1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】
本項においては、将来に関する事項が含まれていますが、当該事項は2021年3月31日現在において判断したものです。
トヨタは経営の基本方針を「トヨタ基本理念」として掲げており、その実現に向けた努力が、企業価値の増大につながるものと考えています。その内容は次のとおりです。
1. 内外の法およびその精神を遵守し、オープンでフェアな企業活動を通じて、国際社会から信頼される企業市民をめざす
2. 各国、各地域の文化、慣習を尊重し、地域に根ざした企業活動を通じて、経済・社会の発展に貢献する
3. クリーンで安全な商品の提供を使命とし、あらゆる企業活動を通じて、住みよい地球と豊かな社会づくりに取り組む
4. 様々な分野での最先端技術の研究と開発に努め、世界中のお客様のご要望にお応えする魅力あふれる商品・サービスを提供する
5. 労使相互信頼・責任を基本に、個人の創造力とチームワークの強みを最大限に高める企業風土をつくる
6. グローバルで革新的な経営により、社会との調和ある成長をめざす
7. 開かれた取引関係を基本に、互いに研究と創造に努め、長期安定的な成長と共存共栄を実現する
トヨタはモビリティカンパニーへの変革を進めるために、改めて歩んできた道を振り返り、未来への道標となる「トヨタフィロソフィー」をまとめました。
トヨタはモビリティカンパニーとして移動にまつわる課題に取り組むことで、人や企業、コミュニティの可能性を広げ、「幸せを量産」することを使命としています。そのために、モノづくりへの徹底したこだわりに加えて、人と社会に対するイマジネーションを大切にし、様々なパートナーと共に、唯一無二の価値を生み出してまいります。
「トヨタフィロソフィー」
自動車産業が100年に一度の大変革期を迎え、改めて創業の理念に立ち返り、先の見通しにくい時代の道標として、豊田綱領から続く精神を「トヨタフィロソフィー」としてまとめました。私たちの使命を「幸せの量産」と定義し、つくるモノが変わったとしても、お客様の幸せを追求することは変わらないという考えを明確にしています。そして、「可動性 (モビリティ) を社会の可能性に変える」というビジョンの実現に向けて行動することが、ホームタウン、ホームカントリーと同じように「ホームプラネット」を大切にすることであり、SDGsの「誰ひとり取り残さない」という精神で「より良い世界づくり」に持続的に取り組むことにつながると考えています。
私たちは、カーボンニュートラルなど社会課題への取り組みや、自動運転、コネクティッドなど、急速な技術革新への対応を加速させています。また、多くの企業とオープンに協業を進めるための基盤として、デジタル化を推進し、必要な時に、必要な情報が得られる環境を整備していきます。特に強化していく分野の取り組みについて紹介します。
①電動化
カーボンニュートラルへの対応には、クルマの電動化の推進が不可欠です。当社グループは、国、地域ごとのエネルギー事情やインフラ整備の状況、クルマの使い方の違いなど、お客様のニーズに合わせて、ハイブリッド車 (HEV) 、プラグインハイブリッド車 (PHEV) 、電気自動車 (BEV) 、燃料電池車 (FCEV) という様々な選択肢を用意し、より電動車を普及させることで、CO2削減に貢献します。初代「プリウス」の投入以降、HEVという1つの技術で終わらせることなく、電動車のフルラインアップに取り組み、今やグローバルでHEV45車種、PHEV4車種、BEV4車種、FCEV2車種と幅広く展開しています。
電動車の主力であるHEVは、トヨタハイブリッドシステムを高性能化するとともに、ハイパワー型、簡易型など多様なタイプを開発し、様々なニーズに合わせて商品ラインアップを拡充していきます。また、電動化システムの販売拡大に向け、㈱BluE Nexusと連携し、電動化関連商材の競争力と、お客様に提供する技術サポートやサービスの強化を図ります。
BEVでは、新たなビジネスモデルの構築を目指し、日本で2人乗りタイプの超小型BEV「C+pod」を法人ユーザーや自治体などを対象に販売を開始し、BEVならではの新たなサービスを実証的に提供していきます。中国では、トヨタブランドとして初の「C-HR EV」「IZOA EV」の販売を開始しました。今後、新型BEV「TOYOTA bZシリーズ」7車種を含む15車種を2025年までにグローバルに投入する計画です。
FCEVを含む水素活用の促進に向けて、大幅に性能が向上した「MIRAI」の販売に加え、FCシステムをパッケージ化したモジュールを開発し、多くのFC製品事業者と協力して、トラック、バス、鉄道、船舶などのモビリティや定置式発電機など、FC技術の普及を進めていきます。また、水素バリューチェーン推進協議会を設立するなど、水素をつくる、運ぶ、使う仲間づくりを進めています。なお、2021年5月、水素を燃焼させることで動力を発生する水素エンジンを搭載したカローラで24時間耐久レースに参戦し、完走を果たすなど、カーボンニュートラルへの新しい取り組みにチャレンジするとともに、モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくりに取り組んでいます。
また、2021年5月時点において、将来の各国の法規制や再生可能エネルギーの普及状況などの一定の前提に基づき、2030年グローバル販売台数として、電動車約800万台、うち、電気自動車(BEV)・燃料電池車(FCEV)約200万台を基準として示しています。
電動車の普及を進めるとともに、水素エンジン・カーボンニュートラル燃料の活用や、製造、物流、廃却、リサイクルといったライフサイクル全体でのカーボンニュートラル社会の実現に向けて取り組んでいきます。
②安全・自動運転
当社グループは、交通事故死傷者ゼロの実現と、安全、安心でスムーズな移動を全ての方に提供することを目指し、自動運転技術の開発、普及に取り組んでいます。開発理念である「Mobility Teammate Concept (モビリティ・チームメイト・コンセプト) 」は、人とクルマが気持ちの通った仲間のような関係を築くというものです。新型「LS」、新型「MIRAI」では、最新の高度運転支援技術「Lexus Teammate」「Toyota Teammate」の新機能「Advanced Drive」を搭載、高速道路、自動車専用道路での運転を支援します。より多くのお客様に安全技術を提供するため、最新の予防安全パッケージの新型車への採用や新たな「急アクセル時加速抑制」機能の開発も進めています。
また、コンピューター上で車両衝突時の全身の傷害を再現、解析できるバーチャル人体モデル「THUMS」を、幅広いユーザーの利活用を目的に、2021年から無償公開しました。自動車業界全体でクルマの安全性能を向上し、安全な社会の実現に向けて取り組んでいきます。
③コネクティッド・MaaS (モビリティ・アズ・ア・サービス)
当社グループは、モビリティサービスに必要な様々な機能をオープンに提供するモビリティサービス・プラットフォーム (MSPF) の強化と新機能の開発に取り組んでいます。今後、Amazon Web Services, Inc. との業務提携を拡大し、将来の膨大なトランザクションに備え、MSPFのビッグデータの蓄積や利用基盤の強化とともに、車両ビッグデータをグループ各社で柔軟かつ安全に活用できる基盤を構築していきます。また、MSPFの新たな機能として、Autono-MaaS (※)専用BEV「e-Palette」の実用化に向け、サービス提供を支える運行管理システムを開発しました。街、家、人、クルマの全てがつながる未来社会の到来に向け、人々の生活を豊かにするサービスの開発や、ビッグデータの活用などによる社会課題の解決に取り組んでいきます。
※ Autonomous Vehicle (自動運転車) とMaaS (モビリティ・アズ・ア・サービス) を融合させた、トヨタによる自動運転車を利用したモビリティサービスを示す造語
④ソフトウェア・ファースト
新しい技術やサービスなどをタイムリーにお客様に提供するため、従来のハードウェア主体の車両開発から、ソフトウェアから開発を進める「ソフトウェア・ファースト」の手法に見直していきます。本年4月発売の「Advanced Drive」を搭載した新型「LS」、新型「MIRAI」は、「ソフトウェア・ファースト」の実現に向けた第一歩です。お客様が商品を購入した後も、ソフトウェアのアップデートにより、安全性を向上させ、新たな機能の追加などを実施します。そのベースとなるハードウェアとして、認識、演算処理、信頼性 (冗長性) などにおいて高性能、かつ最先端の製品をクルマに装備します。これらにより、お客様により高い付加価値を提供していきます。
新しい開発の基盤となるソフトウェア・プラットフォーム「Arene (アリーン) 」により、開発スピードの加速や安全の検証、さまざまなアプリケーションへの適用、多くのパートナーとの協業などが可能になります。また、「Automated Mapping Platform (自動地図生成プラットフォーム) 」では、クラウド上に情報を集め、正確かつリアルタイムに更新される地図を世界規模で作成します。
このようなソフトウェア開発能力を効率的かつ効果的に強化するため、本年1月にトヨタ・リサーチ・インスティテュート・アドバンスト・デベロップメント㈱から持株会社のウーブン・プラネット・ホールディングス㈱と事業会社のウーブン・コア㈱、ウーブン・アルファ㈱、投資会社のWoven Capital, L.P.の新体制に移行しました。「Mobility to Love, Safety to Live」のもと、全ての人に安全・安心、移動の自由をお届けすることを目標に開発を推進していきます。
⑤Woven City (ウーブン・シティ)
2020年1月に発表した「Woven City」は、本年2月23日に地鎮祭を執り行い、新たなスタートを切りました。
トヨタ自動車東日本㈱東富士工場の用地を発展させ、人々が生活を送るリアルな環境のもと、自動運転、MaaS、パーソナルモビリティ、ロボット、スマートホーム技術、人工知能 (AI) 技術などを導入・検証できる「実証実験の街」を新たに作ります。人々の暮らしを支えるあらゆるモノ、サービスがつながっていく時代を見据え、この街で技術やサービスの開発と実証のサイクルを素早く回すことで、新たな価値やビジネスモデルを生み出し続けることが狙いです。「今よりもっといいやり方がある」というトヨタのカイゼン手法を根付かせ、街が常に進化・改善する「未完成の街」となります。
「ヒト中心」に、住人一人ひとりの生活を想像しながら、バーチャルとリアルの世界の両方で将来技術を実証することで、「ヒト」、「モノ」、「情報」のモビリティにおける新たな価値と生活を提案できると考えています。もっといい暮らしとMobility for Allを一緒に追求していきたい様々なパートナー企業や研究者と連携しながら、新たな街を作り上げていきます。
すべての人が自由に移動できる、未来のモビリティ社会づくりに向けて、当社グループは、日本の自動車産業を支える550万人の皆様や、グローバルの様々なステークホルダーの皆様とともに、着実に歩みを進めています。
以下において、トヨタの事業その他のリスクについて、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項を記載しています。ただし、以下はトヨタに関するすべてのリスクを網羅したものではなく、記載されたリスク以外のリスクも存在します。かかるリスク要因のいずれによっても、投資家の判断に影響を及ぼす可能性があります。
本項においては、将来に関する事項が含まれていますが、当該事項は有価証券報告書提出日 (2021年6月24日) 現在において判断したものです。
世界の自動車市場では激しい競争が繰り広げられています。トヨタは、ビジネスを展開している各々の地域で、自動車メーカーとの競争に直面しています。自動車市場における競争はさらに激化しており、厳しい状況が続いています。また、世界の自動車産業のグローバル化がさらに進むことによって、競争は今後より一層激化する可能性があり、業界再編につながる可能性もあります。競争に影響を与える要因としては、製品の品質・機能、安全性、信頼性、燃費、革新性、開発に要する期間、価格、カスタマー・サービス、自動車金融の利用条件等の点が挙げられます。競争力を維持することは、トヨタの既存および新規市場における今後の成功、販売シェアにおいて最も重要です。トヨタは、昨今の自動車市場の急激な変化に的確に対応し、今後も競争力の維持強化に向けた様々な取り組みを進めていきますが、将来優位に競争することができないリスクがあります。競争が激化した場合、自動車の販売台数の減少や販売価格の低下などが起きる可能性があり、それによりトヨタの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローが悪影響を受けるリスクがあります。
トヨタが参入している各市場では、今までも需要が変動してきました。各市場の状況によって、自動車の販売は左右されます。トヨタの販売は、世界各国の市場に依存しており、各市場の景気動向はトヨタにとって特に重要です。当連結会計年度においては、前期から続く新型コロナウイルスの影響により、4月から6月にかけて急激に減速しました。7月以降は各国の経済活動再開や景気対策により緩やかに回復したものの、年度を通じてはマイナス成長となりました。自動車市場においても、世界的な工場の稼働停止や販売店の営業停止などの影響もあり、中国などの感染影響が限定的だった一部地域を除き、多くの地域で大幅な前年実績割れとなりました。このような需要の変化は現在でも続いており、この状況が今後どのように推移するかは不透明です。今後トヨタの想定を超えて需要の変化が継続または悪化した場合、トヨタの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローが悪影響を受ける可能性があります。また、需要は、販売・金融インセンティブ、原材料・部品等の価格、燃料価格、政府の規制 (関税、輸入規制、その他の租税を含む) など、自動車の価格および自動車の購入・維持費用に直接関わる要因により、影響を受ける場合があります。需要が変動した場合、自動車の販売台数の減少や販売価格の低下などが起きる可能性があり、それによりトヨタの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローが悪影響を受けるリスクがあります。
③お客様のニーズに速やかに対応した、革新的で価格競争力のある新商品を投入する能力
製品の開発期間を短縮し、魅力あふれる新型車でお客様にご満足いただくことは、自動車メーカーにとっては成功のカギとなります。特に、品質、安全性、信頼性において、お客様にご満足いただくことは非常に重要です。世界経済の変化に伴い、自動車市場の構造が急激に変化している現在、お客様の価値観とニーズの急速な変化に対応した新型車を適時・適切にかつ魅力ある価格で投入することは、トヨタの成功にとってこれまで以上に重要であり、技術・商品開発から生産にいたる、トヨタの事業の様々なプロセスにおいて、そのための取り組みを進めています。しかし、トヨタが、品質、安全性、信頼性、スタイルその他の性能に関するお客様の価値観とニーズを適時・適切にかつ十分にとらえることができない可能性があります。また、トヨタがお客様の価値観とニーズをとらえることができたとしても、その有する技術、知的財産、原材料や部品の調達、原価低減能力を含む製造能力またはその他生産性に関する状況により、価格競争力のある新製品を適時・適切に開発・製造できない可能性があります。また、トヨタが計画どおりに設備投資を実施し、製造能力を維持・向上できない可能性もあります。お客様のニーズに対応する製品を開発・提供できない場合、販売シェアの縮小ならびに売上高と利益率の低下を引き起こすリスクがあります。
④効果的な販売・流通を実施する能力
トヨタの自動車販売の成功は、お客様のご要望を満たす流通網と販売手法に基づき効果的な販売・流通を実施する能力に依存します。トヨタはその参入している各主要市場の規制環境において、お客様の価値観または変化に効果的に対応した流通網と販売手法を展開していますが、それができない場合は、売上高および販売シェアが減少するリスクがあります。
⑤ブランド・イメージの維持・発展
競争の激しい自動車業界において、ブランド・イメージを維持し発展させることは非常に重要です。ブランド・イメージを維持し発展させるためには、お客様の価値観やニーズに対応した安全で高品質の製品を提供することで、お客様の信頼をさらに高めていくことが重要です。トヨタが、安全で高品質の製品を提供することができない、または、リコール等の市場処置が必要であるにもかかわらず迅速な対応がなされないなどの結果、トヨタのブランド・イメージを効果的に維持し発展させることができなかった場合、自動車の販売台数の減少や販売価格の低下などが起きる可能性があり、その結果、売上高と利益率の低下を引き起こすリスクがあります。
⑥仕入先への部品供給の依存
トヨタは、部品や原材料などの調達部品を世界中の複数の競合する仕入先から調達する方針を取っていますが、調達部品によっては他の仕入先への代替が難しいものもあり、特定の仕入先に依存しているものがあります。また、その調達部品が様々な車種に共通して使用される場合、当該部品の調達がより困難となり、生産面への影響を受ける可能性があります。さらに、トヨタが直接の取引先である一次仕入先を分散していたとしても、一次仕入先が部品調達を二次以降の特定の仕入先に依存していた場合、同様に部品の供給を受けられないリスクもあります。トヨタが調達部品を継続的にタイムリーかつ低コストで調達できるかどうかは、多くの要因の影響を受けますが、それら要因にはトヨタがコントロールできないものも含まれています。それらの要因の中には、仕入先が継続的に調達部品を調達し供給できるか、またトヨタが、仕入先から調達部品を競争力のある価格で供給を受けられるか等が含まれます。特定の仕入先を失う、またはそれら仕入先から調達部品をタイムリーもしくは低コストで調達出来ない場合、トヨタの生産に遅延や休止またはコストの増加を引き起こす可能性があり、トヨタの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローに悪影響が及ぶ可能性があります。
⑦金融サービスにおける競争の激化
世界の金融サービス業界では激しい競争が繰り広げられています。自動車金融の競争激化は、利益率の減少を引き起こす可能性があります。この他トヨタの金融事業に影響を与える要因には、トヨタ車の販売台数の減少、中古車の価格低下による残存価値リスクの増加、貸倒率の増加および資金調達費用の増加が挙げられます。
⑧デジタル情報技術への依存
トヨタは、機密データを含む電子情報を処理・送信・蓄積するため、または製造・研究開発・サプライチェーン管理・販売・会計を含む様々なビジネスプロセスや活動を管理・サポートするために、第三者によって管理されているものも含め、様々な情報技術ネットワークやシステムを利用しています。さらに、トヨタの製品にも情報サービス機能や運転支援機能など様々なデジタル情報技術が利用されています。これらのデジタル情報技術ネットワークやシステムは、安全対策が施されているものの、ハッカーによる不正アクセスやコンピュータウィルスによる攻撃、トヨタが利用するネットワークおよびシステムにアクセスできる者による不正使用・誤用、開発ベンダー・クラウド業者など関係取引先からのサービスの停止、電力供給不足を含むインフラの障害、天災などによって被害や妨害を受ける、または停止する可能性があります。特にサイバー攻撃や他の不正行為は苛烈さ、巧妙さ、頻度において脅威を増しており、そのような攻撃の標的にされる恐れがあります。このような事態が起きた場合、重要な業務の中断や、機密データの漏洩、トヨタ製品の情報サービス機能・運転支援機能などへの悪影響のほか、法的請求、訴訟、賠償責任、罰金の支払い義務などが発生する可能性もあります。その結果、トヨタのブランド・イメージや、トヨタの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローに悪影響を及ぼす可能性があります。
①為替および金利変動の影響
トヨタの収益は、外国為替相場の変動に影響を受け、主として日本円、米ドル、ユーロ、ならびに豪ドル、ロシア・ルーブル、加ドルおよび英国ポンドの価格変動によって影響を受けます。トヨタの連結財務諸表は、日本円で表示されているため、換算リスクという形で為替変動の影響を受けます。また、為替相場の変動は、外国通貨で販売する製品および調達する材料に、取引リスクという形で影響を与える可能性があります。特に、米ドルに対する円高の進行は、トヨタの経営成績に悪影響を与える可能性があります。
トヨタは、為替相場および金利の変動リスクを軽減するために、現地生産を行い、先物為替予約取引や金利スワップ取引を含むデリバティブ金融商品を利用していますが、依然として為替相場と金利の変動は、トヨタの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローに悪影響を与える可能性があります。為替変動の影響およびデリバティブ金融商品の利用に関しては、「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ①概観 d.為替の変動」および連結財務諸表注記20ならびに21を参照ください。
②原材料価格の上昇
鉄鋼、貴金属、非鉄金属 (アルミ等) 、樹脂関連部品など、トヨタおよびトヨタの仕入先が製造に使用する原材料価格の上昇は、部品代や製造コストの上昇につながり、これらのコストを製品の販売価格に十分に転嫁できない、あるいは仕入先がこれらのコストを十分に吸収できない結果、トヨタの将来の収益性に悪影響を与える可能性があります。
③金融市場の低迷
世界経済が急激に悪化した場合、多くの金融機関や投資家は、自らの財務体力に見合った水準で金融市場に資金を供給することが難しい状況に陥る可能性があります。その結果、企業がその信用力に見合った条件で資金調達をすることが困難になる可能性があります。必要に応じて資金を適切な条件で調達できない場合、トヨタの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローが悪影響を受ける可能性があります。
①自動車産業に適用される政府の規制
世界の自動車産業は、自動車の安全性や排ガス、燃費、騒音、公害をはじめとする環境問題などに関する様々な法律と政府の規制の適用を受けています。特に、安全面では、法律や政府の規制に適合しない、またはその恐れのある自動車は、リコール等の市場処置の実施が求められます。さらに、トヨタはお客様の安心感の観点から、法律や政府の規制への適合性に関わらず、自主的にリコール等の市場処置を実施する可能性もあります。トヨタが市場に投入した車両にリコール等の市場処置が必要となった場合 (リコール等に関係する部品はトヨタが第三者から調達したものも含む) 、製品のリコールや無償のサービスキャンペーンに係る費用を含めた様々な費用が発生する可能性があります。また、多くの政府は、価格管理規制や為替管理規制を制定しています。トヨタは、国際貿易の動向や政策の変化に関する費用を含むこれらの規制に適合するために費用を負担し、今後も法令遵守のために費用が発生する可能性があります。また、新しい法律または現行法の改正により、トヨタの今後の費用負担が増えるリスクがあります。このように、市場処置を講じたり法律や政府の規制へ適合するために多額の費用が発生した場合、トヨタの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローに悪影響を与える可能性があります。
②法的手続
トヨタは、製造物責任、知的所有権の侵害等、様々な法的手続の当事者となる可能性があります。また、株主との間で法的手続の当事者となったり、行政手続または当局の調査の対象となる可能性もあります。現在トヨタは、行政手続および当局の調査を含む、複数の係属中の法的手続の当事者となっています。トヨタが当事者となる法的手続で不利な判断がなされた場合、トヨタの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローに悪影響が及ぶリスクがあります。政府の規制等の法的手続の状況については連結財務諸表注記31を参照ください。
③自然災害、感染症、政治動乱、経済の不安定な局面、燃料供給の不足、インフラの障害、戦争、テロまたはストライキの発生
トヨタは、全世界で事業を展開することに関連して、様々なイベントリスクにさらされています。これらのリスクとは、自然災害、感染症の発生・蔓延、政治・経済の不安定な局面、燃料供給の不足、天災などによる電力・交通機能・ガス・水道・通信等のインフラの障害、戦争、テロ、ストライキ、操業の中断などが挙げられます。トヨタが製品を製造するための材料・部品・資材などを調達し、またはトヨタの製品が製造・流通・販売される主な市場において、これらの事態が生じた場合、トヨタの事業運営に障害または遅延をきたす可能性があります。トヨタの事業運営において、重大または長期間の障害ならびに遅延が発生した場合、トヨタの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローに悪影響が及ぶリスクがあります。
新型コロナウイルスの世界的な感染拡大およびこれに対する政府やその他のステークホルダーの対応により、トヨタは様々な面で悪影響を受けています。例えば、政府からの要請や自動車需要の落ち込みが見込まれることなどの理由により、トヨタは国内および海外の一部の工場で、自動車および部品の生産を一時的に停止しているか、または今後そのような措置を講じることがあります。新型コロナウイルスの影響は、トヨタのディーラーおよび販売代理店のほか、一部の仕入先および取引先の事業にも及んでおり、今後も継続することが見込まれます。また、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大および関連する問題は、様々な業界のビジネスや消費者にも悪影響を及ぼしており、これらはトヨタの自動車および金融サービスの需要にネガティブな影響を与えています。
新型コロナウイルスの収束時期や将来的な影響は依然として不透明であり、前述の影響やそれ以外の本書に記載されていない影響、および新型コロナウイルスの最終的な影響については予測しがたく、トヨタの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローに悪影響が及ぶリスクがあります。
第1四半期連結累計期間より、従来の米国会計基準に替えてIFRSを適用しており、前連結会計年度の数値もIFRSベースに組み替えて比較・分析を行っています。
(1) 経営成績等の状況の概要
①経営成績の状況
当連結会計年度の世界経済は、前連結会計年度から続く新型コロナウイルスの影響により、4月から6月にかけて急激に減速しました。7月以降は各国の経済活動再開や景気対策により緩やかに回復したものの、年度を通じてはマイナス成長となりました。
自動車市場においても、世界的な工場の稼働停止や販売店の営業停止などの影響もあり、中国などの感染影響が限定的だった一部地域を除き、多くの地域で大幅な前年実績割れとなりました。
このような経営環境の中、トヨタは、現場での改善活動を中心に、今やるべきことに取り組みました。生産現場では、生産ラインが停止した時間を使い、モノづくりの力やTPS (トヨタ生産方式) を活かして、マスクやフェイスシールド、足踏み式消毒スタンドなどを生産しました。販売現場では、オンライン販売として、非接触でのお客様との関係づくりを、全世界で推進しました。オンライン環境で、世界中の関係者と経営トップのコミュニケーションが可能となり、各地の状況のタイムリーな情報共有、迅速な意思決定に繋がりました。
また、当たり前のことを当たり前にやろう、という考えの下、当連結会計年度は予定通り多数のモデルを発売しました。新時代のSUVを目指した新型「ハリアー」は、実用性や数値一辺倒ではない、見て乗って走り出した瞬間に心が動く感性品質を重視しました。新型「MIRAI」はゼロエミッションでありながら、感性に訴えるデザイン、唯一無二の走り、一歩先を行くあふれる先進性、安心の航続距離を備えるコンセプトで、将来の水素社会実現に向けた、新たな出発点となるクルマです。レクサスブランドでは、レクサスの電気自動車(BEV) ならではの上質な走りと静粛性、ハイブリッドで培った電動化技術の高い信頼性と利便性、「UX」譲りの個性的なデザインや高い機能性を実現した「UX300e」を発売しました。また、「GRヤリス」はモータースポーツ用の車両を市販化するという逆転の発想で開発したトヨタ初のモデルです。モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくりとして、開発初期からドライバーモリゾウと社外プロドライバーが評価し、東京オートサロン2020で披露した後も、サーキットで何度も評価と改善のサイクルを繰り返し、発売に至りました。
当連結会計年度における日本、海外を合わせた自動車の連結販売台数は、764万6千台と、前連結会計年度に比べて130万9千台(14.6%) の減少となりました。日本での販売台数については、212万5千台と、前連結会計年度に比べて11万5千台(5.1%) 減少しました。一方、海外においては、全ての地域で販売台数が減少したことにより、552万1千台と、前連結会計年度に比べて119万4千台(17.8%) の減少となりました。
当連結会計年度の業績については、次のとおりです。
なお、営業利益の主な増減要因は、次のとおりです。
事業別セグメントの業績は、次のとおりです。
営業収益は24兆6,515億円と、前連結会計年度に比べて2兆1,481億円(8.0%) の減収となり、営業利益は1兆6,071億円と、前連結会計年度に比べて4,059億円(20.2%) の減益となりました。営業利益の減益は、生産および販売台数の減少などによるものです。
営業収益は2兆1,622億円と、前連結会計年度に比べて309億円(1.4%) の減収となりましたが、営業利益は4,955億円と、前連結会計年度に比べて2,118億円(74.7%) の増益となりました。営業利益の増益は、販売金融子会社において貸倒関連費用および残価損失関連費用が減少したことならびに金利スワップ取引などの時価評価による評価益が計上されたことなどによるものです。
営業収益は1兆523億円と、前連結会計年度に比べて4,525億円(30.1%) の減収となり、営業利益は853億円と、前連結会計年度に比べて180億円(17.4%) の減益となりました。
所在地別の業績は、次のとおりです。
営業収益は14兆9,489億円と、前連結会計年度に比べて1兆4,929億円(9.1%) の減収となり、営業利益は1兆1,492億円と、前連結会計年度に比べて4,360億円(27.5%) の減益となりました。営業利益の減益は、生産および販売台数の減少などによるものです。
営業収益は9兆4,918億円と、前連結会計年度に比べて1兆1,502億円(10.8%) の減収となりましたが、営業利益は4,013億円と、前連結会計年度に比べて1,481億円(58.5%) の増益となりました。営業利益の増益は、営業面の努力などによるものです。
営業収益は3兆1,344億円と、前連結会計年度に比べて2,208億円(6.6%) の減収となり、営業利益は1,079億円と、前連結会計年度に比べて358億円(24.9%) の減益となりました。営業利益の減益は、為替変動の影響などによるものです。
営業収益は5兆452億円と、前連結会計年度に比べて2,479億円(4.7%) の減収となりましたが、営業利益は4,359億円と、前連結会計年度に比べて723億円(19.9%) の増益となりました。営業利益の増益は、原価改善の努力および営業面の努力などによるものです。
営業収益は1兆8,728億円と、前連結会計年度に比べて2,412億円(11.4%) の減収となり、営業利益は598億円と、前連結会計年度に比べて241億円(28.8%) の減益となりました。
当連結会計年度末における財政状態については、次のとおりです。
資産合計は62兆2,671億円と、前連結会計年度末に比べて8兆2,947億円 (15.4%) の増加となりました。負債合計は37兆9,788億円と、前連結会計年度末に比べて5兆3,454億円 (16.4%) の増加となりました。資本合計は24兆2,883億円と、前連結会計年度末に比べて2兆9,493億円 (13.8%) の増加となりました。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は5兆1,008億円と、前連結会計年度末に比べて1兆24億円 (24.5%) の増加となりました。
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況と、前連結会計年度に対するキャッシュ・フローの増減は、次のとおりです。
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、2兆7,271億円の資金の増加となり、前連結会計年度が2兆3,984億円の増加であったことに比べて、3,286億円の増加となりました。
当連結会計年度の投資活動によるキャッシュ・フローは、4兆6,841億円の資金の減少となり、前連結会計年度が2兆1,246億円の減少であったことに比べて、2兆5,595億円の減少となりました。
当連結会計年度の財務活動によるキャッシュ・フローは、2兆7,391億円の資金の増加となり、前連結会計年度が3,628億円の増加であったことに比べて、2兆3,763億円の増加となりました。
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績を事業別セグメントごとに示すと、次のとおりです。
当社および連結製造子会社は、国内販売店、海外販売店等からの受注状況、最近の販売実績および販売見込等の情報を基礎として、見込生産を行っています。
当連結会計年度における販売実績を事業別セグメントごとに示すと、次のとおりです。
前述の当連結会計年度における「自動車事業」の販売数量を、仕向先別に示すと、次のとおりです。
本項においては、将来に関する事項が含まれていますが、当該事項は有価証券報告書提出日 (2021年6月24日)
現在において判断したものです。
トヨタの事業セグメントは、自動車事業、金融事業およびその他の事業で構成されています。自動車事業は最も重要な事業セグメントで、当連結会計年度においてトヨタの営業収益合計 (セグメント間の営業収益控除前) の88%を占めています。当連結会計年度における車両販売台数ベースによるトヨタの主要な市場は、日本 (27.8%) 、北米 (30.3%) 、欧州 (12.5%) およびアジア (16.0%) となっています。
世界の自動車市場は、非常に競争が激しく、また予測が困難な状況にあります。さらに、自動車業界の需要は、社会、政治および経済の状況、新車および新技術の導入ならびにお客様が自動車を購入または利用される際に負担いただく費用といった様々な要素の影響を受けます。これらの要素により、各市場および各タイプの自動車に対するお客様の需要は、大きく変化します。
当連結会計年度の自動車市場は、新型コロナウイルスによる世界的な工場の稼働停止や販売店の営業停止などの影響もあり、中国などの感染影響が限定的だった一部地域を除き、多くの地域で大幅な前年実績割れとなりました。
次の表は、過去2連結会計年度における各仕向地域別の連結販売台数を示しています。
(注) 「その他」は、中南米、オセアニア、アフリカ、中近東ほかからなります。
トヨタの日本における当連結会計年度の連結販売台数は、市場が前連結会計年度を下回る状況のもと、減少しました。トヨタの海外における連結販売台数は、自動車市場の大幅な縮小により、北米、アジア、その他の地域を中心に販売台数が大きく減少しました。
各市場における全車両販売台数に占めるトヨタのシェアは、製品の品質、安全性、信頼性、価格、デザイン、性能、経済性および実用性についての他社との比較により左右されます。また、時機を得た新車の導入やモデルチェンジの実施も、お客様のニーズを満たす重要な要因です。変化し続けるお客様の嗜好を満たす能力も、売上および利益に大きな影響をもたらします。
自動車事業の収益性は様々な要因により左右されます。これらには次のような要因が含まれます。
車両販売台数
販売された車両モデルとオプションの組み合わせ
部品・サービス売上
価格割引およびその他のインセンティブのレベルならびにマーケティング費用
顧客からの製品保証に関する請求およびその他の顧客満足のための修理等にかかる費用
研究開発費等の固定費
原材料価格
コストの管理能力
生産資源の効率的な利用
特定の仕入先への部品供給の依存による生産への影響
自然災害および感染症の発生・蔓延や社会インフラの障害による市場・販売・生産への影響
日本円およびトヨタが事業を行っている地域におけるその他通貨の為替相場の変動
法律、規制、政策の変更およびその他の政府による措置も自動車事業の収益性に著しい影響を及ぼすことがあります。これらの法律、規制および政策には、車両の製造コストを大幅に増加させる環境問題、車両の安全性、燃費および排ガスに影響を及ぼすものが含まれます。
多くの国の政府が、現地調達率を規定し、関税およびその他の貿易障壁を課し、あるいは自動車メーカーの事業を制限したり本国への利益の移転を困難にするような価格管理あるいは為替管理を行っています。このような法律、規制、政策その他の行政措置における変更は、製品の生産、ライセンス、流通もしくは販売、原価、あるいは適用される税率に影響を及ぼすことがあります。トヨタは、トヨタ車の安全性について潜在的問題がある場合に適宜リコール等の市場処置 (セーフティ・キャンペーンを含む) を発表しています。前述のリコール等の市場処置をめぐり、トヨタに対する申し立ておよび訴訟が提起されています。これらの申し立ておよび訴訟に関しては、連結財務諸表注記25を参照ください。
世界の自動車産業は、グローバルな競争の時期にあり、この傾向は予見可能な将来まで続く可能性があります。また、トヨタが事業を展開する競争的な環境は、さらに激化する様相を呈しています。トヨタは一独立企業として自動車産業で効率的に競争するための資源、戦略および技術を予見可能な将来において有していると考えています。
自動車金融の市場は、大変競争が激しくなっています。自動車金融の競争激化は、利益率の減少を引き起こす可能性があり、また、顧客がトヨタ車を購入する際にトヨタ以外の金融サービスを利用するようになる場合、マーケット・シェアが低下することも考えられます。
トヨタの金融サービス事業は、主として、顧客および販売店に対する融資プログラムおよびリース・プログラムの提供を行っています。トヨタは、顧客に対して資金を提供する能力は、顧客に対しての重要な付加価値サービスであると考え、金融子会社のネットワークを各国へ展開しています。
小売融資およびリースにおけるトヨタの主な競争相手には、商業銀行、消費者信用組合、その他のファイナンス会社が含まれます。一方、卸売融資における主な競争相手には、商業銀行および自動車メーカー系のファイナンス会社が含まれます。
トヨタの金融事業に係る債権は、主に為替変動の影響により、当連結会計年度において増加しました。また、賃貸用車両及び器具は、主に為替変動の影響により、当連結会計年度において増加しました。
金融事業に係る債権および賃貸用車両及び器具の詳細については、連結財務諸表注記9および13を参照ください。
トヨタの金融債権は、回収可能性リスクを負っています。これは顧客もしくは販売店の支払不能や、担保価値 (売却費用控除後) が債権の帳簿価額を下回った場合に発生する可能性があります。詳細については、連結財務諸表注記4および20を参照ください。
トヨタは、車両リースを継続的に提供してきました。当該リース事業によりトヨタは残存価額のリスクを負っています。これは車両リース契約の借手が、リース終了時に車両を購入するオプションを行使しない場合に発生する可能性があります。詳細については、連結財務諸表注記3 (8) を参照ください。
トヨタは、主に固定金利借入債務を機能通貨建ての変動金利借入債務へ転換するために、金利スワップおよび金利通貨スワップ契約を結んでいます。特定のデリバティブ金融商品は、経済的企業行動の見地からは金利リスクをヘッジするために契約されていますが、トヨタの連結財政状態計算書における特定の資産および負債をヘッジするものとしては指定されていないため、それらの指定されなかったデリバティブから生じる未実現評価損益は、その期間の損益として計上されます。詳細については、連結財務諸表注記21および22を参照ください。
資金調達コストの変動は、金融事業の収益性に影響を及ぼす可能性があります。資金調達コストは、数多くの要因の影響を受けますが、その中にはトヨタがコントロールできないものもあります。これには、全般的な景気、金利およびトヨタの財務力などが含まれます。当連結会計年度の資金調達コストは主に市場金利の低下により減少しました。
トヨタは、2001年4月に日本でクレジットカード事業を立上げました。カード会員数は、2021年3月31日現在16.4百万人と、2020年3月31日から0.5百万人の増加となりました。カード債権は、2021年3月31日現在4,841億円と、2020年3月31日から24億円の増加となりました。
トヨタのその他の事業には、情報通信事業・ガズー事業等の情報技術関連事業、プレハブ等住宅の製造・販売を手掛ける住宅事業等が含まれます。なお、当社は、前連結会計年度において、パナソニック株式会社 (以下、パナソニックという。) と街づくり事業に関する新しい合弁会社であるプライム ライフ テクノロジーズ株式会社 (以下、プライム ライフ テクノロジーズという。) を設立し、同社はトヨタの持分法適用会社となりました。また、当社の連結子会社であったトヨタホーム株式会社 (以下、トヨタホームという。) およびミサワホーム株式会社 (以下、ミサワホームという。) はプライム ライフ テクノロジーズの完全子会社となったことにより、トヨタの連結子会社ではなくなりました。詳細については、連結財務諸表注記6を参照ください。
トヨタは、その他の事業は連結業績に大きな影響を及ぼすものではないと考えています。
トヨタは、為替変動による影響を受けやすいといえます。トヨタは日本円の他に主に米ドルおよびユーロの価格変動の影響を受けており、また、米ドルやユーロに加え、豪ドル、ロシア・ルーブル、加ドルおよび英国ポンドなどについても影響を受けることがあります。日本円で表示されたトヨタの連結財務諸表は、換算リスクおよび取引リスクによる為替変動の影響を受けています。
換算リスクとは、特定期間もしくは特定日の財務諸表が、事業を展開する国々の通貨の日本円に対する為替の変動による影響を受けるリスクです。たとえ日本円に対する通貨の変動が大きく、前連結会計年度との比較において、また地域ごとの比較においてかなりの影響を及ぼすとしても、換算リスクは報告上の考慮事項に過ぎず、その基礎となる業績を左右するものではありません。トヨタは換算リスクに対してヘッジを行っていません。
取引リスクとは、収益と費用および資産と負債の通貨が異なることによるリスクです。取引リスクは主にトヨタの日本製車両の海外売上に関係しています。
トヨタは、生産施設が世界中に所在しているため、取引リスクは大幅に軽減されていると考えています。グローバル化戦略の一環として、車両販売を行う主要市場において生産施設を建設することにより、生産を現地化してきました。前連結会計年度および当連結会計年度において、トヨタの海外における車両販売台数のそれぞれ69.0%および69.7%が海外で生産されています。北米では前連結会計年度および当連結会計年度の車両販売台数のそれぞれ67.6%および65.3%が現地で生産されています。欧州では前連結会計年度および当連結会計年度の車両販売台数のそれぞれ74.4%および71.9%が現地で生産されています。生産の現地化により、トヨタは生産過程に使用される供給品および原材料の多くを現地調達することができ、現地での収益と費用の通貨のマッチングをはかることが可能です。
トヨタは、取引リスクの一部に対処するために為替の取引およびヘッジを行っています。これにより為替変動による影響は軽減されますが、すべて排除されるまでには至っておらず、年によってその影響が大きい場合もあり得ます。為替変動リスクをヘッジするためにトヨタで利用されるデリバティブ金融商品に関する追加的な情報については、連結財務諸表注記21および22を参照ください。
一般的に、円安は営業収益、営業利益および親会社の所有者に帰属する当期利益に好影響を及ぼし、円高は悪影響を及ぼします。日本円の米ドルに対する期中平均相場は、前会計年度に比べて円高に推移しました。また、日本円の米ドルに対する決算日の為替相場は、前会計年度末に比べて円安となりました。日本円のユーロに対する期中平均および決算日の為替相場は、前連結会計年度に比べて円安に推移しました。
トヨタの最も重要な事業セグメントは、自動車事業セグメントです。トヨタは、世界の自動車市場においてグローバル・コンペティターとして自動車事業を展開しています。マネジメントは世界全体の自動車事業を一つの事業セグメントとして資源の配分やその実績の評価を行っており、自動車事業セグメント内で資源を配分するために、販売台数、生産台数、マーケット・シェア、車両モデルの計画および工場のコストといった財務およびそれ以外に関するデータの評価を行っています。トヨタは国内・海外または部品等のような自動車事業の一分野を個別のセグメントとして管理していません。
次の表は、過去2連結会計年度のトヨタの地域別外部顧客向け営業収益を示しており、当社または連結子会社の所在国の位置を基礎として集計しています。
(注) 「その他」 は、中南米、オセアニア、アフリカ、中近東からなります。
(注) 「その他」は、中南米、オセアニア、アフリカ、中近東からなります。
当連結会計年度の営業収益は27兆2,145億円と、前連結会計年度に比べて2兆6,519億円 (8.9%) の減収となりました。この減収は、主に車両販売台数および販売構成の変化による影響2兆800億円や、為替変動の影響5,600億円によるものです。
トヨタの事業別外部顧客向け営業収益の商品別内訳は次のとおりです。
営業収益は自動車事業およびその他の事業の合計である商品・製品売上収益ならびに金融事業に係る金融収益で構成されており、当連結会計年度の商品・製品売上収益は25兆773億円と、前連結会計年度に比べて9.4%の減収となり、金融事業に係る金融収益は2兆1,371億円と、前連結会計年度に比べて1.6%の減収となりました。商品・製品売上収益の減収は、主にトヨタの販売台数が1,309千台減少したことによるものです。前連結会計年度末および当連結会計年度末の各地域における融資件数 (残高) の状況は次のとおりです。
・金融事業における融資件数残高
(注) 「その他」は、中南米、オセアニア、アフリカからなります。
当連結会計年度の営業収益 (セグメント間の営業収益控除前) は前連結会計年度に比べて、日本では9.1%、北米では10.8%、欧州では6.6%、アジアでは4.7%、その他の地域では11.4%の減収となりました。為替変動の影響5,600億円を除いた場合、当連結会計年度の営業収益は前連結会計年度に比べて、日本では9.1%、北米では8.5%、欧州では5.5%、アジアでは3.5%の減収、その他の地域では0.1%の増収であったと考えられます。
各地域における営業収益 (セグメント間の営業収益控除前) の状況は次のとおりです。
・日本
日本においては、輸出台数を含むトヨタの販売台数は前連結会計年度に比べて431千台減少し、減収となりました。前連結会計年度および当連結会計年度における輸出台数はそれぞれ2,044千台および1,728千台となりました。
・北米
北米においては、トヨタの販売台数は前連結会計年度に比べて400千台減少し、減収となりました。
・欧州
欧州においては、トヨタの販売台数は前連結会計年度に比べて70千台減少し、減収となりました。
・アジア
アジアにおいては、トヨタの販売台数は前連結会計年度に比べて378千台減少し、減収となりました。
・その他の地域
その他の地域においては、トヨタの販売台数は前連結会計年度に比べて345千台減少し、減収となりました。
当連結会計年度における営業費用は25兆168億円と、前連結会計年度に比べて2兆4,504億円 (8.9%) の減少となりました。
・原価改善の努力
当連結会計年度は、仕入先と一体となった原価改善活動に引き続き精力的に取り組んだ結果、VE (Value Engineering)活動を中心とした設計面での原価改善など800億円および工場・物流部門などにおける原価改善700億円により営業費用を1,500億円減少することができました。
原価改善の努力は、継続的に実施されているVE・VA (Value Analysis) 活動、部品の種類の絞込みにつながる部品共通化、ならびに車両生産コストの低減を目的としたその他の製造活動に関連しています。なお、原価改善の努力には、鉄鋼、貴金属、非鉄金属 (アルミ等) 、樹脂関連部品などの資材・部品価格の変動による影響が含まれています。
・売上原価
当連結会計年度における売上原価は21兆1,998億円と、前連結会計年度に比べて1兆9,037億円 (8.2%) の減少となりました。この減少は、主に車両販売台数および販売構成の変化による影響、連結子会社の減少の影響、為替換算レート変動の影響ならびに原価改善の努力によるものです。
・金融事業に係る金融費用
当連結会計年度における金融事業に係る金融費用は1兆1,823億円と、前連結会計年度に比べて1,994億円 (14.4%) の減少となりました。この減少は、主に残価損失関連費用が減少したことおよび市場金利の低下等により資金調達コストが減少したことによるものです。
・販売費及び一般管理費
当連結会計年度の販売費及び一般管理費は2兆6,346億円と、前連結会計年度に比べて3,473億円 (11.6%) の減少となりました。この減少は、主に連結子会社の減少の影響、広告宣伝費の減少および為替換算レート変動の影響によるものです。
当連結会計年度における営業利益は2兆1,977億円と、前連結会計年度に比べて2,014億円 (8.4%) の減益となりました。この減益は、為替変動の影響2,550億円および販売面での影響2,100億円によるものですが、原価改善の努力1,500億円および諸経費の増減・低減努力700億円などにより一部相殺されています。
上記の営業面の努力および販売面での影響は、車両販売台数および販売構成の変化ならびに販売諸費用などを含んでいます。その他は、金利スワップ取引などの時価評価による評価損益などを含んでいます。
また、為替変動の影響の減益要因は、主に輸出入等の外貨取引による影響2,100億円によるものです。
当連結会計年度における営業利益 (セグメント間の利益控除前) は前連結会計年度に比べて、日本では4,360億円 (27.5%) 、欧州では358億円 (24.9%) 、その他の地域では241億円 (28.8%) の減益となり、北米では1,481億円 (58.5%)、アジアでは723億円 (19.9%) の増益となりました。
各地域における営業利益の状況は次のとおりです。
・日本
・北米
・欧州
・アジア
当連結会計年度における持分法による投資損益は3,510億円と、前連結会計年度に比べて407億円 (13.1%) の増益となりました。この増益は、主に持分法適用会社の親会社の所有者に帰属する当期利益の増益によるものです。
当連結会計年度におけるその他の金融収益は4,352億円と、前連結会計年度に比べて1,293億円 (42.3%) の増益となりました。この増益は、主に有価証券評価益によるものです。
当連結会計年度におけるその他の金融費用は475億円と、前連結会計年度に比べて3億円 (0.8%) の増加となりました。
当連結会計年度における為替差損益<純額>は151億円と、前連結会計年度に比べて1,097億円の増益となりました。為替差損益は、外国通貨建て取引によって生じた外貨建ての資産および負債を、取引時の為替相場で換算した価額と、先物為替契約を利用して行う決済を含め、同会計年度における決済金額または決算時の為替相場で換算した価額との差額を示すものです。為替差損益<純額>の増益1,097億円は、主に前連結会計年度の貸付金において貸付時の為替相場に比べて満期時の為替相場が円高に推移したことにより、為替差損を計上したことによるものです。
当連結会計年度におけるその他<純額>は192億円の損失と、前連結会計年度に比べて613億円の増益となりました。
当連結会計年度における法人所得税費用は6,499億円と、前連結会計年度に比べて318億円 (4.7%) の減少となりました。これは、主に税引前利益に占める、法定税率が低い海外子会社の割合が大きくなったことによるもので、当連結会計年度における平均実際負担税率は22.2%となりました。
当連結会計年度における非支配持分に帰属する当期利益は371億円と、前連結会計年度に比べて378億円 (50.5%)の減益となりました。この減益は、主に連結子会社の当期利益の減益によるものです。
当連結会計年度の親会社の所有者に帰属する当期利益は2兆2,452億円と、前連結会計年度に比べて2,091億円 (10.3%) の増益となりました。
当連結会計年度におけるその他の包括利益 (税効果考慮後) は1兆124億円と、前連結会計年度に比べて1兆5,211億円利益が増加しました。これは、主に米ドルやユーロに対する為替レートが円安に進んだことにより、在外営業活動体の為替換算差額が前連結会計年度の3,620億円の損失に対し、当連結会計年度は4,036億円の利益となったこと、および主に株価が変動したことにより、その他の包括利益を通じて公正価値で測定する金融資産の公正価値変動が前連結会計年度の1,304億円の損失に対し、当連結会計年度は3,039億円の利益となったこと、ならびに主に制度資産の公正価値が変動したことにより、確定給付制度の再測定が前連結会計年度の433億円の損失から当連結会計年度は2,162億円の利益となったことによるものです。
以下は、トヨタの事業別セグメントの状況に関する説明です。記載された数値は、セグメント間の営業収益控除前です。
・自動車事業セグメント
自動車事業の営業収益は、トヨタの営業収益のうち最も高い割合を占めます。当連結会計年度における自動車事業セグメントの営業収益は24兆6,515億円と、前連結会計年度に比べて2兆1,481億円 (8.0%) の減収となりました。この減収は、主に車両販売台数および販売構成の変化による影響2兆800億円や、為替変動の影響5,600億円によるものです。
当連結会計年度における自動車事業セグメントの営業利益は1兆6,071億円と、前連結会計年度に比べて4,059億円 (20.2%)の減益となりました。この営業利益の減益は、主に販売面での影響3,750億円および為替変動の影響2,550億円によるものですが、原価改善の努力1,500億円および諸経費の増減・低減努力700億円などにより一部相殺されています。
・金融事業セグメント
当連結会計年度における金融事業セグメントの営業収益は2兆1,622億円と、前連結会計年度に比べて309億円 (1.4%) の減収となりました。この減収は、主に為替変動の影響によるものです。
当連結会計年度における金融事業セグメントの営業利益は4,955億円と、前連結会計年度に比べて2,118億円(74.7%)の増益となりました。この営業利益の増益は、販売金融子会社において、貸倒関連費用および残価損失関連費用が減少したことならびに金利スワップ取引などの時価評価による評価益が計上されたことなどによるものです。
・その他の事業セグメント
当連結会計年度におけるその他の事業セグメントの営業収益は1兆523億円と、前連結会計年度に比べて4,525億円 (30.1%) の減収となりました。これは主に、2020年1月にトヨタホームおよびミサワホームが当社の連結子会社ではなくなったことによるものです。
当連結会計年度におけるその他の事業セグメントの営業利益は853億円と、前連結会計年度に比べて180億円 (17.4%)の減益となりました。なお、トヨタホームおよびミサワホームが当社の連結子会社ではなくなったことによる影響が含まれています。
トヨタは従来、設備投資および研究開発活動のための資金を、主に営業活動から得た現金により調達してきました。
2022年3月31日に終了する連結会計年度については、トヨタは設備投資および研究開発活動のための十分な資金を、主に手元の現金及び現金同等物、営業活動から得た現金、および社債・借入金等の資金調達で充当する予定です。トヨタはこれらの資金を、従来の設備の維持更新・新製品導入へ効率的に投資しつつ、新たなモビリティ社会の実現に向け、競争力強化・将来の成長に資する分野に重点を置いて投資する予定です。2019年4月1日から2021年3月31日までに行われた重要な設備投資および処分に関する情報ならびに現在進行中の重要な設備投資および処分に関する情報は、「第3 設備の状況」を参照ください。
顧客や販売店に対する融資プログラムおよびリース・プログラムで必要となる資金について、トヨタは営業活動から得た現金と販売金融子会社の借入債務によりまかなっています。トヨタは、金融子会社のネットワークを拡大することにより、世界中の現地市場で資金を調達する能力を向上させるよう努めています。
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度の2兆3,984億円の資金の増加に対し、2兆7,271億円の資金の増加となり、3,286億円増加しました。
この増加は、主に未払いの営業債務が、当第4四半期連結会計期間 (2021年3月31日に終了した3ヶ月間) における仕入増加の影響により増加した結果、資金が5,131億円増加したことなどによるものですが、未収の営業債権が、当第4四半期連結会計期間 (2021年3月31日に終了した3ヶ月間) における売上増加の影響などにより増加した結果、資金が2,525億円減少したことにより、一部相殺されています。
当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度の2兆1,246億円の資金の減少に対し、4兆6,841億円の資金の減少となり、2兆5,595億円減少しました。この減少は、主に新型コロナウイルスの影響長期化リスクを見据えた借入の実施により定期預金が1兆9,883億円増加したことによるものです。
当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度の3,628億円の資金の増加に対し、2兆7,391億円の資金の増加となり、2兆3,763億円増加しました。この増加は、主に長期有利子負債による資金調達が3兆9,656億円増加したことによるものです。
当連結会計年度における資本的支出 (賃貸資産を含む) は、前連結会計年度の3兆5,824億円から3兆6,096億円と前年度並みになりました。
2022年3月31日に終了する連結会計年度において、賃貸および賃借資産を除く設備投資額は約1兆3,500億円となる予定です。
現金及び現金同等物は、2021年3月31日現在で5兆1,008億円でした。現金及び現金同等物の大部分は円建てまたは米ドル建てです。
トヨタは、現金及び現金同等物、定期預金、公社債および信託ファンドへの投資を総資金量と定義しており、当連結会計年度において総資金量は、3兆5,837億円 (33.7%) 増加し、14兆2,122億円となりました。
当連結会計年度における営業債権及びその他の債権は、3,103億円 (11.7%) 増加し、 2兆9,587億円となりました。これは主に、当第4四半期連結会計期間 (2021年3月31日に終了した3ヶ月間) における売上増加の影響によるものです。
当連結会計年度における棚卸資産は、3,541億円 (14.0%) 増加し、2兆8,880億円となりました。これは主に、貴金属の市況上昇に伴う単価上昇によるものです。
当連結会計年度における金融事業に係る債権合計は、2兆1,663億円 (12.7%) 増加し、19兆2,057億円となりました。これは主に、為替変動の影響によるものです。2021年3月31日現在における金融債権の地域別内訳は、北米54.6%、アジア13.5%、欧州13.2%、日本8.3%、その他の地域10.4%でした。
当連結会計年度におけるその他の金融資産合計は、3兆2,542億円 (32.4%) 増加しました。これは主に、定期預金等の増加によるものです。
当連結会計年度における有形固定資産は、8,771億円 (8.3%) 増加しました。これは主に、設備投資によるものです。
当連結会計年度における営業債務及びその他の債務は、5,479億円 (15.7%) 増加しました。これは主に、当第4四半期連結会計期間 (2021年3月31日に終了した3ヶ月間) における生産台数増加によるものです。
当連結会計年度における未払法人所得税は、1,386億円 (65.3%) 増加しました。これは主に、昨年度の米国税制改正に伴う法人所得税費用の減少などによるものです。
当連結会計年度における有利子負債合計は、4兆3,186億円 (20.2%) 増加しました。トヨタの短期借入債務は、加重平均利率1.37%の借入金と、加重平均利率0.16%のコマーシャル・ペーパーにより構成されています。当連結会計年度における短期借入債務は、前連結会計年度に比べて9,555億円 (18.0%) 減少し、4兆3,398億円となりました。トヨタの長期借入債務は、加重平均利率が1.25%から6.34%、返済期限が2021年から2048年の無担保の借入金、担保付きの借入金、ミディアム・ターム・ノート、無担保普通社債、担保付普通社債などにより構成されています。当連結会計年度の1年以内に返済予定の長期借入債務は3兆161億円 (66.0%) 増加し、7兆5,843億円となり、返済期限が1年超の長期借入債務は2兆4,642億円 (23.1%) 増加し、13兆1,338億円となりました。借入債務合計の増加は、主に新型コロナウイルスの影響長期化リスクを見据えた借入の実施によるものです。2021年3月31日現在で、長期借入債務の約49%は米ドル建て、約16%は円建て、約12%はユーロ建て、約6%は豪ドル建て、約3%は加ドル建て、約14%はその他の通貨によるものです。トヨタは、金利スワップを利用することにより固定金利のエクスポージャーをヘッジしています。トヨタの借入必要額に重要な季節的変動はありません。
2020年3月31日現在におけるトヨタの親会社の所有者に帰属する持分合計に対する有利子負債比率は、103.5%でしたが、2021年3月31日現在では109.6%となりました。
トヨタの短期および長期借入債務は、2021年5月31日現在、スタンダード・アンド・プアーズ (S&P) 、ムーディーズ (Moody's) および格付投資情報センター (R&I) により、次のとおり格付けされています。なお、信用格付けは株式の購入、売却もしくは保有を推奨するものではなく、何時においても撤回もしくは修正され得ます。各格付けはその他の格付けとは個別に評価されるべきです。
当連結会計年度における確定給付負債(資産)の純額は、国内および海外で、それぞれ2,829億円および3,403億円と、前連結会計年度に比べて、国内は2,566億円 (47.6%)減少し、海外は14億円(0.4%)の増加となりました。確定給付負債(資産)の純額は、トヨタによる将来の現金拠出または対象従業員に対するそれぞれの退職日における支払いにより解消されます。国内においては、主に株価の上昇に伴う制度資産の増加により、確定給付負債(資産)の純額は減少しました。詳細については、連結財務諸表注記24を参照ください。
トヨタの財務方針は、すべてのエクスポージャーの管理体制を維持し、相手先に対する厳格な信用基準を厳守し、市場のエクスポージャーを積極的にモニターすることです。トヨタは、トヨタファイナンシャルサービス㈱に金融ビジネスを集中させ、同社を通じて金融ビジネスのグローバルな効率化を目指しています。
財務戦略の主要な要素は、短期的な収益の変動に左右されず効率的に研究開発活動、設備投資および金融事業に投資できるような、安定した財務基盤を維持することです。トヨタは、現在必要とされる資金水準を十分満たす流動性を保持していると考えており、また、高い信用格付けを維持することにより、引き続き多額の資金を比較的安いコストで外部から調達することができると考えています。高い格付けを維持する能力は、数多くの要因に左右され、その中にはトヨタがコントロールできないものも含まれています。これらの要因には、日本およびトヨタが事業を行うその他の主要な市場の全体的な景気ならびにトヨタの事業戦略を成功させることができるかなどが含まれています。
トヨタは金融事業のための資金調達の一つの方法として特別目的事業体を通じた証券化プログラムを利用しています。これらの証券化取引は、トヨタが第一受益者であるものとして連結しており、当連結会計年度におけるオフバランス化される取引に重要なものはありません。
トヨタは金融事業の一環としてクレジットカードを発行しています。トヨタは、クレジットカード事業の慣習に従い、カード会員に対する貸付の制度を有しています。貸出はお客様ごとに信用状態の調査を実施した結果設定した限度額の範囲内で、お客様の要求により実行されます。カード会員に対する貸付金には保証は付されませんが、貸倒損失の発生を最小にするため、また適切な貸出限度額を設定するために、トヨタは、提携関係にある金融機関からの財務情報の分析を含むリスク管理方針により与信管理を実施するとともに、定期的に貸出限度額の見直しを行っています。2021年3月31日現在のカード会員に対する貸出未実行残高は1,868億円です。
トヨタは金融事業の一環として販売店に対する融資の制度を有しています。貸付は買収、設備の改装、不動産の購入、運転資金の確保のために行われます。これらの貸付金については、通常担保権が設定されており、販売店の不動産、車両在庫、その他販売店の資産等、場合に応じて適切と考えられる物件に対して設定しています。さらに慎重な対応が必要な場合には販売店が指名した個人による保証または販売店グループが指名した法人による保証を付しています。貸付金は通常担保または保証が付されていますが、担保または保証の価値がトヨタのエクスポージャーを十分に補うことができていない可能性があります。トヨタは融資制度契約を締結することによって生じるリスクに従って融資制度を評価しています。トヨタの金融事業は、販売店グループと呼ばれる複数のフランチャイズ系列に対しても融資を行っており、しばしば貸出組合に参加することでも融資を行っています。こうした融資は、融資先の卸売車両の購入、買収、設備の改装、不動産の購入、運転資金の確保等を目的とするものです。2021年3月31日現在の販売店に対する貸出未実行残高は3兆6,554億円です。
トヨタは、トヨタの製品販売にあたり、販売店と顧客が締結した割賦契約について、販売店の要請に応じ顧客の割賦債務の支払いに関し保証を行っています。保証期間は2021年3月31日現在において1ヶ月から8年に亘っており、これは割賦債務の弁済期間と一致するよう設定されていますが、一般的に、製品の利用可能期間よりも短い期間となっています。顧客が必要な支払いを行わない場合には、トヨタに保証債務を履行する責任が発生します。
将来の潜在的保証支払額は、2021年3月31日現在、最大で3兆7,103億円です。トヨタは、保証債務の履行による損失の発生に備え未払費用を計上しており、2021年3月31日現在の残高は、184億円です。保証債務を履行した場合、トヨタは、保証の対象となった主たる債務を負っている顧客から保証支払額を回収する権利を有します。
トヨタの非デリバティブ金融負債およびデリバティブ金融負債の残存契約満期期間ごとの金額に関しては、連結財務諸表注記20を参照ください。また、トヨタはその通常業務の一環として、一定の原材料、部品およびサービスの購入に関して、仕入先と長期契約を結ぶ場合があります。これらの契約は、一定数量または最低数量の購入を規定している場合があります。トヨタはかかる原材料またはサービスの安定供給を確保するためにこれらの契約を締結しています。
次の表は、2021年3月31日現在のトヨタの契約上の債務および商業上の契約債務を要約したものです。
* 長期借入債務の金額は、将来の支払元本を表しています。
また、トヨタは2022年3月31日に終了する連結会計年度において、退職後給付制度に対し、国内および海外で、それぞれ39,392百万円および16,604百万円を拠出する予定です。
詳細については、連結財務諸表注記33を参照ください。
⑩会計基準の選択に関する基本的な考え方
当社は、資本市場における財務情報の国際的な比較可能性の向上等を目的として、2021年3月期第1四半期よりIFRSを任意適用しています。
IFRSに準拠した連結財務諸表を作成するにあたり、会計方針の適用、資産・負債およびトヨタの連結財務諸表に重要な影響を与える可能性のある会計上の見積りおよび仮定に関する情報は、次のとおりです。
・品質保証に係る負債
・金融事業に係る金融損失引当金
・非金融資産の減損
・退職給付に係る負債
・公正価値測定
・繰延税金資産の回収可能性
詳細については、連結財務諸表注記4を参照ください。
当社は、「クリーンで安全な商品の提供を使命とし、あらゆる企業活動を通じて、住みよい地球と豊かな社会づくりに取り組む」、「様々な分野での最先端技術の研究と開発に努め、世界中のお客様のご要望にお応えする魅力あふれる商品・サービスを提供する」の基本理念のもと、多様化・高度化する市場ニーズを的確にとらえた、高品質・低コストのより魅力ある商品を提供するため、積極的な研究開発活動を行っています。
トヨタの研究開発は、日本においては、当社を中心に、ダイハツ工業㈱、日野自動車㈱、トヨタ車体㈱、トヨタ自動車東日本㈱、㈱豊田中央研究所、ウーブン プラネット ホールディングス㈱などの関係各社との密接な連携のもとで推進されています。
さらに、海外各地域のお客様のニーズに的確にお応えしたクルマづくりのために、グローバルな開発体制を構築しています。主な拠点として、北米地域にトヨタ モーター エンジニアリング アンド マニュファクチャリング ノース アメリカ㈱のテクニカルセンター、キャルティ デザイン リサーチ㈱、トヨタ リサーチ インスティテュート㈱、欧州地域にトヨタ モーター ヨーロッパ㈱のテクニカルセンター、トヨタ ヨーロッパ デザイン ディベロップメント㈲、アジア地域にトヨタ ダイハツ エンジニアリング アンド マニュファクチャリング㈱のテクニカルセンター、トヨタ自動車研究開発センター (中国) ㈲、一汽トヨタ技術開発㈲、広汽トヨタ自動車㈲研究開発センターがあります。
当連結会計年度に発生したトヨタの研究開発支出は
なお、トヨタでは研究開発支出の一部について、無形資産に計上しています。連結損益計算書に計上している研究開発費の詳細については、連結財務諸表注記28を参照ください。
当連結会計年度における事業別セグメントごとの活動状況および研究開発支出は次のとおりです。
トヨタは、走りの楽しさや快適性などクルマがもたらす様々な恩恵による人々の心の豊かさの向上と、環境負荷や交通事故等のクルマのネガティブな面の最小化を、同時に高いレベルで実現していくことを商品・技術開発のビジョンとして掲げています。
当連結会計年度には、新型コロナウイルスの影響が前期から続く中、予定通り多数のモデルを発売しました。新時代のSUVを目指した新型「ハリアー」は、実用性や数値一辺倒ではない、見て乗って走り出した瞬間に心が動く感性品質を重視しました。新型「MIRAI」はゼロエミッションでありながら、感性に訴えるデザイン、唯一無二の走り、一歩先を行くあふれる先進性、安心の航続距離を備えるコンセプトで、将来の水素社会実現に向けた、新たな出発点となるクルマです。レクサスブランドでは、レクサスの電気自動車 (BEV) ならではの上質な走りと静粛性、ハイブリッドで培った電動化技術の高い信頼性と利便性、「UX」譲りの個性的なデザインや高い機能性を実現した「UX300e」を発売しました。また、「GRヤリス」はモータースポーツ用の車両を市販化するという逆転の発想で開発したトヨタ初のモデルです。開発初期からドライバーモリゾウと社外プロドライバーが評価し、東京オートサロン2020で披露した後も、サーキットで何度も評価と改善のサイクルを繰り返し、発売に至りました。リーマンショック以降に強化した原価の造り込みやもっといいクルマづくりの成果として、コンパクトカー「ヤリス」は、乗って楽しい点やハイブリッド車 (HEV) としての燃費性能が評価され、歴史が深く、クルマに対しての想いが強い欧州でカー・オブ・ザ・イヤーを受賞しました。
カーボンニュートラルへの対応については、クルマの電動化の推進が不可欠です。当社グループは、国、地域ごとのエネルギー事情やインフラ整備の状況、クルマの使い方の違いなど、お客様のニーズに合わせて、ハイブリッド車 (HEV) 、プラグインハイブリッド車 (PHEV) 、電気自動車 (BEV) 、燃料電池車 (FCEV) という様々な選択肢を用意し、より電動車を普及させることで、CO2削減に貢献します。初代「プリウス」の投入以降、HEVという1つの技術で終わらせることなく、電動車のフルラインアップに取り組み、今やグローバルでHEV45車種、PHEV4車種、BEV4車種、FCEV2車種 (2020年末時点) と幅広く展開しています。電動車の主力であるHEVは、トヨタハイブリッドシステムを高性能化するとともに、ハイパワー型、簡易型など多様なタイプを開発し、様々なニーズに合わせて商品ラインアップを拡充していきます。BEVでは、新たなビジネスモデルの構築を目指し、日本で2人乗りタイプの超小型BEV「C+pod」を法人ユーザーや自治体などを対象に販売を開始し、BEVならではの新たなサービスを実証的に提供していきます。中国では、トヨタブランドとして初の「C-HR EV」「IZOA EV」の販売を開始しました。今後、新型BEV「TOYOTA bZシリーズ」7車種を含む15車種を2025年までにグローバルに投入する計画です。FCEVを含む水素活用の促進に向けて、大幅に性能が向上した「MIRAI」の販売や、優れた環境性能を持つと同時に「クルマを操る楽しさ」を実現する可能性を秘めた水素エンジンの技術開発に加え、FCシステムをパッケージ化したモジュールを開発し、多くのFC製品事業者と協力して、トラック、バス、鉄道、船舶などのモビリティや定置式発電機など、FC技術の普及を進めていきます。また、水素バリューチェーン推進協議会を設立するなど、水素をつくる、運ぶ、使う仲間づくりを進めています。電動車の普及を進めるとともに、製造、物流、廃却、リサイクルまでのライフサイクル全体で、カーボンニュートラル社会の実現に向けて取り組んでいきます。
安全技術の開発については、交通事故死傷者ゼロの実現と、安全、安心でスムーズな移動をすべての方に提供することを目指し、自動運転技術の開発、普及に取り組んでいます。開発理念である「Mobility Teammate Concept (モビリティ・チームメイト・コンセプト) 」は、人とクルマが気持ちの通った仲間のような関係を築くというものです。新型「LS」、新型「MIRAI」では、最新の高度運転支援技術「Lexus Teammate」「Toyota Teammate」の新機能「Advanced Drive」を搭載、高速道路、自動車専用道路での運転を支援します。より多くのお客様に安全技術を提供するため、最新の予防安全パッケージ「Toyota Safety Sense/Lexus Safety System+」の新型車への採用やペダル踏み間違い事故のさらなる低減を狙いとした「急アクセル時加速抑制」機能を新型車および既販車に採用しています。
新しい技術やサービスなどをタイムリーにお客様に提供するため、従来のハードウェア主体の車両開発から、ソフトウェアから開発を進める「ソフトウェア・ファースト」の手法に見直していきます。本年4月発売の「Advanced Drive」を搭載した新型「LS」、新型「MIRAI」は、「ソフトウェア・ファースト」の実現に向けた第一歩です。お客様が商品を購入した後も、ソフトウェアのアップデートにより、安全性を向上させ、新たな機能の追加などを実施します。そのベースとなるハードウェアとして、認識、演算処理、信頼性 (冗長性) などにおいて高性能、かつ最先端の製品をクルマに装備します。これらにより、お客様により高い付加価値を提供していきます。新しい開発の基盤となるソフトウェア・プラットフォーム「Arene (アリーン) 」により、開発スピードの加速や安全の検証、様々なアプリケーションへの適用、多くのパートナーとの協業などが可能になります。また、「Automated Mapping Platform (自動地図生成プラットフォーム) 」では、クラウド上に情報を集め、正確かつリアルタイムに更新される地図を世界規模で作成します。「Mobility to Love, Safety to Live」のもと、すべての人に安全・安心、移動の自由をお届けすることを目標に開発を推進していきます。
当事業に係る研究開発支出は
基礎研究分野においては、㈱豊田中央研究所を中心として、エネルギー・環境、機械、情報・通信、材料などの幅広い分野における研究活動に取り組んでいます。
その他の事業に係る研究開発支出は