貢献していく。

 

イ.中期経営計画「2021事業計画」

2020年10月から開始した中期経営計画「2021事業計画」では、「収益力の回復・強化」及び「成長領域の開拓」を重点テーマとし、収益性、成長性、財務健全性及び株主還元の4つの指標を定めて各種施策に取り組んでいる。

「収益力の回復・強化」としては、固定費の削減や生産性の向上に加え、サービス比率の向上、業務プロセスの改善等、事業体質の変革に取り組み、2023年度末「事業利益率7%」、「ROE12%」を目指している。

また、「成長領域の開拓」としては、エネルギー供給側で脱炭素化を目指す「エナジートランジション」とエネルギー需要側で省エネ・省人化・脱炭素化を実現する「社会インフラのスマート化(モビリティ等の新領域)」を強力に推し進めている。これらの成長分野には「2021事業計画」期間中に1,800億円を投資し、将来的には1兆円規模の事業への成長を目指す。

2年目となる当連結会計年度は、グループ一丸となって取り組んだ各種施策が奏功し、収益性は概ね想定どおり、財務健全性も想定以上の改善であった。2023年度は2021事業計画の最終年度であり、事業環境変化に臨機応変に適応しつつ各種施策の成果を更に拡大させ、総力を挙げて目標達成に取り組む。

 

ウ.「MISSION NET ZERO」に向けた取組み

MISSION NET ZEROの実現に向けては省エネ化に継続して取り組んでおり、Scope1、2*1のCO2排出量を2030年に2014年比で50%削減するという目標に対して、2022年で既に47%削減を実現した。これに加え、三原製作所をカーボンニュートラル工場とするための使用電力の100%グリーン化等、更なる取組みを実施している。また、Scope3*1については当社製品の使用に伴うCO2排出量削減(2019年比で、2025年に30%、2030年に50%)が目標であり、この達成に向けて高砂製作所の高砂水素パーク建設をはじめとした様々なソリューションの開発・実証を進めている。

*1 Scope1は当社のCO2直接排出を、Scope2は主に電気の使用に伴うCO2間接排出を、Scope3はScope1、Scope2以外の当社グループバリューチェーン全体でのCO2間接排出を示す。算定基準は温室効果ガス(GHG)排出量の算定と報告の国際基準であるGHGプロトコルに準じる。

 

 

(2)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

「2021事業計画」の最終年度である2023年度も、当社グループは「収益力回復・強化」に向けて目標の着実な達成に邁進する。また、サステナブルで安全・安心・快適な社会の実現に向け、「エネルギー供給側の脱炭素化」と、「エネルギー需要側の省エネ・省人化・脱炭素化」を両面で進め、これら「成長領域の開拓」のための各種取組みを引き続き展開していく。

 

ア.エネルギー供給側の脱炭素化(エナジートランジション)

脱炭素化への取組みは、これまで欧州が先行していたが、今後はIRA*2の成立した米国を中心に一気に加速することが予想される。また、各国政府支援の対象も、再生可能エネルギーだけでなく、エネルギーの転換、水素の利用、CO2回収分野にも裾野が広がり、カーボンニュートラル社会の実現に向けた動きも現実味を帯びてきている。

こうした中、当社グループは脱炭素化にCO2を「減らす」「回収する」「出さない」の3つの道筋で対応していく。高効率ガスタービンでは高いシェアを堅持し、老朽化した石炭火力の置き換えによって「減らす」に引き続き貢献する。また、ガスタービンにCO2回収装置を組み合わせる案件の機運が高まっており、「回収する」ことにも積極的に対応していく。そして、CO2を「出さない」水素ガスタービンは、既にEUの規制でガスタービンに課されている2023年以降のCO2排出目標値をクリアするとともに、大型ガスタービンの燃焼試験では50%水素混焼を達成するなど順調に開発が進捗しており、2030年の水素専焼での商用化を目指して引き続き実証を推進していく。

さらに、CO2回収では、商談が旺盛な欧米の中でも顕著な拡大が予想される米国を中心にFS*3やFEED*4の受注を通じて市場の拡大に貢献し、実機の受注に繋げることで事業拡大を図る。また、CO2排出削減が容易でない産業分野向けでも、回収プロセス改良や設計標準化を進めるとともに、これらの実証をパートナーと一緒に推進し、具体的な商談に結び付けるよう取り組んでいく。加えて、貯留・利活用に関しても、エクソンモービル社との協業を通じて世界各国でのCO2回収案件の組成を進めるとともに、日本でも回収、輸送、貯留の各段階でパートナーと連携しながら、日本政府プロジェクトであるバリューチェーン事業の共同スタディにも参画し、将来の事業化を常に見据えて対応していく。

 

*2  Inflation Reduction Act(インフレ抑制法)

*3  Feasibility Study(事業化調査)

*4  Front End Engineering Design(基本設計)

 

イ.エネルギー需要側の省エネ・省人化・脱炭素化(社会インフラのスマート化)

エネルギーの需要側では、省人化、最適化、高信頼性をワンストップ・ソリューションで提供して顧客ニーズに応える取組みを進めていく。当社グループでは機械設備や発電設備の制御、遠隔監視・保守、サイバー攻撃防御といった様々なデジタル製品をこれまでも開発、実装してきているが、これらをプラットフォーム「ΣSynX」でかしこくつなぎ、省人化、設計・設備の最適化、高い信頼性といった付加価値を提供していく。

例えば、物流知能化としては、AGF*5や倉庫内統合制御システムを「ΣSynX」でつなぎ、ピッキングや入出荷、入出庫を自動化するための実証を引き続き進め、事業化を図っていく。また、既に納入実績のある冷凍冷蔵倉庫は、高冷却効率かつ低消費電力に加え、シミュレーション技術を蓄積して更なる最適化を図り、今後ニーズの拡大が見込まれる東南アジアも視野に入れて事業展開を図る。データセンターの分野では高密度・高集積が進む中で省エネ・脱炭素化が大きな課題となっているため、冷却電力の90%以上を削減する次世代冷却技術の実証を更に進めている。これに加えて、高信頼性かつ高効率の電源・冷却システムと監視・統合制御システムをワンストップで提供する体制を整え、今後の受注拡大に向けて取り組んでいく。

 

*5  Automated Guided Forklift(無人フォークリフト)

 

 

ウ.新たな事業機会と収益力の回復・強化

当社グループを取り巻く事業環境は、経済分断の進展、脱炭素に向けた各国政府支援の拡充、経済安全保障機運の高まりなどによって大きく変化しており、これまで述べてきた分野に加えて、特に原子力と防衛の分野で新たな事業機会が生じている。原子力発電システムは、カーボンフリーとエネルギーセキュリティを両立させる大規模・安定電源であり、国内での既設プラントの再稼働や燃料サイクル確立への支援を続けるとともに、革新軽水炉「SRZ-1200」の2030年代半ばの実用化に向けて開発・設計に着実に取り組んでいく。また、大量かつ安定的な水素製造を可能とする高温ガス炉の開発や、海外との高速炉開発に向けた協力などの多様な取組みを推進していく。防衛の分野は、昨今の国家安全保障強化の機運の高まりを受けて、国の防衛力整備計画が大きく拡充されている。当社グループは高い技術力で多様な装備品に対応できるリーディングカンパニーとして引き続き安全・安心な社会を支える役割を担っていく。

また、今後の事業環境の変化に的確に対応しながら、事業ポートフォリオの見直し、成長領域へのリソースシフトの加速、構造改革やアセットマネジメント、コーポレート部門の業務効率化といった収益力の回復・強化に向けた取組みも、これまで同様、着実に進める。

 

当社グループは、「MISSION NET ZERO」の活動を通じ、環境価値と経済価値を両立させながらカーボンニュートラルの達成に取り組み、事業を通じた社会課題解決によってサステナブルな社会の実現に貢献していく。このように事業を発展し成長させていく上では、従来同様コンプライアンスが大前提であるとの認識の下で各種施策を進めていく。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みの状況は、次のとおりである。

また、人的資本及び気候変動に関する戦略並びに指標及び目標はそれぞれ、「(2)気候変動」及び「(3)人的資本に関する戦略並びに指標及び目標」に記載のとおりである。

なお、記載事項のうち将来に関する事項は、当社グループが当連結会計年度末現在において合理的であると判断する一定の前提に基づいており、実際に生じる結果とは様々な要因により異なる可能性がある。

 

(1)サステナビリティ全般

①ガバナンス

当社グループは、環境問題をはじめとする地球規模の課題解決に向けて、当社の製品・技術による貢献のみならず、事業プロセス全体における各種活動を通じて様々な社会的課題の解決に取り組み、事業と連動したサステナビリティへの取組みを推進している。

当社グループは、「社業を通じて社会の進歩に貢献する」と謳われている当社社是を社員が常に念頭に行動する上で、具体的にイメージしやすい形にした「CSR行動指針」を当社グループ社員の共通の心構えとして制定しているほか、多様な経歴、国籍、文化を持つ当社グループの社員の行動における共通の規範である「三菱重工グループグローバル行動基準」を制定している。また、環境については「環境基本方針」及び「行動指針」を制定し、この方針・指針の下、環境負荷低減の取組みを進めている。加えて、人権については、世界人権宣言等の国際規範を支持・尊重し、国連人権理事会が採択した「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づいた「三菱重工グループ人権方針」を、取引先との取引については、「資材調達の基本方針」を制定している。

また、当社グループは、社会のサステナビリティに配慮した経営を推進するため、マテリアリティ推進会議を設置している。マテリアリティへの取組みは、サステナビリティ経営を事業面で具現化するものであり、同会議においては、マテリアリティの目標実現に向けた事業活動状況を確認し、今後の取組みの方向性を議論し事業部門へ必要な対応を指示している。

さらに、当社グループは、サステナビリティを経営の基軸に据え、「常に社会の視点に軸足を置き、社会の期待に応え、信頼される企業」を目指すため、サステナビリティ委員会を設置している。サステナビリティ委員会においては、深化するサステナビリティを巡る課題への対応に関し、ステークホルダーの視点を踏まえ、当社グループが果たすべき責任を追求し、サステナビリティ経営の推進に向けた検討を行い、ESG(環境・社会・ガバナンス)の取組みに関する基本方針等についての審議及び決定並びにその関連諸活動を推進している。

加えて、社会的な要請が高まっているTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)や人権デューデリジェンスをはじめとしたESG施策に対する企業としての対応方針を速やかに経営レベルで意思決定するとともに、これらの進捗状況を確認している。

なお、これらのサステナビリティの取組みのうち重要なものについては、定期的に取締役会に報告されている。

 

②リスク管理

当社グループにおいて、主要なリスクを検討するプロセスは、「3 事業等のリスク (1)主要なリスクを検討するプロセス」に記載のとおりであり、サステナビリティ関連のリスクも同プロセスにおいて検討されている。

また、サステナビリティ委員会において、気候変動を含むサステナビリティ関連のリスク及び機会のうち代表的なものに関する検討結果を確認している。

さらに、人権を尊重した事業活動を行っていくために人権デューデリジェンスを行い、自社のサプライチェーンにおいて発生しうる人権リスクを特定して実態調査を実施している。また、事業部門も交えた人権連絡会を継続的に開催し、最新の取組状況の共有化、今後の取組方針について協議している。

 

③戦略

当社グループでは、社会課題の解決を通じて企業価値を向上させ中長期的に成長していくために、当社グループが取り組んでいくべき重要課題(マテリアリティ)の特定を行った。社会課題の整理、マテリアリティマップの作成、妥当性の検証のプロセスを経て特定されたマテリアリティは、「脱炭素社会に向けたエネルギー課題の解決」「AI・デジタル化による社会の変革」「安全・安心な社会の構築」「ダイバーシティ推進とエンゲージメントの向上」「コーポレート・ガバナンスの高度化」の5項目である。また、深化するサステナビリティ経営課題の動向を調査した結果、取り組むべきESG施策をサステナビリティ委員会で決定した。

2020年10月から開始した中期経営計画「2021事業計画」においては、「収益力の回復・強化」及び「成長領域の開拓」を重点テーマとし、収益性、成長性、財務健全性及び株主還元の4つの指標を定め各種施策を推進している。「MISSION NET ZERO」で掲げるカーボンニュートラルを達成し、サステナブルで安全・安心・快適な社会を実現するため、「エネルギー供給側の脱炭素化」と、「エネルギー需要側の省エネ・省人化・脱炭素化」を両面で進め、「成長領域の開拓」のための各種取組みを引き続き展開していく。

 

④指標及び目標

当社グループは、各マテリアリティについて全社目標及び進捗モニタリング指標(KPI)を設定し、進捗をマテリアリティ推進会議にて管理している。

なお、マテリアリティの各項目に対応した全社目標は下表のとおりである。

マテリアリティ

全社目標

脱炭素社会に向けた

エネルギー課題の解決

・三菱重工グループのCO2排出削減

 Scope1、2を、2040年Net Zero

・2040年までにバリューチェーン全体を通じた社会への貢献

 Scope3+CCUS削減貢献を、2040年Net Zero

AI・デジタル化による

社会の変革

・顧客や利用者に寄り添った便利でサステナブルなAI・デジタル製品の拡充

・AI・デジタル化により適切かつ効率的に電力需給を管理する未来型エネルギーマネジメントで、持続可能な社会へ貢献

・クリエイティブな製品を生み出すための環境づくり

安全・安心な社会の

構築

・製品・事業/インフラのレジリエント化

・製品・事業/インフラの無人化・省人化

・三菱重工全製品の継続的なサイバーセキュリティ対策の深化

ダイバーシティ推進と

エンゲージメントの向上

・多様な人材による新たな価値創出

・安全で快適な職場の確保

・社員を活かす環境づくりと健やかで活力にあふれ社会に貢献できる人材づくり

コーポレート・

ガバナンスの高度化

・取締役会審議のさらなる充実

・法令遵守と誠実・公平・公正な事業慣行の推進

・CSR調達のグローバルサプライチェーンへのさらなる浸透

・非財務情報の説明機会創出

 

(2)気候変動

①ガバナンス

当社グループは、「(1)サステナビリティ全般 ①ガバナンス」に記載のとおり、マテリアリティ推進会議及びサステナビリティ委員会を設置している。TCFD提言に沿った分析は、CSO(Chief Strategy Officer)が担当し、サステナビリティ委員会に報告している。また、TCFD提言に沿った開示を含むサステナビリティ委員会の活動状況については、定期的に取締役会に報告されている。

 

②リスク管理

当社グループにおいて、サステナビリティに関するリスク管理は、「(1)サステナビリティ全般 ②リスク管理」に記載のとおりであり、また、気候変動に関して、各事業部門においてそのリスク及び機会を事業計画策定の勘案要素として検討している。

 

③戦略

当社グループは、環境への影響を最小限とするため、2100年時点における世界の平均気温の上昇を、産業革命以前と比較して1.5℃以下に抑制しながら経済成長を目指す「気候変動政策厳格化により脱炭素を推進するシナリオ(脱炭素シナリオ)」と、現状ベースで化石燃料をエネルギー主体として経済成長を目指した結果、2100年時点における世界の平均気温が産業革命以前と比較して4.0℃上昇することが想定されるシナリオである「気候変動政策が厳格化されず引き続き化石燃料に依存するシナリオ(化石燃料依存シナリオ)」の2つの気候変動シナリオを設定し、2030年における各事業への影響を分析している。なお、シナリオの設定にあたっては、国際機関や日本政府の開示情報を参照している。

このうち、「脱炭素シナリオ」では、当社グループ共通の移行リスクとして、例えば炭素税等の規制が強化され、炭素排出に対するコストが大きく上昇することを想定している。しかしながら、脱炭素化に対応した当社製品・技術の強みを生かすことで、事業機会も十分に存在するものと考えている。

一方、「化石燃料依存シナリオ」では、主なリスクとして、気候変動による物理的リスクがある。当シナリオにおいても、既に各種環境規制を推進している先進諸国において今後、規制が緩和されることは想定しがたいことから、当社の脱炭素技術の優位性を提供することで事業機会が生じると考えている。

なお、当該分析におけるリスク及び機会の影響度の判定に当たっては、事業規模及び脱炭素化の影響を踏まえて分析対象事業を選定した上で、2023年度末の事業利益と2030年における事業利益の予測の差から事業利益への影響を分析している。その結果、脱炭素シナリオを適用した場合に、各事業に対して2030年断面に発生するリスク及び機会のうち、重要なものは以下のとおりである。

各事業部門においては、移行リスクと物理的リスクを経営計画策定の勘案要素として検討しており、またサステナビリティ委員会では、当該リスクと機会のうち代表的なものに関する検討結果を確認している。

ア.リスク

・世界的な電化への移行に従い、内燃機関に関連する製品・サービスである自動車用ターボチャージャ、エンジン式フォークリフトの需要減少や、カーボンニュートラル燃料への移行に伴いディーゼル燃料エンジンの需要減少が想定される。

・技術関連のリスクとして、水素ガスタービン等の新製品の開発遅れや、CO2回収装置における代替技術の出現が想定される。

・外部環境の影響として、化石燃料代替エネルギーとしての水素・アンモニアのサプライチェーン形成の遅れ、それに伴う新市場の立ち上がりの遅れが想定される。

 

イ.機会

・新興国を含む全世界で脱炭素の流れが進行するなかでトランジション期間として、石炭やディーゼル燃料から天然ガスへの燃料転換が起こり、高効率ガスタービンコンバインドサイクルプラント(GTCC)や、ガスエンジンに対する需要増が見込まれる。また、石炭火力発電設備におけるアンモニア混焼・専焼改造や、バイオディーゼル対応のエンジンに対する需要増が見込まれる。加えて、製鉄機械及び物流機器においても脱炭素化に資する製品・サービスの需要拡大が見込まれる。

・カーボンニュートラル実現とエネルギー安定供給の両立に向け、日本国内においても「GX実現に向けた基本方針」が閣議決定され、原子力については、「再稼働推進」「次世代革新炉の開発・建設」「既設炉活用(運転期間の延長)」「燃料サイクル推進」を進め、原子力を最大限活用する方針が示された。これを受け、既設PWR・BWRプラントの再稼働支援・特定重大事故等対処施設の設置や再稼働済プラントの保全に関する事業機会の拡大が想定される。また、世界最高水準の安全性を実現する革新軽水炉(SRZ-1200)の新設・建替えプロジェクトなどによる事業機会の拡大が期待される。

・CO2回収装置に関し、法・税制度やCO2貯留地の整備が進む北米や欧州を中心に市場が先行拡大し、その他の地域でも制度の整備に従って成長が見込まれる。

 

④指標及び目標

当社グループは、「脱炭素社会に向けたエネルギー課題の解決」をマテリアリティの一つと認識しており、2040年にカーボンニュートラルを達成する「MISSION NET ZERO」を宣言し、2つの目標を策定している。

第一の目標は、当社グループの生産活動に伴う工場等からのCO2排出量(Scope1、Scope2*1)を2030年までに2014年比50%削減し、2040年までに実質ゼロにすることである。

第二の目標は、バリューチェーン全体からのCO2排出量を2030年までに2019年比50%削減し、2040年までに実質ゼロにすることである。これは、主に当社グループの製品の使用によるお客様のCO2排出量(Scope3*1)の削減に、CCUS*2による削減貢献分を加味したものである。

当社グループは、「MISSION NET ZERO」の実現に向けて、省エネ化に継続して取り組んでおり、Scope1、2のCO2排出量を2030年に2014年比で50%削減するという目標に対して、2022年で既に47%削減を実現している。これに加え、三原製作所をカーボンニュートラル工場とするための使用電力の100%グリーン化等、更なる取組みを実施している。また、Scope3については、当社製品の使用に伴うCO2排出量削減(2019年比で、2025年に30%、2030年に50%)が目標であり、この達成に向けて高砂製作所の高砂水素パーク建設をはじめとした様々なソリューションの開発・実証を進めている。

*1 Scope1は当社のCO2直接排出を、Scope2は主に電気の使用に伴うCO2間接排出を、Scope3はScope1、Scope2以外の当社グループバリューチェーン全体でのCO2間接排出を示す。算定基準は温室効果ガス(GHG)排出量の算定と報告の国際基準であるGHGプロトコルに準じる。

*2 Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage(二酸化炭素回収・利用・貯蓄)

 

(3)人的資本に関する戦略並びに指標及び目標

①戦略

中期経営計画(2021事業計画)では、事業を支える共通基盤の一つとして「人材基盤」を掲げ、社員一人ひとりが自律的に働くことができる環境づくりを推進している。人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針に関するものを含む以下の各取組みを引き続き推進していく。

 

ア.人材育成

当社グループの事業を取り巻く環境は、価値観の多様化や社会課題の複雑化等により加速度的に変化している。当社グループがいかなる環境の中にあっても持続的に発展していくためには、そこで働く社員一人ひとりが、お客さまのニーズに対して一人称で考え、行動することが必要である。HR部門はそれができる人材の育成とその人材を最大限に活かす企業文化の醸成、一人ひとりの主体性や活力をさらに引き出すことができるワークスタイルへの転換に鋭意取り組んでいる。

また、当社グループは、「三菱重工グループ人材育成方針」を制定しており、「長い歴史の中で培われた技術に最先端の知見を取り入れ、変化する社会課題の解決に挑み、人々の豊かな暮らしを実現する」とのミッションの実現に向けて、グループ員一人ひとりの能力の伸長とキャリア開発の支援を行い、全員が学び成長できる環境を整備する旨定めている。

 

イ.エンゲージメント

当社グループは、「社員のエンゲージメントを高めることが組織の活性化につながる」との考えの下、社員のエンゲージメントを重要指標と位置付け、定期的に、当社グループ全体でエンゲージメントサーベイを実施している。本サーベイ結果を受け、各部門において改善・向上活動を展開しており、HR部門としてはグループ全体の課題に対してベンチマークや水平展開、様々なツール整備を実施している。

 

ウ.ダイバーシティ&インクルージョン

多様な経歴、国籍、文化を持つ数万人からなる当社グループにとって、多様性は大切な財産であり、様々なバックグラウンドを持った社員一人ひとりが一つの共通の企業文化の下で業務に邁進している。女性活躍を一層推進していくため、女性社員数の拡大、キャリアを中断させない仕組みづくり、女性管理職の計画的な育成及び風土醸成という4つの施策に取り組んでおり、さらに、障がいを抱える方が安心して活躍できる職場環境づくり、職域の拡大にも積極的に取り組み、各地域での雇用も鋭意進めている。

 

エ.安全衛生・健康

当社グループは、「人命尊重の精神に徹し、安全を何よりも優先する」ことを労働安全衛生における基本方針とし、その方針を実現するために社員がとるべき行動指針を反映した「三菱重工グループ安全衛生方針」を制定し、全世界に跨る事業場において安全かつ安心して業務を遂行でき得る環境の実現を目指している。また、衛生面では社長による「社員が働き甲斐を実感し心身ともに健康であることを大切にした健康経営に取り組む」旨の健康経営宣言の下、健康経営を推進し、健やかで活力にあふれた社会に貢献できる人材づくりに努めている。

 

②指標及び目標

当社グループは、「(1)サステナビリティ全般 ④指標及び目標」に記載のとおり、マテリアリティの特定を行った。「①戦略」で記載した方針に関しては、「ダイバーシティ推進とエンゲージメントの向上」に向け、多様な人材による新たな価値創出、安全で快適な職場の確保及び社員を活かす環境づくりと健やかで活力にあふれ社会に貢献できる人材づくりをテーマに、安全や多様性、エンゲージメントに関する指標を設け、以下のとおり取り組んだ。

・将来の幹部候補社員に対して、HR部門と事業部門が連携し、計画的な指導、育成を継続中

・女性社員がキャリアを継続するため、育児や介護などに配慮した様々な支援制度の拡充に取り組み、仕事と家庭を両立しやすい職場環境・組織風土の構築を推進中

・「三菱重工グループにおける人権尊重」に関する教育コンテンツ(e-ラーニング)を作成、海外含む当社グループ約75,000名が受講

・過去に発生した災害をベースに発生予兆検知や真因分析等を行い、部門横断で対策を検討・立案

・2023年3月に第4回目となる当社グループ社員意識調査を実施

・社長タウンミーティングを国内4拠点で開催

・パルスサーベイツール*3の全社展開及び運用改善を継続中

 

*3 社員意識調査よりも高い頻度で簡易な質問によるアンケートを実施し、より早期に職場に応じた課題の解決を目指す手段

 

3【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクには、以下の(3)に挙げるようなものがある。

当社グループでは、これら主要なリスクを含めた各種リスクに対して考えうる対応策をあらかじめ講じているが、これらを完全に回避することは困難である。当社グループは、これらのリスクに留意しながら事業計画に従い事業活動を進めるとともに、これらが顕在化した場合の影響の最小化に努めている。

主要なリスクには中長期的に事業環境や社会構造の更なる変化をもたらす可能性があるものも含まれており、当社グループは、将来を見据え、そのような動きに対応できるよう、先んじて対策を取っていかなければならないと認識している。

なお、記載事項のうち将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものである。

 

(1)主要なリスクを検討するプロセス

当社グループでは、事業遂行上のリスクを抽出・討議する経営管理プロセスを策定し、これに基づきリスクの一覧化に取り組んでいる。リスク抽出に当たっては、社外の知見も取り入れて当社グループに関連するリスクの網羅的なリストを作成し、これに基づき概ね10年以内に顕在化する可能性が懸念される具体的なリスクの洗出しを実施している。その上で、講じている対応策の効果も踏まえて当該リスクが顕在化した場合の影響度と蓋然性の検討を行い、当社グループの事業に重要な影響を与える可能性があり、かつ定量化可能なリスクを特定し、以下のようなリスクマップに整理している。これに加えて、定量化の難しい定性的なリスクについても上述のリスクの網羅的なリストに基づき特定している。

 

0102010_001.jpg

 

(2)当社グループにおけるリスクへの対応策

当社グループでは、各種リスクを適切に管理するため、リスクの類型に応じた管理体制を整備し、管理責任の明確化を図っている。また、リスクを定期的に評価・分析し、必要な回避策又は低減策を講じるとともに、内部監査によりその実効性と妥当性を監査し、定期的に取締役会及び監査等委員会に報告することとしている。加えて、重大リスクが顕在化した場合に備え、緊急時に迅速かつ的確な対応ができるよう速やかにトップへ情報を伝達する手段を確保し、また各事業部門に危機管理責任者を配置している。

また、当社グループでは、「事業リスクマネジメント憲章」により、リスクマネジメントの対象・要領等を明確化し、これを遵守・実践している。また、「事業リスクマネジメント委員会」において、トップマネジメントレベルでの重要リスク情報の共有や対応方針を協議することにより、体制の明確化と経営幹部・事業部門・コーポレート部門の役割の明確化を図っており、事業リスク総括部を責任部門として、経営幹部・事業部門・コーポレート部門の三者が一体となって事業リスクマネジメントに取り組んでいる。

なお、以下「(3)主要なリスク」の①から⑥までの各項目のア.において、各項目に関して当社グループがあらかじめ講じている具体的な対応策を例示しているが、当社グループは、これらに限らず、主要リスク以外のものも含め、各種リスクの類型や性質に応じて、リスクを回避・低減するための取組みを進めるとともに、①から⑥までの各項目の「イ.経営成績等の状況に与えうる影響」等のリスクが顕在化した場合の影響の最小化に努めている。

 

(3)主要なリスク

①事業環境の変化

ア.当社グループを取り巻く事業環境の悪化

当社グループを取り巻く事業環境は、非常に速いスピードで変化している。例えば世界経済に関しては、米中対立に加え、ロシアのウクライナへの侵略に伴う世界経済の分断の進展、国家安全保障強化の機運の高まり、デジタルデバイスやデータなどの分野における越境規制による覇権争いの先鋭化、資源価格をはじめとする諸物価の高騰、為替レートの急激な変動といった経済環境の変化が生じている。また、我が国においては、社会構造の変化として、人口減少・少子高齢化の一層の進展による人材不足の深刻化、廃業の増加、技術・技能の断絶、製造現場の空洞化等が懸念されている。さらには、全世界的に経済発展と環境負荷低減の両立が社会的な課題となっており、様々な分野で環境規制が強化されている。特にエネルギー分野では、新興国経済の発展や電気自動車の普及等をはじめとした電化の進展により、今後、世界の電力需要はますます伸びていく一方、燃料価格の高騰とともに地球温暖化を契機とした脱炭素化の一層の浸透など、当社グループの置かれている環境は、大きく変化している。

当社グループでは、これらの事業環境の変化に対応すべく、研究開発や設備投資を通じて、性能・信頼性・価格・環境対応等に関する製品競争力の維持・強化を図ることを前提としつつ、社外の知見も取り入れて市場の動きを先取りした新たな機能やソリューションの提案に注力している。また、2020年4月には成長推進室を設置し、既存の事業部門では対処しにくい新しい領域の事業開拓や既存事業の組合せを通じた製品・サービスの開発を進めている。また、事業環境を踏まえて各種製品分野で企図するM&A・アライアンスに関しては、入口での審議やモニタリングといった活動により、円滑なPMI*1の推進に向けた取組みを実践している。

*1 Post Merger Integration

イ.経営成績等の状況に与えうる影響

世界経済のデカップリングの進行に伴い、商談への参加、サプライヤー選定等の場面で当社グループの事業活動に制約が生じた場合や、為替レートの急激な変動、原材料価格の高騰、あるいは我が国における人材不足の深刻化や製造現場の空洞化等により当社グループの競争力の維持が困難又は低下することとなった場合には、当社グループの経営成績等の状況に重要な影響を与える可能性がある。環境規制に関しては、火力発電システムや自動車向けターボチャージャ、化学プラント関連のエンジニアリングなどの事業において、環境意識の高まりによって、製品・サービスの需要が減少し、事業規模が縮小する可能性や投下資本の回収が困難となる可能性がある。また、火力発電システム事業は、化石燃料由来の電力需要の激減、競合他社との競争激化やこれに伴う競合他社によるサービス商談獲得の影響も考えられ、これらにより受注が減少するおそれがある。環境規制の強化や燃料価格高騰といった事業環境の変化を踏まえ、顧客が自らの判断で火力発電プラントなどの営業運転を停止することとした場合には、これに伴うサービス事業の停滞等により、当社グループの経営成績等の状況に重要な影響を与える可能性がある。事業計画策定時の想定を超えて更に各種環境規制が厳格化され、これへの対応に課題が生じた場合には、市場競争力の低下や受注機会の逸失等により、当社グループの事業計画の推進に影響を与えるおそれがある。加えて、当社グループは、各種製品事業において、他社とのM&A・アライアンスを行っているが、市場環境の変化、事業競争力の低下、他社における経営戦略の見直し、その他予期せぬ事象を理由として、これらのM&A・アライアンス対象事業が目論見どおり進捗しない場合、資産の評価見直しによって減損損失等を計上する可能性があるなど、当社グループの経営成績等の状況に重要な影響を与える可能性がある。

 

②各種の災害

ア.自然災害や戦争・テロ等の発生

地震、津波、豪雨、洪水、暴風、噴火、火災、落雷、新型コロナウイルス感染症を含む感染症の世界的流行等の自然災害の発生、その発生頻度の上昇や被害の甚大化、戦争・テロ、政情不安、反日運動、人質・誘拐等の犯罪、社会インフラの麻痺、労働争議、停電、設備の老朽化・不具合等の人為的な要因によるものや労働災害等により、様々な物的・人的被害が生じ、円滑な経済活動が阻害され、さらには社会基盤が破壊されるといった事態が考えられる。なお、自然災害については、気候変動等に伴いその影響が甚大化することが想定される。

当社グループでは、これらの影響を低減するため、災害対策支援ツールの活用、連絡体制・事業継続計画(BCP)の策定・整備、勤務環境・制度の整備、工場の点検や設備の耐震化、各種訓練の定期的な実施に加え、適切な保険を付保するとともに、各国の情勢や安全に関する情報収集やこれを踏まえた各種対応、関連省庁との連携等を進めている。

 

イ.経営成績等の状況に与えうる影響

当社グループは、製品・サービスを提供するための拠点を世界各地に有しているが、特に日本やタイなどに生産拠点が集中しているため、これらの国・地域において、大規模な地震・津波・洪水といった災害が発生した場合、当社グループの生産能力に重要な影響を及ぼす可能性がある。具体的には、生産設備の滅失・毀損、サプライチェーンの停滞・混乱、生産に必要な材料・部品等の不足やサービスの提供停止、生産拠点の操業低下・稼働停止等のほか、代替となる生産設備や取引先の喪失、損害保険等で補填されない損害の発生等の可能性がある。また、感染症の世界的流行等が発生した場合には、既に受注した案件の進捗遅延・売上計上時期の遅れ、渡航制限やサプライチェーンの停滞、契約交渉や受注プロセスの遅延等が長期間にわたり発生し、その回復に一定の時間を要する可能性がある。これらの影響に伴う受注や売上の減少等により、当社グループの経営成績等の状況に重要な影響を与える可能性がある。

なお、ウクライナ情勢に起因するロシアへの経済制裁を受け、当社グループが遂行するロシア向け工事で中断等の影響が生じているものの、当連結会計年度において資産の評価等財政状態及び経営成績に与える影響は軽微であるが、今後の原材料価格の高騰やサプライチェーンの混乱等によって当社グループの経営成績等の状況に影響が生じる可能性は否定できない。

 

③製品・サービス関連の問題

ア.製品・サービスに関連する問題、コスト悪化等

当社グループは、ものづくりとエンジニアリングのグローバルリーダーとして、エナジー、プラント・インフラ、物流・冷熱・ドライブシステム、航空・防衛・宇宙の幅広い分野で高度な技術力を活かしてソリューションを提供している。当社グループは、製品の信頼性の向上に常に努力を重ねているが、製品自体又は製品に起因して各種の問題が生じる可能性がある。また、仕様変更や工程遅延等に起因するコスト悪化、材料・部品等の調達や工事に伴う予期しない問題の発生、納期遅延や性能未達等による顧客からの損害賠償請求や契約解除、顧客の財務状況の悪化等の問題が生じる可能性がある。サプライヤーとの間でも、製品・サービスなどに起因して、同様の問題が発生する可能性がある。また、特定の材料・部品のサプライヤーと取引不能となった場合に代替調達先の手配ができないことにより、生産活動や顧客への製品・サービスの提供等に影響が生じるおそれがある。

当社グループでは、これらのリスクに対して、各種規則の制定・運用、事業リスクマネジメント体制の整備・強化、個別案件の事前審議や受注後のモニタリング、プロジェクト遂行責任者や事業部長クラスへの教育の実施、製品安全に関する講座の継続的な開催等を行うとともに、過去に生じた大口赤字案件については、その原因や対策を総括するとともに、社内教育に反映するなど、再発防止に努めている。

イ.経営成績等の状況に与えうる影響

このような製品・サービス関連の問題発生等を理由として、追加費用の発生、顧客への損害賠償、社会的評価及び信用の失墜等に繋がる可能性がある。また、顧客・サプライヤーやその他第三者から国内外で訴訟・仲裁を提起されることがあり、当社グループは、これらに対応している。訴訟・仲裁においては、当社グループの主張が認められるように最大限の対応を取っているものの、当社グループにとって不利な判断が下される可能性は否定できない。また、当社グループが最終的に支払うべき賠償額等の負担が、各種の保険で必ずしも補填されるとは限らない。このように製品・サービス関連の問題は、当社グループの経営成績等の状況に重要な影響を与える可能性がある。

 

④知的財産関連の紛争

ア.当社グループの知的財産に対する侵害、当社グループによる第三者の知的財産に対する侵害等

当社グループは、研究開発の成果である知的財産を重要な経営資源の一つと位置付け、グローバルに活用している。しかしながら、当社グループに対して、第三者から知的財産を侵害していると主張されるような事態が生じる可能性がある。

当社グループでは、知的財産を特許権等により適切に保護し、また、第三者の知的財産を尊重し、当社グループによる侵害回避に努め、必要に応じて当該第三者から技術導入を行うなど適切な対応を取っている。具体的には、製品の基本計画・設計・製造の各段階で他者が保有する知的財産を十分に調査することによる知的財産関連の紛争の未然防止、教育・人材育成を通じた知的財産部門の専門性向上等の対策を進めている。

イ.経営成績等の状況に与えうる影響

当社グループの知的財産の利用に関して競合他社等から訴訟等を提起されて敗訴した場合、損害賠償責任を負うほか、特定の技術を利用することができなくなり、当社グループの経営成績等の状況に重要な影響を与える可能性がある。また、当社グループが事業遂行のために必要とする技術の権利を第三者が保有している場合に、当該第三者からの技術導入を受けられず、当社グループの事業遂行に支障をきたすおそれがある。

 

 

⑤サイバーセキュリティ上の問題

ア.情報セキュリティ問題の発生等

当社グループは、事業の遂行を通じて、顧客等の機密情報及び当社グループの技術・営業その他事業に関する機密情報を保有しており、業務上も情報技術への依存度は高まっている。これに対して日々高度化・悪質化しているサイバー攻撃等が現在の想定を上回るなどして、コンピュータウイルスへの感染や不正アクセスその他の不測の事態が生じた場合には、機密情報が滅失又は社外に漏洩する可能性がある。また、サイバー攻撃等の結果、端末やサーバなどの使用に障害が出る可能性がある。

当社グループでは、これらのリスクに対して、CTO*2直轄のサイバーセキュリティ推進体制を構築し、当社グループのサイバーセキュリティ統制(基準整備・対策実装・自己点検・内部監査)やインシデント対応等の対策を進めている。

*2 Chief Technology Officer

イ.経営成績等の状況に与えうる影響

情報漏洩が生じると、当社グループの競争力の大幅な低下、社会的評価及び信用の失墜等によって当社グループの事業遂行に重大な影響が生じうる。また、当局等による調査の対象となるほか、顧客等から損害賠償請求等を受ける可能性がある。加えて、サイバー攻撃等の結果、サーバなどの使用に障害が出た場合には、業務の遂行に大きな影響が生じ、その結果生産活動や顧客への製品・サービスの提供等に影響が生じるおそれがある。このようにサイバーセキュリティ上の問題は、当社グループの経営成績等の状況に重要な影響を与える可能性がある。

 

⑥法令等の違反

ア.重大な法令等の違反

当社グループは、国内外の様々な法令・規制(租税法規、環境法規、労働・安全衛生法規、独占禁止法・下請代金支払遅延等防止法・反ダンピング法等の経済法規、贈賄関連法規、貿易・為替法規、建設業法等の事業関連法規、金融商品取引所の上場規程等をいい、これらを総称して以下「法令等」という。)を遵守し、役員及び従業員にも遵守させなければならず、決してリスクとリターンをトレードしてはならない厳守事項として周知と対策を徹底している。具体的には、当社グループの全ての役員・従業員を対象とした「三菱重工グループ グローバル行動基準」や各種規則の制定・運用を行うとともに、コンプライアンス委員会の定期的な開催、内部通報体制の整備、法令遵守の徹底に関する経営層からのメッセージの発信、コンプライアンス・情報管理・ブランド戦略等の各種社内教育の充実と継続的な実施、各部門の課題を踏まえた内部監査等を行っている。しかし、一部の役員・従業員が法令等の違反を生じさせる可能性は完全には排除できない。

イ.経営成績等の状況に与えうる影響

万一法令等の違反が生じた場合、当局等による捜査・調査の対象となるほか、当局等から過料、更正、決定、課徴金納付、営業停止、輸出禁止等の行政処分若しくはその他の措置を受け、又は当局やその他の利害関係者から損害賠償を請求されるおそれがある。さらに、法令等の違反が生じた場合には、当社グループの事業遂行が困難となるなどの影響を受ける可能性があり、また、社会的評価及び信用の失墜等に繋がるおそれがある。特に当社グループの事業の性質に鑑み、国内外の独占禁止法、贈賄関連法規、貿易・為替法規、建設業法、下請代金支払遅延等防止法等の違反に関しては、当社グループへの影響は一層重大なものとなる可能性がある。このように法令等の違反は、当社グループの経営成績等の状況に重要な影響を与える可能性がある。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりである。次の記載事項のうち将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものである。

 

(1)財政状態の状況の概要及びこれに関する分析・検討内容

当連結会計年度における当社グループの資産は、「契約資産」及び「棚卸資産」の増加等により、前連結会計年度末から3,584億71百万円増加の5兆4,748億12百万円となった。

負債は、「社債、借入金及びその他の金融負債」及び「契約負債」の増加等により、前連結会計年度末から1,870億16百万円増加の3兆6,408億27百万円となった。

資本は、親会社の所有者に帰属する持分が増加したことなどにより、前連結会計年度末から1,714億55百万円増加の1兆8,339億84百万円となった。

以上により、当連結会計年度末の親会社所有者帰属持分比率は31.8%(前連結会計年度末の30.8%から+1.0ポイント)となった。

 

(2)経営成績の状況の概要及びこれに関する分析・検討内容

当連結会計年度における当社グループの受注高は、航空・防衛・宇宙セグメント及びプラント・インフラセグメントが減少したものの、エナジーセグメント及び物流・冷熱・ドライブシステムセグメントが増加し、前連結会計年度を4,335億81百万円(+10.7%)上回る4兆5,013億11百万円となった。

売上収益は、物流・冷熱・ドライブシステムセグメントをはじめ全てのセグメントで増加し、前連結会計年度を3,425億14百万円(+8.9%)上回る4兆2,027億97百万円となった。

事業利益は、エナジーセグメントが減少したものの、航空・防衛・宇宙セグメント、プラント・インフラセグメント及び物流・冷熱・ドライブシステムセグメントが増加し、前連結会計年度を330億83百万円(+20.6%)上回る1,933億24百万円となり、税引前利益も前連結会計年度を174億42百万円(+10.0%)上回る1,911億26百万円となった。

また、親会社の所有者に帰属する当期利益は、前連結会計年度を169億9百万円(+14.9%)上回る1,304億51百万円となった。

 

セグメントごとの経営成績は、次のとおりである。

ア.エナジー

グローバル市場が活況なGTCCや需要回復が続く航空機用エンジンが増加したことなどにより、受注高は、前連結会計年度を3,474億39百万円(+24.1%)上回る1兆7,917億97百万円となった。

売上収益は、GTCCや航空機用エンジンが増加したことなどにより、前連結会計年度を875億89百万円(+5.3%)上回る1兆7,386億76百万円となった。

事業利益は、航空機用エンジンやコンプレッサが増加したものの、スチームパワーが減少したことなどにより、前連結会計年度を11億8百万円(△1.3%)下回る851億60百万円となった。

 

イ.プラント・インフラ

機械システムが増加したものの、エンジニアリングが減少したことなどにより、受注高は、前連結会計年度を455億81百万円(△5.1%)下回る8,454億円となった。

売上収益は、製鉄機械や機械システムが増加したことなどにより、前連結会計年度を237億78百万円(+3.6%)上回る6,756億65百万円となった。

事業利益は、製鉄機械や商船が増加したことなどにより、前連結会計年度から91億50百万円(+38.8%)上回る327億51百万円となった。

 

 

ウ.物流・冷熱・ドライブシステム

世界的な需要拡大を背景として物流機器や冷熱製品が増加したことなどにより、受注高は、前連結会計年度を2,227億10百万円(+22.4%)上回る1兆2,150億16百万円となった。

売上収益は、物流機器や冷熱製品、エンジンが増加したことなどにより、前連結会計年度を2,172億42百万円(+22.0%)上回る1兆2,037億76百万円となった。

事業利益は、価格の適正化や全体的な増収に伴う利益の増加等により、前連結会計年度を82億62百万円(+26.9%)上回る389億45百万円となった。

 

エ.航空・防衛・宇宙

民間航空機が増加したものの、飛しょう体が減少したことなどにより、受注高は、前連結会計年度を705億54百万円(△9.1%)下回る7,036億94百万円となった。

売上収益は、民間航空機や防衛航空機が増加したことなどにより、前連結会計年度を141億49百万円(+2.3%)上回る6,194億42百万円となった。

事業利益は、民間航空機の増収に伴う利益の増加等により、前連結会計年度を159億49百万円(+66.4%)上回る399億81百万円となった。

なお、三菱スペースジェット事業に係る当連結会計年度及び前連結会計年度の各種財務数値は、セグメント区分を変更し「全社又は消去」へ組み替えている。

 

(3)キャッシュ・フローの状況の概要及びこれに関する分析・検討内容

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ334億6百万円増加し、3,476億63百万円となった。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は次のとおりである。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、808億88百万円の資金の増加となったが、前連結会計年度に比べ2,046億75百万円減少した。これは、収益獲得機会の拡大に伴う運転資金の増加や、「法人所得税の支払額」が増加したことなどによるものである。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、455億75百万円の資金の減少となり、前連結会計年度に比べ618億81百万円支出が増加した。これは、「投資(持分法で会計処理される投資を含む)の売却及び償還による収入」が減少したことなどによるものである。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、189億2百万円の資金の減少となったが、前連結会計年度に比べ2,368億71百万円支出が減少した。これは、短期借入金等の返済による支出が減少したこと及び「債権流動化等による収入」が増加したことなどによるものである。

 

(4)生産、受注及び販売の状況

① 生産の実績

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

金額(百万円)

前連結会計年度比(%)

エナジー

1,768,010

+6.2

プラント・インフラ

648,855

+3.2

物流・冷熱・ドライブシステム

1,215,848

+17.0

航空・防衛・宇宙

639,230

+6.2

全社又は消去

13,023

合計

4,284,968

+8.5

(注)1.上記金額は、大型製品については契約金額に工事進捗度を乗じた額、その他の製品については完成数量に販売金額を乗じた額を基に算出計上している。

2.セグメント間の取引については、各セグメントの金額から消去している。

3.「全社又は消去」の区分は、報告セグメントに含まれない生産高である。

4.上記金額には、消費税等は含まれていない。

 

② 受注の実績

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

受注高

(百万円)

前連結会計年度比

(%)

受注残高

(百万円)

前連結会計年度比

(%)

エナジー

1,791,797

+24.1

3,325,682

+6.8

プラント・インフラ

845,400

△5.1

1,509,232

+21.4

物流・冷熱・ドライブシステム

1,215,016

+22.4

54,815

+26.7

航空・防衛・宇宙

703,694

△9.1

1,171,848

+7.8

全社又は消去

△54,597

264

合計

4,501,311

+10.7

6,061,844

+10.4

(注)1.受注高については、「エナジー」、「プラント・インフラ」、「物流・冷熱・ドライブシステム」及び「航空・防衛・宇宙」にはセグメント間の取引を含んでおり、「全社又は消去」でセグメント間の取引を一括して消去している。また、「全社又は消去」の区分は、報告セグメントに含まれない受注高を含んでいる。

2.受注残高については、セグメント間の取引を各セグメントの金額から消去しており、「全社又は消去」の区分は、報告セグメントに含まれない受注残高である。

3.上記金額には、消費税等は含まれていない。

 

③ 販売の実績

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

金額(百万円)

前連結会計年度比(%)

エナジー

1,738,676

+5.3

プラント・インフラ

675,665

+3.6

物流・冷熱・ドライブシステム

1,203,776

+22.0

航空・防衛・宇宙

619,442

+2.3

全社又は消去

△34,762

合計

4,202,797

+8.9

(注)1.「エナジー」、「プラント・インフラ」、「物流・冷熱・ドライブシステム」及び「航空・防衛・宇宙」にはセグメント間の取引を含んでおり、「全社又は消去」でセグメント間の取引を一括して消去している。また、「全社又は消去」の区分は、報告セグメントに含まれない販売金額を含んでいる。

2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりである。なお、当連結会計年度における主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は100分の10未満であるため記載を省略している。

相手先

前連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

当連結会計年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

防衛省

391,057

10.1

3.上記金額には、消費税等は含まれていない。

 

(5)資本の財源及び資金の流動性に係る情報

ア.資金需要の主な内容

当社グループの資金需要は、営業活動については、生産活動に必要な運転資金(材料・外注費及び人件費等)、受注獲得のための引合費用等の販売費、製品競争力強化・ものづくり力強化及び新規事業立上げに資するための研究開発費が主な内容である。投資活動については、事業伸長・生産性向上及び新規事業立上げを目的とした設備投資並びに事業遂行に関連した投資有価証券の取得が主な内容である。

今後、成長分野を中心に必要な設備投資や研究開発投資、投資有価証券の取得等を継続していく予定である。

 

イ.有利子負債の内訳及び使途

2023年3月31日現在の有利子負債の内訳は下記のとおりである。

(単位:百万円)

 

 

合計

償還1年以内

償還1年超

短期借入金

61,933

61,933

長期借入金

406,468

61,740

344,728

社債

215,000

15,000

200,000

小計

683,402

138,674

544,728

ノンリコース借入金

59,019

856

58,163

合計

742,422

139,530

602,891

当社グループは比較的工期の長い工事案件が多く、生産設備も大型機械設備を多く所有していることもあり、一定水準の安定的な運転資金及び設備資金を確保しておく必要がある。当連結会計年度においては、当社グループは継続的に資金創出に努め、事業拡大局面においても運転資金を抑制しつつ、期限の到来した借入金を返済してきた結果、当連結会計年度末の有利子負債の構成は、償還期限が1年以内のものが1,395億30百万円、償還期限が1年を超えるものが6,028億91百万円となり、合計で7,424億22百万円となった。

これらの有利子負債により調達した資金は、事業活動に必要な運転資金、投資資金に使用しており、具体的には火力発電システムのほか、物流機器・冷熱製品を含む中量産品等の伸長分野及び「2021事業計画」で掲げている成長分野が中心である。

 

ウ.財務政策

当社グループは、運転資金、投資資金については、まず営業活動によるキャッシュ・フローで獲得した資金を投入し、不足分について有利子負債による調達を実施している。

長期借入金、社債等による長期資金の調達については、事業計画に基づく資金需要、金利動向等の調達環境、既存借入金の償還時期等を考慮の上、調達規模、調達手段を適宜判断して実施していくこととしている。

一方で、有利子負債を圧縮するため、キャッシュマネジメントシステムにより当社グループ内での余剰資金の有効活用を図っており、また、営業債権、棚卸資産の圧縮や固定資産の稼働率向上等を通じて資産効率の改善にも取り組んでいる。

自己株式については、事業計画の推進状況、当社の業績見通し、株価動向、財政状況及び金融市場環境等を総合的に勘案して取得を検討していくこととしている。

 

(6)経営方針・経営戦略及び経営指標等に照らした経営成績等の分析・検討

「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (1)経営方針・経営戦略等」に記載のとおり、当社グループは、中期経営計画「2021事業計画」において、「収益力の回復・強化」及び「成長領域の開拓」に優先的に取り組み、長期安定的に企業価値を向上させることを目指して事業を遂行している。

「2021事業計画」においては、2023年度末の目標として、「事業利益率7%」、「ROE12%」及び「有利子負債0.9兆円維持」を設定しているところ、当連結会計年度における各財務指標の実績は「事業利益率4.6%」、「ROE7.9%」及び「有利子負債7,424億円」となり、進捗としては、収益性は概ね想定どおり、財務健全性は想定以上の改善であった。

収益性については、昨年度に引き続き材料費・輸送費の高騰、半導体不足の影響を受けたものの、各種対策と収益力回復に向けた施策の実行及び円安影響により利益が増加し、前連結会計年度に対し事業利益率、ROEとも向上した。引き続き、価格の適正化や利益率改善などの施策を行い、2023年度末の目標達成を目指す。

財務健全性については、キャッシュ・フローは黒字を確保し、有利子負債残高は大幅に減少させた前連結会計年度規模を維持した。

 

(7)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、IFRSに準拠して作成されている。この連結財務諸表の作成に当たり、見積りが必要となる事項については、合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っている。

詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表」の注記「2.作成の基礎(5)見積り及び判断の利用」及び「3.重要な会計方針」に記載している。

 

なお、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (2)その他 ③ウクライナをめぐる国際情勢の影響」のとおり、ウクライナ情勢に起因するロシアへの経済制裁を受け、当社グループが遂行するロシア向け工事で中断等の影響が出ているが、当社は外部情報等を踏まえて、事業計画への影響の検討等を行い、資産の評価等の会計上の見積りを行っている。

 

5【経営上の重要な契約等】

当社は、2022年11月30日開催の取締役会において、連結子会社である三菱重工エンジニアリング㈱が営むエンジニアリング事業等を吸収分割の方法により承継する方針を決定し、2023年2月6日、同社との間で吸収分割契約を締結した。

本吸収分割の概要は以下のとおりである。

 

(1) 本吸収分割の目的

当社は、当社グループの成長エンジンであるエナジートランジションを一層加速するため、2023年4月1日付で、三菱重工エンジニアリング㈱のエンジニアリング事業等を吸収分割の方法により承継する。

 

(2) 本吸収分割の日程

2022年11月30日      吸収分割の基本方針に係る取締役会決議

2023年2月6日      吸収分割契約の締結

2023年4月1日      効力発生日

 

(注)本吸収分割は、当社においては会社法第796条第2項に定める簡易分割の要件を満たし、三菱重工エンジニアリング㈱においては会社法第784条第1項に定める略式分割の要件を満たすため、いずれも株主総会の承認を得ることなく行う。

 

(3) 本吸収分割の方法及び割当ての内容

当社を吸収分割承継会社とし、三菱重工エンジニアリング㈱を吸収分割会社とする吸収分割である。

同社は、当社の完全子会社であるため、株式、金銭その他の財産の割当ては行わない。

 

(4) 本吸収分割に係る割当ての内容の算定根拠等

該当事項なし。

 

(5) 承継会社が承継する権利義務

当社は、吸収分割契約において承継しないと定めるものを除き、吸収分割の効力発生日における三菱重工エンジニアリング㈱のエンジニアリング事業等の資産、契約その他の権利義務を承継する。

 

(6) 承継会社が承継する資産・負債の状況

当社が承継する資産の額は1,083億円、負債の額は524億円である。

 

(7) 本吸収分割後の承継会社の概要(2023年4月1日現在)

商号

三菱重工業株式会社

本店の所在地

東京都千代田区丸の内三丁目2番3号

代表者の氏名

取締役社長 泉澤 清次

資本金の額

2,656億円

純資産の額

未定

総資産の額

未定

事業の内容

船舶・海洋、原動機、機械・鉄構、航空・宇宙、汎用機・特殊車両、その他事業における設計、製造、販売、サービス及び据付等

 

 

6【研究開発活動】

当社グループ(当社及び連結子会社)は、各製品の競争力強化や今後の事業拡大に繋がる研究開発を推進している。

各セグメント等の主な研究開発の状況及び費用は次のとおりであり、当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は総額で127,448百万円である。なお、この中には受託研究等の費用52,158百万円が含まれている。

 

(1) エナジー

2050年までのカーボンニュートラル社会の実現、低コストでのエネルギーの安定供給といった多様化する社会課題を解決するべく、これまで培った技術を駆使して、革新的で付加価値の高い製品やサービスの開発に取り組んでいる。

当セグメントに係る研究開発費は40,890百万円であり、主な研究開発は次のとおりである。

・国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のプロジェクトへの参画によるCO2を排出しない水素ガスタービン、運搬や貯蔵に優れたアンモニアを燃料とするアンモニアガスタービンの開発

・水素製造から水素ガスタービンによる発電にわたる技術の一貫した実証、水電解装置に加えメタンガス熱分解等の次世代水素製造技術の開発

・グリーンイノベーション基金事業への参画によるアンモニア専焼バーナの開発、ボイラでのアンモニア高混焼の社会実装に係る開発

・持続可能な代替航空燃料のサプライチェーン構築に関する、NEDOプロジェクトへの参画による木質系バイオマスから液体燃料を合成するためのガス化技術商用化に向けた開発

・地震・津波・テロへの高い耐性を備え、革新技術の導入により世界最高水準の安全性を実現する革新型軽水炉と、将来における社会の多様化ニーズを見据えた高温ガス炉、高速炉、小型炉及びマイクロ炉の開発

 

(2) プラント・インフラ

市場・需要の多様化に対応した製品固有の研究開発を行うとともに、カーボンニュートラル社会の実現に向けた幅広い製品の開発に取り組んでいる。

当セグメントに係る研究開発費は9,940百万円であり、主な研究開発は次のとおりである。

・最適燃焼プロセス及び最適ストーカ構造により、ごみ焼却施設の高燃焼効率化及び長寿命化を実現する次世代ストーカ炉の開発

・幅広い産業分野へ適用可能な小型CO2回収装置を用いた遠隔監視・運転サービスの開発及びNEDOプロジェクトへの参画等による大気中のCO2を直接回収するDAC(Direct Air Capture)技術の開発

・AI技術でオペレータのスキルレス化と省力化を実現する新聞輪転機用自動運転機能の開発

 

(3) 物流・冷熱・ドライブシステム

量産技術の情報共有と製品共通技術の統一により製品間でのシナジーを創出し、省エネ・省人化・脱炭素化等市場のニーズに対応した付加価値の高い製品開発に取り組んでいる。

当セグメントに係る研究開発費は14,672百万円であり、主な研究開発は次のとおりである。

・低炭素・脱炭素社会に向けた、カーボンリサイクルを実現するバイオ燃料の既存エンジンへの適用検証と、水素混焼・専焼エンジンの開発・実証

・車両用動力源の脱炭素化に向けた燃料電池車の普及を見据え、燃料電池に高圧空気(酸素)を供給する小型で高効率な遠心式電動コンプレッサの開発

・EV(電気自動車)トラックからの電力供給に対応し、加温/冷却運転をヒートポンプで同時に実施することで複数温度製品の同時輸送が可能な電動式輸送冷凍ユニットの開発

・ΣSynXの技術の活用により、自動化・自律化しつつ人との協働をも実現し、物流シーンにおける労働力不足解消に貢献する物流機器の開発

 

(4) 航空・防衛・宇宙

日本のリーディングカンパニーとして、長年にわたり航空・防衛・宇宙開発で培った技術を駆使して、最先端の製品開発に取り組んでいる。

当セグメントに係る研究開発費は38,763百万円であり、主な研究開発は次のとおりである。

・軽量機体の普及による航空輸送のCO2削減に貢献する、次世代民間機への複合材構造の適用拡大を目指した軽量化・生産高レート化・複雑形状化技術の開発

・無人機及びAI技術を活用した監視システムの開発

・重要インフラの制御システム向け等のサイバーセキュリティ技術の開発

・衛星データをAI技術で解析して災害救助等に貢献する広域状況把握技術の開発

・低コストで高い信頼性を有する「H3ロケット」の開発

 

(5) その他・共通

当社グループ次期製品の市場競争力確保のために必要となるキー技術や、次期・次世代の製品開発に必要かつ複数製品の共通基盤となるプラットフォーム技術の開発に取り組んでいる。

「その他・共通」に係る研究開発費は23,181百万円であり、主な研究開発は次のとおりである。

・多種多様な排出源からCO2の貯留・輸送・利活用を行うCO2エコシステムの開発

・脱炭素に貢献するサステナブルなデータセンター向けの次世代冷却技術の開発

・AI物体検出器の学習画像枚数を削減する未検出・過検出傾向の見える化技術の開発