第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2022年6月28日)現在において当社グループが判断したものです。

 

(1)当社の経営方針・企業理念・行動方針

 当社グループは、社会、環境との調和を求め、お客様から信頼していただける良きパートナーとして共に発展することを目指し、経営の基本方針として、次の企業理念・行動指針を掲げています。

・企業理念 : 「運ぶ」を支え、信頼されるパートナーとして、豊かな暮らし創りに貢献します。

・行動指針 : 私たちは、信頼をすべての基本とし、自ら考え、行動し続けます。

  (商品) 「真のニーズを追究し、魅力ある商品・サービスの創造」

  (自己) 「約束を守り、誠実で、迅速な対応」

  (組織) 「世界の仲間とチームワークで達成」

 

(2)当社の対処すべき課題

 今後、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響は緩和されていくものと考えられる一方で、半導体不足や原材料価格高騰に伴う生産コストへの上昇圧力、ウクライナ危機等に伴う地政学リスクの上昇、さらにはカーボンニュートラルへの潮流の加速等、当社グループを取り巻く事業環境の一層の変化が予想されます。

 このような環境変化・課題への対応は当社グループの社会的使命及び責務であり、これらの変化への柔軟な適応は、当社グループの持続可能な成長のためには必要不可欠であると認識しています。そのため当社グループでは、2030年に向けての中長期に目指す姿を、“人々の生活環境、社会の生産活動を支えるCV・LCVとパワートレインのエクセレントカンパニーとして、広く愛される会社”と定め、この中長期に目指す姿の実現に向けた取組みを進めています。前中期経営計画期間中(2019年3月期から2021年3月期まで)も、この中長期に目指す姿の実現に向け「攻め」の施策を展開し、ボルボ・グループとの連携・UDトラックスのグループ会社化をはじめとしたアライアンス体制構築の完遂やピックアップトラックのフルモデルチェンジによる商品競争力強化等の成果を達成することができました。

 そして、2022年3月期より開始した「中期経営計画2024」(2022年3月期から2024年3月期まで)では、中長期に目指す姿の実現に向け、社会とともに持続可能な成長を続けていくために、社会的価値の創造に一層取り組んでいます。

 「中期経営計画2024」では、当社グループは「既存事業の拡大・収益向上」を図ると共に、「カーボンニュートラル戦略」及び「進化する物流へ商用車メーカーとして貢献」の2つを「イノベーションの基軸」として、その実現・実装に向けて取り組んでまいります。そして、変革期を乗り越え、認められ、存続できる企業(=サステナブルな企業)となるべく「ESGを視点とした経営への進化」を強化していきます。

 

 次に挙げる7つの課題は、「中期経営計画2024」の実現のみならず、自動車業界・商用車業界におけるお客様のご期待や技術的変革に対応するため中長期的な観点から抽出したものです。

 

[既存事業の拡大・収益向上]

 「カーボンニュートラルの潮流の世界的な加速」や「社会インフラとしての物流の安定性・安全性への期待」といった社会的要請への対応には、CASE(※)をはじめ多額の研究開発費・投資が必要となります。当社グループでは、財務健全性を維持しつつ、その原資を確保するため一層の収益力の強化を図り、今回の計画最終年度である2024年3月期には、売上高2兆7,500億円、営業利益2,500億円を目標とします。そして、この中計施策の効果を中長期的に拡大し、4年後の2026年3月期に売上高3兆円・営業利益3,000億円につなげていくことを目指しています。2022年3月期は後述の施策の確実な実施により売上高2兆5,142億円、営業利益1,871億円を達成いたしました。

※略語:Connected(コネクテッド)、Autonomous(自動運転)、Shared & Services(シェアリングとサービス)、Electric(電動化)の総称

 以下①及び②は、「既存事業の拡大・収益向上」実現のための課題となります。

 

①商品/販売/サービス力強化

 ニーズの多様化が進んだ商用車市場においてお客様に選ばれ続けるためには、多様化するニーズに対応した商品力、その魅力をお客様に届ける販売力、さらに、商品販売以降の機会においてもお客様に価値を提供するサービス力が必要不可欠であると当社グループでは考えています。

 当社グループでは、これまでも環境性や安全性・快適性といった機能について刷新を図ったピックアップトラック「D-MAX」や、その派生車である「MU-X」の新モデル投入による販売増を実現してきました。また、日本国内においては高度純正装備「PREISM」の全車標準搭載による稼働サポート事業の展開により、収益基盤を強固なものとしてきました。

 

(当連結会計年度の取組み)

 2022年3月期には、2021年4月にボルボ・グループより全株式を取得し連結子会社化したUDトラックスとの連携を進め、商品の相互補完、両社の拠点インフラを活用した販売力・サービス体制の向上など国内外のCV事業の強化を図りました。商品面ではボルボ・グループとの共同開発を推進しており、2023年を目途に新型トラクタヘッドをいすゞ/UDトラックス双方のチャネルに投入する予定です。販売面でも、UDトラックスブランドの継続によるマルチブランド体制で同社の顧客支持と知名度を活用しつつ、両社の国内営業本部を2022年5月から新本社に集約したことを皮切りに、海外営業本部も一層連携を深めていきます。

(今後の計画)

 今後も引き続きボルボ・グループ及びUDトラックスとの一層の連携を推進し、商品・販売・サービス力の強化を目指していく予定です。具体的な計画としては、ボルボ・グループとの先進技術領域での協業も見据えた、いすゞ/UDトラックス共通の大型車の開発を開始しています。

 

②ものづくり革新

 当社グループでは、価格競争力の維持・向上と、適正な利益の確保による投資原資の獲得の双方の観点から、ものづくり革新の実現による一層の効率化が必要であると考えています。前中期経営計画期間中(2019年3月期から2021年3月期まで)も、市場(販売地)近接のものづくり・サービス体制の定着を図り、各国において効率化・シェア上昇を達成していますが、今後も一層の効率化を推進していきます。

 

(当連結会計年度の取組み)

 2022年3月期には、LCV事業においてタイ・インド・南アフリカの3生産拠点の役割を明確化し、グローバル生産体制の最適化を実現しました。タイは、新型モデルを中心に生産するグローバルマザー工場として位置づけ、生産能力を34万台に増強しました。インドは、ワークホース用途モデルの輸出拠点として、インドの国内需要に応えるのみならず中近東への輸出体制を強化しました。また、南アフリカはアフリカ市場全体をカバーする生産拠点として、従前モデルのみならず新型モデルの生産を開始しました。

(今後の計画)

 2023年を目途に中小型商用車のフルモデルチェンジを計画しています。フルモデルチェンジ後は、BEV (バッテリー式電動自動車)も商品ラインナップに取り揃え、多様化するお客様の要望にお応えしていきます。新型ラインナップは、日本国内市場を皮切りに、いすゞ/UDトラックス両チャネルを通じて順次海外にも展開します。この新型ラインナップには、「I-MACS」と呼ばれるいすゞのモジュラー設計コンセプトを取り入れており、国・地域のニーズや動力源に合わせた一層フレキシブルな商品開発に活用していきます。

 

[イノベーションの基軸]

 当社グループでは、カーボンニュートラルと物流インフラへの期待などの社会的要請を踏まえ、「カーボンニュートラル戦略」と「進化する物流へ商用車メーカーとして貢献」をイノベーション推進の基軸に据え、集中的にリソース投入をし、5年後、10年後のイノベーションが実現する様に取組みを加速します。

 以下③及び④は、これら「イノベーションの基軸」の実現・実装のための課題となります。

 

③カーボンニュートラル戦略

 日本政府が掲げる「2050年カーボンニュートラル」をはじめ、カーボンニュートラル・脱炭素社会の実現に向けた世界的な潮流は一層加速しています。また、2021年6月に策定された「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」において明確化された商用車における電動化目標では、小型商用車では2030年までに新車販売における電動車の割合を20~30%に、大型商用車でも2020年代に5,000台の先行導入を目指すと具体的な数値目標が明示されました。

 当社グループとしても、気候変動対策を2050年の社会が豊かで持続可能な社会であるための重点課題の一つと捉え、2020年3月に中長期的視野で地球環境問題に取り組むための方向性を示す、「いすゞ環境長期ビジョン2050」を策定しました。「いすゞ環境長期ビジョン2050」に基づき、当社グループでは2050年までに製品のライフサイクル全体、及び事業活動から直接排出される温室効果ガス(GHG)ゼロに向けた取組みを進めています。

 

(当連結会計年度の取組み)

 2022年3月期においては環境負荷の低い商品開発を進め、国内商用車メーカーとしては初めて大型LNGトラック「ギガLNG」を発売しました。

(今後の計画)

 商用車においても電動化/脱CO2化への転換が強く求められることを踏まえ、2023年3月期には小型商用車においてBEVを国内市場に投入し、順次海外にも展開していく予定です。また、アライアンスパートナーとの協業を図りつつ積極的に対応を進めていく予定であり、具体的には、2024年の市場投入を目標に大型路線BEVバスの開発を進めています。他にも、小型・大型FCV(実証車製作中)、大型路線FCVバス(CJPT(※)を中心に検討中)、電動ピックアップトラック、北米中型BEV等、環境負荷の低い商品の開発に取り組んでいます。なお、内燃機関に頼らざるをえない用途や使用条件に鑑みて、技術の選択肢は狭めず、よりクリーンな内燃機関の開発も継続し、カーボンニュートラル燃料活用の検討等を進めていきます。電動化に向けた具体的目標やスケジュールの見通しは日々変わっており、今後も進捗を随時公表してまいります。

※Commercial Japan Partnership Technologiesの略称:当社・トヨタ自動車・日野自動車・スズキ・ダイハツで共同出資して設立。

 

④進化する物流へ商用車メーカーとしての貢献

 新型コロナウイルス感染症の流行に伴う生活様式の変化により、物流の社会インフラの重要性が一層増大し、その安定性・安全性への期待は益々高まっています。また、物流業界全体における生産性向上の要請は、ドライバー不足問題等と相まって、更なる高まりをみせています。

 当社グループとしても進化する物流への商用車メーカーとして貢献を図るべく、コネクテッド技術や自動運転技術などの先端技術の開発・活用に取り組んでいます。コネクテッド技術については、当社グループでは、これまでも業界に先駆けて、運行管理・ドライバー支援サービス「MIMAMORI」、高度純正装備「PREISM」などのコネクテッドサービスを展開してきました。自動運転技術については、これまでも当社グループでは藤沢工場内での市街地自動配送実験などを通じて基礎を固めてきました。

 

(当連結会計年度の取組み)

 コネクテッド技術については、「MIMAMORI」と連携した国内商用車メーカー初の運行管理スマートフォンアプリ「MIMAMORIドライバー向けアプリ」の運用を開始しました。「MIMAMORI」については、UDトラックスも2023年1月より運用トライアルを開始する予定です。

 自動運転技術については、福岡空港内での自動運転バス実証実験、UDトラックスによる神戸製鋼所と共同での製鉄所内におけるレベル4自動運転の実証実験等を通じて、実際の活用場面を想定した検証を進めました。

(今後の計画)

 コネクテッド技術については、当社グループのみならず他社製の商用車を併用しているお客様においても総合的に稼働サポート可能なサービスの提供を目指していきます。2022年10月には、当社・富士通株式会社・株式会社トランストロンの共同で、2021年より構築を開始した「商用車コネクテッド情報プラットフォーム」により、約50万台のトラックにサービスの統一提供開始を計画しています。また、CJPTを通じて、各社の個別データ(運行・交通等の情報)を匿名化した上でビックデータとして収集・分析する商用車コネクテッド情報プラットフォームを構築し、お客様の事業を支えるサービスの幅の拡大を目指していきます。

 自動運転技術についても、これまでの実証実験で得られた知見を踏まえ、省人効果・安全性・実現性の高いユースケースから、優先的に取り組む方針です。加えて、アライアンスパートナーとの共同開発による開発の早期化を図り、最適化された社会インフラの早期実現を目指します。

 

[ESGを視点とした経営への進化]

 今後の商用車市場は、異業種からの参入の加速により競合企業の一層のグローバル化・多様化が想定されます。他方、これらグローバルプレイヤーとの世界レベルでの競争は事業拡大の好機であると捉えることもできます。従って、当社グループではグローバルプレイヤーとの競争に耐えうる強固な経営基盤を確立していきます。

 以下⑤、⑥、⑦は、「ESGを視点とした経営への進化」のための課題となります。

 

⑤株主価値重視

 当社グループには多様なステークホルダーが存在しており、こうしたステークホルダーとの適切な協働を欠いては、持続的な成長を実現することは困難です。その中でも資本提供者である株主は要となる存在であり、コーポレートガバナンスの規律の起点となるものです。

 上記の認識に基づき、当社グループでは株主価値を重視した経営を一層推進し、資本効率の向上、株主還元の強化に努めていきます。

 

(当連結会計年度の取組み)

 2022年3月期においては、原材料価格高騰・半導体不足等の厳しい事業環境の中でも資本効率の向上に努め、ROEは11.4%となりました。また、株主還元について過去最高額となる1株当たり66円の配当を実施し、配当性向は40.5%となりました。今後も株主価値を重視した経営を一層推進し、その更なる価値向上を目指します。

(今後の計画)

 今後も、当社グループでは株主価値を重視した経営を一層推進し、資本効率の向上により2026年3月期にROE15%を目指します。また、株主還元も強化し、配当性向は中期経営計画期間(2022年3月期から2024年3月期まで)平均で40%を目標とします。加えて、資金状況を踏まえつつ機動的な自社株買いも検討していきます。

 

⑥ガバナンス強化と開示拡充

 前項で示したとおり、当社グループの持続的成長のためには、株主をはじめとするステークホルダーとの適切な協働を欠かすことはできません。当社グループでは、協働のための前提となるコーポレートガバナンスの実効性向上及び適切な情報開示を一層推進していきます。

 

(当連結会計年度の取組み)

 2022年3月期には、2021年6月25日開催の第119回定時株主総会における承認により、監査等委員会設置会社へ移行しました。また、取締役会による経営の監督機能強化及びその多様性の向上のため、社外取締役を5名(取締役総数13名)とし、取締役のうち女性を2名とする体制としました。加えて、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)に沿った気候変動関連開示を開始しています。

 また、人権を尊重した事業活動を推進し持続可能な社会の実現に貢献するため、2022年2月に国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に準拠した「いすゞグループ人権方針」を制定し公開しました。

(今後の計画)

 今後も一層のコーポレートガバナンスの実効性向上及び適切な情報開示を目指します。具体的には、財務報告の国際企業間の比較を容易にし、資金調達及び株主価値向上を図ることを目的に、将来的なIFRS適用に向けて準備を進めています。

 

⑦イノベーションを創出する集団

 ③及び④で記したとおり、「カーボンニュートラルの潮流の世界的な加速」や「社会インフラとしての物流の安定性・安全性への期待」等の社会的要請に応え、当社グループが持続的な成長を実現するためには、絶えずイノベーションを創出し続けることのできる集団へと当社グループが変革していく必要があります。

 

(当連結会計年度の取組み)

 2022年3月期にはイノベーションの源泉の1つである多様性の一層の向上を目指し、ダイバーシティ・アンド・インクルージョン推進活動「VOIS」をボルボ・グループと共同で結成しました。また、「多様性」をコンセプトとした人事制度改革にも着手しています。さらには、業界内コミュニケーションの促進の観点から、ボルボ・グループ、カミンズ、CJPT等のアライアンス先とのエンジニア交流を実施しました。

(今後の計画)

 2022年5月に当社は横浜に本社を移転しました。様々な業種が拠点を構える横浜の強みを生かして今後は業界を超えたコミュニケーションの促進に取り組みます。加えて、グループ企業も集約した新本社の最新オフィス設備・IT環境を活用して、海外拠点も含めた社内・グループ内コミュニケーションの活性化を目指します。

 

2【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。

 なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2022年6月28日)現在において当社グループが判断したものです。

 

 当社グループでは、グループ全体のリスク管理の責任者として、「グループCRMO(Chief Risk Management Officer/リスクマネジメント責任役員)」を設置し、全社的なリスク管理のプロセスを主導しています。

 グループCRMOは、

・定期的に当社グループの経営上・事業遂行上でのリスクを特定・評価します。

・これらリスクを適切に管理、特に低減するとともに、リスクが顕在化して危機に転化した場合はその影響を極小化する等、各種リスク対策を企画・実行します。

・定期的に「リスク管理確認会議」を主催し、リスク対策の進捗状況、顕在化したリスクを把握し、対策やリスク認識の不断の見直しを行います。

 

1.世界経済・金融市場・自動車市場に起因するリスク

(1)主要市場の経済状況・総需要の変動

 当社グループの全世界における売上高のうち、主要な部分を占める自動車の需要は、当社グループが製品を販売している国・地域、特に日本、タイ、米国などの主要国市場における経済状況の影響を受けます。

 また商用車市場は日本においては今後漸減が予想される一方で、新興国においては物流需要の増加が見込まれることから、当社グループは一部の新興国市場を重点地域と定め、拡販活動を進めています。そのため、一部の新興国市場における経済状況もまた、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは経済状況・需要動向の見通しの正確な把握に努めるとともに、製品を販売する市場の分散によって影響を極小化していますが、当社グループの主要市場における景気後退、及びそれに伴う需要の縮小は、当社グループの業績及び財政状態に大きな悪影響を及ぼす可能性があります。

 なお、2022年3月期累計の国内外の車両販売台数は海外でCOVID-19の影響を受けた前連結会計年度を大きく上回り、COVID-19流行前の水準と比較しても大きく拡大しています。

 しかし、自動車の需要は市場の経済状況の影響を強く受けるため、COVID-19の流行継続・再流行やその他の社会・経済状況の変化は当社グループの事業活動、業績及び財政状態に大きな悪影響を及ぼす可能性があります。また、世界的な物流キャパシティの逼迫が続き、海運コンテナ等の物流サービスを十分に利用できない場合、当社グループの事業活動、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)自動車市場における競争

 当社グループの全世界における売上高のうち、主要な部分を占める自動車市場は、激しい競争が繰り広げられています。かかる競争環境の激化は当社製品の競争力に影響を及ぼし、価格変動やシェア変動を引き起こす可能性があります。競争に影響を与える要素は製品性能、安全性、燃費、環境負荷、価格、アフターサービス等多岐にわたり、各国の市場ごとで重視される要素は異なります。

 当社グループは主要市場での競争力を維持・強化するため、これら要素の改善に取り組みながら、競争力の高い製品について継続的に開発・生産・販売並びにそのアフターサービスを実施していますが、主要市場や新興国市場等での他社との競争に劣後した場合や予期しない業界再編が生じた場合、当社グループの業績及び財政状態に大きな悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)為替及び金利の変動

 当社グループの事業には、世界各地における製品の生産と販売が含まれています。各地域における売上、費用、資産、負債を含む現地通貨建の項目は、連結財務諸表の作成のために円換算されています。換算時の為替レート、特に米ドル、タイバーツの為替レートにより、これらの項目は元の現地通貨における価値が変わらなかったとしても、円換算後の価値が影響を受ける可能性があります。さらに、為替変動は、当社グループが購入する原材料の価格や販売する製品の価格設定に影響します。

 また、当社グループは日頃よりキャッシュ・フローの管理に努めていますが、資金調達に関わるコストは、市場金利が急激に上昇した場合、支払利息の負担が増大するなど、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは為替及び金利の変動による影響を極小化すべく、現地生産に加えて、先物為替予約取引を含むデリバティブ金融商品の活用を行っています。

 しかし、為替及び金利の大きな変動が生じた場合、当社グループの業績及び財政状態に大きな悪影響を及ぼす可能性があります。

 

2.事業に関するリスク

2-1.主に「外部環境への当社グループの対応」に起因する事業リスク

(4)新しい技術革新やビジネスモデル変化などへの対応

 当社グループの事業に関わる外部環境は大きく変化しています。商用車市場のお客様ニーズの多様化や商用車を用いたビジネスモデルの変化、「CASE」に代表される技術革新、生産・販売・アフターサービス・バックオフィス業務におけるデジタルイノベーションの推進、ESG投資やSDGs達成への期待の高まりなどの技術変化や社会変化は、当社グループの事業の拡大と深耕の好機です。

 当社グループはこうした技術変化や社会変化に速やかに対応するため、常設部署を設置し、全社横断の複数プロジェクトを推進しています。しかし、万が一、これらの技術変化や社会変化に速やかかつ十分に対応できない場合には、当社グループの業績及び財政状態に大きな悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(5)研究開発

 当社グループの置かれた事業環境は競争の激化や市場ごとに異なる商品ニーズの多様化などが見込まれます。このような経営環境に対応し、「運ぶ」を支える「ものづくり事業」を推進していくには高い技術と市場のニーズを的確にとらえた製品を提供する研究開発への取組みが不可欠です。

 当社グループは、将来の市場ニーズの予測、研究開発分野の優先順位付けを通じて、新たな技術や製品の開発に取組んでいますが、もし求められる技術水準への到達や適正な市場ニーズの把握に失敗や遅延した場合には、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、アライアンス及び部品メーカーとの協業を通じて新たな技術や製品の入手をしていますが、もしアライアンス先や部品メーカーが求められる技術水準への到達に失敗や遅延した場合には、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(6)合弁事業をはじめとするアライアンス

 当社グループは、いくつかの国において、各国の法律上の、あるいはその他の要件により合弁で事業を行っています。また、国内外の販売ではディーラーやディストリビュータと提携し、研究開発では合弁事業や業務提携を行っています。

 当社グループは合弁相手やアライアンス先の経営状況、ガバナンス、その他重要な非財務情報も含め、様々な情報をもとに業務提携の要否を検討します。

 しかし、合弁相手やアライアンス先の経営方針、経営環境の変化等当社グループが管理できない要因により、当社グループの業績及び財政状態に大きな悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(7)販売・供給における特定チャネルへの依存

 当社グループは、当社製品である自動車やその構成部品等を、トリペッチいすゞセールス㈱(タイ国バンコク市)や、ゼネラルモーターズ・コーポレーション(アメリカ合衆国ミシガン州デトロイト市)など当社グループ内外の特定チャネルを通じて販売・供給しています。当社グループの販売・供給における特定チャネルの依存について、取引先の業績悪化等により市場への供給・流通量が減少した場合、又は取引先の信用不安等による貸倒れが発生した場合、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは大口顧客企業との関係を維持するとともに、新規顧客の開拓によるリスク分散を図っています。しかし、これらの顧客企業への売上は、顧客企業の生産・販売量の変動など当社グループが管理できない要因により影響を受け、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(8)資材、部品等の調達の遅れや不足、調達価格の高騰

 当社グループは、生産に必要な原材料、部品及び製品を外部のサプライヤーから調達していますが、サプライヤーの能力を大幅に超えるような需給状況になった場合、サプライヤーに生じた事故や不測の事態により供給能力が大幅に低下した場合、あるいは海運コンテナ等の調達に不可欠な物流サービスを十分に利用できない場合は、生産に必要な量の原材料、部品及び製品を確保することができなくなる可能性、確保が遅れる可能性があります。また、需給の逼迫などにより原材料等の価格が高騰し、生産性向上などの内部努力や価格への転嫁などにより吸収できなかった場合には、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、サプライヤーの生産能力、信用リスク、製品等の品質、コストを定期的に把握し、調達に遅れや不足が生じる事態がないように努めていますが、半導体等をはじめとする資材や部品等の大幅な不足や価格の高騰が生じた場合、大規模地震等の自然災害等の不測の事態が発生した場合には、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 また当社グループは、「いすゞグループ人権方針」に基づき、サプライチェーン上に労働環境や安全衛生面での人権侵害などがないかを確認する「人権デュー・ディリジェンス」に取り組んでいます。その他、サプライチェーン上の法令・コンプライアンス遵守、気候変動問題への対応状況を確認しています。しかし、サプライチェーン上で品質・コスト・納期以外の諸問題が顕在化した場合は、生産に必要な量の原材料、部品及び製品を確保することができなくなる可能性、確保が遅れる可能性があります。

 

2-2.主に「当社グループ内部」に起因する事業リスク

(9)コンプライアンス・レピュテーション

 当社グループでは、関係法令等の遵守はもちろん、ステークホルダーからの期待に応えるという意味でもコンプライアンスを徹底しています。

 当社グループでは、法令等の違反を未然に防止する体制並びにコンプライアンスに関わる案件を察知した場合には速やかに対応する体制を構築しています。

 またコンプライアンスの推進や体制整備について、客観的な助言・監督・評価を仰ぐことを目的として、社長の諮問機関であるコンプライアンス委員会を設置しています。同委員会には、コンプライアンスの推進に必要な公明性、透明性を確保するため、社外から有識者(弁護士等)を委員として招聘しています。

 しかし、将来にわたって法令違反が発生する可能性は皆無ではなく、法令違反の事実、あるいは対応の内容や迅速性等が不十分な場合には、当社グループの社会的信用に重大な影響を与える場合があり、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。特に、各国の個人情報保護、贈収賄禁止、独占禁止・不正競争禁止に関する法令等への重大な違反が認められ、高額な制裁金が課せられた場合、当社グループの業績及び財政状態に大きな悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(10)製品の欠陥

 当社グループは国内外の各工場で世界的に認められている厳格な品質管理基準に従って各種の製品を製造しています。品質の維持及び改善のため、当社グループは「品証・CS委員会」を通じて、不具合情報の早期発見と共有、品質向上のための全社横断的検討、全社的な品質マネジメントの運用状況の監視を実施しています。また製品の欠陥等を原因とする損害賠償が必要な場合に備えて、製造物賠償責任保険に加入しています。

 しかし、万が一大規模なリコールを実施する場合、当社グループの業績及び財政状態に大きな悪影響を及ぼす可能性があります。加えて、実際に発生した費用が事前に計上した未払費用を大きく上回る場合や、製造物責任賠償を実施するが製造物賠償責任保険により填補できない場合には、当社グループの業績及び財政状態に大きな悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(11)IT化社会における情報セキュリティに関するリスク

 当社グループの事業にとって、顧客情報の収集・利用や営業秘密としての技術情報の活用、設備の自動制御などの情報技術の利活用、生産活動を含む業務全般でのITネットワークの安定的利用が不可欠なものとなっています。当社グループの事業は、こうした情報、情報技術、ITネットワークに依存しています。

 当社グループでは、当該リスク管理責任者や専門組織を設置し、個人情報や機密情報の保護、データやシステムの可用性の維持、各種情報の改竄防止等の情報セキュリティの維持・改善を目的に、様々な安全対策を実施しています。

 しかし、不測の事態により情報漏洩等が発生した場合、企業としての信用低下、顧客等に対する損害賠償責任が発生するなど、当社グループの業績及び財政状態に大きな悪影響を及ぼす可能性があります。また、システム障害やコンピューターウイルスへの感染、サイバ一攻撃等が発生した場合には、業務の中断や、データの破損・喪失などを引き起こす可能性があります。その結果、当社グループの業績及び財政状態に大きな悪影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、アライアンス先との情報セキュリティに関する契約を締結し、個人情報や機密情報の保護、データやシステムの可用性の維持、各種情報の改竄防止等の情報セキュリティの維持・改善を目的に、様々な安全対策を実施しています。しかし、不測の事態により情報漏洩等が発生した場合、企業としての信用低下、顧客等に対する損害賠償責任、アライアンス先に対する損害賠償責任が発生するなど、当社グループの業績及び財政状態に大きな悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(12)知的財産保護に関するリスク

 当社グループは他社製品と差別化できる技術とノウハウを蓄積してきましたが、当社グループ独自の技術とノウハウの一部は、特定の国・地域では法的制限のため知的財産権による完全な保護が不可能、又は限定的にしか保護されない状況にあります。

 当社グループは知的財産保護のための取組みを進めています。しかし、第三者が当社グループの知的財産を使って類似した製品を製造することを効果的に防止できない場合や当社グループに対する知的財産権侵害訴訟による製造・販売の差し止めや損害賠償の請求が認められた場合、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。

 

(13)優秀な人材の確保・定着、パフォーマンスの発揮等

 当社グループの事業では、人材が最も重要な資産と考え、当社グループの事業推進に必要となる技能・能力をもった多様な人材の確保に努めるとともに、従業員一人一人のモチベーション、熱意、技能、能力、パフォーマンスを高め、当社グループに定着させるための取組みを進めています。しかし、今後の人材獲得競争の一層の激化により、優秀な人材確保・定着がより困難になっていく可能性があります。

 また、当社グループの従業員構成は日本企業の多くと同様に、シニア層に集中しています。それに伴って、将来的には円滑な技能伝承や適切な人員配置が困難となる可能性があります。

 当社グループでは人事制度の大幅な見直し、計画的な採用、適切な人員配置・再配置、教育・育成・キャリアアップに関わる制度運用、適切な人事考課制度運用により、優秀な人材の確保と定着に努めています。しかし、これらの対応が十分ではない場合、従業員の離職、モチベーション低下、技能伝承の失敗、競争力の低下によって、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 また、当社グループは、多様で優秀な人材の確保・定着、パフォーマンスの発揮には、社員や関係者などの人権尊重が前提であると考えています。いすゞグループは「いすゞグループ人権方針」を制定し、本方針に従い、国際規範、法令、グループ規範等を遵守し、グループ人権推進体制の整備、人権デュー・ディリジェンスへ取り組むと共に、役員・従業員への適切な教育を行っています。また、ビジネスにおける人権尊重の重要性を踏まえ、ステークホルダーとの対話を行い、事業パートナー及び取引先の皆様に対しても理解促進に努めています。

 

2-3.主に「当社グループ外部」に起因する事業リスク

(14)法的規制等

 当社グループは、事業展開する各国において、事業・投資の許可、国家安全保障、関税、その他の輸出入規制等、様々な政府規制の適用を受けています。また、通商、独占禁止、特許、消費者、租税、為替管理、環境保全・リサイクル・安全関連の法規制の適用も受けています。特に排出ガス規制は、環境意識の高まりに伴い、更に強化される傾向にあります。これを遵守するための投資等は多額となり、将来、これらの投資に見合う売上を実現できない可能性があります。

 当社グループは各国、特に日本、米国、タイ、中国、欧州地域における法規制等の動向の情報収集を行い、法規制の変化に備えた投資や新技術・製品の開発を行っています。

 しかし、万が一、規制等の予期しない改廃や運用の変更があった場合には、当社グループの業績及び財政状態に大きな悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(15)国際的活動及び海外進出に潜在するリスク

 当社グループの製品の生産及び販売活動は、日本国内のみならず広く海外で行われています。これらの海外市場での事業展開には特に以下に掲げるようないくつかのリスクが内在しています。

・政治及び経済状況の変動

・許認可等に関する一方的な政策変更、当社グループ財産の直接的又は間接的収用

・輸出入や技術移転の制限

・情報やデータの管理や移転の制限

・安全保障上のリスクがある通信・電子機器の利用・調達に関する制限

・潜在的に不利な税影響

・送金や兌換の規制

・人材の採用と確保の難しさ

・未整備の技術インフラや社会インフラ(電力、上下水、道路、港湾等)

・テロ、戦争、自然災害、経済制裁、その他の要因による社会的混乱

 

 当社グループは、各国におけるリスクを把握するとともに対策を講じていますが、こうしたリスクが顕在化した場合、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 2022年2月より続くウクライナ情勢に起因して、ロシアでの事業活動に必要な諸環境が大きく変化しました。ロシアでの事業活動に必要な諸環境が整うまでの間、ロシア向け車両の出荷は停止しています。ウクライナやロシア、その周辺国の政治及び経済状況が更に悪化した場合、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
 

(16)災害等

 当社グループは全世界で事業を展開しているため、様々な災害リスクにさらされています。大規模地震、風水害や噴火等の自然災害、停電又はその他の中断事象、疫病・感染症が顕在化した場合、当社グループの生産活動、販売活動、その他事業活動に影響が生じる可能性があります。特に主要な事業拠点が集中する日本・南関東に大規模な災害等が発生した場合、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは生産工程等の事業中断による潜在的な悪影響を最小化するために、全ての設備における定期的な災害防止検査と設備点検を行い、災害等が発生した場合の行動計画を予め策定、それに基づいた訓練を実施しています。また新型インフルエンザやその他の未知の感染症等についても予防・対応計画を予め策定し、それに基づいた訓練を実施しています。さらに新型インフルエンザやその他の未知の感染症等についても、日頃より外部コンサルタントの活用等によりグローバルな情報の早期入手に努め、必要に応じて適切な対応を行うとともに、マスク等の適正な備蓄を行っています。

 しかし、災害等による影響を完全に防止又は軽減できない可能性があり、当社グループの業績及び財政状態に大きな悪影響を及ぼす可能性があります。

 

新型コロナウイルス感染症の影響

 2022年6月現在、世界的に流行が継続している新型コロナウイルス感染症(COVID-19)については、経済及び企業活動に広範な影響を与える事象であり、また、今後の拡がり方や収束時期等を予見することは困難です。

 当社グループでは事業拠点における感染予防策を実施し、COVID-19による影響を極小化するための各種措置を講じています。

 しかし、COVID-19の流行継続・再流行(新規変異株の流行を含む)、ワクチンの効果、社会・経済状況の変化は当社グループの事業活動、業績及び財政状態に大きな悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(17)気候変動

 当社グループは、気候変動リスクを最も重要な社会課題の一つとして位置づけ、気候変動そのものを緩和するための取組みや気候変動による影響への対応・取組みを進めています。

 当社グループは、産業革命以前からの世界の平均気温上昇を2度未満に抑え、1.5度未満を目指す「パリ協定」を支持しています。また、当社グループは、国連サミットで採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成に貢献すべく、「いすゞ環境長期ビジョン2050」を策定しました。「いすゞ環境長期ビジョン2050」中の気候変動関連取組みとして、当社グループは2050年までに、当社グループ製品のライフサイクル全体での温室効果ガス(GHG)ゼロ、及び当社グループの事業活動から直接排出されるGHGゼロを目指します。

 当社グループでは、気候変動と世界気温上昇に関する複数の「環境長期シナリオ」に基づき、製品、サービス、事業活動への具体的影響を検討・分析しています。当社グループは脱炭素社会への移行に伴うリスク・機会及び気候変動に伴う自然災害の増大や水資源の枯渇等のリスク・機会について、事業への影響度を踏まえて対策を講じています。また当社グループでは、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)が推奨するフレームワークに沿った気候変動関連の情報開示に取り組んでいます。詳細は『サステナビリティレポート2021』の環境の項目をご参照ください。

 なお、当社グループによる気候変動対策は外部機関から高い評価を得ています。国際的に影響力のある国際環境非営利団体CDPより気候変動対策に関する企業調査のサプライヤーエンゲージメント評価において、最高評価であるリーダー・ボードに選定されました。

 また当社グループは、気候変動に伴う気象災害の頻発による事業中断、脱炭素社会に向けた各種規制が当社グループの業績及び財政状態に与える影響を極小化するため、事業継続態勢の高度化、GHGゼロの製品開発・市場投入に取り組んでいます。

 しかし、気候変動そのものを緩和するための取組みや気候変動による影響への対応・取組みが不十分である場合、当社グループの業績及び財政状態に大きな悪影響を及ぼす可能性があります。

 

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

①経営成績の状況

 当連結会計年度の商用車市場は前年の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大影響による落ち込みから特に海外市場において需要が大きく回復したものの、主に半導体不足に起因するサプライチェーンの混乱や物流の停滞による影響を大きく受けることとなりました。このような状況の中で、当社グループは国内CV及びタイ向けLCVの販売が半導体不足の影響を大きく受けたものの、新興国向けに出荷に振り替える運営により影響を最小限にとどめました。国内と海外を合わせた連結総販売台数は、前連結会計年度に比べ125,822台(27.7%)増加の579,957台となりました。

 当連結会計年度の国内車両販売台数は生産面の影響を受け、前連結会計年度に比べ6,482台(10.6%)減少の54,589台となりました。海外車両販売台数は、旺盛な需要を背景に多くの地域で販売台数が増加し、前連結会計年度に比べ132,304台(33.7%)増加の525,368台となりました。

 車両以外の商品の売上高につきましては、海外生産用部品が前連結会計年度に比べ225億円(69.7%)増加し549億円となり、エンジン・コンポーネントは、主に産業用エンジンの販売基数が増加したことにより前連結会計年度に比べ207億円(13.9%)増加の1,703億円となりました。また、その他の売上高は、前連結会計年度に比べ1,385億円(32.7%)増加の5,624億円となりました。

 これらの結果、売上高につきましては、前連結会計年度に比べ6,061億円(31.8%)増加の2兆5,142億円となりました。内訳は、国内が8,781億円(前連結会計年度比16.8%増)、海外が1兆6,361億円(前連結会計年度比41.5%増)です。

 

 当連結会計年度の業績は次のとおりです。

 

 

当連結会計年度

 

前連結会計年度比

売上高

25,142

億円

 

6,061

億円

31.8%

営業利益

1,871

億円

 

914

億円

95.5%

経常利益

2,084

億円

 

1,041

億円

99.9%

親会社株主に帰属する当期純利益

1,261

億円

 

834

億円

195.5%

(為替レート)

USD/JPY

112.4円(106.0円)

THB/JPY

3.44円 (3.42円)

AUD/JPY

83.1円 (76.2円)

注:( )内は前期の為替レート

 

 損益につきましては、増収効果、原価低減活動の推進、為替環境の好転により、資材費や物流費の高騰によるコスト増加を吸収し、営業利益は1,871億円(前連結会計年度比95.5%増)となりました。また、経常利益は2,084億円(前連結会計年度比99.9%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は1,261億円(前連結会計年度比195.5%増)となりました。

 なお、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を当連結会計年度の期首から適用しています。詳細については、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 注記事項(会計方針の変更)」をご参照ください。

 

 当社グループは、自動車及び部品並びに産業用エンジンの製造、販売(自動車事業)を主な事業とする単一セグメントであるため、セグメントの業績の記載を省略しています。

②財政状態の状況

 当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べて6,111億円増加し、2兆8,561億円となりました。

 負債は、前連結会計年度末に比べて4,217億円増加し、1兆4,617億円となりました。

 純資産は、前連結会計年度末に比べて1,894億円増加し、1兆3,944億円となりました。

 自己資本比率は41.8%(前連結会計年度末45.5%)となりました。

 有利子負債につきましては、前連結会計年度末に比べて2,139億円増加の5,304億円となりました。

 

③キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)につきましては、営業活動で1,720億円、財務活動で1,861億円それぞれ獲得した資金を、投資活動により4,208億円使用したこと等により、前連結会計年度末に比べて449億円減少し、3,417億円となりました。

 なお、営業活動によるキャッシュ・フローから投資活動によるキャッシュ・フローを控除して計算した、フリーキャッシュ・フローは、2,488億円の資金流出(前連結会計年度は1,295億円の資金流入)となっています。

 

[営業活動によるキャッシュ・フロー]

 営業活動により獲得した資金は、1,720億円(前連結会計年度比22.8%減)となりました。

 これは、税金等調整前当期純利益を2,042億円、減価償却費を983億円計上し、仕入債務の増加により325億円の資金流入があった一方で、棚卸資産の増加により1,052億円、法人税等の支払により469億円の資金流出などがあったことによります。

 

[投資活動によるキャッシュ・フロー]

 投資活動により使用した資金は、4,208億円(前連結会計年度比350.5%増)となりました。

 これは、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得で2,905億円、固定資産の取得で1,003億円、投資有価証券の取得で429億円の資金流出があったことが主な要因です。

 

[財務活動によるキャッシュ・フロー]

 財務活動により獲得した資金は、1,861億円(前連結会計年度は552億円の資金流出)となりました。

 これは、長期借入れの返済で581億円、配当金の支払で373億円、及び非支配株主への配当金の支払で218億円の資金流出があった一方で、長期借入れの実行で1,965億円、自己株式の処分で428億円、短期借入金の増加で417億円の資金流入があったことが主な要因です。

 

④生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当連結会計年度の生産実績は、次のとおりです。

 

 当連結会計年度

(自 2021年4月1日

  至 2022年3月31日)

 前連結会計年度比

台数

(台)

金額

(百万円)

台数

(%)

金額

(%)

大型・中型車

59,956

22.1

小型車

503,682

45.5

563,638

42.6

海外生産用部品

56,393

65.7

エンジン・コンポーネント

225,937

11.7

その他

149,442

4.9

 (注)1.海外生産用部品、エンジン・コンポーネント、その他の金額は、販売価格によります。

2.上記の表には、関連会社の生産実績は含まれていません。

b.受注実績

 当社グループ(当社及び連結子会社)は、過去の販売実績と将来の予想に基づいて、見込み生産を行っています。

c.販売実績

 当連結会計年度の販売実績は、次のとおりです。

 

 当連結会計年度

(自 2021年4月1日

  至 2022年3月31日)

 前連結会計年度比

金額(百万円)

増減率(%)

 

国 内

298,105

21.8

 

海 外

264,579

76.8

大型・中型車計

562,684

42.7

 

国 内

96,568

△27.6

 

海 外

1,067,255

37.8

小型車他計

1,163,823

28.2

 

国 内

394,673

4.4

 

海 外

1,331,834

44.1

車両計

1,726,507

32.6

 

海 外

54,926

69.7

海外生産用部品

54,926

69.7

 

国 内

58,296

13.9

 

海 外

112,093

13.8

エンジン・コンポーネント

170,390

13.9

 

国 内

425,177

31.9

 

海 外

137,289

35.2

その他

562,466

32.7

 

国 内

878,147

16.8

 

海 外

1,636,143

41.5

売上高合計

2,514,291

31.8

 

(注)主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は、次のとおりです。

 相手先

 前連結会計年度

(自 2020年4月1日

  至 2021年3月31日)

 当連結会計年度

(自 2021年4月1日

  至 2022年3月31日)

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

トリペッチ いすゞ セールス㈱

338,907

17.8

419,210

16.7

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。

 なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2022年6月28日)現在において当社グループが判断したものです。

 

①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.概観

[CV販売]

 当連結会計年度におけるCV車両の販売台数は、前連結会計年度から64,129台(31.9%)増加の264,858台となりました。

 国内では、東南アジアにおける新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大が部品供給に影響した結果、主に小型トラックの生産が影響を受け、前連結会計年度から6,482台(10.6%)減少の54,589台となりました。海外では、半導体不足により、主に北米向けトラックが生産制約の影響を受けたものの、全体では前連結会計年度から70,611台(50.6%)増加の210,269台となりました。

 なお、サプライチェーンの混乱による生産の制約により、当社の国内の普通トラックのシェアは、前連結会計年度比0.8%減少の33.0%となりました(なお、UDトラックスを含む当社グループの国内の普通トラックのシェアは44.9%)。また、小型トラックのシェアについても、同じく生産制約の影響を大きく受け、前連結会計年度比6.9%減少の33.9%となりました。

 

・CV車両販売台数

 

 

前連結会計年度

(台)

当連結会計年度

(台)

 

増減台数

(台)

増減率

(%)

国内

大型・中型

26,757

29,323

 

2,566

9.6

 

小型

34,314

25,266

 

△9,048

△26.4

 

61,071

54,589

 

△6,482

△10.6

北米

大型・中型

1,572

378

 

△1,194

△76.0

 

小型

19,765

25,364

 

5,599

28.3

 

21,337

25,742

 

4,405

20.6

アジア

大型・中型

11,986

22,916

 

10,930

91.2

 

小型

31,180

51,861

 

20,681

66.3

 

43,166

74,777

 

31,611

73.2

その他地域

大型・中型

15,910

25,797

 

9,887

62.1

 

小型

59,245

83,953

 

24,708

41.7

 

75,155

109,750

 

34,595

46.0

合計

大型・中型

56,225

78,414

 

22,189

39.5

 

小型

144,504

186,444

 

41,940

29.0

 

200,729

264,858

 

64,129

31.9

 

[LCV販売]

 当連結会計年度におけるLCV車両の販売台数は、前連結会計年度から61,693台(24.3%)増加の315,099台となりました。

 アジアでは、新型LCVの生産が、第1四半期から第2四半期にかけて半導体不足の影響を受けたものの、第3四半期以降は概ね解消に向かい、多くの地域で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大前の2020年3月期の販売台数を上回りました。その結果、販売台数は前連結会計年度から25,822台(15.5%)増加の192,069台となりました。その他地域においても、半導体不足の影響が解消に向かい、新型モデルの販売が大きく拡大したこと等により、全体では前連結会計年度から35,871台(41.2%)増加の123,030台となりました。

 なお、タイではLCVの全需が生産制約により前連結会計年度並みにとどまりましたが、引き続き新型モデルが高評価をいただき、販売シェアは前連結会計年度に引き続き40%台を維持いたしました。

 

・LCV車両販売台数

 

前連結会計年度

(台)

当連結会計年度

(台)

 

増減台数

(台)

増減率

(%)

アジア

166,247

192,069

 

25,822

15.5

その他地域

87,159

123,030

 

35,871

41.2

253,406

315,099

 

61,693

24.3

 

[パワートレイン出荷]

 当連結会計年度における産業用エンジンの出荷基数は、第3四半期以降は中国の建機需要の減速等により減少傾向に転じましたが、前連結会計年度から11,131台(8.1%)増加の149,152台となりました。

 

・産業用エンジン出荷基数

 

前連結会計年度

(台)

当連結会計年度

(台)

 

増減台数

(台)

増減率

(%)

138,021

149,152

 

11,131

8.1

 

b.当連結会計年度の経営成績についての分析

[売上高]

 売上高につきましては、国内のCV販売台数が半導体不足による生産制約を受け、前連結会計年度を下回りましたが、海外CV及びLCVについては半導体不足の影響が解消に向かい、販売台数が増加したことにより前連結会計年度に比べ、6,061億円(31.8%)増加の2兆5,142億円となりました。内訳は、国内が8,781億円(前連結会計年度比16.8%増)、海外が1兆6,361億円(前連結会計年度比41.5%増)です。

 

[営業利益]

 当連結会計年度の営業利益は1,871億円(前連結会計年度比95.5%増)となりました。

 当連結会計年度におけるサプライチェーンの混乱に伴う資材費・物流費等の高騰といった経済変動の影響は、前連結会計年度に対して450億円の減益となり、大幅な減益要因となりました。一方で、主に海外市場における販売量の増加による売上変動/構成差の影響は、前連結会計年度に対して825億円の増益となり、経済変動の影響を超える大幅な増益要因となりました。さらに原価低減活動として246億円の増益を実現したことに加えて、為替好転による影響が318億円と大きな増益要因となりました。なお、UDトラックスを新規連結したことによる影響は、40億円の増益要因となりました。

 この結果、当連結会計年度における売上高営業利益率は7.4%(前連結会計年度は5.0%)となりました。

なお、前連結会計年度からの営業利益の主な増減要因は、次のとおりです。

 

・営業利益の増減分析(前連結会計年度比)

      (億円)

売上変動/構成差

825

為替変動

318

原価低減活動

246

UDトラックス連結化影響

40

費用増減他

△65

経済変動

△450

合計

914

 

[営業外損益]

 当連結会計年度における営業外損益は212億円の利益であり、前連結会計年度に比べて126億円の増益となっています。

 受取利息及び受取配当金から支払利息を差し引いた純額が64億円の利益となり、前連結会計年度に比べて38億円増加したほか、持分法投資利益が45億円増加したこと及び為替差益が40億円増加したことが増益要因となりました。

 

[特別損益]

 当連結会計年度における特別損益は41億円の損失となり、前連結会計年度に比べて133億円の増益となりました。当連結会計年度の主な項目として、特別損失で、固定資産処分損、投資有価証券評価損が挙げられ、特別利益で、投資有価証券売却益が挙げられます。

 

[税金費用]

 法人税、住民税及び事業税と法人税等調整額とを加えた金額は、前連結会計年度では342億円の損失でしたが、当連結会計年度では475億円の損失となりました。

 

[非支配株主に帰属する当期純利益]

 非支配株主に帰属する当期純利益は、主にアセアン現地法人、北米現地法人、国内の製造又は販売会社の非支配株主等に帰属する当期純利益からなり、前連結会計年度の98億円に対し、当連結会計年度は305億円となりました。

 

[親会社株主に帰属する当期純利益]

 当連結会計年度における親会社株主に帰属する当期純利益は1,261億円となり、前連結会計年度に比べて834億円の増益となりました。1株当たり当期純利益は162.87円となりました。

 

c.当連結会計年度の財政状態についての分析

[資産]

 当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べて6,111億円増加し、2兆8,561億円となりました。

 主な要因としましては、UDトラックスの株式取得に伴い、同社及びその子会社14社を連結の範囲に含めたことなどにより、棚卸資産が1,894億円、有形固定資産が1,513億円、売上債権が834億円、リース債権及びリース投資資産が545億円増加したことや、トヨタ自動車株式の購入及び上場株式時価の上昇により、投資有価証券が581億円増加したことによります。

 

[負債]

 負債は、前連結会計年度末に比べて4,217億円増加し、1兆4,617億円となりました。

 主な要因としましては、有利子負債が2,139億円、仕入債務が1,087億円、未払費用が429億円増加したことによります。

 

[純資産]

 純資産は、前連結会計年度末に比べて1,894億円増加し、1兆3,944億円となりました。

 主な要因としましては、剰余金の配当を373億円行った一方で、親会社株主に帰属する当期純利益を1,261億円計上したことに加え、為替換算調整勘定が416億円増加したことによります。

 

d.経営上の目標の達成状況についての分析

 業績や経営指標の数値と照らした経営分析として、当連結会計年度において、売上高は2兆5,142億円、営業利益は1,871億円(営業利益率7.4%)、ROEは11.4%、配当性向は40.5%となりました。
 「中期経営計画2024」で掲げた目標のうち、売上高(2024年3月期に2兆7,500億円)及び営業利益(2024年3月期に2,500億円)については、半導体不足により国内CV及びタイLCVの販売が影響を大きく受けましたが、海外市場の需要が堅調に推移したことや費用の減少及び為替の好転等により、当連結会計年度の目標値に達しました。また、ROE(2024年3月期に12.5%)についても、資本効率の向上に努め、11.4%となりました。配当性向(期間平均で40%)については、株主への利益還元、経営基盤の強化及び将来への事業展開に備えるための内部留保の充実等のバランスを総合的に勘案の上、剰余金の配当を実施した結果、40.5%と目標値を上回りました。

 一方で、これまで経験したことのない原材料費・物流費の高騰による経済変動に加えて、サプライチェーンにおける地政学的リスクなどといった将来の不確実性が存在します。日本では、半導体供給については徐々に正常化を見込みますが、各国における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大による状況によっては部品供給に支障が生じる可能性があります。また、アセアンでは、引き続き一部の部品において供給が不透明な状況の中で高水準の生産計画を予定しています。

 このような中、当社グループは、既存事業の効率化やコスト低減に加えてアフターサービスの強化など事業基盤の盤石化を図るとともに、アライアンスの推進など前例にとらわれない積極的な施策を講じることにより、厳しい市場環境でも耐え抜くことができる強靭な事業基盤の構築に努めてまいります。

 社会インフラであるトラックを、多くのお客様にお待ちいただき、ご迷惑をおかけしていますが、感染拡大防止の対策に積極的に取り組むとともに、「運ぶ」を支える企業として、お客様が必要とされる車両をお届けし、アフターサービスによって稼働を支えていくことで「関係者と従業員の安全」及び「社会的責任」の両立を果たしてまいります。

 

e.資本の財源及び資金の流動性に係る情報

[キャッシュ・フローの状況]

 第2「事業の状況」3「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」(1)「経営成績等の状況の概要」に記載のとおりです。

 

[資金需要]

 当社グループにおける主な資金需要は、製品製造のための材料・部品の購入費、製造費用、製品・商品の仕入、販売費及び一般管理費、運転資金及び設備投資資金です。

 設備投資の状況については、第3「設備の状況」1「設備投資等の概要」に記載のとおりです。

 

[資金調達の状況]

 運転資金については返済期限が1年以内の短期借入金で、基本は各々の会社が運転資金として使用する現地の通貨で調達しています。設備投資資金については原則として資本金、内部留保といった自己資金でまかなうこととしています。今後、投融資の実行に伴い借入金・社債等による資金調達を検討する可能性があります。

 なお、当連結会計年度末における有利子負債の年度別返済額は第5「経理の状況」1「連結財務諸表等」⑤「連結附属明細表」「社債明細表」「借入金等明細表」に記載のとおりです。

 

[資金の流動性]

 CASEの時代を迎え、当社を取り巻くコンペティター、パートナー、ステークホルダーは多様化しかつグローバルに広がりました。このような状況変化のなかでも認められる企業であり続けるためには、今までの経営風土のあり方を変える必要性を強く認識しています。

 当社は今後、「ESGを視点とした経営」を基本に置き、先行するグローバルメーカーをベンチマークし、この変革に取り組みたいと考えています。その一つの視点である「株主価値重視」として、企業価値の持続的な向上を目指した成長投資の確保、及び財務健全性維持のための内部留保の充実と、株主価値重視とのバランスを総合的に勘案の上、「中期経営計画2024」(2022年3月期から2024年3月期まで)期間中の連結配当性向を平均40%に設定し、収益力の向上による着実な配当成長を目指します。また、資本効率重視の観点から、機動的な自社株取得も検討してまいります。当社グループは、「中期経営計画2024」に基づき、事業で創出される営業キャッシュ・フローを原資に投資、借入返済、株主還元に充当し、M&A等に係る資金は主として借入金、社債等で対応することによってこれらの目標の実現に向け取り組んでまいります。

 なお、手元資金の流動性には絶えず注視が必要ですが、当社グループは現金及び現金同等物に加え、主要銀行とコミットメントライン契約を締結しており、金融市場の急激な環境変化にも対応できる流動性を保持していると考えています。

 

②重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社の連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されています。当社経営陣は、連結財務諸表の作成に際し、会計方針の適用並びに資産、負債、収益及び費用に影響を与える判断、見積り及び仮定を必要としていますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、当初の見積りとは異なる場合があり、業績に悪影響を与える可能性があります。

 当社は、特に以下の重要な会計方針が、当社の連結財務諸表の作成において使用される当社の重要な見積りと判断に大きな影響を及ぼすと考えています。

 なお、翌連結会計年度及び翌事業年度に特に重要な影響を及ぼす可能性のある一部の項目については、第5「経理の状況」1.「連結財務諸表等」(重要な会計上の見積り)及び第5「経理の状況」2.「財務諸表等」(重要な会計上の見積り)に記載しています。

 

[貸倒引当金]

 当社グループの保有する債権は、その大半がディストリビューター・販売会社向けの売掛金で構成されています。これら債権のうち、一般債権については貸倒実績率等により、貸倒懸念債権等特定の債権については個別に回収可能性を勘案し、回収不能見込額を計上しています。

 従って、景気動向による貸倒実績率の上昇や、貸倒懸念債権等特定の債権の債務者の財務状況が悪化するなどその支払能力が低下した場合、追加引当が必要となる可能性があります。

 

[棚卸資産]

 当社グループでは、車両・エンジン等の製品及び仕掛品に加え、原材料・部品等の棚卸資産を保有しています。これらの棚卸資産については、市況の悪化等により収益性の低下が認められる場合には、将来需要及び供給等の推定に基づきその収益性の低下の程度を見積もり、評価減を計上しています。

 従って、実際の需要又は供給等が推定より悪化した場合、追加の評価減が必要となる可能性があります。

 

[繰延税金資産]

 当社グループは繰延税金資産について、将来の実現性が高い税務計画に基づき回収可能性があると判断した金額まで計上しています。

 従って、市場や経済情勢の悪化、当社グループの競争力の低下等の要因により、当社グループの業績が悪化し、繰延税金資産の全部又は一部を将来回収できないと判断した場合、当該判断を行った期間に繰延税金資産が調整され、費用が増加する可能性があります。

 

[退職給付に係る費用及び負債]

 退職給付費用及び退職給付債務は、数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出しています。これらの前提条件には、割引率、将来の報酬水準、退職率、死亡率及び年金資産の長期収益率などが含まれます。

 それぞれの前提条件は、現時点で十分に合理的と考えられる方法で計算されていますが、今後、経済環境の変化による割引率の低下や市場環境の悪化による年金資産の長期期待収益率の低下等、さらには退職率・死亡率等の変化が発生した場合、退職給付費用及び負債に悪影響を与え、費用及び負債が増加する可能性があります。

 

[製品保証引当金]

 当社グループは、製品のアフターサービスに対する費用の支出に充てるために、製品保証引当金を計上しています。製品保証引当金は、製品・地域毎の保証書の約定に従い、保証期間中の当社製品に対して、保証期間にわたって発生しうる費用を、過去の保証実績率を基に見積りを行っています。
 従って、実際の発生費用が見積りの金額よりも悪化した場合等においては、見積り額の修正が必要となる可能性があります。

 

4【経営上の重要な契約等】

契約締結時期

相手方

契約の種類

契約の概要

国籍

名称

2004年8月

日本

日野自動車株式会社

株主間
協定書

両社の共同出資により設立したジェイ・バス株式会社とその100%子会社であるいすゞバス製造株式会社並びに日野車体工業株式会社の3社が合併するにあたり、日野自動車株式会社との間において、バスの開発の一部及び生産に関する事業をジェイ・バス株式会社に統合。

2006年12月

日本

伊藤忠商事株式会社

いすゞ自動車販売株式会社

株主間
協定書

伊藤忠商事株式会社との間において、国内販売事業に関連するライフサイクル事業を行う統括会社の運営及び資本出資について合意し、統括会社であるいすゞ自動車販売株式会社がライフサイクル事業の運営を開始。

2014年10月

日本

三菱商事株式会社

基本覚書

タイにおける両社協業の最適化を目指し、泰国いすゞエンジン製造株式会社、いすゞモーターズインターナショナルオペレーションズタイランドリミテッドその他の現地事業体の当社出資比率引き上げを含む協業枠組みの変更につき合意。

2020年10月

スウェーデン

Aktiebolaget Volvo

(AB Volvo社)

協業基本
契約

AB Volvo社との協業分野及び同社との協業における意思決定の枠組について合意。

同上

同上

Volvo Technology Aktiebolaget (VTEC社)

技術協業
基本契約

AB Volvo社が100%保有する開発管理会社であるVTEC社との間において、技術協業の意思決定の枠組、費用負担の原則及び知的財産権の取扱いについて合意。

2021年3月

日本

トヨタ自動車株式会社

日野自動車株式会社

共同企画
契約

トヨタ自動車株式会社及びそのグループ会社である日野自動車株式会社との間において、商用車CASE領域における協業について合意。

同上

同上

トヨタ自動車株式会社

資本提携に関する合意

トヨタ自動車株式会社との間において、相互に株式を保有する形での資本提携について合意。

 

5【研究開発活動】

 当社グループでは、世界中のお客様に満足していただける商品とサービスを提供していくため、トラック・バスやピックアップ・トラック、ディーゼルエンジン等における最新技術の研究開発を行うとともに、その技術を用いることで多くの国・地域のお客様のニーズに対応した最適な商品の開発に取り組んでいます。

 当社グループを取り巻く事業環境が絶え間なく変化する中で、商用車業界における重要な環境変化は「電動化/脱CO2化の潮流加速」及び「止まらない物流インフラへの期待増」と考えています。これらの変化へ対応し、脱炭素社会や新たな物流社会の実現に貢献していく事は、社会的使命であり責務であると認識しています。
 当社グループでは「中期経営計画2024」(2022年3月期から2024年3月期まで)の中でイノベーションの基軸として据えた「カーボンニュートラル戦略」と「進化する物流へ商用車メーカーとして貢献」の取組みの基、研究開発活動を進めています。

 当連結会計年度の研究開発活動の成果として、大型トラック「ギガ」については、国内商用車メーカー初の大型LNGトラック「ギガLNG」を発表しました。当社グループはこれまでエネルギーセキュリティ及び環境負荷低減の観点から、天然ガス自動車の開発・普及促進に取り組んでまいりました。LNGの優れた環境性能と、これまでと同等の使い勝手を有する「ギガLNG」を、カーボンニュートラル社会への移行期における選択肢の一つと考えています。大型FCVトラックについては車両開発を進めており、2022年度中にモニター車による実証実験を行います。実証実験では、技術課題の見極めを進め、社会実装を目指した検証を進めます。また、ボルボグループとの先進技術領域での協業も見据えた、いすゞ/UDトラックスの共通大型プラットフォームの開発に着手しました。

 中型トラック「フォワード」については、大型トラック「ギガ」に採用されている全車速ミリ波車間クルーズを、新たに搭載しました。これにより、高速道路の渋滞などによる低速走行時のブレーキとアクセル操作が、従来よりも大幅に低減します。単眼カメラと前方ミリ波レーダーによって割り込み車もいち早く検知し、より適切な車速制御が可能となることで、安全運行とドライバーの疲労軽減に貢献します。

 小型トラック「エルフ」については、BEV(バッテリー式電動自動車)を開発、2023年を目途に市場投入する予定です。2019年より配送・宅配等に向けたモニター車による各種検証を進めてきましたが、そこから得られた知見をベースに、バッテリー技術やモーター技術、最適なエネルギーマネジメントを適用し、高性能かつ高機能な商品を目指しました。小型FCVトラックについては実証実験に向けた車両開発を進めました。

 バスにおいては、2024年の市場投入を目標に、大型路線BEVバスの開発を開始しました。また、公共交通におけるドライバー不足の解決策の一つとして期待されている自動運転の実現に向け、大型バスでの自動運転の共同実証実験を開始しました。

 LCVにおいては、新型「MU-X」を開発、豪州に輸出を開始しました。先進運転支援システムADAS(Advanced Driver Assistance System)を搭載し、リアルワールドでの障害物検知にすぐれたステレオカメラにより、昼夜問わず安定した運転支援を実現します。さらに衝突時の二次被害軽減のため、マルチコリジョンブレーキ機能等の最新安全装備を採用し、高い安全性を評価され「ANCAP(Australasian New Car Assessment Program)」において、2020年新プロトコルによる五つ星を獲得しました。

 なお、当連結会計年度における研究開発費の総額は1,047億円です。