第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1)経営方針・企業理念・行動方針

 当社グループを取り巻く事業環境の変化は日増しに加速しており、事業は複雑性を増しています。こうした状況下で、当社グループはさまざまな社会課題を解決し、商用車業界をリードしていくために、自らの存在意義、そしてお客様・社会に対する提供価値を問い直すことが必要とされています。

 このような課題認識のもと、当社グループは、従業員一人ひとりが高い視座に立ち、同じ価値観を共有し、一丸となって社会課題の解決に取り組むことが必要と考え、2023年5月に新経営理念体系「ISUZU ID」を策定しました。

 

「ISUZU ID」の概要は以下のとおりです。

◆PURPOSE(使命):地球の「運ぶ」を創造する

お客様、そしてパートナーの皆さまと地球上のすべてのモノ・ヒトの「運ぶ」を主体的に創造するとともに、カーボンニュートラルへの対応や、進化する物流への貢献など、新たな「運ぶ」の価値を提供し、社会を豊かにしていきたい、という決意を表しています。

 

◆VISION(将来像):「安心×斬新」で世界を進化させるイノベーションリーダー

あらゆる社会課題の解決に貢献していくために、従来大切にしてきた「安心」に、「斬新」を掛け合わせ、イノベーションリーダーを目指します。

 

◆MISSION(任務):あなたと共に「運ぶ」の課題を解決する

すべての人々と共に社会を前進させるという意志を込め、4つの分野(お客様満足度・地球へのやさしさ・働きがい・社会への影響力)でNo.1を目指します。

 

◆CORE VALUE(コア・バリュー):相互成長

イノベーションリーダーとして、一人ひとりが挑戦・変化・貢献する意欲を持ち、集団として尊重・信頼・刺激し合うことで、成長していきます。

 

 今後、当社グループは「ISUZU ID」を起点に、既存事業の更なる強化と新事業への挑戦を通じて社会課題の解決に貢献し、世界を進化させるイノベーションリーダーを目指します。

 

(2)対処すべき課題

 「地球の『運ぶ』を創造する」をPURPOSE(使命)として、「運ぶ」に関わるさまざまな社会課題を解決するためには、多様化するお客様ニーズや不確実性の高い事業環境にもしなやかに対応し、絶えず柔軟に変革し続けることが不可欠です。

 変革の実現に向け、当社グループでは2024年4月に、中期経営計画「ISUZU Transformation – Growth to 2030」(以下「IX」という。)を公表しました。「IX」は「ISUZU ID」のVISION(将来像)とMISSION(任務)を、足元からのフォーキャストと「ISUZU ID」からのバックキャストで、2030年目線で具体化し策定したものです。当社グループは2030年に向けて、創造・提供する価値を従来の商品軸から、新たにソリューションへと広げ、ビジネスモデルを変革します。現在の収益拡大と、未来の収益への投資を両輪として、お客様・社会をはじめ、あらゆるステークホルダーが抱える課題を「安心×斬新」な「運ぶ」で解決する、「商用モビリティソリューションカンパニー」を目指していきます。

 

 次に挙げる課題は、「ISUZU ID」及び「IX」の実現のみならず、自動車業界・商用車業界におけるお客様のご期待や技術的変革に対応するため中長期的な観点から抽出したものです。

 

「運ぶ」を創造する新事業への挑戦

 物流業界を取り巻く環境は、カーボンニュートラル(以下「CN」という。)社会の実現が急がれるなか、昨今の慢性的なドライバー不足等の課題を抱えています。こうしたお客様・社会課題の解決に貢献し、未来の新たな収益へと成長させるため、従来培ってきた当社の強みである「安心」を活かし、「自動運転ソリューション」、「コネクテッドサービス」、「カーボンニュートラルソリューション」の3領域を軸に、「安心×斬新」でお客様と社会の課題を解決する新事業に挑戦します。これら新事業への挑戦に向け、総額1兆円規模のイノベーション投資を着実に実行します。

 

(当連結会計年度の取組み)

 「自動運転ソリューション」については、2027年度までの「自動運転レベル4技術」を活用したトラック・バス事業の開始に向けた技術やノウハウの獲得のため、2024年4月に自動運転車両ソフトウェア開発を行う米国Applied Intuition, Inc.との戦略的提携契約を締結、2024年5月には 自動運転物流事業を展開する米国Gatik AI Inc.への3,000万USドルの出資を実行する等、一層の拡充に取り組みました。また、実証事業として、経済産業省及び国土交通省が推進する「自動運転レベル4等先進モビリティサービス研究開発・社会実装プロジェクト(RoAD to the L4)」の「高速道路における高性能トラックの実用化に向けた取り組み(テーマ3)」に参画し、国内商用車メーカー4社合同で新東名高速道路における公道実証を開始したほか、当社独自の公道実証を2025年4月より開始するための各種取組みを推進しました。

 「コネクテッドサービス」では、かねてより運行管理・ドライバー支援サービス「MIMAMORI」、高度純正装備「PREISM」等の先進的なコネクテッドサービスを、業界に先駆けて導入してきました。当連結会計年度は、北米においてBEV(※)トラック向けのコネクテッドサービスを本格的に展開し、BEVを安心して利用するための「稼働サポート」及び効率的な運用をサポートする「充電マネジメント機能」の提供を実現しました。

 「カーボンニュートラルソリューション」では、多様な動力源での技術開発・商品提供、BEVの価格競争力向上を前提としつつ、交換式バッテリーEV分野に重点的に取り組んでいます。当連結会計年度はタイでの交換式バッテリーソリューションの導入等に関する実証事業開始に向けた取組みを進め、同実証事業を2025年4月に開始しました。また、2024年10月にはBEVの運用と施設エネルギーマネジメントの両立に向けた実証を株式会社伊藤園及び株式会社アイ・グリッド・ソリューションズと連携して開始しました。本実証では、BEV導入時の課題解決と脱炭素化を支援するトータルソリューションプログラム「EVision」のサービス拡充を目指して、BEVの充電計画の策定、充電制御の実地検証を行います。

 

(※)BEV:Battery Electric Vehicle

 

(今後の計画)

 「自動運転ソリューション」では、2027年度に、日本及び北米を皮切りに自動運転レベル4技術を活用したトラック・バス事業化を目指します。この実現に向けて、2025年度より当社グループ独自の公道実証を開始します。 この取組みと、当社が従来培ってきた「通常時、緊急時の車両制御技術」、「お客様による使われ方の熟知」を掛け合わせることで、2027年度より順次、高速道路・ハブ間での輸送や、市街地をはじめとする路線バスの自動運転ソリューションを提供していきます。

 「コネクテッドサービス」では、国内においては運送事業者・荷主の輸配送効率を高めるサービスを提供するほか、業界を超えたさまざまなデータを商用車情報基盤「GATEX」と連携させることで新たなサービスを創出します。さらに、北米より高度純正整備「PREISM」と「EVision」を展開し、2028年までに北米以外の主要地域へも対象エリアを拡大します。

 「カーボンニュートラルソリューション」では、「いすゞ環境長期ビジョン2050」に基づき、マルチパスウェイで技術開発を進め、各国の使われ方・地域状況・社会動向に適した商品を展開することで、CN社会実現に貢献します。具体的には、2030年までに全車種でCN商品をラインアップに加える予定です。CN商品の開発加速のため、藤沢工場内に電動開発実験棟を新設し2026年6月の稼働開始を目指します。

 さらに、2030年代の普及期を見据え、価格競争力のあるBEVの投入や、バッテリー交換式ソリューション「EVision Cycle Concept」をはじめとする周辺事業の展開を本格的に推進し、社会のCN化を牽引します。

 

「運ぶ」を支える既存事業の強化

 当社グループは150カ国以上で事業を展開し、うち35カ国以上でシェア第1位、グローバル販売台数は52万台以上と、世界中のお客様・社会の「運ぶ」を支えてきました。今後も業界を牽引するとともに、お客様・社会の「運ぶ」を支え続けるためには、既存事業の商品力・販売力を強化し、グループの事業基盤を一層強固にする必要があります。当社グループは、商用車市場のグローバルリーディングカンパニーとして、2030年度に新車販売85万台(トラック45万台及びピックアップトラック40万台)以上の販売を目指します。

 

(当連結会計年度の取組み)

 当連結会計年度も引き続き各国の使われ方、地域状況、社会動向に適した商品の開発、展開に取り組みました。

 日本においては、ドライバー不足に対応する商品として、AT限定の普通自動車運転免許でも運転できる小型ディーゼルトラック「ELF mio」の販売を開始し、小型トラックから大型トラックまで幅広い商品展開に取り組んでいます。「ELF mio」の販売にあたってはデジタルマーケティングを導入し、同製品をウェブストアで販売しています。さらに、「JAPAN MOBILITY SHOW 2023(ジャパンモビリティショー)」で世界初公開したBEV路線バス「エルガEV」の販売を開始し、公共交通機関におけるCN実現に向け貢献しています。

 また、海外においては、当社とUDトラックス間における商品の相互補完を推進しており、2024年7月には、UDトラックスのタイ国拠点において海外向け新型大型トラック「S&Eシリーズ」の生産を開始しました。また2024年11月には、市場の要望に応えるべく、タイ国において2.2Lディーゼルエンジンを搭載した「D-MAX/MU-X」の販売を開始しました。加えて、2024年3月から4月にかけて開催された「BANGKOK INTERNATIONAL MOTOR SHOW 45th(バンコク国際モーターショー)」で世界初公開した「D-MAX BEV」の量産開始に向けた取組みを推進しました。

 

(今後の計画)

 日本においては、いすゞ連結販売会社とUDトラックスの地域販売拠点の統合を2027年3月までに完了し、ブランド横断でのサービス提供によりお客様の利便性向上と同時に、業務やシステムを統一することで効率的な運営を目指します。また「ELF mio」の販売で導入したデジタルマーケティングをさらに推進し、トラックの新たな使い方を提案していきます。

 海外においては、日本国内で先行してフルモデルチェンジした小型・中型トラックを、北米を皮切りに順次、豪州や欧州などの市場に投入します。また、「トータルライフサイクルで稼働を支えるサービス」を実現し、お客様のニーズに合わせたサービスを提供するためメンテナンスリース事業を北米や豪州などの地域に順次展開・強化します。そして、米国においては、2025年1月に設置を決定したサウスカロライナ州の新生産拠点の2027年中の稼働開始を目指すとともに、北米市場での需要増加が見込まれるBEV部材の現地調達化を推進し、100万台のサプライチェーンの構築の実現を目指します。

 

「ISUZU ID」を基軸とした経営基盤の確立

 「ISUZU ID」で示すVISION(将来像)・MISSION(任務)、「IX」で示す「商用モビリティソリューションカンパニー」への変革を実現するためには、人的資本経営やグローバル視点でのグループ経営を支える経営基盤の確立が必要不可欠です。当社グループではグローバル基準の人財マネジメント基盤の整備、「安心×斬新」を実現する人財への投資を加速し、更なる事業成長を目指していきます。

 

(当連結会計年度の取組み)

 当連結会計年度は、「IX」で掲げる「グローバル視点でのグループ経営への進化」「人的資本経営への進化」を目指し、仕事(ジョブ)の設定、適所適財、公正な評価・報酬、それらを通した成長支援から構成される「包括的な人財マネジメント基盤」を整備し、当社単体の管理職向けの新人事制度として展開しました。

 

(今後の計画)

 「ISUZU ID」のビジョン・ミッションを起点とした人的資本経営への進化に向け、グローバル基準の人財マネジメント基盤を整備し「安心×斬新」を実現する人財への投資を継続し、社員一人ひとりの成長を更なる事業成長へ繋げていきます。従来の職能型を改め、職務型を採用した新人事制度については、2024年4月に管理職者を対象に開始しましたが、2025年4月より非管理職者にも適用を開始しており、2026年度にはグループ全体で運用します。職務(ジョブ)の明確化とそれに基づいた適所適財の人財配置、公正な評価・報酬を実現することで、対話と育成の文化を醸成し、従業員の更なる成長を支援します。

 また、物流に関する課題解決に向け、外部機関と連携した人財育成も強化します。2025年2月に東京大学と開設した「トランスポートイノベーション研究センター」に、当社グループより毎年3名の技術者を派遣し、物流・交通分野の社会課題解決を推進します。

 また、「IX」を達成するための経営基盤を確固たるものにするべく、迅速かつ適切な意思決定を実現するガバナンス体制及びリスクマネジメントをはじめとした内部統制の強化にも引き続き注力していきます。

 

強固な収益基盤・財務基盤の確立及び成長投資と株主還元の両立

 当社グループは、企業価値の持続的な向上を目指し、事業継続及び将来成長に必要な投資を優先に実行していきます。グループ全体での既存事業の強化を軸に、新事業を強力に推進することで、2030年度には売上高6兆円、営業利益率10%以上を目指します。

 

(当連結会計年度の取組み)

 当連結会計年度の車両販売台数は、国内ではフルモデルチェンジした商品の販売拡大により増加したものの、海外でのバックオーダーが正常化した北米・欧州を中心としたCV(商用車(トラック及びバス))販売台数の減少、タイを中心とした厳しい市況等に伴うLCV(ピックアップトラック及び派生車)販売台数の減少等に伴い、総販売台数は前連結会計年度に比べ142,658台(21.4%)減少し、523,233台にとどまりました。当社グループでは価格対応や原価低減等による収益・利益の確保に取り組んだものの、資材費等の上昇の影響も加わり、当連結会計年度の売上収益は3兆2,356億円、売上収益営業利益率7.1%、ROE10.2%となりました。

 投資については、当連結会計年度においてもイノベーション投資としてCN対応や自動運転関連、既存事業投資として販売・サービスインフラ強化に向けた投資を実施し、設備投資及び研究開発支出は合わせて2,799億円となりました。株主還元では、1株当たり配当金を前連結会計年度から据え置き、配当金は708億円となりました。また、自己株式取得は756億円と、適正な自己資本比率(親会社所有者帰属持分比率)を維持した、機動的な自己株式取得に取り組みました。財務健全性としては、各格付にてA格を取得しています。

 

(今後の計画)

 企業価値の持続的な向上を目指し、事業により得られた収益をもとに、将来成長に必要な投資を優先して実行するとともに、株主還元と財務健全性を両立していきます。

 収益面は、2026年度に売上高4兆円、営業利益率9%、2030年度には売上高6兆円、営業利益率10%以上、ROE15%以上を目指します。

 投資については既存事業投資とイノベーション投資を積極的かつバランスを見ながら実行することで、長期にわたる持続的な成長の実現を目指します。具体的には、2031年3月期までにイノベーション投資1兆円、既存事業投資1.6兆円、合わせて2.6兆円規模の投資を計画しています。当期から2027年3月期までは既存事業投資として生産拠点・販売拠点・サービスインフラ等への投資、イノベーション投資として自動運転関連の研究開発費などを計画していますが、2031年3月期にかけてはイノベーション投資のウエイトを徐々に増やしていく予定です。このように積極的なイノベーション投資を推進しつつ、既存事業ではDXを活用することで業務効率化を図り、収益を確保します。

 株主還元は、配当性向は平均で40%を維持し、着実な配当成長を目指します。また、固定資産と自己資本(親会社の所有者に帰属する持分)のバランスを考慮しつつ、自己株式取得を継続します。また、財務健全性は、各格付でのA格を維持しつつ、有利子負債(社債及び借入金、リース負債の合計)も活用していきます。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2025年6月25日)現在において当社グループが判断したものです。

 

 当社グループは、経営理念体系「ISUZU ID」でMISSION(任務)として掲げている、4つの分野(お客様満足度・地球へのやさしさ・働きがい・社会への影響力)でのNo.1という目標の実現に向けて、サステナビリティ活動を推進してきました。2024年5月には、中期経営計画「IX」を発表し、「ISUZU ID」で掲げたMISSIONと紐づけて、当社グループが2030年に目指す姿、道筋を具体化しました。

 今後もIXで掲げた事業計画に基づいて、MISSIONの実現に向け、気候変動を含む地球環境問題やすべての基盤となる人権尊重をはじめとするサステナビリティ活動に積極的に取り組んでいきます。

 

(1)サステナビリティ共通

①ガバナンス

 当社は、グループ全体でサステナビリティの推進を図るため、取締役を委員長とし、各領域の担当役員を常任委員とするサステナビリティ委員会を設置しています。

 サステナビリティ委員会は、定期的(年4回以上)に開催し、気候変動リスクや人権など、サステナビリティに関わる事項の審議を行っており、審議事項は、内容の重要度などを鑑み、必要に応じて経営会議、取締役会へ報告を行っています。

 また、サステナビリティ委員会の傘下には、関連する常任委員を部会長とする環境及び社会の専門部会を設置し、個別課題について具体的な議論を行っています。

 さらに、グループ横断的なサステナビリティ推進体制の構築のため、連結子会社を対象とするグループサステナビリティ連絡会を開催し、グループ間での情報共有を行っています 。

 

 (サステナビリティ委員会の構成)

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(サステナビリティ委員会の開催状況)

 

2023年度

2024年度

開催実績

5回

5回

主な議題

・サステナビリティに関する方針の見直し等の審議

・環境ロードマップの推進についての審議、報告

・人権デュー・ディリジェンス進捗報告

・各部会の活動報告

・調達電力のCN化計画の進捗報告

・環境ロードマップの推進についての審議、報告

・人権デュー・ディリジェンス進捗報告

・サステナビリティ情報開示の動向と対応

・各部会の活動報告

 

 

②リスク管理

 当社は、グループでのリスク管理プロセスを主導するCRMO(Chief Risk Management Officer/リスクマネジメント責任役員)を設置したリスク管理体制を構築しています。CRMOは、社会と当社のサステナビリティの視点から、定期的にグループの経営上・事業遂行上でのリスクを特定・評価するとともに、これらのリスクを適切に管理し、特に低減に努めています。

 特定した具体的なリスクについては、「3 事業等のリスク」に記載していますが、その中には「優秀な人財の確保・定着、パフォーマンスの発揮等」、「気候変動」を含めており、これらのリスクをグループ全体のリスクとして統合・管理しています。

 

(2)気候変動

①ガバナンス

 当社は、CNの達成に向けた取組みを着実に推進する体制として、前述の「サステナビリティ委員会」のもと、気候変動に関する事項の審議・決定を行っています。また、傘下に生産活動を中心に事業活動のCN達成に向けた活動を推進する「事業系CN推進部会」と脱炭素技術/エネルギーなどによる製品のCNに資するさまざまな活動を推進する「製品系CN推進部会」を設置し、具体的な対応方針や活動の検討、実務展開を行う体制を整えています。

 

②戦略

 当社グループは、環境面における長期的な視野で目指すべき姿としての「いすゞ環境長期ビジョン2050」及び同ビジョンを実現するために2030年までの道筋とチャレンジを示した「2030環境ロードマップ」を策定しています。

 

いすゞ環境長期

ビジョン2050

2030環境ロードマップ

Aspiration

2030チャレンジ

グローバルアクション

事業活動から直接排出

されるGHG(※1)ゼロ

2030年までにCO₂排出量※を2013年度比で

50%削減します

※ Scope1+2

・エネルギー使用総量を削減します

・クリーンエネルギーの導入・拡大を推進します

・革新技術を積極的に導入します

製品ライフサイクル

全体でGHGゼロ

多様なニーズに応えるCN車両のライン

アップを揃えていきます

・2025年までに技術の見極めを行っていきます

・2030年までに社会実装を進めながら量産モデルを拡大していきます

 

 また、中長期における気候変動への対応戦略を具体化するため、当社では、IPCC(※2)による気候シナリオや、IPCC/IEA(※3)が作成した社会経済シナリオを参考に、2050年に向けた環境長期シナリオに基づくシナリオ分析を行いました。脱炭素社会への移行に伴う「移行リスク・機会」と、自然災害の増大等により物理的な影響を及ぼす「物理的リスク・機会」に分け、以下のとおり特定しています。

 さらに、「ISUZU ID」の実現に向けて、BEVの価格競争力向上、CN燃料に対応した内燃機関の開発をはじめとしたマルチパスウェイ(全方位)での技術開発等、カーボンニュートラルソリューションを創出・推進し、グローバルでのCN化の牽引を目指します。具体的には、BEV実装に向けた電動開発実験棟「The EARTH lab.」の新設(2026年6月稼働開始予定)や、社会インフラとしてのバッテリー活用を目指す「EVision Cycle Concept」(2025年3月期から実証と社会実装の検討を開始)、CN燃料を活用した建設・輸送分野での脱炭素化の実証などの取組みを進めています。

 

(※1)GHG(Green House Gas:温室効果ガス)

(※2)ⅠPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change:気候変動に関する政府間パネル)

(※3)ⅠEA(International Energy Agency:国際エネルギー機関)

 

 

(リスクと機会)

分類

リスク

機会

対策

事業への

影響度

移行リスク・機会

(脱炭素社会への移行に伴うリスク・機会)

政策規制

・更なる環境対応規制の強化への対応遅れによる、シェア低下

・ゼロエミッション車の需要増加

・CN化に対応出来るフルラインアップ確立に向けた取組み推進

技術

・EV、FCVなど多様なパワートレインに対応するための開発、生産コストの増加

・オープンイノベーションの拡大

・安価なクリーンエネルギーの普及拡大

・アライアンスを活用した効率的な共同開発

・安価なクリーンエネルギーへの切り替えによる低炭素な操業とコスト低減

・物流インフラの多様なニーズに対応出来ないことによるブランド力低下

 

・自動運転、隊列走行、フルトレーラーのニーズ拡大

・お客様との協創活動によるCNに資する物流イノベーションの創出

市場

・化石燃料を使う内燃機関車の市場縮小

 

・次世代燃料(カーボンニュートラル燃料)の活用による既存内燃機関技術やインフラの活用

評判

・事業全般におけるGHG(温室効果ガス)削減対策や再生可能エネルギー導入の遅れによるエネルギーコストの増加、評判リスクの増加

・早期の再生可能エネルギー導入によるコスト低減と企業イメージ向上

・再生可能エネルギーの導入拡大

・省エネ活動の更なる推進によるエネルギーコスト低減

物理的リスク・機会(自然災害の増大や水資源の枯渇等の物理的リスク・機会)

・異常気象(洪水、台風等)発生増加による事業被害

・災害対応可能な車両へ需要増加

・自然災害に強靭なインフラサービスへのニーズ拡大

・災害対応車の提供

・水害等で被水した車両の復旧サービス提供

・BCPの拡充による企業体質の強靭化

 

 当社グループの環境長期シナリオや製品・サービス、及び事業活動におけるCNに向けた具体的な取組みについては、『サステナビリティレポート2024』の環境の項目をご参照ください。

 

③リスク管理

 気候変動に関するリスク全般については、「(1)②リスク管理」に記載のとおり、当社グループのリスク管理体制の下で管理しています。「(2)②戦略」に記載した、個々の具体的な気候変動リスクと機会については、サステナビリティ委員会が特定・評価を行い、事業への影響を踏まえた対策の進捗を管理しています。

 

④指標と目標

 当社は、「いすゞ環境長期ビジョン2050」において、2050年までに、当社グループ製品のライフサイクル全体でGHGゼロを目標に掲げています。また、この目標を実現するために、「2030環境ロードマップ」において、2030年までに当社グループのCO排出量(Scope1+2)を2013年度比で50%削減する目標を設定しています。

 

GHG排出量の推移

 当社グループでは、環境長期ビジョン・環境ロードマップ達成に向けた活動を全社を挙げて進めています。

 当社は2023年度、既設の太陽光発電設備に加え非化石証書付き電力等の調達により、Scope2排出量を前年度比で30,000t以上削減しました。また藤沢工場では2025年度、栃木工場では2027年度から実質再生可能エネルギーを100%使用した電力の調達を予定しており、藤沢・栃木両工場の年間CO排出量を約50,000t削減する見込みです。

 また、2023年度に算定した温室効果ガス排出量のうち「Scope3(その他の活動に伴う間接排出)カテゴリー11 販売した製品の使用」による排出量が全体の約90%を占めています。このことから当社は、前述のとおり、2050年までに製品ライフサイクル全体でGHG排出量をゼロとする目標を掲げており、当該目標の実現に向けて、CN車両の実装や技術開発など様々な取組みを推進しています。

 

第三者保証について

 2022年度、2023年度の当社のScope1、2、3実績につきましては、データの信頼性、正確性の確保を目的として、第三者による検証を実施しています。

 なお、2024年度GHG排出量実績については、2025年8月に発行する『サステナビリティレポート』(https://www.isuzu.co.jp/company/sustainability/report.html)に記載する予定です。

 

(提出会社の2023年度CO排出量実績)

算定項目

2021年度

2022年度

2023年度

GHG排出量合計(t-COe)

94,683,737

102,675,760

79,434,151

Scope1

直接排出

128,074

119,189

115,370

Scope2

間接排出※1

78,192

75,847

44,452

Scope3

合計

94,477,471

102,480,724

79,274,329

カテゴリー1 購入した製品・サービス

4,903,215

6,006,103

6,765,119

カテゴリー2 資本財※2

0

21,510

130,375

カテゴリー3 Scope1、2 に含まれない燃料及びエネルギー関連活動

44,081

46,263

48,266

カテゴリー4 輸送、配送(上流)

37,402

40,733

42,255

カテゴリー5 事業から出る廃棄物

5,312

1,533

1,360

カテゴリー6 出張

1,050

1,050

1,107

カテゴリー7 雇用者の通勤

3,486

3,476

3,624

カテゴリー10 販売した製品の加工

166,537

184,204

205,080

カテゴリー11 販売した製品の使用

89,314,699

96,174,036

72,075,304

カテゴリー12 販売した製品の廃棄

1,689

1,816

1,839

カテゴリー8、9、13、14、15は該当する活動なし

※1 再生可能エネルギーの導入を拡大しているため、排出量が減少

※2 2023年度より活動量の算定方法を見直したため、排出量が増加

 

(3)人的資本・多様性

(3)-1.人的資本経営

①ガバナンス

 当社グループは、経営理念体系として策定した「ISUZU ID」において、MISSION(任務)を定め、特に人に関わるものとして「働きがいNo.1」を目指していくことを掲げました。

 また、2024年4月に中期経営計画として策定した「IX」において、人的資本経営への進化を掲げ、2030年に目指す姿を示しました。さらに、2025年4月には当社初となるCHROを新たに設置し、人財戦略を推進する体制を明確にしました。

 人財戦略や取組み方針については、人事部門のリーダーシップチームで議論検討した上で、経営会議で適宜決議する体制としています。

 

②戦略

 人財戦略としては、人財ポートフォリオの充実、エンゲージメントの向上、将来を見据えた基盤強化に分けて各種取組みを進めています。

 人財ポートフォリオの充実を図るため、まず職務を基盤とした新人事制度を管理職向けに導入しております。2025年4月からは管理職以外の全社員に対しても適用を開始しています。本制度のコンセプトは、①成長機会を見出す、②仕事で成長する、③成長が報われる、という「人財成長サイクル」を回していくことです。このサイクルにより、会社は社員一人ひとりの成長意欲を最大限に引き出し、社員は自分らしく成長し「ISUZU ID」の実現に貢献する、の実現が可能となります。なお本制度は、2026年度までに当社グループ全体へ展開する予定です。

 

(新人事制度のコンセプト:人財成長サイクル)

 

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 エンゲージメントの向上のため、2024年から全社員を対象としたサーベイを導入して、職場の強みと課題を定量的に可視化できる状態としたうえで、職場全員で議論と改善に向けたアクションに取り組みました。特に第一線のマネジメントを担う層のエンゲージメントを全社での優先課題として定め、今後様々な施策に取り組んでいます。

 将来を見据えた基盤強化のためには、多様な人財が活躍できる環境を整えていく必要があり、多様な働き方の実現に取り組んでいます。特に、育児・介護との両立が求められる社員に向けた人事施策を設けることで、両立支援に取り組んでいきます。

 

③リスク管理

 「(1)②リスク管理」に記載のとおり、人的資本・多様性に関するリスクとして「優秀な人財の確保・定着、パフォーマンスの発揮等」を特定し、全社グループとしての体制のもとで管理しています。また、本リスクの管理は、当社グループの提供価値の拡大と変革を実現する、という機会の側面を併せ持っています。

 本リスク・機会への対策・施策として、前述の「人財成長サイクル」を回していき、社員一人ひとりが自分らしく成長して「ISUZU ID」の実現に貢献しつつ、個々人の成長が多面的に確認されて報われる仕組みに展開していきます。

 また、本リスクへの対策の前提となる人権尊重について、「いすゞグループ人権方針」に従い、人権意識を高めるための教育・啓発活動を役員・従業員に対し実施しています。

 

④指標と目標

 当社では、取組み状況を測る指標として、以下の項目を設定しています。今後、各取組みを実行する上で追加的な指標を検討・設置していきます。

 

 新人事制度のコンセプトである「人財成長サイクル」を実効的に回していくため、制度の対象となるすべてのマネジメント(管理職)にはOne on One研修を、メンバーには2年間に分けてキャリア研修等を実施していき、研修受講人数を指標としています。今年度よりエンゲージメントの肯定的回答水準を指標として設定し、2030年の70%を目標として、サーベイと改善への取組みを毎年実施します。

 働き方については、制度改定や活用促進を行うことで、希望するすべての社員が育児・介護休職を取得でき、短時間勤務制度を利用できています。

 

 なお、2026年度以降に当社グループ各社へ人事制度を中心とした各種取組みを展開する予定です。以下の各指標は、当社の実績です。

 

人財育成に関する指標

指標

 

実績(当連結会計年度)

マネジメント(管理職)向け研修人数

 

571

メンバー向け研修人数

 

4,148

 

 

エンゲージメントに関する指標

指標

 

実績(当連結会計年度)

エンゲージメントの肯定的回答率

 

47

 

 

働き方の基盤強化に関する指標

指標

 

実績(当連結会計年度)

育児・介護支援制度

の利用者数

 

育児休職

 

178

(男性138人・女性40人)

 

介護休職

 

8

(男性6人・女性2人)

 

短時間勤務(介護・育児)

 

30

(男性2人・女性28人)

 

(3)-2.労働安全衛生

①ガバナンス

 当社グループの安全衛生理念に基づき、従業員の安全と健康を事業活動の基盤に据え、代表取締役社長COOを最高責任者とし、CRMOが取りまとめる「安全推進特別委員会」を設置し、安全推進活動を推進しています。委員会の活動状況は、社内規則に基づき、経営会議及び取締役会に付議・報告されます。

 また、各事業所にて月1回、「安全衛生委員会」を開催し、従業員の労働安全・交通安全・健康管理、職場の環境改善などについて労使間で議論を行っています。「安全衛生委員会」での議論の内容等については、その内容や必要性に応じて、安全衛生担当部署を所管する役員に対し適宜報告する仕組みとしています。

 

②戦略

安全衛生方針

 当社は、「従業員の尊重」の基本的な考え方として、安全・安心で快適に働くことのできる環境を整備することで、従業員が自身の能力を最大限に発揮し、従業員と会社が共に成長することを示しています。

 従業員の安全面については、「安全衛生活動方針」として、社員一人ひとりが「わが社の安全衛生理念」に立ち返り、安全を最優先に考え行動すること、さらに、安全・衛生意識を向上させて、全員で全員の「安全」を保つ活動を展開することを定め、各職場における安全管理目標達成に向けて日々積極的に取り組んでいます。

 

③リスク管理

 当社では、災害リスク低減のため、製造、開発における新規設備及び新規化学物質の導入時には使用部署、計画部署及び安全衛生部署が協力してリスク評価を行っています。

 また、既存のプロセスにおいても、法令で定められた職場巡視に加え、工場長や各職場の代表者が定期的に安全パトロールを実施し、「不安全状態・不安全行動」などの問題点がないかリスク評価を行っています。明らかになった問題点を速やかに改善することで、安全な職場づくりを推進しています。

 

④指標と目標

 当社では、安全衛生方針に関して、取組み状況を測る指標として、以下の項目を設定しています。なお、以下の指標は、当社の実績です。

 

安全衛生方針に関する指標

指標

 

実績(当連結会計年度)

労働災害件数

 

全災害件数(目標13件)

 

37

 

3【事業等のリスク】

 当社グループでは、グループ全体のリスクマネジメント活動の責任分担及び実効性を向上させるために、三線防御体制を前提としたリスクガバナンス体制を構築しています。当社における各部門及び当該部門が所管するグループ企業を第一線、当社グループのリスクマネジメントを所管するCRMOの指揮監督のもと専門組織であるリスクマネジメント部を第二線、さらに監査部を第三線と位置づけ、各防御線が相互に連携をしながらリスクマネジメント活動を行っています。

 また、リスクマネジメント活動の実効性を担保するため、リスク管理確認会議を毎月開催し、重点リスク項目を中心に各部門及びグループ企業の予防的取組み及びインシデント管理の対応状況を確認するとともに、その内容を経営層へ報告しています。

 CRMOは、インシデント発生時には、発生部門又はグループ企業に解決に向けた速やかな対応を指示するとともに、危機に転化するおそれがある場合は、その影響を極小化するために、CRMOが指名するメンバーによる対応チームを組成し、各種対応方針等を決定、実行しています。

 なお、事業影響が生じる重大な危機に繋がる可能性がある場合は、速やかに経営層に報告し、対応方針について審議・決定しています。

 

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。

 なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2025年6月25日)現在において当社グループが判断したものです。

 

1.世界経済・金融市場・自動車市場に起因するリスク

(1)主要市場の経済状況・総需要の変動

 当社グループの全世界における売上収益のうち、主要な部分を占める自動車の需要は、当社グループが製品を販売している国・地域、特に日本、タイ、米国などの主要国市場における経済状況の影響を受けます。

 また商用車市場は、新興国においては物流需要の増加が見込まれることから、当社グループは一部の新興国市場を戦略地域と定め、拡販活動を進めています。そのため、一部の新興国市場における経済状況もまた、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、経済状況・需要動向の見通しの正確な把握に努めるとともに、製品を販売する市場の分散によって影響を極小化していますが、追加関税措置等により、世界的に経済環境の不透明さが増しており、当社グループの主要市場における景気後退及びそれに伴う需要の縮小は、当社グループの業績及び財政状態に大きな悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)自動車市場における競争

 当社グループの全世界における売上収益のうち、主要な部分を占める自動車市場は、激しい競争が繰り広げられています。競争環境の激化は当社製品の競争力に影響を及ぼし、価格変動やシェア変動を引き起こす可能性があります。競争に影響を与える要素は、製品性能、安全性、燃費、環境負荷、価格、アフターサービスといった当社製品に起因する事項の他、各国の電気自動車(EV)等への補助金政策や関税政策をはじめとする外部起因の事項を含め多岐にわたり、各国の市場によって状況は異なります。

 当社グループは、主要市場での競争力を維持・強化するため、当社製品に起因する要素の改善に取り組みながら、競争力の高い製品について継続的に開発・生産・販売並びにそのアフターサービスを実施していますが、主要市場や新興国市場等での他社との競争に劣後した場合や業界再編に伴う当社の競争優位性が失われた場合、及び各国の政策等が当社グループに不利な内容となる等の場合、当社グループの業績及び財政状態に大きな悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)地政学リスクの発生

 当社グループの製品の調達、生産及び販売活動は、日本国内のみならず広く海外で行われ、事業展開する各国・地域において許認可をはじめとした各種政策の影響を受けます。また、戦争や政権交代等の政治情勢の変化、経済安全保障を目的とした保護政策(関税政策等)による経済状況の変化は、当社グループの経営・事業活動及びサプライチェーンに影響を与えます。当社グループでは、こうした不確実性を地政学リスクとして認識し、特に以下の予期せぬ事象が発生した場合、当社グループの業績及び財政状態に大きな悪影響を及ぼす可能性があります。

・国家間紛争・内戦、革命、クーデタ、騒擾、テロ

・潜在的に不利な租税政策(関税政策等)の変更

・輸出入、技術移転の制限

・事業等に係る各国の法令、規制(排出ガス規制並びに燃費/CO規制)の変更

・安全保障上のリスクがある設備、ソフトウエア、クラウドサービス、委託先等の利用・調達に関する制限

・事業・投資の許認可基準の変更

・当社グループ財産の直接的又は間接的収用

・情報やデータの管理や移転の制限

・送金や兌換の規制

・為替・金利政策

・重要な海上交通路の寸断

 

 当社グループは、各国・地域、特に日本、米国、アセアン地域、中国、欧州地域における地政学リスクの情報収集を行い、法規制の変化に備えた投資や新技術・製品の開発を行う等、様々な対策を実施しています。しかし、上記のような地政学リスクが顕在化した場合、当社グループの業績及び財政状態に大きな悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)為替及び金利の変動

 当社グループの事業には、世界各地における製品の生産と販売が含まれています。各地域における売上、費用、資産、負債を含む現地通貨建の項目は、連結財務諸表の作成のために円換算されています。換算時の為替レート、特に米ドルやタイバーツ等の為替レートにより、これらの項目は元の現地通貨における価値が変わらなかったとしても、円換算後の価値が影響を受ける可能性があります。さらに、為替変動は、当社グループが購入する原材料の価格や販売する製品の価格設定に影響し、実際に原材料価格や製品価格の変動が生じています。

 また当社グループは、日頃よりキャッシュ・フローの管理に努めていますが、資金調達に関わるコストは、市場金利が急激に上昇した場合、支払利息の負担が増大する可能性があります。

 当社グループは、為替及び金利の変動による影響を極小化すべく、現地生産に加えて、先物為替予約取引を含むデリバティブ金融商品の活用を行っています。

 しかし、為替及び金利の大きな変動が生じた場合、当社グループの業績及び財政状態に大きな悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(5)原材料等価格の変動

 当社グループは、自動車製造にあたり、鉄、非鉄金属、樹脂等の原材料や半導体をはじめとする外製品を使用しており、加えて、xEVの研究・開発やBEVの市場投入等によってレアメタル等の使用が増加することを見込んでいます。

 世界的な需給逼迫等によりこれらの原材料価格、外製品価格やエネルギー価格及び輸送等にかかる費用が上昇すると、当社グループとしての調達コスト・製造コストもそれに伴い上昇する可能性があります。その際、生産性向上などの内部努力や製品価格への転嫁などをもってしても上昇分のコストを吸収できなかった場合には、当社グループの業績及び財政状態に大きな悪影響を及ぼす可能性があります。

 

2.事業に関するリスク

(6)新しい技術革新やビジネスモデル変化などへの対応

 当社グループの事業に関わる外部環境は大きく変化しています。商用車市場のお客様ニーズの多様化や商用車を用いたビジネスモデルの変化、「CASE」に代表される技術革新、生産・販売・アフターサービス・バックオフィス業務におけるデジタルイノベーションの推進、ESG投資やSDGs達成への社会的な要請は、当社グループの事業の拡大と深耕の好機です。

 当社グループは、こうした技術革新や社会的要請に速やかに対応するため、常設部署を設置し、全社横断の複数プロジェクトを推進しています。また、当社グループは商用モビリティソリューションカンパニーへの進化を掲げ、自動運転ソリューション、コネクテッドサービス、カーボンニュートラルソリューション等の「運ぶ」を創造する新事業の創出・拡大を目指しています。しかし、万が一、これらの技術革新や社会的要請に速やかかつ十分に対応できなかった場合には、当社グループの業績及び財政状態に大きな悪影響を及ぼす可能性があります。

(7)研究開発の失敗や遅延

 当社グループの置かれた事業環境は、競争の激化や市場ごとに異なる商品ニーズの多様化などが見込まれます。

このような経営環境に対応し、「運ぶ」を支える「ものづくり事業」を推進していくには高い技術と市場のニーズを的確にとらえた製品を提供する研究開発への取組みが不可欠です。

 当社グループは、将来の市場ニーズの予測、研究開発分野の優先順位付けを通じて、新たな技術や製品の開発に取り組んでいますが、求められる技術水準への到達や市場ニーズの的確な把握に失敗や遅延が生じた場合には、当社グループの業績及び財政状態に大きな悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(8)合弁事業をはじめとするアライアンス先との提携目的の未達

 当社グループは、いくつかの国において、各国の法律あるいはその他の要件により合弁で事業を行っています。また、国内外の販売ではディーラーやディストリビュータと提携し、研究開発では合弁事業や業務提携を行っています。

 当社グループは、合弁相手やアライアンス先の経営状況、ガバナンス、その他重要な非財務情報も含め、様々な情報をもとに業務提携の要否を検討しています。しかし、合弁相手やアライアンス先の経営方針、経営環境の変化等により、アライアンス先が適時適切な技術・製品の提供に失敗や遅延が生じた場合、及び当社グループがアライアンス先から求められる技術水準への到達に失敗や遅延が生じた場合には、当社グループの業績及び財政状態に大きな悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(9)販売・供給における特定チャネルへの依存

 当社グループは、当社製品である自動車やその構成部品等を、トリペッチいすゞセールス㈱(タイ国バンコク市)やゼネラルモーターズ・コーポレーション(アメリカ合衆国ミシガン州デトロイト市)及びそのグループ企業などの大口顧客企業に供給しています。当社グループは、大口顧客企業との関係を維持するとともに、新規顧客の開拓によりリスク分散を図っていますが、顧客企業の生産・販売量の変動など当社グループが管理できない要因により、上記の対策をもってしてもリスクを受容できない場合は、当社グループの業績及び財政状態に大きな悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(10)資材、部品等の調達の不足や遅延

 当社グループは、生産に必要な原材料や半導体をはじめとした部品及び製品を外部のサプライヤーから調達しています。しかし、以下のような事象が当社グループのサプライヤーや調達網で発生した際には、供給・輸送能力の低下や供給・輸送の中断が引き起こされ、生産に必要な量の原材料、部品及び製品が確保できなくなる、又は確保が遅れる可能性があります。

 

・サプライヤーや物流網において自然災害や大規模な事故等の不測の事態が発生した場合

・サプライヤーや物流網において労働争議等が発生した場合

・サプライヤーや物流網で大規模なシステム障害が発生した場合

・サプライヤーの供給能力を大幅に超えるような需給状況になった場合

・サプライヤーにおいて許認可取り消し等による製品の出荷停止が生じた場合

・サプライチェーン上の人権侵害等、品質・コスト・納期以外の問題が顕在化した場合

・海上交通の要衝での事件・事故等により物流網で混乱が生じた場合

 

 当社グループは、サプライヤー各社の生産能力、信用リスク、製品等の品質、コスト等を定期的に把握するとともに、各社の法令・コンプライアンス遵守や気候変動問題等への対応状況を確認し、調達に支障が生じないように努めています。しかし、上記のような事象が発生した場合は、当社グループの業績及び財政状態に大きな悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(11)製品の欠陥

 当社グループは、厳格な品質管理基準に従って各種の製品を開発・生産しています。品質の維持及び改善のため、当社グループは「品証・CS委員会」を通じて、不具合情報の早期発見と共有、品質向上のための全社横断的検討、全社的な品質マネジメントの運用状況の監視を実施しています。また製品の欠陥等を原因とする損害賠償が必要な場合に備えて、製造物賠償責任保険に加入しています。

 しかし、万が一、大規模なリコールを実施する場合、加えて、実際に発生した費用が事前に計上した引当金を大きく上回る場合や損害賠償の価額が製造物賠償責任保険により填補できない場合には、当社グループの業績及び財政状態に大きな悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(12)人権の侵害

 当社グループでは、従業員、関係者、取引先等のすべてのステークホルダーの人権を尊重し、事業活動を展開しています。また、「いすゞグループ人権方針」に基づき、サプライチェーン上に労働環境や安全衛生面での人権侵害などがないかを確認する「人権デュー・ディリジェンス」を実施し、人権に対する負の影響を特定・評価し、これらの防止・軽減に取り組んでいます。

 しかし、全世界のサプライチェーン全体の人権状況を正確かつリアルタイムに把握することは困難であり、当社グループやサプライチェーンで人権侵害が発生した場合、事業の中断、法令違反に伴う制裁金、レピュテーションの低下等により、当社グループの業績及び財政状態に大きな悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(13)優秀な人財の確保・定着の困難

 当社グループの事業では、人財が最も重要な資産と考え、当社グループの事業推進に必要となる技能・能力をもった多様な人財の確保に努めるとともに、従業員一人ひとりのモチベーション、熱意、技能、能力、パフォーマンスを高め、当社グループに定着させるための取組みを進めています。しかし、今後の人財獲得競争の一層の激化により、優秀な人財確保・定着がより困難になっていく可能性があります。

 こうした状況を踏まえて、当社グループでは「ISUZU ID」に掲げる「働きがいNo.1」を目指し、また「IX」で2030年に目指す姿の一つとして掲げた「人的資本経営への進化」を実践しています。従業員の専門性強化と挑戦を後押しするグローバル基準の人財マネジメント基盤を整備すべく、当社では2024年4月より新人事制度を順次展開し、2026年度までにグループ全体に展開します。詳細は「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」中の「(3)人的資本・多様性」を参照ください。

 

(14)労働災害の発生

 当社グループは、自動車及び自動車部品の生産、開発実験、販売にあたり、組立、機械加工、プレス、塗装、自動車整備及び設備メンテナンス等を展開しています。これらの業務において、従業員の労働安全の確保をグループ全体の重要な経営課題と位置づけており、代表取締役社長COOを最高責任者とした「安全推進特別委員会」を設置し、安全に関する方針の策定と、その実行状況のモニタリング及び是正措置を継続的に行っています。また、災害リスクの低減に向け、法令遵守の徹底、安全管理体制の強化、安全パトロールの実施、設備の安全仕様向上対策、VR等を活用した実践的な安全教育の導入にも取り組んでいます。発生した労働災害については、専門会議体を設置し、個別事案における原因究明と対策を実行することで、再発防止に努めています。

 こうした取組みを通じて安全な職場環境の構築に努めていますが、万が一、労働災害が発生した場合には、操業停止等により事業活動に支障をきたし、当社グループの業績及び財政状況に大きな悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(15)コンプライアンス違反

 当社グループでは、関係法令の遵守はもちろん、社内規範や倫理規範を含めコンプライアンスを徹底しています。

 当社では、代表取締役社長COOを委員長とし、重要法令を所管する各部門長をメンバーとした「コンプライアンス委員会」を定期的に開催、当社グループのコンプライアンス活動の推進状況をモニタリングし、適切な指示・助言を行っています。さらに、グループ内でコンプライアンス違反又はそのおそれがある事象が発生した場合には、速やかにCRMOに報告するとともに、是正及び再発防止を行う体制を構築しています。また当社グループでは、経営層から従業員まで定期的にコンプライアンス教育を実施しています。

 しかし、コンプライアンスの徹底にもかかわらず、将来にわたってコンプライアンス違反が発生する可能性は皆無ではなく、コンプライアンス違反の重篤性及び発生時の対応内容や迅速性等が不十分な場合には、当社グループの社会的信用に重大な影響を与える場合があり、当社グループの業績及び財政状態に大きな悪影響を及ぼす可能性があります。特に、道路運送車両法違反による生産停止や各国の個人情報保護、腐敗防止、独占禁止・不正競争防止・下請取引、及び金融商品取引に関する法令等への重大な違反が認められ、当局等から勧告を受けたり、高額な制裁金が課せられたりした場合、当社グループの業績及び財政状態に大きな悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(16)情報セキュリティへの対応不足

 当社グループの事業は多くのシステムに依存しており、情報の機密性、完全性、可用性を一定以上で維持するための高度な態勢を確保しています。具体的には、個人情報や機密情報の保護、データやシステムの可用性の維持、各種情報の改竄防止等の情報セキュリティの維持・改善を目的に、様々なリスク対策を実施しています。また、製品のサイバーセキュリティ法規(R155 CSMS認証、R156 SUMS認証)も遵守し、お客様が安心安全にご利用できるように努めています。

 しかし、不測の事態により情報漏洩等が発生した場合や、製品の安心安全に影響がある事象が発生した場合、当社グループの業績及び財政状態に大きな悪影響を及ぼす可能性があります。また、システム障害やコンピューターウイルスへの感染、サイバー攻撃等が発生した場合には、業務の中断やデータの破損・喪失などを引き起こす可能性があります。その結果、当社グループの業績及び財政状態に大きな悪影響を及ぼす可能性があります。

 また当社グループは、アライアンス先等の取引先との機密情報の管理についても上記のような様々なリスク対策を実施しています。しかし、不測の事態により情報漏洩等が発生した場合、企業としての信用低下、アライアンス先等に対する損害賠償責任が発生するなど、当社グループの業績及び財政状態に大きな悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(17)知的財産の保護の不足や侵害・被侵害

 当社グループは、他社製品と差別化できる技術とノウハウを蓄積してきましたが、当社グループ独自の技術とノウハウの一部は、特定の国・地域では法的制限のため知的財産権による完全な保護が不可能、又は限定的にしか保護されない状況にあります。

 当社グループは、知的財産保護のための取組みを進めています。しかし、第三者が当社グループの知的財産を使って類似した製品を製造することを効果的に防止できない場合や当社グループに対する知的財産権侵害訴訟による製造・販売の差し止めや損害賠償の請求が認められた場合、当社グループの業績及び財政状態に大きな悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(18)気候変動に関する社会的要請への対応遅れ

 当社グループは、気候変動対応を重要な経営課題の一つとして位置づけ、気候変動に関する規制強化及び頻発・激甚化している自然災害への対応に取り組んでいます。一方で、更なる成長機会の獲得のため、脱炭素社会に貢献するイノベーションの創出を進めています。

 当社グループは、「いすゞ環境長期ビジョン2050」を策定し、2050年までに、当社グループ製品のライフサイクル全体での温室効果ガス(GHG)ゼロ及び当社グループの事業活動から直接排出されるGHGゼロを掲げ、GHG削減に取り組んでいます。

 また、2024年4月に中期経営計画として策定した「IX」においても、「運ぶ」を創造する新事業として、「カーボンニュートラルソリューション」を掲げています。具体的には、「いすゞ環境長期ビジョン2050」に基づきマルチパスウェイで技術開発を進め、地域の状況や社会動向に適した商品を展開することで、CN社会実現に貢献します。また、燃料代や電気代までを含む総所有コスト(TCO)の観点で価格競争力のあるBEVを投入し、周辺事業の展開を推進します。

 しかし、脱炭素へのイノベーションの取組みに失敗や遅延が生じた場合、気候変動による影響への対応・取組みが不十分である場合には、当社グループの業績及び財政状態に大きな悪影響を及ぼす可能性があります。

 なお、詳細については、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組(2)気候変動」を参照ください。

 

(19)災害等の発生

 当社グループは、全世界で事業を展開しており、国内外において様々な災害リスクにさらされています。大規模地震、風水害や噴火等の自然災害、停電又はその他の中断事象、疫病・感染症が顕在化した場合、当社グループの生産活動、販売活動、その他事業活動に影響が生じる可能性があります。特に主要な事業拠点が集中する日本・南関東やアセアン地域における主要拠点が多数存在するタイ等で大規模な災害等が発生した場合、当社グループの業績及び財政状態に大きな悪影響を及ぼす可能性があります。また、設備トラブル、オペレーションミスによる事故、火災等の人為的災害が発生した場合にも、当社グループの生産、販売、その他事業活動に影響が生じる可能性があります。当社グループでは、自然災害や人為的災害等が発生した場合に備え、事業継続計画を予め策定し、それに基づいた訓練を実施することで被害の拡大防止及び迅速な復旧に努めています。しかし、これらの取組みにもかかわらず、災害等による影響を完全に防止又は軽減できない場合、当社グループの業績及び財政状態に大きな悪影響を及ぼす可能性があります。

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当社グループは、当連結会計年度よりIFRS会計基準を適用しており、前連結会計年度の数値もIFRS会計基準に組み替えて比較分析を行っています。

①経営成績の状況

 当連結会計年度における国内と海外を合わせた総販売台数は、前連結会計年度に比べ142,658台(21.4%)減少し、523,233台となりました。

 国内車両販売台数につきましては、フルモデルチェンジした商品の販売拡大により、前連結会計年度に比べ14,535台(23.1%)増加の77,467台となりました。海外車両販売台数につきましては、CV(商用車(トラック及びバス))は、バックオーダーが正常化した北米・欧州を中心に26,611台(10.9%)減少し216,816台、LCV(ピックアップトラック及び派生車)はタイ向け・輸出向け共に厳しい市況に加えて、タイ国内では販売サイドの在庫調整を実施したため、130,582台(36.3%)減少し228,950台となりました。

 また、産業用エンジンの売上収益は、前連結会計年度に比べ75億円(6.6%)減少の1,054億円となり、その他の売上収益につきましては、保有事業等の伸長により前連結会計年度に比べ224億円(2.9%)増加の7,850億円となりました。

 これらの結果、売上収益につきましては、前連結会計年度に比べ1,690億円(5.0%)減少の3兆2,356億円となりました。内訳は、国内が1兆2,754億円(前連結会計年度比12.8%増)、海外が1兆9,603億円(前連結会計年度比13.8%減)です。

 

 当連結会計年度の業績は次のとおりです。

 

 

当連結会計年度

 

前連結会計年度比

売上収益

32,356

億円

 

△1,690

億円

△5.0%

営業利益

2,295

億円

 

△522

億円

△18.5%

税引前利益

2,450

億円

 

△523

億円

△17.6%

親会社の所有者に帰属する当期利益

1,401

億円

 

△289

億円

△17.1%

(為替レート)

USD/JPY

152.5円 (144.6円)

AUD/JPY

99.5円 ( 95.1円)

EUR/JPY

163.7円 (156.8円)

THB/JPY

4.38円 ( 4.10円)

注:( )内は前連結会計年度の為替レート

 

 損益につきましては、価格対応及び円安影響によるプラス影響はあるものの、海外市場の台数減及び資材費等の上昇によるマイナス影響が上回った結果、営業利益は2,295億円(前連結会計年度比18.5%減)となりました。また、税引前利益は2,450億円(前連結会計年度比17.6%減)、親会社の所有者に帰属する当期利益は1,401億円(前連結会計年度比17.1%減)となりました。

 

 当社グループは、自動車及び部品並びに産業用エンジンの製造、販売(自動車事業)を主な事業とする単一セグメントであるため、セグメントの業績の記載を省略しています。

 

②財政状態の状況

 当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べて418億円増加し、3兆3,033億円となりました。

 負債は、前連結会計年度末に比べて398億円増加し、1兆7,657億円となりました。

 資本は、前連結会計年度末に比べて19億円増加し、1兆5,377億円となりました。

 自己資本比率(親会社所有者帰属持分比率)は41.6%(前連結会計年度末42.4%)となりました。

 有利子負債(社債及び借入金、リース負債の合計)につきましては、前連結会計年度末に比べて1,317億円増加の7,588億円となりました。

 

 

③キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)につきましては、営業活動により2,541億円獲得した資金を、投資活動で2,023億円、財務活動で906億円使用したこと等により、前連結会計年度末に比べて305億円減少し、3,587億円となりました。

 なお、営業活動によるキャッシュ・フローから投資活動によるキャッシュ・フローを控除して計算した、フリーキャッシュ・フローは、517億円の資金流入(前連結会計年度は1,687億円の資金流入)となっています。

 

[営業活動によるキャッシュ・フロー]

 営業活動により獲得した資金は、2,541億円(前連結会計年度比17.7%減)となりました。

 これは、税引前利益を2,450億円、減価償却費及び償却費を1,512億円計上したこと等による資金流入があった一方で、営業債務及びその他の債務の減少により342億円、棚卸資産の増加により153億円、法人所得税の支払により813億円の資金流出があったことが主な要因です。

 

[投資活動によるキャッシュ・フロー]

 投資活動により使用した資金は、2,024億円(前連結会計年度比44.5%増)となりました。

 これは、固定資産の取得で2,135億円の資金流出があったことが主な要因です。

 

[財務活動によるキャッシュ・フロー]

 財務活動により使用した資金は、906億円(前連結会計年度比44.9%減)となりました。

 これは、長期借入の実行で1,936億円、コマーシャル・ペーパーの増加で500億円及び社債の発行で299億円の資金流入があった一方で、長期借入金の返済で1,381億円、自己株式の取得で756億円、配当金の支払で707億円及び非支配株主への配当金の支払で385億円の資金流出があったことが主な要因です。

 

④生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当連結会計年度の生産実績は、次のとおりです。

 

 当連結会計年度

(自 2024年4月1日

  至 2025年3月31日)

 前連結会計年度比

台数

(台)

金額

(百万円)

台数

(%)

金額

(%)

大型・中型CV

95,932

4.5

小型CV

197,682

0.6

LCV

271,458

△34.0

565,072

△19.3

産業用エンジン

93,226

△4.4

その他

225,541

10.8

 (注)1.産業用エンジン、その他の金額は、販売価格によります。

2.上記の表には、関連会社等の生産実績は含まれていません。

b.受注実績

 当社グループ(当社及び連結子会社)は、過去の販売実績と将来の予想に基づいて、見込み生産を行っています。

c.販売実績

 当連結会計年度の販売実績は、次のとおりです。

 

 当連結会計年度

(自 2024年4月1日

  至 2025年3月31日)

 前連結会計年度比

金額(百万円)

増減率(%)

 

国 内

475,890

22.1

 

海 外

386,640

△7.6

大型・中型CV計

862,530

6.7

 

国 内

184,561

37.9

 

海 外

558,016

△5.7

小型CV計

742,577

2.4

 

海 外

740,098

△25.6

LCV計

740,098

△25.6

 

国 内

660,451

26.1

 

海 外

1,684,754

△16.0

車両計

2,345,206

△7.3

 

国 内

52,944

△18.3

 

海 外

52,464

9.1

産業用エンジン

105,408

△6.6

 

国 内

561,987

3.7

 

海 外

223,046

1.1

その他

785,033

2.9

 

国 内

1,275,383

12.8

 

海 外

1,960,265

△13.8

売上収益合計

3,235,648

△5.0

 

主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は、次のとおりです。

 相手先

 前連結会計年度

(自 2023年4月1日

  至 2024年3月31日)

 当連結会計年度

(自 2024年4月1日

  至 2025年3月31日)

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

トリペッチ いすゞ セールス㈱

433,384

12.7

196,863

6.0

 

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。

 なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2025年6月25日)現在において当社グループが判断したものです。

 

①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.概観

[CV販売]

 当連結会計年度におけるCV車両の販売台数は、前連結会計年度から12,076台(3.9%)減少の294,283台となりました。

 国内では、フルモデルチェンジした商品の販売拡大により、前連結会計年度から14,535台(23.1%)増加の77,467台となりました。海外では、北米・欧州を中心にバックオーダーが正常化し、前連結会計年度から26,611台(10.9%)減少の216,816台となりました。

 なお、当社の国内の普通トラックのシェアは、前連結会計年度比0.4%増加の41.0%となりました(UDトラックスを含む当社グループの国内の普通トラックのシェアは56.1%)。また、小型トラックのシェアは、前連結会計年度比2.7%増加の45.1%となり、いすゞシェアは過去最高を記録しました。

 

・CV車両販売台数

 

 

前連結会計年度

(台)

当連結会計年度

(台)

 

増減台数

(台)

増減率

(%)

国内

大型・中型

33,931

39,301

 

5,370

15.8

 

小型

29,001

38,166

 

9,165

31.6

 

62,932

77,467

 

14,535

23.1

北米

大型・中型

5,289

2,965

 

△2,324

△ 43.9

 

小型

38,299

24,013

 

△14,286

△ 37.3

 

43,588

26,978

 

△16,610

△ 38.1

アジア

大型・中型

25,694

19,958

 

△5,736

△ 22.3

 

小型

70,089

54,160

 

△15,929

△ 22.7

 

95,783

74,118

 

△21,665

△ 22.6

その他地域

大型・中型

27,998

30,343

 

2,345

8.4

 

小型

76,058

85,377

 

9,319

12.3

 

104,056

115,720

 

11,664

11.2

合計

大型・中型

92,912

92,567

 

△345

△ 0.4

 

小型

213,447

201,716

 

△11,731

△ 5.5

 

306,359

294,283

 

△12,076

△ 3.9

 

[LCV販売]

 当連結会計年度におけるLCV車両の販売台数は、前連結会計年度から130,582台(36.3%)減少の228,950台となりました。

 アジアでは、タイ国内向けにおいて販売サイドの在庫調整を実施したため、前連結会計年度から大幅に減少しました。その結果、販売台数は前連結会計年度から92,984台(58.9%)減少の64,845台となりました。その他地域は、厳しい市況により、全体では前連結会計年度から37,598台(18.6%)減少の164,105台となりました。

 

・LCV車両販売台数

 

前連結会計年度

(台)

当連結会計年度

(台)

 

増減台数

(台)

増減率

(%)

アジア

157,829

64,845

 

△92,984

△58.9

その他地域

201,703

164,105

 

△37,598

△18.6

359,532

228,950

 

△130,582

△36.3

 

[パワートレイン出荷]

 当連結会計年度における産業用エンジンの出荷基数は、厳しい市況が継続しており前連結会計年度から1,730台(1.5%)減少の113,465台となりました。

 

・産業用エンジン出荷基数

 

前連結会計年度

(台)

当連結会計年度

(台)

 

増減台数

(台)

増減率

(%)

115,195

113,465

 

△1,730

△1.5

 

b.当連結会計年度の経営成績についての分析

[売上収益]

 売上収益につきましては、円安の進行及び価格の改定により増収となったことに加え、国内車両販売台数が増加しましたが、海外では主にバックオーダーの解消及び在庫調整、タイの厳しい市況等を受け、前連結会計年度に比べ1,690億円減少の3兆2,356億円となりました。内訳は、国内が1兆2,754億円(前連結会計年度比12.8%増)、海外が1兆9,603億円(前連結会計年度比13.8%減)です。

 

[営業利益]

 当連結会計年度の営業利益は2,295億円(前連結会計年度比18.5%減)となりました。

 当連結会計年度における販売台数減少に伴う売上変動/構成差の影響は前連結会計年度に対して770億円の減益、資材費等の変動は380億円の減益となり、大幅な減益要因となりました。一方で、価格対応の影響は前連結会計年度に対して400億円の増益、原価低減活動の影響は170億円の増益、為替変動の影響は円安の影響により245億円の増益となりました。

 この結果、当連結会計年度における売上収益営業利益率は7.1%(前連結会計年度は8.3%)となりました。

 なお、前連結会計年度からの営業利益の主な増減要因は、次のとおりです。

 

・営業利益の増減分析(前連結会計年度比)

      (億円)

価格対応

+400

原価低減活動

+170

為替変動

+245

売上変動/構成差

△770

費用増減他

△187

資材費等の変動

△380

合計

△522

 

[金融収支]

 金融収支につきましては、63億円の利益となり、前連結会計年度に比べて70億円の減益となりました。

 為替差損益が前連結会計年度に比べて80億円悪化したことにより減益となりました。

 

[法人所得税費用]

 法人所得税費用は、前連結会計年度では823億円の損失でしたが、当連結会計年度では640億円の損失となりました。

 

[非支配持分に帰属する当期利益]

 非支配持分に帰属する当期利益は、主にアセアン現地法人、北米現地法人、国内のリース会社の非支配持分に帰属する当期利益からなり、前連結会計年度の460億円に対し、当連結会計年度は409億円となりました。

 

[親会社の所有者に帰属する当期利益]

 当連結会計年度における親会社の所有者に帰属する当期利益は1,401億円となり、前連結会計年度に比べて289億円の減益となりました。基本的1株当たり当期利益は190.78円となりました。

 

c.当連結会計年度の財政状態についての分析

[資産]

 当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べて418億円増加し、3兆3,033億円となりました。

 主な要因としましては、売却目的で保有する資産が896億円減少した一方で、有形固定資産が534億円、営業債権及びその他の債権が240億円、無形資産が214億円増加したことによります。

 

[負債]

 負債は、前連結会計年度末に比べて398億円増加し、1兆7,657億円となりました。

 主な要因としましては、売却目的で保有する資産に直接関連する負債が817億円減少した一方で、有利子負債(社債及び借入金、リース負債の合計)が1,317億円増加したことによります。

 

[資本]

 資本は、前連結会計年度末に比べて19億円増加し、1兆5,377億円となりました。

 主な要因としましては、剰余金の配当を708億円行ったことに加え、自己株式の取得によって756億円減少した一方で、親会社の所有者に帰属する当期利益を1,401億円及び非支配持分に帰属する当期利益を409億円計上したことによります。

 

d.経営上の目標の達成状況についての分析

 「IX」(2025年3月期から2031年3月期まで)の達成に向けた当社グループが掲げた定量値目標とそれに対する当期の達成状況は次のとおりです。

 

 

当連結会計年度

(2025年3月期)

 

定量値目標

(2027年3月期)

売上収益

32,356

億円

 

40,000

億円

営業利益

2,295

億円

 

3,600

億円

ROE

10.2

 

15

配当性向

48.2

 

40.0

 

 「IX」の達成に向けて掲げた定量値目標のうち、売上収益につきましては海外市場の厳しい市況等を受け、3兆2,356億円となりました。タイ、インドネシア、中国以外の各国市況が堅調に推移していること、CV及び輸出LCVの商品ラインアップの充実・販売力強化が進んでいることから、2027年3月期に向けて販売台数増加の可能性を検討します。増益の大きなポイントとなるタイLCV 及び北米CV につきましても、市況の回復及び成長を精査します。

 営業利益につきましては、海外市場における販売台数の減少、資材費等の上昇によるマイナス影響を受け、2,295億円となりました。販売台数増加に加えて価格対応及び原価低減活動の推進により、営業利益3,600億円達成を目指します。

 また、ROEにつきましても、親会社の所有者に帰属する当期利益が減少したことで、当連結会計年度は10.2%となりました。達成に向けては、「IX」に沿った収益成長に加え、配当による株主還元及び機動的な自社株取得を継続することで、適正な自己資本水準を意識しつつ、定量値目標の15%の達成を目指します。

 配当性向につきましては、株主への利益還元、経営基盤の強化及び将来への事業展開に備えるための内部留保の充実等のバランスを総合的に勘案し、剰余金の配当を実施した結果、48.2%と目標値を上回りました。

 

e.資本の財源及び資金の流動性に係る情報

[キャッシュ・フローの状況]

 第2「事業の状況」4「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」(1)「経営成績等の状況の概要」に記載のとおりです。

 

[資金需要]

 当社グループにおける主な資金需要は、製品製造のための材料・部品の購入費、製造費用、製品・商品の仕入、販売費及び一般管理費、運転資金及び設備投資資金です。

 設備投資の状況については、第3「設備の状況」1「設備投資等の概要」に記載のとおりです。

 

[資金調達の状況]

 運転資金については返済期限が1年以内の短期借入金で、基本は各々の会社が運転資金として使用する現地の通貨で調達しています。設備投資資金については原則として資本金、内部留保といった自己資金でまかなうこととしています。今後、投融資の実行に伴い借入金・社債等による資金調達を検討する可能性があります。

 なお、当連結会計年度末における資金調達の状況については、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 20.社債、借入金及びリース負債」及び「同注記 35.金融商品 (4) 流動性リスク管理」に記載のとおりです。

 

[資金の流動性]

 当社グループは2030年に目指す姿として、お客様・社会の課題を「安心×斬新」な「運ぶ」で解決する、グローバルな商用車市場をリードする「商用モビリティソリューションカンパニー」へと進化することを、2024年4月に公表した中期経営計画「IX」の中で掲げています。この中期経営計画の財務目標としては、2030年度の売上高6兆円、営業利益10%以上を掲げ、そのために自動運転ソリューション、コネクテッドサービス、カーボンニュートラルソリューションの新技術3領域を柱に据えた「イノベーション投資」に1兆円、グループ全体の既存事業の強化のための「既存事業投資」に1.6兆円の投資を実行していきます。また、財務健全性は確保しながら、株主還元として配当性向(期間平均)40%を維持、適正な自己資本比率(親会社所有者帰属持分比率)を意識した機動的な自己株式取得を継続していきます。

 それら成長投資や株主還元、借入金返済の資金としては、事業で創出される営業キャッシュ・フローを原資に充当し、M&A等に係る資金は主として借入金、社債等で対応することによって、新たな中期経営計画の達成実現に向けて取り組みます。

 なお、手元資金の流動性には絶えず注視が必要ですが、当社グループは現金及び現金同等物に加え、主要銀行とコミットメントライン契約を締結しており、金融市場の急激な環境変化にも対応できる流動性を保持していると考えています。

 

②重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 IFRS会計基準に準拠した連結財務諸表の作成にあたり、経営者は、会計方針の適用並びに資産、負債、収益及び費用の金額に影響を及ぼす判断、見積り及び仮定を行う必要があります。実際の業績は、これらの見積りとは異なる場合があります。見積り及びその基礎となる仮定は継続して見直されます。会計上の見積りの見直しによる影響は、見積りを見直した会計期間及びそれ以降の将来の会計期間において認識されます。

 

 当社の連結財務諸表に重要な影響を与える可能性のある会計上の見積り及び仮定に関する情報は、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 4.重要な会計上の見積り及び判断」に記載しています。

 

(3)並行開示情報

 「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(第7章及び第8章を除く。以下「日本基準」という。)により作成した要約連結財務諸表は、以下のとおりです。

 なお、日本基準により作成した当連結会計年度の要約連結財務諸表については、金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づく監査を受けていません。

 

①要約連結貸借対照表(日本基準)

 

 

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

(2024年3月31日)

当連結会計年度

(2025年3月31日)

資産の部

 

 

流動資産

1,817,568

1,840,370

固定資産

 

 

有形固定資産

975,694

955,256

無形固定資産

89,584

105,077

投資その他の資産

380,153

388,239

固定資産合計

1,445,432

1,448,573

資産合計

3,263,001

3,288,944

 

 

 

負債の部

 

 

流動負債

1,083,144

1,109,889

固定負債

520,827

572,641

負債合計

1,603,972

1,682,530

 

 

 

純資産の部

 

 

株主資本

1,163,027

1,146,498

その他の包括利益累計額

297,668

296,325

非支配株主持分

198,333

163,589

純資産合計

1,659,029

1,606,413

負債純資産合計

3,263,001

3,288,944

 

②要約連結損益計算書及び要約連結包括利益計算書(日本基準)

要約連結損益計算書

 

 

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

売上高

3,386,676

3,208,084

売上原価

2,706,443

2,567,437

売上総利益

680,233

640,646

販売費及び一般管理費

387,147

411,536

営業利益

293,085

229,109

営業外収益

31,789

34,535

営業外費用

11,835

15,413

経常利益

313,039

248,231

特別利益

5,526

2,357

特別損失

12,974

10,462

税金等調整前当期純利益

305,591

240,126

法人税等

84,235

65,488

当期純利益

221,356

174,638

非支配株主に帰属する当期純利益

44,913

40,274

親会社株主に帰属する当期純利益

176,442

134,363

 

要約連結包括利益計算書

 

 

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

当期純利益

221,356

174,638

その他の包括利益

101,737

5,069

包括利益

323,093

179,707

(内訳)

 

 

親会社株主に係る包括利益

266,834

133,020

非支配株主に係る包括利益

56,259

46,687

 

③要約連結株主資本等変動計算書(日本基準)

前連結会計年度(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日)

 

 

 

 

(単位:百万円)

 

株主資本

その他の包括利益

累計額

非支配株主持分

純資産合計

当期首残高

1,101,230

207,276

201,725

1,510,232

当期変動額

61,797

90,391

△3,392

148,796

当期末残高

1,163,027

297,668

198,333

1,659,029

 

当連結会計年度(自 2024年4月1日 至 2025年3月31日)

 

 

 

 

(単位:百万円)

 

株主資本

その他の包括利益

累計額

非支配株主持分

純資産合計

当期首残高

1,163,027

297,668

198,333

1,659,029

当期変動額

△16,529

△1,343

△34,744

△52,615

当期末残高

1,146,498

296,325

163,589

1,606,413

 

④要約連結キャッシュ・フロー計算書(日本基準)

 

 

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

営業活動によるキャッシュ・フロー

298,568

217,658

投資活動によるキャッシュ・フロー

△155,080

△177,891

財務活動によるキャッシュ・フロー

△144,977

△64,591

現金及び現金同等物に係る換算差額

25,434

10,690

現金及び現金同等物の増減額(△は減少)

23,944

△14,133

現金及び現金同等物の期首残高

364,396

384,878

連結子会社の決算期変更に伴う現金及び現金同等物の増減額(△は減少)

△3,462

1,018

現金及び現金同等物の期末残高

384,878

371,763

 

⑤要約連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項の変更(日本基準)

前連結会計年度(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日)

(連結の範囲の変更)

 いすゞグローバルサービスシステムズ エルエルシーは、新規設立のため連結の範囲に含めています。いすゞルスは、当社が保有する全株式の譲渡契約の締結により、連結の範囲から除外しています。また、いすゞ特装開発株式会社は清算結了により、連結の範囲から除外しています。

 

(持分法適用の範囲の変更)

 いすゞビルメンテナンス株式会社は、ガバナンス強化のため、連結の範囲を再検討したことにより、持分法適用の範囲に含めています。連結子会社であったいすゞルスの株式譲渡契約の締結に伴い、同社が持分法適用の関連会社としていた、いすゞソラーズエルエルシーを持分法適用の範囲から除外しています。また、岩手自動車塗装株式会社は全株式を譲渡したため、持分法適用の範囲から除外しています。

 

 

(連結子会社の事業年度等に関する事項の変更)

 連結子会社のうち決算日が12月31日であった、いすゞベトナムカンパニーリミテッド、いすゞモーターズヨーロッパNV及びいすゞイーストアフリカリミテッドは同日現在の財務諸表を利用し、連結決算日との間に生じた重要な取引について必要な調整を行っていましたが、当連結会計年度より決算日を3月31日に変更しています。

 これに伴い、当連結会計年度は2023年4月1日から2024年3月31日までの12か月間を連結しています。

 なお、当該連結子会社の2023年1月1日から2023年3月31日までの損益については、利益剰余金の増減として調整しています。

 

当連結会計年度(自 2024年4月1日 至 2025年3月31日)

(連結の範囲の変更)

 株式会社IJTT(以下「旧IJTT」という。)の自己株式取得による当社が保有するすべての旧IJTTの普通株式の譲渡、及び旧IJTTの株主である、スパークス・グループ株式会社が無限責任組合員をつとめる日本モノづくり未来投資事業有限責任組合が発行済株式のすべてを所有するARTS-1株式会社(以下「ARTS-1」という。)への再出資の実施を行ったことで、旧IJTT、PTエイジアンいすゞキャスティングセンターは連結子会社から持分法適用関連会社へ変更し、トーカイ株式会社、IJTT(タイランド)カンパニーリミテッド、自動車部品インドネシアは連結の範囲から除外しています。

 アイ・シー・エンジニアリング株式会社は、株式の追加取得により、持分法適用関連会社から連結子会社としています。

 いすゞディーゼルサービスオブアメリカインクは清算結了により、連結の範囲から除外しています。また、UDフィナンシャルサービス株式会社はいすゞリーシングサービス株式会社に吸収合併されたため連結の範囲から除外しています。

 

(持分法適用の範囲の変更)

 旧IJTTの自己株式取得による当社が保有するすべての旧IJTTの普通株式の譲渡、及び旧IJTTの株主である、スパークス・グループ株式会社が無限責任組合員をつとめる日本モノづくり未来投資事業有限責任組合が発行済株式のすべてを所有するARTS-1への再出資の実施を行ったことで、ARTS-1は持分法適用関連会社とし、旧IJTT、PTエイジアンいすゞキャスティングセンターは連結子会社から持分法適用関連会社へ変更となりました。その後ARTS-1を存続会社、旧IJTTを消滅会社とする吸収合併により、旧IJTTを持分法適用の範囲から除外しています。なお、当社の持分法適用関連会社であるARTS-1は株式会社IJTTに社名変更しています。

 アイ・シー・エンジニアリング株式会社は、株式の追加取得により、持分法適用関連会社から連結子会社としています。

 

(連結子会社の事業年度等に関する事項の変更)

 連結子会社のうち決算日が12月31日であった、五十鈴汽車工程柴油机(上海)有限公司、いすゞモーターズサウジアラビアカンパニーリミテッドは同日現在の財務諸表を利用し、連結決算日との間に生じた重要な取引について必要な調整を行っていましたが、当連結会計年度より連結決算日である3月31日に本決算に準じた仮決算を行い連結する方法に変更しています。

 これに伴い、五十鈴汽車工程柴油机(上海)有限公司については、当連結会計年度は2024年4月1日から2025年3月31日までの12か月間を連結しています。なお、当該連結子会社の2024年1月1日から2024年3月31日までの損益については、利益剰余金の増減として調整しています。

 また、いすゞモーターズサウジアラビアカンパニーリミテッドについては、2024年1月1日から2025年3月31日までの15か月決算となっています。この変更による連結財務諸表に与える影響は軽微です。

 

 

(会計方針の変更)

(「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」等の適用)

 「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」(企業会計基準第27号 2022年10月28日。以下「2022年改正会計基準」という。)等を当連結会計年度の期首から適用しています。

 法人税等の計上区分(その他の包括利益に対する課税)に関する改正については、2022年改正会計基準第20-3項ただし書きに定める経過的な取扱い及び「税効果会計に係る会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第28号2022年10月28日。以下「2022年改正適用指針」という。)第65-2項(2)ただし書きに定める経過的な取扱いに従っています。なお、当該会計方針の変更による連結財務諸表への影響はありません。

 また、連結会社間における子会社株式等の売却に伴い生じた売却損益を税務上繰り延べる場合の連結財務諸表における取扱いの見直しに関連する改正については、2022年改正適用指針を当連結会計年度の期首から適用しています。当該会計方針の変更は、遡及適用され、前連結会計年度については遡及適用後の連結財務諸表となっています。なお、当該会計方針の変更による前連結会計年度の連結財務諸表への影響はありません。

 

(「グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等の会計処理及び開示に関する取扱い」の適用)

 「グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等の会計処理及び開示に関する取扱い」(実務対応報告第46号 2024年3月22日)等を当連結会計年度の期首から適用しています。なお、当該会計方針の変更による連結財務諸表への影響は軽微です。

 

(4)経営成績等の状況の概要に係る主要な項目における差異に関する情報

 IFRS会計基準により作成した連結財務諸表における主要な項目と日本基準により作成した場合の連結財務諸表におけるこれらに相当する項目との差異に関する事項は、以下のとおりです。

 

前連結会計年度(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日)

 「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 40.初度適用」に記載のとおりです。

 

当連結会計年度(自 2024年4月1日 至 2025年3月31日)

(有形固定資産の計上額の調整)

 日本基準で行った土地再評価を取崩し取得原価で評価しています。また、一部の有形固定資産については、IFRS会計基準の初度適用の免除規定を適用し、みなし原価により評価を行っています。

 この影響により、IFRS会計基準では日本基準に比べて、「有形固定資産」が130,226百万円減少しています。

 

(リース資産及びリース負債)

 日本基準では、借手のリースについてファイナンス・リースとオペレーティング・リースに分類し、オペレーティング・リースについては通常の賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理を行っていました。IFRS会計基準では、借手のリースについてファイナンス・リースとオペレーティング・リースの区分がないため、原則としてすべてのリース取引について、「使用権資産」及び「リース負債」を計上しています。

 この影響により、IFRS会計基準では日本基準に比べて、「使用権資産」が80,804百万円、「リース負債(流動)」が17,216百万円、「リース負債(非流動)」が65,024百万円増加しています。

 

(研究開発費の資産計上)

 日本基準では、すべての研究開発費を費用処理していましたが、IFRS会計基準では、これらのうち一定の要件を満たしたものを「無形資産」として計上しています。

 この影響により、IFRS会計基準では日本基準に比べて、「無形資産」が35,186百万円増加しています。

 

(未消化の有給休暇及びその他の長期従業員給付)

 日本基準では会計処理が求められていなかった未消化の有給休暇及びその他の長期従業員給付について、IFRS会計基準では「その他の流動負債」又は「その他の非流動負債」として計上しています。

 この影響により、IFRS会計基準では日本基準に比べて、「その他の流動負債」及び「その他の非流動負債」がそれぞれ12,261百万円及び942百万円増加しています。

(売上高及び売上原価に対する調整)

 製造業者又は販売業者としての貸手となる場合、ファイナンス・リースに係るリース収益について、日本基準ではリース料受取時に「売上高」と「売上原価」を認識していましたが、IFRS会計基準ではリース開始日に「売上収益」と「売上原価」を認識しています。

 この影響により、IFRS会計基準では日本基準に比べて連結損益計算書における「売上収益」及び「売上原価」がそれぞれ32,807百万円及び32,807百万円増加しています。

 

(その他の費用に関する調整)

 旧IJTT及びその子会社が保有する資産及び負債について、日本基準では、当社が保有する旧IJTTの全株式を譲渡した当連結会計年度に子会社株式売却損6,389百万円を計上しています。IFRS会計基準では、当該譲渡する契約を締結した前連結会計年度において、当該資産及び負債を公正価値で測定し、損失6,244百万円を計上しています。

 この影響により、IFRS会計基準では日本基準に比べて連結損益計算書における税引前利益が6,389百万円増加しています。

 

5【重要な契約等】

契約締結時期

相手方

契約の種類

契約の概要

国籍

名称

2004年8月

日本

日野自動車株式会社

株主間
協定書

両社の共同出資により設立したジェイ・バス株式会社とその100%子会社であるいすゞバス製造株式会社並びに日野車体工業株式会社の3社が合併するにあたり、日野自動車株式会社との間において、バスの開発の一部及び生産に関する事業をジェイ・バス株式会社に統合。

2014年10月

日本

三菱商事株式会社

基本覚書

タイにおける両社協業の最適化を目指し、泰国いすゞエンジン製造株式会社、いすゞモーターズインターナショナルオペレーションズタイランドリミテッドその他の現地事業体の当社出資比率引き上げを含む協業枠組みの変更につき合意。

2020年10月

スウェーデン

Aktiebolaget Volvo

(AB Volvo社)

協業基本
契約

AB Volvo社との協業分野及び同社との協業における意思決定の枠組について合意。

同上

同上

Volvo Technology Aktiebolaget (VTEC社)

技術協業
基本契約

AB Volvo社が100%保有する開発管理会社であるVTEC社との間において、技術協業の意思決定の枠組、費用負担の原則及び知的財産権の取扱いについて合意。

2021年3月

日本

トヨタ自動車株式会社

資本提携に関する合意

トヨタ自動車株式会社との間において、相互に株式を保有する形での資本提携について合意。

2025年1月

日本

トヨタ自動車株式会社

スズキ株式会社

日野自動車株式会社

ダイハツ工業株式会社

共同企画
契約

トヨタ自動車株式会社、スズキ株式会社、日野自動車株式会社、ダイハツ工業株式会社との間において、商用車CASE領域における協業について合意(当該契約に基づき、2024年2月に締結した、トヨタ自動車株式会社、スズキ株式会社、日野自動車株式会社との共同企画契約を終了)。

 

 令和6年4月1日施行の「企業内容等の開示に関する内閣府令及び特定有価証券の内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」(令和5年12月22日 令和5年内閣府令第81号)第3条第4項の経過措置により、この府令に規定された記載すべき事項のうち、府令の施行前に締結された契約に係るものについては、記載を省略しています。

 

6【研究開発活動】

 当社グループでは、世界中のお客様に満足していただける商品とサービスを提供していくため、xEVを含むトラック・バスやピックアップトラック、ディーゼルエンジン等における最新技術の研究開発を行うとともに、その技術を用いることで多くの国・地域のお客様のニーズに対応した最適な商品の開発に取り組んでいます。

 中期経営計画における新事業への挑戦として、①自動運転、②コネクテッド、③カーボンニュートラルの3領域を柱に据え、将来の新たな収益源として事業を加速させます。

 当連結会計年度の研究開発活動における新事業への挑戦として①自動運転の技術開発については、経済産業省と国土交通省が推進する「自動運転レベル4等先進モビリティサービス研究開発・社会実装プロジェクト(RoAD to the L4)」への参画、及びアライアンスパートナーとの協働により自動運転レベル4のトラック・バスの実現に向け開発を進めています。RoAD to the L4の「高速道路における高性能トラックの実用化に向けた取り組み」においては、国内商用車メーカー4社合同で、2024年11月より新東名高速道路における公道実証を実施しました。実証では社会実装の際に必要となる複数の機能の確認・検証を行っています。2025年3月に新設された自動運転車優先レーンにおいては、自動運転トラックが安全・円滑に走行可能かどうかの検証を行いました。路線バスの自動運転については、自動運転レベル4を目指し、平塚市ら5社(※1)とともに神奈川県平塚市内で大型路線バスの自動運転レベル2の実証実験を2024年12月に開始しました。また、東日本高速道路株式会社と除雪車の後方を追従する標識車の実運用環境下での自動走行試験を行いました。さらに、先進の自動運転技術の獲得を目的に、Applied Intuition, Inc.との戦略的提携の締結や、北米自動運転事業におけるパートナーシップ構築のためGatik AI Inc.に対して出資を行いました。当社グループは自動運転レベル4トラック・バスの2027年度の社会実装に向けて、パートナーとともに、積極的な取組みを進めていきます。

 ②コネクテッドの技術開発については、株式会社伊藤園及び株式会社アイ・グリッド・ソリューションズ(以下「アイ・グリッド」)と連携し、BEVトラックの運用と施設エネルギーマネジメントを両立させるための実証を2024年10月より開始しました。商用車情報基盤「GATEX」と、アイ・グリッドのエネルギーマネジメントプラットフォームを連携させることで、充電計画の策定と車両側での充電制御の実証を行います。また当社グループとして海外市場では初となる、BEV向けコネクテッドサービスの展開を北米より開始しました。

 ③カーボンニュートラルの技術開発については、2024年10月よりバッテリー交換式ソリューション「EVision Cycle Concept」の社内実証実験を開始しました。実証では交換オペレーションを検証し、所要時間の短縮など、社会実装に向けて更なる改良を重ねていきます。また、三菱商事株式会社とともに経済産業省の「グローバルサウス未来志向型共創等事業」に採択され、2025年度よりタイにおいてバッテリー交換式ソリューションの導入及び電力インフラとの連携によるセクターカップリングの実証事業を進めていきます。米国においては、2027年に北米市場への投入を予定している中型トラック「Fシリーズ」のBEVモデルに使用するバッテリーパワートレインシステムの供給契約をAccelera by Cumminsと締結しました。燃料に関しては株式会社ユーグレナら8社(※2)とともに実施する「新規HVO(※3)混合燃料の開発及びサプライチェーン構築とその社会実装」事業が東京都の「新エネルギー推進に係る技術開発支援事業」に採択されました。HVOベースの新たなバイオ燃料の開発・製造・貯蔵・輸送・実証利用などを実施します。

 これら技術開発に加え、新たなAI技術や活用手法のアイデアを募るプログラム「ISUZU AI Innovation Challenge 2024」を2024年9月に開催し、グローバルでの一般公募を実施しました。また、国立大学法人東京大学に恒久的な研究組織として「トランスポートイノベーション研究センター」を2025年2月に開設しました。物流に関わる幅広い領域の課題に取り組む研究活動を推進します。

 次に既存事業の強化による成果として、小型トラック「エルフ」では、国内唯一となるAT限定の普通自動車運転免許で運転できる小型ディーゼルトラック「エルフミオ」を2024年7月に発売しました。高積載とクラストップの低燃費を実現するとともに、6速ATとの組み合わせにより、パワフルでスムーズな走行を実現しました。これによりドライバー不足という社会課題の解決を目指します。また、量産BEV「エルフEV」のラインアップに特装車(塵芥車及び高所作業車)向けシャシを2025年2月に発売しました。架装物への動力供給には当社独自開発の電動PTO(※4)を採用しています。さらにはコネクテッド技術による稼働サポート「PREISM」に新たに追加した充電マネジメント機能で、電気代への影響を抑制するBEV充電が可能となりました。

 中型トラック「フォワード」では、当社とカミンズ(Cummins Inc.)が共同開発した新型直列6気筒ディーゼルエンジンを搭載した車両総重量15t以上モデルを追加し、2024年7月に販売を開始しました。十分なパワーに加え、従来の6気筒エンジンと比べ大幅に軽量化しました。また、リマニユニット車(※5)のラインアップに中型トラック「FORWARD type-Re」を追加し、メンテナンスリースによる取り扱いを2025年3月に開始しました。部品の多くを再利用するため、資源循環に寄与するほか、新車製造時に比べ約28tのCO排出量の削減(※6)が見込めます。

 大型トラック「ギガ」では、当社グループのUDトラックスのタイ拠点にて生産した海外向け新型大型トラック「S&Eシリーズ」の発売をしました。また、2026年施行予定の法規に対応した大型トラック「ギガ トラクタ」を2025年3月に発表しました。

 路線バスでは、国内初のBEVフルフラット路線バス「エルガEV」の都市型モデルを2024年5月、郊外型モデルを2024年10月に発売しました。車内の最後部まで段差のないバリアフリー化を実現し、乗客の利便性及び安全性が飛躍的に向上しました。先進安全機能では、ドライバー異常時対応システム(EDSS)に自動駐車ブレーキ機能を追加し、坂道などでも安全に車両を停止させる機能や自車前方の歩行者・自転車を検知し、ドライバーへ通知するフロントブラインドスポットモニターを装備するなど、事故低減に向けた安全性にも貢献しています。また、バスとしては初めて、「PREISM」を採用しました。さらには本サービスを応用したBEV専用フルメンテナンスリース商品「EVisionプレイズムコントラクト」にて車両を提供し、事務所などの離れた場所からバッテリーの充電残量・充電進捗・航続可能距離・万一の故障も把握できます。

 観光バスでは、中型観光バス「ガーラミオ」を一部改良し、2024年6月に発売しました。今回の改良では、法規対応としてバックカメラ・モニターを標準装備しました。

 LCVでは、大幅商品改良した「MU-X」を2024年6月にタイで発売しました。新型モデルは「Bold and Dynamic」をコンセプトにエクステリアデザインを変更、高級感とスポーティーさを強調した最上級グレード「RS」を新たに設定しました。また、「D-MAX」及び「MU-X」に、新開発の2.2Lディーゼルエンジン及び8速ATを搭載したモデルを2024年11月にタイで発売しました。優れた静粛性と耐久性はそのままに、優れた発進加速性と動力性能、燃費性能を実現しています。

 当連結会計年度に発生した研究開発支出は1,370億円です。

 なお、当社グループでは研究開発支出の一部について、無形資産に計上しています。連結損益計算書に計上している研究開発費の詳細については、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等(1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 28.研究開発費」を参照ください。

 

 

(※1) 平塚市、神奈川中央交通株式会社、三菱商事株式会社、アイサンテクノロジー株式会社、A-Drive株式会社。

(※2) 株式会社ユーグレナ、東急バス株式会社、清水建設株式会社、株式会社竹中工務店、株式会社朝日興産、
カメイ株式会社、シナネン株式会社、平野石油株式会社。

(※3) Hydrotreated Vegetable Oil(水素化処理植物油)の略。バイオマス(生物資源)

原料を水素化処理した燃料で、軽油と混合でも単独でも利用することが可能。石油由来の軽油使用時と比較

してCO排出量の削減効果が高い。

(※4) Power Take Offの略。車両の動力源(エンジン、バッテリー等)から架装物に動力を取り出す

装置。

(※5) リースアップ後にエンジンやトランスミッションといった駆動部分のリビルトに加え、足回りの部品交換による機能性回復、内装の洗車・部品交換による快適性回復により、新車同等の信頼・耐久性を担保した車両。

(※6) 5年で約70万㎞走行した中型トラック「フォワード」で実証。