第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

本項においては、将来に関する事項が含まれていますが、当該事項は2022年3月31日現在において判断したものです。

 

(1)会社の経営の基本方針

  トヨタは経営の基本方針を「トヨタ基本理念」として掲げており、その実現に向けた努力が、企業価値の増大につながるものと考えています。その内容は次のとおりです。

1. 内外の法およびその精神を遵守し、オープンでフェアな企業活動を通じて、国際社会から信頼される企業市民をめざす

2. 各国、各地域の文化、慣習を尊重し、地域に根ざした企業活動を通じて、経済・社会の発展に貢献する

3. クリーンで安全な商品の提供を使命とし、あらゆる企業活動を通じて、住みよい地球と豊かな社会づくりに取り組む

4. 様々な分野での最先端技術の研究と開発に努め、世界中のお客様のご要望にお応えする魅力あふれる商品・サービスを提供する

5. 労使相互信頼・責任を基本に、個人の創造力とチームワークの強みを最大限に高める企業風土をつくる

6. グローバルで革新的な経営により、社会との調和ある成長をめざす

7. 開かれた取引関係を基本に、互いに研究と創造に努め、長期安定的な成長と共存共栄を実現する

 

(2)トヨタフィロソフィー

トヨタはモビリティカンパニーへの変革を進めるために、改めて歩んできた道を振り返り、未来への道標となる「トヨタフィロソフィー」をまとめました。

トヨタはモビリティカンパニーとして移動にまつわる課題に取り組むことで、人や企業、コミュニティの可能性を広げ、「幸せを量産」することを使命としています。そのために、モノづくりへの徹底したこだわりに加えて、人と社会に対するイマジネーションを大切にし、様々なパートナーと共に、唯一無二の価値を生み出してまいります。

 

「トヨタフィロソフィー」

 


MISSION

わたしたちは、幸せを量産する。

技術でつかみとった未来の便利と幸福を

手の届く形であらゆる人に還元する。

VISION

可動性(モビリティ)を社会の可能性に変える。

人、企業、自治体、コミュニティが

できることをふやし、人類と地球の

持続可能な共生を実現する。

VALUE

トヨタウェイ

ソフト、ハード、パートナーの

3つの強みを融合し、唯一無二の

価値を生み出す。

 

 

 

(3)会社の対処すべき課題

自動車産業が100年に一度の大変革期を迎え、正解がわからない時代に、私たちは「自分以外の誰かのために」という創業から受け継いだ精神で「幸せの量産」に向けて、ステークホルダーの皆様とともに行動してまいります。「トヨタらしさ」を大切にする経営は、「誰ひとり取り残さない」という国際社会が目指しているSDGsに持続的に取り組むことに繋がります。私たちは、「もっといいクルマづくり」による商品を軸にした経営や、カーボンニュートラル実現への取り組み、ソフトウェアやコネクティッドによる人々に必要とされる技術などへの対応を加速させています。特に強化していく分野への取り組みについて紹介します。

 

①商品を軸にした経営

私たちは、お客様が求める様々なクルマを提供してきました。クルマづくりで重視しているのは、一つは技術・技能の伝承、人材育成の現場である「スポーツカー」です。私たちがモータースポーツに取り組むのは、創業者・豊田喜一郎の「自動車製造事業の発展にレースは欠かせない」との言葉まで遡ります。1960年代の「パブリカスポーツ」「トヨタ・スポーツ800」「2000GT」、1980年代の「スープラ」「MR2」「セリカ」「カローラレビン」「スプリンタートレノ」など、20年ごとに当時の技術力を結集したスポーツカーをつくってまいりました。2010年代には「LFA」を開発し、現在の基盤を築くことができました。モータースポーツ用の車両を市販化するという逆転の発想で開発した「GRヤリス」は、開発初期からプロドライバーによる評価と改善のサイクルを繰り返し、より運転を楽しめるクルマへ進化しました。

もう一つは、お客様に愛され、その暮らしを支え、時代のニーズにあわせて変化し続ける「ロングセラー」の商品です。「ヴィッツ」の車名をグローバルに定着していた「ヤリス」に統一し、「GRヤリス」「ヤリスクロス」とラインアップを拡充、「カローラ」は「カローラスポーツ」「カローラクロス」を追加しました。ロングセラーのブランド力を生かし、時代のニーズにあわせたラインアップを構築する戦略を進めます。

商品を軸にした経営のために、社長の豊田は就任以降、「もっといいクルマづくり」によって、「走る」・「曲がる」・「止まる」に関わる基本部分で高い性能を実現した「TNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)」、フルラインアップのそれぞれのクルマについて情熱と責任をもって考えるための「カンパニー制」、開発されたクルマがお客様に満足いただけるかを評価する最終責任者である「マスタードライバー」の3本柱で変革を進めています。これからも、お客様に喜んでいただけるいいクルマをつくることで、「町いちばん」を目指していきます。

 

 

②カーボンニュートラル実現に向けた取り組み

私たちは、1997年に世界初の量産ハイブリッド車「プリウス」を発売以来、累計2,000万台を超える電動車を販売し、1.6億トンを超えるCO排出量を削減しました。カーボンニュートラル実現に向けて、地域によって異なるエネルギー事情を考慮し世界各国・地域の状況に対応した多様な選択肢を提供することで、お客様の需要動向にすばやく対応していきます。

電動化戦略は、BEV、HEV、PHEV、燃料電池車 (FCEV) の全方位で進めます。BEVは、2030年までに30車種を展開し、グローバルで各セグメントにおいてフルラインアップを揃え、年間350万台の販売をめざすことを発表しました。電動化の重要部品である電池においては、お客様に安心して使っていただくため、安全・長寿命・高品質・良品廉価・高性能という5つの要素を高いレベルで調和させることを重視しています。車両と電池の一体開発でコスト低減に取り組みます。

内燃機関技術を活かした取り組みも進めています。水素エンジンは、長年培ってきた技術を活かしつつ、カーボンニュートラル実現にも貢献できる技術です。水素エンジンを搭載した「カローラ」は、開発のリードタイムが短いモータースポーツの現場で、評価と改善を繰り返しています。クルマの開発だけでなく、水素を「つくる」・「はこぶ」・「つかう」選択肢を広げる必要もあります。産業を越えて広がった意志と情熱を持つ多くの仲間と、スーパー耐久シリーズ参戦を通じて、ともに挑戦を続けています。

生産分野においては、2035年にグローバルで工場のカーボンニュートラル実現をめざすことを発表しました。省エネルギーの徹底に加え、再生可能エネルギー、水素の活用によるCO排出量削減を進めています。

 

ソフトウェアとコネクティッドの取り組み

CASE(※)の時代では、クルマづくりに「電動化」「自動運転」「コネクティッド」など、新しい領域での技術開発が求められます。私たちは、クルマが情報との連携を深め、「ヒト」・「モノ」・「コト」の移動を通じてお客様へ新たな体験価値や感動を提供することを目指しています。ウーブン・アルファ㈱で開発を進めている車両開発プラットフォーム「Arene(アリーン) 」は、車両ソフトウェア開発のあり方を根本から変えていきます。ソフトウェアをハードウェアから独立させて開発できるようにし、トヨタが培ってきたハードウェアの強みを活かしながら、安全で高品質な最新のソフトウェア開発を実現します。さらに、アプリケーション開発も容易になり、効率の良いプログラミングが可能になります。

クルマの価値のなかでソフトウェアが占める部分は増大しており、トヨタの将来にとって重要な部分を自ら手掛けることで競争力を高めるとともに、パートナー企業と連携し、量産化に向けて取り組みを進めています。コネクティッドカーやつながる技術はさまざまな領域へと応用され、つながる先もヒト、クルマ、街、社会へと広がっていきます。

CASEとは、Connected (コネクティッド) 、Autonomous/Automated (自動化) 、Shared (シェアリング) 、Electric (電動化) の頭文字をとった略称

 

商用領域の取り組み

CASE技術は、広く普及して初めて社会への貢献につながります。商用車は経済や社会を支えるために長距離を移動し、長時間稼働するため、インフラと連携して導入を進めやすく、普及に重要な役割を果たします。いすゞ自動車㈱、日野自動車㈱が培ってきた商用事業の基盤、スズキ㈱、ダイハツ工業㈱の良品廉価なモノづくりと、トヨタのCASE技術を組み合わせることで、社会実装・普及を加速し、社会課題の解決やカーボンニュートラル実現に貢献するために、Commercial Japan Partnership Technologies㈱で取り組みを進めています。使い勝手の良い電動車の普及とともに、コネクティッド基盤とトヨタ生産方式(TPS)を活用することでジャスト・イン・タイム物流を実現、輸送効率向上によるCO排出量削減に貢献していきます。

 

 

⑤Woven City(ウーブン・シティ)

「Woven City」は、「ヒト中心」で、技術やサービスの開発と実証のサイクルを素早く回し、人々の暮らしを支える「ヒト」・「モノ」・「情報」のモビリティにおける新たな価値やビジネスモデルを生み出します。現実世界をデジタル空間上に再現し、シミュレーションなどを通じて開発を進めるデジタルツインを利用し、街をつくる前に、デジタル上で様々な選択肢を同時並行で試しています。一人ひとりに寄り添った幸せを生み出すために、多くの人々と共に実証実験を繰り返しながら、「今よりもっといいやり方がある」というトヨタのカイゼン手法を根付かせ、街が常に進化・改善する「未完成の街」です。パートナーと連携しながら、「移動」に加え「心を動かす(感動)」という意味を持つモビリティの意義や価値を拡大させていきます。

 

従業員との話し合い、人材育成

私たちは、自動車産業を通じ経済を発展させるべく、会社と組合の双方が手を取り合ってきました。2022年3月の話し合いでは、半導体需給のひっ迫に伴う生産の対応、カーボンニュートラル実現に向けて仕入先の皆様が直面する現実、多様化する職場での全員活躍に向けた悩みなどについて、全員参加の経営会議のような話し合いで理解を深めました。正解がわからない時代を生き抜くために、「成り行きの10年後と闘いながら迎える10年後の景色は絶対に違う」という意志によって、変化の大きい経営環境の中で行動しています。

職場の体質強化に向けて、仕事を進める実行力と、お客様や仲間など他者のために頑張ることができ、謙虚に学び、自分の力に変えられる人間力を兼ね備えた人材の育成を進めています。アスリートが一瞬に最大限のパワーを発揮するためのストイックな生活や、チームへの貢献、後進育成など、自分以外の誰かのために尽くす姿からは多くの学びを得られると考えています。

 

当社グループは、モビリティカンパニーへの変革に向け、日本の自動車産業を支える550万人の皆様や、グローバルの様々なステークホルダーの皆様とともに、着実に歩みを進めています。

 

2021年7月20日、当社および連結子会社のトヨタモビリティ東京㈱は、レクサス高輪における指定整備の一部の検査において、基準を満たす値への書き換えや、一部の検査を実施しなかった事実を公表いたしました。また、全国販売店4,852拠点の総点検を実施した結果、複数の店舗で不正が行われていたことが判明いたしました。背景には、人員・設備の不足や、車検制度への認識、風通し・風土など、様々な課題があり、販売店の現場の実態や要望を十分に把握できなかったことが、要因の一つと受け止めております。

一連の不正を、当社および販売店全体で重く受け止め、指定整備事業を正しく行うことを第一に、お客様の信頼回復と再発防止に向けて取り組みを進めてまいります。

 

また、2022年3月4日、連結子会社の日野自動車㈱は、日本市場向け車両用エンジンの排出ガスおよび燃費に関する認証申請における不正行為を確認し、公表いたしました。本件について、日野自動車㈱は特別調査委員会を設置し、事案の全容解明および真因分析、組織の在り方や開発プロセスにまで踏み込んだ再発防止策の提言を委嘱しております。できるだけ速やかに全容を解明するよう努めてまいります。

当社グループは、法令遵守は、経営の根幹と考えております。お客様の信頼回復と再発防止に万全を期すよう努めてまいります。

 

 

2 【事業等のリスク】

以下において、トヨタの事業その他のリスクについて、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項を記載しています。ただし、以下はトヨタに関するすべてのリスクを網羅したものではなく、記載されたリスク以外のリスクも存在します。かかるリスク要因のいずれによっても、投資家の判断に影響を及ぼす可能性があります。

本項においては、将来に関する事項が含まれていますが、当該事項は有価証券報告書提出日(2022年6月23日)現在において判断したものです。

 

(1)市場および事業に関するリスク

①自動車市場の競争激化

世界の自動車市場では激しい競争が繰り広げられています。トヨタは、ビジネスを展開している各々の地域で、自動車メーカーとの競争に直面しています。自動車市場における競争はさらに激化しており、厳しい状況が続いています。また、世界の自動車産業のグローバル化がさらに進むことによって、競争は今後より一層激化する可能性があり、業界再編につながる可能性もあります。競争に影響を与える要因としては、製品の品質・機能、安全性、信頼性、燃費、革新性、開発に要する期間、価格、カスタマー・サービス、自動車金融の利用条件等の点が挙げられます。競争力を維持することは、トヨタの既存および新規市場における今後の成功、販売シェアにおいて最も重要です。トヨタは、昨今の自動車市場の急激な変化に的確に対応し、今後も競争力の維持強化に向けた様々な取り組みを進めていきますが、将来優位に競争することができないリスクがあります。競争が激化した場合、自動車の販売台数の減少や販売価格の低下などが起きる可能性があり、それによりトヨタの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローが悪影響を受けるリスクがあります。

 

②自動車市場の需要変動

トヨタが参入している各市場では、今までも需要が変動してきました。各市場の状況によって、自動車の販売は左右されます。トヨタの販売は、世界各国の市場に依存しており、各市場の景気動向はトヨタにとって特に重要です。当連結会計年度においては、各国の財政・金融政策による下支えに加え、新型コロナウイルスの影響による厳しい制限が段階的に緩和されたことを受け、持ち直しに向かいました。自動車市場においては、世界的な半導体の需給ひっ迫や新型コロナウイルスの影響により、部品の供給が不足し、グローバルで生産の制約を受けざるを得ない状況になりましたが、米国、中国、日本などで底堅い需要が続き、前年より回復しました。足元では、2022年2月以降に高まった地政学的な緊張による影響が、トヨタ車に含まれる原材料や部品等の資材価格の高騰など、世界中に波及し、先行きがさらに見通しにくい状況となりました。このような需要の変化は現在でも続いており、この状況が今後どのように推移するかは不透明です。今後トヨタの想定を超えて需要の変化が継続または悪化した場合、トヨタの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローが悪影響を受ける可能性があります。また、需要は、販売・金融インセンティブ、原材料・部品等の価格、燃料価格、政府の規制(関税、輸入規制、その他の租税を含む)など、自動車の価格および自動車の購入・維持費用に直接関わる要因により、影響を受ける場合があります。需要が変動した場合、自動車の販売台数の減少や販売価格の低下などが起きる可能性があり、それによりトヨタの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローが悪影響を受けるリスクがあります。

 

 

③お客様のニーズに速やかに対応した、革新的で価格競争力のある新商品を投入する能力

製品の開発期間を短縮し、魅力あふれる新型車でお客様にご満足いただくことは、自動車メーカーにとっては成功のカギとなります。特に、品質、安全性、信頼性、サステナビリティにおいて、お客様にご満足いただくことは非常に重要です。世界経済の変化に伴い、自動車市場の構造が急激に変化している現在、お客様の価値観とニーズの急速な変化に対応した新型車を適時・適切にかつ魅力ある価格で投入することは、トヨタの成功にとってこれまで以上に重要であり、技術・商品開発から生産にいたる、トヨタの事業の様々なプロセスにおいて、そのための取り組みを進めています。しかし、トヨタが、品質、安全性、信頼性、スタイル、サステナビリティその他の性能に関するお客様の価値観とニーズを適時・適切にかつ十分にとらえることができない可能性があります。また、トヨタがお客様の価値観とニーズをとらえることができたとしても、その有する技術、知的財産、原材料や部品の調達、原価低減能力を含む製造能力またはその他生産性に関する状況により、価格競争力のある新製品を適時・適切に開発・製造できない可能性があります。また、トヨタが計画どおりに設備投資を実施し、製造能力を維持・向上できない可能性もあります。お客様のニーズに対応する製品を開発・提供できない場合、販売シェアの縮小ならびに営業収益と利益率の低下を引き起こすリスクがあります。

 

④効果的な販売・流通を実施する能力

トヨタの自動車販売の成功は、お客様のご要望を満たす流通網と販売手法に基づき効果的な販売・流通を実施する能力に依存します。トヨタはその参入している各主要市場につきお客様の価値観または地政学的な緊張関係や規制環境において、変化に効果的に対応した流通網と販売手法を展開できない場合は、営業収益および販売シェアが減少するリスクがあります。

 

⑤ブランド・イメージの維持・発展

競争の激しい自動車業界において、ブランド・イメージを維持し発展させることは非常に重要です。ブランド・イメージを維持し発展させるためには、お客様の価値観やニーズに対応した安全で高品質の製品を提供することで、お客様の信頼をさらに高めていくことが重要です。トヨタが、安全で高品質の製品を提供することができない、または、リコール等の市場処置が必要であるにも関わらず迅速な対応がなされないなどの結果、トヨタのブランド・イメージを効果的に維持し発展させることができなかった場合、自動車の販売台数の減少や販売価格の低下などが起きる可能性があり、その結果、営業収益と利益率の低下を引き起こすリスクがあります。

 

⑥仕入先への部品・原材料供給の依存

トヨタは、部品や原材料などの調達部品を世界中の複数の競合する仕入先から調達する方針を取っていますが、調達部品によっては他の仕入先への代替が難しいものもあり、特定の仕入先に依存しているものがあります。また、かかる特定の仕入先からの調達ができない場合、当該部品等の調達がより困難となり、生産面への影響を受ける可能性があります。さらに、トヨタが直接の取引先である一次仕入先を分散していたとしても、一次仕入先が部品調達を二次以降の特定の仕入先に依存していた場合、同様に部品の供給を受けられないリスクもあります。仕入先の数に関わらず、トヨタが調達部品を継続的にタイムリーかつ低コストで調達できるかどうかは、多くの要因の影響を受けますが、それら要因にはトヨタがコントロールできないものも含まれています。それらの要因の中には、仕入先が継続的に調達部品を調達し供給できるか、またトヨタが、仕入先から調達部品を競争力のある価格で供給を受けられるか等が含まれます。このような能力に悪影響を与える可能性のある状況には、地政学的な緊張や、経済制裁などの政府の行動が含まれます。特定の仕入先を失う、またはそれら仕入先から調達部品をタイムリーもしくは低コストで調達できない場合、トヨタの生産に遅延や休止またはコストの増加を引き起こす可能性があり、トヨタの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローに悪影響が及ぶ可能性があります。

 

 

⑦金融サービスにおける競争の激化

世界の金融サービス業界では激しい競争が繰り広げられています。自動車金融の競争激化は、利益率の減少を引き起こす可能性があります。この他トヨタの金融事業に影響を与える要因には、トヨタ車の販売台数の減少、中古車の価格低下による残存価値リスクの増加、貸倒率の増加および資金調達費用の増加が挙げられます。

 

⑧デジタル情報技術および情報セキュリティへの依存

トヨタは、機密データを含む電子情報を処理・送信・蓄積するため、または製造・研究開発・サプライチェーン管理・販売・会計を含む様々なビジネスプロセスや活動を管理・サポートするために、第三者によって管理されているものも含め、様々な情報技術ネットワークやシステムを利用しています。さらに、トヨタの製品にも情報サービス機能や運転支援機能など様々なデジタル情報技術が利用されています。これらのデジタル情報技術ネットワークやシステムは、安全対策が施されているものの、ハッカーによる不正アクセスやコンピュータウィルスによる攻撃、トヨタが利用するネットワークおよびシステムにアクセスできる者による不正使用・誤用、開発ベンダー・クラウド業者など関係取引先からのサービスの停止、電力供給不足を含むインフラの障害、天災などによって被害や妨害を受ける、または停止する可能性があります。特にサイバー攻撃や他の不正行為は苛烈さ、巧妙さ、頻度において脅威を増しており、そのような攻撃の標的であり続ける恐れがあります。このような事態が起きた場合、重要な業務の中断や、機密データの漏洩、トヨタ製品の情報サービス機能・運転支援機能などへの悪影響のほか、法的請求、訴訟、賠償責任、罰金の支払い義務などが発生する可能性もあります。その結果、トヨタのブランド・イメージや、トヨタの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローに悪影響を及ぼす可能性があります。さらに、トヨタの取引先やビジネスパートナーに対する同様の攻撃は、トヨタにも同様の悪影響を与える可能性があります。

 

⑨気候変動および低炭素経済への移行

気候変動リスクは、日本および世界で、社会面、規制を含む政治面での関心が高まっています。これらのリスクには、気候変動による物理的リスクや低炭素経済への移行リスクが含まれます。

気候変動の物理的リスクには、台風、洪水、竜巻など突発的な気象変化に起因する影響と、気温上昇、海面上昇、干ばつ、山火事の増加など、長期的な気象変化による影響の両方が含まれます。トヨタはBusiness Continuity Plan(BCP)を策定していますが、異常気象による大規模災害は、トヨタならびに仕入先および取引先の従業員、施設およびその他の資産に損害を与える可能性があり、トヨタの生産、販売またはその他の事業運営に悪影響を及ぼす可能性があります。大規模な災害はまた、お客様の財政状態に悪影響を及ぼし、トヨタの製品およびサービスの需要に悪影響を与える可能性があります。

低炭素経済への移行リスクとは、気候関連のリスクを軽減するための規制、技術、および市場の変化やその対応に伴うリスクです。例えば、トヨタは、気候変動に関する法律、規制、政策の変更、気候変動に対処するための技術革新、市場構造の変化を捉えた自動車産業への新規参入者などの要因により、自動車に対するお客様のニーズが変化するリスクにさらされています。お客様のニーズの変化は、トヨタが部品や原材料などの調達部品を継続的かつ競争力のある価格で調達するために、新たな供給網の確立や既存の供給網の強化が必要になるなど、付随的なリスクや課題をもたらす可能性があります。トヨタは、そのようなリスクの顕在化の結果として、またはリスク軽減やリスク対応の努力の結果として、多額の費用および支出を負担する可能性があります。また、お客様のニーズに対応する製品を開発・提供できない場合、販売シェアの縮小ならびに営業収益と利益率の低下を引き起こすリスクがあります。 

 

 

(2)金融・経済のリスク

①為替および金利変動の影響

トヨタの収益は、外国為替相場の変動に影響を受け、主として日本円、米ドル、ユーロ、ならびに豪ドル、ロシア・ルーブル、加ドルおよび英国ポンドの価格変動によって影響を受けます。トヨタの連結財務諸表は、日本円で表示されているため、換算リスクという形で為替変動の影響を受けます。また、為替相場の変動は、外国通貨で販売する製品および調達する材料に、取引リスクという形で影響を与える可能性があります。特に、米ドルに対する円高の進行は、トヨタの経営成績に悪影響を与える可能性があります。

トヨタは、為替相場および金利の変動リスクを軽減するために、現地生産を行い、先物為替予約取引や金利スワップ取引を含むデリバティブ金融商品を利用していますが、依然として為替相場と金利の変動は、トヨタの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローに悪影響を与える可能性があります。為替変動の影響およびデリバティブ金融商品の利用に関しては、「3  経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容  ①概観  d.為替の変動」および連結財務諸表注記19ならびに20を参照ください。

 

②原材料価格の上昇

鉄鋼、貴金属、非鉄金属(アルミ等)、樹脂関連部品など、トヨタおよびトヨタの仕入先が製造に使用する原材料価格の上昇は、部品代や製造コストの上昇につながり、これらのコストを製品の販売価格に十分に転嫁できない、あるいは仕入先がこれらのコストを十分に吸収できない結果、トヨタの将来の収益性に悪影響を与える可能性があります。資材価格の高騰は、2022年3月期の業績に悪影響を及ぼしており、2023年3月期の業績においてさらに大きな悪影響を与えると予想しています。

 

③金融市場の低迷

世界経済が急激に悪化した場合、多くの金融機関や投資家は、自らの財務体力に見合った水準で金融市場に資金を供給することが難しい状況に陥る可能性があります。その結果、企業がその信用力に見合った条件で資金調達をすることが困難になる可能性があります。必要に応じて資金を適切な条件で調達できない場合、トヨタの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローが悪影響を受ける可能性があります。

 

 

(3)政治・規制・法的手続・災害等に関するイベント性のリスク

①自動車産業に適用される政府の規制

世界の自動車産業は、自動車の安全性や排ガス、燃費、騒音、公害をはじめとする環境問題などに関する様々な法律と政府の規制の適用を受けています。特に、安全面では、法律や政府の規制に適合しない、またはその恐れのある自動車は、リコール等の市場処置の実施が求められます。さらに、トヨタはお客様の安心感の観点から、法律や政府の規制への適合性に関わらず、自主的にリコール等の市場処置を実施する可能性もあります。トヨタが市場に投入した車両にリコール等の市場処置が必要となった場合(リコール等に関係する部品はトヨタが第三者から調達したものも含む)、製品のリコールや無償のサービスキャンペーンに係る費用を含めた様々な費用が発生する可能性があります。また、多くの政府は、価格管理規制や為替管理規制を制定しています。トヨタは、国際貿易の動向や政策の変化に関する費用を含むこれらの規制に適合するために費用を負担し、今後も法令遵守のために費用が発生する可能性があります。また、新しい法律または現行法の改正により、トヨタの今後の費用負担が増えるリスクがあります。このように、市場処置を講じたり法律や政府の規制へ適合するために多額の費用が発生した場合、トヨタの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローに悪影響を与える可能性があります。

 

②法的手続

トヨタは、製造物責任、知的所有権の侵害等、様々な法的手続の当事者となる可能性があります。また、株主との間で法的手続の当事者となったり、行政手続または当局の調査の対象となる可能性もあります。現在トヨタは、行政手続および当局の調査を含む、複数の係属中の法的手続の当事者となっています。トヨタが当事者となる法的手続で不利な判断がなされた場合、トヨタの評判、ブランド・イメージ、財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローに悪影響が及ぶリスクがあります。政府の規制等の法的手続の状況については連結財務諸表注記30を参照ください。

 

③自然災害、感染症、政治動乱、経済の不安定な局面、燃料供給の不足、インフラの障害、戦争、テロまたはストライキの発生

トヨタは、全世界で事業を展開することに関連して、様々なイベントリスクにさらされています。これらのリスクとは、自然災害、感染症の発生・蔓延、政治・経済の不安定な局面、燃料供給の不足、天災などによる電力・交通機能・ガス・水道・通信等のインフラの障害、戦争、テロ、ストライキ、操業の中断などが挙げられます。トヨタが製品を製造するための材料・部品・資材などを調達し、またはトヨタの製品が製造・流通・販売される主な市場において、これらの事態が生じた場合、トヨタの事業運営に障害または遅延をきたす可能性があります。トヨタの事業運営において、重大または長期間の障害ならびに遅延が発生した場合、トヨタの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローに悪影響が及ぶリスクがあります。

 

(4)新型コロナウイルスの感染拡大による影響

新型コロナウイルスの世界的な感染拡大およびこれに対する政府やその他のステークホルダーの対応により、トヨタは様々な面で悪影響を受けています。例えば、政府からの要請や自動車需要の落ち込みが見込まれることなどの理由により、トヨタは国内および海外の一部の工場で、自動車および部品の生産を一時的に停止しているか、または今後そのような措置を講じることがあります。新型コロナウイルスの影響は、トヨタのディーラーおよび販売代理店のほか、一部の仕入先および取引先の事業にも及んでおり、今後も継続することが見込まれます。また、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大および関連する問題は、様々な業界のビジネスや消費者にも悪影響を及ぼしており、これらはトヨタの自動車および金融サービスの需要にネガティブな影響を与えています。

新型コロナウイルスの収束時期や将来的な影響は依然として不透明であり、前述の影響やそれ以外の本書に記載されていない影響、および新型コロナウイルスの最終的な影響については予測しがたく、トヨタの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローに悪影響が及ぶリスクがあります。