文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものです。
[経営の基本方針]
当社グループは、カワサキグループ・ミッションステートメントにおいて、「世界の人々の豊かな生活と地球環境の未来に貢献する“Global Kawasaki”」をグループミッションとして掲げ、最先端の技術で新たな価値を創造し、顧客や社会の可能性を切り拓く企業グループを目指しています。
また、「選択と集中」「質主量従」「リスクマネジメント」を指針とし、資本コストを上回る利益を安定的に創出するとともに、社会課題に対するソリューションの提供を通じてSDGs達成に貢献すべく、経済的価値・社会的価値の2つの軸で企業価値を高める経営を推進していきます。
[中長期的な会社の経営戦略・対処すべき課題]
「グループビジョン2030」は今年で制定5年目となり、その実現に向けて各種施策を推進しています。既存事業の強化、事業間シナジー促進による将来の柱となる新事業育成、更に選択と集中を行って事業ポートフォリオの変革を実現し、持続的な成長を追求しています。
進捗状況の詳細は、当社Webサイト「グループビジョン2030進捗報告会」をご参照下さい。
https://www.khi.co.jp/groupvision2030/archive.html
《注力するフィールド》
新たな時代の社会課題を見据え、様々なソリューションをタイムリーに提供するために、以下の3つのフィールドに注力しています。地球環境問題や高齢化社会・労働力不足への対応等に加え、昨今では防衛・防災・資源・食料の観点から国家の安全保障に対する関心が高まっており、これらの重要課題に対しても当社のソリューションを最大限に活かす取組を加速しています。
取組の詳細は「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (4) 戦略並びに指標及び目標 ① 事業を通じて創出する社会・環境価値~3つの注力フィールド~」をご参照下さい。
「安全安心リモート社会」-安全安心の新しい価値を創出
医療・ヘルスケア、介護、ものづくり、産業インフラなど様々な分野で、当社グループが持つ遠隔操作・情報技術、ロボティクス技術等を用いて、リモート社会の実現によりすべての人々が社会参加できる新しい働き方・暮らし方を提案しています。また防衛・防災分野においても、様々なリモート技術を開発する等、安全かつ安心して暮らせる社会の実現に積極的に取り組んでいます。
「近未来モビリティ」-新しい輸送システムで人とモノの移動を変革
物流量の増加や少子高齢化に伴う労働力不足の中で、新しい輸送・移動手段を提案し、豊かでスマートかつシームレスな移動が可能な社会を創造します。
「エネルギー・環境ソリューション」-クリーンエネルギーの安定供給に向けて
世界ではエネルギー源として、液化天然ガス(LNG)に回帰する動きも見られますが、将来的にはカーボンニュートラルの実現に向けて水素の導入が進むと考えており、またエネルギー安全保障の観点からも、2030年以降の液化水素サプライチェーンの商用化に向けて、日本政府の協力を得ながら全社一丸となって取り組んでいます。
《成長シナリオ》
「グループビジョン2030」の成長シナリオに沿って、初期段階は精密機械・ロボットやパワースポーツ&エンジン等の量産系事業が収益を支えてきました。現在は航空宇宙システムやエネルギーソリューション&マリンの需要回復により、受注系事業が中長期的な稼ぎ頭として軸となり、車両事業も安定して黒字を出せる体質となった結果、昨年度は受注・売上・利益・配当、すべてにおいて過去最高を更新しました。グループビジョン2030の目標として掲げる事業利益率10%超の達成に向け、順調に伸長しています。
そして、新しい社会の創出に向けて、水素事業では政府の支援(Green Innovation基金)による液化水素サプライチェーンプロジェクトを皮切りにマーケットを順調に成長させ、医療・介護・ソーシャルロボット事業、近未来モビリティ等をはじめとする新規事業についてもマーケットの拡大と安定した成長軌道を描くことを目指します。そのためにも政府や自治体、他企業、研究機関との連携を進めるべく、2024年11月に東京-羽田にソーシャルイノベーション共創拠点「CO-CREATION PARK – KAWARUBA」を開設しました。約半年で2,000名超の来場者があり、多様なパートナーとともに、社会課題起点で新たなソリューション開発を進めています。
成長シナリオを支える仕組みとしては、デジタル・トランスフォーメーション(DX)と人財育成を重視しています。DXにおいてはAI活用等を推進し、業務プロセスの見える化・効率化により、新たなソリューションの創出と経営の意思決定のスピードアップ、更には“やりがい”“成長”を実感できる働き方を実現していきます。人財育成においては多様性を尊重し、従業員が個性と能力を発揮する環境整備に取り組み、挑戦し続ける人と組織の実現を目指します。
《コンプライアンス強化に向けて》
昨年、潜水艦修繕事業及び舶用エンジン事業における不正事案が相次いで判明しました。当社グループは、度重なるコンプライアンス違反が判明したことを深刻に受け止め、2024年4月16日に社長を委員長とするコンプライアンス特別推進委員会を立ち上げ、主体的に当社グループの組織風土・ガバナンスにおける課題に向き合い、再発防止策を検討してまいりました。改革の方向性として、「不正ができない仕組みの構築」「不正発見の強化」「組織風土・意識改革」の3つの柱を掲げ、川崎重工グループ一体となって改革に取り組んでいます。
取組の詳細は、第202期事業報告における内部統制システムの運用状況の概要をご参照下さい。
https://www.khi.co.jp/ir/pdf/kaiji_jikou_202.pdf
また、両事案ともに外部有識者からなる特別調査委員会を設置し、コンプライアンス特別推進委員会とも連携しつつ、中立性を担保した上で、事実関係の調査と原因分析、再発防止策の提言を目的とし、類似案件の洗い出し等も含めて、客観的かつ専門的観点から調査を実施しています。
当社グループは、この機会にすべての膿を出し切り、これまでの体制を見直すだけでなく、風土・文化を抜本的に変える覚悟を持ってコンプライアンス・ガバナンス体制を再構築し、再発防止策を徹底していきます。一部の社外取締役をコンプライアンス特別推進委員会のオブザーバーに配置するなどしてその取組を一層強化し、再び皆様からの信頼を得られるよう、全社一丸となって改革に全力で取り組んでまいります。
[経営環境、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題]
世界経済は、米国では堅調な雇用・所得環境を背景に底堅く推移しているものの、新たな関税政策による各国の景気減速や経済成長の鈍化への警戒感が強まっています。加えて、長期化する中国経済の停滞や米中関係の緊張といった地政学的リスクの懸念など、先行きは依然として不透明な状況です。
国内においては、好調な雇用・所得環境や設備投資の拡大、インバウンド需要の増加等、内需主導で緩やかな景気回復が見られるものの、米国関税政策及びそれに伴う産業構造の変化や金融資本市場の急激な変動など、先行きの不透明感が高まっています。
このような状況の下、当社グループは収益性の向上に向け、適正な販売価格の実現やコスト競争力の強化、サプライチェーンの多様化に継続的に取り組んでいきます。また、経営資源の投入については、案件の厳選に努めつつも、注力する3つのフィールドについては、スピード感をもって積極的な投資を実行するなど、メリハリのある意思決定を行っていきます。資金面に関しても、前述の収益性向上や投資選別のほか、適正在庫の実現、資産圧縮などの対応策を進めることで、キャッシュ・フロー創出力の強化及び有利子負債の削減に努めていきます。
[経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等]
経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標を、利益(事業利益、親会社の所有者に帰属する当期利益)及び税後ROIC※とし、グループ全体として事業利益率を2027年度までに8%、2030年度までに10%超、税後ROICは資本コスト(WACC)+3%以上を目標としています。
これらの経営指標の改善の結果として自己資本利益率(ROE = 親会社の所有者に帰属する当期利益 ÷ 自己資本の期首・期末平均)の向上も図っていきます。
※税後ROIC = (親会社の所有者に帰属する当期利益 + 支払利息 × (1 - 実効税率)) ÷ 投下資本(純有利子負債の期首・期末平均 + 自己資本の期首・期末平均)
[セグメントごとの戦略及び課題]
① 航空宇宙システム事業
・事業拡大に向けた体制整備:旺盛な需要に対応するサプライチェーン及び増産体制の再整備。新たな事業機会獲得に向け業務効率化・生産性の向上を推進。防衛航空機・ヘリコプタの既受注開発案件・量産契約の着実な推進。
・防衛事業に係る活動強化:防衛省が掲げる、防衛力強化に向けた7つの重視分野への取り組み推進。
・市場動向を踏まえた技術戦略の推進:防衛力強化の実現に向けた民生技術の活用を含む技術開発の促進。NEDOグリーンイノベーション基金活用による脱炭素社会に向けた環境技術開発の推進。
② 車両事業
・海外案件の納入スケジュール遵守:ダッカ6号線 2024年度 最終車両引き渡し完了、2025年度 基地設備引き渡し。米国R211 2024年度 最終車両の出車完了(Base契約)、量産車引き渡し開始(Option1契約)、2025年度 最終車両の引き渡し(Base契約)。
・顧客に信頼される品質レベルの達成:仕損じ、手直し費用の削減。国内外拠点でのKPS(Kawasaki Production System)による生産管理の維持。
・部品・サービスの拡販、保守分野の事業拡大:北米向け軌道遠隔監視装置の拡販とサービス提供プラットフォームの構築。国内鉄道事業者向け車両状態監視事業の推進。
③ エネルギーソリューション&マリン事業
・低炭素・脱炭素社会実現に向け貢献する製品の提供:LPG/アンモニア運搬船、高効率ガスタービン/ガスエンジン、ごみ処理施設(省エネ)、舶用ハイブリッド推進システム。
・脱炭素エネルギーへのトランジション製品の展開:液化水素運搬船、水素出荷・受入基地の商用化、舶用水素ボイラ・舶用水素エンジンの開発、低炭素(天然ガス炊き、水素混焼)から脱炭素(水素専焼)に対応できるガスタービン/ガスエンジンを活用した省エネシステムの導入推進、CO2分離回収技術の開発。
④ 精密機械・ロボット事業
油圧事業の発展に向けた施策
・建機向け新製品開発/市場開拓:電動化・自動化に向け、高い制御技術・開発力を活用し市場を開拓。
・アフターセールス事業の強化:過去の販売実績を活かしたアフターセールスの拡大と販売ネットワーク構築・拡大。
・水素関連事業/防衛事業の強化:水素圧縮機、燃料電池システムなどの開発や、当社グループ内向け防衛関連製品の拡充。
ロボット事業の戦略性のある挑戦
・高付加価値領域への集中投資:半導体市場の本格的回復に向けた供給体制整備、及び新分野への事業拡大。
・医療向け事業の強化:「hinotori™」の普及、及び遠隔操作技術等による差別化。
・ブランド力の強化:オープン戦略の推進と協業・共創の拡大、及びソーシャルロボット分野の事業化推進。
⑤ パワースポーツ&エンジン事業
・市場動向に応じた製品の供給:継続的な新機種の投入。機動的な生産・販売計画の変更により製品供給を確保。
・四輪ビジネスの拡大、脱炭素・電動化対応:製品競争力強化に向けた開発投資、外部環境の変化に柔軟に対応するため北米二工場(アメリカ、メキシコ)をフレキシブルに活用。電動・ハイブリッドモデル等あらゆる選択肢を通じてカーボンニュートラル社会の実現に貢献。
・DXを通じた業務改革の推進:デジタル化によるグローバルオペレーションの効率化。デジタル技術活用による開発期間の短縮と効率化。
・キャッシュ・フローの改善:収益力の強化、適正な在庫水準の維持。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1) 基本方針
当社グループでは、経営におけるサステナビリティの位置づけを明確にするため、「川崎重工グループサステナビリティ経営方針」を制定しています。「グループミッション」の達成に向けて、製品とサービスを通じて社会と環境のサステナビリティに貢献することを企業としての使命と捉え、将来にわたり世界が直面する様々な社会・環境課題に対して革新的な解決策をつくり出すことに挑戦します。また、責任ある企業行動と経営基盤の強化を通じて、持続可能な社会と当社グループの継続的な企業価値向上をともに実現することを目指します。
この方針の下、定期的に事業活動における重要課題(マテリアリティ)を見直し、事業環境とステークホルダーからの要請・期待を踏まえた経営を行うこととしています。2021年度に実施した見直しにおいては、「グループビジョン2030」における3つの注力フィールド「安全安心リモート社会」「近未来モビリティ」「エネルギー・環境ソリューション」を「事業を通じて創出する社会・環境価値」とし、直面する社会課題に対し当社グループが長期で取り組むべき最重要課題と位置づけました。また、「グループミッション」とSDGsとの親和性は極めて高いと考えており、最重要課題と位置づけた3つの注力フィールドそれぞれにおける施策の推進により、事業を通じてSDGsの達成に貢献していきます。
更に、水素事業などを通じて顧客に脱炭素化ソリューションを提供する企業として、バリューチェーンを含めた事業活動における脱炭素化の早期実現を目指すとともに、ビジネスと人権、人財活躍推進、コンプライアンス、技術開発・DXなどを「事業活動を支える基盤」の重要事項と位置づけ、取組を強化していきます。
《川崎重工グループサステナビリティ経営方針》
(2) ガバナンス
当社グループでは、取締役会をグループ全体のサステナビリティ基本方針と基本計画を審議・決定する最高意思決定機関と位置づけています。また、取締役会の監督の下、社長を委員長とする執行側の委員会としてサステナビリティ委員会を設置し、取締役会で定めた基本計画に基づく各種施策を決定し、その進捗状況を取締役会に報告する体制としています。人的資本に関しても、人財マネジメントに関する基本方針・計画の決定は取締役会が行うものとし、特に重要な事項については指名諮問委員会や報酬諮問委員会に意見を求めています。執行側の会議体として全社人財マネジメント委員会を組織し、重要事項を協議・検討するほか、定期的に関係部門を招集し、ディスカッションを行っています。
《取締役会におけるサステナビリティ、人的資本に関する審議テーマ》
取締役会では、各種グループ基本方針を制定し、基本的な考え方や具体的方針を明文化しています。また、「グループビジョン2030」策定以降は、サステナビリティ経営方針の実現に向け、これまで審議してきた環境経営基本計画などに加え、経営基盤強化のための人事制度改革やその運用、取締役のスキル・マトリックスや後継者育成計画、人財の多様性、エンゲージメントなど、人的資本に関する重要なテーマについても実効性の高い議論を行っています。サステナビリティ並びに人的資本に関連して、近年の取締役会で審議・報告されたテーマは下図のとおりです。

《サステナビリティに関するガバナンス体制》
サステナビリティに関する事項は、主に以下の項目についてサステナビリティ委員会で審議・報告を行っています。
1.社会・環境と当社グループ相互の持続可能性の実現、当社グループの企業価値向上に資する各種施策、及びその実行や達成状況に関する事項
2.当社グループの事業活動が社会・環境に及ぼす負の影響の把握とその低減・撲滅に向けた各種施策、及びその実行や達成状況に関する事項
サステナビリティ委員会はカンパニープレジデントや川崎車両㈱社長、カワサキモータース㈱社長、サステナビリティ担当役員、本社各本部長などの委員から構成されます。社外の知見及び意見を委員会の意思決定に反映させる観点から社外取締役も出席し、更に業務執行監査の観点から監査等委員も出席しています。サステナビリティ委員会は原則として年2回以上開催することとしており、2024年度は3回開催し、取締役会へ報告しています。また、サステナビリティに関する企画立案機能を強化し、経営戦略と一体化して推進していくため、企画本部でサステナビリティの統括を行っています。
サステナビリティ推進体制図

《人的資本に関するガバナンス体制》
経営に大きな影響を及ぼす全社的な人財の育成・活用の方針、特に①経営者の育成、②重点施策における人財の活用、③新事業・新製品への人財の投入、④各種人事施策の運用状況などについては全社人財マネジメント委員会で協議・検討しています。
全社人財マネジメント委員会は社長が議長となり、カンパニープレジデントや川崎車両㈱社長、カワサキモータース㈱社長を中心に招集し、年4回開催することとしています。人財マネジメント委員会で協議した内容を反映し、各種施策について経営会議で審議の上、取締役会に報告する体制としています。
また、各種人事施策の詳細立案・策定時の意見収集、全社方針の伝達を目的として本社人事本部がカンパニーの人事・勤労担当部門長を招集し、各種会議体を開催しています。
人財マネジメント体制図

(3) リスク管理
サステナビリティに関するリスクの識別・評価は、サステナビリティ委員会にて実施しており、事業環境とステークホルダーからの要請・期待の変化に対して、リスクと機会の両面から必要な対応について審議・報告を行っています。2024年度は主にサステナビリティ開示規制やESG評価への対応のほか、人権デューデリジェンスに関して議論しました。更に、定期的な重要課題(マテリアリティ)の見直しにおいても、各課題に関するリスク評価を行っています。これらの内容はその重要性に応じて取締役会に報告され、取締役会はサステナビリティ課題への対応状況を監督しています。
また、リスクマネジメント担当部門による全社的リスク管理においても、サステナビリティに関する事項、特にカーボンニュートラルや循環型社会を目指す地球環境に関する事項、新たな価値提供を担う人財と組織強化を目的とした人的資本の確保に関する事項等はリスクモニターの対象としています。これらのリスクについては、主管部門が継続的にリスク評価やモニタリングを行っており、その活動内容は少なくとも年に2回、取締役会に報告されています。2024年度は2回報告を行い、取締役会では対応の方向性を審議した上で、各リスクの対象となる部門へ必要なフィードバックを行っています。
全社的リスク管理に関しては、
《重要課題(マテリアリティ)》
当社グループでは、多様化するステークホルダーからの期待・要望と事業環境の変化を踏まえ、当社グループの企業活動が社会に与える影響を認識・整理し、2018年に重要課題(マテリアリティ)を特定しました。
更に2021年には、前年に発表した「グループビジョン2030」を受け、重要課題(マテリアリティ)の見直しを行いました。2018年と同様、重要課題(マテリアリティ)は「事業を通じて創出する社会・環境価値」と「事業活動を支える基盤」に大別し、事業を通じた取組を「当社グループが長期で達成すべき最重要課題」と定義し、その事業活動を支える課題を、最重要課題の達成に向けた「基盤項目」と位置づけています。今後も、事業環境や社会からの期待の変化に即し、定期的に重要課題(マテリアリティ)の見直しを行っていきます。
重要課題(マテリアリティ)の特定プロセスのほか、外部有識者のコメントやそれを受けた対応など、詳細は
抽出した重要課題(マテリアリティ)のマッピング

特定した重要課題(マテリアリティ)の主な事項に関する戦略並びに指標及び目標は以下のとおりです。
①事業を通じて創出する社会・環境価値~3つの注力フィールド~
3つの注力フィールドである「安全安心リモート社会」「近未来モビリティ」「エネルギー・環境ソリューション」は、「事業を通じて創出する社会・環境価値」として、直面する社会課題に対し当社グループが長期で取り組むべき最重要課題と位置づけたものです。詳細は、
a) 安全安心リモート社会
医療・ヘルスケア、介護、ものづくり、産業インフラ等様々な分野で、当社グループが持つ遠隔操作・情報技術、ロボティクス技術等を用いて、リモート社会の実現により、すべての人々が社会参加できる新しい働き方・暮らし方を提案しています。また防衛・防災分野においても、様々なリモート技術を開発する等、安全かつ安心して暮らせる社会の実現に積極的に取り組んでいます。
一例として医療・ヘルスケアの分野で、手術支援ロボット「hinotori™」の販売が国内外で進んでおり、また介護現場への機器導入を支援するサービス事業への参入やソーシャルロボットの開発等、課題に寄り添ったソリューション事業に取り組んでいます。更に、食料の分野で安全安心を目指した持続可能な水産養殖システムを開発し、トラウトサーモンの育成試験に成功しました。
・手術支援ロボット「hinotori™」
国内では厚生労働省の承認により適応対象診療科を拡大しているほか、2023年9月のシンガポールにおける販売承認取得を皮切りに、欧州医療機器規則(MDR)に基づくCEマーク認証取得に向けた申請を行うなど、グローバル展開を推進しています。2024年度末時点で国内外累計89施設へ導入、累計9,436症例と着実に実績を積んでいます。
・介護現場に対するソリューション事業
2024年度より、介護施設における介護テクノロジーの導入・活用・定着を促進することで、介護人材不足の社会課題を解決する“介護業務支援サービス”に参入しました。当事業年度は、4施設、6回、延べ300名、300時間以上の介護現場オペレーション計測を行い、様々な介護テクノロジーの改善効果及び投資効果を定量的に提示するサービスを提供しました。更に、厚生労働省、経済産業省、自治体等と連携し、その取組を地域のモデル施設へ展開する活動も推進しています。並行して、介護領域向けソーシャルロボットの社会実装の実現に向けた開発にも着手しており、介護施設の協力を得て認知症の方との会話などの実証試験を行っています。
・水産養殖システム
食料安全保障への貢献を目指した持続可能な水産養殖システムを開発し、2025年4月、事業化に向けたステップとして神戸港海域で実施していたトラウトサーモンの育成試験に成功しました。30㎥の生簀で従来の海面養殖に比べて約4倍にあたる60kg/㎥という、海面養殖としては国内最高レベル(当社調べ)の飼育密度を達成するとともに、高品質なトラウトサーモンの飼育を実現したことで、都市近郊での持続可能な海面養殖実現に向けた重要な成果と捉えています。
b) 近未来モビリティ
物流量の増加や少子高齢化に伴う労働力不足の中で、新しい輸送・移動手段を提案し、豊かでスマートかつシームレスな移動が可能な社会を創造します。
昨年度は無人ヘリコプター「K-RACER」が南海トラフ地震を想定した訓練に参加し、人を介さない「無人物資輸送」に成功しました。また、医療従事者の負担軽減及び業務効率化を目指す取組として、屋内配送用サービスロボット「FORRO」を用いた病院内の自動配送サービスを展開しています。更に、陸海空のモビリティを知り尽くした当社だからこそ提案できるコンセプトモデル、新感覚オフロードパーソナルモビリティ「CORLEO(コルレオ)」と、誰もが自由に快適に移動を楽しむことができる公共交通システム「ALICE SYSTEM(アリス システム)」を大阪・関西万博で展示しています。引き続き、心弾む新たなソリューションの提供にも挑戦し、人とモノの移動を変革していきます。
・無人ヘリコプター「K-RACER」
2023年12月に200kg(日本で開発された無人機では最大)の貨物搭載能力を確認した無人ヘリコプター「K-RACER-X2」は、2025年1月に南海トラフ地震の発生を想定した実動訓練に参加し、無操縦者航空機による物資の荷揚げから荷降ろしまでの一連のプロセスを人の手を介さずに行う「無人物資輸送」に成功しました。今後も各ステークホルダーとの連携を強化し、平時と災害時の両面で安全で新しい物流網を構築することで、激甚化する自然災害への対処能力の向上にも貢献していきます。
・屋内配送用サービスロボット「FORRO(フォーロ)」
藤田医科大学病院では、複数台のロボットとエレベータ・自動ドアを連携した24時間運用により、その効果や信頼性が確認され、2024年4月に正式導入されたほか、多くの病院で導入を視野に入れた実証試験を行っています。
c) エネルギー・環境ソリューション
世界ではエネルギー源として、液化天然ガス(LNG)に回帰する動きも見られますが、将来的にはカーボンニュートラルの実現に向けて水素の導入が進むと考えており、またエネルギー安全保障の観点からも、2030年以降の液化水素サプライチェーンの商用化に向けて、日本政府の協力を得ながら全社一丸となって取り組んでいます。
水素社会実現までの移行期間においては、天然ガスと親和性の高いブルー水素がグリーン水素の普及を支える形で水素導入が進む可能性が高まりつつあり、ブルー水素に必要不可欠なCO2分離・回収・貯蔵の技術等を当社が保有していることから、多くのビジネスチャンスがあると考えています。また、当社は天然ガスだけでなく水素も燃料として利用できるガスタービンやガスエンジンも保有しており、早期に水素社会を実現できるよう各取組を加速します。
・液化水素サプライチェーン構築に向けて
2024年6月、当社とダイムラー・トラック社は、欧州における道路貨物輸送の脱炭素化に向けて「ドイツ向け液化水素サプライチェーンの構築及び欧州における液化水素ステーションの輸送網の構築に向けた協力の覚書」を締結しました。今後、液化水素サプライチェーン構築の検討に加え、液化水素ターミナル、海上輸送、液体水素貯蔵についてもあわせて検討を進め、2030年代早期に欧州への液化水素サプライチェーンの確立を目指します。国内においては、2025年5月、川崎市扇島にて世界初の国際水素サプライチェーンの国内基地の建設に着工しました。出荷/受入両機能を含むこの国内基地と今後建造する液化水素運搬船を用いて、2030年度までに、上流から下流まで国際水素サプライチェーンとしての性能、安全性、耐久性、信頼性、経済性等の商用化に求められる要件を確認します。
・水素燃料の利活用に向けて
2025年4月、主にバス・トラックなどの燃料電池大型商用車向けの大規模水素ステーションに対応する「大容量モデルの油圧ブースター式水素圧縮機(水素供給能力600N㎥/h)の販売活動を開始しました。水素を大流量で迅速かつ、より多くの車両に充填できる大規模水素ステーションの実現のため、水素ステーション内で水素ガスを圧縮する役割を担う水素圧縮機の大容量化を図ります。また、当社播磨工場にて水素液化プラント向け遠心式水素圧縮機「KM Comp-H2」の実証設備建設に着手しました。本装置での実証を通して、液化プロセスを効率化し、水素の供給コスト低減を目指します。
・CO2分離・回収事業の推進
回収したCO2を地中に貯留することで実質的にネガティブエミッションが実現できることから、カーボンニュートラルの実現に向けて、大気中からCO2を直接回収するDAC(Direct Air Capture)への期待が高まっています。当社は長年の潜水艦技術で培ったCO2を回収する技術を応用したDACシステム供給に加え、各種エネルギー事業者と連携を図り、CO2を分離・回収・利用・貯留するCCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage)サービス事業の展開を目指しています。また、2024年7月には鹿島建設とともに、当社が保有する先進的DAC技術を鹿島らが開発したCO2吸収コンクリート「CO2-SUICOM®(シーオーツースイコム)」の製造に利用するための共同研究を開始しました。
②気候変動への対応
当社グループは、世界の平均気温上昇を産業革命前と比較して1.5℃に抑えるというパリ協定で掲げた目標の実現を目指し、「グループビジョン2030」の下、水素発電を軸とした自主的な取組に加え、省エネルギーの更なる進展、再生可能エネルギーの導入拡大及び廃棄物発電の拡充により、2030年に当社及び国内連結子会社においてカーボンニュートラルを目指します※。更に、当社グループの脱炭素ソリューションを社会や取引先、顧客にも広げ、世の中のカーボンニュートラルの早期実現に貢献していきます。そのために当社グループは高効率の発電設備、水素との混焼ガスタービンなど化石燃料からカーボンニュートラルへの移行(トランジション)に不可欠な製品やサービスを多く取り揃え、この分野でも大きく貢献していきます。
※昨今のエネルギー市場におけるLNGへの回帰傾向や主要パートナーの状況等を踏まえ、カーボンニュートラルの実現
時期について見直しを進めています。

また、激甚化する自然災害に対しては、リスク分析に基づき、事業継続計画(BCP)やサプライチェーンの強靭化などの対策を進めています。気候変動関連のリスクと機会及びそれらがもたらす事業・戦略・財務計画への影響については、2019年に賛同署名したTCFD提言のフレームワークに基づき、分析・評価を行っています。当社は、1.5℃、4℃のシナリオを採用し、「グループビジョン2030」の目指す姿である2030年時点における事業セグメントごとの影響評価と財務インパクト評価を実施していますが、2024年度はその一部見直しを行いました。また、当社グループの2032年度に向けた温室効果ガス削減目標について、国際的な気候変動イニシアティブであるSBTi(Science Based Targets initiative)※より認証を取得しました。
なお、シナリオ分析を含むTCFD提言に基づく情報開示は
※SBTi:CDP、国連グローバル・コンパクト、世界資源研究所(WRI)、世界自然保護基金(WWF)の4団体が共同で
2015年に設立し、科学的根拠に基づく目標設定のベストプラクティスを定義・推進し、企業の目標を独自に評価
する国際的イニシアティブ。
(注) 1.CO2排出量は2023年度実績(KPMGあずさサステナビリティ㈱による検証済)です。最新の情報は
2.Zero-Carbon Readyは、カテゴリー⑪の対応策に記載の取組を示す当社の造語です。
③多様な人財が個性と能力を最大限発揮する環境整備
社会が求める新たな価値を持続的に提供するために人財は最も重要な財産であり、「グループビジョン2030」においても、人的資本の充実は成長シナリオを支える重要な要素と位置づけています。この認識の下、当社グループは人的資本に関する基本方針に則り、多様な人財の獲得・育成、その個性と能力を発揮する環境整備、前向きに挑戦し続ける人と組織の実現に向けて、各種施策を展開しています。なお、各種施策の詳細やその他の取組については、各項目に記載したURLから当社Webサイトをご参照下さい。
《人財育成方針》
社内外の組織の枠・製品の枠を超えて新たな事業領域に挑戦し成果を出す人財を育成するとともに、組織を動機づけ成果を最大化させるための適切なマネジメントが必要と考えています。
そのため、2021年から、自ら高い目標を掲げ覚悟とスピード感をもってやり抜く人財を後押しし評価する「チャレンジ&コミットメント」をコンセプトとする人事制度をスタートさせ、年齢・性別・国籍等の属性に関わらず、期待役割と成果を実現し得る人財を社内外から獲得・配置するとともに、行動特性評価による適正配置や、部課長を対象とした研修を実施しマネジメント層の育成にも取り組んでいます。
また、持続的に事業変革をリードする経営者の育成強化が必要と考えており、経営者に求める素養の可視化、外部アセスメントの活用、社長・副社長による面談などを行い、後継者候補を選定しています。加えて、「Kawasaki経営実戦塾」「Kawasaki経営塾」「Kawasaki経営入門塾」などの経営者育成プログラムを幅広い層を対象に実施し、計画的な経営者育成に取り組んでいます。
《社内環境整備方針》
「グループビジョン2030」の達成と更にその先の飛躍に向けて「枠を超え成長し続けるオープンで自由闊達・創造的なチーム」であり続けるため、より多くの人財が働きがいと働きやすさを実感できる環境づくりが重要と考えてい
(注)1.エンゲージメントサーベイにおいて、「会社でスキルや経験を発揮できる機会があり、働きやすい環境であるかどうか(働きやすさ)」に関する複数の設問において、肯定的な回答をしている社員の割合。
2.同サーベイにおいて、「会社への貢献意欲・自発的に取り組む姿勢が醸成されているか(働きがい)」に関する複数の設問において、肯定的な回答をしている社員の割合。
《ダイバーシティの促進》
持続的な企業価値の向上を図っていくためには、国籍、性別、年齢、宗教の違いや障がいの有無などに関わらず、世界中で活躍する従業員一人ひとりが持つ能力や特性を存分に発揮でき、それを最大化する組織づくりが重要です。特に、育児・介護と仕事の両立支援を目的に、子どもが3歳に到達するまで取得できる「育児休業」、小学校卒業まで利用できる「短時間勤務制度」、最長3年間取得できる「介護休業」、育児・介護などで必要なときに時間単位で休暇を取れる制度など、国の基準を上回る取組をしています。これらのダイバーシティ推進の積極的な取組が評価され、女性活躍に優れた企業として「なでしこ銘柄」(2014年度)に選定され、「えるぼし」(2016年)や「くるみん」(2010年、2015年)の認定も取得しています。
今後も、新卒採用において事務系総合職の40%以上、技術系総合職の15%以上を目標として女性の積極採用を継続的に推進するとともに、人財育成や環境醸成等の各種施策により女性をはじめとする多様な人財の活躍推進を図ります。また、仕事と育児の両立に対する理解促進や働きやすい職場づくりの一助になると考え、男性育児休業取得率の向上に向けて取り組んでいます。セミナー等による意識改革や制度・環境の整備に加え、DXを活用した業務プロセス改革により育児休業を取得しやすい職場環境を実現し、早期の目標達成を目指します。
当事業年度の主な施策
● DE&I推進に向けた「意識改革プログラム」を人事本部主催で経営陣に対して実施
● LGBTやアンコンシャスバイアスなど「多様性について考えるセミナー」の開催
● 大学と連携した「女性エンジニア養成プログラム」でのワークショップや地元企業との「技術系女性交流会」「女性リーダー育成勉強会」などのイベントを開催
(https://www.khi.co.jp/sustainability/society/diversity.html)
《安全・衛生・健康》
当社グループは、従業員が心身ともに健康で安全に働ける環境を提供することを大切にしています。すべての従業員が安心して働けるように、安全・衛生・健康を保持するための労働災害対策・傷病休業対策・生活習慣の改善を推進し、休業災害の発生防止に重点をおいて、休業災害度数率の低減に向けた安全管理活動の改善に努めています。また、労働生産性に影響する生活習慣の6項目を点数化した当社独自指数の「健康スコア」を測定し、健康スコアが平均以下の従業員の6割以上が生活習慣を改善し達成する水準を目標に掲げ、生活習慣の改善に向けた施策に反映しています。休業災害度数率は、2022~2024年の3年平均は目標を達成したものの、2024年は前年より悪化する結果となりました。引き続き、下表の対応策の徹底・強化により改善を目指します。また、安全・健康における長期ビジョンの実現に向けて、安全な設備や作業環境への「安全投資」による災害の低減、従業員の心と身体に対する「健康投資」による労働損失の低減、労働生産性の向上を目指します。
(注)今期3年間(2022~2024年)の平均が、直近5年間(2017~2021年)の平均値比9%以上削減することを目標としています。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりです。これらのリスクは、経営会議等での審議等を経て抽出しており、取締役会において連結財務諸表での重要性、影響度、網羅性を確認した上で選定しています。また、当社グループでは、事業等のリスクを、将来の経営成績等に与える影響の程度や発生の蓋然性等に応じて、「特に重要なリスク」「その他の重要なリスク」に分類しています。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものです。
なお、リスクを把握し、管理する体制・枠組みについては、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等(1)コーポレート・ガバナンスの概要」をご参照下さい。
(特に重要なリスク)
(その他の重要なリスク)
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。これらは、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載の経営方針・経営戦略等を踏まえて分析しています。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
① 連結業績の概況
世界経済は、米国では堅調な雇用・所得環境を背景に底堅く推移しているものの、新たな関税政策による各国の景気減速や経済成長の鈍化への警戒感が強まっています。加えて、長期化する中国経済の停滞や米中関係の緊張といった地政学的リスクの懸念など、先行きは依然として不透明な状況です。
国内においては、好調な雇用・所得環境や設備投資の拡大、インバウンド需要の増加等、内需主導で緩やかな景気回復が見られるものの、米国関税政策及びそれに伴うサプライチェーンの変化や金融資本市場の急激な変動など、先行きの不透明感が高まっています 。
このような経営環境の中で、当連結会計年度における当社グループの連結受注高は、航空宇宙システム事業、車両事業、エネルギーソリューション&マリン事業などでの増加により、前期比で増加となりました。連結売上収益については、航空宇宙システム事業を中心とした各事業での増収により、前期比で増収となりました。利益面に関しては、事業利益は、航空宇宙システム事業、精密機械・ロボット事業での改善や、エネルギーソリューション&マリン事業での増益などにより、前期比で増益となりました。親会社の所有者に帰属する当期利益は、事業利益の増加などにより、前期比で増益となりました。
この結果、当社グループの連結受注高は前期比5,472億円増加の2兆6,307億円、連結売上収益は前期比2,800億円増収の2兆1,293億円、事業利益は前期比969億円増益の1,431億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は前期比626億円増益の880億円となりました。また、事業利益率は6.7%、税後ROIC※は8.0%、ROEは13.2%となりました。資本コスト(WACC)は7%台と算出しています。
なお、当社グループの潜水艦修繕職場における不適切事案及び舶用エンジンにおける検査不正については、社長を委員長とするコンプライアンス特別推進委員会、並びに外部有識者で構成するそれぞれの特別調査委員会を設置し、昨年12月及び本年1月にそれぞれの特別調査委員会より個々の事案における事実関係の調査や原因分析等に関する中間報告書を受領し、その内容を公表しました。特別調査委員会の調査は継続中です。引き続き、当社グループとして、コンプライアンス・ガバナンス体制の再構築や企業風土の改革に取り組んでまいります。
本件による業績への影響については、今後の調査結果を踏まえ、影響が見込まれる場合には速やかに業績見通しへ反映していきます。
※ 税後ROIC = (親会社の所有者に帰属する当期利益 + 支払利息 × (1 - 実効税率)) ÷ 投下資本
(純有利子負債の期首・期末平均 + 自己資本の期首・期末平均)
② セグメント別業績の概要
航空宇宙システム事業
抜本的な防衛力強化や航空旅客需要の回復による需要の増加が期待される中で、連結受注高は、防衛省向けや民間航空エンジン分担製造品などが増加したことにより、前期に比べ1,902億円増加の8,828億円となりました。
連結売上収益は、民間航空エンジンの運航上の問題に係る損失を計上した前期に比べ、防衛省向けや民間航空エンジン分担製造品などが増加したことにより、1,716億円増収の5,678億円となりました。
事業損益は、増収などにより、前期に比べ708億円改善して558億円の利益となりました。
車両事業
国内市場はインバウンドの復調等により鉄道車両への投資が再開されつつあり、海外市場は大都市の混雑緩和対策のための都市交通整備などに伴う需要が見込まれる中で、連結受注高は、ニューヨーク市交通局向け新型地下鉄電車のオプション契約を受注したことにより、前期に比べ1,627億円増加の2,515億円となりました。
連結売上収益は、国内・アジア向けが減少したものの、米国向けが増加したことなどにより、前期に比べ263億円増収の2,223億円となりました。
事業利益は、増収などにより、前期に比べ46億円増益の84億円となりました。
エネルギーソリューション&マリン事業
国内外の分散型電源需要やエネルギーインフラ整備需要は依然根強く、国内ごみ焼却設備の老朽化更新需要も継続しています。連結受注高は、LPG/アンモニア運搬船や防衛省向け潜水艦の受注増加などにより、前期に比べ1,403億円増加の5,420億円となりました。
連結売上収益は、国内向けごみ処理施設整備・運営事業の大口案件や防衛省向け艦艇用機器での増収などにより、前期に比べ448億円増収の3,981億円となりました。
事業利益は、増収や持分法による投資利益の増加などにより、前期に比べ123億円増益の442億円となりました。
精密機械・ロボット事業
半導体メモリ市場の価格と需要が底を打ち、中国建設機械市場は輸出を中心に回復傾向にある中で、連結受注高は、半導体製造装置向けロボットや中国建設機械市場向け油圧機器が増加したことなどにより、前期に比べ359億円増加の2,492億円となりました。
連結売上収益は、半導体製造装置向けロボットや精密機械分野での増収を主要因として、前期に比べ135億円増収の2,415億円となりました。
事業損益は、増収に加え、これまで進めてきた価格転嫁等の収益改善活動の効果などにより、前期に比べ89億円改善して70億円の利益となりました。
パワースポーツ&エンジン事業
米国政権による関税政策の影響が懸念されますが、連結売上収益は、リコールや生産遅延等の影響で北米向け四輪車が一時的に減少したものの、二輪車の増加と円安が収益を押し上げたことにより、169億円増収の6,093億円となりました。
事業利益は、増収はあったものの、増産投資による固定費の増加などにより、前期並みの478億円となりました。
その他事業
連結売上収益は、前期に比べ66億円増収の901億円となりました。
事業利益は、前期に比べ41億円増益の52億円となりました。
当社グループは「グループビジョン2030」において、注力するフィールドを「安全安心リモート社会」「近未来モビリティ」「エネルギー・環境ソリューション」とし、手術支援ロボットをはじめとする医療・ヘルスケア事業、配送ロボットや無人輸送ヘリコプタの事業化、カーボンニュートラル社会の早期実現に向けた水素事業、CO2分離・回収事業や電動化の推進など、社会課題ソリューション創出への取組を新たなソーシャルイノベーション共創拠点「CO-CREATION PARK – KAWARUBA」も活用しながら着実に進めています。
更に、地震や豪雨などにより甚大な被害を受けた被災地の復興支援に協力するとともに、今後可能性が高まる様々な自然災害へ対応できる支援パッケージの充実に努めています。
(資産)
流動資産は、営業債権及びその他の債権などの増加により前期末に比べ2,969億円増加し、2兆239億円となりました。
非流動資産は、有形固定資産の増加などにより前期末に比べ398億円増加し、9,930億円となりました。
この結果、総資産は前期末に比べ3,367億円増加の3兆169億円となりました。
(負債)
有利子負債は、前期末に比べ386億円増加の6,925億円となりました。
負債全体では、営業債務及びその他の債務や契約負債の増加などにより前期末に比べ2,662億円増加の2兆2,918億円となりました。
(資本)
資本は、親会社の所有者に帰属する当期利益の計上などにより、前期末に比べ705億円増加の7,250億円となりました。
当期末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は前期に比べ486億円増の1,327億円となりました。当期における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は、前期に比べ1,172億円増の1,489億円となりました。収入の主な内訳は、契約負債の増加額988億円、減価償却費及び償却費934億円であり、支出の主な内訳は、営業債権及びその他の債権の増加額961億円、棚卸資産の増加額692億円です。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果支出した資金は、前期に比べ213億円増の1,112億円となりました。これは主に有形固定資産の取得によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果獲得した資金は、前期に比べ33億円減の96億円となりました。これは主に債権流動化による収入によるものです。
① 財務政策
当社グループの運転資金・投資向け資金等の必要資金については、主として営業キャッシュ・フローで獲得した資金を財源としていますが、必要に応じて、短期的な資金については銀行借入やコマーシャル・ペーパーなど、設備投資資金・投融資資金等の長期的な資金については、設備投資・事業投資計画に基づき、金融市場動向や固定資産とのバランス、既存借入金及び既発行債の償還時期などを総合的に勘案し、長期借入金や社債などによって調達しています。
当社グループは上述の多様な資金調達源に加え、複数の金融機関とコミットメントライン契約を締結しており、事業活動に必要な資金の流動性を確保しています。また、当社と国内子会社間、また海外の一部地域の関係会社間ではキャッシュ・マネジメント・システムによる資金融通を行っており、グループ内の資金効率向上に努めています。
② 資金需要の主な内容
当社グループの資金需要は、営業活動に係る資金支出では生産活動に必要な運転資金(材料費、外注費、人件費等)、受注活動又は販売促進のための販売費、新規事業の立ち上げや製品競争力の強化のための研究開発費などがあります。投資活動に係る資金支出には、事業の遂行、新規立ち上げ、生産性向上のための設備や施設への投資などがあります。
当社グループは、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標を事業利益率及びROICとし、事業利益率については2027年度に8%、2030年度に10%超の水準、税後ROICについては資本コスト(WACC)+3%以上を確保すべく努めていきます。なお、現状のWACCは7%台と推計しています。
2024年度は、事業利益1,431億円、事業利益率6.7%、税後ROIC8.0%と航空宇宙システム事業、エネルギーソリューション&マリン事業における増益に加え、為替レートが計画の前提レートより円安で推移したことにより年初に公表した計画から上振れし、過去最高益を達成しました。
2025年度は、為替変動による減益を見込んでいるものの、エネルギーソリューション&マリン事業をはじめ利益率改善に向けた取組が進んでいることに加え、精密機械・ロボット事業の市況回復等により事業利益は1,450億円、事業利益率6.3%、税後ROIC6.9%を見込んでいます。収益性の向上及び有利子負債の圧縮に取り組み、掲げた見通しの超過達成に向けて取り組んでいきます。なお、米国関税政策による当社業績への影響については主にパワースポーツ&エンジン事業において生じる見込みであり、市場が軟調に推移するリスクを本見通しに一定程度反映しています。ただし、関税負担によるコストアップに関しては、政策が流動的である点を考慮し未反映です。
「グループビジョン2030」においては、まずパワースポーツ&エンジン事業をはじめとする量産系事業がコロナ禍から立ち上がり、航空宇宙システム事業をはじめとする受注系事業の業績が回復・拡大し、更に水素や医療ロボットといった新規事業が収益の柱となって安定的な成長軌道を描くことを目指しています。現状はまさに受注系事業が成長軌道に回帰した段階であり、掲げた成長シナリオに沿って進捗していると考えています。為替の変動や関税政策動向をはじめ、先行きへの不透明感はありますが、目標とする水準に向け、各セグメントにおける重点施策の着実な実行に加え、適正な販売価格の実現やコスト競争力の強化に継続的に取り組んでいきます。
また、2024年度のフリー・キャッシュ・フローに関しては377億円と3期ぶりの黒字となりました。引き続き収益性の向上及び運転資本の効率的な運用により安定的なキャッシュ・フローの獲得に努めていきます。
なお、前連結会計年度及び当連結会計年度の全社及びセグメントごとの事業利益率は、次のとおりです。
(単位:%)
航空宇宙システム事業においては、増収などにより、事業利益率は前期に比べ13.6ポイント上昇しました。また、エネルギーソリューション&マリン事業においては、増収や持分法による投資利益の増加などにより、前期に比べ2.0ポイント上昇しました。更に、精密機械・ロボット事業においては、増収に加え、これまで進めてきた価格転嫁等の収益改善活動の効果などにより、前期に比べ3.7ポイント上昇しました。
① 生産実績
当連結会計年度におけるセグメントごとの生産実績は、次のとおりです。
(注) 金額は、生産高(製造原価)によっています。
② 受注実績
当連結会計年度におけるセグメントごとの受注実績は、次のとおりです。
(注) 1 パワースポーツ&エンジン事業については、主として見込み生産を行っていることから、受注高について売上収益と同額とし、受注残高を表示していませんでしたが、当連結会計年度に個別受注案件を獲得したため、受注残高を表示しています。
2 セグメント間の取引については、受注高及び受注残高から相殺消去しています。
③ 販売実績
当連結会計年度におけるセグメントごとの販売実績は、次のとおりです。
(注) 1 販売高は、外部顧客に対する売上収益です。
2 主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合
当社グループの連結財務諸表は、IFRSに準拠して作成されています。その作成においては、連結財政状態計算書上の資産、負債の計上額、及び連結損益計算書上の収益、費用の計上額に影響を与える見積り及び仮定を使用しています。
詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 2.作成の基礎 (4) 重要な会計上の見積り及び判断の利用」及び「第5 経理の状況 2 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しています。
① 資本業務提携に関する契約
当社は、2024年11月8日開催の取締役会において、当社連結子会社のカワサキモータース株式会社(以下、カワサキモータース)が伊藤忠商事株式会社(以下、伊藤忠商事)に対して第三者割当を行い、発行済株式の20%を割り当てることを決議し、同日付で各当事会社間において資本業務提携に関する契約を締結しました。なお、当該契約に基づき、2025年4月1日付にて伊藤忠商事によるカワサキモータースの株式取得が実行されました。
② 資本業務提携の目的及び理由
当社グループにおいて2020年度に制定した「グループビジョン2030」の実現に向けた取組の一環として、カワサキモータースが売上高1兆円を目標に様々な経営施策を実行する中、伊藤忠商事と当社をあわせた3社は各社のリソースを活用した協業の可能性について協議を重ね、伊藤忠商事をパワースポーツ&エンジン事業の中長期的なパートナーとして、人材交流を積極的に進め、成長戦略の実現を共同で行っていくことを確認し、本業務提携の合意に至りました。
本業務提携により、主力市場である世界最大規模の北米市場において、ユーザー向けファイナンスを直接提供できる体制を整え、市場状況の変化に対する耐性を高め、販売基盤をより強固なものとすることで、カワサキモータースの成長戦略を更に加速、強化します。
③ 資本業務提携の内容
(ⅰ)業務提携の内容
a)ユーザー向けファイナンス事業を目的とした合弁会社の設立
本業務提携により、伊藤忠商事とカワサキモータースそれぞれの現地子会社が50%ずつを出資し、米国市場向けにユーザーへのローン供与を行うファイナンス事業を目的とした合弁会社を設立しました。
米国市場は、パワースポーツ商品の購入に当たり、長期の分割払いに対する顧客ニーズが高いことから、販売代理店及び顧客に対する迅速な審査プロセスや、競争力のあるファイナンスメニューを提供することが求められます。
そこで、魅力的な新規モデル導入と並行して、マーケットインの視点で本合弁会社による質の高い金融サービスの提供を行うことにより、カワサキモータースの製品・サービスの更なる拡販を推進し、米国でのバリューチェーンを延伸することで、カワサキモータースの売上の過半を占める米国市場において、顧客基盤の抜本的な強化を行い、競争優位性を確立します。
b)グローバル販売協力・物流効率化
あわせて、両社の人材交流や伊藤忠商事が有するグローバル拠点の活用により、パワースポーツ商品のグローバルな拡販を推進していきます。
伊藤忠商事が自動車ビジネスを通じて深い知見を持つCIS・中近東・アフリカ・中南米等の新興市場を筆頭に、カワサキモータースの市場開拓が進んでいない国について、更なる需要取り込みを企図しています。
また、同社グループの有する陸海送物流ネットワークを活用した物流の効率化を図ります。
(ⅱ)資本提携の内容
上記のとおり、広範な業務提携を行うに当たり、その効果を最大限に実現するべく、先述した合弁会社の設立に加え、カワサキモータースの株式の20%を伊藤忠商事が保有する資本提携を行いました。
2024年4月1日前に締結された金銭消費貸借契約については、「企業内容等の開示に関する内閣府令及び特定有価証券の内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」附則第3条第4項により記載を省略しています。2024年4月1日以降に締結された金銭消費貸借契約については、財務上の特約は付されていません。
当連結会計年度は、「グループビジョン2030」で描いた成長シナリオの着実な推進を見据え、各事業の足元の競争力強化や事業ポートフォリオの変革、更には「安全安心リモート社会」「近未来モビリティ」「エネルギー・環境ソリューション」の注力フィールドへのチャレンジに向けた研究開発に取り組みました。
これに向けて、各事業部門と本社各部門が一体となり当社グループの技術シナジーの最大化を図るほか、社外パートナーとも連携し、最新のデジタル技術も取り入れながら、将来にわたる顧客への提供価値を高めるべく研究開発を推進しました。また、将来のカーボンニュートラルに向けては、グリーンイノベーション基金などの政府支援も活用しながら、液化水素サプライチェーンの構築を目指した商用化実証など、水素社会の実現を目指した取組にも注力しています。
当連結会計年度における研究開発費は
航空宇宙システム事業
防衛航空事業では防衛省による抜本的な防衛力強化の方針を受け、固定翼機や回転翼機の近代化・派生型事業や次期練習機に向けた研究開発、新SSM等のスタンドオフ防衛能力向上に向けた研究開発、先進的なAI技術を活用した無人化・自律化システムの研究開発、VR等のデジタル技術を活用した教育訓練システムの研究開発に重点的に取り組んでいます。民間航空機事業ではロボットを活用した生産技術、宇宙事業では有人・探査分野や小型衛星の研究開発を推進しています。また基盤技術として、デジタル技術を用いた航空機設計・製造プロセス高度化にも取り組んでいます。
航空エンジン事業では、自社開発エンジンの防衛事業への展開実績を足掛かりとして、小型・軽量・高出力なエンジン(KJ300シリーズ)の実用化に向けた研究開発を推進しています。また、堅調な成長が見込まれる民間航空エンジン整備事業に必要な各種研究開発、更に航空エンジンの高効率化・環境性能向上に貢献する圧縮機・燃焼器・ギアシステム技術や革新的な生産技術に関する研究開発についても取り組んでいます。
加えて、小型航空エンジンの水素100%燃料による運転試験の実施など水素航空機のエンジン/燃焼システム技術や燃料タンクに関する研究開発にグリーンイノベーション基金も活用しながら取り組んでいます。
当事業に係る研究開発費は
車両事業
鉄道保守関連ビジネスの拡大を目指して、各種センシング・デジタル技術を活用した車両・軌道の状態監視や診断による効率的なメンテナンスシステムの開発と実証を推進しています。また、鉄道事業者の課題解決ニーズに応えるメンテナンス性向上、自動化・ロボット化による合理的生産技術等の開発に取り組んでいます。更に、非電化鉄道でのカーボンニュートラルを目指し水素を動力源とする車両システムの開発と実証に取り組んでいます。
当事業に係る研究開発費は
エネルギーソリューション&マリン事業
エネルギー事業では、エネルギートランジションへの対応に向けガスタービンやガスエンジンの水素混焼・専燃対応のための技術開発や、エネルギー分野で培ってきた圧縮機に関する豊富な実績・知見を活用した大型遠心式水素圧縮機の開発にも取り組んでいます。更に、カーボンニュートラルの実現に向けたCO2分離回収システムの実用化開発などの研究開発に取り組んでいます。
プラント事業では、地上用大型液化水素タンクなど液化水素の出荷/受入基地向け機器の研究開発や、循環型社会の実現に向けた廃リチウムイオン電池リサイクルシステム、AI技術を活用した資源選別支援システム、ごみ処理施設の自動運転システムなどの研究開発に取り組んでいます。
舶用推進・船舶海洋事業では、液化水素運搬船の輸送効率向上のための船型や新形式タンク・燃料供給システムなどの研究開発や、大型化する船舶の更なる安全管理と人手不足が進む乗組員の負担軽減を目指した安全離着岸支援システムなどの開発に取り組んでいます。
当事業に係る研究開発費は
精密機械・ロボット事業
精密機械事業では、ショベル分野において製品競争力の強化に加え、カーボンニュートラルや省人化などESGの視点から、電動化に向けた高速電動油圧ポンプユニット「K-Axle™」や、自動化/自律化に向けた将来建機油圧制御システムの開発に取り組んでいます。このほか、ショベル以外の建設機械分野や農業機械分野、一般産業機械分野への拡販に向けた油圧機器の開発・シリーズ展開も進めています。また、水素関連事業として産業車両/商用車を含む燃料電池車用高圧水素ガス弁や建設機械を含むモビリティ向け燃料電池システム、水素ステーション用油圧ブースター式水素圧縮機等の開発に取り組んでいます。
ロボット事業では、産業用ロボット分野において半導体製造用ロボットや物流業界向けロボットなど人手不足への対応等の社会的ニーズが特に高まっている製品の開発に取り組んでいます。また、これまで産業用ロボット分野で培った技術を活用し医療分野で医療従事者や患者の負担を軽減する「hinotori™」サージカルロボットシステムや、労働力不足や生活の様々な課題などに幅広く社会適用が可能なソーシャルロボットの開発を推進しています。更に、インテグレーションを効率化しロボットの社会実装を加速させるロボットデジタルプラットフォーム「ROBO CROSS」の構築に他社とも連携しながら取り組んでいます。
当事業に係る研究開発費は
パワースポーツ&エンジン事業
Kawasakiのブランド力強化を目指して、二輪事業では、伝統のブランドの血統を受け継ぐレトロスポーツモデル「W230」・「MEGURO S1」を、四輪事業では、コミュニティ内をより便利にクリーンに移動できるカワサキ初の電動四輪車となるパーソナルトランスポートビークル「NAV」シリーズや、毎日の仕事から休日のレジャーまで快適にこなせる汎用性と、上質なデザインを備えたオフロード四輪「RIDGE」シリーズに4〜6人乗り2列シートの新モデル「RIDGE CREW」を追加する等の新機種開発を行いました。また、継続的な新機種の投入に向けてデジタル技術の活用による開発期間の短縮と効率化を推進しています。更に、EVやHEVにとどまらず、水素エンジンなどの内燃機関エンジンを含めカーボンニュートラル社会の実現に向けた多様な選択肢に挑戦しています。加えて、2030年以降の更なる成長を見据え、パワースポーツ向けエンジンのノウハウを活かした航空機用レシプロエンジンの開発にも取り組んでいます。
当事業に係る研究開発費は
本社部門・その他
社長直轄プロジェクト本部では、激甚化する自然災害や医療・介護・物流・製造現場等の労働力不足などの社会課題に対して、無人ヘリコプター「K-RACER」や配送ロボット、ソーシャルロボットなどを活用したソリューションの開発を進め早期の社会実装を目指しています。
技術開発本部では、当社グループの更なる企業価値向上を目指し事業部門と一体となって「新製品・新事業」の開発に取り組んでいます。また、「グループビジョン2030」で掲げた注力フィールドを中心に将来の社会課題解決の実現に必要な技術開発にも積極的に挑戦するとともに、持続的な事業成長の源泉となる基盤技術開発や食料安全保障など新たな分野へのチャレンジに向けたイノベーション活動にも取り組んでいます。更に、TQM活動をベースにバリューチェーン全体のプロセス標準化を通して製品品質の向上や足元の収益向上にも取り組んでいます。加えて、DX戦略本部と連携してAI活用やデジタルプラットフォームの構築によるデータ活用を通じたビジネスモデルの変革や事業プロセス全体の生産性向上を推進するほか、全社の技術系人財の育成強化にも取り組んでいます。
水素戦略本部では、商用水素サプライチェーンの実現に向け世界初の液化水素運搬船による海上輸送・荷役等の各種試験を通じて得た知見を活用し、水素供給コストの低減に向けた水素関連製品の大型化や高効率化、更にはそれらの高効率生産のための技術開発などを実施し、水素エネルギーの着実な社会実装を推進しています。
これら本社部門に係る研究開発費は