第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

(1) 経営方針

当社グループは、企業理念及び経営方針を策定しております。

(企業理念)

「世界のあらゆる物流シーンで、お客様にソリューションを提供し続け、未来創りに貢献する」

(経営方針)

①「安全」……………安全がすべての基本であるという理念のもと、常に「安全第一」を心がけます。

②「従業員」…………個性、創造性、挑戦する姿勢を尊重し、働き甲斐のある職場づくりを目指します。

③「お客様」…………物流に携わるすべての人々に心からご満足いただける商品・サービスを提供します。

④「技術」……………最先端の技術により、物流の未来に新しい価値を創造します。

⑤「品質」……………日々の研鑽に努め、世界に選ばれる品質を追求し続けます。

⑥「環境」……………グローバルな視点で地球環境の保全に努め、地域社会の継続的な発展に貢献します。

⑦「コンプライアンス」……法令その他の社会規範を遵守し、誠実かつ公正に事業活動を遂行します。

 

(2) 経営戦略等

当社は2024年3月に、中期経営計画「Logisnext Transform 2026」を策定いたしました。

 

中期経営計画「Logisnext Transform 2026」の骨子

① 3つの基本戦略

(a)産業車両領域での成長

・脱炭素社会に向けた新製品の投入

・安心・安全を支える高付加価値製品の拡充

・新市場への展開加速

(b)物流ソリューション事業の飛躍

・AGV/AGFを核とした自動化・自律化商品の投入

・“人機協調”をサポートするシステムの開発

・顧客接点を最大限に活かした“つなぐ力・解決する力”の強化

(c)企業体質改善の継続と事業構造改革への挑戦

・固定費/変動費のさらなる改善

・真のグローバル経営体制の構築

・“働きがい”を重要視した経営の推進

 

(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当連結会計年度を含む直近3連結会計年度の主要な経営指標は以下のとおりです。

 

(単位:百万円)

 

122期

123期

124期

売上高

615,421

701,770

665,594

のれん等償却前営業利益

24,995

52,876

31,081

親会社株主に帰属する当期純利益

6,913

27,520

8,664

純資産額

76,027

117,333

124,309

総資産額

475,432

531,495

512,144

のれん等償却前営業利益率

4.1%

7.5%

4.7%

自己資本利益率

10.0%

28.6%

7.2%

総資本利益率

1.6%

5.5%

1.7%

 

(4) 経営環境

物流及び物流機器市場を取り巻く経営環境は大きな変化のさなかにあります。世界的な気候変動への対応としての脱炭素社会への移行や物流現場における労働人口の減少及び労働環境の改善要請に対し、当社グループは物流機器の電気化や自動化・自律化製品の投入を通じて貢献していくことが求められております。

また、物流現場の自動化・自律化が進展する中で、有人・無人の物流機器の連携、人と機械の協調を重視した、物流を「つなぐ」ニーズが台頭することを想定いたします。

 

(5) 事業上及び財務上の対処すべき課題

当社グループは、物流を取り巻く市場環境の大きな変化が見込まれる中で、さらなる成長を遂げるため、2035年に向けた指針として「長期経営ビジョン2035」を策定するとともに「パーパス」、「重視する価値観」を定め、2023 年11月に発行した「統合レポート2023」の中で公表いたしました。

また、2024年3月には2024年度から2026年度を対象とする中期経営計画「Logisnext Transform 2026」を公表いたしました。この中期経営計画は、「長期経営ビジョン2035」で示したビジョンからのバックキャストによるアプローチで検討を重ね、策定したものです。お客様や社会を取り巻く環境や競合環境が変化する中、物流機器を取り巻くニーズを「安心・安全」、「自動化・自律化」、「脱炭素」と見据え、これらを今回策定した中期経営計画のキーコンセプトとして成長の実現を目指します。

中期経営計画「Logisnext Transform 2026」の基本戦略は、「産業車両領域での成長」、「物流ソリューション事業の飛躍」、「企業体質改善の継続と事業構造改革への挑戦」であり、これら3つの基本戦略を通じて、“私たちがお客様の物流シーンを変える、社会を変える、私たちも変わる”ことを目指し、この計画を「Logisnext Transform 2026」と名付けました。また2026年度財務目標として「売上高7,000億円、のれん等償却前営業利益560億円、同営業利益率8.0%、自己資本比率30%以上、ROE20%以上」を掲げました。

この基本戦略の確実な実行と財務目標値の実現を、さらに「長期経営ビジョン2035」で掲げた目標「売上高1兆円、ソリューション事業売上高2,000億円、バッテリー車比率90%以上」の達成を目指します。

中期経営計画「Logisnext Transform 2026」に定めるキーコンセプトや基本戦略はいずれも、脱炭素、労働人口減少問題への対応、サステナブルな社会の実現といった世界共通の環境課題、社会課題の解決を目指すものでもあります。

当社のパーパス「パイオニア精神とテクノロジの力で物流の安全、自動化、脱炭素を実現し、世界の人々を笑顔にする」も、環境、社会課題の解決に向けた当社グループの考え方を示すものです。 当社グループは「企業理念」、「パーパス」、「重視する価値観」に基づく企業活動を通じて、中期経営計画「Logisnext Transform 2026」及び「長期経営ビジョン2035」の達成を目指すことこそが、当社グループを取り巻く課題への対処であると考えます。

 

 以下に中期経営計画「Logisnext Transform 2026」の基本戦略の最近の取り組みを示します。

 

 

(産業車両領域での成長)

 

・世界でのバッテリー車市場の拡大を見据え、バッテリー車ラインナップの拡充を推進いたします。バッテリー車の製品ラインナップにリチウムイオンバッテリー搭載仕様モデルを加えました。急速充電により充電時間を大幅に短縮することで、従来はエンジン車が採用されてきた長時間稼働が求められる現場にも活躍の幅を広げることが期待されます。また、環境を意識したお客様の様々なニーズに応えるバッテリー車の開発を進め、脱炭素社会の実現に貢献いたします。

・コスト競争力を重視したローエンドモデルのバッテリー車を開発し、2025年5月に中国市場向けに投入しております。市場環境の変化に伴うバッテリー車の世界的な需要拡大と需要の多様化に応えてまいります。

 

(物流ソリューション事業の飛躍)

 

・倉庫産業DXの実現を目指すGaussy株式会社との資本提携契約を締結しました。当社は外部パートナーとの連携、協業により、お客様の倉庫内物流現場の物流課題解決を目指します。

・鴻池運輸株式会社と共同で実施していた無人フォークリフトを活用したトラックへの荷積み自動化システムの実証実験を完了し、実運用を開始しました。物流2024年問題の解決に資するソリューションの提供を一層進めてまいります。

 

(企業体質改善の継続と事業構造改革への挑戦)

 

・欧州スウェーデン工場の閉鎖とフィンランド工場への生産集約により、従来の欧州生産3工場体制を2工場体制に再編し、生産効率の向上を図り、事業体質の改善を図りました。

・ローカルメーカーの台頭が進む中国市場において経営資源の選択と集中を図るために中国販売子会社の持分を売却いたしました。

・主にトラック部品を製造していた羽生工場の操業を停止し、UDトラックス株式会社に貸与いたしました。ノンコア事業の合理化を進め、主力事業に注力することで収益力の強化を図ります。

・本社の国内営業機能と子会社の国内直系販売会社の一体化による国内事業の再構築を行います。このことにより、効率性の高い事業運営を実現し、迅速かつ的確な市場動向、顧客ニーズの把握、お客様へのサポート体制の強化の実現と国内事業の収益力向上を目指します。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、以下のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

① ガバナンス

 当社グループは、サステナビリティに関するガバナンスとして、当社代表取締役社長を議長とし、経営会議メンバーで構成される「サステナビリティ会議」を設置し、年3回開催しています。「サステナビリティ会議」では、サステナビリティ全般に関する戦略の策定、マテリアリティの特定、課題に対する方針や対応の承認、サステナビリティ活動の取りまとめ、推進・フォローなどを行い、これらの活動状況は取締役会に報告されます。さらに、サステナビリティ会議では、当社の存在意義を明確にするパーパスを制定しており、このパーパスに基づき、SDGsの基本方針を設定しています。さらに注力するSDGsを踏まえ、マテリアリティごとの4つの分科会を設置しています。その一つであるカーボンニュートラル推進委員会では、気候変動に対する課題を把握し、CO排出の削減に向けた活動を実施しています。

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② リスク管理

 当社グループではリスク管理に関する最上位機関として「リスク管理委員会」を設置し、リスク管理委員会を半期に一回開催しています。リスク検討プロセスは「3.事業等のリスク (1)リスク管理体制」に記載のとおりであり、サステナビリティに関するリスクについてもこのプロセスにおいて検討し、重大リスクの状況及び対策の有効性についての評価を実施して、その結果を取締役会に報告しています。

 また、サステナビリティ会議においては、気候変動に関するリスクと機会について検討結果を確認しています。さらに人権尊重の観点から人権デューデリジェンスを開始しており、サプライチェーンにおいて発生しうる人権リスクを洗い出すとともに実態調査等を進めていきます。

 

 

③ 目標と戦略

 当社グループは、グローバルにビジネスを展開する総合物流機器メーカーとして、「パイオニア精神とテクノロジーの力で物流の安全性、自動化、脱炭素化を実現し、世界の人々を笑顔にする」という理念を掲げ、これをパーパスとして制定しています。このパーパスに基づき、SDGsに対する基本方針を、①地球環境の保全、②お客様の安心・安全、さらには自動化・自律化の推進、③ダイバーシティとエンゲージメント、④コーポレート・ガバナンスの強化の4つと定め、12のマテリアリティを特定しています。

 また、未来の物流業界の市場環境を考慮し、2035年に向けた「長期経営ビジョン2035」を設定しました。これを実現するための中期経営計画として「Logisnext Transform 2026』を策定し、想定されるリスクと機会を見極めながら、社会課題の解決と事業の持続的な成長に取り組んでいきます。

 

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(1)気候変動に関する取組み

a)想定する気候シナリオ

 当社グループは、2つの気候変動シナリオを設定し、2035年における各事業への影響を分析しました。

1つは、環境への影響を最小限とするため、2100年時点における世界の平均気温の上昇を、産業革命以前と比較して1.5℃以下に抑制しながら経済成長を目指す「気候変動政策厳格化により脱炭素を推進するシナリオ(脱炭素シナリオ)」です。

 もう1つは、現状ベースで化石燃料をエネルギー主体として経済成長を目指す「気候変動政策が厳格化されず引き続き化石燃料に依存するシナリオ(化石燃料依存シナリオ)」で、2100年時点における世界の平均気温が、産業革命以前と比較して4.0℃上昇することが想定されるものです。

 

b)想定した気候シナリオにおける当社グループのリスクと機会

 「脱炭素シナリオ」では、例えば炭素税などの規制が強化され、炭素排出に対するコストが大きく上昇することを想定しています。しかしながら、脱炭素化に対応した当社製品・技術の強みを生かすことで事業機会は十分に存在するものと考えています。

 一方、「化石燃料依存シナリオ」では、気候変動による物理的リスクが中心となります。

 機会については、当シナリオにおいても現在すでに各種環境規制を推進している先進諸国において今後規制が緩和されることは想定しがたいことから、当社の脱炭素技術の優位性を提供することで事業機会が生じると考えています。従って、リスクと機会に対する戦略としては両シナリオに共通のものとして、2035年時点に対し以下のとおり分析しました。

 

[リスク]

世界的な電化への移行に従い、内燃機関に関連する製品・サービスであるエンジンフォークリフトの需要減少が想定されます。

[機会]

 電化の進展に伴い、競争力のあるバッテリーフォークリフトの需要増が想定されます。

また電化・知能化により自動化・自律化を目的とした物流ソリューションの拡大が想定されます。

 

c)目標と戦略

① 目標:2040年カーボンニュートラル宣言

 当社グループは、2021年11月にカーボンニュートラル社会の実現に向けて、目標を策定し発表しています。

 当社グループのCO₂排出量(Scope1,2(注1))を、2040年までにNet Zeroにすることです。また、その中間目標として、2030年までに40%削減(2017年比)します。 これは、生産活動に伴う当社グループの工場等からのCO₂排出量の削減です。

 また、当社グループは製品・サービスを通じてお客様のCO2排出量削減(Scope3(注2))に貢献します。三菱重工グループはグループ全体で2040年までにバリューチェーン全体からのCO₂排出量をNet Zeroにすることを宣言しております。当社も物流シーンにおける脱炭素製品や自動化・自律化システムの提供を通じてその目標達成に取り組んでいきます。

(注1)温室効果ガス(GHG)排出量の算定と報告の国際基準であるGHGプロトコルにおけるScope1,2

(注2)温室効果ガス(GHG)排出量の算定と報告の国際基準であるGHGプロトコルにおけるScope3

 

② 目標達成に向けた戦略ロードマップ

 当社グループカーボンニュートラル目標の中間地点である2030年目標の達成に向けた取り組みとして「生産性の向上」、「省エネ活動の推進」、「三菱重工グループの革新的脱炭素技術の導入」を推進していきます。 お客様のCO₂排出量削減に向けた製品・サービスの取り組みとしては、「エネルギー効率の良いバッテリーフォークリフト」、「自動化・自律化を実現する物流ソリューション」の開発・提供を通じて推進していきます。

 また、これらの目標に対する進捗をモニタリングすることにより、リスクと機会への対応状況を確認しています。

 

 

(2)人的資本についての取組み

 少子高齢化と労働人口の減少が進む中、社内に異なる経験・技能・属性のある多様な視点や価値観を持った人材がいることは、会社が持続的成長をしていく上で強みとなります。特に経営の中核を担う管理職層が多様性を理解し、各個人のスキルを見出し、引き上げていくことが重要であるため、当社では人材の多様性の確保に向けた取り組みを進めています。また、働きやすさの追求に加え、社員のやりがいにもアプローチした「働きがい改革」を推進しています。「エンゲージメント向上」「多様性の確保」「快適な職場環境の構築」を実行の3本柱として掲げ、一人ひとりが自律的に考え、日々成長していけるような働きがいを感じる会社を目指していきます。

 

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a)エンゲージメント向上

〇 人材育成プログラム(キャリア形成サポート)強化

 社員が働きがいを感じるには、一人ひとりが自律的に自分のキャリアを構築できる仕組みが必要です。自分の価値を高める社員を増やすことで、生産性の高い強靭な組織を創るとともに、当社の人的資本を高めることに貢献すると考えています。そのため、研修費用などの人的投資を拡充し人材プログラムを強化しています。また、当社への入社を検討している学生の方々を惹きつけられる魅力的な取り組みを引き続き進めてまいります。また、新入教育教育においてもOJT指導員制度を設け、早期の戦力化、定着化を促進しています。

 

自律的なキャリア形成を支援する仕組み

キャリア面談制度

上司と部下で中長期的なキャリアビジョンについて擦り合わせを行い、目指す姿に向けたアクションを明確にすることで、自律的な行動・成長を促進する制度

キャリアチャレンジ制度

キャリア面談等における部課の異動希望について、それを実現する仕組みを創ることで、視野や経験値の拡大、モチベーション、スキルアップを図る制度

 

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 目標値: 2024年度から2026年度までに、社内サーベイの「仕事のモチベーション」項目を8.3%アップ、

      「活性職場数」項目を113%アップ。

 

b)多様性の確保

〇 女性活躍推進

 当社は人材の多様性確保の重要な項目に女性活躍推進を位置付け、次の行動計画を定めて取り組んでいます。

 

女性活躍推進法行動計画(2030年3月31日までの目標)

目標1

計画期間全体で新卒採用における女性比率20以上を達成する。

目標2

男性育休の取得率60以上を維持する。

目標3

管理職に占める女性労働者の割合5に増やす。

 

〇キャリア採用推進

 新しい価値観や経験を持つ人材を採用することで組織の活性化を図るため、入社者におけるキャリア採用者の比率の目標を40%と設定し採用活動を行っています。

 

[上記目標における進捗状況]

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※数値は毎年4月1日現在

 

※社外への出向者を除く

 

 

 

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※数値は毎年4月1日現在

 

 

 

〇 障がい者雇用

 当社は障がいの有無にかかわらず、個々人がそれぞれの希望や能力に沿った活躍ができる環境づくりに取り組み、障がい者雇用を推進しています。(目標値:法定雇用率2.5%超)

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 ※人的資本の取り組みについては連結子会社各社で行われておりますが、制度等の違いがあり、一律の設定や集計が困難であることから、当社単体にて記載しております。

 

c)快適な職場環境の構築

〇 選択型在宅勤務制度の導入

 個人の意思で最大で週4日の在宅勤務の選択を可能とする選択型在宅勤務制度を導入しています。これにより育児や介護など家庭と仕事を両立させることはもちろん、グローバル化など仕事を取り巻く環境の変化に対応することが可能となりました。在宅勤務比率は30%程度で推移しており積極的な活用を推進しています。

〇 メンタルヘルスケア推進

 高ストレス職場に対する職場活性化面談の実施、ラインケア・セルフケア研修の実施、産業医面談等を継続的に実施し、社員が健康で活力ある働き方ができるようメンタルヘルスケアの諸施策を推進しています。

〇 フリーアドレスの導入

 働き方改革による新しいオフィスの在り方として本社の一部にフリーアドレスを導入しています。部門を超えた社内コミュニケーションの活性化や電子化・省スペース化による業務の効率化を図っています。

 

目標値: 2024年度から2026年度までに、社内サーベイの「仕事のモチベーション」項目を8.3%アップ、

     「活性職場数」項目を113%アップ

 

 中期経営計画における重視する価値観として、「“働きがい:一人ひとりが自律的に考え、失敗を恐れずトライ&エラーができて、日々成長”」を掲げています。そのために、職場内や部門間を超えたコミュニケーションの活性化を促進する施策を実施するとともに、社員意識調査の調査結果により浮き彫りとなった課題と対策をアクションプランとして職場に落とし込み、それを実行することでスピーディーに人的資本の拡充と社員満足度の向上に努めていきます。

 

3【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1) リスク管理体制

当社グループは、経営に重大な影響を及ぼすリスクに対して、リスクの未然防止及び顕在時のリスクの最小化を図るため、リスク管理の推進・運営上の最高機関としてリスク管理委員会を設置し、グループ全体のリスク情報を統括・集約し、統一管理する体制を構築しています。半期ごとに各部門・グループ会社においてリスクの洗い出しを行い、リスクごとに設定したリスクオーナーが、該当リスクに係るグループ全体のリスク集約・分析・評価を実施し、対処すべきリスクを選定しています。対処すべきリスクは、11のリスクカテゴリに分類し、グループ全体のリスクの状況を可視化したリスクヒートマップで一元管理しています。

対処すべきリスクのうち、リスク高と評価したリスクは、当社グループの重大リスクとして、リスクオーナーが、グループ全体の対応方針とアクションプランを策定し全社的な活動をしており、それ以外のリスクについても各部門・グループ会社において事業活動の一環として管理しています。

これらの活動状況については、リスク管理委員会に報告され、当社グループ全体のリスクについて、体系的な識別・評価を行うとともに重大リスクの状況及び対策の有効性等について検証し、その後のリスク管理活動に反映しています。それらの結果は、半期ごとに取締役会に報告され、取締役会において監督しています。

 

《基本方針》

 リスク管理体制を構築し、リスク管理活動を継続的に実践することで、当社の事業活動の永続的な発展を確保する。

1.重大なリスクを特定し、リスクの未然防止に努める。

2.リスクが顕在化した場合、リスクを最小化するとともに速やかな回復に努め、再発防止を図る。

3.お客様、社会、株主、役員及び従業員の利益を損なわないように活動する。

4.役員及び従業員のリスクに対する認識やリスク管理能力を向上させ、社会的要請に応える。

 

《リスク管理体制図》

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《運用イメージ》

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《評価基準》

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(2) リスクの分類

《事業等のリスク/リスクヒートマップ》

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《重大リスク》

リスクカテゴリ

リスク項目

発生頻度

影響度

リスクシナリオ

現在の対策

経営環境・

戦略リスク

市場環境の変化

・世界的な景気低迷による受注大幅減

・中国製品の輸出拡大による当社製品の競争力低下

・廉価版製品の導入による品質低下とブランド価値毀損

・ODM採用や販売機種見直しによる価格競争力強化

・アフターサービス品質保持による製品の付加価値向上

・中国ブランドに対抗する製品の取扱い

・コスト競争力のある製品開発

経営環境・

戦略リスク

業務システム

統合

・システム導入遅延によるグループ全体の運営環境悪化

・経験豊富なプロジェクト管理への配置

・ゲート管理の徹底

商品開発・技術・品質リスク

認証不適合

・各国法規制対応の不備、遅延による販売機会の損失及び社会的信用低下

・法規制に関する適切な情報収集並びに開発・申請計画への反映

・教育及び啓蒙の実施

商品開発・技術・品質リスク

製造責任

・リコール

・品質不具合による当社製品の信頼性失墜

・製品の欠陥等に起因した訴訟による高額な損害賠償の発生

・商品開発プロセスの確実な運用

・グローバルでの定期的な不具合情報の共有と品質マネジメントシステムの運用

・弁護士との連携を含む法務部門の体制整備・適切なPL保険の付保

サプライチェーンリスク

主要原材料の

値上げ

・米中貿易戦争の再燃による高額関税の負担

・地域紛争の激化による物流網混乱

・供給国の多様化への対応

・物流業者との関係強化による安定航路の確保

自然災害・

災害リスク

地震・風水害

・自然災害等の発生に伴う長期にわたる事業活動中断

・BCP策定とBCMの継続的運用

・教育及び啓蒙の実施

情報セキュリティ

リスク

サイバー攻撃

コンピューターウィルス感染

・不正アクセスやランサムウェア感染に伴いシステム停止による事業活動中断

・セキュリティ方針の策定

・ネットワーク等の24時間監視及び惰弱性診断の実施による対策強化

・グローバルサイバーセキュリティ保険の付保

情報セキュリティ

リスク

大規模なシステム障害

・機器の故障や人為的ミスによるシステム障害に伴う業務停滞

・標準に準拠した開発・保守

・クラウドへの移行

・定期的な復旧テスト

・バックアップデータの安全管理

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

① 財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度における世界経済は、緩やかではあるものの安定して成長してきました。地政学的緊張が続く中、世界的にはディスインフレが進展していますが、地域によって濃淡があり金融政策を難しくしています。米国の景気は安定した内需のもと底堅く推移してきており、欧州も堅調な内需を背景に緩やかに回復傾向にあります。一方で、中国は不動産不況を始めとして内需が依然低迷を続けている中、輸出は米国による関税引き上げ前の駆け込み需要で一時的に伸長を見せたものの、先行きは不透明なものとなってきています。加えて、長期化しているウクライナ侵攻や不安定な中東情勢といった地政学的リスクもあり、景気の動向は地域ごとに様々な様相を呈しています。一方、我が国経済は、好調なインバウンド需要や物価上昇に対応した価格転嫁の進展などもあって企業の景況感は良好、設備投資も依然として堅調に推移しており、賃金の伸びも拡大基調で景気は緩やかに持ち直しています。世界経済はここまで緩やかに成長してきましたが、米国新政権の二転三転する関税政策に翻弄されながらインフレ並びに景気減退の懸念が高まり、また、それらが中国を筆頭にグローバルでサプライチェーンに対するリスクを増大させ、金利や為替の動向、長期化する地政学的リスクなどにより、世界経済の先行きは、より一層不確実性を増し、益々不透明で予断を許さない状況となっています。

このような中、フォークリフトを始めとする物流機器市場は、国内においては、引き続き安定的・堅調に推移しています。一方、海外においては、米州では代理店在庫の調整局面が想定よりも長引き、卸売需要も弱含みに推移していましたが、その局面も徐々に解消しつつあります。欧州は緩やかではあるものの回復基調にあり、アジアも在庫調整局面からか一時伸長が鈍化しながらも堅調に推移、中国においては景気減速にあっても物流機器需要は堅調です。ただし、需要堅調な物流機器市場も、バッテリー車化が進む中でリチウムイオンバッテリー車を始めとした中国製品の台頭により、特に欧州・アジアにおける競争は一層厳しいものとなっており、加えて米国の関税政策が投資意欲を減退させ、堅調だった物流機器需要に影響を及ぼすことも危惧されています。

当社においては、課題であったリードタイムを正常化させ、価格適正化による収益性の改善を進めながら、安心・安全、自動化・自律化、脱炭素といった物流機器市場のニーズの高まりにも応えています。そのような中、当社事業における最重要市場といえる米国においては、エンジン認証課題への対応として新型エンジン搭載車への置き替えを完了し引き続き挽回に努めているところです。しかしながら、米国新政権下での関税を始めとした政策次第ではグローバルでのコストアップも懸念され、当社事業における今後の見通しを困難なものにしています。

この結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。

 

a.財政状態

 当連結会計年度末における資産合計は5,121億4千4百万円となり、前連結会計年度末より193億5千1百万円減少しました。流動資産は、売掛債権等が減少したことにより59億3千6百万円減少,固定資産はのれん等償却により、134億1千4百万円減少しました。

 負債合計は3,878億3千4百万円となり、有利子負債及び買掛金が減少し、前連結会計年度末より263億2千7百万円減少しました。

 また、純資産につきましては、新株予約権及び非支配株主持分を除くと、1,237億3千3百万円となり、前連結会計年度末より69億9千3百万円増加しました。主な要因は、親会社株主に帰属する当期純利益の獲得による利益剰余金の増加があったためです。

 この結果、自己資本比率は24.2%(前連結会計年度末は22.0%)、1株当たり純資産額は1,160円02銭(前連結会計年度末は1,094円53銭)となりました。

 

b.経営成績

 当連結会計年度における売上高は、価格適正化効果や為替の円安影響があったものの、北米でのエンジン認証遅延による影響に加えて、代理店における在庫調整もあり、6,655億9千4百万円(前連結会計年度比5.2%減少)となりました。

 利益面では、米州での売上減少の影響が大きく、営業利益は207億6千6百万円(同51.3%減少)、経常利益は148億6千万円(同60.3%減少)となりました。また、親会社株主に帰属する当期純利益は、固定資産の譲渡に伴う売却益が計上されましたが、中国販売子会社の譲渡に伴う売却損、国内エンジン製造子会社において固定資産の減損損失及び北米での認証遅延にかかる偶発損失に備えるための引当金を計上したこともあり、86億6千4百万円(同68.5%減少)となりました。

 なお、のれん等償却の影響を除くと、営業利益は310億8千1百万円(同41.2%減少)、営業利益率は4.7%(同2.9ポイント減)となりました。

 

セグメントごとの経営成績は、次のとおりです。

(国内事業)

 国内事業は、受注が堅調に推移する中、価格適正化の効果もあって、売上高は1,961億8千6百万円(前連結会計年度比3.0%増加)となりました。セグメント利益は、輸出における円安影響に加え、堅調な国内販売における価格適正化の効果の寄与もあり、56億6千2百万円(同11.9%増加)となりました。

 なお、のれん等償却の影響を除くと、セグメント利益は103億1千5百万円(同4.2%増加)となりました。

 

(海外事業)

 海外事業は、為替の円安影響はあったものの、北米での一時出荷停止の影響に加え、地域によっては代理店の在庫調整の長期化もあり、売上高は4,694億8百万円(前連結会計年度比8.2%減少)となりました。セグメント利益は、欧米での売上減少の影響が大きく、151億4百万円(同59.8%減少)となりました。

 特に海外事業の前年同期は、部品欠品が解消されていく中で生産を拡大、出荷を促進し、加えて価格適正化の寄与もあり、売上高並びにセグメント利益を大きく伸長させました。それに反して当期は、北米でのエンジン認証遅延に伴い旧型エンジンの換装などに追加工数を要して生産効率の悪化を招き、また、エンジン認証遅延に起因する新型エンジンへの切り替えに伴う生産部品及び製品の廃却損失、評価損などの一時費用の発生もありました。さらに、代理店の在庫調整の影響もあったため、売上高、セグメント利益ともに減少しています。

 なお、のれん等償却の影響を除くと、セグメント利益は207億6千6百万円(同51.7%減少)となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ35億6千4百万円減少し、166億2百万円となりました。各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動により獲得した資金は、前連結会計年度645億6千3百万円に比べ、210億3千8百万円減少し、435億2千4百万円(前連結会計年度比32.6%減少)となりました。主たる要因は、仕入債務の支払額の減少や棚卸資産の減少額の増加があったものの、売上債権の回収額の減少や税金等調整前当期純利益の減少によるものです。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動により支出した資金は、前連結会計年度568億2千8百万円に比べ、231億7千7百万円減少し、336億5千1百万円(前連結会計年度比40.8%減少)となりました。有形固定資産の取得による支出額の減少や多額の有形固定資産の売却収入があったことによるものです。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動により支出した資金は、前連結会計年度19億7千8百万円に比べ、116億5千4百万円増加し、136億3千3百万円(前連結会計年度比589.0%増加)となりました。これは主に、有形固定資産取得時の金融取引にかかる収入の減少によるものです。

 

 

 

③ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

生産高(百万円)

前連結会計年度比(%)

国 内 事 業

225,716

100.6

海 外 事 業

357,456

84.6

合計

583,172

90.2

(注)金額は、販売価格によっております。

 

b.受注実績

当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

受注高

(百万円)

前連結会計年度比(%)

受注残高

(百万円)

前連結会計年度比

(%)

国 内 事 業

190,056

95.9

48,580

88.8

海 外 事 業

384,464

85.2

150,180

63.9

合計

574,520

88.5

198,761

68.6

 

c.販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

販売高(百万円)

前連結会計年度比(%)

国 内 事 業

196,186

103.0

海 外 事 業

469,408

91.8

合計

665,594

94.8

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。

 

① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

当社グループの当連結会計年度の財政状態及び経営成績は、「(1) 経営成績等の状況の概要」に記載のとおりです。

当社グループの経営成績等に重要な影響を与える要因として、「3 事業等のリスク」に記載のとおり様々なものがありますが、各種市場情勢の変化に細心の注意を払い、変化への柔軟かつ迅速な対応を継続していくことに尽力いたします。

セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容については、「(1) 経営成績等の状況の概要」及び上述のとおりとなっております。

中期経営計画「Logisnext Transform 2026」については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(5)事業上及び財務上の対処すべき課題」をご参照ください。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

  当社グループの財政状態については、116期において、ユニキャリア㈱の株式取得に伴う多額の借入れを

 行ったため、有利子負債が事業規模に比べ多額な状態が続いておりますが、フリーキャッシュ・フローの獲得を

 通じ、自己資本比率の向上を目指し、財務基盤の一層の強化を図ってまいります。

a.キャッシュ・フローの状況の分析

フリーキャッシュ・フロー

当社グループは、フリーキャッシュ・フローを営業活動により獲得されたキャッシュ・フローと投資活動に支出されたキャッシュ・フローの合計として定義しています。当社の経営者は、この指標を戦略的投資又は負債返済に充当可能な資金の純額、あるいは、資金調達にあたって外部借入への依存度合いを測る目的から、投資家に有用な指標と考えており、以下の表のとおりフリーキャッシュ・フローを算出しています。

(単位:億円)

 

123期

124期

営業活動によるキャッシュ・フロー

645

435

投資活動によるキャッシュ・フロー

△568

△336

フリーキャッシュ・フロー

77

98

当連結会計年度のフリーキャッシュ・フローは、前連結会計年度比21億円増加となりました。これは、営業キャッシュ・フローが前連結会計年度に比べ210億円減少した一方で、投資キャッシュ・フローの支出が、有形固定資産の取得による支出額の減少や多額の有形固定資産の売却収入があったことにより、前連結会計年度に比べ231億円減少したことによります。

当社グループは、フリーキャッシュ・フローの増加を図るため売上債権の流動化、棚卸資産の削減、アセットマネジメントに引き続き取り組んでまいります。

当連結会計年度におきましては、運転資本は、前連結会計年度より74億円増加(前連結会計年度4.9%増加)して1,584億円となっております。

(単位:億円)

 

122期

123期

124期

売上債権

1,033

997

962

棚卸資産

1,083

1,256

1,240

仕入債務

△809

△742

△618

運転資本

1,307

1,511

1,584

前期比増減

211

204

74

 

b.資本の財源及び資金の流動性

当社グループは、営業活動によるキャッシュ・フローに加えて他社からの借入れにより事業活動に必要となる資金を調達しております。借入先は金融機関及び当社の親会社である三菱重工業㈱並びにその金融子会社です。

当社グループの資金の流動性につきましては、当連結会計年度末において現金及び現金同等物を166億円有しており、事業活動のために必要な流動性を確保していると認識しておりますが、加えて当座貸越契約の締結や国内外で当社グループのCMS(キャッシュ・マネジメント・システム)及び三菱重工業㈱の金融子会社が提供するCMSの利用により機動的な資金需要に対応しております。

 

c.株主還元策

当社は、期中における急激な経済環境変動による業績変動に左右されない安定的、継続的な配当を実施する目的で、配当性向のみならず、「自己資本配当率(DOE※)」も考慮に入れながら、配当を決定しております。

※Dividend On Equity ratio=配当総額÷自己資本(=配当性向×ROE)

DOEは利益を積み上げた自己資本に対して、どの程度を配当に充てるかを表す指標であり、これを指標とすることで、自己資本に対する利益率の指標であるROEと株主還元の指標である配当性向のバランスを図ることが可能となります。

当連結会計年度は、株主各位への配当の充実と企業基盤確立のための内部留保とのバランスに配慮した利益配分を行うという基本方針に則り、1株当たり24円としております。(配当性向:29.5%、DOE:2.1%)

(参考)123期 20円/株(配当性向:7.8%、DOE:2.2%)

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。連結財務諸表の作成に際し、過去の実績や状況に応じ合理的と考えられる様々な要因に基づき、財政状態及び経営成績に影響を与える見積りを行っておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

詳細については、「第5 経理の状況」の(重要な会計上の見積り)をご参照ください。

 

5【重要な契約等】

(1)当社は2025年1月23日開催の取締役会において、2025年10月1日を効力発生日として、当社の連結子会社である直系国内販売会社9社のうち8社につきまして、そのうちの1社であるロジスネクスト近畿株式会社を存続会社として吸収合併し事業会社を設立すること(以下、「本合併」といいます。)を決定しました。本合併の概要は以下のとおりです。

 

  本合併の目的

  ・当社グループにおいては、グローバル化が急速に進展しており、売上規模で7割、総利益では8割を日本以外の海外事業が占めているが、今後のグループ全体でのさらなる成長のためには、国内の販売体制の強化が必要な状況にある。

  ・日本においては、利益率のアップが当社グループ全体の成長に向けた喫緊の課題であり、国内事業の再編により、効率性の高い事業運営を行い、変化の激しい外部環境に耐えうる体制を構築する。

  ・再編においては、直系国内販売会社のロジスネクスト近畿株式会社を存続会社とした、ロジスネクスト北海道株式会社を除く8社の吸収合併により、新事業会社を設立する。

  ・本再編に伴い、ロジスネクスト近畿株式会社の本店を当社本社のある京都府長岡京市に移転する。

 

  本合併の日程

   ・当社取締役会決議日  2025年1月23日

   ・吸収合併契約締結日  2025年6月23日

   ・本合併期日(効力発生日) 2025年10月1日(予定)

 

  本合併の方式

   ロジスネクスト近畿株式会社を存続会社として、ロジスネクスト東北株式会社、ロジスネクスト東京株式会社、ロジスネクスト関信越株式会社、ロジスネクスト中部株式会社、ロジスネクスト中国株式会社、ロジスネクスト四国株式会社、ロジスネクスト九州株式会社を消滅会社とする吸収合併方式といたします。

 

  本合併にかかる株式等の割当ての内容

   本合併は、当社の連結子会社(当社100%子会社)の合併であるため、株式その他の金銭の割当てはありません。

 

  本合併に伴う新株予約権及び新株予約権付社債に関する取扱い

   該当事項はありません。

 

  本合併存続会社の概要

   資本金 15百万円(提出日現在)

  事業内容 バッテリーフォークリフト、エンジンフォークリフト、コンテナキャリア、トランスファークレーン、搬送用ロボット、自動倉庫、WMS等の物流システム商品等の販売・メンテナンス

       WMS:ウェアハウスマネジメントシステム

 

(2)当社は、当社の経営方針や事業運営等に係る意思決定に関して、三菱重工業株式会社との間で2013年2月6日付統合契約書を締結しておりますが、改正府令の施行日より前に締結された契約であるため、記載を省略しております。

 

 

 

6【研究開発活動】

当連結会計年度の研究開発活動は、中期経営計画「Logisnext Transform 2026」の基本戦略に基づき行われました。当社技術本部の持つ強みを最大限に活用し、海外開発拠点との密接な連携を保つことで、新製品の市場投入を計画通り達成しました。セグメント別の主な研究開発活動は以下のとおりです。

 

〔国内事業〕

 (フォークリフト部門)

当社は、今後も高まる安心・安全ニーズに対する高付加価値製品として、AIカメラと回生ブレーキ※1制御を組み合わせたAI人検知システムの販売を開始しました。AIによる人検知で見えにくい所をカバーし、人検知後は回生ブレーキが作動し車両を減速、停車後は発進を抑制し、衝突事故防止をサポートします。半天球カメラが周囲360°の人を監視・検出し、しゃがんでいる状態など様々な姿勢の「人」をAIが映像解析し検知します。検出距離を近距離、遠距離の二段階で設定可能です。

適用機種は、従来からのバッテリー車の「ALESIS(アレシス)」「PLATTER(プラッター)」に加え、新たにエンジン車の「ERSIS(エルシス)」がラインナップに加わり、2024年12月より販売を開始しています。

 

※1 バッテリー車は回生ブレーキ、エンジン車はエンジンブレーキが作動

 

また、全世界的な脱炭素社会への移行に伴うバッテリー車のシフトに向け、日本国内では既存車へのリチウムイオンバッテリー(以下、LiB)搭載車のラインナップ拡充を推進しており、バッテリー車の「ALESIS」、「PLATTER」、無人フォークリフト(以下、AGF)の機種で販売を開始しています。

 

(物流システム部門)

当社は、物流・運送業界を取り巻く2024年問題に対し、物流サービスなどを手掛けるユーザーと共同で実施していたAGFによるトラックへの荷積み自動化システムの実証実験を完了し、2024年3月よりユーザーにおいて実運用を開始しています。その後も継続的な改善・改良を続け、2025年3月より一般向けの引き合いを開始しています。

 

また、海上と陸上の各種貨物輸送の結節点となるコンテナターミナルのゲートシステムを高機能化させた新コンテナターミナルゲートをユーザーに納入しました。当社初の高機能システムを導入した新コンテナターミナルゲートは、国土交通省の「令和6年度大阪港夢洲コンテナターミナルCTゲート高度化事業」に採択されたもので、システム更新を完了した既存ゲートとともに 2025年2月より運用を開始しました。

このゲートシステムは、ターミナルで搬出入するコンテナや、その輸送を担当するトレーラーの情報確認を、紙の文書や現物の目視で逐一実施していた従来の作業に代わり、事務所内のパソコンとの同時運用が可能で5Gを活用したハンディ端末によって行うものです。

 

三菱重工業株式会社(以下、三菱重工)との協業では、同社が開発した「ΣSynX(シグマシンクス)」※2による飲料倉庫のピッキング作業を自動化・知能化する自動ピッキングソリューションが導入実証を終え、2024年12月より国内初となる稼働を開始しました。

加えて「ΣSynX」の技術に基づいた当社独自の自動化システムの開発を推進しており、2024年9月の国際物流総合展では、同システムを搭載したAGFを出展し実機実演を行いました。高度な誘導方式やセンシング機能を用いたシステムプラットフォームの開発で、お客様の課題解決に直結するソリューションを提供していきます。

 

※2 ΣSynX:さまざまな機械システムを同調・協調させる三菱重工の標準プラットフォームであり、機械システムの知能化により最適運用を実現するデジタル・テクノロジーを集約したもの

 

〔海外事業〕

(フォークリフト部門)

当社は、全世界的な脱炭素社会への移行に伴うバッテリー車のシフトに向け、バッテリー車のラインナップ充実を推進しています。欧州・北米においては、中大型のバッテリー車やエンジン車の代替としてLiB搭載次世代バッテリー車を開発している他、中国においては、昨今、中国勢フォークリフトの進出により需要が高まっているLiB搭載低コストバッテリー車についても開発を進めています。

 

北米においては、新型エンジンを搭載した1.5~3.5t積LPGエンジン車、及び4.0~5.5t積LPGエンジン車をそれぞれ2025年1月と2月から順次出荷を開始いたしました。

 

 

 

 

(物流システム部門)

欧州においては、物流ソリューション販売での見積もり提供の際に使用する、高精度な計算でソリューション提案の自動シミュレーションを行う「Easy Layout Tool(以下、ELT)」を開発しています。

ELTの活用により、従来、経験豊富な技術者しかできなかった複雑なソリューションの見積もりを営業担当者でも簡単にシミュレーションが可能となり、ソリューション提案の最適化を実現することができました。今後は全世界での展開を目指しています。

 

また、人機協調のコンセプトを実現すべく、Mitsubishi Logisnext Europe Oyで開発された無人搬送車「Automated Compact Truck(ACT)」がプロダクトデザインと優れた実用性が評価され、ドイツの「レッドドット・デザイン賞(Red Dot Award)」※3を2024年に受賞しました。ACTは、2023年3月から受注を開始し、欧州をはじめ北米やアジアでも販売しています。機動力に優れ、限られたスペースでも重い荷物を効率よく搬送することができ、360°監視システムや大型ディスプレイによる車両状態や搬送状況の表示機能など、安全で実用的な機能が数多く備わっています。

 

翌2025年には、ACTよりも高い棚の荷役に対応したモデルである「Automated Reach Truck(ART)」も、新たに追加したショートフレーム仕様(2024年発売開始)がACTに続いて同賞を受賞しました。ARTの新仕様では既存モデルのリフト揚高と許容荷重を維持しながら旋回性を向上させ、より狭い通路でも稼働できるようにしました。荷の保管効率を高めることはお客様の大きなメリットであり、また、既存の倉庫のラックを改造することなく自動化を取り入れることにも貢献します。

 

※3 ドイツで1955年に設立された国際的なデザイン賞

 

当連結会計年度の研究開発費のセグメント別金額は、国内事業2,954百万円及び海外事業3,211百万円、合計6,166百万円です。