第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

(1)経営方針

当社グループは、「光」をテーマとしてお客様のニーズを創造し、社会の進歩発展に貢献するとともに、株主・お客様・従業員・取引先等 全てのステークホルダーとの共存共栄を図ることを経営の基本方針としております。また、CSR(企業の社会的責任)などから、「人と地球にやさしいものづくり」を全ての事業活動において展開、環境保全活動、社会貢献活動に取り組んでおります。

 

(2)経営戦略

企業メッセージ「安全を光に託して」のもと、自動車照明器、電気機器メーカーとしてお客様の求める新しい価値を創造、安全・安心、そして信頼できる製品・サービスの提供を通じて、自動車産業や社会の発展に貢献する企業であり続けたいと考えております。

当社グループの更なる発展・飛躍に向けた戦略は、次のとおりです。

-1. 自動車産業の世界最適生産の拡大に対応すべく、海外における開発・生産・販売部門を更に強化するなど、グローバル5極体制(日本・米州・欧州・中国・アジア)の充実を図る。

-2. コネクティッド・自動運転・シェアリング・電動化などモビリティ変化への対応をはじめ、お客様・市場ニーズを先取りした先端技術の開発と迅速な商品化を図り、タイムリーに魅力ある商品を提供する。

-3. 高品質・安全性を追求するとともに、環境保全及びコンプライアンス強化を推進する。

-4. 経営資源の確保と有効活用により、収益構造・企業体質の更なる強化を図る。

上記に関する具体的諸施策を講じ、株主・お客様・従業員・取引先の満足度向上、環境保全及び内部統制充実に向け努力していく所存であります。

 

(3)経営環境及び経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当期における経済情勢は、日本での企業収益及び雇用・所得環境の改善や、米国での堅調な個人消費等を背景に緩やかな回復傾向で推移しました。一方で、中国経済の失速や、各国での物価高騰に対する金融引き締めの影響、資源価格の高止まりや地政学的リスクもあり、総じて先行き不透明な状況で推移しました。

世界の自動車生産台数は、中国でのEV化進展による日本車の販売不振、日本での自動車メーカーの認証問題の影響継続、タイやインドネシアでの金利上昇・ローン審査厳格化などもあり、前期に対し若干の減産となり、当社の連結売上高は、前期比3.5%減収の9,167億円となりました。

収益性・健全性の高い経営を維持していくために、売上・利益に加え、資本効率を重視するとともに、財務基盤の強化を進めております。第1次中期経営計画において、資本収益性指標であるROICやROEの目標値やキャピタルアロケーションポリシーも定めております。株主還元について、安定的かつ継続的な配当を基本方針に連結配当性向を40%以上として配当水準の安定的向上による強化に加え、自己株式取得についても株価の水準などを考慮しながら機動的な実施を行うこととしております。

今後とも、「安全を光に託して」のもと、最新・最高のテクノロジーを追求し、「常にお客様の立場で考え、ご満足いただける製品・サービスを提供する」というKOITOの強み・DNAを継承してまいります。そして、先行き不透明な経営環境においても、経営環境の変化に柔軟に対応できる企業体質の強化と新商品開発、合理化等に取り組むとともに、資本効率の向上など、資本コストや株価を意識した経営を実践するなど、KOITO VISION~人と地球の未来を照らす~の実現に向けて、中長期的な企業価値向上に努めてまいります。

 

(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

小糸グループは、次世代モビリティに向けた電動化・自動運転の進展など、急速な経営環境の変化に柔軟に対応、企業価値を向上させるとともに、持続可能な社会の実現に貢献することが課題であります。

これに対処すべく、「KOITO VISION~人と地球の未来を照らす~」を策定、「企業基盤の強化」「持続的な成長」「地球・社会との共生」に取り組んでいます。

「企業基盤の強化」として、グループ発展の原動力となる人材を育成、「ものづくり・人づくり」の強化・革新を目指しています。また、製品の安全・品質を保証、法令の遵守、内部統制・情報セキュリティを強化することにより、すべてのステークホルダーから信頼されるコーポレート・ガバナンスの充実に取り組んでいます。

「持続的な成長」として、足元の業績改善を実施すべく更なる売上拡大を目指すとともに、買い方・作り方の改善、あらゆるコスト改革の断行により、利益を生む体質づくりに取り組みます。

更に、交通事故低減に寄与するADB(Adaptive Driving Beam :配光可変ヘッドランプ)の普及拡大を図るとともに、自動運転社会を見据えたLiDAR・コミュニケーションランプなど魅力ある製品をいち早く市場へ投入、世界中の人々に安全・安心をお届けし、お客様の満足と信頼を獲得してまいります。

「地球・社会との共生」として、2030年度のCO2排出量を2015年度比△50%削減、2050年度のカーボンニュートラル達成を目指し活動を強化しています。併せて、環境負荷物質の低減など、「人と地球にやさしいものづくり」を推進しています。また、一人ひとりが生き生きと働く企業を目指してまいります。

 

  2022年11月に策定したKOITO VISION~人と地球の未来を照らす~及び主な経営指標は以下の通りであります。

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    <主な経営指標>

 

2026年度目標

2030年度KOITO VISION

 売上高

1兆円以上

年率平均5%の成長

営業利益率

8%

10%以上

投下資本利益率

9%以上

10%以上

自己資本利益率

9%以上

10%以上

 

 

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

(1)サステナビリティ

  当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

  なお、文中の将来に関する記述は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

  ①ガバナンス

  当社グループは、気候変動を重要な経営課題の一つと捉え、「地球温暖化防止」をマテリアリティ(優先課題)の一つに特定、事業活動を通じてCO2排出量の削減などに取り組んでいます。これら気候変動に係る事項は、取締役会による監督のもと、代表取締役副社長を委員長、会長/社長/関連取締役・執行役員を出席者とするCN委員会にて審議されることで、全社横断的な活動を促進しています。

 

  ②戦略

 気候変動の進行は台風/洪水の増加など、当社グループの事業活動に様々な影響を及ぼす可能性があります。気候変動を抑制する過程においては、対応費用の増加などのリスクがある一方、当社 低排出製品の開発/拡販などの事業機会にもなり得ると考えています。

 当社グループは上記に基づき、TCFD提言によるリスク/機会から、現時点で財務諸表へ反映可能な項目を気候関連のリスク/機会として下記のとおり特定しました。その他項目についても、気候変動シナリオの改訂/拡充などにより影響額が算定可能になり次第、順次 財務諸表へ反映してまいります。

 尚、シナリオの分析においては、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の「RCP8.5」(4℃シナリオ)、並びに国際エネルギー機関(IEA)の「NZE」(1.5℃シナリオ)を参照しました。

区分

当社グループへの影響項目

リスク

CO2排出に対する費用増(炭素税/CN投資/再エネ導入コスト 等)

原材料コストの上昇(仕入先からのCO2削減コストの価格転嫁 等)

機会

低排出製品の開発/拡販(ヘッドランプLED化の計画以上の進展による売上高の増 等)

 

  ③リスク管理

 当社グループは、CN委員会の事務局部署であるサステナビリティ推進室を主体に気候関連リスクの特定/評価/管理を行っています。各組織での活動進捗をフォローし、必要に応じてCN委員会と取締役会に報告しています。

 

  ④指標及び目標

 マテリアリティ(優先課題)の一つに定めている「地球温暖化防止」に向け、原材料調達から製品の使用・廃棄に至るまで、サプライチェーン全体でCO削減活動を推進しています。

 この内Scope1+2については、2050年のカーボンニュートラル達成に向けたCO削減活動を全世界規模で推進、各国削減目標の必達を目指しています。これに向けた2030年度の連結中間削減目標は、2015年度比△50%となります。

 また、Scope3についても2030年度の連結中間削減目標を2018年度比△30%(カテゴリ1+11)と設定し、取引先との連携強化、製品の省電力化・軽量化などCO排出量の削減に向けた種々活動に取り組んでいます。

 

<モニタリング指標>

 ・連結Scope1,2,3のCO排出量

<2030年度目標>

 ・Scope1+2 CO排出量:2015年度比△50%

 ・Scope3    CO排出量:2018年度比△30%(カテゴリ1+11)

<2024年度実績>

 ・Scope1+2 CO排出量:284.3千t

 (注)Scope3 2024年度実績は、当社HP、及び統合報告書にて開示予定

 

 

 

(2)人的資本

 当社は、SDGsが掲げる「誰一人取り残さない」「すべての人が良く生きられる(well-being)」を実現するため、個人の国籍や性別などに関わりなく、多様な価値観を尊重し、従業員が生き生きと挑戦し続ける風土・制度づくりを推進しています。

 その中でも、当社は「ダイバーシティ推進」や「働き方改革」を優先すべき課題の一つと捉え、多様な人材の確保・活躍推進や働き易い職場環境整備に努めております。これら課題への的確な対応を図るため、毎年1回エンゲージメントサーベイを実施し、当社の状況を定量的に把握するとともに、従業員の声を施策立案に反映させております。

 更に、グループ発展の原動力となる人材の育成・教育の強化にも力を入れてまいります。

 

 ①ダイバーシティ推進

 当社は、持続的な成長の為に様々な視点や価値観が不可欠であると捉え、女性、外国人、キャリア採用者の管理職登用目標を設定し、中核人材における多様性の確保に努めております。

 2024年度の女性管理職比率は3.0%(前年比+0.5%)、外国人管理職比率は0.6%(前年比+0.3%)、キャリア採用者管理職比率は10.4%(前年比+0.9%)と、全ての指標が2030年度目標に向けて着実に向上しています。

 具体的な取り組みとしては、採用活動に於いては、当社魅力のPR・学生と若手社員の対話を中心とした座談会形式での説明会等を実施しました。人材育成に於いては、若手社員を対象としたキャリア形成教育、上司を対象とした多様性を活かすマネジメント研修、個々のライフプランに寄り添ったキャリア面談など、幅広いキャリア支援に取り組んでいます。

 また、シニア層が活躍し続けられる環境を整備するため、定年年齢を60歳から65歳に段階的に引き上げるように制度を改定しました。加えて、再雇用制度も改定し70歳まで働くことが出来る環境を整えました。これらの制度を通じて、シニア層が持つ豊富な経験や能力・知見を最大限発揮し、技術の伝承・後進の指導に努めていくことで、当社の競争力向上・持続的な成長を図ってまいります。

 

 ②働き方改革

 当社は、従業員一人ひとりが能力を最大限に発揮できる環境づくりを目指し、長時間労働の抑制や年休取得推進を柱としたワークライフバランスの充実に取り組んでいます。又、柔軟で多様な働き方の推進として、在宅勤務制度に加え、時間単位の年次有給休暇を導入、従業員が生き生きと働くことが出来る環境を整えております。

 育児・介護制度に於いては、小学校卒業まで利用可能な短時間勤務や高等学校卒業まで利用可能な子の看護等休暇等、法定を大きく上回る制度を整備しています。特に男性の積極的な育児参加を推進した結果、2023年度以降、男女ともに育児休業と育児目的休暇の取得率100%を継続しております。これらの取り組みが高く評価され、2024年度には「くるみん認定」を取得いたしました。

 今後も、職場全体に育児と仕事の両立への理解を深めるとともに、性別に関わらず活躍できる組織・環境づくりを目指してまいります。

 

 ③指標及び目標

 人材の多様性の確保を含む活動を評価する指標として、下記目標を設定し、取り組んでいます。

 

指標

2023年度 実績

2024年度 実績

2030年度 目標

ダイバーシティ

女性管理職比率

  2.5%

  3.0%

 10.0%

外国人管理職比率

  0.3%

  0.6%

  2.0%

キャリア採用者管理職比率

  9.5%

  10.4%

 15.0%

働き方改革

女性の育児休業取得率

100.0%

100.0%

100.0%

男性の育児休業と育児目的休暇の取得率

100.0%

100.0%

100.0%

 

 

3【事業等のリスク】

当社グループの経営成績・株価及び財務状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には以下のようなものがあります。当社グループでは、これらのリスクが発生する可能性を十分認識し、リスク管理を行うとともに、発生した場合には迅速かつ適切な対応に努めてまいります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1)経済状況

当社グループの全世界における営業収入のうち、重要な部分を占める自動車照明関連製品の需要は当社グループが製品を販売している国又は地域の経済状況の影響を受けます。従って、日本・北米・中国・アジア・欧州・その他当社グループの主要市場における景気後退、及びそれに伴う需要の縮小は当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)法的規制

当社グループの主要製品である自動車照明器は、日本国内のみならず事業展開する各国において、自動車の重要な保安部品として道路運送車両法、保安基準等の様々な法的規制を受けております。従って、予期せぬ法的規制の変更が生じた場合、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)為替相場の変動

当社グループの事業には、全世界における製品の生産と販売が含まれております。各地域における売上・費用・資産・負債等を含む現地通貨建ての項目は連結財務諸表作成のため円換算されております。従って、換算時の為替相場により、これらの項目は、現地通貨で変動がない場合でも円換算後の価額に影響を及ぼす可能性があります。一般に、他の通貨に対する円高は当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)海外進出に潜在するリスク

当社グループの生産及び販売活動のうち、海外依存度は高く、これらの海外市場への事業進出に内在しているリスクは下記のとおりであります。

① 予期しない法律または規則の変更

② 不利な政治または経済要因

③ テロ、戦争、その他の要因による社会的混乱

 

(5)製品の欠陥

当社グループは、日本国内及び事業展開する各国において認められている品質管理基準に従って製品を製造しておりますが、将来にわたって全ての製品に欠陥がなくリコール等に伴う費用が発生しないという保証はありません。そのため製品の欠陥に伴い、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(6)原材料等の調達及び価格変動

当社グループは製品の製造に必要な原材料や部品を国内・海外の複数のグループ外供給元から調達しています。

安定的な調達のため、供給元の分散や代替品の検討などを実施しておりますが、地政学的リスクや需給バランスの動向等によって、価格高騰や、生産に必要な原材料・部品が確保できない場合、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

特に主要原料である樹脂材料は、原油価格相場の高騰によって調達コストが増大する可能性があります。

 

(7)自然災害や感染症等

地震・津波や台風等の自然災害によって、当社グループあるいは得意先、仕入先の生産・物流・販売等の拠点が被害を受けるリスクがあります。当社グループとして災害防止活動や設備点検を行っておりますが、これら災害による影響を完全に防止できる保証はありません。特に日本における製造拠点の多くが静岡県に集中しており、中部電力浜岡原子力発電所の近郊に所在している工場があるため、万一大規模な災害が発生した場合、当社グループにおける自動車照明器等の生産能力が著しく低下する可能性があり、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、感染症の世界的な流行等によっては、今後の生産、販売活動について悪影響を受ける可能性があります。

 

 

(8)その他

当社グループは、グローバルサプライヤーとして、世界各国に事業を展開しており、国内外の競争法等の適用を受けております。従って、各種命令や法的措置等を受けた場合には、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析は以下のとおりであります。

 

(1)経営成績分析等

当期における経済情勢は、日本での企業収益及び雇用・所得環境の改善や、米国での堅調な個人消費等を背景に緩やかな回復傾向で推移しました。一方で、中国経済の失速や、各国での物価高騰に対する金融引き締めの影響、資源価格の高止まりや地政学的リスクもあり、総じて先行き不透明な状況で推移しました。

 

世界の自動車生産台数は、中国でのEV化進展による日本車の販売不振、日本での自動車メーカーの認証問題の影響継続、タイやインドネシアでの金利上昇・ローン審査厳格化などもあり、前期に対し若干の減産となり、当社の連結売上高は、前期比3.5%減収の9,167億円となりました。

 

地域別セグメントの状況は、以下のとおりです。

〔日 本〕

自動車メーカーの認証問題の影響継続やサプライヤーでの災害による生産・出荷停止等により、自動車生産台数が減産となったことから、売上高は前期比2.8%減の3,516億円となりました。

〔北 米〕

自動車メーカーの部品供給問題等の影響により、自動車生産台数は減産となりましたが、新規受注に加え、為替換算の影響により、売上高は前期比3.7%増の2,971億円となりました。

〔中 国〕

EV化進展により現地ローカルメーカーの販売が伸び、自動車生産台数は増産となりましたが、当社売上比率の高い日本車の販売不振が継続した影響から、売上高は前期比29.2%減の583億円となりました。

〔アジア〕

インドでは経済成長に伴う需要増加が見られましたが、タイやインドネシアでの金利上昇等に伴う販売不振等により、アジア全体の自動車生産台数は減産となりました。売上高は減産の影響はありましたが、為替換算により、前期比1.4%増の1,555億円となりました。

〔欧 州〕

個人消費の低迷等を背景に自動車生産台数が減産となったことや、受注車種の生産打切りの影響から、売上高は前期比27.3%減の361億円となりました。

〔その他〕

需要増に伴う自動車生産台数の増加に加え、新規受注の影響等により、売上高は前期比8.8%増の179億円となりました。

 

利益につきましては、生産・出荷停止の影響や、品質対応費用など一過性費用が発生したことに加え、当第4四半期より米国・セプトン社を子会社化するなど、LiDAR事業に係る投資が増加しました。こうした中、グループ一丸となった生産性改善など、合理化活動を推進しましたが、営業利益は前期比19.9%減の448億円、経常利益は同22.3%減の491億円となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、政策保有株式の売却や受取補償金など特別利益が発生したことから、同13.1%増の462億円となりました。

 

(2)財政状態分析等

当期末の資産の残高は、自己株式の取得により現金及び預金が減少したこと、投資有価証券が減少したこと等から、前期末に比べ756億円減少の8,899億円となりました。

負債の残高は、借入金が減少したことや、株価の変動により繰延税金負債が減少したこと等から、前期末に比べ362億円減少の2,100億円となりました。

純資産の残高は、自己株式の取得等により、前期末に比べ394億円減少の6,798億円となりました。

 

(3)キャッシュ・フロー分析等

当連結会計年度における連結ベースの現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度に比べ332億円減少し、1,012億円(前連結会計年度末比24.7%減)となりました。なお、投資等に係る所要資金につきましては、自己資金及び借入金をもって充当いたしました。

 

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益645億円、減価償却費437億円を主体に920億円となり、法人税等を支払った結果、883億円(前期は963億円)の資金を確保いたしました。

投資活動によるキャッシュ・フローは、投資有価証券の売却及び償還による収入94億円に対し、設備投資482億円等を実施した結果、409億円の支出(前期は501億円の支出)となりました。

財務活動によるキャッシュ・フローは、自己株式の取得500億円、配当金等の支払い182億円等を実施した結果、783億円の支出(前期は596億円の支出)となりました。

 

なお、当社グループの資金需要のうち主なものは、材料費、人件費、研究開発費及び設備投資資金です。これらの資金需要につきましては、自己資金及び銀行借入金を充当しており、銀行借入については必要資金を精査し、不測の事態に備え、必要な借入枠増枠やその検討等を進めております。

 

(4)重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、連結会計年度末における資産、負債の金額及び連結会計年度における収益、費用の金額に影響を与える重要な会計方針及び各種引当金等の見積り方法(計上基準)につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおりであります。また、連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

(5)生産、受注及び販売実績

①生産実績

当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

前年同期比(%)

日本(百万円)

533,200

96.5

北米(百万円)

290,534

104.4

中国(百万円)

66,804

78.7

アジア(百万円)

157,017

99.7

欧州(百万円)

35,936

72.7

その他(百万円)

18,189

104.7

合計(百万円)

1,101,682

96.7

(注)金額は販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。

 

②受注実績

当社グループの生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても構造・形式等は必ずしも一様ではありません。また自動車照明器は自動車メーカーの組付用が大部分で、各納入先より2~3ヶ月前より指定車種の生産計画の内示を受け生産予想をたてますが、実際の納入は、メーカーの翌日または旬日に合わせた指示により、ライン納入している状況であります。従って内示と実際とは異なる場合もあり、受注高及び受注残高を算出することは困難であります。また補修品については、販売計画に基づき見込み生産を行っております。

なお、連結子会社コイト電工㈱は、受注による営業活動が主体となっており、その受注高及び受注残高は次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前年同期比(%)

受注残高(百万円)

前年同期比(%)

日本

32,483

81.5

15,911

83.0

 

③販売実績

当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

前年同期比(%)

日本(百万円)

351,640

97.2

北米(百万円)

297,157

103.7

中国(百万円)

58,303

70.8

アジア(百万円)

155,522

101.4

欧州(百万円)

36,182

72.7

その他(百万円)

17,903

108.8

合計(百万円)

916,709

96.5

(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。

2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

トヨタ自動車㈱

128,424

13.5

119,571

13.0

 

5【重要な契約等】

(1)技術援助等を受けている契約

相手方の名称

国名

契約品目

契約内容

契約期間

PTI Technologies Inc.

米国

航空機用フィルター

技術情報の提供

製造、販売権の許諾

2018年10月1日から

10年間

(注) 上記についてはロイヤルティーとして一定額又は売上高の一定率を支払っております。

(2)技術援助等を与えている契約

相手方の名称

国名

契約品目

契約内容

契約期間

Farba Otomotiv A.S.

トルコ

自動車照明器

技術情報の提供

製造、販売権の許諾

1997年10月24日から

30年間

Lumotech (Pty.) Ltd.

南アフリカ

2006年5月4日から

20年間

AuVitronics Limited

パキスタン

2005年3月7日から

25年間

(注) 上記についてはロイヤルティーとして一定額又は売上高の一定率を受け取っております。

 

   (3)当社は、2024年7月29日開催の取締役会において、セプトンインク(以下、セプトン社)の株式を、当社が買収の

   ために米国デラウェア州に設立した中間持株会社の完全子会社である買収子会社とセプトン社の合併による方法

     (逆三角合併)を通じて取得することを決議し、当社、買収子会社及びセプトン社間における合併契約を締結いた

      しました。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(企業結合等関係)」に記載のとおりで

      あります。

 

 

6【研究開発活動】

当社グループは、KOITO VISION「人と地球の未来を照らす」を策定し、「企業基盤の強化」「持続的な成長」「地球社会との共生」に取り組んでおります。「持続的な成長」では魅力ある製品をいち早く市場投入し、安全・安心に貢献するため、新しい技術を創造する研究開発と、それを商品化する技術開発を中心にエレクトロニクス等の先端技術を駆使して安全性の向上を追求した独創的なシステム・複合商品の開発を行っております。また、「地球社会との共生」ではカーボンニュートラル達成に向け、環境に配慮した製品・材料・工法等の開発により、「人と地球にやさしいものづくり」を推進しております。

当社グループの研究開発は、小糸製作所技術センター(日本)を中心に、ノースアメリカンライティングインク技術センター(北米)、コイトチェコs.r.o.技術セクション(欧州)、広州小糸車灯有限公司技術センター(中国)と、タイコイトカンパニーリミテッド技術センター(アジア)の世界5極体制にて展開しております。更に米国シリコンバレーに研究ラボを開設し、ADAS(高度運転支援システム)や自動運転技術の研究・情報収集を行っております。グループ全体の研究開発スタッフは、2025年3月末時点で2,969名であります。

当連結会計年度における各セグメント別の研究目的等は次のとおりであります。

なお、当連結会計年度の研究開発費の総額は411億円であり、セグメント別の研究開発費は、日本229億円、北米 123億円、中国24億円、アジア26億円、欧州6億円であります。

(1)日本

① 自動車照明器のコア技術(光学、電子、機構、構造など)の開発

② 新光源の開発

③ センシング技術開発など自動運転関連技術の開発(LiDARなど)

④ スマートインフラ技術開発

⑤ 鉄道車両関連電装品の開発

⑥ 航空機部品の開発

⑦ 新規事業分野の新商品開発 等

 

(2)北米

① 自動車照明器のコア技術(光学、電子、機構、構造など)の開発

② センシング技術開発など自動運転関連技術の開発(LiDARなど) 等

 

(3)中国、アジア及び欧州

① 自動車照明器のコア技術(光学、電子、機構、構造など)の開発 等