第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループは、社会、環境との調和を求め、お客様から信頼していただける良きパートナーとして共に発展することを目指し、経営の基本方針として、次の企業理念・行動指針を掲げている。

・企業理念 : 「運ぶ」を支え、信頼されるパートナーとして、豊かな暮らし創りに貢献します。

・行動指針 : 私たちは、信頼を全ての基本とし、自ら考え、行動し続けます。
 (商品) 「真のニーズを研究し、魅力ある商品・サービスの創造」
 (自己) 「約束を守り、誠実で、迅速な対応」
 (組織) 「世界の仲間とチームワークで達成」

 

 当社グループを取り巻く事業環境は、為替リスクや地政学的リスクの増大など、今後も予断を許さない状況が続くことが見込まれる。また、中長期的には、電動化やコネクテッド技術の普及など、大きな環境変化が予想される。

 当社グループはこのたび、このような環境変化に耐え、柔軟に適応していくために、2030年に向けて、当社グループの中長期に目指す姿を“人々の生活環境、社会の生産活動を支えるCV・LCVとパワートレイン(注)のエクセレントカンパニーとして、広く愛される会社“と定めることとした。今後は、この中長期に目指す姿の実現に向け、社会とともに持続可能な成長を続けていくために、事業活動を通じた社会課題の解決と、社会的価値の創造に取り組んでいくこととし、この活動をスタートするにあたり、新たに「中期経営計画」(2019年3月期から2021年3月期まで)を策定した。

 この中期経営計画で当社グループは、既存事業をより深く掘り進め、収益の拡大に努めるとともに、中長期に目指す姿の実現に向けた、既成概念にとらわれない新たな事業領域への挑戦も念頭に、「お客様との協創活動によるビジネス革新」海外CV事業の拡大」「LCV事業の強靭化」「パワートレイン事業の強化」「先進技術開発の加速」「デジタルイノベーションの推進」および「新規事業の創出」の7つの課題の実現につとめていく。

 同時に、品質の管理・向上とコンプライアンス体制の強化にも、一層の力をいれて取り組んでいく。

 また、この中期経営計画においては、高い成長性と強固な収益力発現の客観的な指標として、最終年度である2021年3月期の連結売上高や計画期間中の3期平均の連結営業利益率を掲げるほか、資本効率の指標として計画期間中の3期平均の自己資本利益率も掲げている。このほか、財務の方針として持続的な成長を確かなものとするため、中長期を見据えた事業投資を推し進めつつ、株主還元を着実に実施していくこととし、2019年3月期から2021年3月期までのキャッシュ・フローと配分について営業活動によるキャッシュ・フローと財務活動によるキャッシュ・フローの合計額、設備投資と戦略投資の合計額および計画期間中の3連結会計年度の平均の総還元性向を掲げている。

  なお、本文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(平成30年6月28日)現在において当社グループが判断したものである。

 

(注)文中「CV」「LCV」「パワートレイン」とあるのはそれぞれ「商用車」「ピックアップトラックおよび派生車」「エンジン、トランスミッションおよび駆動系のコンポーネント」のことを示す。

 

2【事業等のリスク】

  有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがある。

  なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(平成30年6月28日)現在において当社グループが判断したものである。

(1)主要市場の経済状況・需給動向及び価格の変動

  当社グループの全世界における営業収入のうち、重要な部分を占める自動車の需要は、当社グループが製品を販売している国・地域及びその市場における経済状況の影響を受けるため、当社グループの主要市場における景気後退、及びそれに伴う需要の縮小は、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性がある。また他社との価格競争により当社製品の価格変動を引き起こす可能性がある。

(2)金利変動

  当社グループは日頃よりキャッシュ・フローの管理に努めているが、資金調達に係わるコストは、市場金利が急激に上昇した場合、支払利息の負担が増大するなど、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性がある。

(3)為替変動

  当社グループの事業には、世界各地における製品の生産と販売が含まれている。各地域における売上、費用、資産、負債を含む現地通貨建の項目は、連結財務諸表の作成のために円換算されている。換算時の為替レートにより、これらの項目は元の現地通貨における価値が変わらなかったとしても、円換算後の価値が影響を受ける可能性がある。また、為替変動は、当社グループが購入する原材料の価格や販売する製品の価格設定に影響し、その結果、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性がある。

(4)大口顧客企業への依存

  当社グループは、当社製品である自動車やその構成部品等を、トリペッチ いすゞ セールス㈱(タイ国バンコク市)や、ゼネラル モーターズ コーポレーション(アメリカ合衆国ミシガン州デトロイト市)およびそのグループ企業などの大口顧客企業に販売・供給している。これらの顧客企業への売上は、顧客企業の生産・販売量の変動など当社グループが管理できない要因により影響を受け、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性がある。

(5)資材、部品等のサプライヤー及び業者

  当社グループは、生産に必要な原材料、部品及び製品を外部のサプライヤーから調達しているが、サプライヤーの能力を大幅に超えるような需給状況になった場合や、サプライヤーに生じた事故や不測の事態により供給能力が大幅に低下した場合は、十分な量を確保することができなくなる可能性がある。これらの供給の遅れや、不足が生じた場合は、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性がある。また、需給の逼迫などにより原材料等の価格が高騰し、生産性向上などの内部努力や価格への転嫁などにより吸収できなかった場合には、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性がある。

(6)研究開発

  当社グループの置かれた経営環境は競争の激化や市場ごとに異なる商品ニーズの多様化などが見込まれる。このような経営環境に対応し、「運ぶ」を支える「ものづくり事業」を推進していくには高い技術と市場のニーズを的確にとらえた製品を提供する研究開発への取組みが不可欠であるが、もし求められる技術水準への到達や適正な市場ニーズの把握に失敗や遅延した場合には、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性がある。

(7)製品の欠陥

  当社グループは国内外の各工場で世界的に認められている厳格な品質管理基準に従って各種の製品を製造している。しかし、万が一大規模なリコールを実施する場合には多額のコストが発生し、また製造物賠償責任については保険に加入しているが、この保険により填補できない場合には、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性がある。

(8)合弁事業

  当社グループは、いくつかの国において、各国の法律上の、あるいはその他の要件により合弁で事業を行っている。これらの合弁事業は、合弁相手の経営方針、経営環境などの変化により影響を受けることがあり、そのことが、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性がある。

 

(9)災害等による影響

  当社グループは生産工程の中断による潜在的な悪影響を最小化するために、全ての設備における定期的な災害防止検査と設備点検を行っているが、災害、停電またはその他の中断事象による影響を完全に防止または軽減できない可能性がある。また、新型インフルエンザなどの疫病・感染症などが世界的に流行した場合には、当社グループの生産活動及び販売活動に大きな支障をきたす可能性がある。

(10)IT化社会におけるリスク

 近年はビジネスの現場において、顧客情報の収集・利用や営業秘密としての技術情報の活用、設備の自動制御など、情報技術の利活用が不可欠なものとなっている。こうした情報技術やITネットワークについては様々な安全対策を実施してはいるが、システム障害やコンピューターウィルスへの感染、サイバー攻撃等が発生した場合には、業務の中断や、データの破損・喪失などを引き起こす可能性がある。またその結果、当社グループのブランドイメージ毀損や業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性がある。

(11)情報セキュリティ

  当社グループは、個人情報や機密情報の保護のための情報セキュリティの取組みをはじめとして、法令等の遵守については未然防止の対策を講じているが、不測の事態により情報漏洩等が発生した場合、企業としての信用低下、顧客等に対する損害賠償責任が発生するなど、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性がある。

(12)有価証券投資

  当社グループは、製品を生産・販売・流通させ、あるいは取引先との間の良好な関係を構築または維持するために有価証券投資を行っている。このうち、市場性のあるものについては、株価下落により、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性がある。また、市場性のないものも含め、経営環境の急激な変化などにより投資先企業の財政状態が著しく悪化した場合には、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性がある。

(13)会計上の見積額の変動

  連結財務諸表の作成にあたり「退職給付に係る負債」や「繰延税金資産」など会計上の見積りが必要な事項については、合理的な基準に基づき見積りを行っているが、見積り特有の不確実性があるため、金額の見直しや実際の結果と異なる場合があり、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性がある。

(14)国際的活動及び海外進出に潜在するリスク

  当社グループの製品の生産及び販売活動は、日本国内のみならず広く海外で行われている。これらの海外市場での事業展開には以下に掲げるようないくつかのリスクが内在している。

・ 不利な政治または経済の変動

・ 人材の採用と確保の難しさ

・ 未整備の技術インフラが、製造等の当社グループの活動に悪影響を及ぼす、または当社グループの製品やサービスに対する顧客の支持を低下させる可能性

・ 潜在的に不利な税影響

・ テロ、戦争、自然災害、その他の要因による社会的混乱

 これらの事象は、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性がある。

(15)知的財産保護の限界

  当社グループは他社製品と差別化できる技術とノウハウを蓄積してきたが、当社グループ独自の技術とノウハウの一部は、特定の地域では法的制限のため知的財産権による完全な保護が不可能、または限定的にしか保護されない状況にある。そのため、第三者が当社グループの知的財産を使って類似した製品を製造するのを効果的に防止できない可能性がある。

(16)法的規制等

  当社グループは、事業展開する各国において、事業・投資の許可、国家安全保障、関税、その他の輸出入規制等、様々な政府規制の適用を受けている。また、通商、独占禁止、特許、消費者、租税、為替管理、環境保全・リサイクル・安全関連の法規制の適用も受けている。これらの規制の予期しない改廃や運用の変更は、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性がある。特に排出ガス規制は、環境意識の高まりにともない、更に強化される傾向にある。これを遵守するための投資等は多額となり、将来、これらの投資に見合う売上を実現できない場合は、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性がある。

 

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

①財政状態及び経営成績の状況

 当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べて1,866億円増加し、2兆675億円となった。

 負債は、前連結会計年度末に比べて622億円増加し、9,810億円となった。
 純資産は、前連結会計年度末に比べて1,244億円増加し、1兆865億円となった。
 自己資本比率は44.5%(前連結会計年度末43.5%)となった。

 有利子負債については、前連結会計年度末に比べて323億円増加の2,796億円となった。

 当連結会計年度の売上高は、2兆703億円(前年度比6.0%増)となった。

 営業利益は1,667億円(前年比13.9%増)となった。また、経常利益は1,736億円(前年比14.2%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は1,056億円(前年比12.6%増)となった。

 なお、当社グループは、自動車及び部品並びに産業用エンジンの製造、販売(自動車事業)を主な事業とする単一セグメントであるため、セグメントの業績の記載を省略している。

 

②キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)については、営業活動により獲得した資金1,768億円を、投資活動に1,070億円、財務活動に44億円、それぞれ資金を使用したこと等により、前連結会計年度に比べて692億円増加し、3,299億円となった。

 なお、営業活動によるキャッシュ・フローから投資活動によるキャッシュ・フローを控除して計算した、フリーキャッシュ・フローは、697億円の資金流入(前年度比9.1%増)となった。

 

[営業活動によるキャッシュ・フロー]

 営業活動により獲得した資金は、1,768億円(前年度比16.8%増)となった。
 これは、税金等調整前当期純利益を1,760億円、減価償却費を663億円計上した一方で、売上債権の増加により128億円、たな卸資産の増加により51億円、リース債権及びリース投資資産の増加により156億円、法人税等の支払により416億円の資金流出などがあったことによる。

 

[投資活動によるキャッシュ・フロー]

 投資活動により使用した資金は、1,070億円(前年度比22.5%増)となった。
 これは、固定資産の取得による支出が994億円あったことが主な要因である。

 

[財務活動によるキャッシュ・フロー]

 財務活動により使用した資金は、44億円(前年度比92.0%減)となった。
 これは、長期借入の返済で250億円、配当金の支払で251億円、及び非支配株主への配当金の支払で131億円の資金の流出があった一方で、短期借入金の純増147億円及び長期借入実行で420億円の資金の流入があったことが主な要因である。

 

 

③生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 前連結会計年度及び当連結会計年度の生産実績は、次のとおりである。

 

前連結会計年度

(自 平成28年4月1日

至 平成29年3月31日)

当連結会計年度

(自 平成29年4月1日

至 平成30年3月31日)

増減

台数

(台)

金額

(百万円)

台数

(台)

金額

(百万円)

台数

(台)

金額

(百万円)

大型・中型車

61,534

61,058

△476

小型車

399,012

407,873

8,861

460,546

468,931

8,385

海外生産用部品

57,610

71,801

14,191

エンジン・コンポーネント

154,092

178,047

23,955

その他

138,430

149,014

10,584

 (注)1.海外生産用部品、エンジン・コンポーネント、その他の金額は、販売価格による。

2.上記の金額には、消費税等は含まれていない。

3.上記の表には、関連会社の生産実績は含まれていない。

b.受注実績

 当社グループ(当社及び連結子会社)は、過去の販売実績と将来の予想に基づいて、見込み生産を行っている。

c.販売実績

 前連結会計年度及び当連結会計年度の販売実績は、次のとおりである。

 

前連結会計年度

(自 平成28年4月1日

至 平成29年3月31日)

当連結会計年度

(自 平成29年4月1日

至 平成30年3月31日)

増減

台数(台)

金額

(百万円)

台数(台)

金額

(百万円)

台数(台)

金額

(百万円)

 

国 内

35,191

316,095

30,571

283,505

△4,620

△32,589

 

海 外

37,144

177,266

39,766

214,667

2,622

37,400

大型・中型車計

72,335

493,361

70,337

498,173

△1,998

4,811

 

国 内

45,150

149,626

41,691

140,560

△3,459

△9,066

 

海 外

388,834

765,615

389,864

824,055

1,030

58,439

小型車他計

433,984

915,242

431,555

964,616

△2,429

49,373

 

国 内

80,341

465,721

72,262

424,066

△8,079

△41,655

 

海 外

425,978

942,882

429,630

1,038,722

3,652

95,840

車両計

506,319

1,408,603

501,892

1,462,789

△4,427

54,185

 

海 外

58,043

71,599

13,555

海外生産用部品

58,043

71,599

13,555

 

国 内

56,989

68,679

11,690

 

海 外

46,322

58,334

12,011

エンジン・コンポーネント

103,312

127,014

23,702

 

国 内

265,729

294,164

28,434

 

海 外

117,497

114,792

△2,704

その他

383,227

408,957

25,730

 

国 内

788,440

786,911

△1,529

 

海 外

1,164,745

1,283,448

118,702

売上高合計

1,953,186

2,070,359

117,173

 

(注)1.主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は、次のとおりである。

相手先

前連結会計年度

(自 平成28年4月1日

至 平成29年3月31日)

当連結会計年度

(自 平成29年4月1日

至 平成30年3月31日)

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

トリペッチ いすゞ セールス㈱

303,819

15.6

380,772

18.4

 

2.上記の金額には、消費税等は含まれていない。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次の通りである。

 なお、本項に記載した将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものである。

①重要な会計方針及び見積り

 当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されている。当社経営陣は、連結財務諸表の作成に際し、貸倒引当金、たな卸資産、投資、繰延税金資産、退職給付に係る負債及び資産、製品保証引当金などの計上に関して、見積りによる判断を行っている。実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、当初の見積りとは異なる場合があり、業績に悪影響を与える可能性がある。

 当社は、特に以下の重要な会計方針が、当社の連結財務諸表の作成において使用される当社の重要な見積りと判断に大きな影響を及ぼすと考えている。

[貸倒引当金]

 当社グループは貸倒懸念債権等特定の債権について、個別に回収可能性を勘案し、回収不能見込額を計上している。相手先の財務状況が悪化するなどその支払能力が低下した場合、追加引当が必要となる可能性がある。

[たな卸資産]

 当社グループはたな卸資産について、推定される将来需要及び市場状況に基づき収益性の低下の程度を見積もり、評価減を計上している。実際の需要または市場状況が推定より悪化した場合、追加の評価減が必要となる可能性がある。

[投資の減損]

 当社グループは非公開会社への投資について、投資先の財政状態が著しく悪化し、かつ回復可能性が見込めない場合に減損処理を行っている。将来の投資先の業績不振などにより、現在反映されていない評価損の計上が必要となる可能性がある。

[繰延税金資産]

 当社グループは繰延税金資産について、将来の実現性が高い税務計画に基づき回収可能性があると判断した金額まで計上している。今後、繰延税金資産の全部または一部が将来回収できないと判断した場合、当該判断を行った期間に繰延税金資産が調整され、費用が増加する可能性がある。

[退職給付に係る負債及び資産]

 当社グループは退職給付債務及び年金資産について、数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出している。これらの前提条件には、割引率、将来の報酬水準、退職率、死亡率及び年金資産の長期収益率などがある。それぞれの前提条件は、現時点で十分に合理的と考えられる方法で計算されているが、前提条件の変化等が退職給付債務及び年金資産に悪影響を与え、費用が増加する可能性がある。

[製品保証引当金]

 当社グループは、製品のアフターサービスに対する費用の支出に充てるために、保証書の約定に従い、過去の実績を基礎に見積りを行い、製品保証引当金を計上している。実際の発生費用が見積りの金額よりも悪化した場合、見積り額の修正が必要となる可能性がある。

 

②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する分析・検討内容

(イ)当連結会計年度の経営成績についての分析

[売上高]

 当連結会計年度の国内車両販売台数は、前年度に比べ8,079台(10.1%)減少の72,262台となった。

 海外車両販売台数は、タイでピックアップトラックが好調だったことに加え、新興国市場も回復基調にあり前年に比べ3,652台(0.9%)増加の429,630台となり、国内と海外を合わせた連結総販売台数は、前年に比べ4,427台(0.9%)減少の501,892台となった。

 車両以外の商品の売上高については、海外生産用部品はタイ向けが好調だったこともあり、前年に比べ135億円(23.4%)増加し715億円となり、エンジン・コンポーネントは、主に中国向けの出荷増により、前年同期に比べ237億円(22.9%)増加の1,270億円となった。また、その他の売上高は、アフターセールスなどの保有事業を伸ばした結果、前年同期に比べ257億円(6.7%)増加の4,089億円となった。

 これらの結果、売上高については、タイ市場のピックアップやエンジン・コンポーネント、保有事業の伸びにより前年度に比べ1,171億円(6.0%)増加の2兆703億円となった。内訳は、国内が7,869億円(前年比0.2%減)、海外が1兆2,834億円(前年比10.2%増)である。

[営業利益]

 当連結会計年度の営業利益は1,667億円(前年度比13.9%増)となった。

 減益要因として、経済変動146億円、成長戦略関連費用80億円等が挙げられる一方で、原価低減活動175億円、売上変動及び構成差168億円、円安による為替変動70億円等が増益要因となった。

 この結果、当連結会計年度における売上高営業利益率は8.1%(前年度7.5%)となった。

[営業外損益]

 当連結会計年度における営業外損益は68億円の利益であり、前連結会計年度に比べて12億円増益となっている。

 持分法による投資利益は66億円となり、前連結会計年度に比べて10億円の増益となっている。

 また、受取利息及び受取配当金の増加にともない、受取利息及び受取配当金から支払利息を差し引いた純額は38億円の益となり、前連結会計年度に比べて16億円改善した。為替差損は10億円となり、前連結会計年度に比べて2億円悪化している。

[特別損益]

 当連結会計年度における特別損益は24億円の利益となり、前連結会計年度に比べて55億円改善している。当連結会計年度の主な項目として、特別損失で、固定資産処分損、減損損失等が挙げられ、特別利益で、固定資産売却益、段階取得に係る差益等が挙げられる。

[税金費用]

 法人税、住民税及び事業税と法人税等調整額とを加えた金額は、前連結会計年度では406億円の損失であったが、当連結会計年度では490億円の損失となった。

[非支配株主に帰属する当期純利益]

 非支配株主に帰属する当期純利益は、主にアセアン現地法人、北米現地法人、国内部品製造会社の非支配株主等に帰属する当期純利益からなり、前連結会計年度の143億円に対し、当連結会計年度は213億円となった。

[親会社株主に帰属する当期純利益]

 当連結会計年度における親会社株主に帰属する当期純利益は1,056億円となり、前連結会計年度に比べて118億円の増益となった。1株当たり当期純利益は134.17円となった。

 

(ロ)当連結会計年度の財政状態についての分析

[資産]

 当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べて1,866億円増加し、2兆675億円となった。
 主な要因としては、現金及び預金が715億円、投資有価証券が274億円、有形固定資産が242億円、売上債権が228億円、たな卸資産が201億円、リース債権及びリース投資資産が158億円増加したことによる。

[負債]

 負債は、前連結会計年度末に比べて622億円増加し、9,810億円となった。

 主な要因としては、有利子負債が323億円、仕入債務が176億円増加したことによる。

[純資産]

 純資産は、前連結会計年度末に比べて1,244億円増加し、1兆865億円となった。
 主な要因としては、配当に伴い利益剰余金が252億円減少した一方で、親会社株主に帰属する当期純利益を1,056億円計上したことと、非支配株主持分が232億円、その他有価証券評価差額金が165億円、為替換算調整勘定が21億円増加したことによる。


(ハ)資本の財源及び資金の流動性についての分析

[キャッシュ・フローの状況]

 第2「事業の状況」の3「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」(1)経営成績等の状況の概要に記載の通り。

[資金需要]

 当社グループにおける主な資金需要は、製品製造のための材料・部品の購入費、製造費用、製品・商品の仕入、販売費及び一般管理費、運転資金及び設備投資資金である。

 設備投資の状況については、第3「設備の状況」の1「設備投資等の概要」に記載の通り。

[資金調達の状況]

 運転資金については返済期限が1年以内の短期借入金で、通常各々の会社が運転資金として使用する現地の通貨で調達している。設備投資資金については原則として資本金、内部留保といった自己資金でまかなうこととしている。

 なお、当連結会計年度末における有利子負債の年度別返済額は第5「経理の状況」1「連結財務諸表等」⑤「連結附属明細表」「借入金等明細表」に記載の通りである。

[資金の流動性]

 今後3連結会計年度で生み出される当社グループのキャッシュ・フロー(営業活動によるキャッシュ・フローと財務活動によるキャッシュ・フローの合計額の見通し)は累計4,000億円から5,000億円になると見込まれ、このうち、総額3,500億円程度を事業投資にあてる予定である。具体的には、これまでの拠点投資に代わり、商品力強化やデジタルイノベーションに向けた投資が求められることに加えて、先進技術開発の推進や新事業創出を目的とした戦略投資を加速していく。

 市場への還元は安定的・継続的であることを旨とし、自己資本利益率の改善とセットでバランスを取っていく。各年度の総還元性向について今後3連結会計年度の3ヵ年平均として30%を目標としている。

 また、手元資金の流動性には絶えず注視が必要であるが、当社グループは現金及び現金同等物に加え、主要銀行とコミットメントライン契約を締結しており、金融市場の急激な環境変化にも対応できる流動性を保持していると考えている。

 

(ニ)経営上の目標の達成状況についての分析

 前回の中期経営計画(2016年3月期から2018年3月期まで)にて当社グループは、「ものづくり事業」、「稼働サポート事業」、双方の事業成長を重要課題として掲げ取り組んできた。ものづくり事業では、グローバルの事業基盤構築を推し進めた他、海外生産拠点で現地・周辺国向け商品の開発から立ち上げることに成功、当初計画した商品ラインナップの整備は完了した。

 また、稼働サポート事業においては、国内ではコネクテッド技術を活用し、メンテナンスリース・部品ビジネスにまでつなげる高度純正整備の仕組み(「PREISM」(プレイズム))を軌道に載せたほか、海外での部品供給拠点の整備や、複数のディストリビュータの子会社化、新設を通じ、グループ一体となって市場近接化活動を進めてきた。今後は、これら前中期経営計画で培ってきた、ものづくり、稼働サポートの事業基盤を最大限活用しつつ、強固な収益力を獲得していく。

 業績や経営指標の数値と照らした経営分析としては、当連結会計年度は過去最高となる2兆円を超える連結売上高を達成した。また当連結会計年度を含めた過去3期間の連結営業利益率の平均値は8.2%であった。これらはそれぞれ前中期経営計画で掲げた売上・利益率の指標目標(連結売上高の指標は前回の中期経営計画の最終年度に当たる当連結会計年度で2兆2千億円から2兆3千億円 連結営業利益率は3連結会計年度の平均で9%)には到達しなかったが、これは、一部地域での市況の悪化が主要因と捉えている。マーケット毎にみていくと、各国の新車販売シェアについては上昇している地域が多く、当社グループの事業競争力は着実に高まっていると考えている。また、自己資本利益率や総還元性向については、当初掲げた指標(3連結会計年度の平均で自己資本利益率は12% 総還元性向は20%から30%)を満たすことができた。

 今後当社グループは、安定的な収益・財務構造の維持・向上が全てのステークホルダーの利益に合致するものと考え、「連結売上高」、「連結営業利益率」のほか、資本効率を測る「自己資本利益率(ROE)」、および株主への還元額の水準を示す「総還元性向」を、引き続き重要な指標として位置付け、さらなる改善に取り組んでいく。

 

4【経営上の重要な契約等】

契約締結時期

相手方

契約の種類

契約の概要

国籍

名称

平成16年8月

日本

日野自動車株式会社

株主間
協定書

両社の共同出資により設立したジェイ・バス株式会社とその100%子会社であるいすゞバス製造株式会社並びに日野車体工業株式会社の3社が合併するにあたり、日野自動車株式会社との間において、バスの開発の一部及び生産に関する事業をジェイ・バス株式会社に統合する。

平成18年12月

日本

伊藤忠商事株式会社

いすゞ自動車販売株式会社

株主間
協定書

伊藤忠商事株式会社との間において、国内販売事業に関連するライフサイクル事業を行う統括会社の運営及び資本出資について合意し、統括会社であるいすゞ自動車販売株式会社がライフサイクル事業の運営を開始する。

平成26年10月

日本

 

三菱商事株式会社

 

基本覚書

タイにおける両社協業の最適化を目指し、泰国いすゞエンジン製造㈱、いすゞモーターズインターナショナルオペレーションズタイランドリミテッドその他の現地事業体の当社出資比率引き上げを含む協業枠組みの変更につき合意する。

 

5【研究開発活動】

 当社グループでは世界中のお客様に、心から満足していただける商品とサービスを提供していくため、先進国向けにはトラック・バスやピックアップトラック、ディーゼルエンジンにおける最新技術の研究開発を、また、新興国向けにはそれぞれの国・地域のニーズに対応した最適な商品開発を進めている。

 当社グループの研究開発活動は、当社の開発部門(当連結会計年度末のスタッフの人数は2,396名)を中心に、先進技術、基礎技術の研究に取り組み、開発技術力の強化を図っている。

 当社グループを取り巻く事業環境は、中長期的には、EV(電動化)、コネクテッド技術、自動運転などの先進技術の投入が進むと予想され、過去トレンドとは異なる大きな環境変化が顕在化していくことと考えられる。またお客様のニーズも多様化しており、近い将来、クルマや部品などのハードだけでは、お客様のご期待に十分に応えられる時代ではなくなってくることが想定される。

 このような環境変化に対して、当社グループの研究開発活動は、「人々の生活環境、社会の生産活動を支えるCV(商用車)・LCV(ピックアップトラックおよび派生車)とパワートレイン(エンジン、トランスミッションおよび駆動系のコンポーネント)のエクセレントカンパニーとして、広く愛される会社」の実現と、そのため策定された「中期経営計画」(2019年3月期から2021年3月期まで)の戦略遂行の取り組みとして、既存商品ラインナップの強化及び新商品投入を支えるとともに、先進技術開発のスピードも加速していく。

 当連結会計年度に市場に投入された研究開発活動の成果としては、大型トラック「ギガ」および中型トラック「フォワード」を改良し、平成28年排出ガス規制に適合させるとともに、先進安全装置の性能の向上を図った。具体的には、シフト・クラッチ操作が自動で行えるトランスミッション「スムーサーGx」を搭載した新しい「ギガ」に、道路勾配に応じたギア制御機能を追加。また、「フォワード」は、燃費性能を大幅に高めた車種の発売や、先進安全装置を搭載した車種のさらなる拡充を図るなど、それぞれの商品力に一層の磨きをかけた。

さらに、小型トラック「エルフ」については、新開発の高過給エンジン「4JZ1」を搭載したことなどにより、平成28年排出ガス規制に適合させながら燃費性能の向上を実現した。この新型エンジン「4JZ1」は、従来と異なり商用車専用エンジンとしてシリンダーヘッド、シリンダーブロックなどエンジンの基本骨格をすべてリニューアルするとともに、最新の燃料制御システムを採用し、世界で最も厳しい排ガス規制とされている「ポストポスト新長期排出ガス規制」への対応と燃費向上を実現。これに加え、排出ガス浄化装置のレイアウトを改良することで商用車としての架装性も大きく改善し、法規制対応と商品力強化の双方を高いレベルで実現した。

このほか、前回の中期経営計画期間(2016年3月期から2018年3月期まで)から取り組んできた開発成果として、グローバルの事業基盤構築を推し進めた結果、新興国向け商用車の開発拠点「いすゞ・グローバル・CVエンジニアリング・センター」の成果物である新興国向けトラックや、中国発の大型トラックやインドネシア発の軽量トラック等、海外拠点発のトラック等の、アジア、及びその周辺国への投入が実現。一方LCV事業の強靭化についても、市場やお客様の多様化するニーズに対応するべく、従来からの、どのような悪路でも走破できるタフな性能という長所は残しつつ、環境性や安全性、快適性といった機能の向上を目指し開発に取り組んでいる。

一方、先進技術の分野においても、平成28年以降、日野自動車株式会社と共同開発を進めてきた高度運転支援技術・ITS技術の分野では、視界支援、路車間通信、加減速支援、プラットフォーム正着制御の4つの技術を開発。これらの技術は、両社で共同開発中のハイブリッド連節バスをはじめ、平成30年度以降の新製品に順次搭載し、実用化を進めていく。

今後、本中期経営計画においても、スピードアップに向けて適宜こうしたアライアンスを活用することも念頭におきつつ、改めて隊列走行、自動運転、先進安全、コネクテッド技術、高効率ICE(内燃機関)の5つを重点技術開発領域とし、商用車メーカーとして提供すべき3つの価値、すなわち「安心・安全性」、「経済・利便性」、「環境性」の追求のため、この5つの領域での技術力をさらに磨いていく。

同時に、EVや高効率ICEについては、商用車に求められる経済合理性や使い勝手等を踏まえ、当面、電気、ディーゼル、天然ガスの3つのパワートレインをラインナップとして保有しつつ、お客様それぞれの用途・ニーズに応じた商品提供と、それを支える研究開発を続けていく。特にディーゼルに関しては、当社グループが強みとする領域であり、お客様からのご期待に応えていくため、さらなる効率化やクリーン化等の取り組みを通じ、引き続きグローバルディーゼルエンジン市場を牽引していく。

またIT技術の分野では、デジタルイノベーションの推進を課題として掲げ、「攻めのIT」すなわち新たな価値創造と、「守りのIT」すなわち業務オペレーションの革新、この双方のデジタルイノベーションによって 持続的な事業成長モデルを構築していく。このうち「攻めのIT」、すなわち、新たな事業価値創造につながるIT活用としては、商用車テレマティクス「MIMAMORI」(車両の運行・動態管理ができるクラウド型システム)と、これに販売会社による高度純正整備をパッケージとした仕組み「PREISM(プレイズム)」に代表されるようなITコネクテッド技術を活用したサービス分野での事業展開を先行して取り組んできており、端末を標準搭載する車型の拡大をすすめることで、お客様からお預かりする車両情報は飛躍的に拡大すると考えられる。今後は、これらの情報に加え、車両以外の情報についても幅広く収集し、分析技術も高めることで、お客様の利便性や快適性の向上を支える新しいソリューションを創出していく。

 なお、当連結会計年度における研究開発費の総額は968億円である。