(1)会社の経営の基本方針
当社グループは,社会とともに発展するよき企業市民であることを第一義とし「技術をもって社会の発展に貢献する」,「人材こそが最大かつ唯一の財産である」との経営理念のもと,21世紀の環境,エネルギー,産業・社会基盤における諸問題を,「ものづくり技術」を中核とするエンジニアリング力によって解決し,地球と人類に豊かさと安全・安心を提供するグローバルな企業グループを目指しています。
この基本方針を実現するため,当社グループ社員には,「グローバル」,「ものづくり技術・エンジニアリング力」,「世界に通用する業務品質」の観点から卓越した能力を持つプロフェッショナル集団となることを求めています。また,製品・サービスの高度化による社会の発展への貢献を通じて収益性を高め,資本市場から求められる資本効率や株主還元を実現し,持続的な企業価値の創造を図ることで,信頼される企業グループを目指しています。
(2)経営環境及び対処すべき課題等
2019年度を初年度とする3ヵ年の中期経営計画「グループ経営方針2019」を新たに策定し,2019年5月に公表いたしました。
①「グループ経営方針2016」の振り返り
「グループ経営方針2016」では,「収益基盤の強化」をテーマに掲げ,「新たなポートフォリオマネジメントによる集中と選択」,「プロジェクト遂行体制の強化による収益力向上」,「グループ共通機能の活用によるビジネスモデル変革」の3つの取り組みを推進しました。
「グループ経営方針2016」の経営目標は,想定以上の市況の悪化,特定工事の下振れの継続,為替変動等により,経営目標(営業利益率7%,ROIC10%,D/Eレシオ0.7倍以下)が未達となったものの,徹底したリスクマネジメントや,事業領域制を導入して取り組んだ集中と選択による高収益事業・注力事業へのタイムリーなリソース配分等により,収益基盤の整備が着実に進展しました。
②取り巻く社会環境の変化
一方,当社グループを取り巻く環境は急激に変化しています。IoT/ICTやAIなどの飛躍的な技術革新とデジタル化の普及が,世の中の変化を加速させる原動力となる一方で,地球規模の気候変動・大規模災害・世界人口の増加・資源の枯渇化等の環境問題をはじめとした社会課題が増大しています。深刻さを増す社会課題に対して,パリ協定の発効や国連サミットにおける“持続可能な開発目標(SDGs)”の採択など,長期的な展望で持続可能な社会の未来像が共有されるようになり,その実現に向けた取り組みが社会全体で加速しています。
③「グループ経営方針2019」長期視点の“目指す姿”
このような環境変化及び社会課題に対し当社グループは,将来の持続可能な社会の実現に貢献すべく,これまでのハードウェア供給を中心とした事業や製品の在り方から,社会とお客さまの課題に真正面から取り組み,新たな価値を創造する方向へ大きく変革していくことを長期視点で目指す必要があります。
この“目指す姿”を実現するため,当社グループはこれまで取り組んできた「グループ経営方針2016」の3つの取り組みを更に進化・発展させ,お客さまの課題解決及び価値向上に寄与する取り組みを加速していきます。この取り組みこそが,お客さまと共に当社グループが目指す社会貢献につながり,かつ当社グループの企業価値を高め,社会・お客さま・当社グループが共に持続的な成長を遂げるものに資すると確信しています。
④「グループ経営方針2019」3ヵ年の取り組み
長期で目指す姿の実現に向け,「グループ経営方針2019」のテーマを,『社会とお客さまの課題に真正面から取り組む / 事業変革の本格化』と定義します。
「グループ経営方針2019」の3ヵ年は,「グループ経営方針2016」にて整備された収益基盤を土台として,環境変化や社会の要請に応じて事業の中身の組み替えを柔軟かつ的確に進め,社会とお客さまにとっての新たな価値を創造し,自らの価値も高める企業への変革を本格的に加速する3ヵ年と位置付け,以下3つの柱を中心とした変革に取り組みます。
・お客さまと共にライフサイクル視点でアフターマーケット事業展開を加速
事業活動のライフサイクル全体を視野に,当社グループがハードウェア供給で培った強みを更に追求・進化させ,お客さまのオペレーションに入り込んだアフターマーケット事業を着実に加速することで,事業基盤を強化します。
・リーン&フレキシブルな経営体質への変革
アフターマーケット事業の展開及び価値創造に向けたビジネスモデル変革等,集中すべき分野へのリソース最適配分を本格化し,堅固な事業運営体制を構築します。
・価値創造に向けたビジネスモデル変革の推進
長期に目指す姿である持続可能な社会の実現に貢献する価値の創造に向け,将来への準備としてビジネスモデル変革を推進し加速します。
変革を実現する上で,最も強固な土台となるべきものが「安全と品質」そして「リスクマネジメント」です。「安全と品質」は決して変わることなく常に最優先で確保すべきものとして,また「リスクマネジメント」は収益性及び事業の安定性を担保するものとして,継続して徹底的に取り組んでいきます。
加えて,環境変化に柔軟かつスピーディーに対応し事業変革を支える“人づくり”を推進し,人材を育成する投資を適時適切に実施していきます。
⑤当社グループの各事業領域の目指す方向性
当社グループの目指す姿から,各事業領域がハードウェア供給で培った技術力やノウハウを活かし長期で目指す方向性を以下のとおり定義します。また,各事業領域の目指す方向性に関連の深い“持続可能な開発目標(SDGs)”を各々紐付け,持続可能な社会に求められる新たな価値を創造してまいります。
<資源・エネルギー・環境>
地域・お客さまごとに最適な総合ソリューションを提供することにより“脱CO2・循環型社会”に貢献します。
<社会基盤・海洋>
橋梁・トンネルを軸に安全・安心な社会インフラの実現にグローバルかつライフサイクルにわたり貢献します。
<産業システム・汎用機械>
お客さまと共にオペレーションの最適化をライフサイクルで徹底追求することにより産業インフラの発展に貢献します。
<航空・宇宙・防衛>
先進技術により,航空輸送,防衛システム及び宇宙利用の未来を切り拓き,豊かで安全な社会の実現に貢献します。
⑥経営目標
10年後の目指す姿を,「売上高2兆円規模,安定して営業利益率10%以上」とし,その実現に向けて,2021年度の経営目標を次のとおり定めます。投下資本収益性(ROIC)を高めるため,収益性(営業利益率)及びキャッシュ創出力(CCC)の一層の強化を目指してまいります。
|
財務目標 |
2021年度 |
|
ROIC(税引後) |
10%以上 |
|
営業利益率 |
8% |
|
CCC |
80日 |
(注)各指標の算出方法は次のとおりです。
・ROIC:(1-「法定実効税率」)×(「営業利益」+「受取利息」+「受取配当金」)
÷(「株主資本合計」+「その他の包括利益累計額合計」+有利子負債の金額)
・CCC :(売上債権+たな卸資産-仕入債務)÷売上高×365日
(参考)売上高水準:1兆5,000億円,投資水準(3年間):4,200億円
なお,文中の将来に関する事項は,当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
事業の状況,設備の状況,経理の状況に記載した事項のうち,当社グループの経営成績,株価及び財務状況等に影響を及ぼす可能性のあるリスクには以下のようなものがあります。なお,文中における将来に関する事項は,当連結会計年度末(2019年3月31日)現在において当社グループが判断したものです。当社グループは,以下のリスクを認識した上で,必要なリスク管理体制を整え,リスク発生の回避及びリスク発生時の影響の極小化に最大限努めています。
当社は,2019年3月から4月にかけて,当社の民間航空機エンジン整備事業において不適切な検査が行なわれていたことを公表し,経済産業省及び国土交通省より所管法令に基づく行政処分を受けました。国土交通省より受けた業務改善命令に対しては,2019年5月に改善措置を提出しております。本事象に関し,長期的継続使用の観点から一部出荷品の自主回収を行なうとともに,再発防止策として,外部専門家からの提言も踏まえた上で,①安全意識の再徹底及びコンプライアンス教育,②安全管理体制の抜本的見直し,③業務実施体制の見直しを徹底し,信頼回復に努めてまいります。
(1)競争環境と事業戦略
今後の世界経済は,中国での景気の減速が続くことが見込まれるものの,米国の着実な景気回復を中心に,緩やかな回復が続くことが期待されます。一方で,貿易摩擦の激化により,中国をはじめとして世界的な景気下振れリスクが高まっており,先行きについて十分な注意が必要です。また,世界的な地政学リスクの高まりなどについても引き続き留意が必要と思われます。
このような事業環境下において,当社グループは,事業の集中と選択,経営資源の集中投入を進めるとともに,グローバルな事業運営を加速しています。しかし,国内市場における厳しい競争環境の継続や世界経済の成長鈍化,さらには業界再編に伴う競争環境の急激な変化などのリスクが顕在化し,競合企業と比較して当社グループの製品・サービスが性能・品質・価格面で十分な競争優位性を得られなくなり,当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社の持分法適用関連会社であるジャパン マリンユナイテッド株式会社については,厳しい造船市況が続く中,設計の効率化・生産の標準化・仕様の統一化等のコスト削減による収益改善や為替リスク低減による下振れ防止,事業所運営体制の見直し等の具体的施策に引き続き取り組んでおります。当面の間,造船市況の回復が望めない状況にあるため,同社が構造改革へ向けた取り組みを加速できるよう,当社からも支援を行なってまいります。
(2)他社との連携・M&A,事業統合
当社グループは営業協力,技術協力,生産協力や事業合弁の形で多くの他社との共同事業活動を行なっています。また,成長市場への事業展開の加速,要素技術の補完,シナジーの創出などを目的としたM&Aなども有効に活用しています。しかし,経済環境の変化,法的規制,予期せぬ費用増加等の影響により,当初期待された効果を出せない可能性があります。また,当初期待した効果を享受できないと判断された場合は,他社との連携による事業統合の中断,解消を決断する可能性があり,その結果として業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(3)カントリーリスク
当社グループの調達・生産・輸出・販売・建設等の諸活動は,米州やヨーロッパ,アジア・オセアニア地域等グローバルに展開されていますが,それぞれの地域・国において政治・経済の混乱並びにそれに起因する為替取引の凍結・債務不履行・投資資産の接収,想定していなかったテロ・労働争議の発生等のカントリーリスクが存在します。また,政情不安やデフォルト等により事業の継続や拠点経営が困難になる可能性があります。貿易保険の付保徹底やカントリーリスクに関する情報の収集とグループ内の啓蒙に努めてはいますが,リスクが顕在化した場合は当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(4)資材調達
当社グループはキーとなる主要部品を自社グループ内で製造するよう努めている一方で,複数のグループ外調達先より原材料・部品・サービスの供給を受けています。主要な原材料・部品の市況動向については日頃から情報収集して安定調達に努めるとともに,調達先の品質・納期等の管理を徹底し,特定の調達先への過度の集中・依存をさけるべく調達先の分散化等を進め,リスクの低減に取り組んでいます。しかしながら,原油・資機材価格等の急激な変動,あるいは特殊鋼などの需給バランスの変化や国際情勢の急変による供給不足等の問題が生じた場合,コストアップ,品質管理上の問題,納期遅延等の問題が生じる可能性があり,その結果として業績の悪化を招くおそれがあります。
(5)保証債務等
当社グループは,事業活動を営む上で必要かつ合理的と確認したものについて,債務の保証等を行なっていますが,経済環境悪化の長期化や事業の失敗等により債務者の財務状態が悪化した場合,保証の履行を債権者より求められる可能性があります。保証債務等に係る情報は第5「経理の状況」1「連結財務諸表等」の「注記事項」(連結貸借対照表関係)に記載しています。
(6)受注契約
当社グループは,個別にお客さまと受注契約を締結した後に製品を生産する場合が多く,請負金の大きい工事については受注契約締結前に多面的な社内審査を行なっています。しかし,契約締結後に当初想定できなかった経済環境の変化や検討不足,予期しないトラブル,JV等のパートナー企業の経営悪化等により見積コストを上回る工事の発生,お客さまから要求された性能・納期の未達によるペナルティーの支払い,追加費用の発生等の可能性があり,その結果として業績の悪化を招くおそれがあります。また,お客さま都合による受注契約の取り消しのケースでは,受注契約条件の中で違約金条項を設定する等そのリスク回避に最大限努力しているものの,必ずしも支出したコストの全額を回収できない可能性があります。
当社グループが北米で遂行中のプロセスプラント案件については,建設・据付工事における不具合などによって工程遅延が発生したことや,それに伴い試運転要員を増加したことなどにより,追加費用を計上いたしました。更なる追加費用の発生を未然に防ぐべく,引き続きプロジェクト遂行体制の強化を通じて,きめ細かな進捗管理を実施していきます。納期の未達によるペナルティーの支払いに関する情報は第5「経理の状況」1「連結財務諸表等」の「注記事項」(連結貸借対照表関係)に記載しています。
(7)技術契約
当社グループは,国内外において多岐にわたる機種・技術分野を取り扱うため,他社との間に技術供与・導入に関する契約を締結する場合があります。締結前には,当社グループに不利若しくは履行不能な条件が無いか,必要条件の欠落が無いか等,十分な社内審査を行なうよう努めています。しかし,事前の検討不足や契約条件の理解不足等により計画を超える保証・補填・ペナルティーが発生する,あるいは事業上の制約を受ける等の可能性があり,その結果として業績の悪化を招くおそれがあります。
(8)生産・製造
当社グループは第3「設備の状況」の2「主要な設備の状況」にあるとおり,各地に生産拠点を有しますが,生産施設に影響を及ぼす自然災害,停電,あるいは生産活動に影響を与える資機材の入手困難,電力制限が,事業継続計画(BCP)の想定範囲を超える可能性があります。また,生産量が当社グループの想定以上に急激に変動した場合,生産能力調整が十分にできない可能性もあります。これらの結果,業績の悪化を招くおそれがあります。
不適切な検査が発生したことを受けて自主的に操業を停止しておりました民間航空機エンジン整備事業については,各種再発防止策を徹底するとともに,検査員の増員などを通じて工程上のボトルネックを解消し,整備能力の早期正常化を目指しております。
(9)品質保証
当社グループは,調達品等の品質不良・不具合の発生防止を含め,製品の品質確保に努めるとともに,お客さまに安全に使っていただくため,製品安全・機械安全を確保するよう設計時のリスクアセスメントの徹底及びお客さまへの注意喚起と情報提供に努めています。また,当社グループの製品は,品質や安全に関するさまざまな法的規制による制約を受けているため,これらの規制の遵守に努めるとともに,製造物責任賠償保険(P/L保険)に加入する等の対策を講じています。しかし,大規模な事故やクレームの発生及び製造物責任賠償につながるような製品の欠陥は,多額のコストに加えて当社グループの社会的評価に重大な影響を及ぼすことが考えられ,これによって当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼすおそれがあります。
民間航空機エンジン整備事業で発生した不適切検査については,事象が判明した後,すべての検査作業を自主的に停止した上で,外部専門家の協力も得ながら原因究明と再発防止策の検討を進めてまいりました。足元では再発防止策の一つとして当該事業の現場を始めとする航空・宇宙・防衛事業領域において安全意識の再徹底,安全管理体制や業務実施体制の見直しを実施中です。また,「IHIグループ品質宣言」を発行・展開し,品質第一を再徹底するとともに,当社グループの品質保証体制強化に関する戦略立案・展開を行なう品質統括部門を新設するなど,当社グループ全体においても品質保証体制の強化に向けた取り組みを進めてまいります。
(10)知的財産
当社グループは保有する知的財産の適切な保全(特許・実用新案・先使用権の取得)に努めています。しかし,機種や技術分野は多岐にわたるため,第三者による当社グループ製品・技術の模倣や解析調査等技術的に当社グループに影響を与えるような動きを完全に防止することが困難な場合があります。
また,当社グループが将来に向けて開発している製品・技術が,意図せず他社等の知的所有権を侵害してしまう場合や,従業員の発明に対して適切な対応を行なわない場合に損害賠償等を求められ,当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼすおそれがあります。
(11)研究開発
当社グループの研究開発活動に係る情報は第2「事業の状況」の5「研究開発活動」に記載されています。これら研究開発活動は事業の性格上,多額の投資とともに長期の開発期間が必要とされるという特性があります。そのため,実用化機会の逸失や事業戦略・市場動向との不整合等により十分な成果に結びつかず,当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼすおそれがあります。
(12)法令・規制
当社グループは,グローバルに事業の展開を進める上で,日本のみならず各国・各地域の各種法令,行政による許認可や規制の制約を受けており,その遵守に努めています。こうした法令等に強化や改正が生じた場合,それらへの対応コストが当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。一方,各種法令等に対する理解が不十分,又は予期せぬ変更への対応が適切でない場合等に各種法令等に違反したと判定され,過料や課徴金,追徴課税等による損失や営業停止等の行政処分によって機会逸失を被る,あるいはそれに伴う社会的評価の低下によって当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
係争中の訴訟案件のうち,当社グループの経営に重大な悪影響を及ぼす可能性のある訴訟は存在しないものと認識しています。しかしながら,現時点で認識していない想定外の訴訟が発生した場合,当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
民間航空機エンジン整備事業で発生した不適切検査については,再発防止策の一つとして当該事業の現場を始めとする航空・宇宙・防衛事業領域においてコンプライアンス教育を実施中です。また当社グループの全ての役職員が業務遂行にあたって遵守すべき「IHIグループ行動規範」を制定・展開するとともに,内部通報制度の運用ルールの見直しと対応体制の強化など,当社グループ全体においてもコンプライアンス体制の強化に向けた取り組みを進めてまいります。
(13)情報システム
当社グループは,技術情報及び事務管理情報のデータ処理のために多額の投資を行なっています。これらシステムの運用並びに導入・更新に際しては,システムトラブルや情報の外部漏洩が発生しないよう最大限の対策を講じていますが,外部からのコンピュータウィルスの感染やハッキングの被害,ホストコンピュータ・サーバ・ネットワーク機器の障害や紛失・盗難,ソフトウエアの不備等によるシステム障害の発生と業務停止,情報の外部漏洩等の事態が発生する可能性があり,それに伴い当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(14)安全衛生
当社グループは事業所及び建設現場における安全衛生管理には万全の対策を講じていますが,万一不測の事故・災害等が発生した場合には,生産活動に支障をきたし,業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。当社グループは,各種損害保険等に加入する等の対策を講じていますが,大規模な事故や災害が生じた場合,損害の全てを保険求償できない可能性があります。
(15)環境保全
当社グループには,製造工程で,大気・水質・土壌汚染等の原因となりうる物質を使用している事業所・子会社等があります。これらの物質の管理には万全の注意を払い,万一外部に漏洩した場合においてもその拡大を最小限に抑えるための対策を講じています。しかしながら,想定外の事態が発生した場合には,社会的評価の低下を招くとともに損害賠償責任が生じ,当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(16)災害・システム不全
当社グループは,伝染病・感染症の世界的流行(パンデミック),地震・洪水等の大規模災害,テロ等の犯罪行為,情報システムの機能不全等によって業務遂行が阻害されるような事態が生じた場合であっても,その影響を最小限に抑えるべく,事業継続計画(BCP)の整備,非常時を想定した訓練等を実施しています。しかし,想定規模を超える災害やシステム不全が発生した際には事業を適切に遂行できず,当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(17)為替動向
外貨に対して円が上昇した場合は外貨建輸出工事における円換算後の入金額は目減りし,下落した場合は現地通貨建の海外調達において円換算支出額の増加を招く等,業績に影響を及ぼします。そのため,外貨建資産と負債のポジションの不均衡に対して,一定の方針に基づき為替予約やマリーの徹底によるリスクヘッジに努めていますが,想定以上の為替変動が発生した場合には,当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(18)金利動向
金利が上昇した場合,当社グループの支払利息が増加し金融収支が悪化します。また,財務活動において借入,又は社債発行の条件が悪化する可能性があり,資金調達に悪影響を与え,ひいては当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(19)資金調達・格付
当社グループの借入金にはシンジケート・ローンが含まれており,自己資本と利益に関する財務制限条項が付されています。業績の悪化等により同条項に抵触した場合,同ローンの借入れ条件の見直しや期限前弁済義務が生じるおそれがあり,当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
また,格付機関が当社グループの格付を引き下げた場合,当社グループの財務活動において不利な条件で取引をせざるを得ない,あるいは一定の取引ができなくなる可能性があり,資金調達に悪影響を与え,ひいては当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(20)税務
繰延税金資産の計算は,将来の課税所得に関する予測・仮定を含めて個別に資産計上・取崩を行なっていますが,将来の課税所得の予測・仮定が変更され,繰延税金資産の一部ないしは全部が回収できないと判断された場合,当社グループの繰延税金資産は減額され,その結果,当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
また,国境をまたぐ当社グループ会社間の取引価格の設定においては,適用される移転価格税制の遵守に努めていますが,税務当局から取引価格が不適切であるとの指摘を受けた場合,追徴課税や二重課税が生じることにより,当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(21)与信管理
当社グループは,世界中のお客さまに製品・サービスを提供しており,その多くが掛売り又は手形取引となっています。当社はこれに対し,グループ全体で与信管理体制の強化と債権保全の徹底に努めているものの,重要なお客さまが破綻し,その債権が回収できない場合には,当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(22)人材育成
当社グループの将来の成長,技能の伝承は従業員の能力による部分が大きく,高い技術力と技量を有する従業員の確保及び技能の伝承は,当社グループの経営課題のひとつです。このようなキーパーソンとなりうる人員を確保あるいは育成できなかった場合には,当社グループの将来の成長,業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(1)経営成績等の状況の概要
①財政状態及び経営成績の状況
a.経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は,設備投資の増加や,堅調な企業業績と雇用・所得環境の改善に支えられ,安定的に推移しました。世界経済については,中国が景気減速傾向にあるものの,米国の着実な成長に支えられ,総じて緩やかな成長が続きました。一方で政治面では米中貿易摩擦や,英国のEU離脱問題など不安定な状況が続きました。
このような事業環境下において,当社グループの当連結会計年度の受注高は前期比7.0%減の1兆3,992億円となりました。また,売上高についても前期比6.7%減の1兆4,834億円となりました。
損益面では,営業利益は,新型エンジンの販売増加に伴う民間向け航空エンジンの採算性低下があるものの,北米で遂行中のプロセスプラント案件の採算悪化が総じて収まりつつあることなどから,102億円増益の824億円となりました。経常利益は,持分法投資損益や為替差損益の好転などにより増益幅が拡大し,443億円増益の657億円となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は,315億円増益の398億円となりました。
民間航空機エンジン事業で発生した不適切検査については,航空・宇宙・防衛事業領域では,1.安全意識の再徹底およびコンプライアンス教育,2.安全管理体制の抜本的見直し,3.業務実施体制の見直し,を軸とした再発防止策に取り組むとともに,当社グループ全体においてもコンプライアンス体制・品質保証体制・リスク管理活動の更なる強化を進めてまいります。なお,当該事案に伴って発生した操業停止の影響や,現状で見積もり可能な補償は,売上原価,営業外費用にそれぞれ計上しております。
また,前連結会計年度においては,一部の海外連結子会社の決算日を12月31日から3月31日に変更しており,該当する連結子会社の会計期間が15か月となっています。この影響により,前連結会計年度において売上高で579億円,営業利益で14億円がそれぞれ増加しています。
当連結会計年度の報告セグメント別の業績は以下のとおりとなりました。
(単位:億円)
|
報告セグメント |
受注高 |
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
前期比 |
|||||
|
前連結 会計年度 |
当連結 会計年度 |
前期比 増減率 (%) |
(2017.4~2018.3) |
(2018.4~2019.3) |
増減率(%) |
||||
|
売上高 |
営業 損益 |
売上高 |
営業 損益 |
売上高 |
営業 損益 |
||||
|
資源・ エネルギー・ 環境 |
3,780 |
2,855 |
△24.5 |
4,904 |
△148 |
3,770 |
33 |
△23.1 |
- |
|
社会基盤・海洋 |
1,639 |
1,244 |
△24.1 |
1,545 |
139 |
1,431 |
142 |
△7.4 |
2.2 |
|
産業システム・ 汎用機械 |
4,740 |
4,589 |
△3.2 |
4,590 |
189 |
4,410 |
231 |
△3.9 |
22.3 |
|
航空・宇宙・防衛 |
4,638 |
4,943 |
6.6 |
4,637 |
601 |
4,922 |
464 |
6.1 |
△22.8 |
|
報告セグメント 計 |
14,799 |
13,632 |
△7.9 |
15,677 |
781 |
14,535 |
871 |
△7.3 |
11.5 |
|
その他 |
741 |
814 |
9.8 |
735 |
27 |
793 |
23 |
7.9 |
△13.9 |
|
調整額 |
△490 |
△454 |
- |
△509 |
△86 |
△494 |
△70 |
- |
- |
|
合計 |
15,050 |
13,992 |
△7.0 |
15,903 |
722 |
14,834 |
824 |
△6.7 |
14.1 |
<資源・エネルギー・環境>
パリ協定にて世界の平均気温上昇の上限や温室効果ガス排出量と吸収量のバランスについて長期目標が掲げられる中,気候変動への対策の動きが加速しております。それに伴い,社会やお客さまの抱える課題も地域ごと・発展段階ごとに多様化しており,柔軟に対応していく必要があります。
このような脱炭素社会への流れから,ボイラを中心とした大型の新設案件への見通しが不透明感を増し,太陽光を始めとする再生エネルギーを中心とした分散型エネルギーへのシフトが加速しています。また足元では,エネルギー安定供給の為の既存設備の高効率化や,ガスシフトに伴うガス関連設備(貯蔵・ガス発電)に対する一定の需要は見込めるものの,厳しい競争環境が続いています。
このような事業環境のもと,受注高は,ボイラ,陸用原動機プラントで前期に大型案件を受注した反動により,減少しました。
売上高は,前期の報告期間統一の影響のほか,プロセスプラントにおいて前期に大型プロジェクトが進捗した反動で減収となりました。
営業損益は,プロセスプラントで前期に生じた採算悪化が総じて収まりつつあることや,販管費の減少により,増益となりました。
この事業領域では,脱CO2・循環型社会に向け,枯渇性資源の有効活用,再生エネルギー,分散エネルギーの利用促進,再生可能資源の利活用等を通じて,地域・お客さまごとに最適な総合ソリューションの提供に取り組んでまいります。
<社会基盤・海洋>
新興国では経済発展に伴うインフラ開発が旺盛である一方で,先進国では進行するインフラ老朽化への対策が迫られております。加えて,持続可能な都市と豊かな生活に向けて,深刻化する気候変動と自然災害に適応する強靭な社会インフラシステムの構築が求められております。
足元では,国内において,橋梁・水門では道路,トンネルなどの新設工事は減少していくものの,橋梁の老朽化対策としての更新・修繕工事や保全工事等の需要が増加すると予想されます。シールドシステムやコンクリート建材では,リニア中央新幹線などの発注により,大型工事の需要が期待されます。また,海外においては,東南アジアを中心にインフラ投資が活発化しており,需要の拡大が期待されます。
このような事業環境のもと,受注高は,橋梁・水門で前期に海外の大型案件を受注した反動により,減少しました。
売上高は,橋梁・水門で増収となったものの,F-LNG・海洋構造物やシールドシステムで減収となりました。
営業利益は,F-LNG・海洋構造物やシールドシステムで減益となったものの,橋梁・水門で増益となりました。
この事業領域では,橋梁,トンネルを軸に,インフラ建設を主体とした事業から,計画・運営・保守・保全まで含めたライフサイクル型事業に展開・拡大し,将来の最適な都市環境の実現に資する社会インフラシステムの提供に取り組んでまいります。
<産業システム・汎用機械>
世界的なデジタル技術の伸長に伴う各種自動化の進展により足元の設備投資は堅調であり,また自動車産業においても世界的な燃費効率の追求を背景に市場は堅調に推移しています。
一方で自動車産業における自動化・電動化などへの対応や環境負荷低減に向けた取り組み,デジタルトランスフォーメーションの進展などによる産業機械・物流業界における事業環境の変化が加速しています。また,お客さまの事業では,リードタイム短縮,人手不足,ノウハウ・技術力の低下などの課題が顕在化しており,それらの課題に迅速かつ適切に対応していく必要があります。
このような事業環境のもと,受注高は,前期の報告期間統一の影響により減少しましたが,この影響を除くと,運搬機械などで実質的に増加しました。
売上高は,前期の報告期間統一の影響により減収となりましたが,この影響を除くと,パーキング,回転機械で実質的に増収となりました。
営業利益は,前期の報告期間統一の影響はあるものの,上記の増収の影響や,熱・表面処理の採算改善により,増益となりました。
この事業領域では,社会・お客さまの「人」と「エネルギー」と「資産」の効率を最大化することを通じて非効率性から生じるさまざまな社会的課題を解決するとともに,お客さまと共にオペレーション(事業運営)の最適化をライフサイクルで徹底追求することで,産業インフラの高度な発展に貢献してまいります。
<航空・宇宙・防衛>
環境負荷低減に向け資源・エネルギーの効率的な利活用が加速する中,安全・安心・快適な生活の実現に向け,航空輸送の安全性・信頼性の向上や気候変動等に柔軟に対応していく必要があります。
民間向け航空エンジンにおいては,引き続き航空需要の伸びが堅調に推移しており,高効率・低燃費の新型エンジンへの期待が高まっています。また,運航機数の増加によるアフターマーケットの安定的な成長も見込まれます。
このような事業環境のもと,受注高は,民間向け航空エンジン,ロケットシステム・宇宙利用で増加しました。
売上高は,民間向け航空エンジンで増収となりました。
営業利益は,民間向け航空エンジンにおいて,新型のPW1100Gエンジンに係る不具合対応費用の負担は減少したものの,引渡台数が増加した影響などにより,減益となりました。
この事業領域では,不適切検査が発生した民間航空機エンジン事業を中心に再発防止策を確実に進め,強靭な品質保証体制を再構築いたします。その上で,安全・環境低負荷かつ経済的な航空輸送を可能にする航空エンジンの提供や社会のニーズに沿った宇宙開発事業の展開を通じて,地球環境の保全とともに人々が豊かで安全安心に暮らせる社会の実現に貢献すべく,技術革新への飽くなき挑戦を続け,独自技術・ものづくり力の高度化を推し進めてまいります。
なお,文中の将来に関する事項は,当連結会計年度末現在において判断したものです。
b.資産及び負債,純資産の状況
当連結会計年度末における総資産は1兆6,645億円となり,前連結会計年度末と比較して310億円増加しました。主な増加項目は,原材料及び貯蔵品で219億円,投資有価証券で186億円,前渡金などの流動資産その他で175億円,主な減少項目は,受取手形及び売掛金で226億円です。
負債は前連結会計年度末とほぼ同額の1兆2,828億円となりました。主な増加項目は,短期借入金で302億円,主な減少項目は,前受金で202億円,支払手形及び買掛金で148億円です。また,有利子負債残高はリース債務を含めて3,550億円となり,前連結会計年度末と比較して328億円増加しました。
純資産は3,816億円となり,前連結会計年度末と比較して314億円増加しました。これには,親会社株主に帰属する当期純利益398億円,剰余金の配当による減少92億円が含まれています。
以上の結果,1株当たり純資産額は,前連結会計年度末と比較して159円90銭増加して,2,263円12銭となり,自己資本比率は,前連結会計年度末の19.9%から21.0%となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下,「資金」という。)の残高は,前連結会計年度末と比較して147億円減少し,926億円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は以下のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によって得られた資金は464億円(前連結会計年度は990億円の獲得)となりました。これは,たな卸資産の増加や仕入債務の減少,過年度法人税等を含む法人税等の支払などがある一方で,売上債権の減少や税金等調整前当期純利益などによって資金が増加したものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動に使用された資金は792億円(前連結会計年度は479億円の使用)となりました。これは主に,有形及び無形固定資産の取得による支出641億円,有価証券及び投資有価証券の取得による支出182億円などによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によって得られた資金は164億円(前連結会計年度は573億円の使用)となりました。これは主に,短期借入金の増加367億円などによるものです。
(注)この項に記載の金額は単位未満を切捨て表示し,比率は四捨五入表示しています。
③生産,受注及び販売の状況
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと,次のとおりです。
|
セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前期比(%) |
|
資源・エネルギー・環境 |
375,400 |
△22.4 |
|
社会基盤・海洋 |
135,127 |
△6.8 |
|
産業システム・汎用機械 |
441,671 |
△3.2 |
|
航空・宇宙・防衛 |
426,409 |
△2.5 |
|
報告セグメント 計 |
1,378,607 |
△9.5 |
|
その他 |
59,950 |
△5.2 |
|
合計 |
1,438,557 |
△9.3 |
(注)1 金額は販売価格によっており,セグメント間の取引については相殺消去しています。
2 上記の金額には,消費税等は含まれていません。
3 金額及び比率は単位未満を四捨五入表示しています。
b.受注状況
当連結会計年度における受注状況をセグメントごとに示すと,次のとおりです。
|
セグメントの名称 |
受注高 (百万円) |
前期比(%) |
期末受注残高 (百万円) |
前期末比(%) |
|
資源・エネルギー・環境 |
285,587 |
△24.5 |
523,193 |
△19.3 |
|
社会基盤・海洋 |
124,440 |
△24.1 |
191,659 |
△7.0 |
|
産業システム・汎用機械 |
458,970 |
△3.2 |
180,340 |
12.0 |
|
航空・宇宙・防衛 |
494,300 |
6.6 |
562,613 |
5.5 |
|
報告セグメント 計 |
1,363,297 |
△7.9 |
1,457,805 |
△5.9 |
|
その他 |
81,441 |
9.8 |
20,454 |
10.9 |
|
調整額 |
△45,496 |
- |
- |
- |
|
合計 |
1,399,242 |
△7.0 |
1,478,259 |
△5.7 |
(注)1 各セグメントの受注高は,セグメント間の取引を含んでおり,調整額でセグメント間取引の合計額を消去しています。
2 各セグメントの受注残高は,セグメント間の取引については相殺消去しています。
3 消費税等は含まれていません。
4 金額及び比率は単位未満を四捨五入表示しています。
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと,次のとおりです。
|
セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前期比(%) |
|
資源・エネルギー・環境 |
377,071 |
△23.1 |
|
社会基盤・海洋 |
143,157 |
△7.4 |
|
産業システム・汎用機械 |
441,082 |
△3.9 |
|
航空・宇宙・防衛 |
492,246 |
6.1 |
|
報告セグメント 計 |
1,453,556 |
△7.3 |
|
その他 |
79,307 |
7.9 |
|
調整額 |
△49,421 |
- |
|
合計 |
1,483,442 |
△6.7 |
(注)1 販売実績は売上高を持って示します。ただし,消費税は含まれていません。
2 各セグメントの売上高は,セグメント間の取引を含んでおり,調整額でセグメント間取引の合計額を消去し
ています。
3 主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は次のとおりです。
|
相手先 |
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
||
|
金額(百万円) |
割合(%) |
金額(百万円) |
割合(%) |
|
|
一般財団法人 日本航空機エンジン協会 |
161,258 |
10.1 |
205,100 |
13.8 |
4 金額及び比率は単位未満を四捨五入表示しています。
(2)経営者による財政状態,経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析
①重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は,わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されています。連結財務諸表の作成にあたり,連結貸借対照表上の資産,負債の計上額,及び連結損益計算書上の収益,費用の計上額に影響を与える判断,見積りを行なう必要があります。当社グループの重要な会計方針のうち,判断,見積りを行なう割合が高いものは,貸倒引当金,受注工事損失引当金などの各引当金の計上,退職給付債務の算定,繰延税金資産の回収可能性の判断などがあります。これらの判断,見積りについては合理的な方法により算定していますが,見積り特有の不確実性が存在するため,将来において認識される業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。これらのうち,重要なものについては,第2「事業の状況」の2「事業等のリスク」に記載しています。
②経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループ及びセグメントごとの経営成績の状況は(1)経営成績等の状況の概要の①財政状態及び経営成績の状況に記載のとおりです。
当社グループは,2016年度を初年度とする3か年の中期経営計画「グループ経営方針2016」に基づき,収益基盤の強化を図るべく事業を進めてまいりました。最終年度となる2018年度(2019年3月期)については,特定工事の下振れ継続,資源・エネルギー・環境を中心とした新設工事の市況悪化や為替変動等により,当初の経営目標に対して未達となりましたが,一方で,リスクマネジメントの強化や,集中と選択を推し進めたことなどにより,営業利益率およびROICは改善傾向にあり,収益基盤の強化については一定の成果が挙がったものと評価しております。
「グループ経営方針2016」のもと整備した収益基盤を土台として,経営体質とビジネスモデルの変革を加速し,環境の変化に応じて事業の中身を組み替えながら,「グループ経営方針2019」の経営目標(2021年度:ROIC 10%以上,営業利益率8%,CCC 80日)の達成を目指してまいります。
|
|
2016年3月期 |
2017年3月期 |
2018年3月期 |
2019年3月期 |
「グループ 経営方針2016」 2019年3月期 経営目標 |
|
営業利益率 |
1.4% |
3.2% |
4.5% |
5.6% |
7% |
|
ROIC |
2.3% |
5.0% |
7.7% |
8.7% |
10% |
|
D/Eレシオ |
1.12倍 |
1.10倍 |
0.92倍 |
0.93倍 |
0.7倍以下 |
(注)各指標の算出方法は次のとおりです。
・ROIC:(1-「法定実効税率」)×(「営業利益」+「受取利息」+「受取配当金」)
÷(「株主資本合計」+「その他の包括利益累計額合計」+有利子負債の金額)
・D/Eレシオ:有利子負債の金額÷純資産合計
なお,セグメントごとの経営目標(営業利益率)の達成状況と今後の課題については以下のとおりです。
<資源・エネルギー・環境>
北米で遂行中のプロセスプラント案件での下振れの発生や,新設工事の市況が想定以上に悪化したこともあり,営業利益率は0.9%(目標6.8%)と大幅な未達となりました。一方で事業環境の変化に応じて,社内リソースを柔軟に再配置したことなどにより,ボイラにおけるアフターサービスの受注拡大などの成果につなげることができました。
この事業領域では,引き続きリスクマネジメントを強化し下振れ防止を徹底するとともに,国内外の改造・更新需要の獲得に注力してまいります。
<社会基盤・海洋>
F-LNG事業からの撤退を完了したこと,プロジェクト管理の徹底や橋梁・シールド等の採算改善により,営業利益率は9.9%(目標7.5%)と経営目標を達成いたしました。
この事業領域では,増加する国内の橋梁等での保全工事について付加価値向上を図るとともに,着実な海外展開を進めてまいります。
<産業システム・汎用機械>
計画的にポートフォリオマネジメントを推進し,業績は改善傾向にあるものの,営業利益率は5.2%(目標5.9%)と未達となりました。
この事業領域では,引き続き集中と選択を推し進めるとともに,お客さま視点の価値提案によるサービス提供や海外市場への展開を加速することにより,事業拡大を図ってまいります。
<航空・宇宙・防衛>
為替変動(「グループ経営方針2016」前提レート:115円/ドル)の影響や,素材高騰によるコストダウン未達等があったものの,補用部品やスペアエンジンの販売増加や,新型のPW1100Gエンジンの引渡遅れの影響などにより,営業利益率は9.4%(目標9.6%)と概ね経営目標を達成いたしました。
この事業領域では,品質問題への対応を最優先とした上で,着実な競争力強化へ向けた取り組みを継続してまいります。
③資本の財源及び資金の流動性についての分析
(1)経営成績等の状況の概要の①財政状態及び経営成績の状況に記載のとおり,当連結会計年度末の有利子負債残高はリース債務を含めて3,550億円であり,前連結会計年度末と比較して328億円増加しています。
これは,前連結会計年度に計上した北米のプロセスプラント案件の債務の支払い等によって増加した運転資本,及び新型のPW1100Gエンジンの増産に伴う設備投資によって増加した投資支出について,借入金を始めとした有利子負債により賄ったことによるものです。
また,当連結会計年度末の現金及び現金同等物は926億円であり,主要銀行とのコミットメントライン契約や当座貸越枠,コマーシャル・ペーパーなど多様な調達手段とあわせて,十分な流動性を確保しています。
(注)この項に記載の金額は単位未満を切捨て表示しています。
(1)技術導入契約
|
契約会社名 |
相手方の名称 |
国名 |
契約品目 |
契約内容 |
契約期間 |
|
当社 |
GEAE |
米国 |
T700-401C, T700-701Cターボ シャフトエンジン |
契約品目の製造・販売に関する非独占的権利の取得 |
1989年9月26日から 2023年4月30日まで |
|
当社 |
GEAE |
米国 |
F110-129ターボ ファンエンジン |
契約品目の製造・販売に関する非独占的権利の取得 |
1996年9月27日から 2024年4月30日まで |
|
当社 |
GEAE TECHNOLOGY,INC. |
米国 |
J79ターボ |
契約品目の製造・販売に関する非独占的権利の取得 |
2002年3月18日から 2022年12月31日まで |
|
当社 |
ROLLS-ROYCE CORPORATION |
米国 |
T56-A ターボプロップ エンジン |
契約品目の製造・販売に関する非独占的権利の取得 |
2008年11月7日から 2028年10月31日まで |
|
当社 |
UNITED |
米国 |
F100ターボ ファンエンジン |
契約品目の製造・販売に関する非独占的権利の取得 |
1978年6月27日から 2019年9月30日まで |
|
当社 |
UNITED |
米国 |
F135ターボ ファンエンジン |
契約品目の日本における非独占製造権 |
2013年10月17日から 2027年9月30日まで |
|
㈱ディーゼル ユナイテッド (連結子会社) |
MAN Diesel & Turbo France SAS |
フランス |
汎用中速ディーゼルエンジン |
契約品目の製造・販売に関する非独占的権利の取得 |
1995年11月14日から 2019年12月31日まで |
|
㈱ディーゼル ユナイテッド (連結子会社) |
Winterthur Gas & Diesel Ltd. |
スイス |
汎用低速ディーゼルエンジン |
契約品目の製造・販売に関する非独占的権利の取得 |
2009年1月1日から 2024年12月31日まで |
|
㈱IHIエアロ スペース (連結子会社) |
LOCKHEED MARTIN CORP. |
米国 |
多連装ロケット システム |
契約品目の製造・販売に関する非独占的権利の取得 |
1993年1月20日から 2023年8月31日まで |
|
㈱IHI回転機械 エンジニアリング (連結子会社) |
ABB TURBO |
スイス |
ターボ過給機 |
契約品目の日本における独占製造権 |
1998年9月24日から JV終了日まで |
(2)技術供与契約
|
契約会社名 |
相手方の名称 |
国名 |
契約品目 |
契約内容 |
契約期間 |
|
㈱IHIアグリテック (連結子会社) |
無錫珀金斯芝浦発動機有限公司 |
中国 |
ディーゼルエンジン |
契約品目に係る技術の独占実施権の供与 |
2009年1月1日から 2020年3月31日まで |
当社グループ(当社及び連結子会社)は,事業領域と技術開発本部が密接に連携・協力し,資源・エネルギー・環境,社会基盤・海洋,産業システム・汎用機械,航空・宇宙・防衛のセグメントにおける各製品の競争力強化,及び今後の事業拡大・創造につながる基礎研究から実用化研究までを強力に推進しています。また,国内外の大学や研究機関との産学官連携による共同研究にも積極的に取り組んでいます。
当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は
各セグメント別の主な研究開発の成果及び研究開発費は次のとおりです。
(1)資源・エネルギー・環境
資源・エネルギー・環境事業領域と技術開発本部では,ボイラ,中型原動機,プロセスプラント,原子力等に係る研究開発を行なっています。
連結子会社で研究開発を行なっているのは,主に新潟原動機㈱です。
当連結会計年度の主な成果として,パーム廃棄物を活用した固体バイオマス燃料事業の本格化,デジタルツインシミュレーションを活用したプラントの状態把握と予測技術の開発,除菌・脱臭に利用可能な世界初のオゾンハイドレートの開発が挙げられます。当セグメントに係る研究開発費は
当連結会計年度では,独自開発工法を適用する地上式LNGタンク1基の増設工事に着手し,工期を大幅に短縮して早期完成を予定しています。また,高効率な木質バイオマス燃焼技術が評価され,重油・原油焚ボイラの木質バイオマス燃料変換工事の受注に至りました。
(2)社会基盤・海洋
社会基盤・海洋事業領域と技術開発本部では,橋梁・水門,交通システム等に係る研究開発を行なっています。
連結子会社で研究開発を行なっているのは,主に㈱IHIインフラシステム,新潟トランシス㈱,㈱IHIインフラ建設です。
当連結会計年度の主な成果として,橋梁モデルデータをクラウド・ARデバイス・測量機と連携させる技術による生産性向上と高度な品質管理の実現,点検業務の効率化を実現した「水門点検サポートシステム(GBRAINTM)」の完成,軽量・小型化を実現した長周期地震動対策向け制振装置の開発・販売が挙げられます。当セグメントに係る研究開発費は
当連結会計年度では,高速道路の新設における多様な建設条件に応じた鋼橋新設技術に関する研究に引き続き取り組みました。
(3)産業システム・汎用機械
産業システム・汎用機械事業領域と技術開発本部では,車両過給機,運搬機械,熱・表面処理,回転機械,パーキング,農機・小型原動機等に係る研究開発を行なっています。
連結子会社で研究開発を行なっているのは,主にIHI Charging Systems International GmbH,㈱IHIアグリテック,IHI運搬機械㈱,㈱IHI回転機械エンジニアリング,㈱IHI物流産業システム,IHI Hauzer Techno Coating B.V.です。
当連結会計年度の主な成果として,全天候カバーで建物を覆う建設工法でも使える世界初の水平スライドクレーンの開発,AIを搭載した物流ロボットシステムの継続的な開発,シェアリングエコノミーの拡大に貢献するIoTプラットフォーム提供を実現する各種技術の開発,過酸化水素の使用量を大幅低減した新滅菌法の開発,洗浄工程機能を付加した最新鋭のオゾン水内視鏡消毒機の開発が挙げられます。また,近年技術革新が目覚ましい自動車の自動運転に対応可能な駐車場開発に必要な技術を獲得するため,慶応技術大学との共同研究を開始しました。当セグメントに係る研究開発費は
当連結会計年度では,F1レースにおける本田技研工業㈱,及び㈱本田技術研究所とパワーユニット開発・供給に関するテクニカルパートナーシップの契約締結に至りました。
(4)航空・宇宙・防衛
航空・宇宙・防衛事業領域と技術開発本部では,航空エンジン,ロケットシステム・宇宙利用,防衛機器システム等に係る研究開発を行なっています。
連結子会社で研究開発を行なっているのは,主に㈱IHIエアロスペース,㈱IHIキャスティングスです。
当連結会計年度の主な成果として,将来戦闘機用を目指したジェットエンジンプロトタイプ(XF9-1)の納入,次世代の製造プロセスとして注目されている三次元積層造形技術の開発が挙げられます。さらに,複数衛星を同時に打ち上げられる能力を付加したイプシロンロケット4号機の打上に成功し,多くの打上需要に対応できることが実証されました。当セグメントに係る研究開発費は
(5)その他
本社部門と技術開発本部等では,新技術・新事業分野及び共通基盤技術に係る研究開発を行なっています。
連結子会社で研究開発活動を行なっているのは,主に㈱IHI検査計測,㈱IHIエスキューブ,明星電気㈱です。
当連結会計年度の主な成果として,当社グループ製品・サービスへ活用するAI技術の研究,持続性のある地産地消型スマートコミュニティ事業向けのエネルギーマネジメントシステム導入,アンモニアを燃料とした燃料電池システムによる1kW発電の成功,2,000kW級ガスタービンでの世界初のアンモニア混焼の実証,地球温暖化の進行抑制に寄与できる二酸化炭素(CO2)の再資源化に向けた触媒技術の開発が挙げられます。当セグメントに係る研究開発費は105億円です。
(注)この項に記載の金額は単位未満を切捨て表示しています。