第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりである。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものである。

 

(1)経営方針

 当社グループは、顧客第一の経営姿勢を堅持しながら時代の変化を先取りし、競争力のある強固な企業体質を確立して株主の期待に応えるとともに、社会と地域に貢献する信頼性の高い企業集団を目指している。

 当社は、中堅造船所として技術力を国の内外から高く評価されており、その技術力をもとに多種多様な船舶の建造及び修理を事業の核にして積極的な経営を推進し、顧客の信用を高めるとともに、業績向上に向け努力を続けていく。

 

(2)経営戦略

①新造船事業

 (a)一般貨物船、自動車運搬船などの外航船及びフェリー、ロールオン/ロールオフ型貨物船(RORO船)などの内航船のプロダクトミックスの推進

 (b)受注一貫体制(営業・設計・調達・現業)の充実によるコスト競争力の強化とリスク管理の徹底

 (c)2工場への戦略的な設備投資による業容の拡大とコストダウン

②改修船事業

 顧客の信頼を得た高度な技術力・技能力でさらなる高品質化とコストダウン

③全般事項

 (a)安定的な株式配当の充実と財務体質の強化

 (b)戦略的な人材採用による若手技術者・技能者の確保及び教育

 (c)優秀なベテランの有効活用と技術・技能の伝承

 

(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 2026年3月期業績予想のうち、特に売上高455億円及び営業利益7億円の達成を念頭に、全社一丸となって、さらなる生産性の向上、固定費の削減等に努め、収益力の向上を目指していく。

 

(4)経営環境、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 当社を取り巻く経営環境においては、資機材価額の値上がりが続いていること、米国の通商政策をはじめとする各種政策の動向により為替相場が急激に変動する懸念があることなどから、先行き不透明な状況が続くものと予想される。

 このような状況のもと当社グループとしては、豊富な建造実績のある中小型フェリー、RORO船などの代替需要の獲得に積極的に取り組んでいくとともに、ゼロエミッション船などの新分野の開発、生産にも注力し、持続的な成長と更なる企業価値の向上に努めていく所存である。

 さらに、次の8項目を最重要課題として、取り組んでいく方針である。

1.エコシップ等の顧客ニーズに対応する多種多様な船種船型の開発・営業・製造(プロダクトミックス)の推進

2.戦略的な資材費対策と固定費の削減

3.受注一貫体制(営業・設計・調達・現業)の充実とリスク管理の徹底

4.優秀な人材確保と体系的教育の実施

5.公平・公正な財務情報の公開と有効で効率的な企業統治及び内部統制の維持・運用

6.省エネ・環境保護活動の推進

7.働き方改革の推進及び魅力的な職場環境の構築

8.自己資本比率及び自己資本利益率の向上

 

 これらを当社グループが一丸となって実行し、業績の向上に最大限の努力を続けていく。

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループにとってのサステナビリティとは、事業活動を通して社会課題の解決に寄与することであり、当社グループの持続的な成長が、社会全体の持続的な発展に貢献することである。「技術と誠意で社会に役立つ価値を創造し豊かな未来に貢献する」という企業理念のもと、すべてのステークホルダーの皆様の声を真摯に受け止めながら、サステナビリティを重視した経営を実践していく所存である。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものである。

 

(ガバナンス)

 毎月、瀬戸田工場、因島工場の両工場において「環境安全衛生部」が主体となり「環境保全委員会」を開催し、環境に関する重要な課題については取締役会へ報告をしている。

 また、環境を除く全社に影響を与えるリスクについては、「損失の危険の管理に関する規程」に沿って、内部監査室が社内の各部署から情報を集約し、経営及び業務執行の健全かつ適切な運営強化のため、年2回「内部統制推進委員会」を開催するとともに、内部監査室長が取締役会へ出席し、内容の説明を行っている。

 

(リスク管理)

 当社グループの事業環境に影響を与える主要なリスクについては、「第2 事業の状況 3事業等のリスク」に記載のとおりであるが、重要な損失の発生可能性及び損失発生時の影響が想定される場合には、その対応策について、経営層及び取締役会からの承認を受けた上で実施している。

 

 サステナビリティ課題について、重要であると判断した項目についての方針、取組みについては、以下のとおりである。

  ●気候変動関連

  当社グループは、国際的な枠組みである気候変動問題に関するパリ協定目標の実現及びIMO(国際海事機関)の温室効果ガス削減目標に貢献するため、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言に沿った開示を行い、事業活動を通して積極的に温室効果ガスの削減に取り組んでいく方針である。

 (具体的な取組み方法)

 気候変動への対応を含む環境目標については、期初において、当社の「環境安全衛生部」が主体となり開催している「環境保全委員会」において、年度の環境目標を設定し、代表取締役社長が承認している。

 また、環境目標の達成に向けては、社内の関連部門が中心となり、活動を実行し、目標の進捗については毎月の委員会において、代表取締役社長へ報告している。

 特定した気候変動リスク・機会は、ISO14001のPDCAサイクルに沿って管理している。

 具体的には、環境マネジメントシステムは、社内の各部門の活動と連携した環境保全活動を推進(DO)するために、中期並びに毎年の「環境目標」を決定(PLAN)し、その実現に向けた重点施策や実施計画を策定して事業活動に反映させている。さらに各部門における取組み状況や課題を確認する「環境監査」を行う(CHECK)ことで、環境保全活動の継続的な改善・強化(ACT)へつなげている。

 これらの活動内容については、毎年2回「環境保全推進委員会」においてレビューを行い、経営層に報告して承認を受けている。

(1)戦略

 当社グループでは、以下の取組みによって、温室効果ガスの削減をはじめとする環境保全活動を行っている。

①環境性能の高い船舶及び温室効果ガス排出量の低減に向けた船舶の開発や、製造方法の検討、既存船の環境対策工事等の修繕に関する取組み

②工場内の設備更新に伴い、環境性能の高い設備への移行

③ISO14001の環境マネジメントシステムによる環境保全活動の推進

(2)指標及び目標

 2023年7月、IMO(国際海事機関)は2018年に採択したGHG排出削減に関する初期戦略を改定し、国際海運からのGHG排出を2050年ごろまでにネットゼロとする目標などを盛り込んだ「2023 IMO GHG削減戦略」を採択した。

 国際海運について、IMO(国際海事機関)が設定する新たな温室効果ガス削減目標

①2030年までにGHG排出量20~30%以上削減(輸送量あたり、2008年比)

②2040年までにGHG排出量70~80%以上削減(2008年比)

③2050年ごろまでにGHG排出量ネットゼロ

 

 内航海運については、国土交通省が開催している「内航カーボンニュートラル検討会」で示された

・2030年CO2排出量181万トン削減(2013年度比約17%減)

・2040年CO2排出量387万トン削減(モーダルシフトによる増加分を考慮した目標)(2013年度比約36%減)

 当社としては、上記目標に向けて取組みを進めており、国土交通省が2020年度から運用している船舶の省エネ及び省CO2排出性能の評価基準「内航船省エネルギー格付制度」において、当社建造船19隻が最高評価「5つ星」を獲得した。

 また、「エネルギーの使用の合理化等に関する法律」(昭和54年法律第49号)に基づき、2015年から実施している「事業者クラス分け評価制度」においても、4段階評価の最上位「Sクラス」を2019年度から2022年度まで4年連続で取得している。今後は、再び最高評価を受けられるよう活動を行っていく。

 さらに、当連結会計年度において環境省・国土交通省による「ゼロエミッション船等の建造促進事業」に採択され、クレ-ン能力増強等への設備投資額27億円(最大補助金額9億円)、2027年度の設備投資完了を予定している。

 この事業は、水素、アンモニア、LNG、メタノール及び電力(バッテリー)等を推進エネルギー源とする船舶(「ゼロエミッション船等」)の国内生産体制を世界に先駆けて構築し、市場導入促進による二酸化炭素排出量削減を進めるとともに産業競争力強化・経済成長を図ることを目的としている。

 今後については、より環境性能の高い船舶の研究開発を進めるとともに、各種指標等(Scope1、2、3排出量等)をはじめとした取組みの状況を当社ホームページ等において開示していく。

  ●人的資本・多様性関連

  (1)戦略

<採用>

①新卒採用活動

 ものづくりがしたいという学生を国籍、性別、理系・文系、を問わず、積極的に採用することにより、仕事のやり方や考え方に新たな視点を取り入れることができ、新卒の受け入れ部門全体による新規採用者への指導を通じ、職場雰囲気の醸成にもつながるため、安定的、継続的に新規採用を行っていく方針である。

 また、造船という特殊な産業の技術を後世へ伝承するという点においても新規採用は欠かせないものであると認識している。

 具体的な取組みとしては、高校、大学への訪問、リモートでの面談を基本とし、外部団体の企業説明会、ホームページの充実、求人サイトを活用しながら採用活動を行っている。

②中途採用活動

 即戦力及び異業種経験者の積極採用を進めることは、企業風土に新たな知見が加わり、多様性の観点からも重要なものであると認識している。

 具体的な取組みとしては、求人サイト及びハローワークに対する募集をはじめとし、従業員の紹介による採用(リファラル採用)等の採用制度を導入している。

 採用活動の結果、当社に興味を持ってもらった求職者については、工場の立地が瀬戸内海の島であることや、製造業とはどのようなものかを実際に工場を見学してもらうことにより体感してもらい、ミスマッチの解消を図っている。

<育成>

 県外からの採用者の生活基盤を安定させるための独身寮等の設備の整備、新卒者1人に指導員1人を配置し、公私ともに相談ができる環境を整えることによって、離職率の低下に努めている。

 新規採用者については、当社グループ全体の業務内容及び部門横断的な関連性の理解のため、入社後2ヶ月、各部署からの研修担当者から新規採用者研修を受講し、その後担当部署へ配属している。

 各職場に配属となった後にも、育成の一環として、業務に関連する資格取得やセミナーの受講を積極的に行うことによりスキルアップの機会を提供している。

 さらに、新規採用者については、入社後3年間、総務課によるフォローアップ面談を年1回実施し、仕事の面だけでなく、私生活についてのフォローも行っている。

 また、1999年から地方自治体及び地域の造船事業者と共同で当社の因島工場内において職業訓練校(因島技術センター)を設立し、当社の新規採用者をはじめ、全国各地から研修生を受け入れている。

<社内環境整備等>

 従業員並びにその家族が健康でいることは企業の成長に必要不可欠であるとの認識のもと、ワーク・ライフ・バランスの充実に向けて、例えば介護休業制度を365日取得可能(「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」において義務付けられているのは93日まで)とすることをはじめとして、各種休暇、休業制度の拡充、短時間勤務や年次有給休暇の時間単位の取得制度等、社内環境の整備、点検を行っている。

 また、健康保険組合と共同し、健康情報提供サービスを使用した健康診断履歴情報の閲覧やウォーキングラリーの開催等、従業員1人1人の健康に対する意識の醸成、健康への取組みの後押しを行っている。

 さらに、感染症等が発生した場合には、拡大状況に応じて、感染リスクが高い地域の支社等については、リモート勤務を実施し、出社が必要な場合においても、時間差での出社等を可能とする等の対策を行っている。

  (2)指標及び目標

 当社グループは、従業員の多様性の確保の観点から、国籍、性別、採用ルートの条件の制約は設けておらず、女性・外国人・中途採用者の管理職への登用において、現時点においては具体的な人数の目標は定めていない。

 女性管理職比率が1.7%であることについては、女性の求職者が少なく、正規雇用者全体に対する女性の正規雇用者の割合が7.3%と低いことが大きな要因となっており、対応策としては、女性職員の継続採用を行うことだけでなく、産前産後休暇、育児休業制度について本人及び所属部門への周知徹底、総務課による職場復帰後のフォロー体制を構築する等、離職率の低減についても取り組んでいる。

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりである。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものである。

 

(1)資機材価格の市況変動について

 当社グループの主力事業である新造船事業において、受注から竣工引渡しまでが長期間に亘ること、製造コストに占める資機材価格の割合が高いことから、資機材価格の市況変動は、コストインパクトが大きく、財政状態と経営成績に影響を及ぼす可能性がある。

 現時点においては、鋼材価格の大幅な値上げやそれに伴う機材価格の上昇に対して、仕様、数量の見直しや使用材料の歩留率の向上、機材のロット発注や海外調達を実施するなどの対策によりリスクの低減に努めている。

 

(2)市況及び競合等の影響について

 当社グループの主力事業である新造船事業において、世界経済の動向に伴う貨物の荷動量及び船舶の需給関係等による受注価格の変動が、財政状態と経営成績に影響を及ぼす可能性がある。

 現時点においては、これまでの重油に代わる新燃料を造船所、船主ともに検討を進めているところであるが、その調達方法など具体的な方針が定まっていないことから、特に中小の船主においては、様子見の状況が続いている。また資機材価格及び人件費の値上がりに伴い製造コストは上昇し高船価化している一方で、運賃、用船料の水準が折り合わないことや、造船各社の期近な船台が埋まっていることから対象納期が3年以上先となるような先物も多くなっており、船主側に発注を控える動きがみられている。これに対して「プロダクトミックス」による受注活動及び修繕船事業と一体となっての受注活動、新規顧客の開拓を推進するなど、リスクの低減に努めている。

 

(3)為替の変動について

 為替相場の大幅な変動がある場合には、財政状態と経営成績に影響を及ぼす可能性がある。

 これに対して、当社グループでは、新造船については基本的には円建契約を原則としているが、外貨建契約船がある場合は為替相場の変動を注視しながら、先物予約を行うなどして為替変動リスクをヘッジすることとしている。

 

(4)人員の確保におけるリスク

 当社グループでは人員の確保が重要であると認識しており、新卒採用活動の強化や中途採用、従業員からの紹介による採用(リファラル採用)等の採用制度を導入するとともに、外注業者を活用するなど、安定的な人員の確保に努めているが、必要な人員が確保できない場合には生産性が悪化するなど、当社グループの財政状態と経営成績に影響を及ぼす可能性がある。

 これに対して、当社グループでは短期的には県外からの採用者の生活基盤を安定させるための独身寮などの設備の整備、新卒者1人に指導員1人を配置し、公私ともに相談ができる環境を整えるなど、離職率の低下に努めるとともに、技能実習制度及び特定技能制度による外国人材の積極的な活用を行っている。また、長期的には毎年継続的な採用を行うことや、地元小中学校からの進水式の見学の受け入れにより造船業界が身近なものになるよう取り組むなど、リスクの低減に努めている。

 

(5)訴訟等のリスク

 当社グループは、業務の遂行にあたり法令順守などコンプライアンス経営に努めているが、刑事・民事・租税・製造物責任法・知的財産権・環境問題・労務問題等に関連した訴訟等のリスクを負っており、その結果、当社グループの財政状態と経営成績に影響を及ぼす可能性がある。当該リスクに関しては、外部専門家の活用を行うとともに、社内会議、研修を通じて周知徹底しており、コンプライアンス意識の醸成に努めている。

 

(6)感染症によるリスク

 当社グループの従業員に感染症が拡大した場合、一時的に操業を停止するなど、当社グループの財政状態と経営成績に影響を及ぼす可能性がある。

 なお、当社グループではこれらのリスクに対応するため、予防や感染拡大に対して適切な管理体制を構築しており、国及び各自治体の要請に基づいて、感染リスクが高い国への渡航禁止、国内においては県をまたぐ出張の自粛、一部地域の在宅勤務の原則化等、社内ルールを定め、状況により随時改正をするなど、職員に周知徹底しており、感染リスクの低減と感染拡大の防止に努めている。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は以下のとおりである。

 

①財政状態及び経営成績の状況

 当連結会計年度におけるわが国経済は、企業収益は堅調に推移し、高い水準の賃上げ等の効果もあって名目賃金は増加したものの、円安の進行による輸入物価上昇、米等の食料価格の高騰等により実質賃金はマイナスとなっており、個人消費は力強さを欠いた状態が続いている。

 世界経済については、米国の通商政策をはじめとする政策の動向、ウクライナ情勢の長期化の動向を注視する必要がある。

 このような状況のもと、当連結会計年度の経営成績については、売上高446億48百万円(前年度比3.7%減)、営業利益14億15百万円(前年度比55.5%減)、経常利益11億77百万円(前年度比61.9%減)、親会社株主に帰属する当期純利益10億17百万円(前年度比55.0%減)となった。

 当連結会計年度の財政状態については、資産は前連結会計年度末に比べ13億33百万円減少し、424億86百万円、負債は、前連結会計年度末に比べ24億46百万円減少し、316億29百万円、純資産は、前連結会計年度末に比べ11億13百万円増加し、108億57百万円となった。

 

 セグメントごとの経営成績は次のとおりである。

 

(a) 船舶事業

 新造船市場においては、これまでの重油に代わる新燃料を造船所、船主ともに検討を進めているところであるが、その調達方法など具体的な方針が定まっていないことから、特に中小の船主においては、様子見の状況が続いている。また資機材価格及び人件費の値上がりに伴い製造コストは上昇し高船価化している一方で、運賃、用船料の水準が折り合わないことや、造船各社の期近な船台が埋まっていることから対象納期が3年以上先となるような先物も多くなっており、船主側に発注を控える動きがみられている。

 収益面については、新造船においては売上対象隻数が2隻減少(15隻→13隻)したこと、船種の違い、各船の決算日における工事進捗度が異なることにより前連結会計年度に比べ減収となった。また、改修船については前連結会計年度に改造船工事、大口の修繕工事の完工があったことから反動減となり減収となった。

 

 このような状況のもと、同型船の連続建造において、2工場(瀬戸田工場、因島工場)体制の強みを活かしたより効率的な生産性向上の取組みに加え、資機材費の削減については、全社を挙げてコストダウンを徹底して行い、新分野のLNG燃料フェリー、輸送船など5隻を引き渡した。

 なお、当社グループは、地球環境問題が企業の社会的責任として重要であることを十分に認識し、環境性能を踏まえた船舶の技術開発・設計を進めるとともに、事業活動を通して環境保全、省エネルギー、リサイクル等の環境負荷低減に取り組んでいる。

 この結果、当連結会計年度の船舶事業全体の経営成績については、売上高441億9百万円(前年度比4.0%減)、セグメント利益24億79百万円(前年度比40.9%減)となった。

 受注については、外航貨物船を中心に、豊富な建造実績のあるフェリーを受注することに努めた結果、新造船8隻(一般貨物船、フェリー、ロールオン/ロールオフ型貨物船(RORO船))、修繕船他で前期よりも減少するものの、ほぼ例年並みの479億85百万円(前年度比25.3%減)を受注し、受注残高は、新造船25隻他で1,004億97百万円(前年度比4.0%増)となった。

 

(b)その他

 陸上・サービス事業の当連結会計年度の経営成績については、売上高10億92百万円(前年度比1.3%増)、セグメント利益15百万円(前年度はセグメント損失0百万円)となった。

 

 

②キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末より101億3百万円減少し、45億9百万円となった。

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりである。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果使用した資金は53億75百万円(前年度は67億47百万円の獲得)となった。

 これは主に、売上債権及び契約資産が増加したことによるものである。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果使用した資金は12億1百万円(前年度は8億24百万円の使用)となった。

 これは主に、固定資産の取得によるものである。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果使用した資金は34億44百万円(前年度は5億28百万円の使用)となった。

 これは主に、長期借入金の返済によるものである。

 

 なお、当社グループのキャッシュ・フロー指標のトレンドは、次のとおりである。

 

2023年3月期

2024年3月期

2025年3月期

自己資本比率

18.5%

22.2%

25.6%

時価ベースの自己資本比率

6.7%

19.3%

22.3%

キャッシュ・フロー対有利子負債比率

1.33年

インタレスト・カバレッジ・レシオ

67.22倍

 1.自己資本比率:自己資本/総資産

 2.時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産

 3.キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業活動キャッシュ・フロー

 4.インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業活動キャッシュ・フロー/利払い

 (注1)各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により計算している。

 (注2)株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算定している。

(注3)営業活動キャッシュ・フローは、連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用し、有利子負債は連結貸借対照表に計上されている負債のうち、利子を支払っている全ての負債を対象としている。

       また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用している。

 (注4)2023年3月期及び2025年3月期のキャッシュ・フロー対有利子負債比率、インタレスト・カバレッジ・レシオの指標については、営業活動キャッシュ・フローがマイナスのため記載を省略している。

 

③生産、受注及び販売の実績

(a) 生産実績

 当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりである。

セグメントの名称

当連結会計年度

    (自 2024年4月 1日

    至 2025年3月31日)

前年増減比(%)

船舶事業(百万円)

41,032

1.8

報告セグメント計(百万円)

41,032

1.8

その他(百万円)

670

△0.9

合計(百万円)

41,702

1.7

 (注)1.金額は当連結会計年度の製造費用によっている。

 2.セグメント間の取引については相殺消去している。

 

(b) 受注実績

 当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりである。

セグメントの名称

受注高

受注残高

金額(百万円)

前年増減比(%)

金額(百万円)

前年増減比(%)

船舶事業

47,985

△25.3

100,497

4.0

報告セグメント計

47,985

△25.3

100,497

4.0

その他

539

26.9

21

2.4

合計

48,525

△24.9

100,519

4.0

 (注)1.前連結会計年度に受注したもので、当連結会計年度に値引、値増のあったものは受注高で修正している。

 2.セグメント間の取引については相殺消去している。

 

(c) 販売実績

 当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりである。

セグメントの名称

当連結会計年度

     (自 2024年4月 1日

     至 2025年3月31日)

前年増減比(%)

船舶事業(百万円)

44,109

△4.0

報告セグメント計(百万円)

44,109

△4.0

その他(百万円)

539

23.7

合計(百万円)

44,648

△3.7

 

 (注)1.総販売高に対する割合が10%以上の販売先に対する販売実績は次のとおりである。

 

販売先

セグメントの名称

総販売高に対する割合・金額

前連結会計年度

 MI-DAS LINE S.A.

船舶事業

10%~40%

 ㈱商船三井

 ROSA MARITIME S.A.

(4,638~18,553百万円)

合計

 

70%~80%

(32,468~37,106百万円)

当連結会計年度

 ㈱商船三井

船舶事業

10%~30%

 防衛装備庁

(4,464~13,394百万円)

合計

 

40%~50%

(17,859~22,324百万円)

 2.セグメント間の取引については相殺消去している。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は以下のとおりである。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものである。

 

①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

 (a)経営成績の分析

 当社グループは、売上高及び営業利益を重要な指標として位置付けており、2024年5月10日に開示している当連結会計年度の計画と達成状況については、以下のとおりである。

 

    i)2025年3月期計画との比較

 

2025年3月期

(計画)

2025年3月期

(実績)

2025年3月期

(計画比)

売上高

45,000百万円

44,648百万円

351百万円減

(0.8%減)

営業利益

900百万円

1,415百万円

515百万円増

(57.2%増)

 

    ii)前連結会計年度との比較

 

2024年3月期

(実績)

2025年3月期

(実績)

2025年3月期

(実績比)

売上高

46,383百万円

44,648百万円

1,734百万円減

(3.7%減)

営業利益

3,183百万円

1,415百万円

1,767百万円減

(55.5%減)

 

(売上高)

 当連結会計年度における売上高は、概ね計画どおりとなり、前連結会計年度に比べ17億34百万円減少し、446億48百万円(前年度比3.7%減)となった。これは主に、船舶事業において、新造船の売上隻数が2隻減少したこと、船種の違い、各船の決算日における工事進捗度が異なることによるものである。また、改修船については前連結会計年度に改造船工事及び大口の修繕船工事の完工があったことから反動減となった。

 

(営業利益)

 当連結会計年度においては、前連結会計年度に比べ17億67百万円減少し、営業利益14億15百万円(前年度比55.5%減)となった。これは主に、新造船においては、資機材価格の値上がりや、人件費の高騰などの影響により、低採算となった船の売上高が占める割合が多かったこと、修繕船の売上高の反動減の影響によるものである。

 

(経常利益)

 当連結会計年度においては、前連結会計年度に比べ19億10百万円減少し、経常利益11億77百万円(前年度比61.9%減)となった。これは主に、営業利益が前連結会計年度に比べ減少したことによるものである。

 

(親会社株主に帰属する当期純利益)

 当連結会計年度においては、前連結会計年度に比べ12億43百万円減少し、親会社株主に帰属する当期純利益10億17百万円(前年度比55.0%減)となった。これは主に、経常利益が前連結会計年度に比べ減少したことによるものであるが、前連結会計年度において、特別損失として訴訟関連費用5億61百万円を計上していることや、法人税等の費用が減少したため、営業利益、経常利益における前連結会計年度からの減少割合に比べ、減少幅は縮小している。

 

 なお、詳細については、「第2 事業の状況 4(1)経営成績等の状況の概要」に記載している。

 (b)財政状態の分析

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減

資産

43,819

42,486

△1,333

負債

34,075

31,629

△2,446

純資産

9,744

10,857

1,113

 

(資産)

  前連結会計年度末の438億19百万円から13億33百万円減少し、424億86百万円となった。

 これは主に、受取手形、売掛金及び契約資産が増加したものの、現金及び預金、前渡金が減少したためである。

 

(負債)

 前連結会計年度末の340億75百万円から24億46百万円減少し、316億29百万円となった。

 これは主に、契約負債が増加したものの、長期借入金が減少したためである。

 

(純資産)

 前連結会計年度末の97億44百万円から11億13百万円増加し、108億57百万円となった。

 これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益の計上によるものである。

 

 (c)経営成績に重要な影響を与える要因について

 詳細については、「第2 事業の状況 3事業等のリスク」に記載している。

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの分析については、「第2 事業の状況 4(1)②キャッシュ・フローの状況」に記載している。

 キャッシュ・フロー及び資本の財源及び資金の流動性については、当社グループは事業活動のための適切な資金を確保し、資金の流動性を維持するとともに、健全な財政状態を目指すための安定的な営業キャッシュ・フローの創出が資本財源の最優先事項と考えている。

 また、当社グループが船舶を建造する上で、建造工程の進捗に応じて分割払いが行われる造船業界の商慣習によって、工事代金の後払いが発生し、建造コストの支払いから売上債権の回収までの期間において手元流動性の低下が見込まれるため、常に一定程度の余剰資金を確保しておく必要があると考えている。

 当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は45億9百万円、有利子負債残高は56億80百万円であり、手元流動性は十分に確保している状況で、財務状況は健全であると認識している。

 当社グループの運転資金需要のうち主なものは、資機材の仕入れなど、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用である。投資を目的とした資金需要は、設備投資によるものである。

 短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資や長期運転資金の調達については、金融機関からの長期借入金を基本としている。

 なお、今後の事業成長に伴い生じる資金需要に対して、機動的かつ安定的な資金調達手段を確保するとともに、より一層の財務基盤の強化を図るために取引行4行とシンジケーション方式のコミットメントライン契約を締結している。

 

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりである。

 

5【重要な契約等】

(賃貸借契約の締結)

 カナデビア㈱と新造船の主力工場である因島工場の土地、建物等について賃貸借契約を締結している。

 

6【研究開発活動】

  当社グループの研究開発活動は、船舶事業において、新船型の開発等を行っており、当連結会計年度の研究開発費の総額は134百万円である。