文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものです。
[会社の経営の基本方針]
当社グループは、カワサキグループ・ミッションステートメントにおいて、「世界の人々の豊かな生活と地球環境の未来に貢献する“Global Kawasaki”」をグループミッションとして掲げ、最先端の技術で新たな価値を創造し、顧客や社会の可能性を切り開く企業グループを目指しています。
また、「選択と集中」「質主量従」「リスクマネジメント」を指針とし、資本コストを上回る利益を安定的に創出するとともに、先端的な研究開発と革新的な設備投資を持続的に行い、将来に亘る企業価値の向上を図ること、すなわち「Kawasaki-ROIC経営」の推進を経営の基本方針に掲げ、収益性・安定性・成長性を重視した事業ポートフォリオの構築に取り組んでいきます。
[中長期的な会社の経営戦略・対処すべき課題]
当社グループは、昨年、持続的な成長と中長期的な価値向上を目指し2021年度を最終年度とする中期経営計画(以下、中計2019)を公表しました。中計2019の基本方針である「自律的事業経営と全社的企業統治」の両立を図るため、2020年4月から従来のビジネスユニットをディビジョンとして統合・再編するとともに、ディビジョン毎に業務執行責任者としてディビジョン長を配置しました。また、取締役会の監督機能の強化を目的に2020年6月25日開催の第197期定時株主総会において定款の変更が決議されたことにより、同日付をもって監査等委員会設置会社へ移行しています。
しかしながら、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、各事業を取り巻く環境が大きく変化していることから、今後の事業環境や市場環境を見据え、中計2019の最終年度である2021年度の数値目標については取り下げました。一方で、収益力向上、フリー・キャッシュ・フロー改善、バリューチェーンにも着目したビジネスモデルの転換、品質管理体制の強化、組織・風土改革等の中長期的な施策は着実に実行するとともに、市場回復局面における事業挽回の機会にも備えるため、ポストコロナ社会に必要とされる製品・技術・サービスの開発に経営資源をシフトしていきます。
[経営環境、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題]
新型コロナウイルス感染症拡大の影響による世界的な経済活動の停滞により、当社グループにおいても販売機会の減少、商談の延期、一部事業所における一時的な操業停止、サプライチェーンの混乱等、当社グループの事業活動に様々な影響が出ています。特に、旅客需要が急減している航空宇宙システム事業や、外出規制及び個人消費低迷の影響を受けるモーターサイクル&エンジン事業において大きな影響を受けると予測され、2021年3月期の連結業績は赤字となる可能性があります。
このような状況を踏まえ、経営資源の投入については案件を厳選するとともに、過剰在庫の回避、固定費削減、資産圧縮等の対応策を早急に進めていきます。また、金融市場の混乱等の不測の事態に備え、十分な資金調達を早めに行うなど手元流動性の確保に努めていきます。
[経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等]
経営上の目標達成状況を判断するための客観的な指標を、利益(営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益)及び資本効率を測る指標である投下資本利益率(ROIC = EBIT(税引前利益 + 支払利息) ÷ 投下資本(有利子負債 + 自己資本))としています。そして、最低限確保すべきハードルレートであるROIC8%を連結グループ全体で早期に上回るべく、カンパニー毎に利益率管理を徹底し、当社グループ全体の企業価値向上を図ることとしています。
これらの経営指標の改善の結果として自己資本利益率(ROE = 親会社株主に帰属する当期純利益 ÷ 自己資本)の向上も図っていきます。
[セグメント毎の戦略及び課題]
① 航空宇宙システム事業
P-1固定翼哨戒機・C-2輸送機の修理・部品供給を含めた量産の着実な推進及び派生型機への展開、ボーイング787分担製造品量産の着実な推進及び777Xの開発・量産立ち上げ、民間航空機用ジェットエンジンの新機種開発の推進
② エネルギー・環境プラント事業
コアハード強化とその組み合わせによる最適システム構築、分散型エネルギー供給システムの提案、CO2フリー社会に貢献するシステムの構築、海外パートナーシップ強化による新興国・資源国を中心とした海外事業の拡大
③ 精密機械・ロボット事業
油圧事業は、製造コストの大幅改善・品質力強化・将来差別化技術の開発推進、販売面ではショベル分野における高シェアの維持・拡大とショベル以外の建設機械/農業機械分野向け拡販。ロボット事業においては既存分野のシェアアップ、技能伝承システム「Successor」、手術支援ロボットなど新ロボットマーケットの開拓・拡大に向けた継続的な取り組み
④ 船舶海洋事業
液化水素運搬船建造に向けた基盤整備、ガス関連船建造におけるコスト競争力の強化、中国合弁会社との共同購買・分担建造など一体運営の更なる深化、次期新型潜水艦の受注に向けた研究開発体制の強化
⑤ 車両事業
品質管理の再構築、顧客ニーズに適合した技術・製品による競争力強化、コスト競争力の強化、アジア新興国における受注拡大、IoTを活用したメンテナンス事業及び軌道モニタリング事業参入等のストック型ビジネスの拡大、海外生産・海外調達及びパートナーシップの活用などグローバルな最適事業遂行体制の構築
⑥ モーターサイクル&エンジン事業
“Kawasaki”らしい魅力ある強いモデルの継続投入、顧客に訴求する高いブランド価値の実現、先進国市場での更なるプレゼンスの向上、新興国市場におけるコスト競争力の一層の強化、連結ベースのマネジメントの徹底的な効率化
当社グループでは、事業活動に与えるリスクを、中長期に亘り経営戦略に影響を及ぼすリスク、短期的な業績に影響を与えるリスク、大規模な受注・投資案件に関するリスクに分類し、リスクマネジメント体制の整備・拡充を図っています。有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資家の判断に影響を及ぼす可能性のある重要な事項は下記のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものです。
現在感染が拡大している新型コロナウイルスは、未だその収束時期を見通すことはおろか、現時点ではその影響も正確に把握することが困難です。このような状況の下、事業活動を継続するため、情報収集やサプライチェーンの維持等様々な施策を講じているところです。しかしながら、想定以上に新型コロナウイルス感染症の影響が長期化し、世界経済の更なる悪化を招く場合や、コロナ後の社会構造が一変し事業環境が大きく変化する場合等、当社グループの業績に大きな影響を及ぼすリスクがあります。かかる状況下ではありますが、市場回復局面における事業挽回の機会にも備えつつ、感染拡大防止等の社会課題の解決にも取り組んでいきます。なお、新型コロナウイルスの事業に与えるセグメント別の影響は、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績の状況 ② セグメント別業績の概要」を、具体的な対応策に関しては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」の[経営環境、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題]をご参照下さい。
当社グループの連結売上高に占める海外向け売上高は、航空宇宙システム事業やモーターサイクル&エンジン事業を中心に約60%あり、米ドル、ユーロ等の外貨建取引が多く存在します。為替変動による影響は費用より収益が大きくなっているため、急激な円高外貨安は当社グループの業績に大きな影響を及ぼすリスクがあります。海外調達・海外生産拡大により外貨建コストの比率を高める、顧客先との契約代価に占める円建契約の比率を高める等、為替変動リスクの軽減に努めるとともに、為替動向を考慮しながら、各事業の特性に応じて計画的に為替予約等のヘッジを行っています。
当社グループの連結売上高の約60%は、アフターサービスを含む個別受注生産品が占めています。これまでも個別プロジェクトリスク管理を徹底してきましたが、政治・経済情勢の変動等による資材費や労務費の高騰、設計変更や工程の混乱による費用増等、当初見積り以上にコストが膨らみ、当社グループの業績に大きな影響を及ぼすリスクがあります。
大規模プロジェクトにおいては、受注前のリスク検知が重要課題であると認識し、リスクの洗い出しを目的とした見識者による受注前審査の充実、初品要素の多い案件に係る技術リスクの重点確認等、事前のリスクチェック機能を強化してきました。 また、プロジェクトリスク管理委員会において、主要プロジェクトの進捗状況を定期的にモニタリングする等、履行中における変化点の管理強化等も進めてきました。今後は、従来の事前のリスクチェックに加え、これまでのプロジェクトの失敗事例などから得た教訓を活かし受注や投資における規律を整備するとともに、リスク総量の統制を図る等、プロジェクトリスク管理を強化していきます。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。これらは、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載の経営方針・経営戦略等を踏まえて分析しています。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
① 連結業績の概況
国内外経済とも、2019年度を通して米中貿易交渉及び英国・EU間の新たな貿易協定の交渉の行方が不透明な状況が続きました。これに加え、2019年末以降、新型コロナウイルスの感染が世界的に拡大し、多くの国で法的強制力を伴う各種措置が講じられた影響により、人・モノの輸送需要が減退しているほか、サプライチェーンの分断等により企業活動がグローバルレベルで大幅に停滞しており、今後の実体経済への悪影響が強く懸念されています。
このような経営環境の中で、当連結会計年度における当社グループの連結受注高は、航空宇宙システム事業、船舶海洋事業を中心に減少となりました。連結売上高については、モーターサイクル&エンジン事業、エネルギー・環境プラント事業などが減収となる一方で、航空宇宙システム事業、車両事業などが増収となったことにより、全体では前期比で増収となりました。利益面に関しては、営業利益は航空宇宙システム事業の増益や車両事業の改善はあったものの、モーターサイクル&エンジン事業、精密機械・ロボット事業などが減益となったことにより、全体で減益となりました。経常利益は、営業利益の減益があったものの、民間航空エンジンの運航上の問題に係る負担金の減少などにより、増益となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、経常利益の増益があったものの、新型コロナウイルス感染拡大の影響を踏まえて繰延税金資産の一部取り崩しを行ったことなどにより、減益となりました。
この結果、当社グループの連結受注高は前期比752億円減少の1兆5,135億円、連結売上高は前期比465億円増収の1兆6,413億円、営業利益は前期比19億円減益の620億円、経常利益は前期比25億円増益の404億円、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比87億円減益の186億円となりました。また、ROIC※は4.2%、ROEは4.0%となりました。
※ROIC = EBIT(税引前利益 + 支払利息) ÷ 投下資本(有利子負債 + 自己資本)
② セグメント別業績の概要
航空宇宙システム事業
航空宇宙システム事業を取り巻く経営環境は、防衛省向けについては厳しい防衛予算の中で一定程度の需要が存在しています。民間航空機については旅客数の増加に伴って機体・エンジンともに需要が増加していましたが、今後は、新型コロナウイルスの感染拡大により機体・エンジンともに需要の低下が見込まれています。
このような経営環境の中で、連結受注高は、民間航空エンジン分担製造品が増加したものの、防衛省向けや民間航空機向け分担製造品が減少したことにより、前期に比べ166億円減少の4,149億円となりました。
連結売上高は、防衛省向けや民間航空機向け分担製造品、民間航空エンジン分担製造品が増加したことなどにより、前期に比べ685億円増収の5,325億円となりました。
営業利益は、増収などにより、前期に比べ101億円増益の427億円となりました。
エネルギー・環境プラント事業
エネルギー・環境プラント事業を取り巻く経営環境は、国内ではごみ焼却プラント等において老朽化設備の更新需要が継続しているほか、中長期的には国内外の分散型電源需要、及び新興国におけるエネルギーインフラ整備需要は根強い状況にあります。一方で、新型コロナウイルスの感染拡大による経済活動の停滞や資源価格の不安定化などの影響により、顧客の短期的な設備投資判断が見直される可能性があるなど、今後の不透明感が増しています。
このような経営環境の中で、連結受注高は、国内向けごみ処理施設などの受注があったものの、国内向けLNGタンクや、国内向けコンバインドサイクル発電プラントをはじめとするエネルギー製品の大型案件を受注した前期に比べ111億円減少の2,523億円となりました。
連結売上高は、海外向け化学プラントの工事量増加はあったものの、エネルギー事業の減収などにより、前期に比べ100億円減収の2,429億円となりました。
営業利益は、減収があったものの、海外向け化学プラントでの採算改善などにより、前期に比べ59億円増益の175億円となりました。
精密機械・ロボット事業
精密機械・ロボット事業を取り巻く経営環境は、建設機械市場向けでは、国内顧客が令和元年台風第19号の影響で減産となったほか、インド・インドネシアといった新興国及び韓国市場での販売が低迷したものの、全体としては底堅く推移しました。今後は新型コロナウイルスの感染拡大による影響が不透明な状況にありますが、中国建機市場はいち早く回復に向かっており、今後の動向を注視しています。ロボット市場向けでは、中国市場は米中貿易摩擦による一時の厳しい状況から回復しつつあります。また新型コロナウイルスの感染拡大による影響が不透明な状況でありますが、半導体向けロボットについては、台湾、韓国の大手半導体メーカーの投資再開により回復に転じており、中長期的には需要は着実に拡大していくと見ています。
このような経営環境の中で、連結受注高は、各種ロボットの増加はあったものの、建設機械市場向け油圧機器の減少により、前期に比べ63億円減少の2,188億円となりました。
連結売上高は、建設機械市場向け油圧機器の減少により、前期に比べ47億円減収の2,173億円となりました。
営業利益は、減収に加え、油圧機器の研究開発費の増加や、中国でのロボット生産台数の減少などにより、前期に比べ91億円減益の122億円となりました。
船舶海洋事業
船舶海洋事業を取り巻く経営環境は、環境規制強化に伴うガス燃料推進船需要の顕在化並びにLNG開発プロジェクトの具体化が進む一方で、海運マーケットの長期低迷、韓国政府による造船業支援政策の継続などにより、依然として厳しい状況にあります。なお、新型コロナウイルスの感染拡大による直接的な影響については、現段階で既受注船の納期延長やキャンセルの申入れは受けていないものの、商談の遅れによる案件の成約時期の後ろ倒しが懸念されます。
このような経営環境の中で、連結受注高は、LPG運搬船の受注はあったものの、防衛省向け潜水艦を受注した前期に比べ249億円減少の562億円となりました。
連結売上高は、LNG運搬船及びLPG運搬船の工事量減少などにより、前期に比べ72億円減収の716億円となりました。
営業損益は、新造船の減収及び操業差損の発生などにより、前期に比べ17億円悪化して6億円の営業損失となりました。
車両事業
車両事業を取り巻く経営環境は、中長期的には、国内については老朽化車両の更新需要が安定的に存在しています。海外についても、米国では注力市場であるニューヨーク地区をはじめ新造・更新需要が見込まれており、またアジアでは日本政府によるインフラ輸出促進に伴って新興国向け案件の形成が計画されています。一方で、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、今後は国内外の車両案件の納入・受注計画の見直しが見込まれます。
このような経営環境の中で、連結受注高は、新幹線車両や国内向け地下鉄車両の受注などはあったものの、米国向け車両などを受注した前期に比べ103億円減少の1,257億円となりました。
連結売上高は、海外向け部品の減少はあったものの、国内向けや米国向け車両が増加したことなどにより、前期に比べ118億円増収の1,365億円となりました。
営業損益は、一部案件における新型コロナウイルス感染拡大の影響による翌期への期ずれやコスト変動はあったものの、増収に加え、前期に発生した米国向け案件での一時的費用の減少などにより、前期に比べ99億円改善して38億円の営業損失となりました。
モーターサイクル&エンジン事業
モーターサイクル&エンジン事業を取り巻く経営環境は、2020年3月初旬までは、二輪車では主に欧州において市場の緩やかな成長が持続する一方、一部新興国は市場が軟調に推移しました。四輪車、パーソナルウォータークラフトでは、主に北米において市場が安定して成長しましたが、汎用エンジン市場では天候不順や米中貿易摩擦の影響を受け一時的に成長が鈍化しました。2020年3月中旬より主要市場である欧米を始め世界各国で新型コロナウイルスの感染が急速に拡大して以降は、外出制限が行われ、販売代理店が営業停止となるなど、市場が大きく落ち込みました。
このような経営環境の中で、連結売上高は、新型コロナウイルス感染拡大の影響に加え、前期に比べ対ユーロを始めとして為替レートが円高で推移したことなどにより、前期に比べ190億円減収の3,377億円となりました。
営業損益は、減収に加え、タイバーツ高による製造コストの増加や四輪車のリコールの影響などにより、前期に比べ163億円悪化して19億円の営業損失となりました。
その他事業
連結売上高は、前期に比べ72億円増収の1,024億円となりました。
営業利益は、前期に比べ12億円減益の12億円となりました。
(資産)
流動資産は、受取手形及び売掛金の増加などにより前期末に比べ1,224億円増加し、1兆2,587億円となりました。
固定資産は、建設仮勘定の減少などにより前期末に比べ34億円減少し、6,990億円となりました。
この結果、総資産は前期末に比べ1,189億円増加の1兆9,578億円となりました。
(負債)
有利子負債は、前期末に比べ1,280億円増加の5,674億円となりました。
負債全体は、有利子負債の増加などにより前期末に比べ1,396億円増加の1兆4,862億円となりました。
(純資産)
純資産は、配当金の支払や退職給付に係る調整累計額の減少などにより、前期末に比べ206億円減少の4,715億円となりました。
当期末における現金及び現金同等物(以下「資金」)は前期比342億円増の1,025億円となりました。当期における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果支出した資金は、前期比1,252億円増の154億円(前期は1,097億円の収入)となりました。収入の主な内訳は、税金等調整前当期純利益393億円、減価償却費612億円であり、支出の主な内訳は、たな卸資産の増加による支出480億円、売上債権の増加による支出467億円です。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果支出した資金は、前期比159億円減の694億円となりました。これは主に、有形及び無形固定資産の取得によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果得られた資金は、前期比1,355億円増の1,158億円(前期は197億円の支出)となりました。これは主に、短期借入金の増加によるものです。
① 財務政策
当社グループの運転資金・投資向け資金等の必要資金については、主として営業キャッシュ・フローで獲得した資金を財源としていますが、必要に応じて、短期的な資金については銀行借入やコマーシャル・ペーパーなど、設備投資資金・投融資資金等の長期的な資金については、設備投資・事業投資計画に基づき、金融市場動向や固定資産とのバランス、既存借入金及び既発行債の償還時期などを総合的に勘案し、長期借入金や社債などによって調達しています。
当社グループは上述の多様な資金調達源に加え、複数の金融機関とのコミットメントライン契約を締結しており、事業活動に必要な資金の流動性を確保しています。また、当社と国内子会社間、また海外の一部地域の関係会社間ではキャッシュ・マネジメント・システムによる資金融通を行っており、グループ内の資金効率向上に努めています。
② 資金需要の主な内容
当社グループの資金需要は、営業活動に係る資金支出では生産活動に必要な運転資金(材料費、外注費、人件費等)、受注活動又は販売促進のための販売費、新規事業の立ち上げや製品競争力の強化のための研究開発費などがあります。投資活動に係る資金支出には、事業の遂行、新規立ち上げ、生産性向上のための設備や施設への投資などがあります。
当社グループは、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標を利益及びROIC(最低限確保すべきハードルレートはROIC8%)としています。
2019年度は、年初に営業利益720億円、経常利益610億円、ROIC6.7%として公表しましたが、米中貿易摩擦及び新型コロナウイルス感染症拡大の影響による売上減や民間航空エンジンの運航上の問題に係る負担金等により減益となり、コストダウン等で一部挽回したものの、営業利益620億円、経常利益404億円、ROIC4.2%と未達に終わりました。
2020年度は、新型コロナウイルス感染症拡大による世界的な経済活動の停滞により、当社においても多大な影響を受ける見込みです。現段階ではそれぞれの事業において合理的な業績予想の算出が困難であることから、2020年度の連結業績予想については公表を見送っています。
なお、前連結会計年度及び当連結会計年度の全社及びセグメントごとのROICは、次のとおりです。
(単位:%)
精密機械・ロボット事業及びモーターサイクル&エンジン事業においては、営業損益の悪化に伴いEBITが減少したことなどから、前期に比べそれぞれ11.0ポイント低下しました。一方で車両事業においては、営業損益の改善に伴いEBITが増加したことなどから、前期に比べ19.2ポイント上昇しました。
「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」をご参照下さい。
① 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注) 1 上記金額には、消費税等は含みません。
2 金額は、生産高(製造原価)によっています。
② 受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注) 1 上記金額には、消費税等は含みません。
2 精密機械・ロボット事業の受注高については、従来簡便的な方法で集計していましたが、当連結会計年度より、精緻な受注実績値を集計する方法へ変更しています。この変更に伴い、前連結会計年度の受注実績値についても再集計しています。
3 モーターサイクル&エンジン事業については、主として見込み生産を行っていることから、受注高について売上高と同額とし、受注残高を表示していません。
4 セグメント間の取引については、受注高及び受注残高から相殺消去しています。
③ 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注) 1 上記金額には、消費税等は含みません。
2 販売高は、外部顧客に対する売上高です。
3 主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成されています。その作成においては、連結貸借対照表上の資産、負債の計上額、及び連結損益計算書上の収益、費用の計上額に影響を与える見積り及び仮定を使用しています。当社グループの重要な会計方針のうち、見積り及び仮定の重要性が高いものは以下のとおりです。なお、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う会計上の見積りの一定の仮定については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 追加情報」及び「第5 経理の状況 2 財務諸表等 (1) 財務諸表 追加情報」に記載しています。
工事進行基準
当社グループは、基本的な仕様や作業内容を顧客の指図に基づいて行う工事契約のうち、期末までの進捗部分について成果の確実性が認められる工事の収益認識については、工事進行基準を適用しています。工事進行基準の適用にあたっては、工事収益総額、工事原価総額及び決算日における工事進捗度を見積り、これに応じて当期の工事収益及び工事原価を連結損益計算書に計上しています。工事収益総額には契約書等文書によって合意されている契約金額を、工事原価総額には個別プロジェクトに係る見積工事総原価を、工事進捗度には主に原価比例法を使用しています。当社グループは、工事進行基準の適用に係る見積りを合理的に行っていますが、経済情勢の変動による資材費や労務費の高騰、仕様変更に伴う工事代価の変更や工数の増加、為替レートの変動といった諸条件の変化により、工事収益及び工事原価の金額に影響を与える可能性があります。
受注工事損失引当金
当社グループは、期末における未引渡工事のうち、大幅な損失が発生すると見込まれ、かつ、期末時点で当該損失額を合理的に見積ることが可能な工事について、翌年度以降の損失見積額を受注工事損失引当金として計上しています。当該損失見積額は、期末時点の個別プロジェクトに係る見積総原価から工事請負代価を控除して算定しています。当社グループは、受注工事損失引当金の見積りを合理的に行っていますが、工事進行基準と同様に工事契約に関連する諸条件の変化により、受注工事損失引当金の金額に影響を与える可能性があります。
固定資産の減損
当社グループは、固定資産の帳簿価額について、それが回収できなくなる可能性を示す事象や状況の変化が生じた場合に、減損の要否を検討しています。当該固定資産については、資産又は資産グループの割引前将来キャッシュ・フローの総額と帳簿価額を比較することにより減損の要否の判定を行っています。この判定は、主として当社単体ではカンパニー単位、関係会社の場合には会社単位の将来キャッシュ・フローの見積りに基づいて行います。資産又は資産グループが減損していると判断した場合、帳簿価額が回収可能価額を超える部分について、減損損失を認識します。回収可能価額は、将来見積キャッシュ・フロー(純額)の割引現在価値等により算定しています。この手法は、将来見積キャッシュ・フロー、個別の事業リスクを反映して算出した加重平均資本コスト(割引率)、正味売却価額の算定に使用した時価や処分費用見込額など多くの見積りや仮定を使用します。当社グループは、固定資産の減損に係る見積りを合理的に行っていますが、経済情勢の変動等の諸条件の変化によって回収可能価額が減少し、固定資産の評価に影響を与える可能性があります。
繰延税金資産
当社グループは、繰延税金資産について、将来の一定期間における課税所得の発生やタックスプランニングに基づき、回収可能性を検討しています。これらの将来に係る見積りは、将来の経済情勢の変動その他の要因により影響を受けます。当社グループは、回収可能性の見積りを合理的に行っていますが、これらの将来に係る見積り及び税率変更等の諸条件の変化により、繰延税金資産の金額に影響を与える可能性があります。
(注) 2020年4月17日付の契約更新により、契約の終期が2030年4月16日まで延長されています。
(注) 南通中遠海運川崎船舶工程有限公司は、持分法適用関連会社です。
当連結会計年度は、「中計2019」の初年度として、掲げた開発目標の早期実現に向けて、事業部門と本社技術開発本部とが一体となって当社グループの持ち得る技術を結集し、技術のシナジーや最新の情報通信技術(ICT/IoT)、AI技術等も活用しながら、研究開発に取り組みました。
また、水素社会の実現に向けて策定された「水素・燃料電池戦略ロードマップ」(2019年3月改訂)を見据え、日本・豪州政府機関や関係各社とも連携して、水素の製造から輸送・貯蔵・利用までのサプライチェーンの早期構築に向けた取り組みにも注力しています。
当連結会計年度における研究開発費は
航空宇宙システム事業
航空宇宙事業では、次期航空機事業への展開を目指し、P-1固定翼哨戒機/C-2輸送機や回転翼機の近代化・派生型、及び宇宙ごみ(スペースデブリ)除去衛星をはじめとした宇宙機器システム等の研究開発を実施するとともに、それらの開発に不可欠な基盤技術の強化を図りました。また、ロボット事業とのシナジーを活かし、次世代民間航空機の生産効率を向上させる自動化・ロボット化技術の開発のほか、革新生産技術の開発やICT/IoTを活用したスマートファクトリー化への取り組みを進めています。
航空エンジン事業では、次世代民間エンジン国際共同開発プログラムへの参画に備え、圧縮機・燃焼器、及びギア関連技術や革新的な生産技術に関する研究開発に取り組んでいます。また、防衛エンジン事業分野においては、自社開発エンジンの実用化に向けた研究開発への取り組みを進めています。
当事業に係る研究開発費は
エネルギー・環境プラント事業
エネルギー分野では、ガスタービンの高効率化や、ガスエンジンの更なる効率・信頼性向上、低コスト化に向けた技術開発に加え、来るべき脱炭素社会に向けて水素ガスタービンの開発等に取り組んでいます。
プラント分野では、水素サプライチェーンの構築に向けて、産業用として初となる純国産独自開発の水素液化システムの開発や、液化水素貯蔵・揚荷基地の技術実証を推進しているほか、CO2分離回収システムの実用化開発を実施しています。また、生産年齢人口の減少、労働力人口の構成の変化に対応するため、ごみ焼却発電プラントでのAIやICT/IoTを活用した遠隔監視による状態把握やデータの活用による最適運用・運転支援技術の開発、ロボット分野とも連携した遠隔操縦型のグラインダーロボットシステム「Successor-G」での仕上げ状態の自動判定システムの開発等に取り組んでいます。
舶用推進分野では、環境規制強化に向けたガス燃料機関の開発・製品展開や推進機器の性能向上、ハイブリッド推進システム等の次世代技術・システムの開発に加え、これらの遠隔監視・診断システムの開発等にも取り組んでいます。
当事業に係る研究開発費は
精密機械・ロボット事業
精密機械事業においては、ショベル分野における圧倒的なシェア維持を目指し、油圧ポンプ・モータ、コントロール弁等の高性能化や、燃費と操作性の更なる向上を目指した新たな油圧システムの開発に取り組んでいます。また、ショベル以外の建設機械分野や農業機械分野への拡販を見据え、マーケットニーズに応じた小型軽量・高効率・高機能な油圧ポンプ・モータ、コントロール弁の開発並びにシリーズ展開を進めるとともに、水素関連事業として燃料電池車用高圧水素減圧弁等の開発に取り組んでいます。
ロボット分野では、遠隔協調で熟練技術者の動きを再現するロボットシステム「Successor」を、塗装や研削等へ適用範囲を拡大するための開発を推進しています。また、将来市場の大きな伸びが期待される医療・ヘルスケア分野への展開を目指した医療用ロボットや、堅牢な体と柔軟な環境対応能力を兼ね備えたヒューマノイドロボット、ロボットによる工場内物流工程の自動化ソリューション等の研究開発にも取り組んでいます。
当事業に係る研究開発費は
船舶海洋事業
コア・コンピタンスである低温・高圧ガス技術や環境負荷低減技術を強化するとともに、LNG/LPGと重油双方を燃料とする2元燃料エンジンを搭載した新船型LNG/LPG運搬船や、LNG/LPG燃料推進システム、LNG燃料供給船の開発に加えて、AUV※等の水中機器の開発、船舶運航管理支援システム「SOPass」の機能拡大に向けた開発に取り組んでいます。また、世界初となる液化水素運搬船が進水し、2020年度に実施される国際水素エネルギーサプライチェーン構築に向けた技術実証試験に向けて、開発プロジェクトを推進しています。
加えて、エネルギー・プラント分野との技術シナジーを活かし、自社製ガスタービンコンバインドサイクル/ガスエンジン発電設備を搭載した浮体式LNG発電プラントの開発にも取り組んでいます。
当事業に係る研究開発費は
(※ AUV: Autonomous Underwater Vehicle)
車両事業
アジアを中心とした成長市場での新車販売力強化と適正利益の確保を目指した次世代標準車両における低コスト化技術の開発や、次世代新幹線向け高速車両の開発、車両信頼性向上・安全対策・メンテナンス性向上等のための高機能装置の開発、自動化・ロボット化による合理的生産技術の開発等に取り組んでいます。また、ストック型ビジネスの拡大を目指して、各種センシングやICT/IoTを活用した車両・軌道の状態監視等による効率的なメンテナンスシステムの開発を推進しています。
当事業に係る研究開発費は
モーターサイクル&エンジン事業
Kawasakiのブランド力強化を目指して、スーパーネイキッドZシリーズの新たなフラグシップモデルである「ZH2」や、「エキサイティング&イージー」をコンセプトに幅広層が楽しめるモデルである「Z900」、更に、成長を続けるスポーツ用オフロード四輪車市場に、新たな楽しみ方としてトレイルアドベンチャーをコンセプトとする「TERYX KRX 1000」を追加する等の新機種開発を行いました。また、かつてない新しいライディング体験の提供を目指し、AIを活用したモーターサイクルの開発も継続推進しています。
当事業に係る研究開発費は
本社部門・その他
本社技術開発本部は、当社グループの更なる企業価値向上を目指し、事業部門と一体となって「新製品・新事業」の開発に取り組むとともに、世の中の急激な変化に伴うニーズへの対応や社会課題の解決に向けて、ビジネスモデルの変革等による新たな価値創出に結びつく技術開発にも積極的に挑戦し、将来に向けた基盤技術の育成・強化を進めています。
また、エンジニアリングチェーン、サプライチェーンの様々なフェーズでのICT/IoT技術の活用による製品ライフサイクル全体での収益力強化や、革新デジタル設計技術の活用等による設計力の強化に向け、技術開発本部と事業部門が協力して取り組んでいます。
更に、日本・豪州における各種液化水素インフラの開発・実証を着実に推進するとともに、商用化に向けた技術開発を積極的に推進しています。
これら本社部門に係る研究開発費は